JP5655627B2 - 耐水素脆化特性に優れた高強度ばね用鋼 - Google Patents
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Description
また、旧オーステナイト結晶粒を従来よりも大幅に微細化することによって高強度化による延性、靭性、耐遅れ破壊特性の低下を防止する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、高強度で優れた耐水素脆化特性を有する高強度ばね用鋼を提供することを目的とする。
更に、Mnがミクロ偏析した部分では、オーステナイトが安定になるため変態温度が低下し、非拡散性水素量が増加しやすくなる。このため、Mnのミクロ偏析を低減させることが、非拡散性水素に起因する内部疲労破壊の防止にも有効であることを見出した。
(1)熱間圧延線材に焼入れ処理及び焼戻し処理を施して製造される引張強さが1800MPa以上の高強度ばね用鋼であって、質量%で、C:0.40〜0.65%、Si:1.8〜3.0%、Mn:0.1〜0.5%、P:0.010%以下、S:0.015%以下、Cr:0.5%以下、V:0.01〜0.5%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるとともに、表面から1mmまでの深さにおけるMnの最大濃度と最小濃度の比が1.5以下であり、非拡散性水素量が0.3ppm未満であることを特徴とする耐水素脆化特性に優れた高強度ばね用鋼。
(3) 質量%で、Al:0.001〜0.1%、Ti:0.001〜0.05%、Nb:0.001〜0.07%、Zr:0.001〜0.07%の1種又は2種以上を含有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の耐水素脆化特性に優れた高強度ばね用鋼。
したがって、本発明の高強度ばね用鋼は、自動車用懸架ばねの材料として好適に用いることができる。
本発明の高強度ばね用鋼は、質量%で、C:0.40〜0.65%、Si:1.8〜3.0%、Mn:0.1〜0.5%、P:0.010%以下、S:0.015%以下、Cr:0.5%以下、V:0.01〜0.5%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるものである。
Si:Siは高強度ばね用鋼の強度やへたり特性を高めるために有効な元素であるので1.8%以上含有させる。しかし、3.0%を超えてSiを含有させると圧延や熱処理時の脱炭が助長されて、疲労特性が低下する。このためSiの含有量を1.8〜3.0%の範囲にする。Siの含有量の好ましい下限は2.0%、好ましい上限は2.8%である。
S:Sは旧オーステナイト粒界に偏析して粒界を脆化させ、耐水素脆化特性を顕著に低下させる効果があるので0.015%以下に制限する必要があり、極力含有量を少なくすることが好ましい。Sの含有量の好適範囲は0.010%以下である。
Mo:Moは焼入れ性を向上するのに有効な元素であり、かつ焼戻し時に微細な炭化物として析出することによって高強度ばね用鋼に強度を付与する効果があるため0.01%以上含有させることが好ましい。しかし、1.0%を超えてMoを含有させてもその効果は飽和するため、1.0%以下含有させることが好ましい。したがって、Moの含有量は0.01〜1.0%であることが好ましい。Moの含有量のより好ましい下限は0.15%、より好ましい上限は0.5%である。
Al:Alは脱酸および結晶粒の微細化に有効な元素であるため、0.001%以上含有させることが好ましい。しかし、0.1%を超えてAlを含有させると、高強度ばね用鋼中にアルミナ系の介在物が多く生成されて、介在物に起因する疲労破壊が生じやすくなる。このため、Alの含有量を0.001〜0.1%にすることが好ましい。Alの含有量のより好ましい下限は0.005%、より好ましい上限は0.03%である。
ただし、Nが過剰に含まれる場合、ばね用鋼の靭性が低下し、冷間でのばね成形時に折損が起こり易くなることがあるため、上限を制限することが好ましい。N量の好ましい上限は0.01%、より好ましい上限は0.007%、更に好ましい上限は0.0050%である。
また、O量が増加すると、介在物量が増加し、内部疲労破壊が起こり易くなることがあるため、O量も上限を制限することが好ましい。O量の好ましい上限は0.005%、より好ましい上限は0.003%、更に好ましい上限は0.002%である。
本発明の高強度ばね用鋼を製造するには、上記の化学成分を有する鋼を溶製し、鋳造して鋼片とする工程と、鋼片を熱間圧延して冷却し、熱間圧延線材とする工程と、熱間圧延線材を焼入れ・焼戻しする工程とを行う。鋳造後の鋼片の断面のサイズが大きい場合には、熱間圧延の前に熱間加工(分塊圧延)を実施し、断面のサイズを調整してもよい。
Y:鋼片に1100℃以上で3時間以上保持する均熱処理を行う。均熱処理の好ましい温度は1200℃以上、好ましい保持時間は5時間以上、より好ましくは10時間以上である。均熱処理温度の好ましい上限は、加熱炉の能力や損傷を考慮すると、1300℃以下である。均熱処理の保持時間の上限は特に制限されるものではないが、生産性の観点から、30時間以下が好ましく、20時間以下がより好ましい。
A:製鋼時の溶鋼中の水素量を脱ガス処理によって2.5ppm以下に低減する。より好ましくは、2.0ppm以下に低減する。
B:MnS、Al2O3、SiO2など硫化物、酸化物およびこれらの複合の介在物サイズの低減および介在物数を低減する。特に好ましい条件は介在物サイズの低減であり、最大厚みを30μm以下にする。介在物サイズおよび介在物数を低減するためには、Sが0.01%以下、Oが0.0030%以下にすることが好ましい条件である。
D:熱間圧延の際の鋼片加熱温度を高温にし、更に加熱保持時間を長くする。好ましい条件は、加熱温度が1100℃以上、保持時間が30分以上である。加熱温度及び保持時間の好ましい上限は、組織の粗大化を抑制するという観点から、それぞれ、1250℃以下及び2時間以下である。
E:熱間圧延後の鋼材の冷却速度を低下させる。特に、パーライト変態後の冷却速度、具体的には500〜100℃の平均冷却速度を10℃/秒以下とする。
F:焼入れ後の焼戻し温度を450℃以上にする。
以下に示す製造方法により、No.1〜No.33の高強度ばね用鋼を製造し、以下に示すように評価した。
すなわち、鋼片は表1に示す化学成分を有する鋼(S1〜S27)を溶製し、表2に示す製造条件で、鋼片の製造、熱間圧延を行うことにより熱間圧延線材とした後、焼入れ・焼戻し処理を行って、No.1〜No.33の高強度ばね用鋼を製造した。焼入れ温度は975℃、焼戻し温度は350〜480℃で行い、引張強さを調整した。
なお、鋼片のMnミクロ偏析度は、鋼片表層部から0.1〜20mmまでの深さまで3箇所のライン分析を行い、ライン分析で得られたMn濃度の最大値と最小値を求め、その比をMnミクロ偏析度とした。
(i)鋼材を室温から800℃まで100℃/hrの昇温速度で加熱し、鋼材から放出される水素量を測定し、
(ii)上記(i)で昇温した鋼材を昇温水素分析装置内で室温まで冷却し、再び、室温から800℃まで100℃/hrの昇温速度で加熱し、放出される水素量、すなわち、「バックグラウンドの水素量」を測定し、
(iii)上記(i)の水素量から上記(ii)の水素量を引いた値を鋼材中に含まれる「非拡散性水素量」として求めた。
遅れ破壊試験は、焼入れ・焼戻し後に孔食を模擬するために応力集中係数が3.5の円周切欠き遅れ破壊試験片を用いて行った。遅れ破壊試験片に陰極水素チャージで0.5ppmの拡散性水素をチャージし、その後、引張破断荷重さ×0.3の定荷重を付与して、遅れ破壊試験を行った。10本の遅れ破壊試験を行い、遅れ破壊しない場合、耐遅れ破壊特性は良好(○印)であると判定した。1本でも遅れ破壊が起きた場合は、耐遅れ破壊特性が不良(×印)であると判定した。
Claims (3)
- 熱間圧延線材に焼入れ処理及び焼戻し処理を施して製造される引張強さが1800MPa以上の高強度ばね用鋼であって、質量%で、
C:0.40〜0.65%、
Si:1.8〜3.0%、
Mn:0.1〜0.5%、
P:0.010%以下、
S:0.015%以下、
Cr:0.5%以下、
V:0.01〜0.5%、
を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるとともに、表面から1mmまでの深さにおけるMnの最大濃度と最小濃度の比が1.5以下であり、非拡散性水素量が0.3ppm未満であることを特徴とする耐水素脆化特性に優れた高強度ばね用鋼。 - 質量%で、
Mo:0.01〜1.0%、
Ni:0.01〜1.0%、
Cu:0.01〜0.5%、
B:0.0001〜0.005%
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐水素脆化特性に優れた高強度ばね用鋼。 - 質量%で、
Al:0.001〜0.1%、
Ti:0.001〜0.05%、
Nb:0.001〜0.07%、
Zr:0.001〜0.07%
の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の耐水素脆化特性に優れた高強度ばね用鋼。
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