JPH08295984A - 耐遅れ破壊性に優れた板ばね用鋼 - Google Patents

耐遅れ破壊性に優れた板ばね用鋼

Info

Publication number
JPH08295984A
JPH08295984A JP12572695A JP12572695A JPH08295984A JP H08295984 A JPH08295984 A JP H08295984A JP 12572695 A JP12572695 A JP 12572695A JP 12572695 A JP12572695 A JP 12572695A JP H08295984 A JPH08295984 A JP H08295984A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel
delayed fracture
fracture resistance
strength
tempering
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP12572695A
Other languages
English (en)
Inventor
Atsushi Sugimoto
淳 杉本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Aichi Steel Corp
Original Assignee
Aichi Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Aichi Steel Corp filed Critical Aichi Steel Corp
Priority to JP12572695A priority Critical patent/JPH08295984A/ja
Publication of JPH08295984A publication Critical patent/JPH08295984A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【構成】 重量比にしてC:0.40〜0.70% 、Si:0.51 〜1.
00% 、Mn:0.50%以下、Cr:0.50 〜2.00% 、Mo:0.05 〜0.
50% 、Al:0.010〜0.100%、N:0.008 〜0.020%を含有し、
かつ380(%Cr)+36(%Si)+15(%Cr)+5(%Mo) ≧220 の関係を
満足し、必要に応じてNb:0.01 〜0.50% 、V:0.05〜0.50
% のうち1種又は2種を添加したり、不純物として含有
するP 、S をP:0.015%以下、S:0.010%以下としたことを
特徴とする耐遅れ破壊性に優れた板ばね用鋼。 【効果】 本発明鋼は、焼もどし温度を調整して従来よ
り高い強度となるように熱処理を行っても、靱性、耐遅
れ破壊性の低下が小さく、耐久性にも優れているため、
軽量化が可能な板ばね用鋼の提供が可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、トラック等の車両に使
用される高強度板ばねへの適用に適し、特に1650N/mm2
以上の高い引張強度としても靱性、耐遅れ破壊性に優れ
た板ばね用鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、省エネと環境汚染防止への観点か
ら、トラック等の車両の軽量化への要求はますます強く
なってきている。足廻り部品の一つである懸架用板ばね
についても例外ではなく、設計応力を高め軽量化を可能
にするための新しい材料及び製造方法の開発が盛んに行
われている。
【0003】従来、懸架用板ばねは、板厚に応じて必要
な焼入性を確保できる鋼をJISG4801に記載のばね鋼から
選択し、使用していた。例えば、板厚の比較的薄い板ば
ねではSUP6が、より優れた焼入性を要求される場合に
は、SUP9やSUP10 等のように選択され使用されていた。
【0004】これらの鋼は従来の経験から、強度、靱性
共に優れた特性の得られる熱処理条件が知られており、
JISG4801にも最適の熱処理条件が記載されている。その
結果得られる引張強さとしては、1230N/mm2 以上と記載
されている。
【0005】しかしながら、前述の軽量化への要求に対
応するには、さらに高い強度が必要となり、従来鋼をJI
S に記載された条件のままで焼入焼もどし処理を行う
と、強度が大きく不足してしまう。もし、従来鋼をその
まま使用して強度向上を図ろうとすると、焼もどし温度
を低くして熱処理後の硬さを高める必要があるが、この
ような熱処理を行った場合、必要な引張強さが得られて
も靱性が大きく低下するとともに、センター穴等の応力
が集中する箇所において、使用中に突然脆性的に破壊す
る遅れ破壊といわれる現象の発生が問題となる。例えば
SUP10 の場合、引張強さが1500N/mm2 以上となるように
熱処理を行うと、遅れ破壊現象の発生が問題となり、使
用が難しくなる。
【0006】以上説明したような、高強度化を図ること
により問題となる遅れ破壊を防止するために新しい鋼及
びその製造方法の開発が進められ、特許出願がされてい
る。例えば、特開平5-59431 号、特開平5-320826号、特
開平6-33189 号に記載の鋼がある。
【0007】このうち、特開平5-59431 号に記載の発明
は、遅れ破壊を防止するための製造方法を開示するもの
であり、ばね加工時の加熱条件、熱間圧延条件を限定
し、再結晶させた後に焼入れ、焼もどしを施すことを特
徴とするものである。
【0008】また、特開平5-320826号に記載の発明は、
遅れ破壊を防止するための新規の材料を開示するもので
あり、JIS のばね鋼では不純物としてしか含有されない
Ni、Cuを少量添加することによって強度向上に伴う腐食
疲労特性、靱性を改善し、遅れ破壊を防止したことを特
徴とするものである。
【0009】さらに、特開平6-33189 号に記載の発明
は、Cu、Moを添加して遅れ破壊の原因となる水素の侵入
を抑制するとともに、不純物として含有するP 、S を極
力低減し、Mnの添加量も極力抑えることによって、耐遅
れ破壊性の向上を図ったものである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】前記したように、最近
の開発により提案された新しい鋼や製造方法によって、
JIS 鋼を単に焼もどし温度を下げて硬さを高めた鋼に比
べ、耐遅れ破壊性を改善することができた。しかし、軽
量化に対する要求は極めて強く、前記した新しく提案さ
れた発明によりもさらに優れた特性を有するばね用鋼の
開発が求められている。
【0011】すなわち、特開平5-59431 号、特開平6-33
189 号公報に記載の鋼は、焼もどし時の軟化抵抗が小さ
い。従って、JIS のSUP10 等で遅れ破壊が問題となりは
じめる1500N/mm2 程度の引張強さではそれ程焼もどし温
度が低くならないが、さらに強度を高め1650N/mm2 以上
とする場合には、焼もどし温度をかなり低く設定する必
要がある。焼もどし温度が低くなると、靱性や耐遅れ破
壊性が低下するため問題となる。
【0012】また、特開平5-320826号公報に記載の鋼
は、公報に記載されているように、高強度で靱性、耐遅
れ破壊性に優れた鋼であるが、加熱による脱炭が多いと
いう問題がある。特に懸架用板ばねにおいては、ばね素
材の表面切削を製造途中に行わない場合が多く、脱炭に
よる疲労強度低下の可能性がある。
【0013】本発明は、ばね用鋼を高強度化する際の前
記のごとき問題点に鑑みてなされたものであって、引張
強さ1650N/mm2 以上の高強度で使用しても遅れ破壊を防
止することができ、かつ靱性に優れ、ばね製造時に表面
の脱炭層を除去しない場合でも優れた耐久性を確保でき
る板ばね用鋼を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明では、遅れ破壊を
防止するために、Mnを極力低減し、さらに必要に応じて
P 、S を低減したことを特徴としているが、この点につ
いては、特開平5-59431 号、特開平6-33189 号公報に記
載の内容と同じであって、これらの元素が結晶粒界に偏
析して粒界脆化が生じるのを防止するためである。しか
し、前述したように、特開平6-33189 号公報記載の鋼は
焼もどし軟化抵抗が劣っており、1650N/mm2 以上の高強
度で使用する場合には、焼もどし温度が低くなり、耐遅
れ破壊性が低下してしまうという問題があった。本発明
者は、この問題を解決するために、Siの添加量に注目し
て実験を行った。その結果、Siは、多量に添加すると脱
炭量が増加して問題となるが、1.0%までの添加であれば
脱炭に大きな影響がなく、かつCr、Moと共に添加した場
合には、高強度での靱性、耐遅れ破壊性の改善に寄与で
きる程度に焼もどし軟化抵抗を増加できることを見出し
た。
【0015】さらに、これらの元素の焼もどし軟化抵抗
性、靱性への効果を定量的に把握した結果、380(%C)+36
(%Si)+15(%Cr)+5(%Mo)≧220 の関係を満足するようにC
、Si、Cr、Mo含有率を調整することにより、高強度、
高靱性で、耐遅れ破壊性にも優れたばね用鋼が得られる
ことを見出したものである。
【0016】しかし、遅れ破壊特性を改善するためにMn
を低減すると、必要な焼入性が確保できず、焼入後に中
心部まで必要な硬さを得られなくなる。そこで、Mn低減
による焼入性不足を補うためにMoを少量添加した。な
お、Moは前記したように、Si、Crとの複合添加により、
焼もどし軟化抵抗改善にも効果がある。さらに、Al、N
を適量添加するとともに、必要に応じてNb、V を添加し
て、結晶粒を微細化し、一層の耐遅れ破壊性の改善を図
った。
【0017】以上説明した添加元素の最適化によって完
成した本発明の第1発明は、重量比にしてC:0.40〜0.70
% 、Si:0.51 〜1.00% 、Mn:0.50%以下、Cr:0.50 〜2.00
% 、Mo:0.05 〜0.50% 、Al:0.010〜0.100%、N:0.008 〜
0.020%を含有し、かつ380(%Cr)+36(%Si)+15(%Cr)+5(%M
o) ≧220 の関係を満足し、残部がFe及び不純物元素か
らなることを特徴とする耐遅れ破壊性に優れた板ばね用
鋼であり、第2発明は、第1発明鋼に加えNb:0.01 〜0.
50% 、V:0.05〜0.50% のうち1種又は2種を含有させ
て、耐遅れ破壊性をさらに改善したものであり、第3発
明は、第1、2発明鋼に比べ不純物として含有するP 、
S の量の上限を厳しく規制することにより、耐遅れ破壊
性をさらに改善したものである。
【0018】以下に本発明鋼の成分限定理由について説
明する。 C:0.40〜0.70% C は必要な強度、焼入性を確保するための必須元素であ
る。0.40% 未満の含有では、適正な焼もどし条件にて必
要とする引張強さが得られなくなるので、下限を0.40%
とした。好ましくは0.50% 以上含有するのが良い。しか
し、多量に含有させると、靱性が低下するとともに焼割
れが生じやすくなるので、上限を0.70%とした。好まし
くは0.65% 以下とするのが良い。
【0019】Si:0.51 〜1.00% Siは、脱酸のために必要な元素であるとともに、焼もど
し軟化抵抗を高め、同じ強度を得るのに高い焼もどし温
度による処理を可能とし、靱性、耐久性、耐遅れ破壊性
を改善する効果がある。従って、通常の脱酸に必要な最
低量よりは多量に添加する必要があり、0.51% 以上、好
ましくは0.65% 以上含有させることとした。しかしなが
ら、多量に含有させると、加熱による脱炭が生じやすく
なる。特に懸架用板ばねにおいては、製造コストを優先
して製造時に素材の表面を切削して脱炭層を除去する工
程を省略することが多く、脱炭量が多いと耐久性が著し
く低下するので、上限を1.00% とした。好ましくは、上
限を0.90% とするのが良い。
【0020】Mn:0.50%以下 Mnは焼入れ性を高めるために必要な基本元素であり、SU
P6、SUP10 においては、0.65〜1.00% 含有されている。
しかし、MnはMnS となって粒界に偏析し、耐遅れ破壊性
を劣化させる元素であるので、本発明では極力低減する
必要があり、上限を0.50% とした。好ましくは0.40% 以
下とするのが良い。また、実際には極力低減するといっ
ても必要な焼入性を確保するために少量添加する必要が
ある場合が多く、0.20% 以上は添加した方が好ましい。
【0021】Cr:0.50 〜2.00% Mnを極力低減している本発明において、CrはMn低減によ
る焼入性の低下を補い、焼もどし軟化抵抗性を増加させ
るために不可欠な元素であり、0.50% 以上、好ましくは
0.80% 以上含有させる必要がある。しかし、多量に含有
させると、焼入後の残留オーステナイトが増加し、靱性
が低下するので、上限を2.00% とした。より好ましく
は、上限を1.50% とするのが良い。
【0022】Mo:0.05 〜0.50% Moは、Crと同様に焼入性向上に必要な元素であるととも
に、Si、Cr増量に加えMoを添加することによる複合効果
によって、狙いの焼もどし温度に設定が可能な程度に焼
もどし軟化抵抗を高める効果を有する元素である。従っ
て、本発明にとって重要な元素であり、最低でも0.05%
、好ましくは0.10% 以上の含有が必要である。しか
し、多量に添加しても効果が飽和するとともにコスト高
となるので、上限を0.50% とした。好ましくは、上限を
0.40% とするのが良い。
【0023】Al:0.010〜0.100% Alは脱酸のために不可欠な元素であるとともに、鋼中で
N と結合してAlN となり結晶粒微細化に効果がある。従
って、少なくとも0.010%以上、好ましくは0.020%以上の
含有が必要である。しかしながら、多量に含有させる
と、Al2O3 等の酸化物系介在物が増加し、耐久性が低下
するので、上限を0.100%とした。好ましくは上限を0.05
0%以下とするのが良い。
【0024】N:0.0080〜0.0200% N は、大気中に存在するN が溶解、精錬時に不可避的に
混入し、不純物として含有する元素である。ただし、本
願発明で狙いとする特性を得るためには、Al、Nb、V 等
の窒化物を鋼中に適量形成させて、結晶粒微細化を図る
必要があり、そのためには、不純物として自然に含有さ
れる量よりも多量に添加する必要があるため、0.0080%
以上含有させることとした。好ましくは0.0100% 以上と
するのが良い。しかしながら、多量に添加しようとして
成分調整時にN を添加しても、冷却途中に内部で窒素ガ
スが発生して内部に欠陥が発生する原因となるので、上
限を0.0200% とした。好ましくは0.0180% 以下とするの
が良い。
【0025】Nb:0.01 〜0.50% 、V:0.05〜0.50% の1種
又は2種 Nb、V は窒化物を形成して結晶粒を微細化し、耐遅れ破
壊性を改善する効果のある元素であり、最低でもNbは0.
01% 、V は0.05% 含有させる必要がある。また、好まし
くはNb、V のそれぞれについて、下限を0.05% 、0.10%
とするのが良い。しかし、多量に含有させると、焼入の
加熱時に固溶しないNb、V の炭窒化物が増加して、マト
リックスの強度が低下するので、Nb、V ともに上限を0.
50% とした。好ましくはNb、V ともに0.40% 以下とする
のが良い。
【0026】P:0.015%以下、S:0.010%以下 Mnを極力低減すれば、P 、S については通常の不純物量
レベルで製造しても、ある程度耐遅れ破壊性の改善が可
能である。しかしながら、より優れた耐遅れ破壊性を得
るためには、P 、S についても溶解後の精錬時にできる
だけ除去することが望ましいので、要求される耐遅れ破
壊性のレベルによって必要がある場合には、P を0.015%
以下、S を0.010%以下に極力低減することとした。
【0027】380(%C)+36(%Si)+15(%Cr)+5(%Mo)≧220 Si、Cr、Moは前述したように焼もどし軟化抵抗を増加さ
せる元素である。それぞれの元素の適切な含有率につい
ては既に記載したが、本願発明で必要としている焼もど
し軟化抵抗を得るには、さらにこの3種類の元素の含有
率をC 含有率との関係で前記式を満足するように含有さ
せることが必要である。そして、この式の値が220 未満
では、十分な焼もどし軟化抵抗が得られなくなるので、
下限を220 とした。より優れた焼もどし軟化抵抗を得る
ためには、230 以上とすることが好ましい。
【0028】
【作用】本発明鋼では、先願にて開示されているよう
に、Mn、P 、S を低減して粒界脆化を防止し、かつAl、
N 、Nb、V の添加によって結晶粒を微細化して耐遅れ破
壊性の改善を図っている。また、Si量を最適化すること
によって、焼もどし軟化抵抗を改善しているので、焼も
どし温度を高めに設定できる。これらの成分を最適化
し、さらにC 、Si、Cr、Moの含有率を適切な関係に規制
することにより、高強度を確保しつつ優れた耐遅れ破壊
性が得られる。
【0029】
【実施例】次に本発明の特徴を従来鋼、比較鋼と比べて
実施例により明らかにする。表1に実施例として用いた
供試材の化学成分を示す。
【0030】
【表1】
【0031】表1において1〜12鋼は本発明鋼であり、
1〜3鋼は第1発明、4〜6鋼は第2発明、7〜12鋼は
第3発明に相当する鋼である。13〜17鋼は一部の成分が
本発明の範囲外である比較鋼であり、18鋼は成分は本発
明の範囲内であるが、式の計算値が範囲外である比較鋼
であり、19鋼は従来鋼であるSUP10 である。
【0032】(実施例1)表1に示す化学成分を有する
鋼を電気炉にて溶解し、熱間圧延により、板厚15mm、幅
80mmの平板鋼を製造した。この平板鋼の一部を切り出し
て引張試験片、遅れ破壊試験片、耐久試験片を作製し
た。
【0033】引張試験は、前記平板鋼からJIS4号試験片
を作製し、 900℃で油焼入後、焼もどし温度を変化させ
て熱処理し、試験を行って、焼もどし条件と得られる引
張強さとの関係を整理した。そして、以下に説明する耐
久試験、遅れ破壊試験は、引張強さが1650N/mm2 となる
条件で熱処理を施し、その結果を示したものである。な
お、熱処理は、焼入れ温度は 900℃油焼入で条件を統一
し、焼もどし温度のみを変化させて同じ引張強さが得ら
れるように調整した。その結果、本発明鋼である1〜12
鋼は、焼もどし温度が 420〜460 ℃の間となったが、C
、Si、Mo含有率の低い比較鋼である13、14、17鋼、式
の値が低い18鋼及び従来鋼SUP10 は、それぞれ、 330
℃、 380℃、 400℃、 400℃、 400℃となり、本発明鋼
に比べかなり低い温度となっている。
【0034】耐久試験は、平板鋼を600mm の長さに切断
し、前記した熱処理及びショットピーニングを実施後、
4点曲げ疲労試験にて、試験応力 735±441N/mm2の条件
で応力負荷の繰り返しを100 万回まで実施し、折損する
かどうかの試験を行った。なお、耐久試験結果は、ばら
つきが生じることを考慮して、試験片を5枚づつ用意
し、表2には、応力繰り返し数が5枚共に100 万回に達
したものは、○、1枚でも途中で折損したものは、最も
早く折損した時の繰り返し数を示した。
【0035】遅れ破壊試験は、形状係数が2.0 の切欠付
丸棒試験片を作製し、熱処理後仕上加工を行った。この
試験片を5%の塩酸中に30分浸漬した後、700N/mm2の引張
応力を負荷し、200hr の間破断しないかどうかを調査し
た。表2には破断したものを×、破断しなかったものを
○で示した。なお、引張試験片の熱処理は、遅れ破壊試
験片の熱処理の際に同時に行った。結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】表2から明らかなように、比較鋼のうち、
13、14、17鋼はそれぞれC 、Si、Mo含有率が低く、18鋼
は式の値が低いため、焼もどし温度を低くしないと所定
の強度が得られず、靱性が低下し、優れた耐遅れ破壊
性、耐久性が得られないものであり、15鋼はSi含有率が
高いため、脱炭が増加して耐久性が低下したものであ
り、16鋼は、Mn含有率が高いため、耐遅れ破壊性が劣る
ものである。また、従来鋼であるSUP10 を通常より低い
温度で焼もどし処理したにすぎない19鋼は、耐遅れ破壊
性、耐久性が共に劣るものである。
【0038】これに対して、本発明鋼である1〜12鋼
は、従来鋼に比べSi、Moの添加により焼もどし軟化抵抗
を高め、Mnの低減によって耐遅れ破壊性を改善する等の
複合効果によって、遅れ破壊強度、疲労強度共に高い水
準を確保することができた。
【0039】(実施例2)次に本発明鋼においてSi量の
最適設定が重要であることを示す別の実施例を示す。Si
以外の成分が、0.50%C、0.30%Mn 、1.0%Cr、0.20%Mo 、
0.03%Al 、0.015%P、0.005%S で、Si量のみ変化させた
鋼を溶製し、前記した実施例と同じ方法で、引張試験、
遅れ破壊試験、耐久試験を行った。また、前記した試験
に加え衝撃試験及び脱炭量の測定も行った。
【0040】衝撃試験は、平板鋼からJIS3号衝撃試験片
を作製し、室温にて行った。脱炭量の測定は、前記実施
例と同様に溶解、熱間圧延して製造された平板鋼を切り
出し、表面の脱炭深さ(全脱炭深さ)を光学顕微鏡にて
測定したものである。以上説明した試験の結果を表3に
示す。なお、表3には、引張強さを1650N/mm2 に設定す
るための焼もどし処理の設定温度についても合わせて示
した。
【0041】
【表3】
【0042】表3から明らかなように、Si量が少ないと
焼もどし時の軟化抵抗が不足し、焼もどし処理温度を低
くしないと必要とする強度が得られず、靱性、耐遅れ破
壊性が低下することがわかる、一方Si量が多すぎる場合
には、焼もどし軟化抵抗は改善されるが、加熱時に脱炭
しやすくなって、耐久性が低下する。従って、Si量は、
本発明において開示したように、従来鋼のSUP10 よりは
高めとし、Si-Mn 系ばね鋼であるSUP6よりも低めとする
必要があることがわかる。
【0043】(実施例3)最後に、本発明におけるNb、
V の添加効果と、P 、S の低減効果を明確にするための
別の実施例を示す。前記した実施例では、全ての供試材
について、全く同じ条件で評価を行ったため、Nb、V の
添加効果と、P 、S の低減効果が明確に確認できなかっ
た。そこで、表1に示す1鋼と、1鋼にNb、V を添加し
た20鋼と1鋼のP 、S を低減した21鋼について、前記し
た方法より厳しい条件で遅れ破壊試験を行った結果を示
す。試験応力は800N/mm2に設定した。結果を表4に示
す。
【0044】
【表4】
【0045】表4から明らかなように、Nb、V を添加し
たり、P 、S を極力低減することによって、遅れ破壊特
性が改善されることがわかる。
【0046】
【発明の効果】本発明の耐遅れ破壊性に優れた板ばね用
鋼は、以上説明したように、Si量の最適化とCr、Moの添
加、さらにC を含めた4元素の含有率の関係を適正に規
制することによって焼もどし軟化抵抗を改善するととも
に、Mnを極力低減して粒界脆化を防止し、Al、N を適量
添加して組織の微細化を図っているので、靱性、耐遅れ
破壊性を劣化することなく強度を向上することができ
た。また、特にP 、S を低減した鋼、Nb、V を添加した
鋼において優れた性能が得られることが確認できた。従
って、トラック等の車両の懸架用板ばねを高応力設計し
て軽量化することが可能となり、ユーザーからの要求に
対応することが可能となる。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量比にしてC:0.40〜0.70% 、Si:0.51
    〜1.00% 、Mn:0.50%以下、Cr:0.50 〜2.00% 、Mo:0.05
    〜0.50% 、Al:0.010〜0.100%、N:0.008 〜0.020%を含有
    し、かつ380(%Cr)+36(%Si)+15(%Cr)+5(%Mo) ≧220 の関
    係を満足し、残部がFe及び不純物元素からなることを特
    徴とする耐遅れ破壊性に優れた板ばね用鋼。
  2. 【請求項2】 重量比にしてC:0.40〜0.70% 、Si:0.51
    〜1.00% 、Mn:0.50%以下、Cr:0.50 〜2.00% 、Mo:0.05
    〜0.50% 、Al:0.010〜0.100%、N:0.008 〜0.020%と、N
    b:0.01 〜0.50% 、V:0.05〜0.50% のうち1種又は2種
    を含有し、かつ380(%Cr)+36(%Si)+15(%Cr)+5(%Mo) ≧22
    0 の関係を満足し、残部がFeおよび不純物元素からなる
    ことを特徴とする耐遅れ破壊性に優れた板ばね用鋼。
  3. 【請求項3】 請求項1、2において、不純物として含
    有するP 、S をP:0.015%以下、S:0.010%以下としたこと
    を特徴とする耐遅れ破壊性に優れた板ばね用鋼。
JP12572695A 1995-04-25 1995-04-25 耐遅れ破壊性に優れた板ばね用鋼 Pending JPH08295984A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP12572695A JPH08295984A (ja) 1995-04-25 1995-04-25 耐遅れ破壊性に優れた板ばね用鋼

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP12572695A JPH08295984A (ja) 1995-04-25 1995-04-25 耐遅れ破壊性に優れた板ばね用鋼

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH08295984A true JPH08295984A (ja) 1996-11-12

Family

ID=14917263

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP12572695A Pending JPH08295984A (ja) 1995-04-25 1995-04-25 耐遅れ破壊性に優れた板ばね用鋼

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH08295984A (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100412644B1 (ko) * 2001-05-30 2003-12-31 현대자동차주식회사 프레스 금형용 주조 합금강
JP2008266782A (ja) * 2007-03-23 2008-11-06 Aichi Steel Works Ltd 耐水素脆性、腐食疲労強度の優れたばね用鋼及びそれを用いた高強度ばね部品
WO2011074600A1 (ja) * 2009-12-18 2011-06-23 愛知製鋼株式会社 高疲労強度板ばね用鋼及び板ばね部品
JP2012172247A (ja) * 2011-02-24 2012-09-10 Nippon Steel Corp 耐水素脆化特性に優れた高強度ばね用鋼
WO2017017290A1 (es) 2015-07-28 2017-02-02 Gerdau Investigacion Y Desarrollo Europa, S.A. Acero para ballestas de alta resistencia y templabilidad

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100412644B1 (ko) * 2001-05-30 2003-12-31 현대자동차주식회사 프레스 금형용 주조 합금강
JP2008266782A (ja) * 2007-03-23 2008-11-06 Aichi Steel Works Ltd 耐水素脆性、腐食疲労強度の優れたばね用鋼及びそれを用いた高強度ばね部品
WO2011074600A1 (ja) * 2009-12-18 2011-06-23 愛知製鋼株式会社 高疲労強度板ばね用鋼及び板ばね部品
JP2011127182A (ja) * 2009-12-18 2011-06-30 Aichi Steel Works Ltd 高疲労強度板ばね用鋼及び板ばね部品
US8741216B2 (en) 2009-12-18 2014-06-03 Nhk Spring Co., Ltd. Steel for leaf spring with high fatigue strength, and leaf spring parts
JP2012172247A (ja) * 2011-02-24 2012-09-10 Nippon Steel Corp 耐水素脆化特性に優れた高強度ばね用鋼
WO2017017290A1 (es) 2015-07-28 2017-02-02 Gerdau Investigacion Y Desarrollo Europa, S.A. Acero para ballestas de alta resistencia y templabilidad

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP2017358B1 (en) Steel wire material for spring and its producing method
WO2012153831A1 (ja) 車両懸架用ばね部品用鋼、車両懸架用ばね部品およびその製造方法
EP2746420B1 (en) Spring steel and spring
EP4159886A1 (en) Ultrahigh-strength dual-phase steel and manufacturing method therefor
KR20080057205A (ko) 고강도 스프링용 강 및 고강도 스프링용 열처리 강선
EP1801255A1 (en) Cold formable spring steel wire excellent in cold cutting capability and fatigue properties and manufacturing process thereof
JP3932995B2 (ja) 高周波焼もどし用鋼およびその製造方法
KR101789944B1 (ko) 코일 스프링 및 그 제조 방법
JPH08295984A (ja) 耐遅れ破壊性に優れた板ばね用鋼
JP4196766B2 (ja) 耐遅れ破壊特性および疲労特性に優れた鋼材およびその製造方法
KR100325706B1 (ko) 저합금형고응력스프링용강및그제조방법
JP2004124190A (ja) ねじり特性に優れる高周波焼もどし鋼
JP3142689B2 (ja) 疲労強度の優れたばね
CN111334708B (zh) 一种抗拉强度≥2250MPa且疲劳性能优异的高强度弹簧钢及其生产方法
JPH08170152A (ja) 疲労特性の優れたばね
KR20010060753A (ko) 저합금형 고응력 스프링의 제조방법
CN115386791B (zh) 一种微合金化高强度可焊接复合稳定杆扭簧用扁钢及其制造方法
KR102494553B1 (ko) 가공성이 우수한 고인성 고탄소 냉연강판 및 그 제조방법
JP2860789B2 (ja) 焼入性、耐久性の優れたばね用鋼
KR100352607B1 (ko) 고응력 스프링용강 선재의 제조방법
JPH05148580A (ja) 遅れ破壊特性の優れたボルト用鋼
JPH05148576A (ja) 遅れ破壊特性の優れたボルト用鋼
CN116745443A (zh) 工具用钢材及其制造方法
KR100524617B1 (ko) 충격인성이 우수한 고탄소공구강대
KR20040035136A (ko) 스프링용강 선재의 제조방법