JP5655322B2 - 画像記録方法および画像記録装置 - Google Patents

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Description

本発明は、にじみが抑制された高画質な画像を与える画像記録方法に関する。また、本発明は、にじみが抑制された高画質な画像を与える画像記録装置に関する。
従来、記録用紙などに対するカラー印刷方法としては、インクジェット法によるカラー印刷が多用されている。これに対して、プラスチック製品や金属製品などといった下地の色が白色とは限らない媒体に対して模様をカラーで付す方法としては、下地の色が白と限らないので、下地の色の影響が出ないように、かなり厚手にインクを塗布可能なカラー塗装という方法に限られている。
そこで本出願人は、下地の色が白色とは限らない媒体に対しても細かな模様や文字をカラーで付すのに適したカラー印刷物品の製造方法を提供することを目的とし、媒体の被印刷面に対して白色の下地層を形成した後、インクジェット方式の記録ヘッドから各色のインク滴を吐出して前記下地層の上にカラー印刷を行う技術を提案している(特許文献1参照)。
しかしながら、従来技術においては、下地層を形成した後にプロセスカラーインクにより画像を形成しようとすると、得られるカラー画像ににじみが生じやすく、満足のいく画質が得られないという問題点があった。
一方、特許文献2には、非吸収性基板上に無色又は白色の湿潤下塗り層を形成し、該下塗り層が湿潤している間に該下塗り層上に湿潤インク液滴のパターンを付与し、次いで該下塗り層と付与したインク液滴を乾燥状態に変換することからなり、該下塗り層の厚さを付与するインク液滴のパターンに応じて場所的に変化させて、該下塗り層の厚さを局所領域に付与する該インク液滴の数と逆比例的に変え、該湿潤下塗り層及び湿潤インク液滴がUV硬化性又はホットメルト下塗り材又はインクであることを特徴とする非吸収性基板上へのインクジェット印刷方法が開示されている。
しかしながら特許文献2には、下記で説明する本発明の主要な見地、すなわち下地層に残存する揮発成分量と、その上に形成されるカラー画像のにじみ具合との関係については、何ら開示または示唆されていない。
特開2000−141708号公報 特許4059629号公報
本発明は、にじみが抑制された高画質な画像を与える画像記録方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、にじみが抑制された高画質な画像を与える画像記録装置を提供することを目的とする。
本発明の発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、非吸収性や低吸収性の基材上に白色色材を含む白色隠蔽層とカラー画像層とを積層させて画像記録する場合において、カラー画像のにじみ具合は下地となる白色隠蔽層に残存する揮発成分量に依存することを知見した。特に、このカラー画像のにじみは、揮発成分が略揮発した状態(即ち、白色隠蔽層が略乾燥した状態)でカラー画像を形成した場合に生じ、白色隠蔽層に残存する揮発成分量が5質量%未満以下の場合に顕著に生じることが判った。
白色隠蔽層が乾燥した状態であると、白色色材である金属化合物顔料や中空樹脂粒子を分散させるための分散樹脂が前記色材の周囲を被覆して固化および密集した状態となる。そして、この状態の白色隠蔽層にプロセスカラーインク組成物を付着させると、該プロセスカラーインク組成物の溶剤成分が白色隠蔽層内部へ吸収されずに表層部に留まり、これによりカラー画像のにじみが生じるものと推測される。
今般、本発明者は、プロセスカラーインク組成物を白色隠蔽層上に付着させる前に、該白色隠蔽層のカラー画像が形成される所定の領域をクリアインク組成物で湿潤状態とすることでこのにじみを抑制できることを知見するに至った。本発明者の知見によれば、クリアインク組成物によって白色隠蔽層上に形成される湿潤樹脂層の揮発成分残存量が50質量%を超えてしまうと、該湿潤樹脂層が湿潤し過ぎるためにカラー画像ににじみが顕著に発生し、一方、湿潤樹脂層の揮発成分の残存量を5質量%以上とすればカラー画像のにじみを抑制することができる。
さらに本発明者は、下地が白色隠蔽層でなく乾燥した被記録面である場合であって、例えば基材等にカラー画像層を直接記録する場合にも、カラー画像層を記録する前に、前記カラー画像層を記録する所定領域に揮発成分残存量が5〜50質量%の湿潤樹脂層を形成することで、上記と同様にカラー画像層のにじみを抑制できることを知見するに至った。
本発明は上記知見に基づきなされたものであり、即ち、下記の通りである。
(1) 基材上にプロセスカラーインク組成物によりカラー画像層を記録する工程と、 前記カラー画像層を記録する前に、前記基材上の前記カラー画像層を記録する所定領域に、樹脂を含有するクリアインク組成物により揮発成分残存量が5〜50質量%の湿潤樹脂層を記録する工程と、を有することを特徴とする、画像記録方法。
(2) 前記湿潤樹脂層を記録する工程の前に、前記基材上の少なくとも前記所定領域に、白色インク組成物によって白色隠蔽層が記録されており、
前記湿潤樹脂層を形成する際の前記白色隠蔽層の揮発成分残存量が5質量%未満であることを特徴とする、上記(1)記載の画像記録方法。
(3) 前記湿潤樹脂層を記録する工程が、前記白色隠蔽層上にクリアインク組成物を付着させる工程と、前記付着されたクリアインク組成物を揮発成分残存量が5〜50質量%となるまで乾燥させる工程とを有することを特徴とする、上記(2)記載の画像記録方法。
(4) 前記白色インク組成物が金属化合物または中空樹脂粒子を白色色材として含むことを特徴とする、上記(2)または(3)記載の画像記録方法。
(5) 前記白色インク組成物、前記クリアインク組成物および前記プロセスカラーインク組成物の主溶媒が水であることを特徴とする、上記(2)〜(4)の何れか一項に記載の画像記録方法。
(6) 前記基材がインク非吸収性または低吸収性であることを特徴とする、上記(1)〜(5)の何れか一項に記載の画像記録方法。
(7) 前記湿潤樹脂層の揮発成分残存量が10〜25質量%であることを特徴とする、上記(1)〜(6)の何れか一項に記載の画像記録方法。
(8) 基材上にプロセスカラーインク組成物によりカラー画像層を記録するカラー画像形成手段と、
前記カラー画像層を記録する前に、前記基材上の前記カラー画像層を記録する所定領域に、樹脂を含有するクリアインク組成物により揮発成分残存量が5〜50質量%の湿潤樹脂層を記録する湿潤樹脂層形成手段と、を有することを特徴とする画像記録装置。
また、本発明の画像記録方法は下記の具体的な手段により成されることが好ましい。
(9) 前記画像記録方法が、複数のノズルが配列してなるノズル列を複数有する記録ヘッドと、基材を主走査方向に交差する副走査方向へ搬送する被記録材搬送手段と、を備えた記録装置を用いて行なわれ、
前記クリアインク組成物および前記プロセスカラーインク組成物は、前記基材に対向して設けられる前記記録ヘッドから前記基材に対して吐出され、
前記記録ヘッドは、前記基材上の少なくとも白色隠蔽層に対して前記クリアインク組成物を吐出してから所定時間の後、前記クリアインク組成物により形成された湿潤樹脂層に対して前記プロセスカラーインク組成物を吐出することを特徴とする上記(2)〜(7)の何れか一項に記載の画像記録方法。
(10) 前記記録装置は、前記記録ヘッドを搭載して前記主走査方向へ往復移動するキャリッジを備え、
前記基材の搬送が停止された状態で、前記キャリッジの往復移動に伴って前記クリアインク組成物が前記記録ヘッドから前記基材上の少なくとも白色隠蔽層に対して吐出され、次いで、前記キャリッジの往復移動に伴って前記プロセスカラーインク組成物が前記記録ヘッドから前記湿潤樹脂層に対して吐出されることを特徴とする上記(9)に記載の画像記録方法。
(11) 前記記録装置が更に前記基材を加熱する手段を備え、
前記クリアインク組成物を前記白色隠蔽層に付着させる付着時および/または付着後、前記基材を加熱することを特徴とする上記(9)〜(10)の何れか一項に記載の画像記録方法。
(12) インクジェット記録方式により行なわれることを特徴とする、上記(1)〜(11)の何れか一項に記載の画像記録方法。
本発明の画像記録方法によれば、にじみが抑制された高画質な画像が得られる。
印刷評価試験−1で作成した印刷物を示す図である。 印刷評価試験−1で用いる評価試験装置の部分概略図を示す。 印刷評価試験−1における、記録ヘッドに配置されたノズル列と走査との関係を説明する概念図である。 印刷評価試験−2における画像記録方法の各工程を示す概略図である。 印刷評価試験−2における、記録ヘッドに配置されたノズル列と走査との関係を説明する概念図である。
[画像記録方法]
本発明の画像記録方法は、基材上にプロセスカラーインク組成物によりカラー画像層を記録する工程と、
前記カラー画像層を記録する前に、前記基材上の前記カラー画像層を記録する所定領域に、樹脂を含有するクリアインク組成物により揮発成分残存量が5〜50質量%の湿潤樹脂層を記録する工程と、を有することを特徴とする。
本明細書では、「揮発成分残存量」とは、インク組成物に含有される揮発成分の初期含有量から揮発した量を差し引いた値を、揮発成分の初期含有量で除した値を意味する。
また、「揮発成分」とはインク組成物から固形成分を除いたその他の成分を意味する。一般的に、インク組成物における揮発成分は、溶媒(有機溶媒および水)、あるいは添加物としての有機溶剤(溶媒が水の場合は水溶性有機溶剤)等が挙げられる。一方、一般的にインク組成物における固形成分としては、顔料等の色材(クリアインク組成物である場合には色材は含有されない)、分散剤としての樹脂あるいはレベリング剤として機能する添加剤としての樹脂、界面活性剤等が挙げられる。尚、揮発成分残存量は、印刷面に記録されたインク組成物の重量から算出することができる。
湿潤樹脂層のより好ましい揮発成分残存量は、8〜40質量%であり、特に好ましくは10〜25質量%である。かかる本発明の画像記録方法によれば、市販されるようなクリアインク組成物を用いて、簡便に、白色隠蔽層上ににじみがない高精細なカラー画像を形成することが可能となる。また、本発明の画像記録方法によれば、基材上に白色隠蔽層を介さずに直接カラー画像を形成する場合にも、カラー画像層を形成する前に上記湿潤樹脂層を記録することで、にじみがない高精彩なカラー画像を形成することが可能となる。
本発明の画像記録方法は、特に、白色隠蔽層が印刷されてから時間が経過した、白色隠蔽層中の揮発成分残存量が少ない印刷物に適用するとにじみ抑制効果をより得ることができ、特に白色隠蔽層の揮発成分残存量が5質量%未満の印刷物に適用すると顕著ににじみ抑制効果を得ることができる。
以下、本発明の画像記録方法について詳細に説明する。
1.白色インク組成物
以下、白色インク組成物について説明する。
本発明における白色インク組成物は、白色色材として金属化合物および中空樹脂粒子から選ばれる少なくとも1種と、前記色材を定着する樹脂成分とを含むことが望ましい。
金属化合物としては、従来から白色顔料として用いられている金属酸化物、硫酸バリウムや炭酸カルシウムである。金属酸化物としては、特に制限されないが、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等が挙げられる。本発明における金属化合物としては、二酸化チタン、アルミナが好ましい。
上記金属化合物の含有量は、白色インク組成物の全質量に対して、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは5〜15質量%である。金属酸化物の含有量が20質量%を超えると、インクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、1質量%未満であると、白色度等の色濃度が不足する傾向にある。
金属化合物の平均粒子径(外径)は、好ましくは30〜600nmであり、より好ましくは200〜400nmである。外径が600nmを超えると、粒子が沈降するなどして分散安定性を損なうことがあり、またインクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、外径30nm未満であると、白色度が不足する傾向にある。
金属化合物の平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置として、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)を用いることができる。
本発明における中空樹脂粒子としては、その内部に空洞を有しており、その外殻が液体透過性を有する樹脂から形成されていることが好ましい。かかる構成により、中空樹脂粒子が水性インク組成物中に存在する場合には、内部の空洞は水性媒質で満たされることになる。水性媒質で満たされた粒子は、外部の水性媒質とほぼ等しい比重を有するため、水性インク組成物中で沈降することなく分散安定性を保つことができる。これにより、インク組成物の貯蔵安定性や吐出安定性を高めることができる。
上記の中空樹脂粒子を含む白色インク組成物を、紙その他の記録媒体上に吐出させると、粒子の内部の水性媒質が乾燥時に抜けることにより空洞となる。粒子が内部に空気を含有することにより、粒子は屈折率の異なる樹脂層および空気層を形成し、入射光を効果的に散乱させるため、白色を呈することができる。
本発明で用いられる中空樹脂粒子は、特に限定されるものではなく、公知のものを用いることができる。例えば、米国特許第4,880,465号や特許第3,562,754号などの明細書に記載されている中空樹脂粒子を好ましく用いることができる。
中空樹脂粒子の平均粒子径(外径)は、好ましくは0.2〜1.0μmであり、より好ましくは0.4〜0.8μmである。外径が1.0μmを超えると、粒子が沈降するなどして分散安定性を損なうことがあり、またインクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、外径が0.2μm未満であると、白色度等の色濃度が不足する傾向にある。また、内径は、0.1〜0.8μm程度が適当である。
中空樹脂粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。レーザー回折式粒度分布測定装置として、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)を用いることができる。
上記中空樹脂粒子の含有量(固形分)は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは5〜20質量%であり、より好ましくは8〜15質量%である。中空樹脂粒子の含有量(固形分)が20質量%を超えると、インクジェット式記録ヘッドの目詰まりなど信頼性を損なうことがある。一方、5質量%未満であると、白色度が不足する傾向にある。
上記中空樹脂粒子の調製方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法を適用することができる。中空樹脂粒子の調製方法として、例えば、ビニルモノマー、界面活性剤、重合開始剤、および水系分散媒を窒素雰囲気下で加熱しながら撹拌することにより中空樹脂粒子エマルジョンを形成する、いわゆる乳化重合法を適用することができる。
ビニルモノマーとしては、非イオン性モノエチレン不飽和モノマーが挙げられ、例えば、スチレン、ビニルトルエン、エチレン、ビニルアセテート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、ビニルモノマーとして、二官能性ビニルモノマーを用いることもできる。二官能性ビニルモノマーとして、例えば、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタン−ジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどが挙げられる。上記単官能性ビニルモノマーと上記二官能性ビニルモノマーとを共重合させて高度に架橋することにより、光散乱特性だけでなく、耐熱性、耐溶剤性、溶剤分散性などの特性を備えた中空樹脂粒子を得ることができる。
界面活性剤としては、水中でミセルなどの分子集合体を形成するものであればよく、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
重合開始剤としては、水に可溶な公知の化合物を用いることができ、例えば、過酸化水素、過硫酸カリウムなどが挙げられる。
水系分散媒としては、例えば、水、親水性有機溶媒を含有する水などが挙げられる。
本発明における白色インク組成物は、金属化合物や中空樹脂粒子を定着させる樹脂を含むことが望ましい。係る樹脂としては、アクリル系樹脂(例えば、アルマテックス(三井化学社製))、ウレタン系樹脂(例えば、WBR−022U(大成ファインケミカル社製))が挙げられる。
これらの定着樹脂の含有量は、インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.5〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜3質量%である。
本発明における白色インク組成物は、アルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。アルカンジオールやグリコールエーテルは、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
アルカンジオールとしては、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどの炭素数が4〜8の1,2−アルカンジオールであることが好ましい。この中でも炭素数が6〜8の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、記録媒体への浸透性が特に高いため、より好ましい。
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテルを挙げることができる。この中でも、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いると良好な記録品質を得ることができる。
これらのアルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種の含有量は、白色インク組成物の全質量に対して、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
本発明における白色インク組成物は、アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤を含有することが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤は、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348(ビックケミー・ジャパン社製)などが挙げられる。
更に、本発明における白色インク組成物は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などのその他の界面活性剤を含有することもできる。
上記界面活性剤の含有量は、白色インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。
本発明における白色インク組成物は、第三級アミンを含有することが好ましい。第三級アミンは、pH調整剤としての機能を有し、白色インク組成物のpHを容易に調整することができる。
第三級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
上記第三級アミンの含有量は、白色インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜2質量%である。
本発明における白色インク組成物は、通常溶媒として水を含有することが好ましい。水は、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、長期間に亘りカビやバクテリアの発生を抑制することができるので好ましい。
本発明における白色インク組成物は、必要に応じて、水溶性ロジンなどの定着剤、安息香酸ナトリウムなどの防黴剤・防腐剤、アロハネート類などの酸化防止剤・紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤などの添加剤を含有させることができる。これらの添加剤は、1種単独で用いることもできるし、もちろん2種以上組み合わせて用いることもできる。
本発明における白色インク組成物は、従来公知の装置、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、バスケットミル、ロールミルなどを使用して、従来の顔料インクと同様に調製することができる。調製に際しては、メンブランフィルターやメッシュフィルターなどを用いて粗大粒子を除去することが好ましい。
2.プロセスカラーインク組成物
次に、カラー画像を形成するためのプロセスカラーインク組成物について説明する。
本発明におけるプロセスカラーインク組成物は、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)またはK(ブラック)の色材を含むものであればよく、白色以外を呈するカラーインク組成物である。本発明におけるプロセスカラーインク組成物は特に限定されることなく、市販のプロセスカラーインク組成物を使用することができる。
カラー色材としては、顔料系および染料系のいずれでも良く、例えば、特開2003−192963号、特開2005−23253号公報、特開平9−3380号公報、特開2004−51776号公報に記載されたカラーインク組成物を好適に使用することができる。
また、本発明における“カラー”とは特定の色領域ではなく一般的に色があると言われている領域全てを指す。つまり、“L座標上でL=100、a=0、b=0(理想的な白)以外の座標に位置する色”を示す。
本発明で用いられるプロセスカラーインク組成物は主溶媒として水を含むものであることが望ましい。
3.クリアインク組成物
本発明におけるクリアインク組成物は、色材を含有せず、定着樹脂を含むものであれば良く、特に主溶媒として水を含むものであることが望ましい。クリアインク組成物に含まれる定着樹脂は、白色インク組成物による白色隠蔽層とプロセスカラーインク組成物によるカラー画像層との間を分離しつつ白色隠蔽層上に適度な湿潤状態を形成する。また、同様に、基材とカラー画像層との間を分離しつつ基材上に適度な湿潤状態を形成する。プロセスカラーインク組成物をこの湿潤樹脂層に付着させると、溶剤等の成分が速やかに湿潤樹脂層に吸収され、且つプロセスカラーインク組成物は湿潤樹脂層に含まれる樹脂によって表層に留まる。このためにじみが抑制され、高精細な画像を形成することが可能となる。
樹脂種は分散性の観点から樹脂エマルジョンが好ましい。かかる樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エチレン系樹脂、スチレンーアクリル酸共重合体等が挙げられる。これらの定着樹脂の含有量は、クリアインク組成物の全質量に対して、好ましくは0.5〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜3質量%である。定着樹脂としては、ワックスを用いても良い。
本発明におけるクリアインク組成物は、アルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。アルカンジオールやグリコールエーテルは、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
アルカンジオールとしては、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなどの炭素数が4〜8の1,2−アルカンジオールであることが好ましい。この中でも炭素数が6〜8の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、記録媒体への浸透性が特に高いため、より好ましい。
グリコールエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの多価アルコールの低級アルキルエーテルを挙げることができる。この中でも、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いると良好な記録品質を得ることができる。
これらのアルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種の含有量は、クリアインク組成物の全質量に対して、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
本発明におけるクリアインク組成物は、多価アルコール類としての、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、プロピレングリコールなどを保湿剤として含有することが好ましい。保湿剤により、吐出安定性、目詰り回復性等の信頼性の高いインク組成物となる。保湿剤の含有量は、クリアインク組成物の全質量に対して、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
本発明におけるクリアインク組成物は、アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤を含有することが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤は、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348(ビックケミー・ジャパン社製)などが挙げられる。
更に、本発明におけるクリアインク組成物は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などのその他の界面活性剤を含有することもできる。
上記界面活性剤の含有量は、クリアインク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。
本発明におけるクリアインク組成物は、第三級アミンを含有することが好ましい。第三級アミンは、pH調整剤としての機能を有し、クリアインク組成物のpHを容易に調整することができる。
第三級アミンとしては、例えば、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミンなどが挙げられる。
上記第三級アミンの含有量は、クリアインク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜2質量%である。
水性インク組成物には、印字後の記録媒体上での界面活性剤やアルカンジオールおよびグリコールエーテルによるインクの広がりと、樹脂の固化とのバランスを考慮して、ピロリドンあるいはピロリドン誘導体の水溶性溶剤をさらに加えることが好ましい。
ピロリドンあるいはピロリドン誘導体の具体例としては、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、2−ピロリドン等が挙げられ、中でも速乾性と熱可塑性樹脂の皮膜化促進の点で、2−メチルピロリドンが好ましい。
ピロリドンあるいはピロリドン誘導体の添加量は、インク組成物全量に対して、好ましくは2重量%〜25重量%、さらに好ましくは4〜25重量%である。
本発明におけるクリアインク組成物は、通常溶媒として水を含有することが好ましい。水は、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水などの純水または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を紫外線照射または過酸化水素添加などにより滅菌処理した水は、長期間に亘りカビやバクテリアの発生を抑制することができるので好ましい。
本発明におけるクリアインク組成物は、必要に応じて、水溶性ロジンなどの定着剤、安息香酸ナトリウムなどの防黴剤・防腐剤、アロハネート類などの酸化防止剤・紫外線吸収剤、キレート剤、酸素吸収剤などの添加剤を含有させることができる。これらの添加剤は、1種単独で用いることもできるし、もちろん2種以上組み合わせて用いることもできる。
本発明におけるクリアインク組成物は、従来公知の装置、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、バスケットミル、ロールミルなどを使用して、従来の顔料インクと同様に調製することができる。調製に際しては、メンブランフィルターやメッシュフィルターなどを用いて粗大粒子を除去することが好ましい。
本発明において使用される白色インク組成物、プロセスカラーインク組成物およびクリアインク組成物は、共に主溶媒として水を含有することが好ましい。水であれば、揮発を制御させやすく、またインク中に添加している記録媒体表面で皮膜する機能を有する樹脂など設計もしやすい。また、揮発分が主に水(水蒸気)であるため、特別な排気装置を設けることもなく簡単な機構とすることが可能である。
4.基材
本発明で用いられる基材とは、インク非吸収性および低吸収性の記録媒体である。インク非吸収性および低吸収性の記録媒体とは、インクの吸収層を備えていない、あるいは、インクの吸収層が乏しい記録媒体をいう。より定量的には、インク非吸収性および低吸収性の記録媒体とは、印字面が、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である記録媒体を示す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。インク非吸収性の記録媒体として、例えば、インクジェット印刷用に表面処理をしていない(すなわち、インク吸収層を形成していない)プラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。また金属、ガラス等も挙げられる。インク低吸収性の記録媒体として、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙等が挙げられる。
5.画像形成方法
本発明の画像記録方法における白色隠蔽層、湿潤樹脂層およびカラー画像層の画像形成手段は、下記で説明するインクジェット記録方式であることが好ましい。インクジェット記録方式以外にも種々のアナログ印刷、たとえばオフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷などに適用することが可能である。
本発明におけるインクジェット記録方式は、インクジェットヘッドを駆動させてインク組成物の液滴を吐出し、該液滴を記録媒体に付着させて記録を行うインクジェット記録方法において、上述の各種インク組成物を用いて画像を形成するものである。
インク組成物を吐出する方法としては、以下に説明する方法が挙げられる。
第一の方法としては、静電吸引方式があり、この方式はノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印加し、ノズルからインクを液滴状で連続的に噴射させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する方式、またはインク滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して噴射させる方式である。
第二の方法としては、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式である。噴射したインク滴は噴射と同時に帯電させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する。
第三の方法は圧電素子(ピエゾ素子)を用いる方式であり、インク液に圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インク滴を噴射・記録させる方式である。
第四の方法は熱エネルギーの作用によりインク液を急激に体積膨張させる方式であり、インク液を印刷情報信号に従って微小電極で加熱起泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式である。
以上のいずれの方法も本実施形態のインクジェット記録方式に使用することができるが、高速印刷対応の観点からは、インク組成物を吐出する方法が、非加熱方式であることが好ましい。即ち、上記第一の方法、第二の方法又は第三の方法を採用することが好ましい。
本発明の画像形成方法では、画像記録手段が上述のいずれの方法である場合おいても、上記湿潤樹脂層の揮発成分残存量を所望の範囲に達成するために、白色隠蔽層上にクリアインク組成物を付着させる付着時及び/または付着後に、クリアインク組成物によって形成された湿潤樹脂層を乾燥する工程を行うことが好ましい。また、同様に、基材上にカラー画像層を直接形成する場合には、基材上にクリアインク組成物を付着させる付着時及び/または付着後に、クリアインク組成物によって形成された湿潤樹脂層を乾燥する工程を行うことが好ましい。
乾燥方法は特に制限されないが、例えば、基材に熱源を接触させて加熱する方法、赤外線やマイクロウェーブ(2,450MHz程度に極大波長を持つ電磁波)などを照射し、または熱風を吹き付けるなど基材に接触させずに加熱する方法などが挙げられる。加熱温度は基材の種類にもよるが、30〜80℃が好ましく、40〜60℃がより好ましい。熱をかけないでファンなどによって風を送る方法もよく、自然乾燥も可能である。
また、本発明の画像形成方法では、よりにじみを抑制するために、プロセスカラーインクによるカラー画像の記録後に、上記と同様の方法により、乾燥処理を行なうことも好ましい。
以下、インクジェット記録装置に適用した場合における本発明の画像記録方法について説明する。
インクジェット記録装置(以下、記録装置という)に適用した場合における本発明の画像形成方法は、基材上にプロセスカラーインク組成物によるカラー画像を形成する前に、該基材上のカラー画像が形成されるべき所定の領域にクリアインク組成物で湿潤樹脂層を形成する工程を含むものであればその具体的な態様は特に限定されない。特に好ましくは、湿潤樹脂層が記録される前に、前記所定領域に白色インク組成物によって白色隠蔽層が記録されていることが好ましい。具体的な手段としては、例えば、記録装置で予め白色隠蔽層を全面にあるいは所望の部分のみに頁単位で印刷し、その後、当該記録装置に再度通紙して湿潤樹脂層の形成とカラー画像層の形成を1回の通紙で行なっても良いし、あるいは白色隠蔽層、湿潤樹脂層およびカラー画像層の形成を1回の通紙で、即ち、基材を記録装置へ通紙してから前記記録装置外へ排紙するまでの間に行なっても良い。
基材上に直接、あるいは基材上の白色隠蔽層にクリアインク組成物を付着させて湿潤樹脂層を形成する際には、クリアインク組成物は、自然乾燥あるいは加熱手段により揮発成分残存量が所定の値となるまで乾燥される必要がある。インクジェット記録方式のような高速印刷を行なう記録装置に本発明の画像形成方法を適用させる場合には、該記録装置に基材を加熱する手段を配置し、クリアインク組成物の付着による湿潤樹脂層の形成途中(付着時)および/または形成後(付着後)に前記基材を加熱することが望ましい。加熱によって乾燥時間が短縮されるため、例えば、記録ヘッドを搭載したキャリッジを主走査させる際の移動時間や、基材の搬送時間等をクリアインク組成物による湿潤樹脂層の乾燥時間とすることが可能である。記録装置に基材を加熱する手段を設置する方法としては、例えば特開平10−86353号が挙げられる。
記録装置を用いて1回の通紙で基材上に湿潤樹脂層とカラー画像層とを形成する態様は、例えば、特開2000−141708号公報のように、複数の記録ヘッドを基材搬送方向に設置し、クリアインクを吐出する記録ヘッドを副走査方向の上流側に、プロセスカラーインクを吐出する記録ヘッドを下流側に配置することで達成できる。その際、記録装置に上述の加熱する手段を配置して基材搬送をクリアインク組成物の乾燥時間に当てることでカラー画像層を形成するまでに湿潤樹脂層を所望の湿潤状態とすることが可能である。一方、記録ヘッドを複数設置せずとも、記録ヘッドを上流側と下流側の2領域に分割して使用する態様も可能である。
また、他の例として、前記記録ヘッドを搭載して前記主走査方向へ往復移動するキャリッジを備えた記録装置を用い、キャリッジを主走査させる際の移動時間を利用して湿潤樹脂層をカラー画像層とを1回の通紙で形成することも可能である。
この場合、基材の搬送が停止された状態で、キャリッジの往復移動に伴って前記クリアインク組成物が基材上に形成された白色隠蔽層に対して吐出され、次いで、同様のキャリッジの往復移動に伴ってプロセスカラーインク組成物がクリアインク組成物により形成された湿潤樹脂層上に吐出される。その際、記録装置に上述の加熱する手段を配置して、キャリッジを主走査させる移動時間をクリアインク組成物の乾燥時間に当て、クリアインクを媒体に記録してから同じ画素位置にカラーインクを重ねて記録するまでの時間差として1主走査以上設けることもでき、カラー画像層を形成するまでに湿潤樹脂層を所望の湿潤状態とすることが可能である。主走査の間に休止時間を設けてもよい。
また、本発明の画像形成方法では、白色隠蔽層は被記録媒体の全面に形成される必要はなく、部分的に形成されていてもよい。また、クリアインク組成物による湿潤樹脂層は白色隠蔽層上のカラー画像が形成されるべき所定の領域に形成されていても、あるいは被記録媒体上の白色隠蔽層が形成されていない領域にも形成されていても良い。被記録媒体が非吸収性あるいは低吸収性であると、その上にプロセスカラーインク組成物を直接付着させても溶剤成分が吸収されず、にじみが生じる。このため、この非吸収性あるいは低吸収性の被記録媒体面上にも湿潤樹脂層を形成することで、プロセスカラーインク組成物を適度に吸収する中間層を形成することができ、にじみが抑制される。
[記録物]
本実施形態の記録物は、本発明の画像記録方法、好ましくは上記インクジェット記録方式を利用して記録が行われたものである。この記録物は、本発明の画像記録方法により得られるものであるので、カラー画像のにじみが抑制され、良質な画像を提供できる。
[画像記録装置]
本発明の画像記録装置は、基材上にプロセスカラーインク組成物によりカラー画像層を記録するカラー画像形成手段と、前記カラー画像層を記録する前に、前記基材上の前記カラー画像層を記録する所定領域に、樹脂を含有するクリアインク組成物により揮発成分残存量が5〜50質量%の湿潤樹脂層を記録する湿潤樹脂層形成手段と、を有することを特徴とする。また、本発明の画像記録装置は、前記湿潤樹脂層を記録する前に、前記基材上の前記カラー画像層を記録する所定領域に、白色インク組成物により白色隠蔽層を形成する白色隠蔽画像形成手段を備えていても良い。
かかる画像記録装置は、前記湿潤樹脂層形成手段と前記カラー画像層形成手段とが一体化された装置であってもよく、また、前記白色隠蔽層形成手段と前記湿潤樹脂層形成手段と前記カラー画像層形成手段とが一体化された装置であってもよい。また、それぞれが別体となった装置(例えば、白色隠蔽層をインクジェット記録装置で記録後、別体のインクジェット記録装置で湿潤樹脂層およびカラー画像層を形成する)であってもよい。
以下、本発明を実施例により更に説明するが、本発明は下記例に制限されない。
(1)白色インク組成物(インク1)の調製
白色色材として二酸化チタン(市販品「NanoTek (R) Slurry」(シーアイ化成株式会社製)) 66.6質量%、定着樹脂としてWBR−022U(商品名、大成ファインケミカル社製(ウレタン樹脂、固形分濃度30質量%)) 5質量%、浸透性有機溶剤としてプロピレングリコール 15質量%、1,2−ヘキサンジール 3質量%、水性溶剤としてトリエタノールアミン 0.5質量%、界面活性剤としてBYK−348(商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製(ポリシロキサン系界面活性剤)) 0.5質量%、イオン交換水 残量にて、白色インク組成物(インク1)を調整した。
尚、NanoTek (R) Slurryは、平均粒子径36nmの二酸化チタンを固形分として15質量%の割合で含むスラリーである。
(2)クリアインク組成物(インク2)の調整
樹脂エマルジョンとしてスチレンーアクリル酸共重合体((分子量55,000、酸価130、平均粒子径50nm、ガラス転移温度80℃) 5質量%、ワックスとしてAQUACER−515(商品名、ビックケミー・ジャパン(株)製) 0.5質量%、水溶性浸透溶剤として1,2−ヘキサンジオール 5質量%、界面活性剤としてBYK−348(商品名、ビックケミー・ジャパン(株)製のポリエーテル変性オルガノシロキサン)0.5質量%、水溶性溶剤として2−ピロリドン 5質量%、保湿剤としてプロピレングリコール 10質量%、純水 残量にて、クリアインク組成物(インク2)を調整した。
(3)印刷評価試験−1
評価には、インクジェットプリンタPX−A650(セイコーエプソン(株)製)を2台用いた。1台目は、白色インク組成物の出力用(白出力用)とし、他の1台は、クリアインク組成物およびプロセスカラーインク組成物の出力用(カラー出力用)とした。白出力用は、黒用インクカートリッジに白色インク組成物(インク1)を充填させ、これを通常黒用インクカートリッジが装着される部分に装着して使用した。クリアインク出力用は、上記で作成したインク2を使用し、2台目のインクジェットプリンタPX−A650の黒用インクカートリッジにインク2のインク組成物を充填させ、これを通常黒用インクカートリッジが装着される部分に装着して使用した。カラー出力用は、C(シアン)またはM(マゼンタ)、Y(イエロー)の色材をそれぞれ含む、上記の水系の純正のインクカートリッジをそのまま用いた。
また、非吸収性基材として、リンテック(株)製のPET100(A)PLシン11BLを用いた。PET100(A)PLシン11BLは、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムであり、インクジェット用塗工層のような吸収層をもたないフィルムである。該フィルムをA4サイズにカットして本実施例に用いた。
図1に上記で作成する印刷物の模式図を示す。
まず、上記非吸収性基材に、白出力用を用いて白色インク組成物(インク1)の記録を行ない、白色隠蔽層を形成した。図1(a)において、基材1上の文字部分が白色インク組成物により形成された白色隠蔽層2である。記録解像度は1440×720dpiとした。白色隠蔽層は、印刷後、揮発成分残存量が5質量%未満となるまで自然乾燥させた。尚、白色隠蔽層の揮発成分残存量(残存する揮発成分量)は、印刷面に記録されたインクの重量から算出した。
次いで、下記の方法によって白色隠蔽層上のカラー画像を形成すべき所定の領域、並びに、白色隠蔽層を形成していない文字の縁取り部領域に、クリアインク組成物(インク2)によって湿潤樹脂層3(図1(b)の点線部内)を形成し、当該湿潤樹脂層3上にカラー画像層4(図1(c)の斜線部)の形成を行なった。
以下、印刷評価試験−1における湿潤樹脂層およびカラー画像層を記録する方法の概略を図面に基づき説明する。
まず、インクジェットプリンタPX−A650(セイコーエプソン(株)製)において、基材1を固定するステージ11をプリントヘッド機構10に対向する位置に設置し、評価試験装置を作成した。図2に該評価試験装置の部分概略図を示す。ステージ11上には基材1の質量を測定可能な電子天秤12および基材1を加熱可能な加熱装置(ヒーター)13が設けられている。またヒーター13は温度センサ14によって制御されており、基材1を所定の温度に設定することが可能である。プリントヘッド機構10はインクを吐出する記録ヘッドとキャリッジ等を含んで構成されており、記録ヘッドは主走査方向xに沿って左右に走査される。尚、本評価においては、湿潤樹脂層の揮発成分残存量(残存する揮発成分量)は、印刷面に記録されたインクの重量から算出した。
印刷評価試験−1では、印刷中、基材1が60℃となるように設定した。
図2の左右方向(主走査方向X)の1方に主走査(パス)させ、基材1上にクリアインク組成物による湿潤樹脂層を形成する(第1記録)。続いて、当該パス(第1記録)後に前記クリアインクにより形成された湿潤樹脂層上にプロセスカラーインクのみ記録するパス(第2記録)を行う。上記印刷を可能とするため、ノズル列は、図3に示すように全ノズルを使用するとともに、パスごとにクリアインクとプロセスカラーインクとが印刷されるように印刷する。クリアインク用ノズル列(T(クリア))が(斜線部分)、クリアインク用ノズル列の主走査方向に並べてプロセスカラーインク用ノズル(C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)が配列される(ノズル列のノズルピッチ:180dpi、副走査方向の記録解像度:180dpi))。図3において、パス番号の下のノズルは当該パスにおいて印刷に使用されるノズルを示している。クリアインクとプロセスカラーインクは、図1の白色隠蔽層を形成した文字の部分に重ねて印刷を行なった。さらに、白色隠蔽層を形成していない文字の縁取り部にも、クリアインクとプロセスカラーインクの印刷を重ねて行なった。
ここで、第1記録から第2記録へキャリッジが走査移動する移動時間を保持することでプロセスカラーインクのにじみ具合を下記の評価を行ない判断した。結果を表1に示す。また、表1における時間はクリアインク吐出直後からの時間であり、揮発成分残存量は同じ評価を20回繰り返した際の平均値である。
揮発成分残存量は第1記録終了直後の基材1の質量と時間経過後の基材1の質量から求めた。尚、ヒーター13を停止させ基材1を加熱せず室温にて行なっても良い。室温の場合は、上記の移動時間保持は、より長時間となる。
Figure 0005655322
<カラー画像のにじみ評価>
得られたカラー画像に対し、にじみの評価を目視にて行なった。評価内容は以下のとおりである。カラー画像の評価は、白色隠蔽層を形成した領域にプロセスカラーインクを印刷した領域(文字の部分)と、白色隠蔽層を形成しない領域(文字の縁取り部)にプロセスカラーインクを印刷した領域とについて両方とも行なった。また、前述のシアンインクのノズル列にシアンインクに代えて黒色(K)の純正カートリッジのインクを充填させて前述と同様に印刷を行い、同様にカラー画像の評価を行なった。
A:カラー画像のにじみがまったく認められない。
B:カラー画像にわずかににじみ、特に黒色とその他のカラーとの境界付近にのみ認められる。
C:カラー画像のベタ部にムラやにじみが認められるが、実用レベルと判断できる。
D:カラー画像のにじみが激しく、画質に耐えられない。
湿潤樹脂層の揮発成分残存量が5〜50質量%の範囲でカラー画像を形成した場合に、にじみが抑制された良好な画質が得られた。特に、湿潤樹脂層の揮発成分残存量が10〜25質量%の時ににじみが顕著に抑制されていた。
これに対し、湿潤樹脂層の揮発成分残存量が5〜50質量%の範囲外では、カラー画像ににじみが発生した。また、揮発残存量が5%未満の白色隠蔽層を形成した領域(文字の部分)と、白色隠蔽層を形成していない領域(文字の縁取り部)とで、どちらも、カラー画像のにじみの程度が同じであったことから、湿潤樹脂層の揮発成分残存量を適切なものとすることで、カラー画像のにじみの抑制が可能であった。
尚、湿潤樹脂層を形成せずに、基材上および白色隠蔽層上に直接カラー画像層を形成した場合には、いずれもにじみが観測され、湿潤樹脂層の揮発成分残存量が5質量%未満の場合の評価と同程度であった。
(4)印刷評価試験−2
以下、印刷評価試験−2における画像記録方法の概略を図面に基づき説明する。
図4は印刷評価試験−2における画像記録方法の各工程を示す概略図である。
図4に示すように、本試験では、インクジェットプリンタPX−A650(セイコーエプソン(株)製)の記録ヘッド23に対向する搬送路であるプラテン部分に、基材1の幅よりも大きい幅長を有するヒーター22を設置し、記録時に基材1の背面が全領域に亘って60℃に加熱されるようにする。
記録ヘッド23には、副走査方向yに沿って複数のノズルが配列したノズル列23aが形成されており、各インクは副走査方向yに沿って同色が並ぶように配列されている。
基材1は、印刷評価試験−1と同様の記録媒体を用い、予め揮発成分残存量が5質量%未満の白色隠蔽層31(記録解像度は1440×720dpi)を部分的に形成したものである。
まず、基材1を副走査方向yに搬送し、ヒーター22を有するプラテン部分で停止させる。そして記録ヘッド23が搭載されたキャリッジを図4の左右方向(主走査方向X)の1方に主走査(パス)させ、基材1上のカラー画像を形成すべき領域(白色隠蔽層31上および白色隠蔽層31が形成されていない領域)にクリアインクによる湿潤樹脂層32を形成する(第1記録(図4(a))。
次いで、基材1を継続して停止させたまま、キャリッジの走査によってプロセスカラーインクによりカラー画像層33を記録するパス(第2記録)を行う(図4(b))。尚、本試験においてはカラー画像として文字部と縁取り部を記録している。文字部は白色隠蔽層を下地とし、縁取り部は白色隠蔽層を形成せずにカラー画像を形成する。
次に基材1を副走査方向yへ搬送して次の第3記録(図4(c))に備える。
以後、上記の第1記録と第2記録を繰り返し行い(第3記録(図4(c))および第4記録(図4(d)))、プリンタから基材1を排出する。
上記印刷評価試験−2の印刷方法では、上記印刷を可能とするため、図5に示すように、ノズル列23aは全ノズルが使用されるとともに、パスごとにクリアインクとプロセスカラーインクとが交互に印刷できるように印刷される。図5では、各パスで使用するノズル列を示し、各パスで使用するノズル列と媒体の副走査方向の相対位置を示している。クリアインク用ノズル列(T(クリア))の主走査方向に並んでプロセスカラーインク用ノズル列(C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー))が配列される(ノズル列のノズルピッチ:180dpi、副走査方向の記録解像度:180dpi))。そして、クリアインクのみ記録するパスと、当該パス後にプロセスカラーインクのみ記録するパスと、当該パス後の副走査方向Yへの媒体搬送を順番に繰り返す。図5では、ノズル列が図の下方へ移動(副走査)しているように示しているが、実際には、媒体を図の上方へ搬送(副走査)させている。
印刷評価試験−1の結果(表1)を参照して、クリアインクが記録されてから同じ画素にプロセスカラーインクが重ねて記録されるまでの時間を4secとなるようにするとともに、基材1の温度を60℃に設定して上記のような印刷を行なったところ、印刷物全面に渡ってにじみが少なく高精細な画像を形成することができた。
上記の結果から、記録装置に加熱手段を配置しクリアインクの乾燥時間を短縮させることで、プロセスカラーインクを重ねて記録する際に所望の揮発残存量に制御可能であることが判る。
なお、前述の印刷評価試験では、プロセスカラーインクとして、C、M、Yインク、あるいは、K、M、Yを使用したが、インクジェットプリンタが更に多くのノズル列を備えるプリンタであれば、C、M、Y、Kインクを同時に使用しても良い。さらに多色のカラーインクを使用しても良い。各カラーインクはいずれも、顔料として当該カラーインクの色の顔料を用いる以外は、前述の白色インクと同じ成分を用いたインク組成物が使用可能である。
また、クリアインクが記録されてから同じ画素にプロセスカラーインクが重ねて記録されるまでの時間は、パス間休止時間、パスに要する時間、媒体搬送に要する時間によって調節可能であるし、クリアインクを記録するパスから同じ画素にプロセスカラーインクが重ねて記録されるまでのパス数によっても調整可能である。また、温度を変えることで、所望の揮発残存量にするまでの時間が変ることも見出された。そこで、所定の温度に設定し、当該温度における所望の揮発残存量に達する時間になるように、クリアインクが記録されてから同じ画素にプロセスカラーインクが重ねて記録されるまでの時間を調節することで、好ましいカラー画像の記録が可能である。
1…基材、 10…ヘッド機構、 11…ステージ、 12…電子天秤、 13、22…加熱装置(ヒータ)、 14…温度センサ、 23…記録ヘッド、 23a…ノズル列、 2、31…白色隠蔽層、 3、32…湿潤樹脂層、 4、33…カラー画像層、 x…主走査方向、 y…副走査方向(媒体搬送方向)。

Claims (8)

  1. 基材上にプロセスカラーインク組成物によりカラー画像層を記録する工程と、
    前記カラー画像層を記録する前に、前記基材上の前記カラー画像層を記録する所定領域に、樹脂を含有するクリアインク組成物により記録した後、該組成物の揮発成分残存量が5〜50質量%になるまで時間を置く工程を有することを特徴とする、画像記録方法。
  2. 前記クリアーインク組成物を記録する工程の前に、前記基材上の少なくとも前記所定領域に、白色インク組成物によって白色隠蔽層が記録されており、
    前記クリアーインク組成物を記録する際の前記白色隠蔽層の揮発成分残存量が5質量%未満であることを特徴とする、請求項1記載の画像記録方法。
  3. 前記クリアーインク組成物を記録する工程が、前記白色隠蔽層上にクリアインク組成物を付着させる工程と、前記付着されたクリアインク組成物をその揮発成分残存量が5〜50質量%となるまで乾燥させる工程とを有することを特徴とする、請求項2記載の画像記録方法。
  4. 前記白色インク組成物が金属化合物または中空樹脂粒子を白色色材として含むことを特徴とする、請求項2または3に記載の画像記録方法。
  5. 前記白色インク組成物、前記クリアインク組成物および前記プロセスカラーインク組成物の主溶媒が水であることを特徴とする、請求項2〜4の何れか一項に記載の画像記録方法。
  6. 前記基材がインク非吸収性または低吸収性であることを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の画像記録方法。
  7. 前記クリアーインク組成物からなる樹脂層の揮発成分残存量が10〜25質量%になるまで時間をおくことを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載の画像記録方法。
  8. 基材上にプロセスカラーインク組成物によりカラー画像層を記録する画像記録手段と、
    前記カラー画像層を記録する前に、前記基材上の前記カラー画像層を記録する所定領域に、樹脂を含有するクリアインク組成物により記録した後、該組成物の揮発成分残存量が5〜50質量%になるまで時間を置く工程を有する手段と、を有することを特徴とする、画像記録装置。
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