JP5651537B2 - 液状封止材、それを用いた電子部品 - Google Patents
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Description
フリップチップ型の半導体装置は、バンプ電極を介して基板上の電極部と半導体素子とが接続された構造を持っている。この構造の半導体装置は、温度サイクル等の熱付加が加わった際に、エポキシ樹脂等の有機材料製の基板と、半導体素子と、の熱膨張係数の差によってバンプ電極に応力がかかり、バンプ電極にクラック等の不良が発生することが問題となっている。この不良発生を抑制するためにアンダーフィルと呼ばれる封止剤を用いて、半導体素子と基板との間のギャップを封止し、両者を互いに固定することによって、耐サーマルサイクル性を向上させることが広く行われている。
特許文献1〜3に記載の発明では、封止した部位の耐湿性および耐サーマルサイクル性を向上させる目的で、シリカフィラーのようなフィラーを、これらの文献に記載のエポキシ樹脂組成物および液状樹脂封止材に添加することは記載も示唆もされていない。
特に、特許文献2には、以下に示すように、液状樹脂封止材へのシリカフィラーの添加について否定的な記載がなされている。
『また、一般に樹脂硬化物の耐熱性、耐湿性、電気特性を向上させるためには、その架橋密度を高くしてガラス転移温度(Tg )を高くすることが知られている。ところがこのような効果を期待して(Tg )を高くしすぎると、樹脂硬化物の弾性率を高くする結果となる。応力は一般に熱膨張率と弾性率との積に比例すると考えられているため、シリカ等の無機質充填材を添加して熱膨張係数を小さくできたとしても、結果的には応力歪みの低下につながらず、ストレスによる樹脂と基材(半導体チップやポリイミドテープ)との密着性の低下や、硬化物にクラックが発生する問題が生じていた。』
このため、特許文献1〜3に記載のエポキシ樹脂組成物および液状樹脂封止材をアンダーフィルとして使用した場合、液状封止材によって封止した部位の耐湿性および耐サーマルサイクル性、特に耐サーマルサイクル性に劣ると考えられる。
TABやCOFの場合、柔軟性を有するフレキシブル配線基板を用いるため、温度サイクル等の熱付加が加わったとしても、基板と、半導体素子と、の熱膨張係数の差によってバンプ電極に応力がかかることはない。このため、TABやCOFの場合、シリカフィラーのようなフィラーを、液状樹脂封止樹脂組成物およびエポキシ樹脂組成物に添加し、バンプ電極を補強する必要がない。
しかしながら、液状封止材にシリカフィラーのようなフィラーを添加すると、該液状封止材の注入性が低下する傾向がある。
近年、半導体装置における狭ギャップ化の進行により、アンダーフィルとして用いられる液状封止材には注入性の向上が強く求められている。
本発明の液状封止材は、(D)成分に含まれるビニルトリメトキシシランと、(C)成分の金属錯体と、の相互作用により、(A)成分のエポキシ樹脂の付加反応(硬化)を促進する触媒成分として作用することにより、液状封止材の硬化物表面に皺が発生する等の外観不良が生じるのを防止できる。
本発明の電気部品は、封止部の耐湿性に優れているため、配線間の絶縁劣化や回路短絡がない。また、封止部の耐サーマルサイクル性に優れているため、温度サイクル等の熱付加が加わることによって、エポキシ樹脂等の有機材料製の基板と、半導体素子と、の熱膨張係数の差によってバンプ電極に応力がかかり、バンプ電極にクラック等の不良が発生することがない。
本発明の液状封止材は、以下に示す(A)〜(E)成分を必須成分として含有する。
(A)成分のエポキシ樹脂は、本発明の液状封止材の主剤をなす成分である。
(A)成分のエポキシ樹脂は、常温で液状であることが好ましいが、常温で固体のものであっても、他の液状のエポキシ樹脂又は希釈剤により希釈し、液状を示すようにして用いることができる。
(A)成分としてのエポキシ樹脂は、上述したエポキシ樹脂のうち、いずれか1種を使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
(B)成分の芳香族アミン硬化剤は、(A)成分のエポキシ樹脂の硬化剤である。
(B)成分の芳香族アミン硬化剤は、常温で液状であることが好ましいが、常温で固体のものであってもよい。常温で固体の場合は、加熱して液状化してから(A)成分のエポキシ樹脂と混合することが好ましい。
また、粘度が低い液状封止材を得ることができることから、3,5−ジエチル−2,4−ジアミノトルエン、3,5−ジエチル−2,6−ジアミノトルエンの併用が好ましい。
(C)成分の金属錯体は、(A)成分のエポキシ樹脂の硬化を、(D)成分のカップリング剤と協同して促進する触媒成分である。(C)成分の金属錯体は、硬化促進作用を有するものであれば特に限定されないが、所望の加熱温度における硬化促進作用を発現し、保存安定性が良好で、ポットライフ性にも優れるものが好ましい。
金属としてはアルミニウム、鉄、亜鉛、インジウム、マグネシウム等が挙げられるが、アルミニウムが好ましい。
配位子としては、アセチルアセトナート、ピリジン、トリフェニルホスフィン、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸などが挙げられるが、アセチルアセトナートが好ましい。特に好ましいのはアルミニウムのアセチルアセトナート錯体である。
勿論、(C)成分の金属錯体を二種以上併用することもできる。また、(C)成分の金属錯体の特性を損なわない限り、その他の金属錯体を併用することもできる。
(D)成分のカップリング剤は、(B)成分の芳香族アミン硬化剤による、(A)成分のエポキシ樹脂の付加反応(硬化)を促進する触媒成分として、(C)成分の金属錯体と協同して作用する。
(D)成分のカップリング剤の具体例としては、後述するシランカップリング剤や下記構造式で表されるケイ素化合物が挙げられる。
(D)成分のカップリング剤が、少なくともビニルトリメトシキシランを含有することにより、硬化物の表面での皺発生を防止できる理由を以下に説明する。
しかしながら、液状封止材に酸を含有させると、液状封止材の保存安定性が悪化するため、液状封止材を加熱した際に酸を発生し、硬化促進作用を発現する潜在性硬化触媒が好ましく使用される。
このような潜在性硬化触媒としては、シランカップリング剤と、金属錯体と、の組み合わせが、所望の加熱温度で酸を発生し、硬化促進作用を発現するので好ましく用いられる。
シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルメトキシシランが、エポキシ樹脂との親和性を有することから通常用いられるが、加水分解速度が比較的遅いため、液状封止材の表層と、内部で、は加水分解速度に差が生じる。具体的には、液状封止材の表層のほうが、該液状封止材の内部よりも加水分解速度が速い。この結果、エポキシ樹脂の硬化も、液状封止材の内部よりも表層のほうが速く進行し、エポキシ樹脂の硬化時には収縮反応を伴うため、液状封止材の硬化物表面に皺が発生することとなる。
この点については、特許文献4の段落番号[0007]〜[0011]、および、[0034]には、封止用樹脂組成物中に未反応のシラン系カップリング剤が存在すると、大気中の水分とシラン系カップリング剤とが反応してアルコールが発生し、このアルコールがボイドやクラックの原因となると記載されていることからも明らかである。
なお、本願発明の液状封止材では、(C)成分の金属錯体と、(D)成分のカップリング剤と、を組み合わせて、エポキシ樹脂の潜在性硬化触媒として使用するため、特許文献4の段落番号[0007]〜[0011]、および、[0034]に記載されているような問題を生じることがない。
ビニルトリメトシキシランの含有量が0.2wt%未満だと、硬化物の表面に皺が発生するおそれがある。一方、ビニルトリメトシキシランの含有量が2.0wt%超だと、硬化時においてボイドが発生するおそれがある。
なお、(D)成分のカップリング剤自体の配合割合の好適範囲については後述する。
(E)成分のシリカフィラーは、封止した部位の耐湿性および耐サーマルサイクル性、特に耐サーマルサイクル性を向上させる目的で液状封止材に添加される。
しかしながら、上述したように、液状封止材にシリカフィラーのようなフィラーを添加すると、該液状封止材の注入性が低下する傾向がある。
本発明の液状封止材では、(E)成分のシリカフィラーとして、シランカップリング剤で予め表面処理されたものを用いることで、液状封止材の注入性を低下させることなしに、封止した部位の耐湿性および耐サーマルサイクル性、特に耐サーマルサイクル性を向上させる。
なお、シリカフィラーの表面処理に用いるシランカップリング剤は、トリメトキシシラン化合物およびトリエトキシシラン化合物のうち一方のみ含有してもよく、これらの両方を含有してもよい。トリメトキシシラン化合物およびトリエトキシシラン化合物の具体例については後述する。
トリエトキシシラン化合物の具体例としては、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロピルアミン、ビニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランが例示される。
これらの中でも、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよび3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが、液状封止材の注入性の低下を抑制する効果、および、保存安定性に優れることから好ましい。
撹拌法は、予めシランカップリング剤とシリカフィラーとを撹拌装置に仕込み、適切な条件で撹拌する方法である、上記撹拌装置としては、ヘンシェルミキサー等の高速回転で撹拌・混合が可能なミキサーを用いることができるが、特に限定されるものではない。撹拌の条件も特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、シリカフィラーをヘンシェルミキサーに仕込み、1000rpmで3分間予備混合した後、シランカップリング剤を滴下し、さらに1000rpmで5分間本混合する条件を挙げることができる。なお、上記予備混合および本混合の回転速度や混合時間は、用いるシランカップリング剤の種類や、シリカフィラーおよびシランカップリング剤の配合内容や配合量により適切な条件を選択すればよい。
湿式法は、表面処理しようとするシリカフィラーの表面積に対して十分な量のシランカップリング剤を水または有機溶剤に溶解して、シランカップリング剤をなす化合物の分子を加水分解させることにより、表面処理溶液とする。この表面処理溶液の濃度は特に限定されるものではないが、例えば、約3質量%を挙げることができる。得られた表面処理溶液に対してシリカフィラーを添加し、スラリー状となるように撹拌する。撹拌によってシランカップリング剤およびシリカフィラーを十分反応させた後、濾過や遠心分離等の方法によりシリカフィラーを表面処理溶液から分離し、加熱乾燥する。
なお、上記撹拌法や湿式法以外にも、例えば、シリカフィラーを溶媒中に分散させてなるシリカフィラー分散液に直接シランカップリング剤を添加し、シリカフィラーの表面を改質するインテグラルブレンド法も好適に用いることができる。
ここで、シリカフィラーの形状は特に限定されず、粒状、粉末状、りん片等のいずれの形態であってもよい。なお、シリカフィラーの形状が粒状以外の場合、シリカフィラーの平均粒径とはシリカフィラーの平均最大径を意味する。
本発明の液状封止材は、上記(A)〜(E)成分以外の成分を必要に応じてさらに含有してもよい。
このような成分の具体例としては、レベリング剤、着色剤、イオントラップ剤、消泡剤、難燃剤などを配合することができる。各配合剤の種類、配合量は常法通りである。また、オキタセン、アクリレート、ビスマレイミドなどの熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、エラストマーなどを配合してもよい。
本発明の液状封止材は、上記(A)〜(E)成分、および、さらに必要に応じて配合するその他の配合剤を混合し、攪拌して調製される。混合攪拌は、ロールミルを用いて行うことができるが、勿論、これに限定されない。(A)成分のエポキシ樹脂が固形の場合には、加熱などにより液状化ないし流動化し混合することが好ましい。
各成分を同時に混合しても、一部成分を先に混合し、残り成分を後から混合するなど、適宜変更しても差支えない。
本発明の液状封止材を使用する場合、封止対象とする部位(封止対象とする面)に対して、本発明の液状封止材をディスペンサ、印刷機等を用いて塗布する。ここで、塗布時の温度は70〜120℃であることが好ましい。
その後、所定温度で所定時間、具体的には、140〜170℃で20分〜3時間加熱硬化させることによって封止が完了する。
表1に示す成分を、表1に示す量(質量部)で量り取り、一挙に混合した混合物を三本ロールミル混練し、均一な液状封止材を得た。ついで、該液状封止材を減圧下に置き、液状封止材中の気泡を除去し、評価用試料にした。
なお、表中の記号は、それぞれ以下を表わす。
エポキシ樹脂(A):ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量158)
芳香族アミン系硬化剤(B):4,4’−ジアミノ−3,3’ −ジエチルジフェニルメタン
金属錯体(C):アルミニウムトリスアセチルアセトナート
カップリング剤(D1):3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
カップリング剤(D2):ビニルトリメトキシシラン
シリカフィラー(E1):3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン表面処理シリカフィラー(平均粒径2μm)
シリカフィラー(E2):3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン表面処理シリカフィラー(平均粒径2μm)
シリカフィラー(E3):表面未処理シリカフィラー(平均粒径2μm)
150±2℃の熱板上に評価用試料を約5mmφの大きさに滴下し、糸引きがなくなるまでの時間を、ストップウォッチにより測定した。
ガラス基板を50μmのギャップを空けて張り合わせ、該ギャップの中に評価用試料を毛管作用により注入し、20mmまでの到達時間を測定する。
評価用試料の約5gを金属ケース(50mmφ)に量り取り、150℃で90分間加熱し、硬化させて、試験片を作製した。該試験片の硬化状態(皺、ボイド)を目視観察した。
また、ガラス基板を50μmのギャップを空けて張り合わせ、該ギャップの中に評価用試料を毛管作用により注入し、その後、150℃で90分間加熱し硬化させ、試験片を作製した。該試験片の注入部およびフィレット部の硬化状態を目視観察し、ボイドおよび皺の有無を確認した。いずれにおいても皺、ボイドがない場合を、外観良好と見て合格(○)とし、いずれか一方に皺、ボイドがある場合を、外観不良と見て不合格(×)とした。
実施例1と比較例2については、また、ステンレス板に厚さ約250μmになるように評価用試料を塗布し、165℃で90分間加熱し、硬化させて試験片の硬化状態(ワレ・フクレ)を観察した。図1は実施例1の試験片(液状封止材の硬化物)の外観を示した写真であり、図2は比較例2の試験片(液状封止材の硬化物)の外観を示した写真である。
FR−4基板(基板サイズ52.5mm×30.0mm×厚さ0.73mm)上に、PIパッシベーションダイ(ダイサイズ10mm×10mm×厚さ0.73mm)、Sn5Pb95バンプ(バンプピッチ175μm)を形成させたテストエレメントグループ(TEG)(株式会社日立超LSIシステムズ製)を使用し、上記の手順で得られた液状封止材をダイ部分に注入し、165℃で120分間加熱し液状封止材を硬化させることによって、封止した試験片を260℃リフローを1回、JEDEC Lv3、260℃リフロー3回かけた後、サーマルサイクル(−55℃/30min.⇔125℃/30min.)を実施した後、超音波探傷装置を用いて観察し、内部クラック及び界面剥離の有無、抵抗値変化を調べた。内部クラック及び界面剥離がなく、抵抗値変化が10%未満であった場合を合格とし、内部クラック及び界面剥離の面積がダイ面積の1%以上か、または、抵抗値変化が10%以上の場合を不合格とし、1000サイクルまで実施した。
調製後の評価用試料の粘度を回転粘度計(50rpm)を用いて測定した後、該評価用試料を密閉容器に入れて25℃、湿度50%の環境にて24時間保管した時点における粘度を同様の手順で測定し、調製直後の粘度に対する倍率を算出した。
Claims (8)
- (A)エポキシ樹脂、(B)芳香族アミン硬化剤、(C)金属錯体、(D)カップリング剤、および(E)シリカフィラーを含む液状封止材であって、前記(C)成分の金属錯体が、アルミニウムトリアセチルアセトネートおよびアルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネートからなる群から選ばれる少なくとも一種であり、前記(D)成分のカップリング剤が少なくともビニルトリメトキシシランを含有し、前記(E)成分のシリカフィラーがシランカップリング剤にて予め表面処理されていることを特徴とする液状封止材。
- 前記(E)成分のシリカフィラーが、トリメトキシシラン化合物およびトリエトキシシラン化合物のうち、少なくとも一方を含むシランカップリング剤にて予め表面処理されていることを特徴とする請求項1に記載の液状封止材。
- 前記(E)成分のシリカフィラーが、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよび3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランのうち、少なくとも一方を含むシランカップリング剤にて予め表面処理されていることを特徴とする請求項2に記載の液状封止材。
- 前記(E)成分のシリカフィラーの平均粒径が0.05〜10μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液状封止材。
- 前記(E)成分のシリカフィラーの含有量が40〜80wt%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液状封止材。
- 前記(B)成分の芳香族アミン硬化剤の割合が、前記(A)成分のエポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.7〜1.5当量であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液状封止材。
- 前記(D)成分のカップリング剤としてのビニルトリメトキシシランの含有量が0.2〜2.0wt%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液状封止材。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の液状封止材を用いて封止部位を封止してなる電子部品。
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