以下、図面を参照して実施形態を詳細に説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
{1. 実施形態}
図1は、実施形態に係る医療用診療装置100の全体を示す外観図である。また、図2は、医療用診療装置100の構成を示すブロック図である。図1,2に示したように、医療用診療装置100は、術者および患者が使用する診療台10と、診療台10を構成する各要素の駆動制御を行う制御部9とを備えている。
{診療台の構成}
診療台10は、患者シート1(シート)と、スピットン2と、トレーテーブル3と、診療器具4と、フートコントローラ5、トレーテーブル3に搭載されたモニター6(表示部)と、無影灯7(照明装置)と、撮影部8とを備えている。医療用診療装置100は、患者シート1に着座した患者に対して、診療器具4を使用して歯科診療を行うのに適した構成を備えている。なお、診療行為には、診察行為および治療行為の双方が含まれる。
患者シート1は、患者の頭部を支持するヘッドレスト1aと、主に患者の背中を支持する背凭れ1bと、患者の臀部を支持する座面シート1cと、患者の両足が載置される足置き台1dとで構成されている。ヘッドレスト1a、背凭れ1b、座面シート1c、足置き台1dは、シート駆動部1Mによって駆動される可動部として構成されている。具体的にシート駆動部1Mは、ヘッドレスト1a、背凭れ1b、座面シート1cのそれぞれを、診療状況に合わせて最適な位置に変位させる。
例えば、患者シート1に対して患者が着座したり離席したりさせる際には、シート駆動部1Mは、背凭れ1bを水平面に対して略垂直に立ち上げる。これにより、患者シート1に対して患者が座ったり、または、患者シート1から立ち上がったりしやすくなる。また、診療中においては、患者シート1のシート駆動部1Mは、背凭れ1b、座面シート1c、足置き台1dを略水平に延びるように配置することによって、患者シート1上で患者を仰臥姿勢にて支持する。
図1に戻って、スピットン2は、患者シート1の側部に備え付けられている。患者シート1は、排水口が形成されたスピットン鉢21、コップが載置されるコップ台22、コップに吸水するための給水栓等23を備えている。
後述するように、スピットン2には、スピットン駆動部2Mが設けられている。スピットン駆動部2Mは、スピットン鉢21を上下に移動させる昇降機構21Mと、スピットン鉢21を鉛直方向に延びる所定の回転軸周りに回動させる回動機構22Mを備えている。このようなスピットン駆動部2Mの作用により、患者シート1に着座している患者に対して、スピットン鉢21を適切な位置に接近させることが可能となっている。
トレーテーブル3は、患者シート1から延びるアームに接続されており、患者シート1に対して手動で回動移動できるように構成されている。トレーテーブル3は、ハンドピースである診療器具4を術者が取り上げることができるように保持する診療器具ホルダーを備えている。
診療器具4は、例えばエアータービンハンドピース、マイクロモータハンドピース等の切削工具やスケーラ、スリーウエイシリンジ、バキュームシリンジ等で構成される。なお、診療器具4は、これらに限定されるものではなく、口腔カメラや光重合照射器(いずれも図示せず)等であってもよい。また、診療器具4は、ミラーまたは注射器等、駆動部を持たない器具で構成されてもよい。
フートコントローラ5は、診療を行う術者が、診療台10を構成する要素(患者シート1、スピットン2または診療器具4等)に対して、いくつかの特定の動作を行うように操作制御するための操作部として機能する。フートコントローラ5には、特定の操作機能が割り当てられる、ペダル、スイッチ等の複数の操作入力部が設けられている。フートコントローラ5の詳細な機能については後述する。
モニター6は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)モニター等で構成される。モニター6には、医療用診療装置100においては、後述する制御部9による画像認識によって、患者シート1に着座する患者、および該患者に処置を行う術者を特定することが可能となっている。モニター6には、この画像認識によって特定された患者または術者に関する各種情報が表示される。
無影灯7は、診療時に患者シート1に支持された患者の口腔部に光を照射する。無影灯7は関節アームに取り付けられている。術者は、関節アームを屈曲させることによって、無影灯7を上下または左右に移動させて適当な位置に配置させることができる。
撮影部8は、上記無影灯7に取り付けられている。撮影部8は、無影灯7で明るく照らされた患者の口腔部を撮影し、適当な画像処理を行って、モニター6に該口腔画像を表示させる。このような口腔画像を、例えばモニター6に表示することで、診療時に術者がモニター6を見ながら患者に症状を説明すること等ができる。また、診療中、術者が処置する様子を撮影してモニター6に表示されるようにしてもよい。また、撮影部8は、無影灯7の近傍の関節アームに取り付けられていても良い。
また撮影部8は、患者または術者の顔貌全体を含むように撮影して、患者または術者の顔画像データを制御部9に送信する機能を備えている。後述するように、制御部9に送信された患者または術者の顔画像データは、医療用診療装置100が、患者または術者を識別(特定)するために使用される。なお、撮影部8は、単一のカメラで構成されていてもよいが、患者を撮影するカメラと術者を撮影するためのカメラとを個別に備えていてもよい。また、撮影部8は、患者の口腔部を撮影するカメラと、患者または術者の顔貌を撮影するカメラとを個別に備えていてもよい。
{制御部9}
制御部9は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えた一般的なコンピュータとして構成されている。制御部9は、診療台10を構成する各要素の動作を制御する機能を備えている。制御部9は、CPUが所定のプログラムにしたがって動作することにより、患者および術者の識別処理を行ったり、診療台10を構成する要素の駆動部を制御したりする。
図2に示したように、制御部9は、画像処理部91、認識部92、駆動条件設定部93、駆動制御部94(シート駆動制御部941、スピットン駆動制御部942、診療器具駆動制御部943を含む。)として機能する。また、制御部9は、判定部96、表示制御部97、照明制御部98、撮影制御部99としても機能する。これらの機能は、制御部9が備えるCPUが所定のプログラムに従って動作することにより実現される。なお、これらの機能の一部または全部を、専用回路として構成することにより、ハードウェア的に実現されるようにしてもよい。
制御部9は、ハードディスク等の記録媒体を有する記憶部95に接続されている。なお、制御部9と記憶部95とは、LAN(Local Area Network)やイントラネット、インターネット等の各種ネットワークを介して接続される。なお、記憶部95にサーバーとしての機能を持たせることにより、医療用診療装置100で使用される各種データを、記憶部95において集中的に管理することが可能となる。これにより、制御部9および制御部9以外の他の端末(図示省略)との間で、記憶部95が保持するデータを共有することが容易となる。したがって、データ取得やデータ保存の自由度を高めることができる。もちろん、記憶部95は、制御部9の内部に備え付けられていてもよい。
画像処理部91は、撮影部8から送られてきた患者または術者の顔貌を含む画像に対して、コントラスト調整や特徴部の抽出等、画像認識のための各種画像処理を行う。画像処理部91による画像処理で取得された顔画像処理データは、認識部92に渡される。
認識部92は、記憶部95に格納された個人別情報951から、該顔画像処理データに一致するデータを検索することによって、一致するデータが存在するかどうか照合する。個人別情報951は、複数の患者または複数の術者に関連する種々の情報をまとめられた、情報の集合(データベース)となっている。認識部92は、画像処理部91によって取得された顔画像処理データに基づいて、診療台10を使用する患者または術者の特定を行う。したがって、本実施形態では、撮影部8によって取得される患者または術者の顔画像データが、個人を特定するための識別情報として利用される。
個人別情報951は、例えば複数の患者についての顔画像データと、顔画像処理データと、カルテ情報とを、患者毎に関連付けて保持している。
患者の顔画像データは、予め患者の顔貌を撮影部8またはその他の撮影手段で撮影して取得された顔画像を表すデータである。また、顔画像処理データは、顔画像データを画像処理部91が画像処理することにより得られるデータである。
カルテ情報は、患者を診療する上で必要とされる診療情報に相当する。具体的に、カルテ情報には、氏名、年齢、性別、住所、職業、家族構成等の他、病名および主要症状、治療方法、診療年月日、通院歴等の一般的なカルテに記載される情報で構成される。ただし、カルテ情報は、これらの情報のうちの一部のみで構成されていてもよいし、その他の情報が含まれていてもよい。
また、個人別情報951は、術者に関する登録情報として、複数の術者についての、顔画像データと、顔画像処理データとを、術者毎に関連付けて保持している。
術者の顔画像データは、上述の患者の顔画像データと同様に、撮影部8またはその他の撮影手段によって撮影された術者の顔画像を表すデータである。また、術者の顔画像処理データは、患者の顔画像処理データと同様に、画像処理部91が顔画像データを画像処理して得られるデータである。
認識部92は、個人別情報951に保持されている複数の術者の顔画像処理データの中から、実際に撮影部8で撮影された術者の顔画像データから得られた顔画像処理データを検索する。これにより、医療用診療装置100を使用する術者(患者を処置する者、施術者)を特定する。また、術者の個人情報が個人別情報951に登録されていてもよい。術者の個人情報としては、例えば、術者の氏名等、複数の術者の中から一術者を特定することのできる情報が該当する。術者の個人情報は、複数の術者の各々に割り当てられる識別コード等であってもよい。
医療用診療装置100においては、診療台10の各要素の駆動条件が、患者毎または術者毎に、個人別情報951に登録されている。そして認識部92により識別された患者または術者に適合する駆動条件が、個人別情報951から読み出される。駆動条件設定部93は、個人別情報951から読み出された駆動条件を、各要素の駆動条件として設定する。この設定された駆動条件に基づいて、医療用診療装置100の各駆動部が動作することとなる。
判定部96は、検知部1Sから送信される検知信号に基づき、患者シート1に対して、患者が着席または離席したかどうかを判定する。検知部1Sは、患者が患者シート1に着座したことを検知するために、患者シート1に設けられた光学センサまたは圧力センサ等で構成される。
なお、検知部1Sは、その他の構成をとることも可能である。例えば、撮影部8を検知部1Sとして機能させることも可能である。つまり撮影部8によって患者シート1の所定位置を撮影し、該所定位置に患者が着座したことを画像処理により検知するようにしてもよい。判定部96は、患者が着席したと判定したときは、着席信号を出力し、患者が離席したと判定したときは離席信号を出力する。本実施形態では、着席信号または離席信号は、表示制御部97と照明制御部98と撮影制御部99とに出力される。また、着席信号または離席信号は、撮影部8によらず、トレーテーブル3や無影灯7又は関節アームに取り付けられる光学的センサ等を使用した近接センサによってもよい。
表示制御部97は、モニター6の表示動作を制御する機能を備えている。具体的に、表示制御部97は、認識部92が識別結果に基づいて取得した患者に関する情報(顔画像情報、カルテ情報等)を表す画像信号を、モニター6に送信する。これにより、モニター6において患者の顔画像やカルテ情報が表示される。
また表示制御部97は、電源制御部971としても機能する。電源制御部971は、モニター6に備えられる電源部6Pの動作を制御する機能を有する。電源部6Pは、モニター6の各部に電力供給する。本実施形態では、電源制御部971は、判定部96から送信される着席信号または離席信号に基づき、電源部6Pに対して電力供給を開始させたり、停止させたりする。
本実施形態では、電源制御部971は、判定部96から着席信号を受け取ると、電源部6Pに向けて電力供給を開始させる制御信号を出力する。これにより、電源部6Pから各部に電力が供給され、モニター6において各種情報の表示が可能な状態となる。この状態で表示制御部97が表示用のデータを送信することで、モニター6に各種情報が表示されることとなる。
また、電源制御部971は、判定部96から離席信号を受け取ると、電源部6Pに向けて電力供給を停止させる制御信号を出力する。これにより、電源部6Pからの電源供給が停止され、モニター6におけるカルテ情報の表示が停止される。
なお、電源制御部971は、モニター6における各種情報の表示を停止させるために、必ずしも電源部6Pによる電力供給の全てを停止させる必要はない。したがって、各種情報の表示に必要な部分の電源のみを切るようにしてもよい。つまり、電源制御部971によって、モニター6における表示を停止させることができる限りにおいて、モニター6の一部の要素に対する電力供給のみを停止させればよい。例えば、モニター6が待機状態(省電力モード)に移行する電源管理機能を備えているような場合、該省電力モードに移行させることで、各種情報の表示を停止させることができる。
上記実施形態では、電源制御部971が電源部6Pを制御することによって、電源の投入、または、切断を行い、モニター6における各種情報の表示を開始させたり、または、停止させたりしている。しかしながら、他の方法によって、各種表示を停止するようにしてもよい。例えば判定部96により患者が離席したと判定されたときに、表示制御部97がモニター6における表示画面の内容を変更することによって、各種情報の表示を停止するにしてもよい。具体的には、画面に表示された画像の一部または全部の内容を、別の画面に切り替えるようにしてもよい。このとき、例えばカルテ情報の表示を停止させることによって、患者の個人情報を他者に見られることを抑制することができる。したがって、個人情報の漏洩を抑制することができる。
また、本実施形態では、判定部96から送信される着席信号に基づき、撮影制御部99の制御信号が撮影部8に送信され、患者シート1上の患者の顔貌が撮影される。このようにして取得された患者の顔画像データが画像処理部91にて処理され、顔画像処理データが取得される。そして認識部92が、該顔画像処理データに基づいて、患者シート1に着席した患者を識別する。つまり認識部92は、判定部96が送信する着席信号をトリガーとして、患者の識別を行うこととなる。
医療用診療装置100においては、図2に示したように、診療台10を構成する要素の駆動部として、シート駆動部1M、スピットン駆動部2M、診療器具駆動部4Mが設けられている。そして制御部9は、これらの駆動部を制御する駆動制御部94として、シート駆動制御部941、スピットン駆動制御部942、および、診療器具駆動制御部943を備えている。駆動制御部94は、設定された駆動条件に基づいて、診療台10を構成する要素の駆動部を制御する。本実施形態では、患者シート1の駆動条件、スピットン2の駆動条件、および、診療器具4の駆動条件が設定されている。これらの駆動条件は、術者毎、患者毎、または、患者および術者の組合せ毎に規定されており、個人別情報951として記憶部95に格納されている。本実施形態では、認識部92による患者と術者との識別結果に基づいて、患者と術者とに対応した駆動条件が個人別情報951から読み出される。この読み出された駆動条件に基づいて、駆動制御部942が各駆動部を制御する。ここで、本実施形態で想定される複数の駆動条件について詳細に説明する。
{患者シート1の駆動条件}
1.ポジショニング
患者シート1の駆動条件の1つとして、患者シート1の各部の基本位置への位置付け(ポジショニング)がある。このポジショニングの設定に基づき、患者シート1のヘッドレスト1a、背凭れ1b、座面シート1c、足置き台1dが、診療状況に応じて、予め定められた基本位置に位置付けされる。
図3、図4および図5は、診療状況に応じた患者シート1の各部のポジショニングを説明するための患者シート1の側面図である。なお、図3は、歯科治療のために患者を仰向け姿勢にするとき(治療時)の患者シート1の側面図である。図4は、患者がスピットン2を使用するとき(スピットン使用時)の患者シート1の側面図である。図5は、患者が患者シート1から離席するとき(離席時)の患者シート1の側面図である。
図3、4および図5に示したように、本実施形態では、患者シート1に取りけられた駆動機構(シート駆動部1M)によって、ヘッドレスト1a、背凭れ1b、座面シート1c、足置き台1dをそれぞれ変位させることができる。
例えば、座面シート1cは、患者シート1に内蔵された昇降機構によって、高さ(H)を変更することが可能となっている。これにより、患者の臀部を支える座面シート1cの上面の高さ位置を所定の範囲内で変更することができる。座面シート1cを昇降させることで、患者シート1全体を上下に変位させることが可能となっている。
また、患者シート1は、背凭れ1bを、座面シート1cとの接続部を支点として、鉛直方向上側に起こしたり、鉛直方向下側に倒したりする傾動機構を備えている。この傾動機構により、水平線HLに対する背凭れ1bの傾斜角度(J)が調整することが可能となっている。
また、患者シート1は、足置き台1dを、座面シート1cとの接続部を支点として、鉛直方向上側に起こしたり、鉛直方向下側に倒したりする傾動機構を備えている。この傾動機構により、水平線HLに対する足置き台1dの傾斜角度(K)を調整することが可能となっている。
また、患者シート1は、ヘッドレスト1aを、背凭れ1bとの接続部を支点として鉛直方向上側に起こしたり、鉛直方向下側に倒したりする傾動機構を備えている。この傾動機構により、背凭れ1bに対するヘッドレスト1aの傾斜角度(L)を調整することが可能となっている。
図2に示したように、シート駆動部1Mは、駆動制御部94のシート駆動制御部941により制御される。患者シート1の各部を駆動するシート駆動部1Mの構成については、従来の公知技術やこれに類似する各種技術を採用することが可能である。このため、ここでは、シート駆動部1Mの詳細な構造の説明は省略する。
例えば、図3に示す歯科治療時において、患者頭部の最適位置は、術者の体格や術者の好みによって異なる場合がある。患者頭部の位置は、主に、ヘッドレスト1aの傾斜角度(L)を変更したり、座面シート1cの高さ(H)を変更したりすることで調整することができる。本実施形態では、患者頭部の位置を治療に適した位置に配置するため、ヘッドレスト1aの傾斜角度(L)や座面シート1cの高さ(H)等が、駆動条件として術者毎に設定される。これにより、医療用診療装置100を使用する術者に応じて、術者の診療しやすい位置(診療ポジション)に患者頭部を位置付けすることが可能となる。
また、患者頭部の大きさや、患者が口を開けたときの口の大きさによっても、術者にとっての患者頭部の最適位置が異なる場合がある。このような点を考慮する場合には、治療時におけるヘッドレスト1aの傾斜角度(L)や座面シート1cの高さ(H)等が、駆動条件として術者と患者の組合せ毎に設定される。
また図5に示した離席時における患者シート1の各部のポジショニングは、主に患者に応じて設定されることが好ましい。例えば、低身長または低体力の者(子供や老人等)が患者である場合、若者が患者である場合よりも、座面シート1cの高さ位置は低くなるように位置付けされることが望まれる。このように、患者の導入時(または離席時)における座面シート1cの位置を患者毎に設定することで、各患者が患者シート1に安全に着座することが可能となる。もちろん、導入時における座面シート1c以外の各部のポジショニングも、患者毎に適宜設定されてもよい。
2.変位速度
患者シート1の各部の変位速度は、患者毎または術者毎に設定されることが好ましい。例えば、患者が老人や子供である場合、安全の面から、若者が患者である場合よりも、背凭れ1bの傾動速度や座面シート1cの昇降速度が遅くなるように設定されることが望ましい場合がある。また、術者によっても患者シート1のポジショニング調整を行う際に、好みの変位速度が異なる場合がある。したがって、本実施形態では、患者シート1の各部の変位速度が、駆動条件として患者毎または術者毎に設定される。これにより、患者の姿勢を安全に変更させることができる。患者シート1の各部の変位速度の設定内容は、患者毎または術者毎に、個人別情報951として記憶部95に格納される。もちろん、患者と術者との組合せ毎に、患者シート1の各部の変位速度が設定されるようにしてもよい。
図6は、患者と術者との組合せに応じた患者シート1の駆動条件の設定内容を示す図である。図6では、患者(患者X、患者Y、患者X)と術者(術者A、術者B、術者C)の組合せ毎の駆動条件を図示している。なお、術者A,B,Cの体格は、術者Aの体格が比較的大きく、術者Bが中程度、術者Cが比較的小さいものとする。また、患者Xは若者、患者Yは子供、患者Zは老人であるものとする。図6に示した駆動条件の設定内容は、個人別情報951として記憶部95に格納される。
図6に示した例では、背凭れ1bの傾動速度は、患者の体力等に合わせて設定される。具体的に、若者である患者Xでは「高速」に設定され、子供または老人である患者Y,Zでは「低速」に設定される。また、離席時の座面高さ(座面シート1cの上面の高さ)は、患者の体格等に合わせて設定される。具体的に、患者Xでは「高」に設定され、患者Y,Zでは「低」に設定される。また、治療時の座面高さは、術者A,B,Cの体格に合わせて設定されており、小柄な術者Aで「低」、中程度の術者Bで「中」、大柄な術者Cで「高」に設定される。
このように、患者と術者とに応じて各要素の駆動条件を設定できるようにすることで、術者および患者の双方に適合するように、診療台10の各駆動部を駆動させることができる。これにより、術者が診療を円滑に行うことが可能となる。
{スピットン2の駆動条件}
患者シート1の場合と同様に、スピットン2の位置についても、患者毎に最適な位置が異なる。例えば、患者がうがい等をするときのスピットン鉢21の最適な高さ位置は、患者の身長(または座高)等に応じて異なる。また、患者にとってうがいのしやすい場所も、患者毎に異なる場合がある。そこで、スピットン鉢21の高さ位置、および、水平方向の位置(水平位置)を患者毎に最適化することが望ましい。これにより、患者がスピットン2を使い易くなるとともに、痰や唾、口腔内をゆすいだ後の汚水等の排液物が、スピットン鉢21の周囲にこぼれにくくすることができる。
本実施形態では、スピットン使用時における患者シート1の各部の変位に連動して、スピットン鉢21が所定の高さ位置および所定の水平位置に移動される。この所定の高さ位置および所定の水平位置は、患者毎に、個人別情報951として記憶部95に格納されている。ここで、スピットン鉢21を所定の高さ位置および所定の水平位置へ移動させるスピットン駆動部2Mについて詳細に説明する。
図7は、スピットン2の内部構成を示す断面図である。図7では、スピットン鉢21が昇降する前の状態と、上昇させた後の状態とを、それぞれ並べて図示している。また、図8は、スピットン2の平面図である。図8では、スピットン鉢21を旋回させる前の状態と、旋回させた後の状態とをそれぞれ並べて示している。
既に述べたように、スピットン2は、スピットン駆動部2Mとして、昇降機構21Mを備えている。図7に示したように、昇降機構21Mは、駆動部としてのモータ210に接続されたボールネジ211を備えている。スピットン鉢21は、該ボールネジに螺合するナット部材212に固定されている。ボールネジ211が正回転または逆回転することによって、ナット部材212が上昇移動または下降移動する。このナット部材212の上下移動に連動して、スピットン鉢21が上下に昇降する。このような昇降機構21Mにより、スピットン鉢21の高さ位置が変更される。
また、スピットン2は、スピットン駆動部2Mとして、回動機構22Mを備えている。回動機構22Mは、スピットン鉢21を回動させるためのモータ220を備えている。該モータ220からは、動力を伝達するための出力軸221が鉛直方向上側に延びている。この出力軸221は、水平方向に広がる回動盤222に接続されている。また、スピットン鉢21の底部からは、排水管21aが鉛直方向下側に延びている。なお、排水管21aは、装置外の排水系に通じる図示しない排水ホースに接続されている。この排水管21aは、回動盤222の偏心位置(出力軸221の回転中心から離れた位置)を貫通しているとともに、回動盤222に連結固定されている。
モータ220の駆動により出力軸221が正回転(または逆回転)することにより、回動盤222が出力軸221周りに回動する。この回動盤222の回動に伴って、排水管21aが回動し、スピットン鉢21が回動する。したがって、図7に示したように、スピットン鉢21の高さ位置を調節した上で、図8に示したように、スピットン鉢21を患者側(患者シート1側)に接近させるように回動させることで、患者がうがいをしやすくなる。また、周囲が汚染されることを抑制できるため、衛生面でも有利である。
なお、上記のスピットン駆動部2Mの構成は一例である。したがって、その他の構成によって、スピットン鉢21を所定位置に移動させるようにしてもよい。
{フートコントローラ5の操作入力部に対する機能割り当て}
上述したように、術者は患者シート1の各部のポジションを切り換えたり、診療器具4を駆動したりする操作を、フートコントローラ5を介して行うことができる。このフートコントローラ5には、複数の操作入力部が設けられており、複数の入力操作が可能に構成されている。それぞれの入力操作には、診療台10を構成する要素に対して、特定の動作を行わせる機能が割り当てられる。この機能の割り当て方は、術者毎に変更することが可能である。術者毎が診療台10を構成する各要素を操作しやすくなるため、診療行為を円滑に行うことが可能となる。ここで、フートコントローラ5の構成について、図9および図10を参照しつつ説明する。
図9は、フートコントローラ5の外観図である。また図10は、フートコントローラ5の操作方法を説明するための概念図である。図9に示すように、フートコントローラ5は、操作入力部として、ペダル5aと、スイッチ5b,5c,5d,5e,5fとを備えている。
ペダル5aは、フートコントローラ5の中央部下側に設けられている。ペダル5aは、足で押し込むことにより、1種類の入力操作ができるように構成されている(入力操作1)。スイッチ5bは、フートコントローラ5の中央部であって、ペダル5aの上側に設けられている。スイッチ5bは、図10に示したように4方向のそれぞれに押し込まれることで、4種類の入力操作が行えるように構成されている(入力操作2〜入力操作5)。
またスイッチ5bの両側には、スイッチ5c,5dが設けられている。スイッチ5c,5dは、その中央部を支点として上下方向に押し込むことが可能となっており、それぞれ2種類の入力操作が行えるように構成されている(入力操作6,7、入力操作8,9)。また、ペダル5aの左右の両側には、スイッチ5e,5fが設けられている。スイッチ5e,5fは、その中央部を支点として左右方向に押し込むことが可能となっており、それぞれ2種類の入力操作が行えるように構成されている(入力操作10,11、入力操作12,13)。
以上のように、本実施形態に係るフートコントローラ5は、計13種類(入力操作1〜13)の入力操作を行うことができるように構成されている。ただし、フートコントローラ5において、スイッチ類(ペダルを含む。)を増設したり、一部を省略したりしてもよい。また、スイッチ類の具体的な操作方法も、上述したような物理的に押し込む操作方法に限定されるものではない。例えば、電気センサや光学センサ等で構成されるタッチセンサーを利用して、接触のみで入力操作が完結するようにしてもよい。
図11は、フートコントローラ5に対する入力操作1〜13に割り当てられる機能を具体的に示す図である。なお、図11では、術者A向けと術者B向けの内容を示している。これらの内容は、個人別情報951として記憶部95に格納される。図11に示したように、入力操作1〜入力操作13のそれぞれに対して、診療台10を構成する各要素を駆動する駆動部に、特定の動作を実行させる機能が割り当てられる。
例えば、術者向けAの内容では、入力操作1に「各診療器具の駆動のON/OFF切換、速度調整」という機能が割り当てられている。つまり、入力操作1(ペダル5aの踏み込み)が行われることで、診療器具駆動部4Mが駆動される。これにより、診療器具4を動作させたり、もしくは、停止させたりする制御を行うことができる。また、診療器具駆動部4Mが回転駆動部等を備えているような場合、該回転駆動部の回転数を、ペダル5aの踏み込み量や踏み込み時間等に応じて、速度調節できるようにしてもよい。このとき、踏み込み量(または踏み込み時間)と回転数の関係を、術者毎に異なるように設定できるようにしてもよい。例えば、術者Aでは、可変速とし、別の術者Bでは一定速とすることも可能である。
また、術者A向けの設定では、入力操作2は、「患者シートのポジションの切換」となっている。つまり、術者A向けの設定では、入力操作2が行われる(つまり、スイッチ5bが上側に押し込まれる)ことで、患者シート1の各部を、例えば図3〜図5の各図に示した位置に順次変位される。また、入力操作3〜13に関しても、説明は省略するが、入力操作1,2と同様に、診療台10を構成する要素の駆動内容が、それぞれに割り当てられている。
図11に示したように、入力操作1〜入力操作13に割り当てられる駆動部の動作内容は、術者毎に異ならせることが可能となっている。例えば術者A向けの設定では、入力操作2に「患者シートのポジションの切換」が割り当てられている。しかしながら、術者B向けの設定では、この機能は入力操作6に割り当てられている。その代わりに、術者B向けの設定では、入力操作2には、「患者シートの変位速度を高速に切換」という機能が割り当てられている。すなわち、術者B向けの設定では、入力操作2が行われることで、患者シート1の各部の変位速度が低速から高速に変更される。
また、術者A向けの設定では、「診療台の各部をうがい用のポジションに移動」「診療台の各部をうがい用のポジションに移動させる直前のポジションに移動」という機能が割り当てられている。この入力操作は、患者シート1の各部を図4に示したスピットン使用時の位置に移動させたり、もしくは、スピットン2をうがい位置に移動させたりするときに実行される。一方、術者B向けの設定では、これらの機能は入力操作1〜13には割り当てられていない。その代わりに、「診療器具に対する注水のON/OFF切換」「診療器具の回転駆動部の回転方向の切換」という術者向けAの設定では割り当てられていない駆動部の動作内容が、入力操作12,13に割り当てられている。
以上のような入力操作1〜13のそれぞれに対する駆動部の駆動内容の割り当ては、図2に示したように、駆動条件設定部93によって実行される。具体的には、認識部92によって術者が識別されると、該術者に対応した入力操作1〜13の割り当て内容が、個人別情報951から読み出される。そして駆動条件設定部93は、入力操作1〜13のそれぞれに対応するフートコントローラ5の操作信号に応じて、駆動制御部94が各駆動部(シート駆動部1M、スピットン駆動部2M、診療器具駆動部4M)を制御するように、駆動制御部94の動作を規定する。
{診療器具4の駆動条件}
診療器具4の駆動条件は、術者毎または患者毎に設定される。例えば、診療器具4が回転駆動部を備えるエアータービンハンドピース、マイクロモータハンドピースである場合、その回転速度の最大値等が、術者毎に設定される。また、術者が同一人であっても、該術者が患者毎に回転速度の最大値等を変更できるようにしてもよい。この場合、術者と患者の組合せ毎に駆動条件が設定されることとなる。また、術者と患者の組合せが一致する場合においても、例えば診療内容に応じて、診療器具4の駆動条件が変更されるようにしてもよい。患者に対して実施されるべき診療内容は、例えばカルテ情報に事前に記録するようにすればよい。この場合カルテ情報を参照することで、診療内容を特定することが可能となる。
以上が、各要素を駆動するときの駆動条件についての説明である。次に、術者による診療開始前から診療後までにおける、医療用診療装置100の動作について説明する。
{診療開始前から診療後までにおける医療用診療装置の動作}
図12は、診療開始前から診療後までにおける、医療用診療装置100の一連の動作の流れ図である。なお、以下に説明する医療用診療装置100の動作は、特に断らない限り、制御部9の制御に基づいて行われるものとする。
まず、医療用診療装置100は、判定部96により患者シート1に患者が着座したかどうかを判定する(ステップS101)。この判定は、検知部1Sからの検知信号に基づき、判定部96が判定を行う。患者が着席していないと判定された場合、医療用診療装置100は、患者が着席するまでステップS101を繰り返し実行する。
ステップS101において、患者が患者シート1に着座したと判定された場合、医療用診療装置100は、撮影部8によって患者の顔貌を撮影し、患者の顔画像データを取得する(ステップS102)。そして医療用診療装置100は、取得された顔画像データに基づき、該患者に対応するデータが個人別情報951に登録されているかどうか照合する(ステップS103)。具体的には、医療用診療装置100は、顔画像データを画像処理部91により画像処理して、顔画像処理データを取得する。顔画像処理データと一致するデータを個人別情報951において検索する。
医療用診療装置100は、ステップS103による照合の結果、個人別情報951の中に一致するデータが存在するかどうか判定する(ステップS104)。一致するデータが存在しない場合、医療用診療装置100は、ステップS102に戻り、再度ステップS102〜ステップS104の動作を行う。これにより、新たな顔画像データを取得して、該顔画像データに基づいて照合が行われる。
ステップS104において、一致するデータが見つかった場合、医療用診療装置100は、医療用診療装置100の各要素の駆動条件を、特定された患者向けの駆動条件に設定する(ステップS105)。具体的には、例えば患者シート1の背凭れ1bの傾動速度、座面シート1cの昇降速度、診療時、スピットン使用時または離席時における患者シート1の各部のポジショニング等が設定される。
また、医療用診療装置100は、電源制御部971の制御により、モニター6の電源を投入する(ステップS106)。この電源投入によりモニター6の表示準備が完了すると、モニター6による表示準備が完了すると、医療用診療装置100は、ステップS104にて特定した患者についてのカルテ情報を、個人別情報951から読み出し、モニター6に表示させる(ステップS107)。また、図示を省略するが、医療用診療装置100は、照明制御部98の制御により、無影灯7を点灯させる。
図13は、図12に示したステップS107において、モニター6に表示される患者識別結果画面W1の一例を示す図である。ステップS104における認識部92の識別結果に基づき、モニター6にその識別結果(患者識別結果)が表示される。ここでは、患者の顔画像を表示する表示領域と、該患者のカルテ情報を表示する表示領域とが、モニター6の画面上に定義される。制御部9は、このような患者識別結果をモニター6に表示することで、認識部92による患者識別結果を外部に通知する。つまりモニター6は、患者識別結果を通知する通知部として機能する。また、モニター6は、患者情報表示部としても機能する。このような画面がモニター6に表示されることにより、認識部92によって、患者が正しく識別されているかどうかを、モニター6を介して確認することが可能となる。
なお、ステップS105とステップS106,S107の実行順序は任意である。つまり、どちらか一方が先に行われてもよいし、もしくは、双方が並行して行われてもよい。また、ステップS106は、ステップS101にて患者が検知された時点で実行されるようにしてもよい。
次に、医療用診療装置100は、術者の識別を実行する(ステップS108)。このステップS108の詳細については、図14を参照しつつ説明する。
図14は、術者を識別する医療用診療装置100の一連の動作の流れ図である。術者を識別するために、医療用診療装置100は、まず、術者が検知されたかどうかを判定する。具体的には、例えば光学センサ等で構成される検知手段(図示せず)によって、術者が医療用診療装置100周辺の所定位置にいるかどうかが検知される。なおステップS201において、撮影部8やその他の撮影手段(図示せず)によって取得される画像に対して画像認識処理が行われることによって、術者が存在するかどうかが検知されるようにしてもよい。
ステップS201において、術者が検知されなかった場合、医療用診療装置100は、術者を検知するまでステップS201を繰り返し実行する。術者が検知された場合、医療用診療装置100は撮影部8によって術者の顔貌を撮影し、術者の顔画像データを取得する(ステップS202)。
ステップS202において取得された顔画像データは、術者を特定するための識別情報として利用される。具体的には、医療用診療装置100は、撮影された術者が個人別情報951に登録されているかどうかを照会する(ステップS203)。より詳細には、取得された顔画像データが画像処理部91にて画像処理され、顔画像処理データが生成される。そして個人別情報951において、生成された顔画像処理データと一致するデータが検索される。
ステップS203の照会結果に基づき、医療用診療装置100は、個人別情報951に取得された顔画像処理データと一致するデータが存在するかどうかを判定する(ステップS204)。一致するデータが存在する場合、医療用診療装置100は術者に対応した駆動条件を個人別情報951から読み出し、該駆動条件に従って各要素が駆動するように設定する(ステップS205)。これにより、各要素の駆動条件が、識別された術者向けのものに設定される。具体的には、診療中における患者シート1の各部のポジショニングや、フートコントローラ5に対する操作入力の機能割り当てが、識別された術者向けの駆動条件に合わせて設定される。
また、医療用診療装置100は、ステップS204における術者の識別結果に基づき、識別された術者に関する情報を個人別情報951から読み出し、読み出した情報をモニター6に表示する(ステップS206)。
図15は、図14に示したステップS206において、モニター6に表示される術者識別結果画面W2の一例を示す図である。図15に示したように、認識部92は、モニター6に、識別した術者に関する情報を表示する。本実施形態では、術者の顔画像を表示する表示領域と該術者向けの駆動条件を表示する表示領域とがモニター6の画面上に定義される。この駆動条件を表示する表示領域には、例えば、フートコントローラ5に対する入力操作1〜13に割り当てられる機能の一覧(図11参照)が表示される。本実施形態に係るモニター6は、駆動条件表示部を構成する。このような画面がモニター6に表示されることにより、認識部92によって、術者が正しく識別されているかどうかを、モニター6を介して確認することが可能となる。
{識別結果の変更}
また、本実施形態では、認識部92による識別結果が誤っているのを訂正するため、図2に示したように、マウス、キーボード等で構成される入力部61が制御部9に接続されている。本実施形態では、患者を指定するための変更入力ボタン群61a(図13)、または、術者を指定するための変更入力ボタン群61b(図15)が、モニター6上に表示される。操作者は、入力部61を介して、変更入力ボタン群61a,61bの中から、特定の患者または特定の術者に相当するボタンを選択する。これにより、認識部92が識別した患者または術者を、選択した患者または術者に変更することができる。つまり、入力部61は、変更入力部を構成する。
例えば、図13に示した患者識別結果画面W1では、患者X、患者Yおよび患者Zのそれぞれに対応する変更入力ボタン群61aが表示されている。操作者は、変更入力ボタン群61aから特定の患者(例えば患者Y)に対応するボタンを、入力部61を介して選択する。すると、認識部92は、識別した患者を選択された患者に変更する。その結果、変更後の患者についての顔画像やカルテ情報がモニター6に表示されることとなる。また、ステップS105において、識別された患者向けに設定された各駆動部の駆動条件が、変更入力ボタン61aを介して新たに選択された患者向けの駆動条件に設定し直される。
同様に、図15に示した術者識別結果画面W2では、術者A、術者Bおよび術者Cのそれぞれに対応する変更入力ボタン群61bが表示されている。操作者は、変更入力ボタン群61bから特定の術者(例えば術者B)に対応するボタンを、入力部61を介して選択する。すると、認識部92は、識別した術者を選択された術者に変更する。認識部92は、変更後の術者に対応する顔画像や駆動情報を取得し、その結果、変更後の術者についての顔画像や駆動条件がモニター6に表示されることとなる。また、ステップS205において、識別された術者向けに設定された各駆動部の駆動条件が、変更入力ボタン群61bを介して新たに選択された術者向けの駆動条件に設定し直される。
このように入力部61を備えることによって、認識部92による患者または術者の識別結果が誤っていた場合でも、その結果を訂正することができる。
なお、図15に示した変更入力ボタン群61bのうち特定のボタンが選択されたときに、認識部92による術者の識別結果を変更せず、単に駆動条件表示領域に表示される表示内容が、選択されたボタンに対応する術者のものに表示が変更されるようにしてもよい。この場合、識別結果を変更することなく、他の術者の駆動条件を確認することができる。この場合、入力部61は、選択入力部を構成することとなる。
また、モニター6がタッチパネルで構成されている場合には、変更入力ボタン群61a,61bをタッチすることで、患者または術者を選択できるようにしてもよい。この場合、モニター6が入力部61の機能の一部を担うこととなる。
図12に戻って、ステップS101〜ステップS108の動作により、医療用診療装置100の各要素の駆動条件が、識別された患者および識別された術者向けのものに設定されると、術者による診療が開始される。
なお、ステップS108の術者を識別する動作は、ステップS101〜ステップS104までの患者の識別する動作よりも先に行われてもよいし、同時に並行して行われてもよい。また、ステップS104において特定された患者について、処置する担当術者が決まっているような場合には、ステップS108において、術者を識別する必要が無い。この場合には、医療用診療装置100の各要素の駆動条件が該担当術者向けに自動で設定されるようにすればよい。また、医療用診療装置100を使用する術者が1人に固定されているような場合にも、医療用診療装置100は、ステップS108において識別処理に関する動作はスキップし、各要素の駆動条件を特定の条件(特定の術者向けの駆動条件または予め定められた標準の駆動条件)に自動で設定するようにしてもよい。
診療中においては、医療用診療装置100は、患者が患者シート1から離席したかどうかを監視する(ステップS109)。詳細には、検知部1Sにより、患者シート1から患者が離席したかどうかを検知する。なお、撮影部8によって撮影される画像に基づいて、患者が患者シート1から離席したかどうかを画像認識処理により検知するようにしてもよい。
ステップS109において、患者が離席したと判定された場合、医療用診療装置100は、カルテ情報の保存を行う(ステップS110)。カルテ情報は、例えば、診療中に術者(または操作者)により例えば入力部61(マウスまたはキーボード等の入力装置)を介して、診療に関する情報がカルテ情報に記入される。具体的には、術者と患者との間で行われる問診の内容や、診療時に患者に対して術者が行った具体的な治療内容、または、症例に対する術者の所見等がカルテ情報として記録される。医療用診療装置100は、このようにして診療中に入力されたデータを、既存のカルテ情報と統合して、新たなカルテ情報として個人別情報951に記録する。
カルテ情報の保存が行われると、医療用診療装置100は、電源制御部971の制御により、モニター6の電源を切断する(ステップS111)。これにより、モニター6におけるカルテ情報の表示が停止される。また、照明制御部98の制御により、無影灯7を消灯させる。以上により、診療開始前から診療後までにおける、医療用診療装置100の一連の動作が完了する。
本実施形態では、患者の着座を検知してから、自動的にモニター6の電源が投入され、該患者に対応したカルテ情報がモニター6に表示される(ステップS107)。したがって、術者等によるカルテ情報の表示のための操作を必要としないため、術者が円滑に診療にとりかかることができる。
また、患者の着席信号または離席信号に基づいて、照明制御部98により無影灯7が点灯したり消灯したりする。このため、術者等による無影灯7の点灯操作を省略できる。これにより、医療用診療装置100の利便性を向上させることができる。また、無駄な電力消費を抑制できる。これにより、無影灯7を長持ちさせる効果を期待できる。
また、本実施形態では、患者の離席を検知して、自動的にモニター−6における電源が切断される。これにより、診療後にモニター6が各種情報を表示したまま放置されることを抑制することができる。したがって、患者のカルテ情報が外部に漏洩することを抑制することができる。つまり、モニター6における患者のカルテ情報の表示管理を適切に行うことができる。
また、患者の着席に応じて。モニター6の電源が投入されることにより、医療用診療装置の利便性が向上する。また、モニター6の無駄な可動を抑制できる。また、患者の離席に応じて、モニター6の電源が自動で切れることにより、モニター6の無駄な電力消費を抑制できる。これらの作用により、省エネ効果を期待できる。
また、医療用診療装置100の各要素の駆動条件が、認識部92により識別された患者および術者に適合する駆動条件に設定される。これにより、患者の姿勢を安全に患者の姿勢を変更したり、診療器具4を安全に駆動させたりすることが可能となる。したがって、術者が円滑に診療を行うことができる。
{2. 変形例}
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は上記のようなものに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
例えば、識別情報として利用される患者または術者の顔画像データは、患者または術者の顔貌全体を含んでいる必要はない。つまり、認識部92が個人別情報951において照合することが可能であれば、患者または術者の顔貌の一部のみを撮影部8によって撮影するようにしてもよい。
また撮影部8により顔画像データを取得する際には、認証精度を向上させるために、なるべく一定条件での撮影が行われることが望ましい。このため、ステップS101またはステップS201において患者または術者が検知された段階で、医療用診療装置100が、音声や映像等を介して、患者または術者に対し動作を停止するよう要求したり、立ち位置を指示したりするようにしてもよい。
また、顔画像データ以外の識別情報に基づいて、患者または術者の識別が行われるようにしてもよい。例えば、患者または術者を示す個人データ(名前、住所、生年月日等の個人情報や、各人に割り当てられた番号等の識別コード等)が制御部9に入力され、これを認識部92が照会するようにしてもよい。また、カード(例えば、診察カード)等に付された個人データ(例えばバーコードで表される。)が読み取られたり、RFID等の技術を利用して個人データが電磁的に読み取られたりして、制御部9に該個人データが入力されるようにしてもよい。また、顔貌以外の生体情報が識別情報として取得され、これにより患者または術者の識別が行われるようにしてもよい。また、顔画像データとその他の識別情報とを組み合わせて、患者または術者の識別が行われてもよい。
また、認識部92は、患者または術者を特定する際に、個人別情報951に登録されている全ての患者または術者の中から、識別情報に一致する患者または術者を特定する。しかしながら、このときの検索対象を予め個人別情報951に登録されているうちの一部に絞り込めるようにしてもよい。例えば、診療日ごとに、医療用診療装置100を使用する患者または術者が決まっているような場合、診療日当日の患者または術者についてのデータのみを検索対象とすればよい。また、術者が識別された時点で、検索対象である患者グループのうち、識別された術者が担当する患者のみに絞り込まれるようにしてもよい。これらの工夫により、患者または術者の特定を効率的に行うことができる。
また、医療用診療装置100において、患者が患者シート1に着座する前に、患者を識別するようにしてもよい。着座前に患者を識別することができれば、患者導入時における患者シート1の各部のポジショニングを、各患者毎の体格や体力に応じて設定することが可能となる。なお、この導入時のポジショニングは、離席時のポジショニング(図3等参照)と一致させればよい。これにより、患者にとって、患者シート1に着座することを楽に行うことができるようになる。
また、足置き台1dの下側部分を伸縮可能に構成してもよい。足置き台1dの長さを状況に応じて調節することによって、患者が患者シート1に座ったり患者シート1から立ち上がったりしやすくなる。また、この伸縮の長さを、駆動条件として患者毎に設定できるようにしてもよい。
また、トレーテーブル3を移動させる駆動部を設けてもよい。そして、トレーテーブル3をフートコントローラ5等の操作手段を介して、トレーテーブル3の位置を操作できるようにしてもよい。また駆動条件として、トレーテーブル3のポジショニングを患者毎または術者毎に設定できるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、医療用診療装置100は、歯科治療に適合するように構成されている。しかしながら、本発明は、眼科、耳鼻咽喉科等のあらゆる医科分野や、獣医科分野の医療用診療装置について適用することも有効である。
また、上記各実施形態および各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。