(第1実施形態)
以下、本発明をエリプソメトリー顕微鏡に具体化した第1実施形態を、図1〜図3を用いて説明する。本実施形態では、エリプソメトリー顕微鏡は複合型顕微鏡の一部を構成する。
図1は、複合型顕微鏡におけるエリプソメトリー顕微鏡の全体構成を示す模式図である。図1に示すように、エリプソメトリー装置としてのエリプソメトリー顕微鏡1は、走査型プローブ顕微鏡70(Scanning Probe Microscope(SPM))と組み合わせて複合型顕微鏡80を構成している。この複合型顕微鏡80では、エリプソメトリー顕微鏡1により試料Sの基板2上に形成された薄膜3を比較的広い視野で低倍率で観察し、そのうち特に微細構造を観察したい注目箇所を走査型プローブ顕微鏡70により高倍率で観察できるようになっている。なお、本実施形態では、走査型プローブ顕微鏡70の一例として、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope(AFM))を採用している。
図1に示すように、エリプソメトリー顕微鏡1は、斜め照明系4と結像系5とを備えている。本実施形態の結像系5は、1次結像系10と2次結像系11とを有している。以下、斜め照明系4、結像系5の順番に説明する。
図1に示すように、斜め照明系4は、光源12、光ファイバ13、コリメートレンズ14、偏光子15、位相補償子16、レンズ17から構成されている。光源12で発生させた照明光は、光ファイバ13により導かれて所定位置で略点光源として拡散光である照明光L1として発光し、コリメートレンズ14により平行光である照明光L2とされる。この照明光L2は、偏光子15により、直線偏光とされた照明光L3となる。そして、λ/4板からなる位相補償子16により、楕円偏光(円偏光を含む)である照明光L4とされる。この照明光L4は、コリメートレンズ17を通って平行光として、試料Sの試料面に照射される。
試料Sの基板2上に形成された薄膜3は、液体膜あるいは固体膜からなる。また、試料Sが載置された不図示のステージが傾動可能に構成されるか、斜め照明系4の光照射角が変更可能に構成されることで、エリプソメトリー顕微鏡1では、試料Sに対する照射光の入射角の調整が可能となっている。この入射角は、薄膜3の材質から決まる屈折率に応じて調整され、通常、p偏光に対する反射率が最小値を取るように、ブリュースター角θB=tan−1(ns/no)(但し、nsは試料の屈折率ns、noは空気の屈折率)付近の値に設定される。例えば、試料Sをシリコン基板とした場合、ブリュースター角θBは約74度である。また、試料Sに金属などの光吸収する材質を含む場合、p偏光に対する反射率が完全に0とはならないが、一般に入射角60から70度付近で、p偏光に対する反射率は最小値を取る。このため、通常60〜80度の比較的大きな入射角で照明光L4は試料Sの試料面に照射される。
次に、結像系5について説明する。図1に示すように、結像系5は、1次結像系10と2次結像系11とを有している。1次結像系10は、1個の対物レンズ21を有している。また、2次結像系11は、1個の結像レンズ22を有している。結像レンズ22には、2次結像用の対物レンズが用いられている。
ここで、1次結像系10とは、図1に示すように、試料Sからの反射光が最初に入射する対物レンズ21を含む結像系であり、その倍率M1(第1の倍率)は比較的低倍率である。また、2次結像系11とは、1次結像系10の結像面(以下、「1次結像面P1」という)に結像された物体像を所望の倍率に拡大して、その結像面(以下、「2次結像面P2」という)と一致する撮像素子24の検出面25にその拡大物体像を結像させる結像系であり、その倍率M2(第2の倍率)は比較的高倍率である。1次結像系10と2次結像系11は、それぞれ少なくとも1個の結像用のレンズを含み、特に本実施形態は、1次結像系10と2次結像系11がそれぞれ結像用のレンズを1個ずつ備えた例となる。
図1に示すように、試料Sを照射した照明光L4(以下、「入射光L4」とも称す)は、試料Sで反射して反射光である反射光R1となり、対物レンズ21に入射する。そして、この反射光R1(但し、図1では入射光L4の光軸での反射光(散乱光)の光路のみ図示)は、対物レンズ21により一旦集光されてから再び拡散する反射光R2となる。この対物レンズ21を保持する鏡筒26は、結像系5の絞りとしても機能する。この拡散する反射光R2は結像レンズ22の鏡筒27内の範囲に入射して、結像レンズ22により集光されて反射光R3とされ、さらに検光子23を通過した反射光R4は撮像素子24の検出面25に照射される。撮像素子24の検出面25に照射された反射光R4は電気信号に変換され、液晶ディスプレイからなるモニタ28に、拡大された物体像(薄膜3の拡大像)が映し出される。
次に、本エリプソメトリー顕微鏡の各構成要素について、図1〜図3を用いて詳細に説明する。
(光源)
光源12は、SLD(Super Luminescent Diode)により構成されている。仮に光源に、He−NeレーザーあるいはLD(Laser Diode)のように可干渉距離(コヒーレンス長)の長いレーザーなどを光源に用いた場合、装置光学系を構成する光学素子で光の一部が反射することにより、光干渉が発生し、干渉縞像が現れてしまう。例えば、λ/4板からなる位相補償子16で反射され後方に進んだ光が、さらに偏光子15により反射され再度前方に進んで検出面に到達したとする。このとき、これらの反射を経ず直進した光で検出面に同時に達する光も存在する。これらの反射を経た光と反射を経ず直進した光とは異なった光路長を進んで来るので、位相が異なり検出面で光干渉を生ずる。すなわち、このとき検出面には干渉縞像が生じ、薄膜像に重畳して雑音像が生ずることになる。ここで、一般に、その可干渉距離よりも大きな光路差を有する光同士は干渉しない。そこで、その可干渉距離が、装置を構成する光学素子間距離よりも十分小さい光源を用いると、干渉縞像の発生を抑えることができる。この光源12では、可干渉距離の短いレーザーSLDにより構成されている。装置光学系を構成する光学素子間距離は、1mmから10cmのオーダーであるのに対して、SLDの可干渉距離は、10μmのオーダーであり十分小さい。SLDに代えて、ファイバレーザーやハロゲンランプを用いた白色光源や、ASE(Amplified Spontaneous Emission)、LED(Light Emitting Diode 発光ダイオード)等により光源12を構成してもよい。
また、図1では模式的に単一のコリメートレンズ14,17を描いたが、正確な平行光を生成する各種光学素子や光学器具等が用いられる。
(偏光子)
偏光子15は、周知の偏光板を用い照明光L2を直線偏光にすることができ、照明光L2の光軸に対して回転可能に設けられ、直線偏光の方向を90度の範囲で変更できる。
(位相補償子)
位相補償子(コンペンセンター)16は、直線偏光を楕円偏光に変換する。本実施形態の位相補償子16は、λ/4板(1/4波長板)からなる。光源によるが、本実施形態では、広域のスペクトルを有するSLD光源を用いているため、無着色のアクロマティックリターダを用いる。なお、理想的な位相補償子は、リターデーションが正確に90度(又は1/4波長)である光学的な位相遅延器であるが、正確なリターデーションが光軸や波長によって変わってしまうために用いることが難しい。そのため、本実施形態では、回転する偏光子15と回転する位相補償子16の組合せとなっており、偏光していない光をどのような楕円偏光にも変換できる。
(撮像素子)
撮像素子24は、電荷結合素子(Charge Coupled Device(CCD))をマトリクス状に整列させたアレイ状の素子である。なお、撮像素子は、CCDに限定されるものではなく、CMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサを用いた構成としてもよい。さらに冷却CCDカメラも熱ノイズが少なく好ましい。
(結像系)
次に、本実施形態における特徴的な構成である1次結像系10と2次結像系11について説明する。図2は、1次結像系と2次結像系に係る部分の模式側面図である。図2に示すように、1次結像系10を構成する対物レンズ21は、その光軸AX1と試料面SP(換言すればステージの試料載置面)とのなす角度θoが、反射光R1の光軸AX2と試料面SPとのなす角度である反射角θrefよりも大きくなるように、光軸AX1を光軸AX2に対して少し傾けた状態に配置されている。つまり、対物レンズ21の光軸AX1を反射光R1の光軸AX2に対して角度Δθ(=θo−θref)だけ試料面SPから離れる側へ傾ける「ひねり」を加えている。なお、以下、角度Δθをひねり角度と呼ぶ。
対物レンズ21を通って集光する反射光R2は、結像レンズ22に至る手前の空間上で結像する。つまり、この対物レンズ21の結像面(1次結像面P1)が、対物レンズ21と結像レンズ22との間の空間上に形成される。そして、結像レンズ22はその光軸AX3が1次結像面P1に対して垂直(図2におけるθ2=90°)になるように配置されている。撮像素子24はその検出面25の中心軸AX4が結像レンズ22の光軸AX3と一致するように配置されている。
結像レンズ22の焦点距離をf1とおくと、結像レンズ22は、その主平面が1次結像面P1に対してその法線方向(光軸AX3方向)後側(図2における右側)へ、距離(x1+f1)だけ離れて位置するように配置されている。また、撮像素子24は、その検出面25が結像レンズ22の主平面に対してその法線方向(光軸AX3方向)後側へ、距離(f1+x2)だけ離れて位置するように配置されている。なお、x1,x2には、x1・x2=f12の関係がある。
結像レンズ22は、1次結像面P1に結像された物体像を拡大して撮像素子24の検出面25上に結像させる機能を有している。このため、撮像素子24は、その検出面25が2次結像面P2と一致するように配置されている。つまり、図2における距離x2は、結像レンズ22の主平面と2次結像面P2との間の距離から、結像レンズ22の焦点距離f1を差し引いた距離に設定されている。
本実施形態では、1次結像系10を構成する対物レンズ21の倍率M1を、2次結像系11を構成する結像レンズ22の倍率M2よりも小さく設定している(M1<M2)。このように設定している理由は以下の通りである。
対物レンズ21の光軸AX1と1次結像面P1とのなす角度をθ1とおくと、対物レンズ21の倍率M1と角度θo,θ1との間には、以下の関係が成立する。
tanθ1/tanθo=1/M1 …(1)
この式(1)から、対物レンズ21の倍率M1を大きくするほど、角度θoに対して角度θ1は小さくなる。角度θ1が小さくなるに連れて、1次結像面P1は、光軸AX1との交点を中心に、図2における時計方向へ徐々に傾く。この角度θ1は、結像レンズ22の主平面と光軸AX1とのなす角度に等しいので、角度θ1が小さくなるほど、結像レンズ22に対する反射光R2の入射角(結像レンズ22の主平面と反射光R2とのなす角度)が大きくなる。この反射光R2の入射角が大きくなると、結像レンズ22における光の反射率が増えてしまう。
例えば角度θoを30度とした場合、倍率M1を100倍にしてしまうと、式(1)から、角度θ1=0.3度という結像レンズ22の主平面とほぼ平行な反射光R2となってしまう。この場合、結像レンズ22の鏡筒26に反射光R2が遮られて反射光R2が結像レンズ22にさえ入射できなくなる。また、仮に反射光R2が鏡筒26に遮られることなく結像レンズ22に入射できても、かなり大きな入射角になるため、結像レンズ22の表面での反射光R2の反射率が、s偏光に対して約0.98、p偏光に対して約0.96とかなり増加する。この場合、検出面25に結像される像が著しく暗くなってしまう。
このため、本実施形態では、この種の反射率の増加を回避すべく、対物レンズ21の倍率M1を相対的に小さく設定し、倍率M1と式(1)とから決まる角度θ1を、相対的に大きな値に設定している。反射光R2の反射率を許容範囲内に小さく抑えるためには、角度θ1は例えば20度以上に設定することが好ましい。本実施形態では、角度θ1を、一例として45度に設定している。
例えば入射光L4の入射角がブリュースター角θB付近の60〜80度である場合、試料面SPで正反射した反射光R1の光軸AX2の反射角θrefは60〜80度となる。このとき、想定される正反射光R1の最小反射角θrefmin(=60度)のときの光軸AX2よりも、対物レンズ21の光軸AX1(つまり1次結像系10の光軸)を、ひねり角度Δθ(>0)だけ試料面SPから離れる方向(図2における反時計方向)へ傾けて配置している。このため、試料面SPに対する入射光L4を想定される入射角(60〜80度)で使用する場合、対物レンズ21の光軸AX1が常に反射光R1の光軸AX2よりも試料面SPから離れる方向へ傾いた状態に保持され、反射角θrefより大きな角度θoを確保できる。このようにひねり角度Δθを加えた場合、試料面SPからの反射光R1は、図2,図3に示すように、対物レンズ21の中心から試料S側へシフトした位置を光軸が通るように対物レンズ21に入射する。
本実施形態では、一例として、ひねり角度Δθを15度に設定し、角度θo(=90°−θre fmin+Δθ)を45度に設定している。この場合、角度θo,θ1が共に45度になる倍率M1は、式(1)からM1=tanθo/tanθ1であるので、1倍である。このため、本実施形態では、倍率M1が1倍の対物レンズ21を用いている。もちろん、倍率M1は1倍に限定されず、角度θoと式(1)式の関係とから、角度θ1を比較的大きな値(例えば20度以上)にできる倍率M1を採用できる。さらに角度θ1は、20度以上に限られず、反射光R2が鏡筒27に遮らずに結像レンズ22に入射でき、かつ結像レンズ22における反射光R2の反射率をある程度小さく抑えられれば、例えば20度未満でもよい。
また、角度θoは、20〜60度の範囲が好ましい。このとき、ひねり角度Δθは、必ずしも設定する必要はなく、例えば角度θoを20≦θo<30の範囲に設定する場合は、ひねり角度Δθは0度でもよい。また、角度θoを30≦θo≦60の範囲に設定する場合は、ひねり角度Δθを、0<Δθ≦30の範囲で設定すればよい。そして、角度θoが20〜60度の範囲内の値をとるときに、角度θ1が、20〜70度の範囲、好ましくは30〜60度の範囲で確保されるような倍率M1(=tanθo/tanθ1)に設定することが望ましい。
倍率M1は、例えば0.1〜5倍、好ましくは0.3〜3倍の範囲がよい。もちろん、倍率M1は、この範囲に限定されず、0.1倍未満(0<M1<0.1)としたり、5倍を超えてもよい。但し、対物レンズ21の倍率M1を1倍未満の値にすると、エリプソメトリー顕微鏡1に所望の倍率Mを確保するために、結像レンズ22の倍率M2を高くする必要があり、倍率M2にも限界があるので、倍率M1をあまり小さくし過ぎることは好ましくない。この点から、倍率M1は0.8倍以上、特に1倍以上が好ましい。
また、倍率M1は、M1=tanθo/tanθ1から決まるため、倍率M1を1倍以上にするためには、θo≧θ1を満たす必要がある。このとき、ひねり角度Δθを加えて角度θoを大きくすることにより、1倍以上の倍率M1を確保しうる角度θ1の上限を大きくすることができる。そして、本実施形態では、一例として、1倍以上の倍率M1を確保しうる角度θ1の上限を採用している(θo=θ1)。もちろん、倍率M1が1倍未満の場合も、ひねり角度Δθを加えて角度θoを設定することにより、角度θ1を大きくした割に、倍率M1が小さくなりにくい。よって、角度θoは、特に30度以上に設定することが望ましい。
図2に示すように、2次結像系11において、結像レンズ22の主平面と1次結像面P1との距離は、x1+f1で示され、その主平面と撮像素子24の検出面25との距離は、f1+x2で示される。つまり、x1は、結像レンズ22の主平面と1次結像面P1との距離から結像レンズ22の焦点距離f1(前側焦点距離)を差し引いた値であり、x2は、結像レンズ22の主面と検出面25との距離から結像レンズ22の焦点距離f1(後側焦点距離)を差し引いた値である。
ここで、1次結像面P1上に結像される1次物体像と、検出面25(2次結像面P2)上に結像される2次物体像との像の高さの比、すなわち、2次結像系11の像倍率M2は、f1を結像レンズ22の焦点距離、x1を図2に与えた距離として、以下の式で与えられる。
M2=f1/x1 …(2)
この式(2)から、像倍率M2は、角度θ1に依存することなく設定でき、高倍率観測が可能になる。すなわち、結像レンズ22の焦点距離f1と距離x1とにより、2次結像系11の像倍率M2を設定できる。
結像レンズ22には、前述のように、対物レンズ21の倍率M1より大きな倍率(例えば100倍)の対物レンズが使用されている。エリプソメトリー顕微鏡1の倍率Mは、1次結像系10の倍率M1と2次結像系11の倍率M2とを用いて、M=M1×M2で表される。そして、本実施形態では、倍率M2(=M/M1)が得られるように、結像レンズ22の焦点距離f1と式(2)とから決まる距離x1(=f1/M2)を設定している。エリプソメトリー顕微鏡1の倍率Mが例えば100倍の場合、対物レンズ21の倍率M1が1倍である本例では、倍率M2が100倍になるように距離x1(=f1/M2)を調整する。この距離x1は、倍率M1,Mを用いて、x1=f1・M1/Mで示される。また、対物レンズ21を通過した反射光R2が全て結像レンズ22の範囲内に入射されるように、距離x1を調整することが好ましい。なお、倍率M2は100倍に限定されず、M1×M2がエリプソメトリー顕微鏡1に必要な倍率Mになるような適宜な倍率を設定できる。エリプソメトリー顕微鏡1の倍率Mを適切な高倍率に設定するうえで、倍率M2は、10倍以上でかつ倍率M1の10倍以上の値となる倍率であることが好ましい。
このように、本実施形態のエリプソメトリー顕微鏡1の構成は、従来技術で述べた図6の結像系に2次結像系を追加し、薄膜3の膜分布を空間上(1次結像面P1上)に1次物体像として結像させ、それを2次結像系11で拡大して観察するものである。そして、2次結像系11の光軸AX3を、1次結像系10の結像面P1と垂直(図2におけるθ2=90°)になるように配置している。これにより、1次結像面P1と2次結像面P2とを、2次結像系11の光軸AX3に対して垂直な面として配置することが可能となる。式(1)を用いて述べた理由により、1次結像系10の倍率M1は大きくとることはできないが、2次結像系11では、1次物体像と2次物体像とを、光軸AX3と垂直な面P1,P2内に配置できるので、像倍率として大きな値を設定できる。そして、2次結像系11では、倍率M2に依らず(つまり倍率Mが変化しても)、1次物体像と2次物体像を、光軸AX3と垂直な面内に配置できる。例えば、1次結像面P1と2次結像面P2のうち少なくとも一方が光軸AX3に対して垂直から外れた角度をなす場合、倍率M2の変化によって、2次結像面P2が検出面25とある角度をなすことになる。この場合、そのなす角度が大きくなるに連れて、コントラストの高い視野領域が狭小化したり、輝度分布が不均一になったりする。しかし、本例では、像倍率M2(=f1/x1)を変化させても、1次結像面P1と2次結像面P2とが常に平行に保たれるので、どの倍率でも視野領域を広く確保できる。
また、対物レンズ21は、その倍率が大きくなるほど開口数NAを大きくする必要があり、一般に倍率が大きくなるほどレンズ径が大きくかつ作動距離が小さくなる。このため、結像系5を構成するレンズを、1次結像系10を構成する対物レンズ21と、2次結像系11を構成する結像レンズ22(対物レンズ)とに分け、対物レンズ21の倍率M1を小さく設定することで、対物レンズ21の開口数NAを小さくできる。このため、対物レンズ21にレンズ径の小さな小型レンズを使用できるうえ、その作動距離WDも長く確保できる。この点から、対物レンズ21と試料Sとの干渉(接触)を回避しやすくなる。
本実施形態では、試料面SP(つまりステージの試料載置面)に対して法線方向観察側の位置に、斜め照明系4及び結像系5が配置されない空間が確保される。そして、この空間に、走査型プローブ顕微鏡70のプローブ71及びプローブ71を変位させるための変位系72などが配置されている。つまり、試料面SPに対してその法線方向観察側の空間が、走査型プローブ顕微鏡70のプローブ71及びその変位系72の作業空間(配置空間)として確保されている。
(測定手順)
次に、このように構成されたエリプソメトリー顕微鏡1における試料観察及び膜厚分布測定の手順を説明する。
まず、試料Sをセットして、光源12、モニタ28の電源を投入する。続いて、偏光子15、位相補償子16、検光子23を初期位置にセットする。そして、偏光子15、位相補償子16を相互に回転しながら、モニタ28でコントラストを確認し、所定の部分が消失したら、記録を取る。或いは一連の操作を自動で行い、最もコントラストの良好な画像により所定の手順で膜厚を算出する。
ここで、本発明の原理である消光型エリプソメトリーについて説明する。
試料と空気などの媒質界面で、光がある入射角を持って反射したときに、入射平面内にある偏光成分(p偏光)、垂直な偏光成分(s偏光)について、複素振幅反射率(rexp(iδ)が異なり、この違いは試料Sの表面にある薄膜3の屈折率に依存する。薄膜3の屈折率は、薄膜3の膜厚に依存するので、エリプソメトリ−顕微鏡1では、p偏光とs偏光の複素振幅反射率の振幅比Ψ(=rp/rs)と位相差Δ(=δp−δs)の試料各点における分布を測定することにより、膜厚分布を求める。ここで、rおよびδの添え字p、sは、それぞれ、p偏光、s偏光に対するものであることを示す。エリプソメトリー顕微鏡で検出される試料のある点(x,y)から得られる光強度I(x,y,θ)は、以下で与えられる。
ここで、rsはs偏光に対する振幅反射率、Ioは入射光強度、θは照明光の入射角、P、Aはそれぞれ偏光子、検光子の回転角の設定値である。
消光型エリプソメトリーの手法を用いて膜分布を測定する場合、まず、試料薄膜を形成していない基板面からの反射光強度を「0」になるように調整する。すなわち、入射光を偏光子で直線偏光とし、基板面における反射で楕円偏光に変化するのを、再度、1/4波長板と検光子偏光板で完全に消光するように調整する。式(3)を用いて説明すると、2P+Δ=π/2、ΨcosA+sinA=0、となるように、偏光子角Pおよび検光子角Aを調整し、基板面からの反射光を「0」に近づける。基板面はおおむね均一な反射率分布を有するので、この工程は、基板面での正反射(入射角=反射角となる反射光)した光を消光する工程となる。
ここで、エリプソメトリー顕微鏡1では、p偏光に対する反射率を最小とする入射角付近が最も良好な像コントラストを実現する入射角となる。p偏光とs偏光の複素振幅反射率は入射角に依存し、振幅比Ψと位相差Δは入射角θに依存するため、式(3)で示したように、エリプソメトリー顕微鏡で得られる像の光強度も入射角θに依存する。そのため、エリプソメトリー顕微鏡1では、p偏光に対する反射率を最小とする入射角付近の入射角θ=θBを設定し、その後、最適なコントラストに得るように偏光子角Pおよび検光子角Aを調整する。
試料が誘電体など光を吸収しない物質で構成されており、試料(屈折率ns)と空気(屈折率no)の界面で光が反射した場合、θB=tan−1(ns/no)で求められるブリュースター角θBにおいて、p偏光に対する反射率は0となるが、s偏光の反射率の入射角依存性は、p偏光のそれに比べ小さいので、p偏光とs偏光の反射率の差が最も大きくなる。このため、エリプソメトリー顕微鏡1では、入射角をブリュースター角θB付近に設定することにより、最も良好なコントラストを有する膜分布像を得る。
次に、上で調整したP,Aを用いて、基板2上の薄膜3を観測する。反射率が基板2のみの場合とは異なるので、すなわち、振幅比Ψと位相差Δは基板2のみの場合と異なる値を取り、上で調整したP,Aに対する消光条件を満たさず、反射光が0とならない。そして、振幅比Ψと位相差Δは、薄膜3の屈折率すなわち膜厚に依存するので、この反射光の強度は膜厚に依存する。こうして、試料薄膜の膜厚分布に対応した光強度像が得られる。このように、エリプソメトリーを用いる方法では、試料のp偏光に対する反射率が最小となるように法線から60〜80度程度の大きな入射角で試料に照明光を照射し、その反射光を入射角と同様の反射角付近の斜め方向から観測する。
加えて、平行光を照明として用いたエリプソメトリー顕微鏡1においては、試料の点(x,y)について、光強度から振幅比Ψと位相差Δを求め、さらに、Ψ,Δと試料薄膜の膜厚の関係を用いることにより、像の光強度を膜厚に換算できる。例えば、二つの偏光子角P=P1とP=P2に対する光強度I1とI2を測定して式(3)に代入し、連立2元方程式を解くことにより、試料各点におけるΨ(x,y,θ)、Δ(x,y,θ)を得ることができる。Ψ,Δと試料薄膜の膜厚の関係は、通常のエリプソメータなど一般的な方法で求める。Ψ,Δと試料薄膜の膜厚の関係から、光強度分布I(x,y,θ)を膜厚分布に換算する。こうして、エリプソメトリー顕微鏡1により、薄膜3の膜厚分布を測定することができる。
そして、この複合型顕微鏡80では、エリプソメトリー顕微鏡1により試料薄膜3の広い視野を高倍率で観察し、そのうち特に微細構造を観察したい注目箇所を走査型プローブ顕微鏡70によりさらに高い倍率で観察する。このとき、走査型プローブ顕微鏡70の変位系72を駆動してプローブ71を下降させて試料薄膜3の表面に接触させる。なお、走査型プローブ顕微鏡70による観察への切り換えにより、エリプソメトリー顕微鏡1による観察が不要になった時点で、対物レンズ21をその作動範囲内で試料Sから離れる側へ退避させ、プローブ71の広い作業領域を確保してもよい。このとき、倍率M1の低い対物レンズ21の作動距離WDは長いので、対物レンズ21の退避によりプローブ71の広い作業空間を確保できる。
また、薄膜3が粘弾性を有する固体膜あるいは液体膜である場合は、プローブ71で試料薄膜3を接触摺動し、力学的な刺激を与え、これに対する応答の様子をエリプソメトリー顕微鏡1で動的観察して、薄膜3の粘弾性などの特性を得ることもできる。本実施形態のエリプソメトリー顕微鏡1を用いて、プローブ71を薄膜3に摺動させて力学的な刺激を与えたところ、プローブ71の力学的な刺激に対する薄膜3の応答の様子を観察できることが確認された。
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態のエリプソメトリー顕微鏡1では、斜め照明系4を採用するとともに、結像系5を1次結像系10と2次結像系11との複数段で構成した。このため、薄膜3の膜厚分布を高コントラストかつ高倍率で観察できるうえ、試料面SP(ステージの試料載置面)に対して法線方向観察側の位置に、走査型プローブ顕微鏡70のプローブ71やその変位系72、あるいは摺動用プローブなどの操作手段のための作業空間を確保できる。よって、本エリプソメトリー顕微鏡1と走査型プローブ顕微鏡70とを組み合わせて複合型顕微鏡80を構成することができる。この場合、エリプソメトリー顕微鏡1により薄膜3の膜厚分布などを広い視野で高倍率で観察し、そのうち特に微細構造を観察したい注目箇所を走査型プローブ顕微鏡70でさらに高い倍率で観察することができる。また、粘弾性を有する薄膜3にプローブ71で力学的刺激を与え、その応答の様子を高コントラストかつ高倍率で動的観察することができる。この場合、膜厚分布測定すれば、試料薄膜の粘弾性などの特性を得ることができる。
(2)1次結像系10では、後段の結像レンズ22への光の入射が鏡筒27に遮られず、かつ結像レンズ22への光の反射率を低減できるように、角度θ1を比較的大きく(一例として20度以上)確保する必要から、角度θ1に依存する倍率M1に制約があった。これに対して、2次結像系11の光軸AX3を1次結像面P1と略垂直となるように配置したので、1次結像系10のような倍率の制約がなく、2次結像系11を高い倍率に設定できる。さらに、2次結像系11の結像面P2が検出面25と略重なるように撮像素子24が配置されているので、撮像素子24により光コントラストかつ高倍率でしかも輝度分布がより均一な像を撮像することができる。
(3)1次結像系10(つまり対物レンズ21)の倍率M1を、M1=tanθo/tanθ1において、角度θ1を20度以上としうる値に設定した。このため、角度θ1を20度以上の比較的大きな値に設定することができ、1次結像系10から2次結像系11の結像レンズ22へ入射する光の反射率を低減できる。このため、2次結像系11によって撮像素子24の検出面25に明るい像を結像できる。
(4)特に1次結像系10の倍率M1を0.3〜3倍の範囲内の値に設定した場合は、1次結像系10の光軸AX1と1次結像系10の結像面P1とのなす角度θ1を比較的大きな値に設定できる。よって、1次結像系10から2次結像系11の結像レンズ22へ入射する光の反射率を効果的に低減できる。
(5)1次結像系10における対物レンズ21の光軸AX1は、試料面SP(物体面)に対する反射光R1の最大反射角のときの光軸に対して試料面SPから離れる方向へひねり角度Δθだけ傾けて配置されている。このため、1次結像系10の光軸AX1と試料面SPとのなす角度θoを大きく設定できるので、角度θ1を大きくした割に、M1=tanθo/tanθ1で表される1次結像系10(つまり対物レンズ21)の倍率M1がさほど小さくならずに済む。
(6)1次結像系10は1つの対物レンズを有し、2次結像系11は対物レンズよりなる1つの結像レンズ22有する構成とした。このように1次結像系10と2次結像系11にそれぞれ対物レンズを1つずつ設けた構成なので、結像系5を複数段に構成した割に、結像系5の構成が簡単で済む。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図4及び5に基づいて説明する。この第2実施形態は、背景光による雑音像の問題を解決するために、エリプソメトリー顕微鏡1の結像系にアフォーカル系を採用した例である。なお、エリプソメトリー顕微鏡1の結像系のみが、第1実施形態と異なり、複合型顕微鏡80における他の構成(走査型プローブ顕微鏡70及び斜め照明系4など)については、第1実施形態と同様である。このため、以下、エリプソメトリー顕微鏡の結像系について説明する。
図4に示すように、この第2実施形態におけるエリプソメトリー顕微鏡1における結像系30は、1次結像系31及び2次結像系32とを有している。1次結像系31は1組の対物レンズ33,34で構成され、2次結像系32は1組をなす対物レンズ35及び結像レンズ36で構成されている。1組の対物レンズ33,34はそれぞれの光軸AX5,AX6を一致させ、かつ対物レンズ33,34の焦点面を一致させるように配置されている。また、1組をなす対物レンズ35及び結像レンズ36はそれぞれの光軸AX7,AX8を一致させ、かつ対物レンズ35及び結像レンズ36の焦点面を一致させるように配置されている。つまり、結像系30は、1組の対物レンズ33,34の焦点面を一致させると共に、1組をなす対物レンズ35及び結像レンズ36の焦点面を一致させたアフォーカル系の結像系となっている。
対物レンズ33の鏡筒37は反射光R1の絞りとして機能し、対物レンズ33を通過した反射光R2は両レンズ33,34の焦点面FP1まで集光した後、この焦点面FP1から拡散して、対物レンズ34の鏡筒38内の範囲に入射する。対物レンズ34を通過した反射光R3は平行光となって、1次結像面P1上に物体像を1次結像すると共に、2次結像系32を構成する対物レンズ35の鏡筒39内の範囲に入射する。対物レンズ35を通過した反射光R4は、両レンズ35,36の焦点面FP2まで集光した後、この焦点面FP2から拡散して結像レンズ36に入射し、結像レンズ36を通過した反射光R5は平行光となって検光子40に入射する。そして、検光子40を通った平行光の反射光R6は撮像素子24の検出面25(2次結像面P2)に入射して、その検出面25上に物体像を2次結像する。
第2実施形態においても、1次結像系31の倍率M1を、2次結像系32の倍率M2よりも小さく設定している(M1<M2)。
図5は、1次結像系31の模式側面図である。図5に示すように、本実施形態では、対物レンズ33の光軸AX5と試料面SPとのなす角度をθoと、対物レンズ34の光軸AX6と1次結像面P1とのなす角度をθ1とおくと、1次結像系31の倍率M1と角度θo,θ1との間には、第1実施形態で示した式(1)の関係が成立する。このため、この第2実施形態においても、1次結像系31を構成する少なくとも1つのレンズが、1組の対物レンズ33,34となっただけで、角度θo,θ1が共に45度に設定されている。そして、1次結像系31の倍率M1が1倍に設定されている。一例として、対物レンズ33,34は共に倍率1倍の対物レンズである。なお、本実施形態においても、角度θoは、想定される最小反射角(=60度)のときの反射光R1の光軸AX2と試料面SPとのなす角度(つまり反射角θref)に、ひねり角度Δθを加えた値として設定されている。このため、本実施形態においても、1次結像系31を通った平行光である反射光R3は、対物レンズ35に対して比較的小さな入射角(例えば60°程度)で入射することができる。
角度θo,θ1、倍率M1がこのような条件に設定されることで、1次結像面P1は図4及び図5に示すように、対物レンズ34と対物レンズ35の間における空間上に形成される。そして、図4及び図5に示すように、2次結像系32を構成する対物レンズ35及び結像レンズ36は、1次結像面P1に対して各々の光軸AX7,AX8が垂直になるように、配置されている。そして、撮像素子24は、その検出面25の中心軸AX4が各光軸AX7,AX8と一致する状態に配置されると共に、その検出面25が2次結像面P2と重なるように配置されている。
ところで、エリプソメトリー顕微鏡1では、試料Sからの反射光のうち基板2からの正反射光の強度が、薄膜3からの散乱光に比べ強い。検出すべき薄膜3の微小構造からの光はこの散乱光である。このため、微小構造をもつ薄膜3の像と正反射光のなす像が重畳された像が撮像素子24で検出される。正反射光は、試料面SPの微小膜厚構造に関する情報を含んでおらず、光源12の強度分布に対応した不要な光強度分布を生じる。これは背景光による像雑音となる。
本実施形態によれば、前記第1実施形態と同様の効果の他に、次の効果が得られる。アフォーカル系の結像系30を採用することにより、背景光となる基板2からの正反射光は、撮像素子24の検出面25へ平行光として入射し、薄膜3の微細構造からの反射光は、種々の角度を持つ収束光となって入射・結像する。試料面SPからの正反射光による光源12の強度分布像は、無限遠に結像することと等価になり、輝度分布をより均一にすることができる。これにより、背景光による雑音像に関する問題を解決することができる。
また、この結像系30は、1次結像系31及び2次結像系32において、結像させるべき物体(試料S)及び1次物体像(1次結像面P1上の像)が、それぞれの対物レンズ33、35に最も近接した配置とすることができる。すなわち、物体からの散乱光を最も効率的に集光できる配置とすることができる。結像対象から散乱光が光軸に対してなす角度が大きい本エリプソメトリー顕微鏡1においては、十分な光量を確保するためにも有効である。
以上のように、基板2上の薄膜3について、他の計測あるいは操作手段のための作業空間の確保と、高い面内分解能との両立を可能とし、さらに背景光による雑音像を抑制することができる。
なお、実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、角度θo,θ1を、θo=θ1とした例を示したが、角度θo,θ1の最小関係は適宜に設定してよい。θo≧θ1が好ましいが、例えばθo<θ1としてもよい。
・実施形態において、1次結像系を構成する対物レンズにひねり角度Δθを加えない構成も採用できる。すなわち、対物レンズの光軸と反射光R1の光軸とを一致させるように対物レンズを配置してもよい。
・実施形態において、エリプソメトリー顕微鏡1は、走査型プローブ顕微鏡との組合せで複合型顕微鏡を構成することに限定されない。例えば、試料Sに力学的な刺激を与えるための摺動用プローブ等の操作手段と組み合わせただけの構成でもよい。この構成のエリプソメトリー顕微鏡によれば、粘弾性を有する薄膜に力学的な刺激を与えた際の応答の様子を、高コントラストかつ高倍率で動的観察することができる。また、計測手段や走査手段は、必ずしも試料に接触する必要はなく、試料に近接して用いられるものでもよい。この種の操作手段としては、試料薄膜(例えば液体薄膜)に流体(例えばエア等の気体や、酸・アルカリ等の液体)を吹き付けるノズルや、試料薄膜(固体薄膜あるいは液体薄膜)に熱刺激を与える光加熱手段やヒーターなどが挙げられる。
・実施形態において、1次結像系と2次結像系のうち少なくとも一方を複数段の結像系により構成してもよい。すなわち、1次結像系と2次結像系のうち少なくとも一方を、少なくとも1個のレンズを有する結像系を複数段並べて構成することができる。例えば2次結像系の場合、結像面は段数と同数設けられ、最終段の結像面が2次結像面となり、この2次結像面に撮像素子の検出面が一致するように撮像素子を配置しればよい。また、2次結像系を構成する複数段の結像系の各レンズはそれぞれの光軸が1次結像面に対して垂直に配置されることが好ましい。
・1次結像系及び2次結像系は、レンズが1個又は2個であることに限定されず、3個以上の複数個のレンズを備えてもよい。
・照明光の光束を絞る絞りを設けてもよい。対象により光束の径を絞ることでコントラストの改善を図ることができる。
・位相補償子16は、λ/4板に替えて、石英製の光弾性変調器としてもよい。位相変調型として高速に位相補償子の変調を行うことができる。CCDカメラとの組合せで高速に処理することができる。
・斜め照明系、結像系ともに模式的な図で説明しているものであり、これと等価の光学系とすることができることは言うまでもない。又、当業者によりその構成は付加され、省略され、置き換えられて実施されうることはもちろんである。
・本発明のエリプソメトリー装置は、試料を拡大して観察する機能を有するエリプソメトリー顕微鏡に適用できることはもちろん、膜厚分布測定を行うエリプソメータにも適用できる。また、エリプソメトリー装置には、例えば、工業用途で、ディスク表面の潤滑膜、ナノインプリントリソグラフィーにおける液体薄膜、ポリマーエレクトロニクスにおける液体分子薄膜などの薄膜の膜厚分布測定を、偏光解析法(エリプソメトリー)を用いて行う薄膜検査装置なども含まれる。
以下、前記各実施形態及び変形例から把握される技術的思想を以下に記載する。
(1)前記1次結像系は、前記レンズとして1つの対物レンズを有し、前記2次結像系は、前記レンズとして1つの対物レンズを有することを特徴とするエリプソメトリー装置。この構成よれば、1次結像系と2次結像系にそれぞれ対物レンズが1つずつ設けられた構成なので、結像系を複数段にした割に、結像系の構成が簡単で済む。
(2)前記1次結像系及び前記2次結像系は、それぞれ少なくとも1組のレンズを含み、当該少なくとも1組のレンズを組毎に焦点面を一致させた構成のアフォーカル系としたことを特徴とするエリプソメトリー装置。この構成によれば、1次結像系及び2次結像系はアフォーカル系であるので、物体における観察対象以外の部分で正反射した背景光は、撮像素子の検出面に平行光として入射し、物体からの反射光は、種々の角度を持つ収束光となって入射・結像する。物体面からの正反射光による強度分布像は、無限遠に結像することと等価になり、輝度分布をより均一にすることができる。これにより、背景光による雑音像を低減できる。
(3)前記第2の倍率は、10倍以上でかつ前記第1の倍率の10倍以上の倍率であることを特徴とするエリプソメトリー装置。この構成によれば、第1の倍率が低倍率でも、エリプソメトリー装置により物体像を高倍率で観察できる。
(4)前記物体面に対して法線方向観察側の位置に前記物体面に対して接触する操作が可能な操作手段を備えたことを特徴とするエリプソメトリー装置。この構成によれば、斜め照明系及び結像系が、物体面に対する照明光の入射元側の位置及び反射光の反射先側の位置にそれぞれ配置され、物体面に対して法線方向観察側の位置にできた空間を、操作手段の作業空間として利用できる。例えば、物体に操作手段を接触させる操作をしながら、物体面の動的観察を行うことができる。
(5)エリプソメトリー装置としてのエリプソメトリー顕微鏡と、前記物体面に対して法線方向観察側の位置に前記物体面に対して接触可能なプローブを配置する走査型プローブ顕微鏡とを備えた複合型顕微鏡。この複合型顕微鏡によれば、エリプソメトリー顕微鏡により物体を広い視野で高倍率で観察し、そのうち特に微細構造を観察したい注目箇所を走査型プローブ顕微鏡でさらに高い倍率で観察できる。