JP5645050B2 - パラジウム含有担持触媒、その製造方法、およびα,β−不飽和カルボン酸の製造方法 - Google Patents

パラジウム含有担持触媒、その製造方法、およびα,β−不飽和カルボン酸の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、アルコール、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドからα,β−不飽和カルボン酸を製造するためのパラジウム含有触媒、その製造方法、およびα,β−不飽和カルボン酸の製造方法に関する。
α,β−不飽和カルボン酸は工業上有用な物質が多い。例えば、アクリル酸やメタクリル酸は合成樹脂原料などの用途に極めて大量に使用されている。
α,β−不飽和カルボン酸を製造する方法として、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により液相酸化して製造する方法について研究がされている。オレフィンを分子状酸素により液相酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造するための触媒として、パラジウム触媒が知られている。さらにパラジウム以外の金属元素を含む触媒として、例えば、特許文献1では、パラジウムと、鉛、ビスマス、タリウム又は水銀との金属間化合物を含有するパラジウム含有触媒が提案されている。また、オレフィンからα,β−不飽和アルデヒドおよびα,β−不飽和カルボン酸を製造、または、α,β−不飽和アルデヒドからα,β−不飽和カルボン酸を製造するための触媒として、例えば特許文献2では、テルルを含有するパラジウム含有触媒が提案されている。
特開昭56−59722号公報 国際公開2005/118134号パンフレット
一般的に触媒の開発に際して考慮される事項としては、触媒反応に使用した場合の目的化合物の生産性が挙げられるが、必ずしも生産性だけで触媒が選定される訳ではない。それ以外に考慮されることとしては、触媒構成元素の原料の価格、供給安定性、および取扱い性などが挙げられる。
そして、オレフィンを分子状酸素により液相酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造するための触媒として、このような事項を考慮して開発されたものが、従来から知られているパラジウム触媒であり、上記の特許文献1および2に記載された組成のパラジウム含有触媒である。しかしながら、工業的にはそのようにして開発された触媒について生産性をさらに高めることが望まれている。
従って本発明の目的は、アルコール、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドからα,β−不飽和カルボン酸を高生産性で製造するための触媒、その触媒の製造方法、およびα,β−不飽和カルボン酸の製造方法を提供することにある。
本発明は、アルコール、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドからα,β−不飽和カルボン酸を製造するためのパラジウム含有担持触媒であって、触媒構成元素としてパラジウム、ジルコニウムおよびテルルを含有し、パラジウム元素1モルに対してジルコニウム元素を0.001〜0.8モル、テルル元素を0.001〜0.4モル含有し、且つ、触媒に含まれる触媒構成元素のうちパラジウム元素、ジルコニウム元素、およびテルル元素の合計が60重量%以上であるパラジウム含有担持触媒である。
また、本発明は前記の担持型触媒を製造する方法であって、担体にパラジウム原料を担持する工程、担体にジルコニウム原料を担持する工程を含むパラジウム含有触媒の製造方法である。さらに、担体にジルコニウム原料を担持する前記工程において、担体に担持されたジルコニウム原料を加熱してジルコニウム酸化物に変える加熱処理を行うことが好ましい。
さらに本発明は、前記パラジウム含有担持触媒を用いて、アルコール、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により液相酸化するα,β−不飽和カルボン酸の製造方法である。
本発明によれば、アルコール、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドからα,β−不飽和カルボン酸を高生産性で製造するためのパラジウム含有触媒、その触媒の製造方法、およびα,β−不飽和カルボン酸の製造方法を提供することができる。
本発明のパラジウム含有触媒(以後、略して「触媒」ともいう。)は、アルコール、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素で液相酸化してα,β−不飽和カルボン酸を製造する(以後、略して「液相酸化」ともいう。)ための触媒であって、パラジウム元素及びジルコニウム元素を含有する。触媒中にジルコニウム元素を含有することで、アルコール、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドからα,β−不飽和カルボン酸を高生産性で製造することが可能な触媒が得られる。
触媒中のパラジウム元素1モルに対するジルコニウム元素のモル数、すなわちジルコニウム元素とパラジウム元素のモル比(Zr/Pdと略すこともある。)は0.001〜0.8であり、0.004〜0.75が好ましく、0.01〜0.7がより好ましく、0.04〜0.65が特に好ましい。高い触媒活性を発現させる観点から、触媒に含まれる触媒構成元素のうち、パラジウム元素およびジルコニウム元素の合計が60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。触媒中において、パラジウム元素はパラジウム金属として含まれていることが好ましい。ジルコニウム元素はジルコニウム金属またはジルコニウム化合物のいずれの状態で含まれていてもよい。
本発明の触媒は、さらにテルル元素を含有することが好ましい。触媒中のパラジウム元素1モルに対するテルル元素のモル数、すなわちテルル元素とパラジウム元素のモル比(Te/Pdと略すこともある。)としては、0.001〜0.4が好ましく、0.005〜0.35がより好ましく、0.01〜0.3がさらに好ましい。高い触媒活性を発現させる観点から、触媒に含まれる触媒構成元素のうち、パラジウム元素、ジルコニウム元素、およびテルル元素の合計が60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。触媒中において、テルル元素はテルル金属またはテルル化合物のいずれの状態で含まれていてもよい。
Zr/PdおよびTe/Pdは、パラジウム含有触媒の製造に使用するパラジウム金属またはパラジウム元素を含む化合物、ジルコニウム金属またはジルコニウム元素を含む化合物、およびテルル金属またはテルル元素を含む化合物の配合比等により調整可能である。なお、本明細書において、パラジウム含有触媒の製造に使用するパラジウム金属またはパラジウム元素を含む化合物を「Pd原料」、ジルコニウム金属またはジルコニウム元素を含む化合物を「Zr原料」、テルル金属またはテルル元素を含む化合物を「Te原料」ともいう。
Zr/PdおよびTe/Pdは、触媒に含まれるジルコニウムとパラジウムの質量および原子量、テルルとパラジウムの質量および原子量からそれぞれ算出できる。触媒に含まれるパラジウム、ジルコニウムおよびテルルの質量は元素分析により定量できる。また、ポアフィリング法や浸漬担持法のようにPd原料、Zr原料およびTe原料に含まれるパラジウム、ジルコニウムおよびテルルの実質的に全量が触媒に含まれる方法で触媒を製造した場合には、使用するPd原料のパラジウム含有率と配合量、使用するZr原料のジルコニウム含有率と配合量、使用するTe原料のテルル含有率と配合量から各元素の質量を算出してもよい。担持型触媒の場合の担持率は、前記の方法等で求められる各元素の質量と使用する担体の質量から算出できる。
元素分析法による触媒中のパラジウム元素とジルコニウム元素の質量の定量方法としては次のA処理液とB処理液を調製して分析する方法が例示できる。テルル等のそれ以外の元素も同様に測定できる。
A処理液の調製:触媒0.2gおよび濃硝酸、濃硫酸、過酸化水素水をテフロン(登録商標)製分解管にとり、マイクロ波加熱分解装置(CEM社製、MARS5(商品名))で溶解処理を行った。ろ紙を用いて試料から不溶解部をろ別し、ろ液および洗浄水を合わせてメスフラスコにメスアップし、A処理液とする。
B処理液の調製:A処理液の調製においてろ別された不溶解部を集めたろ紙を白金製ルツボに移し加熱・灰化した後、メタホウ酸リチウムを加えてガスバーナーで溶融した。冷却後に塩酸と少量の水をルツボに入れて溶解後、メスフラスコにメスアップし、B処理液とする。
得られたA処理液およびB処理液に含まれるジルコニウムとパラジウムの質量を、ICP発光分析装置(サーモエレメンタル社製、IRIS−Advantage(商品名))で定量し、両処理液中の元素毎の質量合計から触媒中の各元素の質量を求めることができる。
また、本発明の触媒は、非担持型でもよいが、触媒構成元素の少なくとも1種または全部が担体に担持されている担持型が好ましい。担体としては、例えば、活性炭、カーボンブラック、シリカ、アルミナ、マグネシア、カルシア、チタニアおよびジルコニア等を挙げることができる。中でもシリカ、アルミナ、マグネシア、カルシア、チタニアおよびジルコニアがより好ましく、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアが特に好ましい。担体は1種でもよいが、2種以上を用いることもできる。2種以上を用いる場合は、例えば、シリカとアルミナを混合して得られる混合酸化物等の混合物、複合酸化物であるシリカ−アルミナ等の複合物等が挙げられる。
担体の好ましい比表面積は担体の種類等により異なるので一概に言えないが、シリカの場合、50m/g以上が好ましく、100m/g以上がより好ましい。また1500m/g以下が好ましく、1000m/g以下がより好ましい。担体の比表面積は、小さいほど有用成分(パラジウム元素、およびジルコニウム元素)がより表面に担持された触媒の製造が可能となり、大きいほど有用成分が多く担持された触媒の製造が可能となる。
担体の細孔容積は特に限定されないが、0.1cc/g以上が好ましく、0.2cc/g以上がより好ましい。また2.0cc/g以下が好ましく、1.5cc/g以下がより好ましい。
担体の形状やサイズは、α,β−不飽和カルボン酸の製造に用いる反応装置の形状、サイズ等によって好ましい形態が異なり、特に制限されないが、例えば、粉末状、粒状、球状、ペレット状など種々の形状が挙げられる。中でもろ別等の操作が容易な粒状、球状が好ましい。担体が粉末状や粒状の場合の粒径(メディアン径)は、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。また、200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。担体の粒径は大きいほど触媒と反応液の分離が容易になり、小さいほど反応液中における触媒の分散性がよくなる。
担持型触媒の場合、担体に対するパラジウム元素の担持率は、担持前の担体質量に対して0.1〜40質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましく、1〜20質量%がさらに好ましい。
担持型触媒の場合の担持率は、前記の方法等で求められる各元素の質量と使用する担体の質量から算出できる。また、担体の質量は、次のような方法で定量することもできる。すなわち、触媒を白金るつぼに取り、炭酸ナトリウムを加えて融解する。その後、蒸留水を加えて均一溶液として、ICP発光分析で試料溶液中の特定元素の定量をする。例えばシリカ担体の場合、ケイ素元素を定量する。
本発明の触媒は、パラジウム元素、ジルコニウム元素、およびテルル元素以外の、その他の金属元素(以後、「その他の金属元素」ともいう。)を触媒構成元素として含んでいてもよい。その他の金属元素としては、例えば、白金、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、金、銀、オスミウム、銅、鉛、ビスマス、タリウム、水銀、アンチモン等が挙げられる。他の金属元素は1種または2種以上含有することができる。触媒中において、その他の金属元素は金属または化合物のいずれの状態で含まれていてもよい。
触媒の製造に使用するその他の金属元素の原料としては、単体(金属)またはその他の金属元素を含む化合物(以後、「その他の原料」ともいう。)を使用することができる。以後、その他の原料と、Pd原料、Zr原料、Te原料とをまとめて「金属原料」ともいう。
触媒中において、金属元素が金属または化合物のいずれの状態で含まれているかは、XPS分析によって結合状態を定性的に確認することで知ることができる。
本発明の担持型触媒の製造方法について説明する。
本発明の担持型触媒は、担体にPd原料を担持する工程(以後、「Pd担持工程」ともいう。)、担体にZr原料を担持する工程(以後、「Zr担持工程」ともいう。)を含む方法で好適に製造できる。テルルを含有する担持型触媒を製造する場合には、担体にTe原料を担持する工程(以後、「Te担持工程」ともいう。)をさらに有する方法で好適に製造できる。その他の金属元素を含有する担持型触媒を製造する場合には、担体にその他原料を担持する工程(以後、「その他の担持工程」ともいう。)を有する方法で製造することができる。Pd担持工程において担持したPd原料が酸化状態のパラジウム元素を含む化合物である場合、このPd原料を還元してパラジウム金属に変える工程(以後、「Pd還元工程」ともいう。)が必要である。Zr原料が酸化状態のジルコニウム元素を含む場合、Te原料が酸化状態のテルル元素を含む場合、およびその他の原料が酸化状態のその他の金属元素を含む場合の各原料を還元して金属に変える工程(以後、それぞれ「Zr還元工程」、「Te還元工程」、「その他の還元工程」ともいう。)は、実施しても、しなくてもよい。つまり、触媒中において、ジルコニウム元素、テルル元素、その他の金属元素は、金属または化合物のいずれの状態で含まれていてもよい。
Pd担持工程、Zr担持工程、Te担持工程およびその他の担持工程(以後、これらをまとめて「担持工程」ともいう。)において、金属原料を担持する方法としては、例えば、金属原料の1種または2種以上を溶媒に溶解または分散した溶液またはスラリーを担体に含浸した後、乾燥して溶媒を除去する方法が挙げられる。
溶液またはスラリーを担体に含浸する方法としては、溶液またはスラリーを担体に吸収させる、ポアフィリング法や浸漬法が好ましい。溶媒は金属原料を溶解または分散するものであれば特に限定されない。金属原料の溶媒としては、例えば、水;酢酸、吉草酸等の有機カルボン酸類;硝酸、塩酸等の無機酸;エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類等の溶媒を単独または複数組み合わせて用いることができる。金属原料の溶解性または分散性または担体の分散性の観点から、水、有機カルボン酸類が好ましい。
担持工程は、全ての金属原料を含む溶液またはスラリーを用いて1度だけ行うこともできるが、複数の溶液またはスラリーを用いて複数回行うこともできる。複数回行う場合の2回目以降の担持工程は前回の担持工程後、後述する還元工程後のいずれに行ってもよい。金属原料を担持する順序は特に限定されない。
また、担持工程において担体に担持された金属原料を加熱して金属酸化物(酸化状態の金属元素を含む化合物の一種)に変える加熱処理(以後、「加熱処理」ともいう。)を行うことが好ましい。特に、Zr担持工程において、担体に担持されたZr原料を加熱してジルコニウム酸化物に変える加熱処理を行うことが好ましい。このように加熱処理を行うことで、最終的に金属元素の分散度が高い触媒を得ることができる。
加熱処理の温度は金属原料が酸化物に変化する分解温度以上とすることが好ましく、例えば、Pd原料が硝酸パラジウムの場合は120℃以上が好ましく、Zr原料が硝酸ジルコニルの場合は140℃以上が好ましい。金属原料が酸化物に変化したことはXPS分析で金属元素の結合状態を測定することで確認することができる。また、加熱処理の時間は金属原料の少なくとも一部が金属酸化物に変化する時間であればよく、1〜12時間が好ましい。
Zr原料に対する加熱処理の温度は、熱分解されて酸化物を形成するという観点で200℃以上が好ましく、600℃以上がより好ましい。また、この温度は高すぎると担体が結晶化する等の理由により触媒活性が低下することがあるので、この点を勘案して決めるとよい。このような理由により、担体がシリカ担体の場合の加熱処理の温度は1200℃以下が好ましく、1000℃以下がより好ましい。
Zr原料に対する加熱処理を600℃以上の処理温度で行う場合、Zr原料に対する加熱処理を行った後に、Pd担持工程を行うことが好ましい。
Pd原料としては、例えば、パラジウム塩、酸化パラジウム、酸化パラジウム合金、パラジウム金属等を挙げることができるが、中でもパラジウム塩が好ましい。パラジウム塩としては、例えば、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、硫酸パラジウム、テトラアンミンパラジウム塩化物およびビス(アセチルアセトナト)パラジウム等を挙げることができるが、中でも塩化パラジウム、酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、テトラアンミンパラジウム塩化物が好ましい。Pd原料は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
Zr原料としては、例えば、ジルコニウム塩、酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム合金、ジルコニウム金属等を挙げることができるが、中でもジルコニウム塩が好ましい。ジルコニウム塩としては、例えば、硝酸ジルコニル、酢酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム等がある。Zr原料は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
Te原料としては、例えば、テルル金属、テルル塩、テルル酸およびその塩、亜テルル酸およびその塩、酸化テルル等が挙げられる。中でも、テルル酸およびその塩、亜テルル酸およびその塩、酸化テルルが好ましい。テルル塩としては、例えば、テルル化水素、四塩化テルル、二塩化テルル、六フッ化テルル、四ヨウ化テルル、四臭化テルル、二臭化テルル等が挙げられる。テルル酸塩としては、例えば、テルル酸ナトリウム、テルル酸カリウム等が挙げられる。亜テルル酸塩としては、例えば、亜テルル酸ナトリウム、亜テルル酸カリウム等が挙げられる。Te原料は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上記の化合物の他に、パラジウム元素、ジルコニウム元素およびテルル元素のうち2種以上の元素を含有する化合物を、その2種以上の元素の原料として用いることも可能である。具体的には、例えばパラジウム−テルル錯体等〔PdXn(TeRR’)4−n〕(式中、Pdはパラジウムを表し、Xはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素を表し、TeRR’は有機テルル化合物)をPd原料かつTe原料として用いることが挙げられる。酸化状態のパラジウム元素と酸化状態のジルコニウム元素の両方を含有する化合物等をPd原料かつZr原料として用いることも可能である。
上記のようなPd原料、Zr原料を適宜選択して、触媒を製造するための原料として用いる。これらの化合物の配合量は、Zr/Pdやパラジウムの担持率が目的とする値となるように適宜選択する。テルルを含有する触媒を製造する場合には、上記のようなTe原料を適宜選択して、触媒を製造するための原料として用いる。これらの化合物の配合量は、Te/Pdが目的とする値となるように適宜選択する。
また、その他の金属元素を触媒構成元素として含む触媒を製造する場合、原料として、その他の金属原料を併用すればよい。その他の原料としては、例えば、その他の金属元素を含む、金属、金属酸化物、金属塩、金属酸素酸、金属酸素酸塩等が挙げられる。
前に述べたように、Pd担持工程において担持したPd原料が酸化状態のパラジウム元素を含む化合物である場合にPd還元工程は必須である。一方、Zr還元工程、Te還元工程、その他の還元工程の実施は任意である。これらの各還元工程は別々に行ってもよいし、2種以上の元素の還元工程を同時に行ってもよい。また、還元工程を行う順序は任意である。還元の方法としては、担体に担持された金属原料に還元剤を接触させて還元する方法が挙げられる。
上記以外の還元方法としては、例えば、(1)酸化状態の金属元素を含む原料の溶液またはスラリーと担体が接触している状態で還元剤を接触させて溶液またはスラリー中の金属元素を還元すると同時に担持する方法、(2)(1)の方法を実施した後、さらに他の原料を添加する方法等が挙げられる。
(1)の還元方法としては、例えば、金属原料の1種または2種以上を前述したように溶媒に溶解または分散した溶液またはスラリーを担体に含浸させた状態で還元剤を接触させて金属原料を還元する方法、溶液またはスラリー中に担体を分散させた状態で還元剤を接触させて金属原料を還元する方法等が挙げられる。
還元剤を接触させる操作は、全ての金属原料を含む溶液またはスラリーを用いて1度だけ行うこともできるが、一部の金属原料を含む複数の溶液またはスラリーを用いて複数回行うこともできる。複数回行う場合は、2回目以降の還元処理では前回の還元処理した担体を使用する。金属元素を担持する順序は特に限定されない。
(2)の還元方法としては、例えば、担体の存在下で金属原料を還元剤で還元した後の溶液またはスラリーに、別途、他の金属原料を水などの溶媒に溶解または分散させた溶液またはスラリーを添加する手法が好ましい。添加する溶液またはスラリーの溶媒としては、水が一般的であるが、前途したような種々の有機溶媒等を用いてもよい。その他の金属原料を添加した後に、再度還元剤を添加して還元してもよい。
還元処理を複数回行う場合、還元剤の種類、還元温度および時間、液相で行う際の溶媒の種類等は、各回毎に独立して適宜設定できる。
還元の際に用いる還元剤は特に限定されないが、例えば、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、水素、蟻酸、蟻酸の塩、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、1,3−ブタジエン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、シクロヘキセン、アリルアルコール、メタクリルアルコール、アクロレインおよびメタクロレイン等が挙げられる。中でもヒドラジン、ホルムアルデヒド、水素、蟻酸、蟻酸の塩が好ましい。また、これらを2種以上併用することもできる。
液相中で還元する際に使用する溶媒としては、水が好ましいが、担体の分散性によっては、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸、n−吉草酸、イソ吉草酸等の有機酸類;ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類等の有機溶媒を単独または複数組み合わせて用いることができる。これらと水の混合溶媒を用いることもできる。
還元剤が気体の場合、溶液中への溶解度を上げるためにオートクレーブ等の加圧装置中で行うことが望ましい。その際、加圧装置の内部は還元剤で加圧することが好ましい。その圧力は0.1〜1MPa(ゲージ圧;以下圧力はゲージ圧表記とする)が好ましい。
また、還元剤が液体の場合、還元を行う装置に制限はなく溶液中に還元剤を添加することで行うことができる。この時の還元剤の使用量は特に限定されないが、還元する原料1モルに対して1モル〜100モルとすることが好ましい。
還元温度および還元時間は、還元する原料や還元剤等により異なるが、還元温度は−5〜150℃が好ましく、15〜80℃がより好ましい。還元時間は0.1〜4時間が好ましく、0.25〜3時間がより好ましく、0.5〜2時間がさらに好ましい。
還元を必要としない金属原料を用いて担持型触媒を製造する場合は、上記の還元を終えた担体に、その金属原料の担持工程を行えばよい。
上記Pd原料、Zr原料およびTe原料の担持、還元処理の全ての工程は同時、または任意の順序で行うことができる。
得られた触媒は、水、有機溶媒等で洗浄することが好ましい。水、有機溶媒等での洗浄により、例えば、塩化物、酢酸根、硝酸根、硫酸根等の金属原料等に由来する不純物が除去される。洗浄の方法および回数は特に限定されないが、不純物によっては液相酸化反応を阻害する恐れがあるため不純物を十分除去できる程度に洗浄することが好ましい。洗浄された触媒は、ろ別または遠心分離などにより回収した後、そのまま反応に用いてもよい。また、パラジウム化合物の還元、ジルコニウム化合物の還元およびテルル化合物の還元を別工程で行う場合、その工程間で洗浄を行うことも好ましい。
また、回収された触媒を乾燥してもよい。乾燥方法は特に限定されないが、乾燥機を用いて空気中または不活性ガス中で乾燥することが好ましい。乾燥された触媒は、必要に応じて反応に使用する前に活性化することもできる。活性化の方法は特に限定されないが、例えば、水素気流中の還元雰囲気下で熱処理する方法が挙げられる。この方法によれば触媒構成元素の表面の酸化被膜および洗浄で取り除けなかった不純物を除去することができる。調製した触媒の物性は、BET表面積測定、XRD測定、COパルス吸着法、TEM測定等により確認できる。調製した触媒の物性は、BET表面積測定、XRD測定、COパルス吸着法、TEM測定等により確認できる。
液相酸化に用いる原料のアルコールとしては、例えば2−プロパノール、t−ブチルアルコール、2−ブタノール等が挙げられるが、中でも2−プロパノールおよびt−ブチルアルコールが好適である。原料のアルコールは2種以上併用することもできる。原料のアルコールには、不純物として水や飽和炭化水素および/または低級飽和アルデヒドを少量含んでも良い。アルコールからは脱水反応を経由してα,β−不飽和カルボン酸が得られる。例えば、原料が2−プロパノールの場合はプロピレンを経由するので、プロピレンと同一骨格を有するアクリル酸が得られ、原料がt−ブチルアルコールの場合はイソブチレンを経由するのでイソブチレンと同一骨格を有するメタクリル酸が得られる。
液相酸化に用いる原料のオレフィンとしては、例えば、プロピレン、イソブチレン、2−ブテン等が挙げられるが、中でもプロピレンおよびイソブチレンが好適である。オレフィンは2種以上併用することもできる。原料のオレフィンは、不純物として飽和炭化水素および/または低級飽和アルデヒド等を少量含んでいてもよい。オレフィンから製造されるα,β−不飽和カルボン酸は、オレフィンと同一炭素骨格を有するα,β−不飽和カルボン酸である。例えば、原料がプロピレンの場合アクリル酸が得られ、原料がイソブチレンの場合メタクリル酸が得られる。また、通常はオレフィンからはα,β−不飽和アルデヒドが同時に得られる。このα,β−不飽和アルデヒドは、オレフィンと同一炭素骨格を有するα,β−不飽和アルデヒドである。例えば、原料がプロピレンの場合アクロレインが得られ、原料がイソブチレンの場合メタクロレインが得られる。
液相酸化に用いる原料のα,β−不飽和アルデヒドとしては、例えば、アクロレイン、メタクロレイン、クロトンアルデヒド(β−メチルアクロレイン)、シンナムアルデヒド(β−フェニルアクロレイン)等が挙げられる。中でもアクロレインおよびメタクロレインが好適である。α,β−不飽和アルデヒドは2種以上併用することもできる。原料のα,β−不飽和アルデヒドは、不純物として飽和炭化水素および/または低級飽和アルデヒド等を少量含んでいてもよい。α,β−不飽和アルデヒドから製造されるα,β−不飽和カルボン酸は、α,β−不飽和アルデヒドのアルデヒド基がカルボキシル基に変化したα,β−不飽和カルボン酸である。例えば、原料がアクロレインの場合アクリル酸が得られ、原料がメタクロレインの場合メタクリル酸が得られる。
アルコール、オレフィンおよびα,β−不飽和アルデヒドから選択される2種以上の原料を組み合わせることもできる。原料の組み合わせは、オレフィンとアルコールの組み合わせが好ましく、原料としてアルコールを用いる場合は、液相酸化反応の溶媒と兼用することが好ましい。
液相酸化反応は連続式、バッチ式のいずれの形式で行ってもよいが、生産性を考慮すると工業的には連続式が好ましい。
液相酸化反応に用いる分子状酸素源は、空気が経済的であり好ましいが、純酸素または純酸素と空気の混合ガスを用いることもでき、必要であれば、空気または純酸素を窒素、二酸化炭素、水蒸気等で希釈した混合ガスを用いることもできる。分子状酸素は、オートクレーブ等の反応容器内に加圧状態で供給することが好ましい。
液相酸化反応に用いる溶媒としては、例えば、t−ブタノール、シクロヘキサノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、iso−酪酸、n−吉草酸、iso−吉草酸、酢酸エチルおよびプロピオン酸メチルからなる群から選ばれる少なくとも1つの有機溶媒を用いることが好ましい。中でも、t−ブタノール、メチルイソブチルケトン、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、iso−酪酸、n−吉草酸およびiso−吉草酸からなる群から選ばれる少なくとも1つの有機溶媒がより好ましい。また、α,β−不飽和カルボン酸をより選択率よく製造するために、これら有機溶媒に水を共存させることが好ましい。共存させる水の量は特に限定されないが、有機溶媒と水の合計質量に対して好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。有機溶媒と水の混合物は均一な状態であることが望ましいが、不均一な状態であっても差し支えない。
液相酸化の反応系中に存在する原料(アルコール、オレフィンおよびα,β−不飽和アルデヒド)の合計濃度は、反応器内に存在する溶媒に対して0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。また50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。ただし、原料を溶媒と兼用する場合はこの限りではなく、原料の合計濃度は50質量%を超える濃度であってもよい。
また、反応系中に酸性物質が共存していても差し支えない。酸性物質としては無機酸、ヘテロポリ酸およびその塩、並びに固体酸等が挙げられる。酸性物質は2種以上を併用することもできる。
分子状酸素の使用量は、反応系中に存在する原料(アルコール、オレフィンおよびα,β−不飽和アルデヒド)の合計1モルに対して0.1モル以上が好ましく、0.2モル以上がより好ましく、0.3モル以上が特に好ましい。また、20モル以下が好ましく、15モル以下がより好ましく、10モル以下が特に好ましい。ただし、原料を液相酸化反応の溶媒と兼用する場合はこの限りではなく、分子状酸素の使用量は、原料の合計1モルに対して0.1モル未満であってもよい。
触媒は液相酸化を行う反応液に懸濁させた状態で使用することが好ましいが、固定床で使用してもよい。触媒の使用量は、反応器内に存在する溶液に対して0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が特に好ましい。また、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下が特に好ましい。
反応温度および反応圧力は、用いる溶媒および原料によって適宜選択される。反応温度は30℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。また、300℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。反応圧力は大気圧(0MPa)以上が好ましく、2MPa以上がより好ましい。また、10MPa以下が好ましく、7MPa以下がより好ましい。
以下、本発明について実施例、比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。下記の実施例および比較例中の「部」は質量部である。
Zr/Pd、Te/Pdとパラジウムの担持率の算出に用いるパラジウム、ジルコニウムおよびテルルの質量は、使用するPd原料のパラジウム含有率と配合量、使用するZr原料のジルコニウム含有率と配合量、使用するテルル化合物のテルル含有率と配合量から算出した。また、担体質量に対するパラジウムの質量の比を「パラジウムの担持率」とした。
(α,β−不飽和カルボン酸の製造における生成物の分析)
α,β−不飽和カルボン酸の製造における生成物の分析はガスクロマトグラフィーを用いて行った。
なお、生成するα,β−不飽和カルボン酸の生産性は以下のように定義される。
α,β−不飽和カルボン酸の生産性(g/(gPd×h))=A/(B×C)
ここで、Aは生成したα,β−不飽和カルボン酸の質量(単位:g)、Bは触媒に含まれるパラジウム金属の質量(単位:g)、Cは反応時間(単位:時間)である。
各実施例および比較例で使用した触媒のZr/Pd、Te/Pdおよびパラジウムの担持率、並びに反応評価の結果であるメタクリル酸生産性は表1にまとめて示した。
[実施例1]
(触媒調製)
オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO)0.125部に純水40部を加え均一に溶解させた。この溶液に粒状のシリカ担体(比表面積450m/g、細孔容積0.68cc/g、メディアン径53.58μm)20部を完全に浸漬した後、エバポレーションで浸漬溶媒を除去した。このような浸漬担持法でZr原料を担持させた担体を空気中400℃で3時間焼成(昇温速度=1℃/分)を行い、ジルコニウム酸化物が担持された触媒前駆体(A)を得た。
さらに、テルル酸0.108部を純水40部に均一に溶解させた水溶液に硝酸パラジウム硝酸溶液(パラジウム23.33wt%)4.28部を加え、均一溶液を調製した。この溶液に上記の方法で得られた触媒前駆体(A)を加え完全に浸漬した後、エバポレーションで浸漬溶媒を除去した。このような浸漬担持法でPd原料およびTe原料をさらに担持させた担体を空気中200℃で3時間焼成(昇温速度=1℃/分)を行い、パラジウム酸化物、ジルコニウム酸化物およびテルル酸化物がシリカに担持された触媒前駆体(B)を得た。
得られた触媒前駆体(B)を還元剤である37質量%ホルムアルデヒド水溶液60.0部に加えた。これを70℃に加熱し、2時間攪拌保持する還元処理を行った。次いで、吸引ろ過後、温水1000部でろ過洗浄して、パラジウム、ジルコニウムおよびテルルがシリカ担体に担持された触媒を得た。触媒をXPSで分析したところ、パラジウムは金属状態であったが、ジルコニウムは酸化物のままであり、テルルは大部分が金属状態であったが一部は酸化物のままであった。
(反応評価)
オートクレーブに上記の方法で得た触媒のうち10.5g(パラジウムとしては0.5g)を内容積330mlのオートクレーブ(東洋高圧製、型式:LC−3)に仕込み、反応溶媒としての86質量%t−ブタノール水溶液100gと、ラジカルトラップ剤としてp−メトキシフェノールを反応溶液に対して200ppmを入れ、オートクレーブを密閉した。オートクレーブ内を窒素ガスで置換し、次いで、イソブチレンを6.5部導入し、攪拌(回転数1000rpm)を開始し、110℃まで昇温した。昇温完了後、オートクレーブに窒素を内圧2.4MPaまで導入した後、圧縮空気を内圧4.8MPaまで導入した。反応中に内圧が0.2MPa低下した時点(内圧4.6MPa)で、純酸素を0.2MPa導入する操作を繰り返し、純酸素の追加量が合計1.8MPaに達した時点で反応終了した。
反応終了後、氷水浴にてオートクレーブ内を冷却した。オートクレーブのガス出口にガス捕集袋を取り付け、ガス出口を開栓して出てくるガスを回収しながら反応器内の圧力を開放した。オートクレーブから触媒入りの反応液を取り出し、メンブランフィルターで触媒を分離して、反応液を回収した。回収した反応液と捕集したガスをガスクロマトグラフィーにより分析した。
[実施例2]
(触媒調製)
オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO)0.125部とテルル酸0.108部を純水40部に溶解させた水溶液に硝酸パラジウム硝酸溶液(パラジウム23.33wt%)4.28部を加え、均一溶液を調製した。この溶液に粒状のシリカ担体(比表面積450m/g、細孔容積0.68cc/g、メディアン径53.58μm)20部を完全に浸漬した後、エバポレーションで浸漬溶媒を除去した。このような浸漬担持法でPd原料、Te原料およびZr原料を担持させた担体を空気中200℃で3時間焼成(昇温速度=1℃/分)を行い、パラジウム酸化物、ジルコニウム酸化物、テルル酸化物がシリカに担持された触媒前駆体(C)を得た。
得られた触媒前駆体(C)を実施例1と同様の操作で還元処理、ろ過洗浄を実施し、パラジウム、ジルコニウムおよびテルルがシリカ担体に担持された触媒を得た。触媒をXPSで分析したところ、パラジウムは金属状態であったが、ジルコニウムは酸化物のままであり、テルルは大部分が金属状態であったが一部は酸化物のままであった。
(反応評価)
上記の方法で得た触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作で反応評価を行った。
[実施例3]
(触媒調製)
オキシ硝酸ジルコニウムの使用量を1.25部とした以外は実施例1と同様の操作で触媒を得た。触媒をXPSで分析したところ、パラジウムは金属状態であったが、ジルコニウムは酸化物のままであり、テルルは大部分が金属状態であったが一部は酸化物のままであった。
(反応評価)
上記の方法で得た触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作で反応評価を行った。
[比較例1]
(触媒調製)
オキシ硝酸ジルコニウムを加えなかったこと以外は実施例1と同様の操作でパラジウムおよびテルルがシリカ担体に担持された触媒を得た。触媒をXPSで分析したところ、パラジウムは金属状態であったが、ジルコニウムは酸化物のままであり、テルルは大部分が金属状態であったが一部は酸化物のままであった。
(反応評価)
上記の方法で得た触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作で反応評価を行った。
[比較例2]
(触媒調製)
オキシ硝酸ジルコニウムを2.50部とした以外は実施例1と同様の操作で触媒を得た。触媒をXPSで分析したところ、パラジウムは金属状態であったが、ジルコニウムは酸化物のままであり、テルルは大部分が金属状態であったが一部は酸化物のままであった。
(反応評価)
上記の方法で得た触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作で反応評価を行った。
[実施例4]
(触媒調製)
オキシ硝酸ジルコニウムを0.0126部としたこと、および触媒前駆体(A)を得るときの焼成条件を空気中800℃で3時間焼成(昇温速度=1℃/分)にしたこと以外は、実施例1と同様の操作で触媒を得た。触媒をXPSで分析したところ、パラジウムは金属状態であったが、ジルコニウムは酸化物のままであり、テルルは大部分が金属状態であったが一部は酸化物のままであった。
(反応評価)
上記の方法で得た触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作で反応評価を行った。
[実施例5]
(触媒調製)
触媒前駆体(A)を得るときの焼成条件を空気中800℃で3時間焼成(昇温速度=1℃/分)にしたこと以外は、実施例1と同様の操作で触媒を得た。触媒をXPSで分析したところ、パラジウムは金属状態であったが、ジルコニウムは酸化物のままであり、テルルは大部分が金属状態であったが一部は酸化物のままであった。
(反応評価)
上記の方法で得た触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作で反応評価を行った。
[実施例6]
(触媒調製)
触媒前駆体(A)を得るときの焼成条件を空気中800℃で3時間焼成(昇温速度=1℃/分)にしたこと以外は、実施例3と同様の操作で触媒を得た。触媒をXPSで分析したところ、パラジウムは金属状態であったが、ジルコニウムは酸化物のままであり、テルルは大部分が金属状態であったが一部は酸化物のままであった。
(反応評価)
上記の方法で得た触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作で反応評価を行った。
[比較例3]
(触媒調製)
触媒前駆体(A)を得るときの焼成条件を空気中800℃で3時間焼成(昇温速度=1℃/分)にしたこと以外は、比較例1と同様の操作で触媒を得た。触媒をXPSで分析したところ、パラジウムは金属状態であったが、ジルコニウムは酸化物のままであり、テルルは大部分が金属状態であったが一部は酸化物のままであった。
(反応評価)
上記の方法で得た触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作で反応評価を行った。
[比較例4]
(触媒調製)
触媒前駆体(A)を得るときの焼成条件を空気中800℃で3時間焼成(昇温速度=1℃/分)にしたこと以外は、比較例2と同様の操作で触媒を得た。触媒をXPSで分析したところ、パラジウムは金属状態であったが、ジルコニウムは酸化物のままであり、テルルは大部分が金属状態であったが一部は酸化物のままであった。
(反応評価)
上記の方法で得た触媒を用いた以外は実施例1と同様の操作で反応評価を行った。
以上、実施例1〜6、比較例1〜4の結果から、パラジウムとテルルを含む従来の触媒に、ジルコニウムをパラジウム1モルに対して0.001〜0.8モル含有させることによってメタクリル酸の生産性が向上することが分かった。また、Zr原料に対する加熱処理の温度は400℃より800℃の方がメタクリル酸の生産性が高いことが分かった。
Figure 0005645050

Claims (5)

  1. アルコール、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドからα,β−不飽和カルボン酸を製造するためのパラジウム含有担持触媒であって、触媒構成元素としてパラジウム、ジルコニウムおよびテルルを含有し、パラジウム元素1モルに対してジルコニウム元素を0.001〜0.8モル、テルル元素を0.001〜0.4モル含有し、且つ、触媒に含まれる触媒構成元素のうちパラジウム元素、ジルコニウム元素、およびテルル元素の合計が60重量%以上であるパラジウム含有担持触媒。
  2. 請求項1記載のパラジウム含有担持触媒を製造する方法であって、担体にパラジウム原料を担持する工程、担体にジルコニウム原料を担持する工程を含むパラジウム含有担持触媒の製造方法。
  3. 担体にジルコニウム原料を担持する前記工程において、担体に担持されたジルコニウム原料を加熱してジルコニウム酸化物に変える加熱処理を行うことを特徴とする請求項に記載の方法。
  4. 前記加熱処理の温度が200℃〜1200℃である請求項記載の方法。
  5. 請求項1記載のパラジウム含有担持触媒を用いて、アルコール、オレフィンまたはα,β−不飽和アルデヒドを分子状酸素により液相酸化するα,β−不飽和カルボン酸の製造方法。
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