JP5643933B2 - Znf512b遺伝子の一塩基多型に基づく筋萎縮性側索硬化症の検査方法 - Google Patents

Znf512b遺伝子の一塩基多型に基づく筋萎縮性側索硬化症の検査方法 Download PDF

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本発明は筋萎縮性側索硬化症(ALS)を予測または判定するための検査方法及び該検査方法に用いられる試薬に関する。
ALSは運動ニューロンの変性および脱落さらには筋肉の委縮や筋力低下を症状とする原因不明の神経難病であり、年間発症者は世界で10万人当たり約2.5人である。
ALSの遺伝的要因は複雑である。ALSの約10%が家族的であり、その大部分が一遺伝子の形質によると考えられている。これまでに少なくとも14のALSに関連する遺伝子座が同定されている(非特許文献1)。そして、ALSの発症に関連する変異が以下の7遺伝子において報告されている。
SOD1(非特許文献2、3)
ALS2(非特許文献4、5)
SETX(非特許文献6)
VAPB(非特許文献7)
DCTN1(非特許文献8)
TARDBP(非特許文献9、10)
FUS/TLS(非特許文献11,12)
しかしながら、これらの変異は家族性ALSのごくわずかのパーセンテージにおいて見られるのみである。SOD1 変異はそのうちの約20%を占めるが、全ALS症例からすると2〜4%に過ぎない。ほとんどのALSは多因子遺伝(散発性ALS)と考えられており、候補遺伝子アプローチに基づく散発性ALSの相関解析に関してはこれまでに30以上の報告があるが、それらの結果に対してはいずれも異論が存在し、コンセンサスは得られていない(非特許文献13)。
また、パラオキソナーゼ遺伝子クラスターにおける遺伝子多型も最近の大規模メタ解析では散発性ALSとの有意な相関は見られなかった(非特許文献14)。さらに、散発性ALSについてのゲノムワイド相関解析がITPR2およびDPP6 の2つの遺伝子座について報告されているが(非特許文献15,16)、最近のゲノムワイド相関解析はそれらの相関をサポートしていない(非特許文献17)。
ZNF512BはGM632とも呼ばれ 、KIAA cDNAクローンの一つ(KIAA1196)であり、C2H2タイプのzinc fingerドメインを持つzinc finger型転写因子をコードすると予測されている(非特許文献18)。ZNF512B mRNA の発現は普遍的で、脳や脊髄にも発現している(非特許文献18)。また、ZNF512BのsiRNA が特異的に内在性プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター タイプ1遺伝子の発現を抑制したこと、またTGF-βレスポンスコンストラクトを導入し、TGF-β刺激によるレポータージーンアッセイの系でZNF512BのsiRNA がTGF-β依存性ルシフェラーゼ活性を抑制したことが報告されている(非特許文献19)。これらの結果より、ZNF512Bは、TGF-βシグナル経路において必須の遺伝子であることが示されている(非特許文献19)。
しかしながら、ZNF512B遺伝子とALSの関係は知られていない。
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本発明は、ALSの発症リスクや発症を正確に検査する方法、及び該方法に用いられる検査試薬を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題の解決のために鋭意検討した結果、ヒトZNF512B遺伝子中に存在する一塩基多型(SNP)がALSの発症に関連することを同定した。そして、この多型を調べることによりALSの発症リスクや発症を正確に検査できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)ZNF512B遺伝子の一塩基多型を分析し、該分析結果に基づいて筋萎縮性側索硬化症を検査する方法。
(2)前記一塩基多型が、配列番号1の塩基配列の塩基番号61番目の塩基に相当する塩基、または該塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基における一塩基多型である、(1)の方法。
(3)配列番号1の塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む10塩基以上の配列、又はその相補配列を有する筋萎縮性側索硬化症検査用プローブ。
(4)配列番号1の塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む領域を増幅することのできる筋萎縮性側索硬化症検査用プライマー。
(5)ZNF512B遺伝子の発現量を分析し、該分析結果に基づいて筋萎縮性側索硬化症を検査する方法。
(6)次の工程を含む、筋萎縮性側索硬化症を検査する方法。
a) 被験者のZNF512B遺伝子の発現量を測定する工程、及び
b) 被験者のZNF512B遺伝子の発現量と正常者のZNF512B遺伝子の発現量とを比較する工程。
本発明によれば、これまで予測が困難であったALSの発症リスクを正確かつ簡便に予測することができる。また、ALSの発症を正確かつ簡便に判定することができる。したがって、本発明はALSの予防や早期治療に貢献するものである。
ALS発症と相関する領域の遺伝子構造と連鎖不平衡(LD)マップを示す図。(a)ZNF512B遺伝子を含む111-kbのゲノム領域のSNPマップを示す。矢印は各遺伝子の方向を示し、*はrs2275294を示す。(b)当該領域のLDマップを示す。 rs2275294のアレルの機能解析の結果を示す図。(a)各アレルを含むDNA断片のエンハンサー活性をルシフェラーゼアッセイで評価した。上がSK_N_Be(2)C細胞、下がSK_N_SH細胞での結果を示す。データは6回の実験の平均値±標準誤差で示す。*P< 0.01, **P < 0.05(Student's t-test)。図中、ZNF512B promoterはZNF512B遺伝子のプロモーター領域(−820塩基〜−74塩基)を示す。(b)各アレルを含むDNA断片へのSK_N_AS細胞核抽出物中のトランス因子の結合を示す図(写真)。competitorは非標識オリゴヌクレオチドを示す。
<1>本発明の検査方法
本発明の検査方法は、ZNF512B遺伝子上のSNPを分析し、該分析結果に基づいてALSを検査する方法である。なお、本発明において、「検査」とはALS発症のリスクの検査及びALS発症の有無の検査を含む。
ZNF512B遺伝子としては、ヒト染色体20q13.33に存在し、17のエクソンよりなるヒトZNF512B遺伝子が挙げられ、具体的にはGenBank Accession No. NC000020.10の62601218〜62588055の塩基配列(ゲノム配列)(mRNAの配列はGenBank Accession No. NM_020713.1)を有する遺伝子を挙げることができる。なお、ZNF512B遺伝子の塩基配列は人種の違いなどによってALSに関連する塩基以外の塩基において置換や欠失等が存在する可能性があるため、上記配列の遺伝子に限定されない。
ALSに関連するZNF512B遺伝子のSNPとしてはrs2275294が挙げられる。ここで、rs2275294はNational Center for Biotechnology InformationのdbSNPデータベース(http//www.ncbi.nlm.nih.gov/projects/SNP/)の登録番号を示す。
rs2275294はGenBank Accession No. NT_011333.5の1330877番目の塩基におけるグアニン(G)/アデニン(A)の多型を意味し、Gは、ALS感受性アレルである。また、アレルを考慮して解析した場合は、rs2275294がGG>GA>AAの順でALSの感受性が高くなる。rs2275294はZNF512B遺伝子のイントロン12に存在するSNPである。
なお、rs2275294について、SNP塩基及びその前後60bpの領域を含む合計121bpの長さの配列を、配列番号1に示した。61番目の塩基が多型を有する。
上記SNPの塩基の種類を調べることによって、ALSを検査することができる。なお、ZNF512B遺伝子の配列はセンス鎖を解析してもよいし、アンチセンス鎖を解析してもよい。後述の実施例では、アンチセンス鎖を解析しているため、ALS感受性アレルをC、ALS非感受性アレルをTと記載している。
これらの塩基に相当する塩基を本発明においては解析する。ここで、「相当する」とは、ヒトZNF512B遺伝子上の上記配列を有する領域中の該当塩基を意味し、仮に、人種の違いなどによって上記配列がSNP以外の位置で若干変化したとしても、その中の該当塩基を解析することも含む。
また、本発明において解析する塩基は上記のものに限定されず、上記の塩基と連鎖不平衡にある塩基の多型を分析してもよい。ここで「上記の塩基と連鎖不平衡にある塩基」とは、上記の塩基とr2>0.5、好ましくはr2>0.8の関係を満たす塩基をいう。
また、検査するSNPの数は、一種類でもよいし、複数(ハプロタイプ解析)でもよい。
ZNF512B遺伝子のSNPの解析に用いる試料としては、染色体DNAを含む試料であれば特に制限されないが、例えば、血液、尿等の体液サンプル、口腔粘膜などの細胞、毛髪等の体毛などが挙げられる。遺伝子多型の解析にはこれらの試料を直接使用することもできるが、これらの試料から染色体DNAを常法により単離し、これを用いて解析することが好ましい。
ZNF512B遺伝子のSNPの解析は、通常のSNP解析方法によって行うことができる。例えば、シークエンス解析、PCR、ハイブリダイゼーションなどが挙げられるが、これらに限定されない。
シークエンスは通常の方法により行うことができる。具体的には、多型を示す塩基の5’側 数十塩基の位置に設定したプライマーを使用してシークエンス反応を行い、その解析結果から、該当する位置がどの種類の塩基であるかを決定することができる。なお、シークエンスを行う場合、あらかじめSNP部位を含む断片をPCRなどによって増幅しておくことが好ましい。
また、PCRによる増幅の有無を調べることによって解析することができる。例えば、多型を示す塩基を含む領域に対応する配列を有し、かつ、3’末端が各多型に対応するプライマーをそれぞれ用意する。それぞれのプライマーを使用してPCRを行い、増幅産物の有無によってどのタイプの多型であるかを決定することができる。
また、LAMP法(特許第3313358号明細書)、NASBA法(Nucleic Acid Sequence-Based Amplification;特許2843586号明細書)、ICAN法(特開2002-233379号公報)などによって増幅の有無を調べることもできる。その他、単鎖増幅法を用いてもよい。
また、SNP部位を含むDNA断片を増幅し、増幅産物の電気泳動における移動度の違いによってどのタイプの多型であるかを決定することもできる。このような方法としては、例えば、PCR-SSCP(single−strand conformation polymorphism)法(Genomics. 1992 Jan 1; 12(1): 139−146.)が挙げられる。具体的には、まず、ZNF512B遺伝子のSNP部位を含むDNAを増幅し、増幅したDNAを一本鎖DNAに解離させる。次いで、解離させた一本鎖DNAを非変性ゲル上で分離し、分離した一本鎖DNAのゲル上での移動度の違いによってどのタイプの多型であるかを決定することができる。
さらに、多型を示す塩基が制限酵素認識配列に含まれる場合は、制限酵素による切断の有無によって解析することもできる(RFLP法)。この場合、まず、DNA試料を制限酵素により切断する。次いで、DNA断片を分離し、検出されたDNA断片の大きさによってどのタイプの多型であるかを決定することができる。
ハイブリダイゼーションの有無を調べることによって多型の種類を解析することも可能である。すなわち、各塩基に対応するプローブを用意し、いずれのプローブにハイブリダイズするかを調べることによってSNPがいずれの塩基であるかを調べることもできる。
このようにしてSNPがいずれの塩基であるかを決定することで、ALSを検査するためのデータを得ることができる。
また、本発明においては、上記rs2275294においては、リスク(ALS感受性)アレルがZNF512BのmRNAの量の低下を引き起こし、それによりALSの疾患感受性が高まっていることが考えられた。このことから、ZNF512B遺伝子の発現量を指標にしてALSの発症を予測することも可能である。例えば、ZNF512Bの発現量が健常者と比較して少ないとき、ALS発症のリスクが高いと判定することができる。ZNF512B遺伝子の発現を特異的に検出するためには、例えば、配列番号2に示されるヒトZNF512B遺伝子の塩基配列に基づいて作製されたプライマーまたはプローブを用いてRT-PCRやハイブリダイゼーションなどを行い、ZNF512B遺伝子の発現量を測定すればよい。
<2>本発明の検査用試薬
本発明はまた、ALSを検査するためのプライマーやプローブなどの検査試薬を提供する。このようなプローブとしては、ZNF512B遺伝子における上記SNP部位を含み、ハイブリダイズの有無によってSNP部位の塩基の種類を判定できるプローブが挙げられる。具体的には、配列番号1において塩基配列の61番目の塩基を含む配列、又はその相補配列を有する10塩基以上の長さのプローブが挙げられる。プローブの長さはより好ましくは、15〜35塩基であり、さらに好ましくは20〜35塩基である。
また、プライマーとしては、ZNF512B遺伝子における上記多型部位を増幅するためのPCRに用いることのできるプライマー、又は上記多型部位を配列解析(シークエンシング)するために用いることのできるプライマーが挙げられる。具体的には、配列番号1の塩基配列の61番目の塩基含む領域を増幅したりシークエンシングしたりすることのできるプライマーが挙げられる。このようなプライマーの長さは10〜50塩基が好ましく、15〜35塩基がより好ましく、20〜35塩基がさらに好ましい。
上記多型部位をシークエンシングするためのプライマーとしては、上記塩基の5’側領域、好ましくは30〜100塩基上流の配列を有するプライマーや、上記塩基の3’側領域、好ましくは30〜100塩基下流の領域に相補的な配列を有するプライマーが例示される。PCRによる増幅の有無で多型を判定するために用いるプライマーとしては、上記塩基を含む配列を有し、上記塩基を3’側に含むプライマーや、上記塩基を含む配列の相補配列を有し、上記塩基の相補塩基を3’側に含むプライマーなどが例示される。
なお、本発明の検査用試薬はこれらのプライマーやプローブに加えて、PCR用のポリメラーゼやバッファー、ハイブリダイゼーション用試薬などを含むものであってもよい。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されない。
まず、ALS感受性遺伝子を同定するために、ゲノム全体の遺伝子に基づくSNPsのセットとBiobank JapanからのDNAサンプルを用いてケース−コントロール相関解析を行った。ケース−コントロール相関解析は、Nat Genet. 2008 40:994-998およびNat Genet, 39: 212-217, 2007に記載の方法に基づいて段階的に行った。
なお、本研究の対象となったALS患者はEl Escorial revised criteria (Brooks et al. ALS and other motor neuron disorders, 1: 293-299, 2000) に基づいて診断された。参加者は全て日本人であり、本研究への参加に関しては、全ての参加者から各医療機関の指針に従って作成されたインフォームドコンセントを得た。
703人分のALSサンプルはBiobank Japan projectから得た。そのうち66.1%が男性で平均年齢が60.8歳(28〜82歳)で、74.4%のALS症例は初発部位が脊髄発症型であり、19.6%は球麻痺発症型、6%は混合型またはその他であった。なお、これらのALSサンプルにおいてはSOD1, TARDBP および ANGには変異が検出されなかった。
Japanese consortium for ALS research (JaCALS)からの278人分のALS患者は、平均年齢61.6歳(30〜82歳)であり、63%が男性であった。そして、79%のALS症例は脊髄発症型であり、21%が球麻痺発症型であった。
コントロールサンプルは、日本国内の種々の医療機関から合計3,875人分集められ、平均年齢は62.6歳(18〜98歳)で51.8%が男性であった。
まず、SNP同定シリーズ(大規模ゲノムスクリーニング)(Discovery series)の第1段階として、92人のALS患者(Biobank Japan)と239人の対照のサンプルについて、JSNP database (http://snp.ims.u-tokyo.ac.jp/index.html)から選ばれた52,608個の タグSNPを解析した。そして、SNP quality control filterを通過した49,514 個のSNPsについてジェノタイプ情報を得た。なお、SNPsのジェノタイピングは、J Hum Genet, 46:604-608, 2001に記載された方法により、multiplex PCR-based invader assay (Third Wave Technologies) を用いて行った。
SNP同定シリーズの第2段階として、第1段階でP値が0.01以下であった1,039個のSNPsを選択し、363人分のALS患者(Biobank Japan)サンプルと726人分の対照を追加して、合計、455人のALS患者と965人の対照について解析を行った。その結果、P値が0.001未満である9個のSNPsを同定した。(表1)
Figure 0005643933
replicationシリーズでは、これら9個のSNPsについて、Biobank, Japanの別のサンプル(249人のALS患者と1,030人の対照)を用いて解析した(replication シリーズ1)。その結果、rs2275294 はP=1.8 X 10-3でALSと強い相関を示した。
rs2275294について、さらに、Japanese consortium for ALS research (JaCALS)からの278人のALS患者および1881人の対照のサンプルを用いて解析を行った (replication series 2)。その結果、rs2275294 はP= 4.6 X 10-5でALSと強い相関が確認できた。Mantel-Haenzelの検定方法によって各シリーズの結果を組み合わせてP値を計算したところ、P=7.6 X 10-10 (オッズ比1.37, 95% CI 1.24-1.52) であった。まとめを表2に示す。
Figure 0005643933
*RAF: リスクアレル頻度 **Mantel-Haenszel メタ分析
オッズ比及び95%CIはメジャーアレルに基づいて計算した。
年齢、性別などの因子がreplicationスタディの結果に擬陽性を生じさせていないことを確認するため、表2の結果を年齢および性別で調整し、ロジスティック回帰分析を行った。その結果、表3に示すように、調整前と調整後とでは結果はほとんど変わらず、rs2275294のSNP解析においては、年齢や性別の背景因子は関係ないことが確認できた。
Figure 0005643933
次に、HapMap JPT (Japanese in Tokyo, Japan) genotyping data に基づいてrs2275294の周辺の連鎖不平衡(LD)マップを作成した。rs2275294 はHapMap JPTにマップされなかったので、rs2275294について45種類のJPTサンプルをジェノタイピングし、HapMap JPTデータに統合した。その結果、rs2252258 とrs816953に挟まれた111kbの領域が見出された。この領域にはZNF512B、SAMD10、PRPF6、SOX18及びUCKL1(の一部)の5種類の遺伝子とノンコーディングRNA遺伝子UCKL1OSとNCRNA00176の2種類が含まれていた(図1)。
ZNF512B SNP (rs2275294) の機能解析
次に、rs2275294の各アレルによるZNF512Bの発現量の差を検討するため、luciferase assayを実施した。pGL3-promoter vectorのルシフェラーゼ遺伝子上流に当該SNPを含むZNF512Bのイントロン12の190番目から208番目の塩基を3回繰り返ししたDNA配列とZNF512B遺伝子のプロモーターとを挿入したコンストラクトをそれぞれのアレルについて作製し、これを神経芽腫細胞株であるSK_N_SH細胞およびSK_N_Be(2)C細胞へ遺伝子導入し、24時間後のluciferaseタンパクの発する蛍光を定量した。遺伝子導入の標準化のために、ウミシイタケの蛍光タンパクを同時に遺伝子導入した。その結果、ALSにおいて頻度の高いrs2275294 C alleleを持つコンストラクトを導入した細胞では、T allele を持つコンストラクトを導入した細胞に比べてluciferase活性が弱かった(図2a)。この結果から、rs2275294がZNF512B遺伝子の転写レベルに影響を与えていることがわかった。
次に、ZNF512B遺伝子のrs2275294を含む領域のDNA断片(ZNF512Bのイントロン12の184番目から203番目の塩基配列)への転写因子の結合に対する各アレルの影響をゲルシフトアッセイにより調べた。SK_N_AS細胞の核抽出物と上記DNA断片(DIG蛍光標識物)を20℃で15分反応させた後、ロッシュ社のDIG Gel Shift Kit, 2nd Generationを用いて実験を行った。その結果、Cアレルを有するDNA断片は、Tアレルを有するDNA断片と比べて転写因子との結合が少ないことがわかった(図2b)。このことから、rs2275294のリスクアレル(Cアレル)を有する個体はトランス因子のエンハンサーへの結合が少ないため、ZNF512B 遺伝子の発現量が低下していると考えられた。

Claims (5)

  1. ZNF512B遺伝子上の配列番号1の塩基配列の塩基番号61番目の塩基に相当する塩基における一塩基多型を分析し、該分析結果に基づいて、配列番号1の61番目の塩基に相当する塩基がGの場合、筋萎縮性側索硬化症の発症リスクが高いと判定される、筋萎縮性側索硬化症を検査する方法。
  2. 配列番号1の塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む15塩基以上の配列、又はその相補配列からなるプローブを含む、筋萎縮性側索硬化症検査用試薬
  3. 配列番号1の塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む領域を増幅することのできるライマーを含む、筋萎縮性側索硬化症検査用試薬
  4. ZNF512B遺伝子の発現量を分析し、該分析結果に基づいて、ZNF512B遺伝子の発現量が正常者のZNF512B遺伝子の発現量と比較して少ない場合、筋萎縮性側索硬化症の発症リスクが高いと判定される、筋萎縮性側索硬化症を検査する方法。
  5. 次の工程を含む、筋萎縮性側索硬化症を検査する方法。
    a) 被験者のZNF512B遺伝子の発現量を測定する工程、及び
    b) 被験者のZNF512B遺伝子の発現量と正常者のZNF512B遺伝子の発現量とを比較し、ZNF512B遺伝子の発現量が正常者のZNF512B遺伝子の発現量と比較して少ない場合、筋萎縮性側索硬化症の発症リスクが高いと判定する工程。
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