JP5263919B2 - メタボリック症候群の検査方法 - Google Patents
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メタボリック症候群と遺伝的要因の関連に関しても幾つか報告があり(非特許文献2、3)、非特許文献2ではメタボリック症候群と関連する染色体上の部位について報告されている。しかしながら、この部位とメタボリック症候群との関連は必ずしも明確ではなく、より正確にメタボリック症候群発症を予測できる遺伝子解析法の開発が求められていた。
Diabetes 53:2087-2094 (2004) Nat Clin Pract Cardiovasc Med 3:482-489 (2006) Obesity Research 13:381-490 (2005) Diabetes 55:2876-2882 (2006)
(1)McKusick-Kaufman syndrome 遺伝子上の配列番号1の61番目の塩基に相当する塩基の一塩基多型または該塩基と連鎖不平衡にある塩基の一塩基多型を分析し、該分析結果に基づいてメタボリック症候群を検査する方法。
(2)前記配列番号1の61番目の塩基に相当する塩基と連鎖不平衡にある塩基が、配
列番号2の61番目の塩基、または配列番号3の61番目の塩基に相当する塩基である、(1)の方法。
(3)配列番号1〜3のいずれかの塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む10塩基以上の配列、又はその相補配列を有するメタボリック症候群検査用プローブ。
(4)配列番号1〜3のいずれかの塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む領域を増幅することのできるメタボリック症候群検査用プライマー。
(5)(3)のプローブまたは(4)のプライマーを含む、メタボリック症候群検査用キット。
本発明の検査方法は、McKusick-Kaufman Syndrome(MKKS)遺伝子上に存在する塩基(rs1547:SNP-1)の一塩基多型(SNP;single nucleotide polymorphism)または該塩基と連鎖不平衡にある塩基の一塩基多型を分析し、該分析に基づいてメタボリック症候群を検査する方法である。メタボリック症候群としては、例えば、J Atheroscler Thromb
13:202-208, 2006に記載の基準に基づいて定められる病態が例示される。なお、本発明において、「検査」とは、現在メタボリック症候群を発症しているどうかの検査、および将来メタボリック症候群になるかどうかを予測するための検査を含む。
本発明の検査方法の対象は特に制限されないが、日本人が好ましく、日本人の成人(20歳以上)がより好ましい。
SNP-1〜SNP-3について表1にまとめた。
SNP-2はGenBank Accession No. NT_011387.8の10326013番目の塩基におけるグアニン(G)/チミン(T)の多型を意味し、この塩基がTである場合はメタボリック症候群になる確率が高い。また、アレルを考慮して解析した場合は、SNP-2がTT>TG>GGの順でメタボリック症候群になる確率が高い。SNP-2はMKKS遺伝子のCDS領域内に存在するSNPである。
SNP-3はGenBank Accession No. NT_011387.8の10325503番目の塩基におけるチミン(T)/シトシン(C)の多型を意味し、この塩基がCである場合はメタボリック症候群になる確率が高い。また、アレルを考慮して解析した場合は、SNP-3がCC>TC>TTの順でメタボリック症候群になる確率が高い。SNP-3はMKKS遺伝子の3’隣接領域内に存在するSNPである。
これらの塩基に相当する塩基を本発明においては解析する。ここで、「相当する」とは、ヒトMKKS遺伝子上の上記配列を有する領域中の該当塩基を意味し、仮に、人種の違いなどによって上記配列がSNP以外の位置で若干変化したとしても、その中の該当塩基を解析することも含む。
また、本発明において解析する塩基は上記のものに限定されず、SNP-1と連鎖不平衡にあるその他の塩基の多型を分析してもよい。ここで「上記の塩基と連鎖不平衡にある塩基」とは、上記の塩基とr2>0.5の関係を満たす塩基をいう。
てどのタイプの多型であるかを決定することもできる。このような方法としては、例えば、PCR-SSCP(single−strand conformation polymorphism)法(Genomics. 1992 Jan 1; 12(1): 139−146.)が挙げられる。具体的には、まず、MKKS遺伝子の多型部位を含むDNAを増幅し、増幅したDNAを一本鎖DNAに解離させる。次いで、解離させた一本鎖DNAを非変性ゲル上で分離し、分離した一本鎖DNAのゲル上での移動度の違いによってどのタイプの多型であるかを決定することができる。
本発明はまた、メタボリック症候群を検査するためのプライマーやプローブなどの検査試薬を提供する。このようなプローブとしては、MKKS遺伝子における上記多型部位を含み、ハイブリダイズの有無によって多型部位の塩基の種類を判定できるプローブが挙げられる。具体的には、配列番号1〜3のいずれかの塩基配列の61番目の塩基を含む配列、又はその相補配列を有する10塩基以上の長さのプローブが挙げられる。プローブの長さはより好ましくは15〜35塩基である。
また、プライマーとしては、MKKS遺伝子における上記多型部位を増幅するためのPCRに用いることのできるプライマー、又は上記多型部位を配列解析(シークエンシング)するために用いることのできるプライマーが挙げられる。具体的には、配列番号1〜3のいずれかの塩基配列の61番目の塩基含む領域を増幅したりシークエンシングしたりすることのできるプライマーが挙げられる。このようなプライマーの長さは10〜50塩基が好ましく、15〜35塩基がより好ましい。
上記多型部位をシークエンシングするためのプライマーとしては、上記塩基の5’側領域、好ましくは30〜100塩基上流の配列を有するプライマーや、上記塩基の3’側領域、好ましくは30〜100塩基下流の領域に相補的な配列を有するプライマーが例示される。PCRによる増幅の有無で多型を判定するために用いるプライマーとしては、上記塩基を含む配列を有し、上記塩基を3’側に含むプライマーや、上記塩基を含む配列の相補配列を有し、上記塩基の相補塩基を3’側に含むプライマーなどが例示される。
なお、本発明の検査用試薬はこれらのプライマーやプローブに加えて、PCR用のポリメラーゼやバッファー、ハイブリダイゼーション用試薬などを含むものであってもよい。
<メタボリック症候群>
1.トリグリセリド値150mg/dL以上及び/又はHDL−コレステロール値40mg/dL未満、あるいはこれらの脂質異常を治療中
2.収縮期血圧130mmHg以上及び/又は拡張期血圧85mmHg以上、あるいは高血圧の治療中
3.空腹時血糖110mg/dL以上、または糖尿病の治療中
上記1〜3のうちの2項目以上に該当し、BMI25kg/m2以上の者をメタボリック症候群と診断した。(なお、一般のメタボリック症候群の診断にはBMIの代わりにウエスト周囲が使用される。すなわち、ウエスト周囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上、かつ、上記1〜3のうちの2項目以上に該当すればメタボリック症候群と診断される。ウエスト周囲径、男性85cm、女性90cmは臍の高さで測定したCTによる内臓脂肪面積が100cm2に相当する。)
上記基準によりメタボリック症候群に該当しなかった日本人1524名(男性543名、女性981名:平均年齢53±16歳)をコントロール1とした。
<コントロール2>
コントロール2はコントロール1の中から、BMI25kg/m2未満で上記代謝異常のない者を選んだ(441名(男性112名、女性329名:平均年齢47±16歳)。
症例、コントロール1、コントール2の性質を表2にまとめた。
なお、いずれの被検者からも書面のインフォームドコンセントを得たうえで、各病院施設の倫理委員会及び理化学研究所の承認を得たプロトコルに基づいて解析を行った。
試料として、各被検者の血液サンプルから染色体DNAを、通常の手順にて調製した。
Obesity Research 13:381-490., 2005に挙げられた遺伝子群におけるSNPsからメタボリック症候群関連SNPsを探索した。まずは、その遺伝子群におけるSNPsをJSNPデータベース(IMS-JST: Institute of Medical Science-Japan Science and Technology Age
ncy Japanese SNP database:Nucleic. Acids. Res., 30, 158-162)より探索したところ、122遺伝子について合計755個のSNPsが見つかった。そのうち、マイナーアレル頻度が0.2より大きく、予想されるアレル頻度がHWE(p>0.001)から大きく逸れない336個のSNPsを本試験では採用した。なお、HWEテストはHardy-Weinberg equilibrium test(Nealsen, D.M., Ehm, M.G. & Weir, B.S. Am. J. Hum. Gent. 63, 153-1540 (1998))を示す。
これらのSNPsに対してインベーダープローブ(Third Wave Technologies)を設計し、症例群とコントロール群について、マルチPCRとインベーダーアッセイ(Ohnishi, Y. et al. J. Hum. Genet. 46, 471-477 (2001))の組み合わせにより各SNPsをジェノタイピングした。
:2×2の分割表を用いてアレル1のホモザイゴートとヘテロザイゴートを他(アレル2のホモザイゴート)と比較した、(3)劣性モード:2×2の分割表を用いてアレル1のホモザイゴートの頻度をその他と比較した。危険率(Odds ratio)及び95%信頼区間(c.i.)はWoolfの方法に従った。さらに、各SNP解析において並べ替え検定を行い、各SNPsについて最小p値の経験分布を作成し、その分布に基づいて得られた経験P値を補正P値とした。
ことがわかった(図1)。
また、Empirical FWER(family-wise type I error rate)(Am J Hum Genet. 71:1386−1394, 2002)は0.025であり、MKKS遺伝子の上記SNPsがメタボリック症候群に相関していることが強く示唆された。
以上より、メタボリック症候群に相関するMKKS遺伝子のSNPsが同定された。非特許文献4において、MKKS遺伝子はBBSの原因遺伝子としてフランス人におけるSNPs(rs6108572、rs221667)と肥満や代謝異常との相関が示されているが、今回はこれらの上流側のSNPsではなく、MKKS遺伝子の下流側に存在するSNPsとメタボリック症候群との相関が見出された。
結果を表6に示す。それによると、年齢及び性別で補正した後もMKKS遺伝子のSNPsはメタボリック症候群と有意に相関することがわかった。すなわち、上記SNPsは性別、年齢などの他の変数の影響を受けることなく、メタボリック症候群に相関することが示唆された。
Claims (4)
- McKusick-Kaufman syndrome 遺伝子上の配列番号1〜3のいずれかの塩基配列の61番目の塩基に相当する塩基の一塩基多型を分析し、該分析結果に基づいて、配列番号1の61番目の塩基に相当する塩基がTの場合、メタボリック症候群になる確率が高い;配列番号2の61番目の塩基に相当する塩基がTの場合、メタボリック症候群になる確率が高い;及び配列番号3の61番目の塩基に相当する塩基がCの場合、メタボリック症候群になる確率が高いと判定される、日本人におけるメタボリック症候群を検査する方法。
- 配列番号1〜3のいずれかの塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む15塩基以上の配列、又はその相補配列からなるプローブを含む、日本人におけるメタボリック症候群検査用試薬。
- 配列番号1〜3のいずれかの塩基配列において、塩基番号61番目の塩基を含む領域を増幅することのできるプライマーであって、該塩基の30〜100塩基上流の15塩基以上の配列、又は該塩基の30〜100塩基下流の領域に相補的な15塩基以上の配列からなるプライマーを含む、日本人におけるメタボリック症候群検査用試薬。
- 請求項2に記載のプローブまたは請求項3に記載のプライマーを含む、日本人におけるメタボリック症候群検査用キット。
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