JP5642643B2 - フォトマスクブランク及びその製造方法、並びにフォトマスク及びその製造方法 - Google Patents
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Description
また、近年では、モリブデンシリサイド化合物を含む材料を遮光膜として用いたArFエキシマレーザー用のバイナリマスクなども出現している。
光半透過膜の耐光性が低いとマスク寿命は短くなるが、現状では、マスクの洗浄回数に基づくマスク寿命の範囲内では、光半透過膜の耐光性は得られている。
本発明者らは、金属シリサイド系の遮光膜を有するバイナリマスクの場合、露光光源のArFエキシマレーザー(波長193nm)が、従前のマスクの繰り返し使用期間を超えて累積的に照射されることにより、線幅が変化する(太る)という現象が発生していることを解明した。このような線幅変化は、フォトマスクのCD(Critical Dimension)精度、最終的には転写されるウェハのCD精度を悪化させることになり、フォトマスク寿命の更なる長寿命化の障害になることを突き止めた。
また、本発明者らは、位相シフトマスクの場合、露光光源のArFエキシマレーザー(波長193nm)照射により、線幅が変化する(太る)という現象が発生し、さらに透過率や位相差の変化が起ることを解明した。位相シフトマスクの場合、このような透過率、位相差の変化はマスク性能に影響を与える重要な問題である。透過率の変化が大きくなると転写精度が悪化するとともに、位相差の変化が大きくなると、パターン境界部における位相シフト効果が得られにくくなり、パターン境界部のコントラストが低下し、解像度が大きく低下してしまう。
フォトマスクの繰返し使用によるマスク劣化の問題は、特に、遷移金属とケイ素を含む材料(遷移金属シリサイド)の化合物が光半透過膜の材料として用いられる位相シフトマスクにおいて顕著であるが、遷移金属とケイ素を含む材料やその化合物からなる遮光膜を有するバイナリマスクにおいても、遮光膜の線幅変化(太り)に係るCD精度の悪化の問題が発生している。
本発明者は、繰返し使用によって線幅の変化(太り)が生じたフォトマスクにおける金属シリサイド系薄膜(金属とシリコンを主成分とする薄膜)のパターンを調べた結果、図3に示すように、金属シリサイド系薄膜2(例えばMoSi系膜)の表層側にSiとO、若干の金属(例えばMo)を含む変質層2’が出来ており、これが線幅の変化(太り)Δdや、透過率及び位相差の変化、の主な原因のひとつであることを解明した。
このような変質層が生じる理由(メカニズム)は次のように考えられる。すなわち、従来のスパッタリング成膜された金属シリサイド系薄膜(例えばMoSi系膜)は構造的には隙間があり、成膜後にアニールしたとしても金属シリサイド系薄膜(例えばMoSi膜)の構造の変化が小さいため、フォトマスクの使用過程においてこの隙間にたとえば大気中の酸素(O2)や水(H2O)等が入り込み、さらには大気中の酸素(O2)がArFエキシマレーザーと反応することによって発生するオゾン(O3)等が前記隙間に入り込んで、金属シリサイド系薄膜(例えばMoSi系膜)を構成するSiやMoと反応する。
つまり、このような環境で金属シリサイド系薄膜(例えばMoSi系膜)を構成するSiと金属M(例えばMo)は露光光(特にArFエキシマレーザーなどの短波長光)の照射を受けると励起され遷移状態となり、Siが酸化し膨張する(SiよりもSiO2の体積が大きいため)と共に、金属M(例えばMo)も酸化して金属シリサイド系薄膜(例えばMoSi系膜)の表層側に変質層が生成される。このとき、大気中の水分量(湿度)に応じて、生成されるSi酸化膜の品質は大きく異なり、湿度が高いほど密度の低いSi酸化膜が形成される。低密度Si酸化膜が形成される環境において、フォトマスクを繰返し使用する場合、露光光の照射を累積して受けると、Siの酸化及び膨張がさらに進行すると共に、バルクと変質層界面で酸化された金属M(例えばMo)は変質層中を拡散し、表面に析出して、例えば金属Mの酸化物(例えばMoO3)となって昇華し、変質層の密度は更に低くなり、酸化しやすい状態になる。その結果、変質層の厚みが次第に大きくなる(金属シリサイド系薄膜(例えばMoSi膜)中での変質層の占める割合が大きくなる)ものと考えられる。
このような変質層が発生し、さらに拡大していく現象は、金属シリサイド系薄膜(例えばMoSi膜)を構成するSiや金属M(例えばMo)の酸化反応のきっかけとなる。これらの構成原子が励起され遷移状態となるのに必要なエネルギーを有するArFエキシマレーザー等の短波長の露光光が金属シリサイド系薄膜に極めて長時間照射された場合に顕著に確認される。このような現象は、MoSi系材料に限られたものではなく、他の遷移金属とケイ素を含む材料からなる光半透過膜でも同様のことがいえる。また、遷移金属とケイ素を含む材料からなる遮光膜を備えるバイナリマスクの場合も同様である。
すなわち、上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
波長200nm以下の露光光が適用されるフォトマスクを作製するために用いられるフォトマスクブランクであって、
透光性基板上に薄膜を備え、
前記薄膜は、遷移金属、ケイ素及び炭素を含み、ケイ素炭化物及び/又は遷移金属炭化物を有する材料からなることを特徴とするフォトマスクブランク。
(構成2)
波長200nm以下の露光光が適用されるフォトマスクを作製するために用いられるフォトマスクブランクであって、
透光性基板上に薄膜を備え、
前記薄膜は、遷移金属、ケイ素及び水素を含み、水素化ケイ素を有する材料からなることを特徴とするフォトマスクブランク。
(構成3)
波長200nm以下の露光光が適用されるフォトマスクを作製するために用いられるフォトマスクブランクの製造方法であって、
透光性基板上に薄膜を成膜する工程を含み、
前記薄膜は、炭素を含むターゲット又は炭素を含む雰囲気ガスを用いてスパッタリング成膜することにより形成され、遷移金属、ケイ素、炭素を含み、ケイ素炭化物及び/又は遷移金属炭化物を有してなることを特徴とするフォトマスクブランクの製造方法。
(構成4)
波長200nm以下の露光光が適用されるフォトマスクを作製するために用いられるフォトマスクブランクの製造方法であって、
透光性基板上に薄膜を成膜する工程を含み、
前記薄膜は、水素を含む雰囲気ガスを用いてスパッタリング成膜することにより形成され、遷移金属、ケイ素、水素を含み、水素化ケイ素を有してなることを特徴とするフォトマスクブランクの製造方法。
(構成5)
前記薄膜は、前記スパッタリング成膜時の前記雰囲気ガスの圧力及び/又は電力を調整して形成されることを特徴とする構成3に記載のフォトマスクブランクの製造方法。
(構成6)
前記薄膜は、遮光膜であることを特徴とする構成1乃至5のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクの製造方法。
(構成7)
前記薄膜は、光半透過膜であることを特徴とする構成1乃至5のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクの製造方法。
(構成8)
構成1乃至7のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクにおける前記薄膜を、エッチングによりパターニングする工程を有することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
(構成9)
構成1から7のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクを用いて作製されるフォトマスク。
また、本発明によれば、金属シリサイド系の光半透過膜を有する位相シフトマスクブランクを用いて作製されるフォトマスクに対して、ArFエキシマレーザーを総照射量30kJ/cm2となるように連続照射した場合、遮光膜パターンの線幅の太り(CD変化量)は、20nm以下、好ましくは10nm以下に抑えることが可能となる。また、ArFエキシマレーザー照射前後の光学特性変化量は、透過率変化量を0.60%以内、位相差変化量を3.0度以内とすることが可能である。さらに、透過率変化量を0.05%以内、位相差変化量を1.0度以内とすることが可能である。このように光学特性変化量は小さく抑えられ、この程度の変化量はフォトマスクの性能に影響はない。
本発明によれば、波長200nm以下の露光光に対する光半透過膜などの薄膜の耐光性を向上させ、フォトマスク寿命を著しく改善できるフォトマスクブランク、フォトマスク及びそれらの製造方法を提供することが可能となる。
なお、半導体デバイスの設計仕様でいうハーフピッチ(hp)32nm世代ではウェハ上でCD制御を2.6nm以下とする必要があり、このためには、hp32nm世代で使用するフォトマスクに求められるCD変化量は5nm以下に抑えることが好ましい。
透光性基板上に薄膜を備え、
前記薄膜は、遷移金属、ケイ素及び炭素を含み、ケイ素炭化物及び/又は遷移金属炭化物を有する材料からなることを特徴とするものである。
なお、成膜したときに、薄膜中では、さまざまな結合状態が形成されるが、ケイ素炭化物、Si−C結合、は常に形成されるわけではない。
なお、成膜したときに、薄膜中では、さまざまな結合状態が形成されるが、遷移金属炭化物、M−C結合(例えばMo−C結合)、は常に形成されるわけではない。
透光性基板上に薄膜を備え、
前記薄膜は、遷移金属、ケイ素及び水素を含み、水素化ケイ素を有する材料からなることを特徴とするものである。
なお、成膜したときに、薄膜中では、さまざまな結合状態が形成されるが、水素化ケイ素、Si−H結合、は常に形成されるわけではない。
本発明は、遷移金属、ケイ素及び炭素を含む薄膜中に、水素化ケイ素の形態で水素を含む薄膜を用いるものである。
本発明では、Siの酸化が防止されるため、ArFエキシマレーザーなどの波長200nm以下の短波長光を露光光源としてフォトマスクの繰返し使用を行い、フォトマスクの薄膜パターンに対して波長200nm以下の露光光が累積して照射されても、薄膜パターンの転写特性、例えば線幅変化や、光半透過膜の透過率及び位相差の変化、などを抑えられる。
[条件]
(1)薄膜がケイ素炭化物を有する材料からなること
(2)薄膜が遷移金属炭化物を有する材料からなること
(3)薄膜が水素化ケイ素を有する材料からなること
[マスクCDの変化]
(4)遮光膜パターンのCD変化量を1〜10nm以下、好ましくは1〜5nm以下に抑えることが可能となる。
(5)光半透過膜パターンのCD変化量を1〜20nm以下、好ましくは1〜10nm、更に好ましくは1〜5nm以下に抑えることが可能となる。光半透過膜パターンの光学特性変化に関しては、透過率変化量を0.05〜0.60%以下に抑えることが可能となり、位相差変化量を1.0〜3.0度以下に抑えることが可能となる。
なお、本発明で言う薄膜パターンのCD変化量は、図3に示すように、薄膜パターン2の表層に生じる変質層2’の厚さをΔdとすると、2Δdで定義される。
図3(A)はスペースパターンの場合で、CD変化量=a−a’=2Δdである。
図3(B)はラインパターンの場合で、CD変化量=a”−a=2Δdである。
[作用効果]
(6)本発明においては、C及び/又はH(ケイ素炭化物、遷移金属炭化物、水素化ケイ素)の存在によりエッチングレートは速くなるため、レジスト膜を厚膜化することなく、解像性や、パターン精度が悪化することはない。また、エッチング時間を短縮することができるので、遮光膜上にエッチングマスク膜を有する構成の場合、エッチングマスク膜のダメージを少なくすることができ、高精細のパターニングが可能となる。
(7)本発明においては、遷移金属(例えばMo)の析出を抑制できるので、遷移金属(例えばMo)の析出によるガラス基板や膜上への堆積物をなくすことができる。このため、前記堆積物による欠陥を抑制できる。
本発明の遷移金属、ケイ素、炭素及び/又は水素を含む前記薄膜において、ケイ素の含有量は、薄膜が遮光膜の場合には30〜95原子%、好ましくは50〜80原子%であり、薄膜が光半透過膜の場合には20〜60原子%、好ましくは30〜60原子%である。
このような観点から、遷移金属とケイ素の原子比は薄膜が遮光膜の場合には1:1〜1:24が好ましく、1:4〜1:15がさらに好ましい。薄膜が光半透過膜の場合には1:1.5〜1:24が好ましく、1:2〜1:12がさらに好ましい。
遮光膜の炭素の含有量が1原子%未満の場合には、ケイ素炭化物及び/又は遷移金属炭化物が形成されにくく、炭素の含有量が20原子%を超える場合には遮光膜の薄膜化が困難になる。光半透過膜の炭素の含有量が1原子%未満の場合には、ケイ素炭化物及び/又は遷移金属炭化物が形成されにくく、炭素の含有量が20原子%を超える場合には光半透過膜の薄膜化が困難になる。
本発明の遷移金属、ケイ素、炭素及び/又は水素を含む前記薄膜において、水素の含有量は、薄膜が遮光膜の場合には1〜10原子%、好ましくは2〜5原子%であり、薄膜が光半透過膜の場合には1〜10原子%、好ましくは2〜5原子%である。
遮光膜の水素の含有量が1原子%未満の場合には、水素化ケイ素が形成されにくく、水素の含有量が10原子%を超える場合には成膜が困難になる。光半透過膜の水素の含有量が1原子%未満の場合には、水素化ケイ素が形成されにくく、水素の含有量が10原子%を超える場合には成膜が困難になる。
本発明の遷移金属、ケイ素、炭素及び/又は水素を含む前記薄膜においては、膜厚方向にC及び/又はH(ケイ素炭化物、遷移金属炭化物、水素化ケイ素)の含有量が変化(いわゆる組成傾斜)していてもよい。
薄膜が遮光膜の場合には、酸素の含有量は0〜60原子%が望ましい。遮光膜が反射防止層、遮光層を含む複数層の場合の酸素の含有量は、反射防止層では0〜60原子%であり、遮光層では0〜20原子%、好ましくは0〜10原子%である。また、薄膜が光半透過膜の場合には、酸素の含有量は0〜60原子%が望ましい。
同様に、本発明においては、レジスト膜の膜厚が65nm以下であり、かつ、エッチングマスク膜の膜厚が5nm以上、10nm以下であることが好ましい。
位相シフトマスクには、ハーフトーン型(トライトーン型)、レベンソン型、補助パターン型、自己整合型(エッジ強調型)等の位相シフトマスクが含まれる。
遮光膜は、単層構造、複数層構造、を含む。
遮光膜は、反射防止層を含む態様であってもよい。
遮光膜は、組成傾斜膜を含む。
遮光膜は、裏面反射防止層、遮光層、表面反射防止層からなる3層構造としてもよい。
遮光膜は、遮光層、表面反射防止層からなる2層構造としてもよい。
遮光膜が複数層構造の場合には、全層にC及び/又はH(ケイ素炭化物、遷移金属炭化物、水素化ケイ素)を含めてもよいが、任意の層、例えば遮光層にのみC及び/又はHケイ素炭化物、遷移金属炭化物、水素化ケイ素)を含めてもよい。
波長200nm以下の露光光が適用されるフォトマスクを作製するために用いられるフォトマスクブランクであって、
透光性基板上に遮光膜を備え、
前記遮光膜は、少なくとも3層で構成され、
前記遮光膜は、
遷移金属、ケイ素及び炭素及び/又は水素を含み、ケイ素炭化物、遷移金属炭化物、水素化ケイ素のうちの少なくとも1種を有する材料からなる遮光層と、
該遮光層の上に接して形成され、酸素、窒素のうち少なくとも一方を含む遷移金属シリサイド化合物からなる反射防止層と、
前記遮光層の下に接して形成され、酸素、窒素のうち少なくとも一方を含む遷移金属シリサイド化合物からなる低反射層とからなることを特徴とするフォトマスクブランク。
(A)遮光性の観点からは、Moが4%以上40%以下(好ましくは、9%以上40%以下、より好ましくは15%以上40%以下、さらに好ましくは20%以上40%以下)とするのが好ましい。
(B)洗浄耐性の観点からは、反射防止層のMo含有量は0〜20原子%、好ましくは0〜10原子%、更に好ましくは0〜5原子%である。
(C)パターン断面形状制御の観点からは、反射防止層のエッチング速度と遮光層のエッチング速度をそろえる必要があり、酸化、窒化された反射防止層に対し、モリブデンシリサイド遮光層のMoは、4%以上40%以下、好ましくは10%以上40%以下とするのが好ましい。
本発明の上記構成、即ち、モリブデンの含有量が4原子%以上、40原子%以下であるモリブデンシリサイドを含む遮光層によれば、以下の作用効果が得られる。
遮光膜の薄膜化(マスクパターンの薄膜化)によって次の作用効果が得られる。
(a)マスク洗浄時のマスクパターン倒れ防止が図られる。
(b)遮光膜の薄膜化によって、マスクパターンの側壁高さも低くなることから、特に側壁高さ方向のパターン精度が向上し、CD精度(特にリニアリティ)を高めることができる。
(c)特に高NA(Numerical Aperture)(液浸)世代で使用されるフォトマスクに関しては、シャドーイング対策として、マスクパターンを薄くする(マスクパターンの側壁高さを低くする)必要があるが、その要求に応えられる。
また、遮光層のMo含有率が本発明の範囲であると、次の作用効果が得られる。
(d)本発明の範囲外の組成に対して、垂直なエッチング断面形状が得られる。
なお、遮光膜の膜厚方向における組成が連続的又は段階的に異なる組成傾斜膜としてもよい。
エッチングマスク膜を設けると、レジスト膜の膜厚を薄膜化することが可能となり、より微細なパターンを形成可能となる。
遮光膜を遷移金属シリサイド(MSi系)にした場合には、エッチングマスク膜は、前記遮光膜のエッチングに対してエッチング選択性を有する(エッチング耐性を有する)クロムや、クロムに酸素、窒素、炭素などの元素を添加したクロム化合物からなる材料(Cr系材料)にすればよい。
遮光膜をCr系にした場合には、エッチングマスク膜は、MSi系にすればよい。この場合、エッチングマスク膜に反射防止機能を持たせて残す構成にする場合には、エッチングマスク膜にC及び/又はH(ケイ素炭化物、遷移金属炭化物、水素化ケイ素)が含まれるようにするとよい。本発明において、遷移金属、ケイ素、炭素及び/又は水素を含む前記薄膜は、エッチングマスク膜である態様が含まれる。
光半透過膜は、単層構造、低透過率層と高透過率層とからなる2層構造、多層構造を含む。
光半透過膜は、高透過率タイプを含む。高透過率タイプは、例えば、通常の透過率1〜10%未満に対し、相対的に高い透過率10〜40%を有するものをいう。
本発明において、光半透過膜の膜厚は、50〜150nmであることが好ましい。
光半透過膜を遷移金属シリサイド(MSi系)にした場合には、遮光膜は、前記光半透過膜のエッチングに対してエッチング選択性を有する(エッチング耐性を有する)クロムや、クロムに酸素、窒素、炭素などの元素を添加したクロム化合物からなる材料(Cr系材料)にすればよい。
光半透過膜と遮光膜とを同じ遷移金属シリサイド(MSi系)とする場合には、光半透過膜と遮光膜との間にCr系材料からなるエッチングストッパー膜を設けるとよい。
透光性基板上に薄膜を成膜する工程を含み、
前記薄膜は、炭素を含むターゲット又は炭素を含む雰囲気ガスを用いてスパッタリング成膜することにより形成され、遷移金属、ケイ素、炭素を含み、ケイ素炭化物及び/又は遷移金属炭化物を有してなることを特徴とする。
炭化水素ガスを用いることにより、膜中に炭素と水素(ケイ素炭化物、遷移金属炭化物、水素化ケイ素)を導入できる。
炭素を含むターゲットを用いることにより、膜中に炭素(ケイ素炭化物、遷移金属炭化物)のみ導入できる。この場合、MoSiCターゲットを用いる態様の他、Moターゲット及びSiターゲットのいずれか一方又は双方にCを含むターゲットを用いる態様や、MoSiターゲット及びCターゲットを用いる態様、が含まれる。
透光性基板上に薄膜を成膜する工程を含み、
前記薄膜は、水素を含む雰囲気ガスを用いてスパッタリング成膜することにより形成され、遷移金属、ケイ素、水素を含み、水素化ケイ素を有してなることを特徴とする。
これにより、膜中に水素(水素化ケイ素)のみ導入できる。
この方法では、MoSiターゲットを用いる態様の他、Moターゲット及びSiターゲットを用いる態様、が含まれる。また、この方法においてさらに膜中に炭素(ケイ素炭化物、遷移金属炭化物)を含ませる場合には、MoSiCターゲットを用いる態様の他、Moターゲット及びSiターゲットのいずれか一方又は双方にCを含むターゲットを用いる態様や、MoSiターゲット及びCターゲットを用いる態様、が含まれる。
雰囲気ガスの圧力が低い(この場合成膜速度が遅い)と炭化物等(ケイ素炭化物や遷移金属炭化物)が形成されやすいと考えられる。また、電力(パワー)を低くすると炭化物等(ケイ素炭化物や遷移金属炭化物)が形成されやすいと考えられる。
本発明は、このように炭化物等(ケイ素炭化物や遷移金属炭化物)が形成され、上述した本発明の作用効果が得られるように、前記スパッタリング成膜時の前記雰囲気ガスの圧力及び/又は電力を調整する。
また、本発明は、スパッタリング成膜時に膜中に安定的なSi−C結合及び/又は安定的な遷移金属M−C結合が形成され、上述した本発明の作用効果が得られるように、前記スパッタリング成膜時の前記雰囲気ガスの圧力及び/又は電力を調整する。
これに対し、雰囲気ガスの圧力が高い(この場合成膜速度が速い)と炭化物等(ケイ素炭化物や遷移金属炭化物)が形成されにくいと考えられる。また、電力(パワー)を低くすると炭化物等(ケイ素炭化物や遷移金属炭化物)が形成されにくいと考えられる。
酸素を含む雰囲気中での200℃〜900℃の加熱処理が好ましく挙げられる。加熱温度が200℃未満であると、洗浄耐性及び温水耐性が低下するという問題がある。一方、加熱温度が900℃よりも高いと、薄膜自体が劣化する恐れが生じる。
スパッタ装置としてDCマグネトロンスパッタ装置が好ましく挙げられるが、本発明はこの成膜装置に限定されるわけではない。RFマグネトロンスパッタ装置等、他の方式のスパッタ装置を使用してもよい。
この場合のエッチングは、微細パターンの形成に有効なドライエッチングが好適に用いられる。
かかるフォトマスクの製造方法によれば、金属及びシリコンを主成分とする薄膜に関し、ArFエキシマレーザーなどの波長200nm以下の露光光が、従前のマスクの繰り返し使用期間を超えて累積的に照射された場合の耐光性を向上させ、その結果としてフォトマスクの寿命を著しく改善したフォトマスクが得られる。
これにより、金属及びシリコンを主成分とする薄膜に関し、ArFエキシマレーザーなどの波長200nm以下の露光光が、従前のマスクの繰り返し使用期間を超えて累積的に照射された場合の耐光性を向上させ、その結果としてフォトマスクの寿命を著しく改善したフォトマスクが得られる。
[実施例]
(実施例1)
図1は、実施例1のバイナリマスクブランク10の断面図である。
透光性基板1としてサイズ6インチ角、厚さ0.25インチの合成石英ガラス基板を用い、透光性基板1上に、薄膜2(遮光膜)として、MoSiON膜(裏面反射防止層)、MoSiCH膜(遮光層)、MoSiON膜(表面反射防止層)、をそれぞれ形成した。
次いで、Mo:Si=21mol%:79mol%のターゲットを用い、ArとCH4とHeとの混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:CH4:He=10:1:50)で、ガス圧0.3Pa、DC電源の電力を2.0kWで、モリブデン、シリコン、炭素及び水素からなる膜(Mo:19.8原子%、Si:76.7原子%、C:2.0原子%、H:1.5原子%)を30nmの膜厚で形成し、MoSiCH膜(遮光層)を形成した。
次いで、Mo:Si=4mol%:96mol%のターゲットを用い、ArとO2とN2とHe(ガス流量比 Ar:O2:N2:He=6:5:11:16)で、ガス圧0.1Pa、DC電源の電力を3.0kWで、モリブデン、シリコン、酸素、窒素からなる膜(Mo:2.6原子%、Si:57.1原子%、O:15.9原子%、N:24.1原子%)を15nmの膜厚で形成し、MoSiON膜(表面反射防止層)を形成した。
遮光膜の合計膜厚は52nmとした。遮光膜の光学濃度(OD:Optical Density)はArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて3.0であった。
以上のようにして、実施例1のバイナリマスクブランクを作製した。
まず、マスクブランク10上に、レジスト膜3として、電子線描画用化学増幅型ポジレジスト膜(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製 PRL009)を形成した(図2(A)参照)。
次に上記マスクブランク10上に形成されたレジスト膜3に対し、電子線描画装置を用いて所望のパターン描画を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターン3aを形成した(図2(B)、(C)参照)。
次に、残存するレジストパターンを剥離して、実施例1のバイナリマスク20を得た(図2(E)参照)。なお、遮光膜の光学濃度(OD)はArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいてマスクブランク製造時と殆ど変化はなかった。
ArFエキシマレーザー照射後の遮光膜パターンの断面を、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて詳しく観察したところ、特に従来発生していたような変質層は確認されず、線幅の太り(CD変化量)に関しても2nm以下に抑えられていた。従って、実施例1のバイナリマスクブランク及びバイナリマスクは、200nm以下の短波長の露光光源による累積照射に対して、極めて高い耐光性を備えていることがわかる。
また、バイナリマスクを23℃のアンモニア過水に60分間、90℃の温水に60分間、それぞれ浸し、耐薬品性、特にパターン側壁の耐薬品性(耐アンモニア過水、耐温水)を調べたところ、いずれの場合もパターン側壁の浸食は確認されず、耐薬品性は良好であった。
さらに、ArFエキシマレーザー照射後のマスク表面を詳しく観察したところ、とくに従来発生していたようなMo析出による透光性基板(ガラス基板)や膜上への堆積物は確認されなかった。
実施例1と全く同様にして透光性基板上に3層構造の遮光膜(MoSiON膜(裏面反射防止層)/MoSiCH膜(遮光層)/MoSiON膜(表面反射防止層))を成膜した。この遮光膜の合計膜厚、及び、遮光膜の光学濃度(OD)は、ArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて実施例1とほぼ同じであった。
以上のようにして、実施例2のバイナリマスクブランクを作製した。
かる。
また、実施例1と同様に、バイナリマスクをアンモニア過水、温水にそれぞれ浸し、耐薬品性、特にパターン側壁の耐薬品性(耐アンモニア過水、耐温水)を調べたところ、いずれの場合もパターン側壁の浸食は確認されず、耐薬品性は良好であった。
さらに、ArFエキシマレーザー照射後のマスク表面を詳しく観察したところ、とくに従来発生していたようなMo析出による透光性基板(ガラス基板)や膜上への堆積物は確認されなかった。
実施例3は、遮光膜におけるMoSiON膜(裏面反射防止層)及びMoSiCH膜(遮光層)に関し、下記条件で成膜を行い、MoSiON膜(裏面反射防止層)及びMoSiCH膜(遮光層)の膜厚及び膜中のSi含有率を変化させたこと、遮光膜の合計膜厚を変化させたこと、を除き、実施例1と同様である。
次いで、Mo:Si=4mol%:96mol%のターゲットを用い、ArとCH4とHeとの混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:CH4:He=10:1:50)で、ガス圧0.3Pa、DC電源の電力を2.0kWで、モリブデン、シリコン、炭素及び水素からなる膜(Mo:3.9原子%、Si:92.6原子%、C:2.0原子%、H:1.5原子%)を38nmの膜厚で形成し、MoSiCH膜(遮光層)を形成した。
次いで、Mo:Si=4mol%:96mol%のターゲットを用い、ArとO2とN2とHe(ガス流量比 Ar:O2:N2:He=6:5:11:16)で、ガス圧0.1Pa、DC電源の電力を3.0kWで、モリブデン、シリコン、酸素、窒素からなる膜(Mo:2.6原子%、Si:57.1原子%、O:15.9原子%、N:24.1原子%)を15nmの膜厚で形成し、MoSiON膜(表面反射防止層)を形成した。
遮光膜の合計膜厚は60nmとした。遮光膜の光学濃度(OD)はArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて3.0であった。
以上のようにして、実施例3のバイナリマスクブランクを作製した。
また、実施例1と同様に、バイナリマスクをアンモニア過水、温水にそれぞれ浸し、耐薬品性、特にパターン側壁の耐薬品性(耐アンモニア過水、耐温水)を調べたところ、いずれの場合もパターン側壁の浸食は確認されず、耐薬品性は良好であった。
さらに、照射後のマスク表面を詳しく観察したところ、特に従来発生していたようなMo析出による透光性基板(ガラス基板)や膜上への堆積物は確認されなかった。
実施例4は、遮光膜におけるMoSiCH膜(遮光層)に関し、下記条件で成膜を行い、成膜時のCH4ガスの流量比、MoSiCH膜(遮光層)の膜中のC、Hの含有率を変化させたことを除き、実施例2と同様である。
次いで、Mo:Si=21mol%:79mol%のターゲットを用い、ArとCH4とHeとの混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:CH4:He=10:1:65)で、ガス圧0.3Pa、DC電源の電力を2.0kWで、モリブデン、シリコン、炭素及び水素からなる膜(Mo:20.6原子%、Si:77.4原子%、C:1.0原子%、H:1.0原子%)を30nmの膜厚で形成し、MoSiCH膜(遮光層)を形成した。
次いで、Mo:Si=4mol%:96mol%のターゲットを用い、ArとO2とN2とHe(ガス流量比 Ar:O2:N2:He=6:5:11:16)で、ガス圧0.1Pa、DC電源の電力を3.0kWで、モリブデン、シリコン、酸素、窒素からなる膜(Mo:2.6原子%、Si:57.1原子%、O:15.9原子%、N:24.1原子%)を15nmの膜厚で形成し、MoSiON膜(表面反射防止層)を形成した。
遮光膜の合計膜厚は52nmとした。遮光膜の光学濃度(OD)はArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて3.0であった。
以上のようにして、実施例4のバイナリマスクブランクを作製した。
また、実施例1と同様に、バイナリマスクをアンモニア過水、温水にそれぞれ浸し、耐薬品性、特にパターン側壁の耐薬品性(耐アンモニア過水、耐温水)を調べたところ、いずれの場合もパターン側壁の浸食は確認されず、耐薬品性は良好であった。
さらに、ArFエキシマレーザー照射後のマスク表面を詳しく観察したところ、特に従来発生していたようなMo析出による透光性基板(ガラス基板)や膜上への堆積物は確認されなかった。
実施例5は、遮光膜におけるMoSiON膜(裏面反射防止層)に関し、下記条件で成膜を行い、MoSiON膜(裏面反射防止層)をMoSiN膜(裏面反射防止層)に代え、その膜厚及び膜中のSi含有率を変化させたこと、遮光膜の合計膜厚を変化させたこと、を除き、実施例1と同様である。
次いで、Mo:Si=21mol%:79mol%のターゲットを用い、ArとCH4とHeとの混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:CH4:He=10:1:50)で、ガス圧0.3Pa、DC電源の電力を2.0kWで、モリブデン、シリコン、炭素及び水素からなる膜(Mo:19.8原子%、Si:76.7原子%、C:2.0原子%、H:1.5原子%)を30nmの膜厚で形成し、MoSiCH膜(遮光層)を形成した。
次いで、Mo:Si=4mol%:96mol%のターゲットを用い、ArとO2とN2とHe(ガス流量比 Ar:O2:N2:He=6:5:11:16)で、ガス圧0.1Pa、DC電源の電力を3.0kWで、モリブデン、シリコン、酸素、窒素からなる膜(Mo:2.6原子%、Si:57.1原子%、O:15.9原子%、N:24.1原子%)を15nmの膜厚で形成し、MoSiON膜(表面反射防止層)を形成した。
遮光膜の合計膜厚は58nmとした。遮光膜の光学濃度(OD)はArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて3.0であった。
以上のようにして、実施例5のバイナリマスクブランクを作製した。
また、実施例1と同様に、バイナリマスクをアンモニア過水、温水にそれぞれ浸し、耐薬品性、特にパターン側壁の耐薬品性(耐アンモニア過水、耐温水)を調べたところ、いずれの場合もパターン側壁の浸食は確認されず、耐薬品性は良好であった。
さらに、ArFエキシマレーザー照射後のマスク表面を詳しく観察したところ、特に従来発生していたようなMo析出による透光性基板(ガラス基板)や膜上への堆積物は確認されなかった。
実施例6は、遮光膜におけるMoSiON膜(裏面反射防止層)に関し、下記条件で成膜を行い、その膜厚及び膜中のSi含有率を変化させたこと、遮光膜の合計膜厚を変化させたこと、を除き、実施例1と同様である。
次いで、Mo:Si=21mol%:79mol%のターゲットを用い、ArとCH4とHeとの混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:CH4:He=10:1:50)で、ガス圧0.3Pa、DC電源の電力を2.0kWで、モリブデン、シリコン、炭素及び水素からなる膜(Mo:19.8原子%、Si:76.7原子%、C:2.0原子%、H:1.5原子%)を30nmの膜厚で形成し、MoSiCH膜(遮光層)を形成した。
次いで、Mo:Si=4mol%:96mol%のターゲットを用い、ArとO2とN2とHe(ガス流量比 Ar:O2:N2:He=6:5:11:16)で、ガス圧0.1Pa、DC電源の電力を3.0kWで、モリブデン、シリコン、酸素、窒素からなる膜(Mo:2.6原子%、Si:57.1原子%、O:15.9原子%、N:24.1原子%)を15nmの膜厚で形成し、MoSiON膜(表面反射防止層)を形成した。
遮光膜の合計膜厚は60nmとした。遮光膜の光学濃度(OD)はArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて3.0であった。
以上のようにして、実施例6のバイナリマスクブランクを作製した。
また、実施例1と同様に、バイナリマスクをアンモニア過水、温水にそれぞれ浸し、耐薬品性、特にパターン側壁の耐薬品性(耐アンモニア過水、耐温水)を調べたところ、いずれの場合もパターン側壁の浸食は確認されず、耐薬品性は良好であった。
さらに、照射後のマスク表面を詳しく観察したところ、特に従来発生していたようなMo析出によるガラス基板や膜上への堆積物は確認されなかった。
実施例7は、以下の点を除き、実施例1と同様である。
遮光膜に関し、MoSiON膜(裏面反射防止層)を形成しなかったこと。
遮光膜におけるMoSiCH膜(遮光層)及びMoSiON膜(表面反射防止層)に関し、下記条件で成膜を行い、MoSiCH膜(遮光層)をMoSiCHN膜(遮光層)に代え、その膜厚及び膜中のSi含有率を変化させ、MoSiON膜(表面反射防止層)の膜厚を変化させたこと。
遮光膜の合計膜厚を変化させたこと。
遮光膜におけるMoSiCHN膜(遮光層)は、モリブデン、シリコン、炭素、水素、窒素からなる膜(Mo:7.1原子%、Si:71.7原子%、C:2.0原子%、H:1.0原子%、N:18.2原子%)を52nmの膜厚で形成した。また、遮光膜におけるMoSiON膜(表面反射防止層)は、モリブデン、シリコン、酸素、窒素からなる膜(Mo:2.6原子%、Si:57.1原子%、O:15.9原子%、N:24.1原子%)を8nmの膜厚で形成した。
遮光膜の合計膜厚は60nmとした。遮光膜の光学濃度(OD)はArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて3.0であった。
以上のようにして、実施例7のバイナリマスクブランクを作製した。
また、実施例1と同様に、バイナリマスクをアンモニア過水、温水にそれぞれ浸し、耐薬品性、特にパターン側壁の耐薬品性(耐アンモニア過水、耐温水)を調べたところ、いずれの場合もパターン側壁の浸食は確認されず、耐薬品性は良好であった。
さらに、照射後のマスク表面を詳しく観察したところ、特に従来発生していたようなMo析出による透光性基板(ガラス基板)や膜上への堆積物は確認されなかった。
比較例1は、以下の点を除き、実施例1と同様である。
遮光膜に関し、MoSiON膜(裏面反射防止層)を形成しなかったこと。
遮光膜におけるMoSi膜(遮光層)及びMoSiON膜(表面反射防止層)に関し、下記条件で成膜を行い、MoSi膜(遮光層)をMoSiN膜(遮光層)に代え、その膜厚及び膜中のSi含有率を変化させ、MoSiON膜(表面反射防止層)の膜厚を変化させたこと。
遮光膜の合計膜厚を変化させたこと。
遮光膜におけるMoSiN膜(遮光層)は、モリブデン、シリコン、窒素からなる膜(Mo:9原子%、Si:72.8原子%、N:18.2原子%)を52nmの膜厚で形成した。また、遮光膜におけるMoSiON膜(表面反射防止層)は、モリブデン、シリコン、酸素、窒素からなる膜(Mo:2.6原子%、Si:57.1原子%、O:15.9原子%、N:24.1原子%)を8nmの膜厚で形成した。
遮光膜の合計膜厚は60nmとした。遮光膜の光学濃度(OD)はArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて3.0であった。
以上のようにして、比較例1のバイナリマスクブランクを作製した。
また、実施例1と同様に、バイナリマスクをアンモニア過水、温水にそれぞれ浸し、耐薬品性、特にパターン側壁の耐薬品性(耐アンモニア過水、耐温水)を調べたところ、いずれの場合もパターン側壁の浸食が確認された。
さらに、照射後のマスク表面を詳しく観察したところ、従来発生していたようなMo析出による透光性基板(ガラス基板)や膜上への堆積物が確認された。
図1は、実施例8の位相シフトマスクブランク10の断面図である。
透光性基板1としてサイズ6インチ角、厚さ0.25インチの合成石英ガラス基板を用い、透光性基板1上に、薄膜2として、窒化されたモリブデン及びシリコンに炭素及び水素を含む光半透過膜(MoSiNCH膜)を成膜した。
具体的には、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)との混合ターゲット(Mo:Si=10mol%:90mol%)を用い、アルゴン(Ar)と窒素(N2)とメタン(CH4)とヘリウム(He)との混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:N2:CH4:He=9:90:1:120)で、ガス圧0.3Pa、DC電源の電力を3.0kWとして、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、モリブデン、シリコン及び窒素からなるMoSiNCH膜を69nmの膜厚で形成した。なお、このMoSiNCH膜は、ArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて、透過率は6.11%、位相差は175.6度となっていた。
以上のようにして、実施例8の位相シフトマスクブランク10を作製した。
まず、マスクブランク10上に、レジスト膜3として、電子線描画用化学増幅型ポジレジスト膜(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製 PRL009)を形成した(図2(A)参照)。レジスト膜3の形成は、スピンナー(回転塗布装置)を用いて、回転塗布した。
次に、上記レジストパターン3aをマスクとして、光半透過膜(MoSiNCH膜)からなる薄膜2のエッチングを行って光半透過膜パターン2aを形成した(図2(D)参照)。ドライエッチングガスとして、SF6とHeの混合ガスを用いた。
次に、残存するレジストパターンを剥離して、位相シフトマスク20を得た(図2(E)参照)。なお、光半透過膜の透過率、位相差はマスクブランク製造時と殆ど変化はなかった。
上記ArFエキシマレーザー照射後の光半透過膜(MoSiNCH膜)の透過率及び位相差を測定したところ、ArFエキシマレーザーにおいて、透過率は6.70%、位相差は173.1度となっていた。従って、照射前後の変化量は、透過率が+0.59%、位相差が−2.5度であり、変化量は小さく抑えられており、この程度の変化量はフォトマスクの性能に影響はない。
また、光半透過膜パターンの断面を、TEM(透過型電子顕微鏡)を用いて詳しく観察したところ、特に従来発生していたような厚い変質層は確認されず、線幅の太り(CD変化量)に関しても15nm以下に抑えられていた。従って、実施例8の位相シフトマスクブランク及び位相シフトマスクは、200nm以下の短波長の露光光源による累積照射に対して、極めて高い耐光性を備えていることがわかる。
また、実施例1と同様に、位相シフトマスクをアンモニア過水、温水にそれぞれ浸し、耐薬品性、特にパターン側壁の耐薬品性(耐アンモニア過水、耐温水)を調べたところ、いずれの場合もパターン側壁の浸食は確認されず、耐薬品性は良好であった。
さらに、照射後のマスク表面を詳しく観察したところ、特に従来発生していたようなMo析出による透光性基板(ガラス基板)や膜上への堆積物は確認されなかった。
透光性基板としてサイズ6インチ角、厚さ0.25インチの合成石英ガラス基板を用い、透光性基板上に、窒化されたモリブデン及びシリコンからなる光半透過膜(MoSiN膜)を形成した。
具体的には、モリブデンMoとシリコンSiとの混合ターゲット(Mo:Si=10mol%:90mol%)を用い、アルゴンArと窒素N2とヘリウムHeとの混合ガス雰囲気(ガス流量比 Ar:N2:He=5:49:46)で、ガス圧0.3Pa、DC電源の電力を3.0kWとして、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、モリブデン、シリコン及び窒素からなるMoSiN膜を69nmの膜厚で形成した。 なお、このMoSiN膜は、ArFエキシマレーザー露光光の波長193nmにおいて、透過率は6.11%、位相差は175.6度となっていた。
以上のようにして、比較例2の位相シフトマスクブランクを作製した。
また、実施例1と同様に、位相シフトマスクをアンモニア過水、温水にそれぞれ浸し、耐薬品性、特にパターン側壁の耐薬品性(耐アンモニア過水、耐温水)を調べたところ、いずれの場合もパターン側壁の浸食が確認された。
さらに、ArFエキシマレーザー照射後のマスク表面を詳しく観察したところ、従来発生していたようなMo析出による透光性基板(ガラス基板)や膜上への堆積物が確認された。
2 薄膜
2’ 変質層
3 レジスト膜
10 フォトマスクブランク
20 フォトマスク
Claims (10)
- 波長200nm以下の露光光が適用されるフォトマスクを作製するために用いられるフォトマスクブランクの製造方法であって、
透光性基板上に薄膜を成膜する工程を含み、
前記薄膜は、炭素を含むターゲット又は炭素を含む雰囲気ガスを用いてスパッタリング成膜することにより形成され、遷移金属(M)、ケイ素、炭素を含み、遷移金属炭化物、又は遷移金属炭化物及びケイ素炭化物、を有してなり、
前記薄膜は、M−C結合を含有し、
前記薄膜は、遷移金属とケイ素の原子比が1:1〜1:24であり、炭素の含有量が1〜20原子%であり、実質的に酸素を含まず、
前記薄膜は、複数層構造からなる遮光膜における遮光層である
ことを特徴とするフォトマスクブランクの製造方法。 - 前記薄膜は、前記スパッタリング成膜時の前記雰囲気ガスの圧力及び/又は電力を調整して形成されることを特徴とする請求項1に記載のフォトマスクブランクの製造方法。
- 前記薄膜は、前記フォトマスクを作製し、ArFエキシマレーザーを総照射量30kJ/cm2となるように連続照射した場合に、薄膜パターンの線幅の太りが20nm以下となるように成膜することを特徴とする請求項1又は2に記載のフォトマスクブランクの製造方法。
- 前記薄膜は、スパッタリング成膜時に膜中に安定的なSi−C結合及び安定的な遷移金属M−C結合が形成されるように、前記スパッタリング成膜時の前記雰囲気ガスの圧力及び/又は電力を調整して形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクの製造方法。
- 波長200nm以下の露光光が適用されるフォトマスクを作製するために用いられるフォトマスクブランクであって、
透光性基板上に薄膜を備え、
前記薄膜は、遷移金属(M)、ケイ素及び炭素を含み、遷移金属炭化物、又は遷移金属炭化物及びケイ素炭化物、を有してなり、
前記薄膜は、M−C結合を含有し、
前記薄膜は、遷移金属とケイ素の原子比が1:1〜1:24であり、炭素の含有量が1〜20原子%であり、実質的に酸素を含まず、
前記薄膜は、複数層構造からなる遮光膜における遮光層であることを特徴とするフォトマスクブランク。 - 前記薄膜は、スパッタリング成膜時に膜中に安定的なSi−C結合及び安定的な遷移金属M−C結合が形成されるように、前記スパッタリング成膜時の前記雰囲気ガスの圧力及び/又は電力を調整して形成されることを特徴とする請求項5に記載のフォトマスクブランク。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクの製造方法によって得られたフォトマスクブランク又は請求項5又は6に記載のフォトマスクブランクにおける前記薄膜を、エッチングによりパターニングする工程を有することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクの製造方法によって得られたフォトマスクブランク又は請求項5又は6に記載のフォトマスクブランクを用いて作製されるフォトマスク。
- ArFエキシマレーザーを総照射量30kJ/cm2となるように連続照射した場合に、薄膜パターンの線幅の太りが20nm以下である請求項8に記載のフォトマスク。
- 請求項8又は9に記載のフォトマスクを用いて製造される半導体装置の製造方法。
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