JP5962811B2 - 光パターン照射方法 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体集積回路等の製造等に用いられるフォトマスクを用いた光パターン照射方法に関する。
種々の用途に用いられる半導体集積回路は、集積度の向上や電力消費量の低減のため、より微細な回路設計が行われるようになってきている。また、これに伴い、回路を形成するためのフォトマスクを用いたリソグラフィー技術においても、より微細な像を得るため、露光光源に、より短波長のものが使われるようになり、現在の最先端の実用加工工程では、露光光源は、KrFエキシマレーザー光(248nm)からArFエキシマレーザー光(193nm)に移行している。
ところが、より高いエネルギーのArFエキシマレーザー光を使うことにより、KrFエキシマレーザー光では見られなかったマスクダメージが生じることが判明した。その1つが、フォトマスクを連続使用すると、フォトマスク上に異物状の成長欠陥が発生する問題である。この成長欠陥は、ヘイズと呼ばれ、原因は、当初は、マスクパターン表面における硫酸アンモニウム結晶の成長と考えられていたが、現在では、有機物が関与するものも考えられるようになってきている。
ヘイズの問題の対策として、例えば、特開2008−276002号公報(特許文献1)は、フォトマスクに対してArFエキシマレーザー光を長時間照射したとき発生してくる成長欠陥に対し、所定の段階でフォトマスクを洗浄することにより、フォトマスクの継続使用ができることを開示している。また、特開2010−156880号公報(特許文献2)では、フォトマスクブランクの表面を酸化処理することで、ヘイズの発生が抑制されることを開示している。
ところが、パターン転写におけるArFエキシマレーザー光の露光照射量の増加に伴い、ヘイズとは異なるダメージがフォトマスクに生じ、累積の照射エネルギー量に応じてマスクのパターン線幅が変化することが判明した(Thomas Faure et al., “Characterization of binary mask and attenuated phase shift mask blanks for 32nm mask fabrication”, Proc. Of SPIE vol. 7122, pp712209-1〜712209-12(非特許文献1))。これは、ArFエキシマレーザー光を長時間照射すると、累積照射エネルギー量が大きくなり、パターン材質の酸化物と考えられる物質による層が膜パターンの外側に成長し、パターン幅が変化してしまう問題である。また、このダメージを受けたマスクは、上述のヘイズの除去に用いるSC−1(アンモニア水/過酸化水素水)洗浄や、硫酸/過酸化水素水による洗浄では回復しないことが示されており、原因を全く別にすると考えられる。
更に、上記報告によれば、回路のパターン露光において、焦点深度を伸ばすために有用なマスク技術であるハーフトーン位相シフトマスクでは、特に、上記ArFエキシマレーザー光の照射によるMoSi系材料膜等の遷移金属ケイ素系材料膜の変質を伴うパターン寸法変動による劣化(以下、パターン寸法変動劣化と呼ぶ)が大きいことが指摘されている。そこで、高価なフォトマスクを長時間使用するためには、ArFエキシマレーザー光の照射による上記パターン寸法変動劣化への対処が必要となる。
特開2008−276002号公報 特開2010−156880号公報 特開平7−140635号公報 特開平10−171096号公報 特開2004−133029号公報 特開平7−181664号公報 特開2007−33470号公報 特開2006−78807号公報
Thomas Faure et al., "Characterization of binary mask and attenuated phase shift mask blanks for 32nm mask fabrication", Proc. Of SPIE vol. 7122, pp712209-1〜712209-12
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ArFエキシマレーザー光等の従来に比べて高エネルギーの短波長光を用いてパターン露光を行う際、累積照射エネルギー量が多い場合にあっても、照射光によるフォトマスクの膜質変化を伴うパターン寸法変動劣化が抑制されたフォトマスクを用いた光パターン照射方法を提供することを目的とする。
ArFエキシマレーザー光の照射によるパターン寸法変動劣化は、上記Thomas Faureらの報告(非特許文献1)で明らかにされているとおり、ドライエアー雰囲気で光を照射した場合には生じにくいものであるが、ドライエアー雰囲気による制御は、付加装置を必要とする他、静電気対策等が新たに必要となるため、コストアップにつながる。そこで、本発明者らは、湿度のある常用の雰囲気による長時間の露光を可能とするべく、フォトマスクの膜材料の改良を試みた。
ArFエキシマレーザー光を光源とするリソグラフィーに用いるフォトマスクでは、ハーフトーン位相シフトマスクにおいては遷移金属を含有するケイ素系材料が用いられ、通常、モリブデンを含有するケイ素系材料が用いられている。このケイ素系材料の主たる構成元素は、遷移金属とケイ素であり、更に、軽元素として酸素及び/又は窒素を含有するもの(例えば、特開平7−140635号公報(特許文献3)等)、更に、炭素や水素等の元素が少量加えられたもの(例えば、特開平10−171096号公報(特許文献4)等)がある。遷移金属としてはMo、Zr、Ta、W、Ti等が用いられ、特にMoが一般的に用いられる(例えば、特開平7−140635号公報(特許文献3)等)が、更に、第2の遷移金属が加えられる場合もある(特開2004−133029号公報(特許文献5))。また、遮光膜においても、遷移金属を含有するケイ素系材料が用いられ、通常、モリブデンを含有するケイ素系材料が用いられるようになってきている。
従来のハーフトーン位相シフト膜では、上述した材料を用いて、露光光の位相を変化させつつ必要な減衰量を得ると共に、膜に高い屈折率をもたせるために、多量の窒素原子を含有させ、また、最適な光学物性や化学特性を得るために、酸素原子を必要量加える設計が好ましいとされた(例えば、特開平7−181664号公報(特許文献6))。特に、ArFエキシマレーザー光用の膜材料には、KrFエキシマレーザー光用のものよりも多量の窒素原子を含有させ、更に、必要に応じて比較的少量の酸素を添加することにより、要求される物理特性を得ている。ところが、このような材料を用いたフォトマスクに高エネルギー光を多量に照射した場合、高エネルギー光の照射によるパターン寸法変動劣化が大きく、フォトマスクの使用寿命が、要求されるものより短いことが判明した。
そこで、本発明者らは、ハーフトーン位相シフト膜等として用いる遷移金属を含有するケイ素系材料(遷移金属ケイ素系材料)として、フォトマスクを用いた露光において通常適用される、湿度を有する管理された雰囲気下においてArFエキシマレーザー光を照射しても、遷移金属ケイ素系材料膜の変質を伴うパターン寸法変動劣化の少ない材料の開発を目指し、遷移金属ケイ素系材料の光励起を原因とする不安定化に対する仮説として、次のような仮説を立てた。即ち、遷移金属ケイ素系材料、例えばモリブデンケイ素系材料において、水分がある状態でArFエキシマレーザー光を照射し続けることによって、窒素を含むモリブデンケイ素系材料膜は窒素を乖離し、酸化物となる等の化学変化をする。このような化学変化のしやすさを考える上では、それぞれの元素の価数を考慮する必要があり、それぞれの元素の価数と含有率との積は、その物質における元素毎の相対的な結合の数を示すものであり、各元素の積と化学変化のしやすさとの間に関係があると考えられる。また、遷移金属ケイ素系材料であれば、ハーフトーン位相シフト膜のみならず、遮光膜等の他種の膜においても同様な関係があると考えられる。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、窒素及び酸素を含有する遷移金属ケイ素系材料膜中の遷移金属及びケイ素の含有量、更には、これらの元素及び窒素の含有量、又はこれらの元素、酸素及び窒素の含有量と、ArFエキシマレーザー光を累積して照射した際の、マスクパターンの寸法変動劣化との間に相関があること、また、この相関が上述した仮説に沿ったものであることを見出した。そして、膜の遷移金属ケイ素系材料中の上記元素の含有率を、所定の関係式を満たすようにすることで、ArFエキシマレーザー光の照射によるパターン寸法変動劣化が強く抑制されることを見出し、本発明をなすに至った。
従って、本発明は、以下の光パターン照射方法を提供する。
請求項1:
累積10kJ/cm2以上のArFエキシマレーザー光が照射されたフォトマスクを用い、ArFエキシマレーザー光を光源として、光パターンを露光対象に照射する光パターン照射方法であって、
透明基板上に、モリブデンと、ケイ素と、酸素及び窒素とを含有するモリブデンケイ素系材料のハーフトーン位相シフト膜のマスクパターンを有し、
上記ハーフトーン位相シフト膜が、下記式(1)
4×CSi/100−6×CM/100>1 …(1)
(式中、CSiはケイ素の含有率(原子%)、CMはモリブデンの含有率(原子%)を示す
満たすモリブデンケイ素系材料からなる光吸収能の高い層と、上記式(1)を満たし、酸素を3原子%以上含有するモリブデンケイ素系材料からなる光吸収能の低い層との組み合わせで2層以上積層された多層で、又は
該多層と、該多層の透明基板から離間する側に接する層厚10nm以下の表面酸化層とで構成された膜であるフォトマスクを用いることを特徴とする光パターン照射方法。
請求項2:
累積10kJ/cm2以上のArFエキシマレーザー光が照射されたフォトマスクを用い、ArFエキシマレーザー光を光源として、光パターンを露光対象に照射する光パターン照射方法であって、
透明基板上に、モリブデンと、ケイ素と、酸素及び窒素とを含有するモリブデンケイ素系材料のハーフトーン位相シフト膜のマスクパターンを有し、
上記ハーフトーン位相シフト膜が、下記式(2)
4×CSi/100−6×CM/100−3×CN/100>−0.1 …(2)
(式中、CSiはケイ素の含有率(原子%)、CMはモリブデンの含有率(原子%)、CNは窒素の含有率(原子%)を示す
満たすモリブデンケイ素系材料からなる光吸収能の高い層と、上記式(2)を満たし、酸素を3原子%以上含有するモリブデンケイ素系材料からなる光吸収能の低い層との組み合わせで2層以上積層された多層で、又は
該多層と、該多層の透明基板から離間する側に接する層厚10nm以下の表面酸化層とで構成された膜であるフォトマスクを用いることを特徴とする光パターン照射方法。
請求項3:
累積10kJ/cm2以上のArFエキシマレーザー光が照射されたフォトマスクを用い、ArFエキシマレーザー光を光源として、光パターンを露光対象に照射する光パターン照射方法であって、
透明基板上に、モリブデンと、ケイ素と、酸素及び窒素とを含有するモリブデンケイ素系材料のハーフトーン位相シフト膜のマスクパターンを有し、
上記ハーフトーン位相シフト膜が、下記式(3)
4×CSi/100−6×CM/100−3×CN/100+2×CO/100>0
…(3)
(式中、CSiはケイ素の含有率(原子%)、CMはモリブデンの含有率(原子%)、CNは窒素の含有率(原子%)、COは酸素の含有率(原子%)を示す
満たすモリブデンケイ素系材料からなる光吸収能の高い層と、上記式(3)を満たし、酸素を3原子%以上含有するモリブデンケイ素系材料からなる光吸収能の低い層との組み合わせで2層以上積層された多層で、又は
該多層と、該多層の透明基板から離間する側に接する層厚10nm以下の表面酸化層とで構成された膜であるフォトマスクを用いることを特徴とする光パターン照射方法。
請求項4:
記モリブデンケイ素系材料からなる光吸収能の高い層が、酸素を3原子%以上含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光パターン照射方法。
請求項5:
上記ハーフトーン位相シフト膜の膜厚が50〜70nmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光パターン照射方法。
請求項6:
記モリブデンケイ素系材料からなる光吸収能の高い層が、酸素を10原子%以上含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光パターン照射方法。
請求項7:
上記表面酸化層が、上記モリブデンケイ素系材料で構成された層の表面部を大気酸化又は強制酸化処理して形成された層であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光パターン照射方法。
また、本発明は、以下のフォトマスクブランク、フォトマスク、光パターン照射方法、遷移金属ケイ素系材料膜の設計方法、及びフォトマスクブランクの製造方法が関連する。
[1] 透明基板上に、遷移金属と、ケイ素と、酸素及び窒素とを含有する材料からなる遷移金属ケイ素系材料膜を有するフォトマスクブランクであって、
上記遷移金属ケイ素系材料膜が、酸素を3原子%以上含有し、かつ
下記式(1)
4×CSi/100−6×CM/100>1 …(1)
(式中、CSiはケイ素の含有率(原子%)、CMは遷移金属の含有率(原子%)を示す)
を満たす遷移金属ケイ素系材料からなる層、
該層が2層以上積層された多層、又は
これらの層のいずれかと、該層の透明基板から離間する側に接する層厚10nm以下の表面酸化層とで構成された膜であることを特徴とするフォトマスクブランク。
[2] 透明基板上に、遷移金属と、ケイ素と、酸素及び窒素とを含有する材料からなる遷移金属ケイ素系材料膜を有するフォトマスクブランクであって、
上記遷移金属ケイ素系材料膜が、酸素を3原子%以上含有し、かつ
下記式(2)
4×CSi/100−6×CM/100−3×CN/100>−0.1 …(2)
(式中、CSiはケイ素の含有率(原子%)、CMは遷移金属の含有率(原子%)、CNは窒素の含有率(原子%)を示す)
を満たす遷移金属ケイ素系材料からなる層、
該層が2層以上積層された多層、又は
これらの層のいずれかと、該層の透明基板から離間する側に接する層厚10nm以下の表面酸化層とで構成された膜であることを特徴とするフォトマスクブランク。
[3] 透明基板上に、遷移金属と、ケイ素と、酸素及び窒素とを含有する材料からなる遷移金属ケイ素系材料膜を有するフォトマスクブランクであって、
上記遷移金属ケイ素系材料膜が、酸素を3原子%以上含有し、かつ
下記式(3)
4×CSi/100−6×CM/100−3×CN/100+2×CO/100>0
…(3)
(式中、CSiはケイ素の含有率(原子%)、CMは遷移金属の含有率(原子%)、CNは窒素の含有率(原子%)、COは酸素の含有率(原子%)を示す)
を満たす遷移金属ケイ素系材料からなる層、
該層が2層以上積層された多層、又は
これらの層のいずれかと、該層の透明基板から離間する側に接する層厚10nm以下の表面酸化層とで構成された膜であることを特徴とするフォトマスクブランク。
[4] 上記遷移金属がモリブデンであることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載のフォトマスクブランク。
[5] 上記表面酸化層が、上記遷移金属ケイ素系材料で構成された層の表面部を大気酸化又は強制酸化処理して形成された層であることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載のフォトマスクブランク。
[6] 上記遷移金属ケイ素系材料膜が、ハーフトーン位相シフト膜であることを特徴とする[1]乃至[5]のいずれかに記載のフォトマスクブランク。
[7] [1]乃至[6]のいずれかに記載のフォトマスクブランクを用いて製造したことを特徴とするフォトマスク。
[8] [7]記載のフォトマスクを用い、ArFエキシマレーザー光を照射して、光パターンを露光対象に照射することを特徴とする光パターン照射方法。
[9] 累積10kJ/cm2以上のArFエキシマレーザー光が照射されたフォトマスクを用い、光パターンを露光対象に照射することを特徴とする[8]記載の光パターン照射方法。
[10] 遷移金属と、ケイ素と、酸素及び窒素とを含有する材料からなる遷移金属ケイ素系材料膜パターンが形成されたフォトマスクにおいて、上記膜パターンのArFエキシマレーザー光の照射によるパターン線幅変動劣化が抑制された遷移金属ケイ素系材料膜を設計する方法であって、
上記遷移金属ケイ素系材料膜の酸素含有率を3原子%以上とし、
上記遷移金属ケイ素系材料膜を、遷移金属ケイ素系材料からなる層、該層が2層以上積層された多層、又はこれらの層のいずれかと、該層の透明基板から離間する側に接する層厚10nm以下の表面酸化層とで構成し、かつ
上記遷移金属ケイ素系材料からなる層において、下記式(1)
4×CSi/100−6×CM/100>1 …(1)
(式中、CSiはケイ素の含有率(原子%)、CMは遷移金属の含有率(原子%)を示す)
を満たす範囲内で、ケイ素の含有率CSi及び遷移金属の含有率CMを設定することを特徴とする遷移金属ケイ素系材料膜の設計方法。
[11] 遷移金属と、ケイ素と、酸素及び窒素とを含有する材料からなる遷移金属ケイ素系材料膜パターンが形成されたフォトマスクにおいて、上記膜パターンのArFエキシマレーザー光の照射によるパターン線幅変動劣化が抑制された遷移金属ケイ素系材料膜を設計する方法であって、
上記遷移金属ケイ素系材料膜の酸素含有率を3原子%以上とし、
上記遷移金属ケイ素系材料膜を、遷移金属ケイ素系材料からなる層、該層が2層以上積層された多層、又はこれらの層のいずれかと、該層の透明基板から離間する側に接する層厚10nm以下の表面酸化層とで構成し、かつ
上記遷移金属ケイ素系材料からなる層において、下記式(2)
4×CSi/100−6×CM/100−3×CN/100>−0.1 …(2)
(式中、CSiはケイ素の含有率(原子%)、CMは遷移金属の含有率(原子%)、CNは窒素の含有率(原子%)を示す)
を満たす範囲内で、ケイ素の含有率CSi、遷移金属の含有率CM及び窒素の含有率CNを設定することを特徴とする遷移金属ケイ素系材料膜の設計方法。
[12] 遷移金属と、ケイ素と、酸素及び窒素とを含有する材料からなる遷移金属ケイ素系材料膜パターンが形成されたフォトマスクにおいて、上記膜パターンのArFエキシマレーザー光の照射によるパターン線幅変動劣化が抑制された遷移金属ケイ素系材料膜を設計する方法であって、
上記遷移金属ケイ素系材料膜の酸素含有率を3原子%以上とし、
上記遷移金属ケイ素系材料膜を、遷移金属ケイ素系材料からなる層、該層が2層以上積層された多層、又はこれらの層のいずれかと、該層の透明基板から離間する側に接する層厚10nm以下の表面酸化層とで構成し、かつ
上記遷移金属ケイ素系材料からなる層において、下記式(3)
4×CSi/100−6×CM/100−3×CN/100+2×CO/100>0
…(3)
(式中、CSiはケイ素の含有率(原子%)、CMは遷移金属の含有率(原子%)、CNは窒素の含有率(原子%)、COは酸素の含有率(原子%)を示す)
を満たす範囲内で、ケイ素の含有率CSi、遷移金属の含有率CM、窒素の含有率CN及び酸素の含有率COを設定することを特徴とする遷移金属ケイ素系材料膜の設計方法。
[13] 上記遷移金属がモリブデンであることを特徴とする[10]乃至[12]のいずれかに記載の設計方法。
[14] 上記表面酸化層が、上記遷移金属ケイ素系材料で構成された層の表面部を大気酸化又は強制酸化処理して形成された層であることを特徴とする[10]乃至[13]のいずれかに記載の設計方法。
[15] 上記遷移金属ケイ素系材料膜が、ハーフトーン位相シフト膜であることを特徴とする[10]乃至[14]のいずれかに記載の設計方法。
[16] [10]乃至[15]のいずれかに記載の設計方法により設計した遷移金属ケイ素系材料膜を、透明基板上に成膜することを特徴とするフォトマスクブランクの製造方法。
本発明によれば、遷移金属ケイ素系材料で形成されたハーフトーン位相シフト膜や遮光膜などにおいて、ArFエキシマレーザー光等の高エネルギー光の累積照射によるMoSi系材料膜等の遷移金属ケイ素系材料膜の変質を伴うパターン寸法変動劣化が大きく抑制され、従来と比べて高エネルギー光の照射が累積した場合であっても、露光装置のパターン露光条件を変更せずに、光リソグラフィーにおける光パターン照射を実施することができる。
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明のフォトマスクブランクは、石英基板等の透明基板上に形成された遷移金属と、ケイ素と、酸素及び窒素とを含有する材料からなる遷移金属ケイ素系材料膜を有する。この遷移金属ケイ素系材料膜は、ハーフトーン位相シフト膜、遮光膜などとして形成されるものである。遷移金属ケイ素系材料膜がハーフトーン位相シフト膜である場合は、ArFエキシマレーザー光等の露光光に対し、所定の位相差(一般的には約180°)と、所定の透過率(一般的には1〜40%)を与える膜である。また、遷移金属ケイ素系材料膜が遮光膜である場合は、他の光吸収膜が存在しない場合には単独で、また、他の光吸収膜(ハーフトーン位相シフト膜、耐エッチング膜等)が存在する場合には他の光吸収膜と合計し、膜全体の光学濃度を2.5以上とする膜である。
[第1の態様]
ArFエキシマレーザー光等の高エネルギー光の照射による遷移金属ケイ素系材料膜におけるパターン寸法変動劣化は、ケイ素と遷移金属の含有量に依存する。そのため、上記遷移金属ケイ素系材料膜を、酸素を3原子%以上含有するものとし、下記式(1)
4×CSi/100−6×CM/100>1 …(1)
(式中、CSiはケイ素の含有率(原子%)、CMは遷移金属の含有率(原子%)を示す)
を満たす遷移金属ケイ素系材料からなる層、該層が2層以上積層された多層、又はこれらの層のいずれかと、該層の透明基板から離間する側に接する層厚10nm以下の表面酸化層とで構成された膜とすることで、パターン寸法変動劣化を抑制することができる。
遷移金属ケイ素系材料において、モリブデンのような遷移金属は、ケイ素よりも結合が弱いために、ケイ素の結合の数に対して、遷移金属の結合の数が相対的に多い方が、ArFエキシマレーザー光のような高エネルギー光の照射によって、材料の酸化が進みやすいことから、ケイ素の結合の数及び遷移金属の結合の数と、パターン寸法変動劣化との間には、相関があると考えることができ、このような材料組成と膜構成を適用して遷移金属ケイ素系材料膜を設計することがパターン寸法変動劣化の抑制に有効である。
遷移金属は、ケイ素よりも結合が弱いと考えると、上記式(1)中の左辺、即ち、4×CSi/100−6×CM/100(=A1)の値は、大きいほど好ましく、ケイ素の結合の数から遷移金属の結合の数を差し引いた値に対応するA1の値を1より大きく設定することによって、パターン寸法変動劣化をより抑制することができる。また、A1の値は、実用上有効な材料の範囲としては、3.85以下とすることが好ましい。
[第2の態様]
ArFエキシマレーザー光等の高エネルギー光の照射による遷移金属ケイ素系材料膜におけるパターン寸法変動劣化は、ケイ素と遷移金属と窒素の含有量に依存する。そのため、上記遷移金属ケイ素系材料膜を、酸素を3原子%以上含有するものとし、下記式(2)
4×CSi/100−6×CM/100−3×CN/100>−0.1 …(2)
(式中、CSiはケイ素の含有率(原子%)、CMは遷移金属の含有率(原子%)、CNは窒素の含有率(原子%)を示す)
を満たす遷移金属ケイ素系材料からなる層、該層が2層以上積層された多層、又はこれらの層のいずれかと、該層の透明基板から離間する側に接する層厚10nm以下の表面酸化層とで構成された膜とすることで、パターン寸法変動劣化を抑制することができる。
遷移金属ケイ素系材料において、モリブデンのような遷移金属は、ケイ素よりも結合が弱いために、ケイ素の結合の数に対して、遷移金属の結合の数が相対的に多い方が、ArFエキシマレーザー光のような高エネルギー光の照射によって、材料の酸化が進みやすく、また、窒素の結合は、窒化物が劣化反応の出発物質になり得ることから、ケイ素の結合の数、遷移金属の結合の数及び窒素の結合の数と、パターン寸法変動劣化との間には、相関があると考えることができ、このような材料組成と膜構成を適用して遷移金属ケイ素系材料膜を設計することがパターン寸法変動劣化の抑制に有効である。
遷移金属は、ケイ素よりも結合が弱いと考え、また、窒化物が劣化反応の出発物質であると考えると、窒素の結合量は少ない方が好ましいため、上記式(2)中の左辺、即ち、4×CSi/100−6×CM/100−3×CN/100(=A2)の値は、大きいほど好ましく、ケイ素の結合の数から遷移金属及び窒素の結合の数を差し引いた値に対応するA2の値を−0.1より大きく設定することによって、パターン寸法変動劣化をより抑制することができる。また、A2の値は、実用上有効な材料の範囲としては、3.85以下とすることが好ましい。
[第3の態様]
ArFエキシマレーザー光等の高エネルギー光の照射による遷移金属ケイ素系材料膜におけるパターン寸法変動劣化は、ケイ素と遷移金属と窒素と酸素の含有量に依存する。そのため、上記遷移金属ケイ素系材料膜を、酸素を3原子%以上含有するものとし、下記式(3)
4×CSi/100−6×CM/100−3×CN/100+2×CO/100>0
…(3)
(式中、CSiはケイ素の含有率(原子%)、CMは遷移金属の含有率(原子%)、CNは窒素の含有率(原子%)、COは酸素の含有率(原子%)を示す)
を満たす遷移金属ケイ素系材料からなる層、該層が2層以上積層された多層、又はこれらの層のいずれかと、該層の透明基板から離間する側に接する層厚10nm以下の表面酸化層とで構成された膜とすることで、パターン寸法変動劣化を抑制することができる。
遷移金属ケイ素系材料において、モリブデンのような遷移金属は、ケイ素よりも結合が弱いために、ケイ素の結合の数に対して、遷移金属の結合の数が相対的に多い方が、ArFエキシマレーザー光のような高エネルギー光の照射によって、材料の酸化が進みやすく、また、窒素の結合は、窒化物が劣化反応の出発物質になり得、更に、酸化物が劣化反応の最終物質であることを考えると、酸素は劣化反応の阻害要因であると考えられることから、ケイ素の結合の数、遷移金属の結合の数、窒素の結合の数及び酸素の結合の数と、パターン寸法変動劣化との間には、相関があると考えることができ、このような材料組成と膜構成を適用して遷移金属ケイ素系材料膜を設計することがパターン寸法変動劣化の抑制に有効である。
遷移金属は、ケイ素よりも結合が弱いと考え、また、窒化物が劣化反応の出発物質であると考えると、窒素の結合量は少ない方が好ましく、更に、酸素は劣化反応の阻害要因であると考えると、酸素の結合量は多い方が好ましいため、上記式(3)中の左辺、即ち、4×CSi/100−6×CM/100−3×CN/100+2×CO/100(=A3)の値は、大きいほど好ましく、ケイ素及び酸素の結合の数から遷移金属及び窒素の結合の数を差し引いた値に対応するA3の値を0より大きく設定することによって、パターン寸法変動劣化をより抑制することができる。また、A3の値は、実用上有効な材料の範囲としては、3.9以下とすることが好ましい。
以下、上記第1〜3の態様に共通する事項について説明する。
本発明において、多層には、組成が膜の厚さ方向に連続して変化するもの、いわゆる傾斜組成膜も含まれる。
遷移金属ケイ素系材料の表面は、大気による酸化を受けることがあり、遷移金属ケイ素系材料膜の最表面部の酸化度が高くなる場合がある。また、遷移金属ケイ素系材料膜の最表面部を、洗浄時の化学耐性や、大気中での酸化に対して耐性をもたせるため、強制的に酸化処理する場合もある。そのため、遷移金属ケイ素系材料膜は、上記式(1)〜(3)のいずれかを満たす遷移金属ケイ素系材料からなる層、又はこの層が2層以上積層された多層のいずれかと、この層の透明基板から離間する側に接する層厚10nm以下の表面酸化層とで構成されていてもよい。
本発明の遷移金属ケイ素系材料膜は、上記表面酸化層を除く部分を構成する各層を構成する材料を、上記式を満たすようにする。遷移金属ケイ素系材料膜を構成する層を形成する遷移金属ケイ素系材料をこのように構成することにより、ArFエキシマレーザー光等の高エネルギー光(短波長光)を長時間照射した場合、換言すれば、累積の照射量が多くなった場合であっても、パターン寸法変動劣化が抑制される。
フォトマスクを用いた光パターン照射において今後採用されるプロセスでは、液浸露光等における経済性の観点から、フォトマスクは、累積の照射エネルギー量が10kJ/cm2程度までは、マスクパターンの寸法変動が許容値以下であることが求められており、22nmパターンルールによれば、その許容値は概ね±5nm程度である。遷移金属ケイ素系材料膜の層を構成する遷移金属ケイ素系材料が、上記式を満たすものであれば、この要求に対応することができる遷移金属ケイ素系材料膜となる。
本発明の遷移金属ケイ素系材料膜をハーフトーン位相シフト膜とし、位相差を約180°として設計する場合、ハーフトーン位相シフト膜全体の膜厚は50〜150nm、特に60〜90nm程度の範囲に適当な膜厚が見出される。また、光吸収能の高い層と光吸収能の低い層とを組み合わせて、組成が均一な層の多層で構成する場合、各層の層厚は、光吸収能の高い層を1〜30nm、特に5〜20nm、光吸収能の低い層を30〜120nm、特に40〜70nmとすることが好ましい。また、このような多層構成とする場合、薬品耐性を向上させるためには、光吸収能の高い層を透明基板に近い側に配置することが好ましく、また、密着性を改善するためには、光吸収能の低い層を基板側に配置することが好ましい。この場合、検査波長に対する検出感度を向上させるために、2層の光吸収能の高い層で光吸収能の低い層を挟んだ3層構成であってもよく、透明基板側より順に、光吸収能の高い層と光吸収能の低い層とを交互に4層以上積層した互層膜としてもよい。
本発明の遷移金属ケイ素系材料膜を遮光膜とする場合、遮光膜の膜厚は、フォトマスクとして形成したときに、透明基板上に存在する膜の合計値として、光学濃度が2.5以上を満たすような膜厚であればよく、例えば、10〜200nm、特に10〜70nmの範囲に適当な膜厚が見出される。一般的には、遮光膜は、更に反射防止層を表面側及び/又は基板側に有している構成とすることが好ましい。この反射防止層としては、例えば、遷移金属ケイ素酸化物、遷移金属ケイ素窒化物、遷移金属ケイ素酸化窒化物など、本発明の遷移金属ケイ素系材料と同様の材料を用いることが、遮光膜と同じエッチング条件でエッチングできるため好ましく、上記式(1)〜(3)のいずれかを満たす組成のものが更に好ましい。また、遮光膜の上に、遮光膜のパターン形成時のマスクとなるハードマスク膜を形成してもよい。
遷移金属ケイ素系材料膜を構成する遷移金属と、ケイ素と、酸素及び窒素とを含有する材料の好ましい例として、具体的には、遷移金属ケイ素酸窒化物、遷移金属ケイ素酸窒化炭化物などを挙げることができ、遷移金属ケイ素系材料膜全体として、遷移金属と、ケイ素と、酸素及び窒素とを含有する材料となっていればよい。
一方、遷移金属ケイ素系材料膜を構成する各層の遷移金属ケイ素系材料の好ましい例として、具体的には、遷移金属ケイ素酸窒化物、遷移金属ケイ素酸窒化炭化物などを挙げることができ、多層膜である場合、一部の層の材料として遷移金属ケイ素酸化物、遷移金属ケイ素窒化物、遷移金属ケイ素炭化物、遷移金属ケイ素酸化炭化物、遷移金属ケイ素窒化炭化物などを用いることができ、更に、強い光吸収機能を得るために、遷移金属ケイ素を用いることもできる。
遷移金属としては、チタン、バナジウム、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ハフニウム、タンタル及びタングステンから選ばれる1種以上が好適であるが、特に、ドライエッチング加工性の点からモリブデンが好ましい。遷移金属の含有率は、遷移金属の含有率が高い場合、他の元素の含有率が相対的に低くなり、その結果、屈折率や透過率等の要求される光学特性を満たすように、各元素の構成比を調整して設定することが難しくなる。そのため、遷移金属ケイ素系材料膜の表面酸化層以外において、遷移金属の含有率が0原子%より多く30原子%以下、特に1原子%以上20原子%以下、とりわけ1原子%以上15原子%以下であることが好ましい。一方、遷移金属ケイ素系材料膜の表面酸化層以外において、ケイ素の含有率は30〜85原子%、特に35〜70原子%であることが好ましい。
遷移金属ケイ素系材料膜の表面酸化層以外において、酸素の含有率は3原子%以上、特に5原子%以上であることが好ましい。酸素の含有率の上限は、通常、60原子%以下である。特に、遷移金属ケイ素系材料膜がハーフトーン位相シフト膜である場合において、遷移金属ケイ素系材料膜の表面酸化層以外の層を単層で構成する場合や、光吸収能の高い層と光吸収能の低い層とを組み合わせた多層構成とする場合、従来では、この単層や光吸収能の高い層を、窒素を高い含有率で含有させた上で、酸素を少量加えたものとしていた。一方、本発明では、窒素含有率を低く抑え、酸素含有率を高めることで要求を満たす透過率を得る。そのため、この単層や光吸収能の高い層中の酸素の含有率は、酸素は5原子%以上、特に8原子%以上、とりわけ10原子%以上とすることが好ましい。窒素と比べ、酸素の方が、含有率の増加による透過率の向上がより顕著である。
また、遷移金属ケイ素系材料膜上にクロム系材料による遮光膜や加工補助膜を形成する場合もあることから、遷移金属ケイ素系材料膜は、クロム材料膜をエッチング加工する場合に使用する塩素系ドライエッチング条件に対する耐性を有することが好ましい。そのため、遷移金属ケイ素系材料膜の表面酸化層以外において、窒素の含有率は5原子%以上、特に10原子%以上であることが好ましい。窒素の含有率の上限は、通常、57原子%以下である。
本発明の遷移金属ケイ素系材料膜の材料には、更に少量の炭素、水素が含まれていてもよいが、これらの元素の含有率は5原子%以下であることが好ましく、不純物量を超えて含有していないことがより好ましい。
本発明の遷移金属ケイ素系材料膜は、公知の方法により成膜することができるが、均質性に優れた膜が容易に得られる方法として、スパッタリングによる方法を用いることが好ましく、DCスパッタリング、RFスパッタリングのいずれの方法をも用いることができる。
ターゲットとスパッタガスは、層構成や組成に応じて選択される。ターゲットとしては、ケイ素と遷移金属の含有比を調整したターゲットを単独で使用してもよい。また、ケイ素ターゲット、遷移金属ターゲット、及びケイ素と遷移金属とからなるターゲットから適宜選択して、複数のターゲットのスパッタリング面積をターゲット間で変えること、又はターゲットに対する印加電力を複数のターゲット間で調整することにより、ケイ素と遷移金属の比を調整してもよい。特に、光吸収能の高い層と光吸収能の低い層とを組み合わせた多層構成とする場合、光吸収能の高い層と光吸収能の低い層の遷移金属の含有率を、上述した方法で変えることができる。光吸収能の低い層の遷移金属の含有率を低くすることにより、必要とする光学特性に合わせた遷移金属以外の元素の含有率の設定が容易になる。
また、酸素、窒素の含有比は、スパッタリングガスに反応性ガスとして、酸素を含むガス、窒素を含むガスを用い、適宜導入量を調整して反応性スパッタリングすることで、調整することができる。また、その他の軽元素、例えば、炭素や水素などを加える場合も同様である。反応性ガスとしては、酸素ガス、窒素ガス、窒素酸化物ガス、炭素酸化物ガス、炭化水素ガス、水素ガス等を用いることができる。更に、不活性ガスとして、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス等を用いることもできる。
表面酸化層を形成する方法として、具体的には、大気酸化(自然酸化)による酸化の他、強制的に酸化処理する方法としては、遷移金属ケイ素系材料膜をオゾンガスやオゾン水による処理や、酸素存在雰囲気中でオーブン加熱、ランプアニール、レーザー加熱により300℃程度の加熱を行う方法などを挙げることができ、その層厚は10nm以下であり、通常、1nm以上で酸化層としての効果が得られる。この程度の層厚の表面酸化層であれば、ArFエキシマレーザー光の照射によるパターン寸法変動劣化に、実質的に影響しない。表面酸化層は、スパッタリング工程で酸素量を増やして形成することもできるが、欠陥のより少ない層とするためには、上述した大気酸化による酸化や、強制酸化処理により形成することが好ましい。
本発明のフォトマスクブランクがハーフトーン位相シフトマスクブランクである場合、通常のハーフトーン位相シフトマスクブランクと同様、ハーフトーン位相シフト膜上に、完全に遮光する領域を設けるために、更に遮光膜を設けることができる。この遮光膜の材料としては、種々の材料が適用可能であるが、エッチング加工用の補助膜としても利用可能な、クロム系材料による膜を用いることが好ましい。それらの膜構成及び材料については多数の報告があるが、好ましい遮光膜の膜構成としては、例えば、Cr系等の遮光膜を設け、更に、遮光膜からの反射を低減させるCr系等の反射防止膜を設けたものなどが挙げられる。遮光膜及び反射防止膜は、いずれも単層で構成しても、多層で構成してもよい。Cr系遮光膜やCr系反射防止膜の材料としては、クロム単体、クロム酸化物(CrO)、クロム窒化物(CrN)、クロム炭化物(CrC)、クロム酸化窒化物(CrON)、クロム酸化炭化物(CrOC)、クロム窒化炭化物(CrNC)、クロム酸化窒化炭化物(CrONC)などが挙げられる。
このようなCr系遮光膜及びCr系反射防止膜は、クロム単体ターゲット、又はクロムに酸素、窒素及び炭素から選ばれるいずれか1種又は2種以上を添加したターゲットを用い、Ar、He、Ne、Kr等の希ガスに、成膜する膜の組成に応じて、酸素含有ガス、窒素含有ガス及び炭素含有ガスから選ばれるガスを適宜添加したスパッタガスを用いた反応性スパッタリングにより成膜することができる。
ハーフトーン位相シフトマスクブランクは、常法によりハーフトーン位相シフトマスクとすることができる。例えば、ハーフトーン位相シフト膜上にクロム系材料膜による遮光膜や反射防止膜が形成されているハーフトーン位相シフトマスクブランクでは、例えば下記の工程が用いられる。
まず、ハーフトーン位相シフトマスクブランク上に電子線レジスト膜を成膜し、電子線によるパターン照射を行った後、所定の現像操作によってレジストパターンを得る。次に、得られたレジストパターンをエッチングマスクとして、酸素を含有する塩素系ドライエッチングによりクロム系材料膜にレジストパターンを転写する。更に、得られたクロム系材料パターンをエッチングマスクとして、フッ素系ドライエッチングによりハーフトーン位相シフト膜にパターンを転写する。そして、遮光膜として残すべきクロム系材料膜がある場合には、その部分を保護するレジストパターンを形成した後、不要なクロム系材料膜を、再び酸素を含有する塩素系ドライエッチングにより剥離し、レジスト材料を常法に従って除去することにより、ハーフトーン位相シフトマスクを得ることができる。
また、遷移金属ケイ素系材料膜が遮光膜として形成されたフォトマスクブランクからも、通常の方法でフォトマスクを製造することができる。
本発明の光パターン照射では、フォトマスクを用い、遷移金属ケイ素系材料膜パターンにArFエキシマレーザー光を照射して、遷移金属ケイ素系材料膜パターンのない領域を通過する光パターンを露光対象に照射する。本発明では、高エネルギー光の照射を適用した露光、例えば、ArFエキシマレーザー光を光源とする露光に特に効果的である。ArFエキシマレーザー光の照射はドライ条件による露光でも液浸露光でもよいが、実生産において比較的短時間に累積照射エネルギー量が上がってしまう、液浸露光により300mm以上のウェハーを被加工材料として、光パターンを照射する際に、特に有用である。
高エネルギー光が、遷移金属ケイ素系材料膜のマスクパターンに照射されることにより、露光に用いるマスクパターンの線幅が変化してしまうことは重大な問題である。パターン幅の許容限界は、マスクパターン、特に適用されるパターンルールによって異なる。また、多少の変動であれば、条件を補正し、露光装置の照射条件を再設定して使用できる場合もある。しかし、22nmのパターンルールによる半導体回路を形成するための露光では、マスクパターン線幅の変動は概ね±5nm以下とする必要がある。本発明のフォトマスクを用いた場合、累積の照射エネルギー量が10kJ/cm2未満では、照射光によるパターン寸法変動劣化がほとんどない。また、累積の照射エネルギー量が10kJ/cm2以上となった場合にも、照射光によるパターン寸法変動劣化は僅かであり、転写条件を再設定することなく光パターン照射を継続することができる。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
[実施例1〜7、比較例1]
MoSi2ターゲットとSiターゲットの2つのターゲットを設けた直流スパッタ装置を用い、スパッタガスとして、ArガスとO2ガスとN2ガスを用いて、石英基板上に、モリブデンとケイ素と窒素と酸素とからなる単層の遷移金属ケイ素系材料膜(膜厚約70nm)を、基板を30rpmで回転させながら成膜した。この遷移金属ケイ素系材料膜の組成をESCAで分析した結果を表1に示す。
Figure 0005962811
次に、上記で得た遷移金属ケイ素系材料膜上に、Crをターゲットとして用い、ガス流量比Ar:N2:O2=1:2:1で、厚さ20nmのCrON層、Arガスのみで、厚さ7nmのCr層、及びガス流量比Ar:N2:O2=1:2:1で、厚さ20nmのCrON層を順に形成し、全体で厚さ47nmのCr系材料による遮光膜を成膜した。
次に、遮光膜の上に、電子線用ポジ型レジスト膜を成膜し、電子線パターン照射により、線幅0.1〜2μmのIso−Line、Iso−Space、Line&Spaceのモデルパターンを形成した。
次に、レジストパターンをエッチングマスクとして、塩素系エッチングによって遮光膜をエッチングし、更に、フッ素系ドライエッチングにより遷移金属ケイ素系材料膜をエッチングした。その後、遮光膜を塩素系エッチングにより除去し、遷移金属ケイ素系材料膜のパターンを有するフォトマスクを得た。
上記で得たフォトマスクに、23℃、湿度40%の環境で、パルス幅200Hzで1パルス当たりのエネルギーが50〜200mJのArFエキシマレーザー光を、累積照射エネルギーが30kJ/cm2になるまで照射した(露光装置:ArFES−3500PM(リソテックジャパン社製)、光源:LPX Pro220(COHERENT社製))。
次に、遷移金属ケイ素系材料膜パターンにおけるArFエキシマレーザー光の照射によるパターン寸法変動を、走査型電子顕微鏡(LWM9045(Vistec社製))を用いて観察し、測定した。線幅はパターンの種類、サイズにかかわらず、ほぼ同様に増加した。各パターン及び線幅における線幅の変化量(増加量)の平均値から、比較例1の変化量(19nm)を1としたときの相対値と、その値から算出した累積10kJ/cm2照射後に相当する変化量を表2に示す。ここでは、線幅変化量の測定精度を高めるために、累積30kJ/cm2照射後の変化量を測定したが、線幅変化量は照射量に比例し、累積30kJ/cm2照射後の変化量の1/3の量に相当する。
また、下記式で示されるA1,A2及びA3を算出し、表2に示す。
A1=4×CSi/100−6×CM/100
A2=4×CSi/100−6×CM/100−3×CN/100
A3=4×CSi/100−6×CM/100−3×CN/100+2×CO/100
(式中、CSiはケイ素の含有率(原子%)、CMは遷移金属の含有率(原子%)、CNは窒素の含有率(原子%)、COは酸素の含有率(原子%)を示す)
Figure 0005962811
上記の結果より、上記式(1),(2)及び(3)の各々を満たす実施例の遷移金属ケイ素系材料膜は、ArFエキシマレーザー光の照射によるパターン寸法変動が十分抑制され、累積10kJ/cm2照射した場合にも、線幅変化量は5nm以下に抑制されているのに対し、比較例の遷移金属ケイ素系材料膜では、ArFエキシマレーザー光の照射による大きなパターン寸法変動が確認された。

Claims (7)

  1. 累積10kJ/cm2以上のArFエキシマレーザー光が照射されたフォトマスクを用い、ArFエキシマレーザー光を光源として、光パターンを露光対象に照射する光パターン照射方法であって、
    透明基板上に、モリブデンと、ケイ素と、酸素及び窒素とを含有するモリブデンケイ素系材料のハーフトーン位相シフト膜のマスクパターンを有し、
    上記ハーフトーン位相シフト膜が、下記式(1)
    4×CSi/100−6×CM/100>1 …(1)
    (式中、CSiはケイ素の含有率(原子%)、CMはモリブデンの含有率(原子%)を示す
    満たすモリブデンケイ素系材料からなる光吸収能の高い層と、上記式(1)を満たし、酸素を3原子%以上含有するモリブデンケイ素系材料からなる光吸収能の低い層との組み合わせで2層以上積層された多層で、又は
    該多層と、該多層の透明基板から離間する側に接する層厚10nm以下の表面酸化層とで構成された膜であるフォトマスクを用いることを特徴とする光パターン照射方法。
  2. 累積10kJ/cm2以上のArFエキシマレーザー光が照射されたフォトマスクを用い、ArFエキシマレーザー光を光源として、光パターンを露光対象に照射する光パターン照射方法であって、
    透明基板上に、モリブデンと、ケイ素と、酸素及び窒素とを含有するモリブデンケイ素系材料のハーフトーン位相シフト膜のマスクパターンを有し、
    上記ハーフトーン位相シフト膜が、下記式(2)
    4×CSi/100−6×CM/100−3×CN/100>−0.1 …(2)
    (式中、CSiはケイ素の含有率(原子%)、CMはモリブデンの含有率(原子%)、CNは窒素の含有率(原子%)を示す
    満たすモリブデンケイ素系材料からなる光吸収能の高い層と、上記式(2)を満たし、酸素を3原子%以上含有するモリブデンケイ素系材料からなる光吸収能の低い層との組み合わせで2層以上積層された多層で、又は
    該多層と、該多層の透明基板から離間する側に接する層厚10nm以下の表面酸化層とで構成された膜であるフォトマスクを用いることを特徴とする光パターン照射方法。
  3. 累積10kJ/cm2以上のArFエキシマレーザー光が照射されたフォトマスクを用い、ArFエキシマレーザー光を光源として、光パターンを露光対象に照射する光パターン照射方法であって、
    透明基板上に、モリブデンと、ケイ素と、酸素及び窒素とを含有するモリブデンケイ素系材料のハーフトーン位相シフト膜のマスクパターンを有し、
    上記ハーフトーン位相シフト膜が、下記式(3)
    4×CSi/100−6×CM/100−3×CN/100+2×CO/100>0
    …(3)
    (式中、CSiはケイ素の含有率(原子%)、CMはモリブデンの含有率(原子%)、CNは窒素の含有率(原子%)、COは酸素の含有率(原子%)を示す
    満たすモリブデンケイ素系材料からなる光吸収能の高い層と、上記式(3)を満たし、酸素を3原子%以上含有するモリブデンケイ素系材料からなる光吸収能の低い層との組み合わせで2層以上積層された多層で、又は
    該多層と、該多層の透明基板から離間する側に接する層厚10nm以下の表面酸化層とで構成された膜であるフォトマスクを用いることを特徴とする光パターン照射方法。
  4. 記モリブデンケイ素系材料からなる光吸収能の高い層が、酸素を3原子%以上含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光パターン照射方法。
  5. 上記ハーフトーン位相シフト膜の膜厚が50〜70nmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光パターン照射方法。
  6. 記モリブデンケイ素系材料からなる光吸収能の高い層が、酸素を10原子%以上含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光パターン照射方法。
  7. 上記表面酸化層が、上記モリブデンケイ素系材料で構成された層の表面部を大気酸化又は強制酸化処理して形成された層であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光パターン照射方法。
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