JP5640588B2 - リン原子含有エポキシ樹脂の製造方法、硬化性樹脂組成物、その硬化物、プリント配線基板用樹脂組成物、プリント配線基板、フレキシブル配線基板用樹脂組成物、半導体封止材料用樹脂組成物、及びビルドアップ基板用層間絶縁材料用樹脂組成物 - Google Patents

リン原子含有エポキシ樹脂の製造方法、硬化性樹脂組成物、その硬化物、プリント配線基板用樹脂組成物、プリント配線基板、フレキシブル配線基板用樹脂組成物、半導体封止材料用樹脂組成物、及びビルドアップ基板用層間絶縁材料用樹脂組成物 Download PDF

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本発明は、芳香族系エポキシ樹脂の分子構造中に容易にリン原子を導入でき、然も得られたリン原子含有エポキシ樹脂がその硬化物において優れた難燃性と耐熱性とを兼備したものとなる、リン原子含有エポキシ樹脂の製造方法、新規リン原子含有エポキシ樹脂、これを用いた硬化性樹脂組成物、その硬化物、プリント配線基板、及び半導体封止材料に関する。
エポキシ樹脂及びその硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物は、高耐熱性、耐湿性等の諸物性に優れる点から半導体封止材やプリント回路基板等の電子部品、電子部品分野、導電ペースト等の導電性接着剤、その他接着剤、複合材料用マトリックス、塗料、フォトレジスト材料、顕色材料等で広く用いられている。
近年、これら各種用途、とりわけ先端材料用途において、耐熱性、耐湿性、耐半田性に代表される性能の一層の向上が求められている。特に高い信頼性が求められる車載用の電子機器は、設置場所がキャビン内からより高温のエンジンルームへと移行するとともに、鉛フリー半田への対応によりリフロー処理温度が高温化するに至り、よって、これまでに増して耐熱性、耐半田性に優れる材料が求められている。
また、エポキシ樹脂組成物をプリント配線板材料とする場合には、難燃性を付与するために臭素等のハロゲン系難燃剤がアンチモン化合物とともに配合されている。しかし、近年の環境・安全への取り組みのなかで、ダイオキシン発生が懸念されるハロゲン系難燃剤を用いず、且つ発ガン性が疑われているアンチモン化合物を用いない環境・安全対応型の難燃化方法の開発が強く要求されている。またプリント配線板材料の非ハロゲン化は高温放置信頼性の改良にも大きく貢献する技術と期待されている。
非ハロゲン系エポキシ樹脂組成物で難燃性を得る方法としては、例えば、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドを原料として用いて得られるリン原子含有エポキシ樹脂が提案されている(下記特許文献1〜3参照)。
しかしながら、前記特許文献1,2記載の組成物はいずれも耐熱性が十分でなく、鉛フリー半田実装の際の熱応力に耐えることができないものであった。
更に、前記特許文献1に記載されたリン原子含有エポキシ樹脂は、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドをp−ヒドロキシベンズアルデヒドを反応させて中間体フェノール化合物を得、これを各種フェノール化合物に反応させたフェノール類をグリシジルエーテル化したものであるところ、前記中間体フェノール化合物は、その融点が200℃以上で工業的に製造するのが困難であることに加え、グリシジルエーテル化物も結晶性の物質であり汎用有機溶剤に極めて溶解性が低いため、有機溶剤に溶解して使用するプリント配線板用途では使用できないものであった。
また、特許文献2に記載されたノボラック型エポキシ樹脂に9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドを反応させたリン原子含有エポキシ樹脂は、耐熱剥離性の評価試験であるT288試験に耐えられないばかりでなく、燐化合物の導入に架橋点となるエポキシ基と燐化合物を反応させるためガラス転移温度が低下するため、鉛フリー半田実装に耐えられないものであった。
また、特許文献3に記載されたリン原子含有エポキシ樹脂は、リン原子含有二官能フェノール化合物であるHCA―HQを二官能エポキシ樹脂で伸張させるため、硬化物のガラス転移温度を高めることができず鉛フリー半田実装に耐え得ることができないものであった。
特許3476780号公報 特開平11−166035号公報 特許3268498号公報
従って、本発明が解決しようとする課題は、溶剤溶解性に優れ、かつ、硬化物の耐熱性に優れるリン原子含有エポキシ樹脂を生産性よく工業的に製造する方法を提供すると共に、溶剤溶解性や硬化物の耐熱性に優れる硬化性樹脂組成物及びその硬化物、並びに、該リン原子含有エポキシ樹脂を用いたプリント配線基板用樹脂組成物、プリント配線基板、フレキシブル配線基板用樹脂組成物、半導体封止材料用樹脂組成物、及びビルドアップ基板用層間絶縁材料用樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、芳香族系エポキシ樹脂の芳香核に前記HCAに代表されるリン原子含有化合物を導入するにあたり、その原料となるリン原子含有フェノール化合物を製造する際、先ず、該リン原子含有化合物にアルコキシ基を芳香核上の置換基として有する芳香族アルデヒドを反応させて、次いで、この反応生成物をフェノール化合物と反応させた場合に、その反応性が飛躍的に向上し、然も最終的に得られる新規リン原子含有エポキシ樹脂の硬化物の耐熱性が飛躍的に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、アルコキシ基を芳香核上の置換基として有する芳香族アルデヒド(a1)、及び、P−H基又はP−OH基を分子構造中に有する有機リン化合物(a2)を反応させ、次いで、得られた反応生成物をフェノール化合物(a3)と反応させてリン原子含有フェノール化合物を得、次いで、得られたリン原子含有フェノール化合物とエピハロヒドリンとを反応させることを特徴とするエポキシ樹脂の製造方法に関する。
本発明は、更に、エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)とを必須成分とする硬化性樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂(A)が、前記製造方法によって得られた新規リン原子含有エポキシ樹脂であることを特徴とする硬化性樹脂組成物に関する。
本発明は、更に、前記硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物に関する。
本発明は、更に、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、硬化促進剤(C)、及び有機溶剤(D)を含有する組成物を硬化させてなるプリント配線基板に関する。
本発明は、更に、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、硬化促進剤(C)、及び有機溶剤(D)を含有するフレキシブル配線基板用樹脂組成物に関する。
本発明は、更に、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、硬化促進剤(C)、及び有機溶剤(D)を含有する組成物をガラス基材に含浸、次いで硬化させてなるプリント配線基板に関する。
本発明は、更に、前記硬化性樹脂組成物に加え、更に無機充填剤を含有する半導体封止材料用樹脂組成物に関する。
本発明は、更に、前記硬化性樹脂組成物からなるビルドアップ基板用層間絶縁材料用樹脂組成物に関する。
本発明によれば、溶剤溶解性に優れ、かつ、硬化物の耐熱性に優れるリン原子含有エポキシ樹脂を生産性よく工業的に製造する方法を提供すると共に、溶剤溶解性や硬化物の耐熱性に優れる硬化性樹脂組成物及びその硬化物、並びに、該リン原子含有エポキシ樹脂を用いたプリント配線基板用樹脂組成物、プリント配線基板、フレキシブル配線基板用樹脂組成物、半導体封止材料用樹脂組成物、及びビルドアップ基板用層間絶縁材料用樹脂組成物を提供できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の製造方法は、前記した通り、アルコキシ基を芳香核上の置換基として有する芳香族アルデヒド(a1)、及び、P−H基又はP−OH基を有する有機リン化合物(a2)を反応させ、得られた反応生成物をフェノール化合物(a3)と反応させ(工程1)、次いで、得られたリン原子含有フェノール化合物とエピハロヒドリンとを反応させる(工程2)
ことを特徴とするものである。
工程1において用いるアルコキシ基を芳香核上の置換基として有する芳香族アルデヒド(a1)とは、例えば、ベンズアルデヒド、o−トルアルデヒド、p−トルアルデヒド、o−エチルアルデヒド、p−エチルアルデヒド、p−イソプロピルベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラセンアルデヒド等の芳香族アルデヒドの置換基としてアルコキシ基を有するものが挙げられ、具体的には下記構造式(A1−a)
Figure 0005640588

(式中、Rは水素原子又は炭素原子1〜3のアルキル基であり、Rは炭素原子1〜4のアルキル基を表し、nは芳香核上の置換基ORの数であり1〜3である。)
で表される化合物(a1−1)、或いは、下記構造式(A1−b)
Figure 0005640588

(式中、Rは水素原子又は炭素原子1〜3のアルキル基であり、Rは炭素原子1〜4のアルキル基を表し、nは芳香核上の置換基ORの数であり1〜3である。)
で表される化合物(a1−2)が挙げられる。
本発明ではこれらのなかでも特に1分子中におけるリンの含有率が高い点から前記化合物(A1−a)が好ましく、とりわけn=1のものが好ましい。
本発明ではこのような芳香族アルデヒド(a1)の核置換基としてアルコキシ基を有することから、該芳香族アルデヒド(a1)とP−H基又はP−OH基を有する有機リン化合物(a2)との反応生成物中に生成する水酸基の反応性が優れたものとなり、殆ど触媒を用いなくとも、該生成物はフェノール化合物(a3)中の芳香核に反応する。このような特長がより顕著に現れる点からアルコキシ基はメトキシ基又はエトキシ基であることが好ましく、また、芳香族アルデヒドとしてはベンズアルデヒド、ナフトアルデヒドが好ましい。
芳香族アルデヒド(a1)と反応P−H基又はP−OH基を分子構造中に有する有機リン化合物(a2)は、具体的には、下記構造式(A2−a)又は構造式(A2−b)
Figure 0005640588

(上記構造式(A2−a)又は構造式(A2−b)中、Xaは水素原子又は水酸基であり、R、R、R、Rはそれぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表す。)
で表される化合物が挙げられる。ここで、R、R、R、Rを構成する炭素原子数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、n−ペンチル基が挙げられる。
本発明では、芳香族アルデヒド(a1)との反応によって生成する化合物(X)に対するフェノール化合物(a3)の反応性が極めて良好なものとなる点から前記構造式(A2−a)又は構造式(A2−b)におけるXaが水素原子のものが好ましく、特にリン原子含有エポキシ樹脂の硬化物の難燃性に優れる点から前記構造式(A2−a)で表される化合物が好ましい。とりわけ、構造式(A2−a)においてR、R、R、Rの全てが水素原子であって、かつ、Xaが水素原子である、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドであることが前記化合物(X)の反応性と、最終的に得られるリン原子含有エポキシ樹脂の硬化物の難燃性及び耐熱性が極めて良好なものとなる点から好ましい。
ここで、アルコキシ基を芳香核上の置換基として有する芳香族アルデヒド(a1)と、P−H基又はP−OH基を有する有機リン化合物(a2)との反応条件は、例えば、80〜180℃の温度条件下に行うことができる。該反応は無触媒で行うことができ、または、アルコール系有機溶媒、炭化水素系有機溶媒などの非ケトン系有機溶媒の存在下で行うことができる。
かかる反応によって生成する化合物(X)は、例えば、前記芳香族アルデヒド(a1)として構造式(a1−1)で表される化合物、前記有機リン化合物(a2)として構造式(a2−1)又は構造式(a2−2)で表される化合物を用いた場合、下記の構造式x1〜x4
Figure 0005640588

(上記構造式x1〜x4中、R、R、R、Rは、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素原子1〜4のアルキル基を表し、nは芳香核上の置換基ORの数であり1〜3である。)
が挙げられる。
これらの中でも特にフェノール化合物(a3)との反応性に優れる点から前記構造式x1及びx2で表される化合物が好ましく、特に最終的に得られるリン原子含有エポキシ樹脂の硬化物の難燃性に優れる点から前記構造式x1で表される化合物が好ましい。
次に、工程1で用いるフェノール化合物(a3)はフェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、t−ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ビニルフェノール、イソプロペニルフェノール、アリルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、クロルフェノール、ブロムフェノール、ナフトール等の1価フェノール化合物;カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等の2価フェノール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール化合物;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ビスフェノールSノボラック樹脂、α−ナフトールノボラック樹脂、β−ナフトールノボラック樹脂、ジヒドロキシナフタレンノボラック樹脂、その他下記構造式(A3−a)
Figure 0005640588
(式中、Raは水素原子又は炭素原子数1〜6の炭化水素基を表し、laは繰り返し単位で0〜10の整数である。)
で表されるノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;
ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、5−ビニルノルボナ−2−エン、α−ピネン、β−ピネン、及びリモネンからなる群から選択される脂肪族環状炭化水素基を介してフェノール化合物が結節された分子構造をもつフェノール樹脂;下記構造式(A3−b)
Figure 0005640588

(前記式中、Rbは水素原子又は炭素原子数1〜6の炭化水素基、lbは繰り返し単位で0〜10の整数である。)で表されるアラルキル型フェノール樹脂;
下記構造式(A3−c)、
Figure 0005640588

(前記式中、Rcは水素原子又は炭素原子数1〜6の炭化水素基、lcは繰り返し単位で0〜10の整数である。)で表されるアラルキル型フェノール樹脂;
下記構造式(A3−d)
Figure 0005640588

(前記式中、Rdは水素原子又は炭素原子数1〜6の炭化水素基、ldは繰り返し単位で0〜10の整数である。)で表されるアラルキル型フェノール樹脂;
下記構造式(A3−e)
Figure 0005640588

(前記式中、Reは水素原子又は炭素原子数1〜6の炭化水素基、leは繰り返し単位で0〜10の整数である。)で表されるアラルキル型フェノール樹脂;
下記構造式(A3−f)
Figure 0005640588

(前記式中、Reは水素原子又は炭素原子数1〜6の炭化水素基、lfは繰り返し単位で0〜10の整数である。)で表されるアラルキル型フェノール樹脂;
下記構造式(A3−g)
Figure 0005640588

(前記式中、Rgは水素原子又は炭素原子数1〜6の炭化水素基、lgは繰り返し単位で0〜10の整数である。)で表される化合物等のアラルキル型フェノール樹脂;
下記構造式(A3−h)
Figure 0005640588

(式中、Rhはそれぞれ独立的に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基である。)
で表されるビフェノール;及び
下記構造式A3−i
Figure 0005640588

(式中、Riはそれぞれ独立的に水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基である。)
で表される多価ナフトール類;
フェノール性水酸基含有芳香族炭化水素基(Ph)、アルコキシ基含有縮合多環式芳香族炭化水素基(An)、並びに、メチレン基、アルキリデン基、及び芳香族炭化水素構造含有メチレン基から選択される2価の炭化水素基(M)(以下、これを単に「メチレン基等(M)」と略記する)の各構造単位をそれぞれ、「Ph」、「An」、「M」で表した場合、下記部分構造式(A3−j)
Figure 0005640588

であらわされる構造部位を分子構造内に含む多官能フェノール化合物等が挙げられる。
ここで、前記部分構造式A3−hであらわされる構造部位を分子構造内に含む多官能フェノール化合物は、更に具体的には、下記構造式(A3−j2)及び(A3−j3)で表される構造、
Figure 0005640588
下記構造式(A3−j4)又は(A3−j5)
Figure 0005640588

で表される構造を繰り返し単位とするノボラック構造の分子末端に、下記構造式(A3−j6)
Figure 0005640588

で表される構造を有する構造、その他下記構造式(A3−j7)〜(A3−j10)
Figure 0005640588

で表される構造を繰り返し単位とする交互共重合体構造が挙げられる。
ここで、前記フェノール性水酸基含有芳香族炭化水素基(Ph)は、様々な構造をとり得るものであり、具体的には、以下のPh1〜Ph16の構造式で表されるフェノール、ナフトール、及びこれらの芳香核上の置換基としてアルキル基を有する化合物から形成される芳香族炭化水素基であることが誘電性能に優れる点から好ましい。
Figure 0005640588
ここで、前記各構造は、該構造が分子末端に位置する場合には、1価の芳香族炭化水素基となる。また、上掲した構造のうちナフタレン骨格上に他の構造部位との結合位置を二つ以上有するものは、それらの結合位置は同一核上であってもよいし、或いは、それぞれ異核上にあってもよい。
次に、フェノール樹脂構造中に含まれる前記アルコキシ基含有縮合多環式芳香族炭化水素基(An)は、縮合多環式芳香核上の置換基としてアルコキシ基を有する1価又は多価の芳香族炭化水素基であり、具体的には下記構造式An1〜An12で表されるアルコシキナフタレン型の構造が挙げられる。
Figure 0005640588
ここで、前記各構造は、該構造が分子末端に位置する場合には、1価の芳香族炭化水素基となる。また、上掲した構造のうちナフタレン骨格上に他の構造部位との結合位置を二つ以上有するものは、それらの結合位置は同一核上であってもよいし、或いは、それぞれ異核上にあってもよい。
次に、前記した、メチレン基、アルキリデン基、及び芳香族炭化水素構造含有メチレン基から選択される2価の炭化水素基(M)は、例えば、メチレン基の他、アルキリデン基としては、エチリデン基、1,1−プロピリデン基、2,2−プロピリデン基、ジメチレン基、プロパン−1,1,3,3−テトライル基、n−ブタン−1,1,4,4−テトライル基、n−ペンタン−1,1,5,5−テトライル基が挙げられる。また、芳香族炭化水素構造含有メチレン基は、下記M1〜M8の構造のものが挙げられる。
Figure 0005640588

これらの中でも特に誘電効果に優れる点からメチレン基であることが好ましい。
本発明では、これらのなかでも特に2価フェノール、ビスフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂が、反応生成物を硬化剤として用いたときの硬化性や有機溶剤への溶解性が良好なものとなる点から好ましく、特に最終的に得られるフェノール樹脂をプリント配線基板用エポキシ樹脂組成物の硬化剤として用いる場合には、溶剤溶解性に優れ、かつ、耐湿性・難燃性に優れる点からノボラック型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂が好ましい。この場合、ノボラック型フェノール樹脂は150℃における溶融粘度が0.5〜300dPa・sの範囲であることが耐湿性、耐熱性及び耐熱信頼性の点から好ましく、一方、アラルキル型フェノール樹脂は150℃における溶融粘度が0.1〜300dPa・sの範囲であることが、最終的に得られるリン原子含有エポキシ樹脂の硬化物における耐湿性、耐熱性及び耐熱信頼性に優れる点から好ましい。また、前記2価フェノールとしては、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレンが最終的に得られるリン原子含有エポキシ樹脂の硬化物における耐熱性に優れる点から好ましい。
工程1における、該芳香族アルデヒド(a1)とP−H基又はP−OH基を有する有機リン化合物(a2)との反応生成物である化合物(X)と、前記フェノール化合物(a3)との反応は、140〜200℃の温度条件下で行うことができる。前記した通り、本発明ではこの化合物(X)と前記フェノール化合物(a3)との反応は、極めて反応性が高く、特に触媒を必要としないが、適宜、用いても構わない。ここで使用し得る触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸、三弗化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛などのルイス酸などが挙げられる。その使用量は仕込み原料の総重量に対して、5.0質量%未満であることが好ましい。
また、本発明ではこの化合物(X)と前記フェノール化合物(a3)との反応割合は特に限定されることがなく、寧ろ、その良好な反応性ゆえ、目的とする難燃性や耐熱性の性能レベル、或いは、用途に応じて任意に前記フェノール化合物(a3)に対する化合物(X)の変性量をコントロールすることができる。但し、前記化合物(X)が反応生成物中に残存しないような割合、具体的には、フェノール化合物(a3)の芳香核上の反応点に対して、当量以下となる割合で反応させることが好ましい。更に、前記フェノール化合物(a3)として好ましく用いられるノボラック型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂に前記化合物(X)を変性する場合、リン原子の含有率が質量基準で4.0〜7.0質量%となる割合となる範囲であることが耐熱性及び難燃性に優れる点から好ましい。
反応後は、必要により、脱水・乾燥して目的物を得ることができる。この様にして得られるリン原子含有フェノール化合物には、未反応成分である前記化合物(X)が実質的に殆ど残存することがない。例えば、ノボラック型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂に前記化合物(X)を変性し、リン原子の含有率を質量基準で4.0〜7.0質量%の範囲に調節した場合、前記化合物(X)の残存量は、リン原子含有フェノール化合物中GPCでの検出限界以下となる。
次に、工程2として、工程1で得られたリン原子含有フェノール化合物を、エピハロヒドリンと反応させることにより、目的とする新規リン原子含有エポキシ樹脂とすることができる。
具体的には、工程1で得られたリン原子含有フェノール化合物を、該リン原子含有フェノール化合物中のフェノール性水酸基のモル数に対し、エピハロヒドリンを2〜10倍量(モル基準)となる割合で添加し、更に、フェノール性水酸基のモル数に対し0.9〜2.0倍量(モル基準)の塩基性触媒を一括添加または徐々に添加しながら20〜120℃の温度で0.5〜10時間反応させる方法が挙げられる。この塩基性触媒は固形でもその水溶液を使用してもよく、水溶液を使用する場合は、連続的に添加すると共に、反応混合物中から減圧下、または常圧下、連続的に水及びエピハロヒドリン類を留出せしめ、更に分液して水は除去しエピハロヒドリンは反応混合物中に連続的に戻す方法でもよい。
なお、工業生産を行う際、エポキシ樹脂生産の初バッチでは仕込みに用いるエピハロヒドリン類の全てが新しいものであるが、次バッチ以降は、粗反応生成物から回収されたエピハロヒドリン類と、反応で消費される分で消失する分に相当する新しいエピハロヒドリン類とを併用することが好ましい。この時、使用するエピハロヒドリンは特に限定されないが、例えばエピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリン等が挙げられる。なかでも工業的入手が容易なことからエピクロルヒドリンが好ましい。
また、前記塩基性触媒は、具体的には、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物等が挙げられる。特にエポキシ樹脂合成反応の触媒活性に優れる点からアルカリ金属水酸化物が好ましく、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。使用に際しては、これらの塩基性触媒を10〜55質量%程度の水溶液の形態で使用してもよいし、固形の形態で使用しても構わない。また、有機溶媒を併用することにより、エポキシ樹脂の合成における反応速度を高めることができる。このような有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類、テトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、1、3−ジオキサン、ジエトキシエタン等のエーテル類、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、また、極性を調整するために適宜2種以上を併用してもよい。
前述のエポキシ化反応の反応物を水洗後、加熱減圧下、蒸留によって未反応のエピハロヒドリンや併用する有機溶媒を留去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、得られたエポキシ樹脂を再びトルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどの有機溶媒に溶解し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えてさらに反応を行うこともできる。この際、反応速度の向上を目的として、4級アンモニウム塩やクラウンエーテル等の相関移動触媒を存在させてもよい。相関移動触媒を使用する場合のその使用量としては、用いるエポキシ樹脂100質量部に対して0.1〜3.0質量部となる割合であることが好ましい。反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、更に、加熱減圧下トルエン、メチルイソブチルケトンなどの溶剤を留去することにより目的とする新規リン原子含有エポキシ樹脂を得ることができる。
このようにして得られるリン原子含有エポキシ樹脂は、具体的な分子構造は前記した各原料成分の選択により任意に設計することが可能であるが、例えば、下記構造式(I)
下記構造式(I)
Figure 0005640588
で表される化学構造を有しており、かつ、前記構造式(I)中、Fcは水素原子又はグリシジルオキシ基であり、Zは下記構造式z1〜z4
Figure 0005640588

(上記構造式z1〜z4中、R、R、R、Rは、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素原子1〜4のアルキル基を表し、nは芳香核上の置換基ORの数であり1〜3である。)
で表される部分構造から選択される構造部位であることを特徴とするリン原子含有エポキシ樹脂(np1);
ノボラック型エポキシ樹脂構造を有し、かつ、その芳香核上の置換基として、下記構造式z1〜z4であって、その芳香核上の置換基として、下記構造式z1〜z4
Figure 0005640588

(上記構造式z1〜z4中、R、R、R、Rは、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素原子1〜4のアルキル基を表し、nは芳香核上の置換基ORの数であり1〜3である。)
で表される部分構造からなる群から選択される構造部位を有するリン原子含有エポキシ樹脂(np2);
下記構造式(II)
Figure 0005640588

で表される構造を繰り返し単位とするフェノール化合物であって、前記構造式(II)中、Rが水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基であり、かつ、Zが、水素原子、下記構造式z1〜z4
Figure 0005640588

(上記構造式z1〜z4中、R、R、R、Rは、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素原子1〜4のアルキル基を表し、nは芳香核上の置換基ORの数であり1〜3である。)
からなる群から選択され、かつ、該新規リン原子含有エポキシ樹脂中、Zの少なくとも一つは前記構造式z1〜z4で表される部分構造から選択される構造部位を有することを特徴とするリン原子含有エポキシ樹脂(np3)等が挙げられる。
これらの中でも特にグリシジルオキシ基を2つ以上有するリン原子含有エポキシ樹脂、前記リン原子含有エポキシ樹脂(np2)及び前記リン原子含有エポキシ樹脂(np3)、及び、下記構造式(I’)
Figure 0005640588

で表される化学構造を有しており、かつ、前記構造式(I’)中、Zは下記構造式z1〜z4
Figure 0005640588

(上記構造式z1〜z4中、R、R、R、Rは、それぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を表し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素原子1〜4のアルキル基を表し、nは芳香核上の置換基ORの数であり1〜3である。)
で表される構造部位であるリン原子含有エポキシ樹脂(np1’)が好ましい。
また、前記リン原子含有エポキシ樹脂(np1)、前記リン原子含有エポキシ樹脂(np2)、前記リン原子含有エポキシ樹脂(np3)、及び、前記リン原子含有エポキシ樹脂(np1’)において、前記構造式z1〜z4で表される部分構造のなかでも特に、硬化物の耐熱性に優れる点から前記構造式z1又はz2で表される部分構造が好ましく、特に前記前記構造式z1で表されるものが好ましい。
以上詳述した本発明の製造方法によって得られるリン原子含有エポキシ樹脂は、本発明の硬化性樹脂組成物の主剤であるエポキシ樹脂(A)として使用することができる。他方、該硬化性樹脂組成物において用いられる硬化剤(B)は、具体的には、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ−ル系化合物などの各種の公知の硬化剤が挙げられる。具体的には、アミン系化合物としてはジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられ、アミド系化合物としては、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられ、酸無水物系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられ、フェノール系化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
以上詳述したエポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)との配合割合は、エポキシ樹脂(A)中のエポキシ基と、硬化剤(B)中の活性水素原子との当量比(エポキシ基/活性水素原子)が1/0.7〜1/1.5となる割合であることが耐熱性に優れる点から好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物において、前記エポキシ樹脂組成物(A)を単独で用いてもよいが、または本発明の効果を損なわない範囲で他のエポキシ樹脂(A’)を使用してもよい。具体的には、エポキシ樹脂の全質量に対して前記エポキシ樹脂組成物(A)が30質量%以上、好ましくは40質量%以上となる範囲で他のエポキシ樹脂を併用することができる。
前記エポキシ樹脂(A)と併用され得る他のエポキシ樹脂(A’)としては、種々のエポキシ樹脂を用いることができるが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノール化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ジグリシジルオキシナフタレン、1,1−ビス(2,7−ジグリシジルオキシ−1−ナフチル)アルカン等の分子構造中にナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂等が挙げられる。また、これらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
上記したエポキシ樹脂(A’)のなかでも、特に耐熱性の点から、分子構造中にノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂が好ましく、また、溶剤溶解性の点からビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物におけるエポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)の配合量としては、特に制限されるものではないが、得られる硬化物特性が良好である点から、エポキシ樹脂(A)のエポキシ基の合計1当量に対して、硬化剤(B)中の活性水素が0.7〜1.5当量になる量が好ましい。なお、前記エポキシ樹脂(A’)を併用する場合には、硬化剤(B)の配合量は、エポキシ樹脂(A)とエポキシ樹脂(A’)との合計のエポキシ基1当量に対して硬化剤(B)中の活性水素が0.7〜1.5当量になる量であることが好ましい。
また必要に応じて本発明の硬化性樹脂組成物に硬化促進剤を適宜併用することもできる。前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、リン系化合物ではトリフェニルフォスフィン、アミン系化合物では2−エチル4−メチルイミダゾールが好ましい。
以上詳述した本発明の硬化性樹脂組成物は、前記した通り、優れた溶剤溶解性を発現することを特徴としている。従って、該硬化性樹脂組成物は、上記各成分の他に有機溶剤(C)を配合することが好ましい。ここで使用し得る前記有機溶剤(C)としては、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、エチルジグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられ、その選択や適正な使用量は用途によって適宜選択し得るが、例えば、プリント配線板用途では、メチルエチルケトン、アセトン、1−メトキシ−2−プロパノール等の沸点が160℃以下の極性溶剤であることが好ましく、また、不揮発分40〜80質量%となる割合で使用することが好ましい。一方、ビルドアップ用接着フィルム用途では、有機溶剤(C)として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分30〜60質量%となる割合で使用することが好ましい。
また、上記熱硬化性樹脂組成物は、難燃性を発揮させるために、例えばプリント配線板の分野においては、信頼性を低下させない範囲で、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合してもよい。
前記非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、それらの使用に際しても何等制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
前記リン系難燃剤としては、無機系、有機系のいずれも使用することができる。無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。
また、前記赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。
前記有機リン系化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド等の環状有機リン化合物及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。
それらの配合量としては、リン系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、赤リンを非ハロゲン系難燃剤として使用する場合は0.1〜2.0質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を使用する場合は同様に0.1〜10.0質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜6.0質量部の範囲で配合することが好ましい。
また前記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
前記窒素系難燃剤としては、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。
前記トリアジン化合物としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、前記アミノトリアジン変性フェノール樹脂、及び該アミノトリアジン変性フェノール樹脂を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。
前記シアヌル酸化合物の具体例としては、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。
前記窒素系難燃剤の配合量としては、窒素系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1〜5質量部の範囲で配合することが好ましい。
また前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
前記シリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。
前記シリコーン系難燃剤の配合量としては、シリコーン系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
前記無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。
前記金属水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。
前記金属酸化物の具体例としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。
前記金属炭酸塩化合物の具体例としては、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。
前記金属粉の具体例としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。
前記ホウ素化合物の具体例としては、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。
前記低融点ガラスの具体例としては、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO−MgO−HO、PbO−B系、ZnO−P−MgO系、P−B−PbO−MgO系、P−Sn−O−F系、PbO−V−TeO系、Al−HO系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。
前記無機系難燃剤の配合量としては、無機系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜15質量部の範囲で配合することが好ましい。
前記有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。
前記有機金属塩系難燃剤の配合量としては、有機金属塩系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、0.005〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて無機質充填材を配合することができる。前記無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。前記無機充填材の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は難燃性を考慮して、高い方が好ましく、硬化性樹脂組成物の全体量に対して20質量%以上が特に好ましい。また導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記した各成分を均一に混合することにより得られる。本発明のエポキシ樹脂、硬化剤、更に必要により硬化促進剤の配合された本発明の硬化性樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。該硬化物としては積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
本発明の硬化性樹脂組成物が用いられる用途としては、硬質プリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料等のプリント配線基板材料、半導体封止材料、導電ペースト、ビルドアップ用接着フィルム、樹脂注型材料、接着剤等が挙げられる。これら各種用途のうち、硬質プリント配線板材料、電子回路基板用絶縁材料、ビルドアップ用接着フィルム用途では、コンデンサ等の受動部品やICチップ等の能動部品を基板内に埋め込んだ所謂電子部品内蔵用基板用の絶縁材料として用いることができる。これらの中でも、高難燃性、高耐熱性、低熱膨張性、及び溶剤溶解性といった特性から硬質プリント配線板材料、フレキシルブル配線基板用樹脂組成物、ビルドアップ基板用層間絶縁材料等のプリント配線基板用材料、及び、半導体封止材料に用いることが好ましい。
ここで、本発明のプリント配線基板は、前記したプリント配線基板用材料を各用途に応じて成形することによる製造することがきる。具体的には、硬質プリント配線基板を製造するには、前記有機溶剤(D)を含むワニス状の本発明の硬化性樹脂組成物を、更に有機溶剤(D)を配合してワニス化し、これを補強基材に含浸し銅箔を重ねて加熱圧着させる方法が挙げられる。ここで使用し得る補強基材は、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド紙、アラミド布、ガラスマット、ガラスロービング布などが挙げられる。かかる方法を更に詳述すれば、先ず、前記したワニス状の硬化性樹脂組成物を、用いた溶剤種に応じた加熱温度、好ましくは50〜170℃で加熱することによって、硬化物であるプリプレグを得る。この時用いる樹脂組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。次いで、上記のようにして得られたプリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜250℃で10分〜3時間、加熱圧着させることにより、目的とするプリント回路基板を得ることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物からフレキシルブル配線基板を製造するには、前記エポキシ樹脂(A)、前記硬化剤(B)、硬化促進剤(C)、及び有機溶剤(D)を配合して、リバースロールコータ、コンマコータ等の塗布機を用いて、電気絶縁性フィルムに塗布する。次いで、加熱機を用いて60〜170℃で1〜15分間加熱し、溶媒を揮発させて、接着剤組成物をB−ステージ化する。次いで、加熱ロール等を用いて、接着剤に金属箔を熱圧着する。その際の圧着圧力は2〜200N/cm、圧着温度は40〜200℃が好ましい。それで十分な接着性能が得られれば、ここで終えても構わないが、完全硬化が必要な場合は、さらに100〜200℃で1〜24時間の条件で後硬化させることが好ましい。最終的に硬化させた後の接着剤組成物膜の厚みは、5〜100μmの範囲が好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物からビルドアップ基板用層間絶縁材料を得る方法としては、例えば、ゴム、フィラーなどを適宜配合した当該硬化性樹脂組成物を、回路を形成した配線基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる。その後、必要に応じて所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。前記めっき方法としては、無電解めっき、電解めっき処理が好ましく、また前記粗化剤としては酸化剤、アルカリ、有機溶剤等が挙げられる。このような操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップして形成することにより、ビルドアップ基盤を得ることができる。但し、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行う。また、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜250℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
次に、本発明の半導体封止材料は、前記エポキシ樹脂(A)、前記硬化剤(B)、硬化促進剤(C)、及び無機充填剤等の配合剤とを必要に応じて押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合して得ることができる。その際、無機充填剤としては、通常シリカが用いられるが、その充填率はエポキシ樹脂組成物100質量部当たり、充填剤を30〜95質量%の範囲が用いることが好ましく、中でも、難燃性や耐湿性や耐ハンダクラック性の向上、線膨張係数の低下を図るためには、70質量部以上が特に好ましく、それらの効果を格段に上げるためには、80質量部以上が一層その効果を高めることができる。半導体パッケージ成形としては、該組成物を注型、或いはトランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに50〜200℃で2〜10時間に加熱することにより成形物である半導体装置を得る方法がある。
本発明の硬化性樹脂組成物からビルドアップ用接着フィルムを製造する方法は、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を、支持フィルム上に塗布し樹脂組成物層を形成させて多層プリント配線板用の接着フィルムとする方法が挙げられる。
本発明の硬化性樹脂組成物をビルドアップ用接着フィルムに用いる場合、該接着フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70℃〜140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう上記各成分を配合することが好ましい。
ここで、多層プリント配線板のスルホールの直径は通常0.1〜0.5mm、深さは通常0.1〜1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
上記した接着フィルムを製造する方法は、具体的には、ワニス状の本発明の硬化性樹脂組成物を調製した後、支持フィルムの表面に、このワニス状の組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて硬化性樹脂組成物の層(α)を形成させることにより製造することができる。
形成される層(α)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましい。
なお、前記層(α)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
前記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。
支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10〜150μmであり、好ましくは25〜50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1〜40μmとするのが好ましい。
上記した支持フィルムは、回路基板にラミネートした後に、或いは加熱硬化することにより絶縁層を形成した後に、剥離される。接着フィルムを加熱硬化した後に支持フィルムを剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
次に、上記のようして得られた接着フィルムを用いて多層プリント配線板を製造する方法は、例えば、層(α)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、層(α)を回路基板に直接接するように、回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。またラミネートを行う前に接着フィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。
ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力を好ましくは1〜11kgf/cm(9.8×10〜107.9×10N/m2)とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物を導電ペーストとして使用する場合には、例えば、微細導電性粒子を該硬化性樹脂組成物中に分散させ異方性導電膜用組成物とする方法、室温で液状である回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とする方法が挙げられる。
本発明の硬化物を得る方法は、加熱温度条件等を組み合わせる硬化剤の種類や用途等によって、適宜選択すればよいが、例えば、上記方法によって得られた組成物を、20〜250℃程度の温度範囲で硬化させる方法が挙げられる。
以上詳述した通り、本発明のリン原子含有エポキシ樹脂を用いることによって、従来のリンで変性したエポキシ樹脂に比べ溶剤溶解性が飛躍的に向上し、さらに硬化物とした際、難燃性と耐熱性及び耐熱信頼性が発現でき、最先端のプリント配線板材料に適用できる。また、該エポキシ樹脂は、本発明の製造方法にて容易に効率よく製造する事が出来、目的とする前述の性能のレベルに応じた分子設計が可能となる。
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。尚、180℃における溶融粘度及び軟化点は以下の条件にて測定した。
1)180℃における溶融粘度:ASTM D4287に準拠
2)軟化点測定法:JIS K7234
合成例1[フェノール樹脂A−1の合成]
温度計、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドを124部(0.59モル)、p−アニスアルデヒド78.7部(0.59モル)、フェノールノボラック樹脂161.2部(1.55モル)を仕込み、90℃下、窒素を吹き込みながら撹拌した。その後、140℃に昇温し4時間攪拌した後、160℃に昇温し4時間、更に180度に加熱し2時間撹拌した。その後、水を加熱減圧下で除去してフェノール樹脂(A−1)を350質量部得た。得られたフェノール樹脂の水酸基当量は228グラム/当量、軟化点148℃、180℃での溶融粘度は400dPa・sであった。
Figure 0005640588
合成例2〔フェノール樹脂(A−2)の合成〕
合成例1において、フェノールノボラック樹脂の代わりにビスフェノールAノボラック樹脂330.4g(2.80モル)に変えた以外は実施例1と同様にして、下記構造単位C及び構造単位D
Figure 0005640588

を繰り返し単位とするフェノール樹脂(A−2)490gを得た。これの軟化点は139℃(B&R法)、溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:180℃)は65dPa・s、水酸基当量は232g/eq.リン含有量3.1質量%であった。
合成例3〔フェノール樹脂(A−3)の合成〕
合成例1において、フェニルアラルキル樹脂の使用量を211.25g(1.25モル)に変えた以外は合成例1と同様にして、下記構造単位E及び構造単位F
Figure 0005640588

を繰り返し単位とするフェノール樹脂(A−3)370gを得た。これの軟化点は140℃(B&R法)、溶融粘度(測定法:ICI粘度計法、測定温度:150℃)は50dPa・s、水酸基当量は303g/eq.リン含有量4.5質量%であった。
実施例1[エポキシ樹脂(E−1)の合成]
温度計、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、フェノール樹脂(A−1)228質量部、エピクロルヒドリン463g(5.0モル)、n−ブタノール139g、テトラエチルベンジルアンモニウムクロライド2gを仕込み溶解させた。65℃に昇温した後、共沸する圧力まで減圧して、49%水酸化ナトリウム水溶液90g(1.1モル)を5時間かけて滴下した。その後、同条件で0.5時間撹拌を続けた。この間、共沸によって留出してきた留出分をディーンスタークトラップで分離し、水層を除去し、油層を反応系内に戻しながら、反応を行った。その後、未反応のエピクロルヒドリンを減圧蒸留によって留去させた。それで得られた粗エポキシ樹脂にメチルイソブチルケトン590gとn−ブタノール177gとを加え溶解した。更にこの溶液に10%水酸化ナトリウム水溶液10gを添加して80℃で2時間反応させた後に洗浄液のPHが中性となるまで水150gで水洗を3回繰り返した。次いで共沸によって系内を脱水し、精密濾過を経た後に、溶媒を減圧下で留去して、エポキシ樹脂(E−1)257gを得た。得られたエポキシ樹脂の軟化点は125℃(B&R法)、エポキシ当量は316g/eq.であった。
実施例2〔エポキシ樹脂(E−2)の合成〕
実施例1において、フェノールノボラック樹脂の代わりにビスフェノールAノボラック樹脂(A−2)232g(1.0モル)に変えた以外は実施例1と同様にして、エポキシ樹脂(E−2)490gを得た。これの軟化点は115℃(B&R法)、エポキシ当量は320g/eq。
実施例3〔エポキシ樹脂(E−3)の合成〕
実施例1において、フェノールノボラック樹脂の代わりにフェニルアラルキル樹脂(A−3)303g(1.0モル)に変えた以外は実施例1と同様にして、エポキシ樹脂(E−3)331gを得た。これの軟化点は120℃(B&R法)、エポキシ当量は373g/eq。
比較合成例1(特許文献1の引用)
温度計、冷却管、分留管、窒素ガス導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに、HCA216g(1.0モル)とトルエン216gを仕込み、110℃まで昇温して加熱溶解させる。次いで、p−ヒドロキシベンズアルデヒド122g(1.0モル)とクレゾール108g(1.0モル)を仕込み、180℃まで昇温し180℃で8時間反応させた後、ろ過、乾燥を経て、下記構造式
Figure 0005640588
で表されるフェノール化合物(A−4)を335g得た。得られたフェノール化合物(A−4)の融点は286℃であった。次いで、フェノール化合物(A−4)214g(1.0モル)とエピクロロヒドリン462gを仕込み、撹拌しながら55℃に加熱した。49.5%水酸化ナトリウム水溶液153.5gを加え、減圧下で更に5時間反応した。減圧状態を維持しながら155℃まで昇温し、余剰のエピクロロヒドリンを蒸留除去した。その後、水とメチルイソブチルケトンを加え、油層をろ別、溶剤留去して、エポキシ樹脂(E−4)259gを得た。得られたエポキシ樹脂の融点は150℃(B&R法)、エポキシ当量は302g/eq.であった。
比較合成例2(引用文献3の引用)
温度計、冷却管、分留管、窒素ガス導入管、撹拌器を取り付けたフラスコに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC製「エピクロン850S」、エポキシ当量188g/当量)108.5質量部、HCA−HQ 66.5質量部、テトラメチルアンモニウムクロライド0.5質量部を仕込み、150℃で5時間反応させて、エポキシ当量1,030g/当量の燐含有エポキシ樹脂(E−5)を得た。得られたエポキシ樹脂の軟化点は、100℃であった。
実施例4〜6及び比較例1〜4(エポキシ樹脂組成物の調整及び物性評価)
下記、表1記載の配合に従い、エポキシ樹脂として、(E−1)〜(E−5)、DIC製N-770(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量:185g/eq)、リン変性エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂と9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドとの反応生成物)、硬化剤として、DIC製「TD−2090」を配合し、更に硬化触媒として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)を加え、最終的に各組成物の不揮発分(N.V.)が58質量%となるようにメチルエチルケトンを配合して調整した。
[積層板作成条件]
基材:100μm 日東紡績株式会社製 プリント配線基板用ガラスクロス「2116」
プライ数:6
銅箔:18μm 日鉱金属株式会社製 TCR箔
プリプレグ化条件:160℃/2分
硬化条件:200℃、2.9MPa、2.0時間
成形後板厚:0.8mm、樹脂量40%
上記条件で作成した硬化物を試験片として用い、以下の各種の評価を行った。結果を表1に示す。
[耐熱性試験]
ガラス転移温度:試験片をDMA法にて測定。昇温スピード3℃/分
耐熱剥離性試験(T288):試験法はIPC TM650に準拠。
[燃焼試験]試験方法はUL−94垂直試験に準拠。
Figure 0005640588
表1中の略号は下記の通りである。
「E−1」:実施例1で得られたエポキシ樹脂(E−1)
「E−2」:実施例2で得られたエポキシ樹脂(E−2)
「E−3」:実施例3で得られたエポキシ樹脂(E−3)
「E−4」:比較合成例1で得られたエポキシ樹脂(E−4)
「E−5」:比較合成例2で得られたエポキシ樹脂(E−5)
「TD−2090」:フェノールノボラック樹脂(DIC製「TD−2090」水酸基当量:105g/eq)、
「N−770」:フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC製「N−770」、エポキシ当量185g/eq)、
「リン変性エポキシ樹脂」:フェノールノボラック型エポキシ樹脂と9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドとの反応生成物であるリン変性エポキシ樹脂、エポキシ当量330g/eq.、リン含有量3.0質量%)

Claims (15)

  1. アルコキシ基を芳香核上の置換基として有する芳香族アルデヒド(a1)、及び、下記構造式(A2−a)又は構造式(A2−b)
    Figure 0005640588
    (上記構造式(A2−a)又は構造式(A2−b)中、R 、R 、R 、R はそれぞれ独立的に、水素原子、炭素原子数1〜5のアルキル基、塩素原子、臭素原子、フェニル基、アラルキル基を、Xaは水素原子又は水酸基を表す。)
    で表されるP−H基又はP−OH基を分子構造中に有する有機リン化合物(a2)を反応させ、次いで、得られた反応生成物をフェノール化合物(a3)と反応させてリン原子含有フェノール化合物を得、次いで、得られたリン原子含有フェノール化合物とエピハロヒドリンとを反応させることを特徴とするリン原子含有エポキシ樹脂の製造方法。
  2. 前記芳香族アルデヒド(a1)が、該芳香族アルデヒド(a1)中のアルコキシ基としてメトキシ基又はエトキシ基を有するものである請求項1記載の製造方法。
  3. 前記フェノール化合物(a3)が、2価フェノール、又は多官能型フェノール樹脂である請求項1記載の製造方法。
  4. 前記多官能型フェノール樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂又はアラルキル型フェノール樹脂である請求項記載の製造方法。
  5. 前記2価フェノールが、ジヒドロキシナフタレンである請求項記載の製造方法。
  6. エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)とを必須成分とする硬化性樹脂組成物であって、前記エポキシ樹脂(A)が、請求項1〜の何れか1つに記載の製造方法によって得られたリン原子含有エポキシ樹脂であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
  7. エポキシ樹脂(A)と硬化剤(B)との配合比率が、エポキシ樹脂(A)のエポキシ基の合計1当量に対して、硬化剤()中の活性水素が0.7〜1.5当量となる割合である請求項6記載の硬化性樹脂組成物。
  8. 前記エポキシ樹脂(A)及び前記硬化剤(B)に加え、更に硬化促進剤(C)を配合する請求項記載の硬化性樹脂組成物。
  9. (A)成分〜(C)成分に加え、更に、有機溶剤(D)を含有する請求項記載の硬化性樹脂組成物。
  10. 請求項記載の硬化性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
  11. 請求項記載の組成物からなるプリント配線基板用樹脂組成物。
  12. 請求項記載の組成物からなるフレキシブル配線基板用樹脂組成物。
  13. 請求項記載の組成物をガラス基材に含浸、次いで硬化させてなるプリント配線基板。
  14. 請求項記載の組成物に加え、更に無機充填剤を含有する半導体封止材料用樹脂組成物。
  15. 請求項記載の組成物からなるビルドアップ基板用層間絶縁材料用樹脂組成物。
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