JP5637874B2 - 電子写真感光体の製造装置および電子写真感光体の製造方法 - Google Patents
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Description
その中でも、高周波電力を用いたプラズマプロセスは、様々な材料を用いた堆積膜の形成に用いることができ、酸化膜や窒化膜等の絶縁性の材料形成にも使用できる等、様々な利点より使用されている。
そして、従来のプラズマプロセス法及び装置によって、良好な堆積膜形成処理がなされa−Si:Hを用いた電子写真感光体が製造されている。
電子写真装置の場合には、近年その普及が目覚しいデジタル電子写真装置、カラー電子写真装置においては、高画質化の要求は強い。これらの電子写真装置においては、文字原稿のみならず、写真、絵、デザイン画等の出力も頻繁になされるため、高解像度化、画像濃度ムラの低減、画像欠陥の低減等が従来以上に強く求められるようになっている。
そのため、このような高画質を実現する感光体については、まず第一の要件としては、画像上に黒点或いは白抜けで現れる画像欠陥の抑制のために、電子写真感光体の膜の構造欠陥の抑制が挙げられる。次に、第二の要件としては、画像濃度ムラの低減のための感光体特性の向上、具体的には膜特性ムラの改善が挙げられる。
例えば、第一の画像欠陥の抑制ために、堆積膜形成装置を用いるa−Si:H感光体の作製では、膜形成前や膜形成中に基体の表面に飛来して付着するダストを低減する工夫が行われている。これは、基体の表面に付着したダストに起因して膜の異常成長が起こり、異常成長した箇所が膜の構造欠陥となり画像欠陥を引き起こすと考えられるためである。膜形成中に発生するダストとしては、反応容器や基体周囲の部材に付いた膜が剥離したものとか、膜形成中に副産物として反応容器壁面に堆積したポリシランが剥離したものとかが挙げられる。
具体的には、ガスの噴き出し方向をダスト発生が減少する方向へ向ける工夫、ガスの噴き出し口と電子写真感光体の表面の距離を離す工夫、ガスの噴き出し口の数を増やすことでガス流速を落とす工夫等が行われている。
そして、上述の膜形成前に基体の表面に付着したダストに起因する画像欠陥に関しては、基体の洗浄方法、洗浄後の管理方法、基体の反応炉への導入方法等を工夫することで大きく改善してきている。
さらには、原料ガスの導入方法は重要なパラメーターとして挙げられ、堆積膜形成装置における原料ガスの導入方法や放出方向、ガスを放出する穴の位置や個数や径の組み合わせが堆積膜の均一性や帯電特性に大きな影響を与えることが解っている。このため具体的にはガス導入についてさまざまな対策、提案がなされている。
また、特許文献2では、ガス供給チャンバ内にロータリースリーブを有するガス供給パイプを用いて、ロータリースリーブの円周方向に沿って大きさが異なる複数のガス噴出口を複数設け、ロータリースリーブを回転することにより、ガス導入の分布を調整する技術が開示さている。さらに、ガス供給チャンバのガス供給口に大きさの異なるガス噴出口を持つ回転円板を設け、回転円板を回転させることでガス導入の分布をより正確に調整する技術が開示さている。
さらに、特許文献4では、ガス導入孔への膜の堆積を低減してダストを抑制するために、2系統のガス導入手段のうち、主たるガス導入を行うガス導入手段以外の待機状態のガス導入手段か微量流量の原料ガスを導入する技術が開示されている。
これらの技術により、電子写真感光体の膜の構造欠陥に起因する画像欠陥の抑制と、膜特性の均一性の向上による画像濃度ムラの低減により、品質が向上してきた。
画像欠陥については、電子写真装置の現像性能の向上に伴って解像度が高くなり、感光体においては、今まで画像に現れ難かった小さな膜の構造欠陥が画像欠陥として顕著に現れるようになった。
特に、高いコントラストの画像を求められる場合には、帯電能や感度等の感光体特性を向上させる必要がある。そのために電子写真感光体の成膜時間を長くして膜厚を厚くする場合がある。そして、このように膜厚を厚くする場合には、反応容器や基体周囲の部材、例えば、ガス放出孔の近傍に堆積する膜も同様に厚くなり、堆積した膜が剥離しやすくなってダストとなり画像欠陥となる問題が発生する場合がある。
そして、これらの問題に対応するためには、原料ガスを放出するガス放出孔近傍への膜の堆積、使用していないガス放出孔への膜の堆積について、今まで以上に抑制することが不可欠となっている。
電子写真感光体の電位ムラや光学特性ムラを改善するために、今まで以上に電子写真感光体を構成する各層、例えば、光導電層や表面層、電荷阻止層等において、各層単独でも、膜厚的にも膜特性的にも均一であることがより一層求められている。
これらのために堆積膜形成装置では、原料ガスの導入方法や放出方向、ガスを放出するガス放出孔の位置や個数や径の組み合わせは各層毎に最適化することが今まで以上に重要となっている。
さらに、ガス供給口に大きさの異なるガス噴出口を持つ回転円板を設ける方法が提案されている。
しかしながら、回転円板を成膜の途中で駆動する場合、堆積膜が堆積した状態で回転円板を駆動させるため、回転円板に堆積した膜が剥離しやすくなり、さらにダストを発生させる可能性がある。
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであり、膜の構造欠陥および膜特性ムラが低減された高品質の感光体を低コストで製造することができる電子写真感光体の製造装置を提供することを目的とする。
円筒状基体の上に堆積膜を形成して電子写真感光体の製造するための電子写真感光体の製造装置であって、
内部の反応空間を真空気密状態に保持することが可能な円筒状の反応容器と、
前記反応容器の内部に前記円筒状基体を設置するための手段と、
前記反応容器の内部に前記堆積膜の形成に用いる原料ガスを導入するための原料ガス導入管と、
前記反応容器の内部より排気するための排気手段と、
放電エネルギーにより前記原料ガスを励起するための手段と、
を有する電子写真感光体の製造装置において、
前記原料ガス導入管が、周方向に複数のガス放出孔を有し、
前記製造装置が、
前記原料ガス導入管を回転させることが可能な回転機構と、
前記原料ガス導入管の前記複数のガス放出孔のうち、原料ガスの導入に利用しないガス放出孔を塞ぐ手段と、
を有し、
前記回転機構を用いて前記原料ガス導入管を回転させ、前記塞ぐ手段によって塞がれるガス放出孔を切り替えることによって、前記反応空間の内部への原料ガスの導入に利用するガス放出孔が切り替え可能である
ことを特徴とする。
図1は、本発明の具体的な実施形態における堆積膜形成装置の概略構成図の一例である。
<堆積膜形成装置の構成概略図>
この装置は主として、反応容器10110を有する堆積膜形成装置10100、原料ガス供給装置10200、および、反応容器10110の中を減圧する為の排気装置(図示せず)から構成されている。円筒状の反応容器10110は内部の反応空間を真空気密状態に保持することが可能で、減圧することも可能である。
そして、ガス放出孔10115を塞ぐ手段(図1には図示せず)および回転機構を具備した原料ガス導入管10114が反応容器10110の側壁に内在され、側壁の一部として設置されている。
また、原料ガス導入管10114の周方向には、パターンの異なる前記ガス放出群を複数設けることが可能である。これによって、原料ガス導入管10114を回転させることで、異なるパターンのガス放出孔群を適宜使用することが可能となり、原料ガス導入管10114を交換することなく、成膜中に原料ガスの導入量の分布を変更することができる。
原料ガス供給装置10200は、SiH4,H2,CH4,NO,B2H6,等の原料ガスのボンベ10221〜10225を具備する。また、バルブ10231〜10235、流入バルブ10241〜10245、流出バルブ10251〜10255を具備する。そして、圧力調整器10261〜10265およびマスフローコントローラ10211〜10215を具備する。
次に、原料ガス導入管10114について説明する。
原料ガス導入管10114の材質は、絶縁性、堆積膜の密着性、発塵性を考慮して適宜選択すれば良く、放電空間の内部での配置等にもよるが、絶縁性と密着性からアルミナセラミックスが好適である。また、それ以外の材料としてアルミナセラミックスと同様の特性を有する材料も使用可能である。
ガス放出孔10115を塞ぐ手段としては、多くの形態を用いることが可能であるため、以下に、幾つかの実施形態を例に挙げて詳しく説明する。
はじめに、第1の実施形態について図を参照して説明する。
第1の実施形態では、図2(a)に示すように原料ガス導入管201は、側壁202に内在され、回転機構(図示せず)によって回転可能になっている。
そして、原料ガス導入管201の周方向にはガス放出孔203が複数設けられ、利用しないガス放出孔203をカバー204で覆う構成になっている。カバー204は、図2(a)に示すように側壁202と独立して設けても良いし、側壁202がカバー204を兼ねても良い。カバー204を側壁202と独立に設けることで、カバー204のクリーニング処理等のメンテナンスが容易に行うことが可能となる。また、カバー204の先端部210が放電空間に曝される部分を有してもよいし、カバー204の先端部210が側壁202の内部に収まり放電空間に曝されない構成でも良い。原料ガス導入管201が側壁202に内在されているため、原料ガス導入管201に設けられているガス放出孔203は、側壁202に沿って配置可能になっている。つまり、側壁202の内壁面と、カバー204(又は側壁202)に覆われていないガス放出孔203が並ぶ面とは略同じ曲面となる。
また、カバー204の表面は付着した堆積膜の膜剥がれを抑えるため、粗面化することが好ましい。粗面化する手段として特に制限はないが、実用的には、セラミックや金属等の溶射手段や、投射材を高圧で吹き付けるブラスト加工手段が好ましく、粗さはRz(十点平均粗さ)で5〜200μmが好ましい。
このように、原料ガスの導入に利用しないガス放出孔203をカバー204で覆うことで、利用しないガス放出孔203は堆積膜形成空間であるプラズマ生成領域に曝されにくくなり、利用しないガス放出孔203の近傍への堆積膜の付着を抑制できる。
また、堆積膜の膜厚を厚くする際には、堆積膜形成途中に周方向のガス放出孔203を上記のように切り替えることで、ガス放出孔203近傍への膜の堆積量を減少させることができ、ガス放出孔203近傍からの堆積膜の剥離を抑制できる。
ガス放出孔203の直径は、原料ガスの流量と分布パターンに合わせて調整することができ、ガス放出孔203の直径は、0.1mm〜2.0mmの範囲が好ましい。また、ガス放出孔203の直径は全て同一でも良いし、各層毎の原料ガス流量等の条件に応じて各々のガス放出孔203の直径を異ならせても良い。
次に、利用しないガス放出孔を塞ぐ手段として反応容器10110の側壁を用いた第2の実施形態について図を参照して説明する。
図4A(a)に示すように、第2の実施形態では第1の実施形態と同様に、原料ガス導入管401の周方向に複数の第1のガス放出孔402が設けられている。
そして、図4A(b)に示すように、第1の実施形態と同様に、複数の第1のガス放出孔402を原料ガス導入管401の軸方向に設けてガス放出孔群405を形成している。そして、原料ガス導入管406の周方向において、同じパターン又は異なるパターンの複数のガス放出孔群405を配置することができる。
そして、図4A(b)に示すような側壁403に設ける第2のガス放出孔404は、原料ガス導入管401に設けられた全てのガス放出孔群405の全てのガス放出孔402の位置に対応した場所に配置される。
そして、原料ガス導入管401を回転することで、側壁403の第2のガス放出孔404と原料ガス導入管401の第1のガス放出孔402とを連通させ、連通したガス放出孔のみからガスを放出する。
このように、原料ガスの導入に利用しないガス放出孔402を側壁403で覆うことで、利用しないガス放出孔402は堆積膜形成空間であるプラズマ生成領域に曝されにくくなり、ガス放出孔近傍への堆積膜の付着を抑制できる。
第1のガス放出孔402の直径は、ガスの流量と分布パターンに合わせて調整することができ、ガス放出孔402の直径は、0.1mm〜2.0mmの範囲が好ましい。
最後に、原料ガス導入管を内管とし、利用しないガス放出孔を塞ぐ手段として外管を用いる第3の実施形態について図を参照して説明する。
まず、第3の実施形態は、図5に示すように、外管501に第2のガス放出孔502が設けられる。
また、外管501の表面は、カバー204と同様に付着した堆積膜の膜剥がれを抑えるため、粗面化することが好ましい。
さらに、複数の第1のガス放出孔504が内管503の軸方向に設けられたガス放出孔群505を形成する。そして、内管503の周方向で、同じパターン又は異なるパターンの複数のガス放出孔群505を配置することができる。
そして、内管503を外管501に挿入した状態で、内管503を回転し、外管501の第2のガス放出孔502と内管503の第1のガス放出孔504とを連通させ、連通したガス放出孔504のみからガスを放出する。
また、第1および第2の実施形態と同様に、異なる成膜条件で多層膜形成する場合には、周方向で異なるパターンのガス放出孔群505を配置し、各層毎に層の成膜条件に適したガス放出群505に切り替えることで、特性の均一性を向上させることができる。
また、外管501は回転させずに内管503を回転するため、外管501に堆積した堆積膜の剥離が発生し難くなり、成膜条件によって内管503の周方向に設けられたガス放出孔群505を変更した場合にもダストが抑制できる。
さらに、外管501の第2の放出孔502についてはコンダクタンスの変更に使用されないためにガス導入の分布には影響しないため、大きさや形状は任意に設定できる。このため、第2の放出孔502近傍に堆積した堆積膜が、ガス流によって剥離することを抑制するために、第1のガス放出孔504より第2のガス放出孔502を大きくすることができる。
そして、ガス導入の分布は内管503の第1のガス放出孔504のコンダクタンスや形状が直接的に依存するため、ガス導入の分布を正確に制御できる。
さらに、堆積膜を厚くする場合に、同じパターンのガス放出孔群505と切り替えることで、第1のガス放出孔504をリフレッシュでき、ダストを抑制できる。
さらに、図6(a)に示すように、側壁601の内部に、内管602と外管603で構成される原料ガス導入管604を内在した状態で、外管603に設けた第2のガス放出孔605のガス放出方向を円筒状基体606の表面に対向しない方向に変更可能である。「第2のガス放出孔605のガス放出方向が円筒状基体606の表面に対向しない」とは、第2のガス放出孔605から放出されるガスの放出方向を示す矢印612の延長線上に円筒状基体606が存在しないことを意味する。
以上、原料ガス導入管とガス放出孔について、幾つかの実施形態を例に挙げて説明したが、本件は、これらに制限されるものではない。
次に、電子写真感光体に用いられる基体の材質としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、チタンやこれらの合金を用いることができる。中でも加工性や製造コストを考慮するとアルミニウムが優れている。この場合、Al−Mg系合金、Al−Mn系合金のいずれかを用いることが好ましい。
次に、上述した本発明の堆積膜形成装置を用いて作製する電子写真感光体について説明する。
図7は、本発明における電子写真感光体の実施形態の一例として、円筒状基体7101の表面上に下部阻止層7201、光導電層7202、上部阻止層7203及び表面層7301と順次積層した電子写真感光体7000の模式図である。
それでは、図7を使用して電子写真感光体を構成する各層について説明する。
まず、光導電層7202について説明する。光導電層7202は、一定極性の帯電処理では電荷を保持し、受光した際には導電する働きがある。光導電層7202は、ケイ素原子を母体とするアモルファス材料からなり、光導電性および電荷保持特性を向上させるための原子や、伝導性を制御するための原子を含有させても良い。
光導電性および電荷保持特性を向上させるための原子としては、水素原子やハロゲン原子を用いることができる。
第13族原子としては、具体的には、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等があり、特にB、Al、Gaが好適である。
第15族原子として、具体的には、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等があり、特にP、As、Sbが好適である。
光導電層7202の層厚は所望の電子写真特性が得られること及び製造上の効率や経済的効果等の点から適宜所望にしたがって決定され、例えば10〜80μmが好ましく、15〜45μmがより好ましく、20〜40μmがさらに好ましい。層厚が10μm以上であれば、帯電能や感度等の電子写真特性が実用上充分となり、80μm以下であれば、光導電層9202を効率よく製造することができる。
次に下部阻止層7201について説明する。下部阻止層7201は、円筒状基体7101の側からの電荷の注入を阻止する働きがある。下部阻止層7201は光導電層7202が一定極性の帯電処理をその自由表面に受けた際、円筒状基体7101の側より光導電層7202の側に電荷が注入されるのを阻止する機能を有している。
下部阻止層7201には、水素原子やハロゲン原子を含有するケイ素原子を母材とし導電性を制御する不純物を含有させる。正帯電用電子写真感光体の場合、下部阻止層7201に含有される不純物元素としては、第13族原子を用いることができる。また、負帯電用電子写真感光体の場合、下部阻止層7201に含有される不純物元素としては、第15族原子を用いることができる。
下部阻止層の層厚は、100nm以上10μm以下が好ましく、円筒状基体7101からの電荷の注入阻止能が充分となり、充分な帯電能が得られ、電子写真特性の向上が期待でき、残留電位の上昇などの弊害を抑制できる。
次に、上部阻止層7203について説明する。上部阻止層7203は、上部から(即ち表面層7301の側から)の電荷の侵入を阻止し、帯電能を向上させる働きがある。負帯電電子写真感光体の場合には、光導電層7202と表面層7301との間に上部阻止層7203を設けることが良好な帯電特性を得るためには好ましい。
上部阻止層7203に含有される第13族原子の含有量は、所望にしたがって適宜決定される。上部阻止層7203の中の構成原子の総量に対して30原子ppm以上5000原子ppm以下とすることが好ましく、100原子ppm以上3000原子ppm以下の範囲とすることがより好ましい。
また、上部阻止層7203は、窒素原子、酸素原子及び炭素原子の少なくとも1つを含有させることによって、光導電層7202、表面層7301との間の密着性の向上を図ることが可能となる。
また、上部阻止層7203には、水素原子が含有されることが好ましい。水素原子はケイ素原子の未結合手を補償し、層品質の向上、特に光導電性特性および電荷保持特性を向上させるために重要である。水素原子の含有量は、上部阻止層7203の中の構成原子の総量に対して通常の場合5原子%以上70原子%以下が好ましい。10原子%以上65原子%以下がより好ましく、15原子%以上60原子%以下がさらに好ましい。
上部阻止層7203は光導電層7202側から表面層7301に向かって組成を連続的に変化させることも好ましく、密着性の向上や干渉防止等に効果がある。
次に、表面層7301について説明する。表面層7301は、連続繰り返し使用耐性、耐湿性、使用環境耐性、電気特性に関して良好な特性を得るために設けられる。
表面層7301は、アモルファスシリコン系の材料であればいずれの材質でも可能である。例えば、水素原子(H)および/またはハロゲン原子(X)を含有し、さらに炭素原子を含有するアモルファスシリコン(以下「a−SiC:H,X」と表記する)材料も好適に用いられる。または、酸素原子や窒素原子を含有するa−SiO:X、a−SiN:Xも好適に用いられる。
次に、堆積膜の形成方法について図1を参照して説明する。
まず、円筒状基体10112を反応容器10110の中に受け台10123を介して設置する。次に、排気装置(図示せず)を運転し、反応容器10110の中を排気する。真空計10119の表示を見ながら、反応容器10110の中の圧力がたとえば1Pa以下の所定の圧力になったところで、ヒーター10113に電力を供給し、円筒状基体10112を例えば100℃から350℃の所望の温度に加熱する。このとき、ガス供給装置10200より、Ar、He等の不活性ガスを反応容器10110に供給して、不活性ガス雰囲気中で加熱を行うこともできる。また、必要に応じて円筒状基体10112を不図示の回転機構により回転させる。
以上が、RFプラズマCVD法による堆積膜の形成方法であり、この堆積膜の形成方法を用いて電子写真感光体を製造することが可能である。
また、プラズマを発生させる放電エネルギーは、DC、RF、マイクロ波あるいはVHF帯域の電磁波のいずれでもよく、それらは、所望の堆積膜特性に合わせて電子写真感光体の製造方法に使用できる。
このため、各層の均一性を今まで以上に向上させるために、各層の成膜条件に応じて各層毎に最適化された軸方向のガス放出孔パターンからなるガス放出孔群を用いることが有効である。
そこで本発明の堆積膜形成装置を用いることで、ガス導入管に新たに軸方向にガス放出孔を設けるだけで、新たなガス放出孔群の追加が可能となる。そのため、容易且つ安価に各層毎に最適化された軸方向のガス放出孔パターンを用いて電子写真感光体を作製することが可能となる。
このため、ほとんどコストアップすることなく、従来以上に感光体特性の均一性が優れ、且つ膜の構造欠陥が低減された高品質な電子写真感光体を作製することが可能となる。
(実施例1)
まず、実施例1として、図3(a)および図3(b)に示すような、利用しないガス放出孔303を塞ぐ手段がカバー304である堆積膜形成装置を用いて電子写真感光体を作製した。堆積膜の形成には、図1に示す堆積膜形成装置10100および原料ガス供給装置10200を用いた。
電子写真感光体として、アルミニウムよりなる外径84mm、軸方向長さ381mm、肉厚3mmの円筒状基体10112の表面上に、円筒状基体10112を2rpmで回転させながら、図7に示す層構成の堆積膜を形成した。各層の成膜は表1に示す条件で行った。
図8においては、ガス放出孔801が図3(a)の原料ガス導入管301に設けられたガス放出孔303を表し、ガス放出孔群802が原料ガス導入管301の周方向に設けられた図3(b)のガス放出孔群306のパターンを表す。
また、同様の条件で評価用に5本の電子写真感光体を作製した。
次に、比較例1として、ガス放出孔を塞ぐ手段を用いずに原料ガス導入管の構成を変えた以外は、実施例1と同様の堆積膜形成装置と層構成、成膜条件、円筒状基体を用いて電子写真感光体を作製した。
原料ガス導入管の配置は、図9(a)に示すような原料ガス導入管901を側壁902に内在させない配置を用いた。また、直径が0.5mmの円状のガス放出孔903の軸方向の放出孔群のパターンは、実施例1において光導電層に用いた図8(b)の1種類のみを用いて、下部阻止層、光導電層、上部阻止層、表面層の全層を形成した。
また、同様の条件で評価用に5本の電子写真感光体を作製した。
次に、比較例2として、ガス放出孔を塞ぐ手段を用いずに原料ガス導入管の構成及び配置を変えた以外は、実施例1と同様の堆積膜形成装置と層構成、成膜条件、円筒状基体で電子写真感光体を作製した。
原料ガス導入管の配置は、図9(b)に示すような、原料ガス導入管911〜918および921〜928を側壁929に内在しない配置を用いた。
そして、図9(b)内の原料ガス導入管911〜918を一つの系統とし、もう一つの系統を原料ガス導入管921〜928とした二つの系統の原料ガス導入管を切り替え可能した堆積膜装置を用いて電子写真感光体を作製した。
そして、層構成、成膜条件、円筒状基体については、実施例1および比較例1と同じ条件で作製した。
また、同様の条件で評価用に5本の電子写真感光体を作製した。
次に、比較例3として、二つの系統の原料ガス導入管のうち、主たるガス系統から原料ガスを導入して各層を形成する際に、もう一方の待機状態のガス系統に前記主たるガス系統に対して1/100の少量の原料ガスを導入した。それ以外は、比較例2と同様の堆積膜形成装置と層構成、成膜条件、円筒状基体で電子写真感光体を作製した。
また、同様の条件で評価用に5本の電子写真感光体を作製した。
次に、実施例2として、各層で用いるガス放出孔群のパターンを変えた以外は、実施例1と同様のガス放出孔を塞ぐ手段、堆積膜形成装置と層構成、成膜条件、円筒状基体を用いて電子写真感光体を作製した。
ガス放出孔群のパターンは、比較例2と同様に、図8(b)のパターンを用いて下部阻止層、光導電層を形成し、図8(d)のパターンを用いて上部阻止層、表面層を形成した。
そして、層構成、成膜条件、円筒状基体については、実施例1および比較例1、比較例2と同じ条件で作製した。
また、同様の条件で評価用に5本の電子写真感光体を作製した。
以上のように作製した実施例1および実施例2、比較例1、比較例2、比較例3の各電子写真感光体5本ずつについて、画像欠陥、軸方向感度ムラを以下の要領で評価した。
軸方向感度ムラの評価は、キヤノン製複写機iRC6800を実験用にマイナス帯電方式に改造した改造機で評価した。
まず、作製した電子写真感光体を上記改造機に設置し、主帯電器の電流値を表面電位が−450Vとなるように調整し、電子写真感光体を帯電させた。
次に660nmの波長のレーザーで露光し、露光した時に表面電位が−50V(基準コントラスト電位が、Δ400V)になる時の露光量を感度とした。
そして、得られた17点の測定位置の感度について、感度の最大値と最小値の差を軸方向の感度ムラとし、各条件の各5本の平均をその電子写真感光体の軸方向感度ムラとした。さらに、比較例3の電子写真感光体の軸方向感度ムラを100%として、比較例3を基準に相対評価を行い、以下のようにランク付けした。そして、Dランク以上で本発明の効果が得られていると考えた。
B 70%以上80%未満
C 80%以上90%未満
D 90%以上110%未満
E 110%以上120%未満
F 120%以上
画像欠陥の評価は、キヤノン社製iRC6800をマイナス帯電方式に改造した改造機で、画像部を露光するイメージ露光方式で、露光部を現像する反転現像によりコピー画像を形成し、画像欠陥の評価を行った。評価は以下の要領で行なった。
A3サイズの白原稿を原稿台に置き、A3用紙にマゼンタ色、イエロー色、シアン色の3色で複写した。こうして得られた画像領域にある直径0.1mm以上の画像欠陥(シアン色の画像欠陥)の個数を数え、各条件の各5本の平均の個数をその電子写真感光体の画像欠陥の個数とした。
得られた結果は、比較例3で作製した電子写真感光体で得られたコピー画像での個数を100%として、比較例3を基準にした相対比較でランク付けを行った。そして、Fランク以上で本発明の効果が得られていると考えた。
B 50%以上60%未満
C 60%以上70%未満
D 70%以上80%未満
E 80%以上90%未満
F 90%以上110%未満
G 110%以上120%未満
H 120%以上
結果を表2に示す。
そして、比較例2においては比較例1に対して画像欠陥が悪化している。これは、比較例2では上部阻止層と表面層に用いるガス放出孔群のパターンに切り替えるために、利用していなかったガス系統を途中から使用したため、ガス放出孔近傍に堆積した堆積膜の膜剥れが発生し、ダストが付着したためと考えられる。
これに対して実施例1及び実施例2では、比較例3よりさらに画像欠陥が良化している。これは、ガス放出孔を塞ぐ手段を用いてガス放出孔群のパターンを切り替えることによって、ガス放出孔近傍からの膜剥れがさらに抑制されたためと考えられる。
この結果から、本発明の堆積膜形成装置によれば、ガス放出孔近傍に堆積した膜の膜剥がれに起因するダスト発生が抑制されて画像欠陥を良化することと、軸方向感度ムラが改善することを同時に達成可能であることが判った。
図2(a)に示すように、原料ガス導入管を側壁に内在させた。それ以外は実施例1と同じ条件で電子写真感光体を作製した。
その際、図2(b)に示すような直径が0.5mmの円状のガス放出孔203によるガス放出孔群206を実施例1と同様に周方向で異なるパターンで4つ設けた。具体的には、下部阻止層は図8(a)、光導電層は図8(b)、上部阻止層は図8(c)、表面層は図8(d)に示すガス放出孔群803のパターンを用いて作製した。
そして、作製した電子写真感光体は実施例1と同様にして、軸方向感度ムラ、画像欠陥を測定、評価した。結果を表3に示す。
図2(b)に示すようなガス放出孔群206を周方向で異なるパターンで5つ設け、その内の2つは図8(b)に示すガス放出孔群パターンとした。光導電層を形成する際に、この2つの図8(b)に示すガス放出孔群パターンのガス放出孔を用い、光導電層の堆積中に光導電層の層厚が20μmに堆積された時点で新しいガス放出孔に切り替えて電子写真感光体を作製した。それ以外は、実施例3と同じ条件で電子写真感光体を作製した。
そして、作製した電子写真感光体は実施例1と同様に、軸方向感度ムラ、画像欠陥を測定、評価した。結果を表3に示す。
図4A(a)に示すように、原料ガス導入管を側壁に内在させ、側壁を第2のガス放出孔とした。それ以外は実施例4と同じ条件で電子写真感光体を作製した。
この時、図4A(b)に示すように、側壁に設けられた第2のガス放出孔404が、原料ガス導入管401に設けられた第1のガス放出孔402より大きいものを用いた。第1のガス放出孔402は直径が0.5mmの円状のガス放出孔、第2のガス放出孔404は長辺が3.0mm、短辺は2.0mmの長方形のガス放出孔を用いた。各層のガス放出孔群のパターンは実施例4と同じ条件で堆積させた。
そして、作製した電子写真感光体は実施例1と同様にして、軸方向感度ムラ、画像欠陥を測定、評価した。結果を表3に示す。
図10に示すように、原料ガス導入管を側壁1002に内在させ、原料ガス導入管を内管1006とし、外管1003に第2のガス放出孔1004を設けた。それ以外は実施例4と同じ条件で電子写真感光体を作製した。
この時、図10に示すように、外管1003に設けられた第2のガス放出孔1004は、円筒状基体1005の表面に対向させた。
そして、作製した電子写真感光体は実施例1と同様にして、軸方向感度ムラ、画像欠陥を測定、評価した。結果を表3に示す。
外管603に設けられた第2のガス放出孔605を図6(a)に示すように円筒状基体606の表面に対向しない方向で、同じ向きに角度θを30度ずらした。それ以外は実施例4と同じ条件で電子写真感光体を作製した。ガス放出孔の形状は実施例6と同じとし、各層のガス放出孔群のパターンは実施例4と同じ条件で堆積させた。
そして、作製した電子写真感光体は実施例1と同様にして、軸方向感度ムラ、画像欠陥を測定、評価した。結果を表3に示す。
この結果は、膜厚の厚い光導電層を堆積する際に、新たなガス放出孔に切り替えることで、ガス放出孔近傍に堆積する膜の膜厚が減少し、膜剥がれが抑制されたために、さらに画像欠陥が良化したと考えられる。本発明の堆積膜形成装置によれば、画像欠陥の良化と軸方向感度ムラの改善とが同時に達成可能であることが判った。
この結果は、利用しないガス放出孔を塞ぐ手段として側壁を用いたことにより、原料ガス導入管に付着する堆積膜が低減したことで、膜剥がれによるダストがさらに抑制されたため、実施例4よりさらに画像欠陥が良化したと考えられる。
この結果は、第2のガス放出孔を円筒状基体の表面に対向しない方向にしたことで、反応容器全体のガスの流れが改善されて軸方向感度ムラがさらに良化したと考えられる。
原料ガス導入管の周方向に複数のガス放出孔を設け、ガス放出孔のうち利用しないガス放出孔を塞ぐ手段を設けることで、複数系統のガス導入手段を設けることなく、多層膜の各層に適したガス放出孔群に切り替えてガス分布を最適化することが可能となる。これにより、膜特性ムラが低減されて電子写真感光体の均一性が改善し、膜剥れにより発生したダスト付着によって発生する膜の構造欠陥に起因する画像欠陥が良化することがわかった。また、各層毎の最適化、層構成の変更や製造条件の変更を行う際に、更なる多系統化等の大幅な装置変更によるコストアップを抑制できることがわかった。
202 側壁
203 ガス放出孔
204 カバー
205 円筒状基体
206 ガス放出孔群
207 ヒーター
208 高周波マッチングボックス
209 高周波電源
Claims (8)
- 円筒状基体の上に堆積膜を形成して電子写真感光体の製造するための電子写真感光体の製造装置であって、
内部の反応空間を真空気密状態に保持することが可能な円筒状の反応容器と、
前記反応容器の内部に前記円筒状基体を設置するための手段と、
前記反応容器の内部に前記堆積膜の形成に用いる原料ガスを導入するための原料ガス導入管と、
前記反応容器の内部より排気するための排気手段と、
放電エネルギーにより前記原料ガスを励起するための手段と、
を有する電子写真感光体の製造装置において、
前記原料ガス導入管が、周方向に複数のガス放出孔を有し、
前記製造装置が、
前記原料ガス導入管を回転させることが可能な回転機構と、
前記原料ガス導入管の前記複数のガス放出孔のうち、原料ガスの導入に利用しないガス放出孔を塞ぐ手段と、
を有し、
前記回転機構を用いて前記原料ガス導入管を回転させ、前記塞ぐ手段によって塞がれるガス放出孔を切り替えることによって、前記反応空間の内部への原料ガスの導入に利用するガス放出孔が切り替え可能である
ことを特徴とする電子写真感光体の製造装置。 - 前記原料ガス導入管が、前記反応容器の側壁に内在し、前記ガス放出孔が、前記反応容器の側壁に沿って配置されている請求項1に記載の電子写真感光体の製造装置。
- 前記原料ガス導入管の軸方向において、複数のガス放出孔からなるガス放出孔群が形成されており、かつ、原料ガス導入管の周方向において、複数のガス放出孔群が形成されている請求項1又は2に記載の電子写真感光体の製造装置。
- 前記ガス放出孔群のパターンが、前記原料ガス導入管の周方向で異なる請求項3に記載の電子写真感光体の製造装置。
- 前記塞ぐ手段が、反応容器の側壁の一部であり、
前記塞ぐ手段が、第2のガス放出孔を有し、
前記回転機構を用いて前記原料ガス導入管を回転させ、前記原料ガス導入管が有するガス放出孔と前記塞ぐ手段が有する第2のガス放出孔とを連通させることで、前記反応空間の内部への原料ガスの導入に利用するガス放出孔が切り替え可能である
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造装置。 - 前記ガス導入管が内管となり、前記塞ぐ手段が外管となる構造になっており、
前記塞ぐ手段が、第2のガス放出孔を有し、
前記回転機構を用いて前記ガス導入管を回転させる、および/または、前記塞ぐ手段を回転させることが可能な回転機構を用いて前記塞ぐ手段を回転させることで、前記原料ガス導入管が有するガス放出孔と前記塞ぐ手段が有する第2のガス放出孔とを連通させることで、前記反応空間の内部への原料ガスの導入に利用するガス放出孔が切り替え可能である
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造装置。 - 前記塞ぐ手段が有する第2のガス放出孔が、前記円筒状基体に対向しない方向に前記原料ガスを放出するように設置されている請求項6に記載の電子写真感光体の製造装置。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子写真感光体の製造装置を用い、円筒状基体の上に堆積膜を形成して電子写真感光体を製造することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
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