本発明の電子写真用感光体は、導電性の基体と、該基体上にアモルファスシリコンを用いて形成された光導電層と、金属フッ化物、金属酸化物及び金属窒化物から選択されるいずれか1種の材料から形成された表面層とを有する電子写真用感光体であって、該表面層が、該光導電層に接触して設けられたアモルファス構造を有する第1の領域と、表面に設けられた結晶構造を有する第2の領域とを有し、該第1の領域と該第2の領域とが、共に、金属フッ化物、金属酸化物及び金属窒化物から選択されるいずれか1種の材料から形成されており、該第1の領域が、該表面層の層厚に対して5.0%以上40%以下の層厚を有し、該第2の領域が、該表面層の層厚に対して5.0%以上の層厚を有することを特徴とする。
本発明の電子写真用感光体に用いる導電性の基体としては、光導電層および表面層を保持し得るものであればいずれのものであってもよい。その材質としては、例えば、Al、Cr、Mo、Au、In、Nb、Te、V、Ti、Pt、Pd、Fe等の金属、および、これらの合金、例えばAl合金、ステンレス等を挙げることができる。また、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド等の合成樹脂のフィルムまたはシート、ガラス、セラミック等の電気絶縁性基体の少なくとも光導電層を形成する側の表面を導電処理して用いることができる。
本発明の電子写真用感光体に用いる光導電層としては、アモルファスシリコンを用いて形成される。アモルファスシリコンは、硬度に優れ、後述する表面層を真空プロセスにより形成する場合、脱ガスが少なく、良好な電子写真特性を得ることができる光導電層材料として好ましい。
また、光導電層は、層品質、特に光導電性および電荷保持特性を向上させるために、シリコン原子の未結合手に結合する水素原子を含有することが好ましい。水素原子の含有量は、シリコン原子と水素原子の原子の数の和に対して10原子%以上、特に15原子%以上であることが好ましく、また、シリコン原子と水素原子の原子の数の和に対して30原子%以下、特に25原子%以下であることが好ましい。
光導電層はハロゲン化合物を含有していてもよい。好適に使用し得るハロゲン化合物としては、具体的には、弗素ガス(F2)、BrF、ClF、ClF3、BrF3、BrF5、IF3、IF7等や、SiF4、Si2F6等の弗化珪素などのハロゲン置換シラン誘導体等を挙げることができる。
更に、光導電層は必要に応じて伝導性を制御する原子を含有することが好ましい。伝導性を制御する原子は、光導電層中に万偏なく均一に分布した状態で含有されていてもよいし、また、層厚方向において不均一な分布状態で含有されている部分があってもよい。
伝導性を制御する原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができ、p型伝導特性を与える周期表13族に属する原子(以下、「第13族原子」と略記する。)またはn型伝導特性を与える周期表15族に属する原子(以下、「第15族原子」と略記する。)を用いることができる。第13族原子としては、具体的には、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等を例示することができ、特にB、Al、Gaが好適である。第15族原子としては、具体的にはリン(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等を例示することができ、特にP、Asが好適である。
光導電層に含有する伝導性を制御する原子の含有量は、シリコン原子の原子の数に対して1×10-2原子ppm以上、特に5×10-2原子ppm以上、さらには1×10-1原子ppm以上であることが好ましい。また、1×104原子ppm以下、特に5×103原子ppm以下、さらには1×103原子ppm以下であることが好ましい。
更に、光導電層は炭素原子、酸素原子または窒素原子のいずれか1種以上を含有することも有効である。炭素原子、酸素原子および窒素原子の含有量(合計量)は、シリコン原子、炭素原子、酸素原子および窒素原子の原子の数の和に対して、1×10-5原子%以上、特に1×10-4原子%以上、さらには1×10-3原子%以上であることが好ましい。また、シリコン原子、炭素原子、酸素原子および窒素原子の原子の数の和に対して、10原子%以下、特に8原子%以下、さらには5原子%以下であることが好ましい。炭素原子、酸素原子および窒素原子は、光導電層中に万偏なく均一に分布した状態で含有されていてもよいし、また、層厚方向において不均一な分布状態で含有されている部分があってもよい。
上記光導電層の層厚は、所望の電子写真特性が得られること、経済的効果等の点から適宜決定することができるが、例えば、15μm以上、特に20μm以上とすることが好ましい。また、60μm以下、特に50μm以下、さらには40μm以下とすることが好ましい。光導電層の層厚が15μm以上であれば、帯電部材への通過電流量の増大を抑制し、劣化を抑制することができる。光導電層の層厚が60μm以下であれば、アモルファスシリコンの異常成長部位の増大、例えば、水平方向で50〜150μm、高さ方向で5〜20μm等の大きさとなることを抑制することができ、表面を摺擦する部材へのダメージによる画像欠陥の発生を抑制することができる。
本発明の電子写真用感光体の表面層としては、金属フッ化物、金属酸化物及び金属窒化物から選択されたいずれか1種を含み、光導電層と接触して設けられるアモルファス構造を有する第1の領域と、表面に設けられる結晶構造を有する第2の領域とを有し、第1の領域及び第2の領域が同じ物質からなることが好ましい。
表面層を形成する材料としては、金属フッ化物、金属酸化物及び金属窒化物からいずれか1種類を選択して使用する。金属フッ化物としては、具体的にはフッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化ランタン(LaF3)等を挙げることができる。また、金属酸化物としては、具体的には、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化錫(SnO2)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)などを挙げることができる。また、金属窒化物としては、具体的には、窒化珪素(Si3N4)、窒化アルミ(AlN)等を挙げることができる。これらの各材料において、金属原子とフッ素原子、酸素原子、窒素原子との原子の比率は必ずしも上記化合物における原子比に限るものではなく、原子の組成比が異なるものであってもよい。
これらの金属化合物のうち、表面層を形成する物質としてフッ化マグネシウムを好ましいものとして挙げることができる。フッ化マグネシウムは、堆積膜においてアモルファス構造と結晶構造の差が現れやすく、且つ、アモルファス構造においては比較的均一な膜構造を得ることができる。このため、フッ化マグネシウムを用いた表面層において、画像流れの発生を抑制し感光体の耐久性の更なる向上を図ることができる。
上記表面層を形成する物質としては、後述する第1の領域、第2の領域全体が金属フッ化物、金属酸化物、金属窒化物から選ばれるいずれか1種であるが、電荷の流れに本質的な影響を及ぼさない原子の結合状態を維持できる範囲内で微量の不純物を含んでいてもよい。
こうした不純物の例として、表面層を金属フッ化物で構成した場合は炭素(C)、酸素(O)、窒素(N)等が、また、表面層を金属酸化物で構成した場合は炭素、窒素、フッ素(F)等を挙げることができる。また、表面層を金属窒化物で構成した場合は炭素、酸素、フッ素等を不純物として挙げることができる。
上記物質で形成される本発明の電子写真用感光体の表面層は、光導電層に接触して設けられるアモルファス構造の第1の領域と、表面に設けられる結晶構造の第2の領域とを有する。
上記第1の領域のアモルファス構造は、比較的均一な膜構造を有し柱状構造を生じていないもの、若しくは、柱状構造が軽微であり、柱状構造の界面による電荷の通過を起こさないものである。即ち、第1の領域のアモルファス構造とは、原子の結合状態が完全にランダムな構造を含むが、これに限定されず、柱状構造の界面による電荷の通過を顕著に起こさない範囲の結晶性を有する構造も含む。
一方、上記第2の領域の結晶構造は、比較的柱状構造が顕著であり、その結果生じる柱状構造の界面によって電荷を通過させるものである。即ち、第2の領域の結晶構造とは、完全に結晶構造のみから形成されるものを含むが、これに限定されず、原子の結合状態に乱れを生じているものであっても、柱状構造の界面による電荷の透過が顕著な構造を含む。
このようにアモルファス構造と結晶構造とは電荷が通過可能な柱状構造の界面を有するかを指標として定めるが、具体的には、透過型電子顕微鏡によるX線等の電子線回折像の観察によることができる。通常X線回折法によって観測される回折光にはアモルファス構造に由来するブロードなハローピークと、結晶構造に由来する比較的急峻なピークが混在した形で得られる。得られた回折パターンを多重波形分離し、各々のピークの積分強度を算出し、以下の数式(1)
Xc=Ic/(Ic+Ia)×100 (1)
に代入して求めた結晶化度Xcにより、アモルファス構造か結晶構造かを定めることができる。式(1)中、Icは結晶性のピークの積分強度、Iaはアモルファス性のハローピークの積分強度を表す。
上記表面層の第1の領域のアモルファス構造としては、結晶化度Icが50%以下であることが、光導電層との界面領域における画像流れを抑制することができるため好ましい。第2の領域の結晶構造としては、結晶化度Icが70%以上であることが、表面部分における画像流れを抑制することができるため好ましい。結晶化度が50%を超え70%未満の範囲では、アモルファス構造または結晶構造どちらの特性も顕著にならず、上記効果が得られにくい。
上記結晶化度の算出は、具体的には以下の方法を挙げることができる。
まず、表面層の形成条件と同一の条件でシリコンウエハ上に堆積層を形成したサンプルや、表面層を形成した電子写真用感光体から収束イオンビーム装置などを用いて一部を切り出したサンプルを用いて観察を行う。X線回折の測定は、通常の集中光学系を用いた粉末X線回折装置を用い、測定物の表面に対してX線源と検出器(計数管)の角度が対称になるようにスキャンする2θ/θスキャン法や、または、測定物の表面に平行に近い角度、例えば1°でX線の入射方向を固定し、検出器の角度をスキャンする全反射測定法によって測定することができる。例えば、フッ化マグネシウム膜においては、ハローピークは2θが10°〜35°の範囲に現れ、また(110)面に由来する結晶性のピークが2θ=27.3°に現れる。上記全反射測定法は、試料の表面近傍の情報が得られるため、特に電子写真用感光体を切り出したサンプルの検出に適しており、試料の表面を研磨などの手段により順次除去し、表面層の各々の部位の結晶化度の測定が可能であり、好ましい。
このような表面層は、アモルファス構造を有する第1の領域と結晶構造を有する第2の領域が界面を介して互いに接して積層された構造を有していてもよい。第1の領域と第2の領域とが界面を介して積層される場合でも、界面部分における画像流れや、耐久性の悪化は認められない。アモルファス構造の領域と結晶構造の領域とが、特に、同一の物質で形成されることにより、原子同士の結合状態はアモルファス構造と結晶構造において近似したものであり、密度の低い領域を形成せずに結晶が成長するためと考えることができる。
更に、表面層が、光導電層側にアモルファス構造(結晶化度において50%以下)の第1の領域を有し、表面側に結晶構造(結晶化度において70%以上)の第2の領域を有すれば、第1の領域と第2の領域との間に、50%を超え70%未満の結晶化度を有する領域を有するものであってもよい。この場合、結晶化度が連続的か否かを問わず、変化する領域を有することができる。このような領域を有する表面層の場合、電荷がどの部位で蓄積されるのか必ずしも明確ではないが、光導電層側または表面側何れにおける画像流れの発生が抑制される。
上記表面層全体の膜厚は、所望の電子写真特性、十分な機械的強度が得られる範囲であればよく、具体的には、0.1μm以上であることが好ましい。また、残留電位の発生を抑制することに加え経済性などの観点から3μm以下であることが好ましく、より好ましくは、1μm以下である。
表面層に含まれるアモルファス構造を有する第1の領域の層厚は、表面層全体の層厚の5.0%以上40%以下であり、結晶構造を有する第2の領域の層厚は、表面層全体の層厚の5.0%以上であることが好ましい。第1の領域の層厚が上記範囲であれば、光導電層との間に生じる応力を効果的に吸収し緩和することができる。また、第2の領域の層厚が上記範囲であれば、第2の領域内に生じる応力の集中を抑制することができる。第1の領域と第2の領域の層厚は、例えば、全表面層の層厚を1μmとした場合、第1の領域を0.1μm(10%)、第2の領域を0.9μm(90%)などとしてもよい。また、全表面層の層厚を1μmとした場合、層厚0.2μmの第1の領域と、層厚0.5μm(50%)の第2の領域と、第1の領域と第2の領域の間に、層厚0.3μmの結晶化度が50%を超えて70%未満の中間の領域を有するものを挙げることができる。
中間の領域の層厚は第1の領域と第2の領域の層厚がそれぞれ上記の範囲を満たすものであればいずれの層厚でもよく、上記の表面層全体の層厚を考慮して任意に決定できる。
本発明の電子写真用感光体としては、上記の他、光導電層の下層として下部電荷注入阻止層、または光導電層と表面層間に上部電荷注入阻止層等を有するものであってもよい。これらの層の材料としては、光導電層を構成するa−Siをベースにしたものであることが好ましい。具体的には、水素やハロゲン原子により未結合手を終端したアモルファスシリコンをベースとし、13族元素、15族元素等のドーパントを含有し、伝導型を制御したキャリアの注入阻止能を有するものを使用することができる。特に、下部電荷注入阻止層は、必要に応じて、炭素原子、窒素原子および酸素原子から選ばれる少なくとも1種の原子を含有させることにより、応力を調整し、光導電層との密着性を向上させるものとできる。
また、これらの層に加えて、各層間に組成を連続的に変化させた移行層を設けることもできる。
本発明の電子写真用感光体の一例として、図1の模式図に示すものを挙げることができる。図1に示す電子写真感光体は、導電性の基体13と、その上に順次積層された光導電層12、表面層11とを有し、表面層11は、光導電層に接触して設けられるアモルファス構造を有する第1の領域11aと、表面に設けられる結晶構造を有する第2の領域11bとを有する。
このような電子写真用感光体の製造方法を以下に説明する。
導電性の基体上に光導電層を形成する方法としては、プラズマCVD法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の方法によることができる。例えば、プラズマCVD法によって光導電層を形成するには、シリコン原子供給用の原料ガスと、水素原子供給用の原料ガスとを、内部を減圧可能な反応容器内に導入する。その後、反応容器内にグロー放電を生起させ、これにより原料ガスを分解し、所定の位置に設置した導電性の基体上にアモルファスシリコンを堆積させ、光導電層を形成することができる。
上記シリコン原子供給用原料ガスとしては、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)等のシラン類を好適なものとして挙げることができる。また、水素原子供給用原料ガスとしては、上記シラン類に加えて、水素(H2)も好適なものとして挙げることができる。
光導電層に、例えば、第13族原子または第15族原子等の伝導性を制御する原子を導入する方法としては、第13族原子導入用の原料や第15族原子導入用の原料をガス状態にして光導電層を形成する原料ガスと共に反応容器中に導入する方法を挙げることができる。第13族原子導入用の原料または第15族原子導入用の原料としては、常温常圧でガス状のもの、または、少なくとも反応条件下で容易にガス化し得るものを採用することが好ましい。例えば、導電性を制御する原子としてホウ素(B)を用いる場合は、ジボラン(B2H6)、BF3、BCl3等のハロゲン化物を使用することができる。また、導電性を制御する原子としてリン(P)を用いる場合は、フォスフィン(PH3)等を使用することができる。必要に応じて、これらの伝導性を制御する原子導入用の原料物質はH2やHe等により希釈して使用することができる。
また、光導電層に、炭素原子、酸素原子、窒素原子を導入する方法としては、これらの原子の導入用の原料をガス状態または反応条件下において容易にガス化し得る状態のものを光導電層を形成する原料ガスと共に反応容器中に導入する方法を挙げることができる。これらの原子の導入用原料としては、メタン(CH4)、アセチレン(C2H2)、二酸化炭素(CO2)、酸素(O2)、窒素(N2)、アンモニア(NH3)、一酸化窒素(NO)等を使用することができる。
上記方法により形成した光導電層上に表面層を形成する方法としては、アモルファス構造と結晶構造を選択的に形成することができる堆積膜形成方法を使用することが好ましい。堆積膜形成方法としては、例えば、プラズマCVD法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を挙げることができ、含有させる金属フッ化物、金属酸化物、金属窒化物に応じて、上記の堆積膜形成方法を適宜選択して使用することができる。例えば、金属フッ化物、金属酸化物、金属窒化物が、マグネシウム、バリウム、ランタンなどを含有する場合には、ガス状の原材料を用いてこれらの原子を供給することが困難であることから、真空蒸着法、スパッタリング法が適している。また、金属フッ化物、金属酸化物、金属窒化物が、アルミニウム、珪素等を含有する場合には、ガス状の原材料を用いてこれらの原子を供給することが可能であることから、プラズマCVD法を用いることができる。
表面層におけるアモルファス構造または結晶構造を形成する方法としては、具体的には、スパッタリング法による場合は、圧力、ターゲット電圧、基板温度などのパラメータを調整し、特定の結晶化度を有する膜を選択的に成長させる方法を挙げることができる。これらのパラメータは、選択する材料、使用する装置の特性によって一概に決定できるものではないが、一般的には圧力を高くする、ターゲット電圧又は基板温度を低くすることによりアモルファス構造の堆積膜が成長する傾向にある。これとは逆に、圧力を低く抑え、ターゲット電圧又は基板温度を高くすることにより結晶構造の堆積膜が成長する傾向にある。
また、第1の領域の堆積膜形成方法と第2の領域の堆積膜形成方法とは個別の方法を選択することができる。
上記方法により形成される電子写真用感光体は、表面側を結晶構造とすることにより、電荷は結晶構造の表面に留まらず表面層内部に保持される。このため、高湿環境下においても、表面における低抵抗化による影響をほとんど受けず、表面での画像流れを効果的に抑制することができる。更に、光導電層と接触して設けられる第1の領域のアモルファス構造は、比較的均一な構造をとりやすいため、光導電層と表面層の界面に密度の低い領域が形成されにくく、しかもアモルファス構造によって応力の蓄積が抑制され、効果的に緩和される。このため、光導電層と表面層の界面部分における画像流れ、光感度の低下、ゴーストの発生も効果的に抑制することができる。
しかも、アモルファス構造に結晶構造を積層する場合、両者間に界面が形成されるが、このような界面において画像流れや光感度の低下、ゴーストの発生は認められない。アモルファス構造と結晶構造とが同じ物質からなることにより、原子間の結合状態はアモルファス構造と結晶構造において近似したものであり、界面において密度の低い領域を形成せずに結晶が成長すると考えられる。
このような電子写真用感光体のプラズマCVD法を用いた製造方法について具体的な装置を図示して説明する。
上記プラズマCVD法に使用する堆積膜形成装置の一例を図2の模式図に示す。図2に示す堆積膜形成装置は、主として堆積膜形成容器100、排気装置200、原料ガス供給手段300から構成される。
原料ガス供給手段300には、ボンベ301〜305、供給バルブ306〜310、圧力調整器311〜315、1次バルブ316〜320、マスフローコントローラー321〜325、2次バルブ326〜330が設けられる。原料ガスはボンベ301〜305に充填され、供給バルブ306〜310を介して、圧力調整器311〜315によって、例えば0.2MPa程度の圧力に調整される。更に、バルブ401、配管402、バルブ403、ガス供給路404を通って堆積膜形成容器100へ導入されるようになっている。
堆積膜形成容器100には、排気配管405、スロットルバルブ406、排気バルブ407を介して排気装置200が接続される。排気装置200にはメカニカルブースターポンプ201とロータリーポンプ202が設けられ、堆積膜形成容器100内部を真空排気可能となっている。
堆積膜形成容器100には、図3の縦断面の模式図、図4の横断面の模式図に示すように、架台121上にベース板136を介して真空容器101が設置される。真空容器101内の概略中央には導電性の基体122を保持するための保持部材123と、保持部材123の内側に、基体122を所望の温度に加熱するヒーター124とが設けられている。また、ヒーター124がプラズマに曝されないように、基体上部を覆うキャップ125が設けられる。真空容器101は上蓋126、ベース板136とシール部材(図示せず)によって気密に保持される。真空容器101の周りには真空容器101と同心円上に複数の電極127が設けられ、各電極127は分岐板128を介してマッチングボックス423と接続され、更に高周波導入ケーブル422によって高周波電源421へと接続される。電極127の周囲には高周波シールド129が設けられ、これによって高周波電源421からの高周波電力が印加された電極127からの放電や、これにより生成されるグロー放電が真空容器外へ漏洩するのを防止している。
真空容器101の底部のベース板136には排気口130が、基体と同心円上に複数が設けられ、これらは排気配管405に集合される。一方、排気口130の配置円の外側の真空容器内に、基体と同心円上に複数のガス導入管131が設けられ、これらはガス供給路404を介して原料ガス供給手段300に接続される。ガス導入管131には複数のガス放出口(図示せず)が設けられ、真空容器101内に原料ガスを供給するようになっている。
このような堆積膜形成装置を用いてプラズマCVD法による光導電層や表面層の形成方法について具体的に説明する。
まず、ベース板136に真空容器101をシール部材を介して固定し、予め脱脂洗浄した基体122を保持部材123に設置しキャップ125をした後、真空容器101にシール部材を介して上蓋126を設置する。次に、排気装置200を駆動し、バルブ407を開いて真空容器101内を排気する。真空計111の表示を見ながら、真空容器101内の圧力が所定の圧力、例えば1Pa以下の圧力になったところで、ヒーター124に電力を供給し、基体122を所定の温度、例えば50℃から350℃に加熱する。このとき、原料ガス供給手段300より、Ar、He等の不活性ガスを真空容器101に供給して、不活性ガス雰囲気中で加熱を行うこともできる。
次に、原料ガス供給手段300より堆積膜形成に用いる原料ガスを真空容器101に供給する。具体的には、必要に応じ供給バルブ306〜310、1次バルブ316〜320、2次バルブ326〜330を開き、マスフローコントローラ321〜325に流量設定を行う。各マスフローコントローラの流量が安定したところで、圧力計111の表示を見ながらスロットルバルブ406を操作し、真空容器101内の圧力が所定の圧力になるように調整する。真空容器内が所定の圧力になったところで、高周波電源421より高周波電力を印加すると同時にマッチングボックス423を操作し、真空容器101内にプラズマ放電を生起する。その後、速やかに高周波電力を所望の電力に調整し、堆積膜の形成を行う。
所定の堆積膜形成後、高周波電力の印加を停止し、供給バルブ306〜310、1次バルブ316〜320、2次バルブ326〜330、バルブ402、403を閉じ、原料ガスの供給を停止する。これと同時に、スロットルバルブ406を開き真空容器内を1Pa以下の圧力まで排気し、堆積膜の形成工程を終了する。
以上の工程により堆積膜の形成工程を終了するが、複数の層、例えば、電荷注入阻止層、光導電層、表面層などを形成する場合、それぞれの層の形成条件を設定して上記の手順を反復して形成することができる。原料ガス流量や、圧力等の条件を一定の時間をかけて変化させて、中間層の形成を行うこともできる。総ての堆積膜形成が終わった後、リークバルブ(図示せず)を開き、真空容器101内を大気圧として、基体122を取り出す。
次に本発明の電子写真用感光体のスパッタリング法を用いた製造方法について具体的な装置を図示して説明する。
スパッタリング法に使用する堆積膜形成装置の一例を図5の模式図に示す。図5に示す堆積膜形成装置は、主として、反応炉5100と、投入炉5200とから構成される。
反応炉5100には、反応容器5108、反応ガスノズル5103、回転軸5104、スパッタガス導入管5105、カソード5102が設けられる。
反応容器5108は基準電位点に接続され、バルブ5117を通して排気装置(図示せず)に接続されて、内部を気密に保持できるようになっている。反応容器内には基体122を載置し、回転軸5104によって支持されるホルダー5113が設けられる。ホルダー5113内にはヒーター5114が設けられ、基体122を所望の温度に加熱することができるようになっている。
回転軸5104は、反応容器外においてモーター5118に接続され、回転軸シール5119により回転可能に支持される。
反応ガスノズル5103には、反応容器内に反応ガスを供給するガス放出孔5116が備えられ、バルブ5115を通して、原料ガス供給手段(図示せず)に接続される。原料ガス供給手段は、図3に示した原料ガス供給手段300と同様のものであってもよい。
カソード5102は絶縁部材5107を介して反応容器5108に設置され、外部電源5109に接続される。電源5109は図において直流電源を示しているが、周期的に印加極性を反転する機能をもつ電源や、高周波電源を用いることもできる。カソード5102には、ターゲット5106と、これと平行な磁界を形成するように対をなして配置される永久磁石5129、5130とが設けられ、いわゆるマグネトロンスパッタリングを行う構成をとっている。高温になるターゲット5106の溶融を防止するため冷却水を循環させる冷却水配管5131、5132が設けられ、更に、反応容器とターゲット間の放電を回避するシールド5111が設けられる。
スパッタガス導入管5105は、ターゲット5106近傍に開口を有して設置され、バルブ5110を介して、アルゴン(Ar)等のスパッタガスの供給手段(図示せず)に接続される。
投入炉5200には、真空容器5201、アクチュエータ5203、扉5202が設けられる。真空容器5201は、ゲートバルブ5101によって反応容器5108と隔離するように設けられ、バルブ5205を介して排気装置(図示せず)によって、反応容器5108とは個別に真空状態が形成されるようになっている。更に、真空容器には、バルブ5204を介してベント(図示せず)に接続され、内部を排気可能としている。
アクチュエータ5203はシャフト5207が真空シール5206によって上下動可能に真空容器5201に支持される。シャフト5207の先端には基体を支持可能なチャッキング機構5208が設けられ、ゲートバルブ5101を開きシャフト5207を伸縮させることにより基体122を反応容器5108と真空容器5201の間で搬送可能となっている。
このような堆積膜形成装置を用いて光導電層や表面層を形成する方法を説明する。
まず、ゲートバルブ5101を閉成し、反応容器5108と真空容器5201とを遮断した後、バルブ5117を開いて排気装置により反応容器5108内部を排気する。同時に光導電層を形成した基体122を扉5202より投入炉5200に投入し、チャッキング機構5208にセットする。次に扉5202を閉じ、バルブ5205を開いて投入炉5200内部を排気する。反応容器5108、投入炉5200内部が共に、例えば0.1Pa以下の真空状態になったところで、ゲートバルブ5101を開き、アクチュエータ5203を操作して、シャフト5207を伸長し、基体122を反応容器5108内のホルダー5113に設置する。チャッキング機構5208を開き基体122の支持を解除し、シャフト5207を縮少した後、チャッキング機構5208を真空容器5201内に収納し、ゲートバルブ5101を閉成する。
この状態で必要に応じヒーター5114に通電し基体122を所望の温度に加熱する。基体122が所望の温度になった後、スパッタガス及び反応ガスをそれぞれバルブ5110、5115を開いて反応容器5108内に供給し、反応容器5108内が所定の圧力になった時点で、電源よりカソード5102に電力を印加してグロー放電を生起させる。グロー放電により生成されたイオンがターゲット物質を放出し、反応ガスから基体上に堆積膜を形成させる。このとき、モーター5118の回転により回転軸5104を回転し、基体122の周方向に均一に堆積膜を形成させる。
所望の堆積膜形成後、電源5109からの電力の供給を停止し、堆積膜の形成工程を終了する。
複数の領域からなる表面層を形成するには、反応ガス種、スパッタガス種、圧力、基板温度等の条件を変更して設定し、上記工程を反復することができる。また、領域間に漸変領域を設ける場合には、グロー放電を維持した状態で、ガス、圧力、基板温度等の条件を、連続的に変化させて形成することができる。
総ての堆積膜形成が終わった後、バルブ5110、5115を閉じ、反応ガス、スパッタガスの供給を停止し、ヒーター5114の通電を止め、反応容器5108内を、例えば0.1Pa以下の圧力まで排気した後、ゲートバルブ5101を開成する。ここで、アクチュエータ5203を駆動しシャフト5207を伸長してチャッキング機構5208により基体122を保持した後、再びシャフト5207を短縮し、基体122を真空容器5201内に搬送する。ゲートバルブ5101を閉成した後、バルブ5204を開き、真空容器5201内を大気圧とし、扉5202を開いて、基体122を取り出し、電子写真用感光体の製造を終了する。
上記の電子写真用感光体の製造において、図2から図4に示すプラズマCVD法による堆積膜形成装置を用いて光導電層を形成した後、図5に示すスパッタリング法による堆積膜形成装置を用いて表面層を形成することもできる。また、光導電層を形成後、真空を維持可能な搬送手段により基体を搬送し、表面層を形成することもできる。
以下に、本発明のを具体的に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
導電性の基体として口径80mm、長さ358mm、肉厚3mmのアルミニウム材料の表面に鏡面加工を施したシリンダーを用い、光導電層、表面層を順次形成して電子写真用感光体を作製した。
光導電層は図2から図4に示す堆積膜形成装置を用いてプラズマCVD法によって表1に示す条件で形成した。ここで高周波電力は周波数105MHzを使用した。
表面層は図5に示す装置を用いマグネシウムをターゲットとし、フッ素ガス(F2)を反応ガスとする反応性スパッタリング法によってフッ化マグネシウムからなる層を形成した。第1の領域の形成条件変更し結晶化度を5通りに変化させ成膜し、一旦放電を切った後、第2の領域の形成条件は一定にして表面層(試料1から5)を作製した。カソードに印加した電源は、アドバンストエナジー社製、Pinnacle Plus 5kW電源により、セルフランモードにて周波数200kHz、リバースタイムを2.0μsに設定しパルス印加を用いた。第1の領域の共通の形成条件と、第2の領域の形成条件を表2に示す。第1の領域の異なる試料1から5の形成条件を表3に示す。
作製した試料(電子写真用感光体)を以下の電子写真装置に装着し、画像特性評価を以下のように行なった。
デジタル複写機(キヤノン(株)社製、iR6000)の改造機を用いた。この複写機はクリーニングローラーの部材をマグネットローラーからウレタンゴムのスポンジローラーに変更し、スポンジローラーは感光体に5mmのニップ幅をもって当接し、感光体回転に対して順方向、120%の周速差で回転するように改造した。また、画像露光用レーザーの発振波長は405nmとした。
[帯電能]
上記改造機に電子写真用感光体を設置し、画像露光(レーザー)を切った上で、帯電器に+6kVの高電圧を印加してコロナ帯電を行った。このとき電子写真用感光体上に発生する表面電位(即ち暗部帯電電位)を現像器に相当する位置に表面電位計(TREK社製 Model334)を設置して測定した。帯電能は数値が大きいものほど優れている。
[光感度]
上記改造機に電子写真用感光体を設置し、現像器位置での感光体の暗部帯電電位が450Vとなるように帯電器に印加する帯電電流を調整した。この帯電電流を維持したまま、画像露光(レーザー)を照射し、現像器位置での明部表面電位が50Vとなるようにレーザー強度を調整した。このときのレーザー強度をもって光感度とした。光感度は数値が小さいものほど優れている。
[残留電位]
光感度の測定と同様にして、現像器位置での感光体の暗部帯電電位が450Vとなるように帯電器に印加する帯電電流を調整した後、強露光(例えば、1.2μJ/cm2)のレーザーを照射し、明部表面電位を残留電位とした。残留電位は数値が小さいものほど優れている。
[画像流れ]
上記改造機の原稿台に6ポイント全面ひらがな文字よりなるチャートの原稿を置き、30℃、湿度80%RHの環境下で得られた画像を目視および15倍ルーペを用いて観察し、画像流れの発生の有無を調べ、以下のように評価した。
◎:画像流れは認められない
○:ルーペで画像流れが確認できるが、目視では認識できない
△:目視でも画像流れが認識できるが、軽微で実用上問題なし
×:画像流れが顕著で、文字の判読が困難な個所がある。
[ゴースト]
光感度の測定と同様にして、現像器位置での感光体の暗部帯電電位が450Vとなるように帯電器に印加する帯電電流を調整した後、中間調原稿の端部に反射濃度1.1、直径5mmの黒丸を貼り付けたものを原稿台に設置しコピー画像を形成した。上記中間調原稿は、反射濃度計(X−Rite Inc.製 Spectrodensitomater 500シリーズ)を用いて計測した反射濃度0.23のものである。得られた中間調画像上に認められる直径5mmの黒丸が形成するゴースト部分と、中間調部分の反射濃度の差を前記反射濃度計を用いて計測した。ゴーストは数値が小さいものほど優れている。
以上の各項目については、それぞれ、画像形成初期と、気温30℃、湿度80%の環境で、原稿のA4用紙500万枚の画像形成後、再度評価し、耐久試験を行った。
[結晶化度]
またそれぞれの試料において、シリコンウエハ上に第1の領域と同一の条件で堆積膜成膜したサンプルを作製してX線回折測定を以下の測定条件により行い、上記の数式により結晶化度を算出した。
作製したサンプルを粉末X線回折装置(リガク社製RINT−1500)を用い、2θ/θスキャン法で、発散スリット、散乱スリットに共に0.5°、受光スリット0.15mmとし、スキャン速度=毎分1°、ステップ角=0.02°の条件で測定した。得られた回折パターンを、多重波形分離し結晶化度を算出した。
第1の領域の結晶化度が50%以下の実施例1、50%を超えるもの比較例1として評価した。第2の領域の結晶化度は、いずれの試料も89〜90%であった。
試料1の初期画像形成時の値を基準(1.00)として、各試料における帯電能、残留電位、光感度、ゴーストを相対評価した。結果を表4に示す。
帯電能では、0.9以上、残留電位では3.00以下であれば、悪環境下においても良好な画像が得られる幅広い画像形成に適した特性を有するといえる。光感度では、1.20以下であれば実用上問題がなく、1.10以下であれば、悪環境下においても良好な画像が得られる幅広い画像形成に適した特性を有するといえる。
ゴーストについても、2.00以下であれば実用上問題がなく、1.20以下であれば、殆どの場合画像上で認識されることはなく、画像形成に適した特性を有するといえる。
結果から、第1の領域の結晶化度が50%以下の本発明の電子写真用感光体(試料1〜3)ではいずれの項目においても良好な結果が得られた。一方、試料4、5のように第1の領域の結晶化度が50%を超えると、特に、耐久試験後において光感度、画像流れ、ゴーストの悪化が見られた。画像流れは、試料を常温常湿環境に置いて再度評価を行ったが、画像の回復は見られず、光導電層と表面層の界面において発生したものと推測される。
[実施例2、比較例2]
第1の領域の形成条件は一定にし、第2の領域の形成条件を変更し結晶化度を5通りに変化させ成膜し、第2の領域の形成条件は一定にして表面層(試料6から10)を作製した。第1の領域の形成条件と、第2の領域の共通の形成条件を表5に示す条件とし、第2の領域の形成条件を表6に示す条件とした他は、実施例1と同様にして電子写真用感光体を作製した。
作製した試料(電子写真用感光体)について実施例1と同様にして評価を行った。第2の領域の結晶化度が70%以上の実施例2、70%を未満のもの比較例2として評価した。第1の領域の結晶化度は、実施例、比較例共に31〜33%であった。
試料1の初期画像形成時の値を基準(1.00)として、各試料における帯電能、残留電位、光感度、ゴーストを相対評価した。結果を表7に示す。
結果から、第2の領域の結晶化度が70%以上の本発明の電子写真用感光体(試料8、9、10)ではいずれの項目においても良好な結果が得られた。一方、試料6、7のように第2の領域の結晶化度が70%未満であると、特に、画像流れの悪化が顕著であった。
試料6、7の電子写真用感光体を常温常湿環境に取り出し、再度画像流れの評価を行ったところ、画像流れは急速に回復し、この画像流れは最表面で発生していることが判った。
以上、実施例1、2および比較例1、2の結果から、高温高湿環境下において、画像流れ、光感度、ゴーストの悪化を抑制するためには、アモルファス構造の第1の領域と結晶構造の第2の領域を積層した表面層が効果的であることがわかる。
[実施例3]
第1の領域と第2の領域の間に中間領域を形成した表面層を有する電子写真用感光体を作製した。光導電層の形成条件を表8に示す形成条件とし、表面層の形成条件を表9に示す形成条件とした。表面層全体の層厚を1.0μmとし、第2の層領域の層厚を一定とし、第1の領域と中間領域の厚さを変化させた表面層(試料11〜15)とした他は、実施例1と同様にして電子写真用感光体を作製した。
作製した試料(電子写真用感光体)を実施例1と同様にして評価を行った。第1の領域の結晶化度は、11〜13%、第2の領域の結晶化度は、84〜85%、中間領域の結晶化度は、56〜57%であった。
試料1の初期画像形成時の値を基準(1.00)として、各試料における帯電能、残留電位、光感度、ゴーストを相対評価した。結果を表10に示す。表10中、膜厚比率は表面層の全膜厚に対する第1の領域の膜厚の比率を示す。
結果から、試料11〜15は比較例1の試料と比較すると、耐久試験後の画像流れ、光感度の悪化が改善されていることがわかる。また、比較例2の試料と比較すると画像流れが大幅に改善されていることがわかる。
また、表面層の全膜厚に対する第1の領域の膜厚の比率が5.0%以上40%以下の範囲(試料12〜14)とすることで、ゴーストも効果的に抑制されていることがわかる。これは悪化の影響が光感度よりもゴーストによる画像上の変化が顕著に表れるためと思われる。
[実施例4]
表面層の形成条件を表11に示す形成条件とし、表面層全体の層厚を1.0μmとし、第1の層領域の層厚を一定とし、第2の領域と中間領域の厚さを変化させた表面層(試料16〜20)とした他は、実施例3と同様にして電子写真用感光体を作製した。
作製した試料(電子写真用感光体)を実施例1と同様にして評価を行った。第1の領域の結晶化度は、19〜21%、第2の領域の結晶化度は、79〜80%、中間領域の結晶化度は、61〜62%であった。
試料1の初期画像形成時の値を基準(1.00)として、各試料における帯電能、残留電位、光感度、ゴーストを相対評価した。結果を表12に示す。表12中、膜厚比率は表面層の全膜厚に対する第2の領域の膜厚の比率を示す。
結果から、試料16〜20は比較例1の試料と比較すると、耐久試験後の画像流れ、光感度の悪化が改善されていることがわかる。また、比較例2の試料と比較すると画像流れが大幅に改善されていることがわかる。
また、表面層の全膜厚に対する第2の領域の膜厚の比率が5.0%以上の範囲(試料16〜19)とすることで、ゴーストも効果的に抑制されていることがわかる。これは悪化の影響が光感度よりもゴーストによる画像上の変化が顕著に表れるためと思われる。
[実施例5]
光導電層の形成条件を表13に示す形成条件とし、表面層の形成条件としてターゲットをシリコンとし、窒素ガス(N2)を反応ガスとし、RF電源を用い、表14に示す条件として窒化珪素からなる表面層を作製した他は、実施例1と同様にして電子写真用感光体を作製した。
作製した試料(電子写真用感光体)を実施例1と同様にして評価を行った。試料1の初期画像形成時の値を基準(1.00)として、各試料における帯電能、残留電位、光感度、ゴーストを相対評価した。結果を表17に示す。
[実施例6]
表面層の形成条件としてターゲットをマグネシウムとし、酸素ガス(O2)を反応ガスとし、DC電源を用い、表15に示す条件で、酸化マグネシウムからなる表面層を作製した他は、実施例1と同様にして電子写真用感光体を作製した。
作製した試料(電子写真用感光体)を実施例1と同様にして評価を行った。試料1の初期画像形成時の値を基準(1.00)として、各試料における帯電能、残留電位、光感度、ゴーストを相対評価した。結果を表17に示す。
[実施例7]
表面層の形成条件としてターゲットをランタンとし、フッ素ガス(F2)を反応ガスとし、DC電源を用い、表16に示す条件で、フッ化ランタンからなる表面層を作製した他は、実施例1と同様にして電子写真用感光体を作製した。
作製した試料(電子写真用感光体)を実施例1と同様にして評価を行った。試料1の初期画像形成時の値を基準(1.00)として、各試料における帯電能、残留電位、光感度、ゴーストを相対評価した。結果を表17に示す。
結果から、窒化珪素、酸化マグネシウム、フッ化ランタンにおいても、第1の領域と第2の領域を有する表面層とすることにより良好な特性を有することが明らかである。
また、実施例1の結果と比較することにより、表面層の材料としてフッ化マグネシウムを用いた場合には、窒化珪素、酸化マグネシウム、フッ化ランタンに比べて特にゴーストの発生が効果的に抑制されることがわかる。