JP5349936B2 - 電子写真感光体および電子写真装置 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真感光体(電子写真用の感光体)および電子写真装置に関するものである。
従来から、ケイ素原子を主成分とする非単結晶堆積膜(たとえば、水素原子および/またはハロゲン原子で補償されたアモルファスシリコン堆積膜)を有する感光体は、高性能、高耐久および無公害な電子写真用の感光体として提案され、実用化されている。
このようなアモルファスシリコン堆積膜を有する電子写真感光体は、さまざまな性能の要求に合わせ、さまざまな層構成を有するものが提案されている。その各種の層の中でも、表面層は、電子写真感光体の耐傷性、光透過性および耐湿性など、さまざまな特性を得るための重要な層として認識されている。
近年、複写機などの電子写真装置の高精細化が進むにつれ、画像露光光の短波長化が図られるようになってきている。画像露光光の短波長化が図られるようになると、電子写真感光体の表面層に対しては、短波長光を吸収少なく透過しうる広いバンドギャップであることも要求されるようになってきた。
短波長の画像露光光に対応する表面層として、特許文献1には、ケイ素原子と窒素原子とを主成分とし、さらに酸素原子および炭素原子を含有するアモルファス材料で形成された表面層の例が開示されている。特許文献1に開示された表面層は、380〜500nm付近の短波長の光の吸収がほとんどなく、さらに高い耐湿性を有していると特許文献1には記載されている。
また、特許文献2には、耐湿性を向上させる工夫として、電子写真感光体の内部にヒーターを設け、画像形成時に電子写真感光体の表面をヒーターで加熱することで、電子写真感光体の表面への水分の吸着を防止し、画像流れを抑制する技術が開示されている。
特開2006−133522号公報 特開平4−264467号公報
近年では、電子写真装置のフルカラー化に伴い、より細密な画像形成が要求されるようになってきており、特に、銀塩写真と同等の画質が電子写真にも要求されるようになってきている。
電子写真の画質を劣化させる要因として重視されるものの1つに、高湿環境下での画像流れの問題が挙げられる。
画像流れの発生機構は特許文献2にも記載されているが、近年では、表面層に用いられる材料の内部の結合力や、表面層中に存在する欠陥との関連も指摘されている。
画像流れは、通常の文字出力ではほとんど問題のない出力画像が得られるレベルであっても、ドット再現性は損なわれてしまう場合があり、その場合、ハーフトーン表現において階調性が損なわれやすい。こうした問題は、画像露光光の短波長化が図られた電子写真装置では、特にその影響が大きく、フルカラー画像において、そのハーフトーン部分に色ムラが生じるような場合がある。特に、電子写真装置の起動直後は、電子写真装置内の温度が安定しておらず、画像流れが発生しやすい。
画像流れを抑制するために、高温高湿環境下で使用されることのある電子写真装置においては、ヒーターを低電力で常時動作させ、電子写真感光体の表面を予熱状態に保つことが行われてきた。
しかしながら、近年、消費電力削減の要求が高まるにつれ、このようなヒーターの設定は採用しづらくなりつつある。
特許文献1に開示された電子写真感光体も、夜間にはヒーターの電源を切り、電子写真装置の起動と同時にヒーターの電源を入れるような使用環境で用いられる場合は、起動直後の出力画像で、画像流れによる色ムラが発生することがあるのが現状である。
以上のように、380〜500nm付近の短波長の画像露光光が用いられる高精細な電子写真装置用の電子写真感光体に対しては、画像流れ特性(画像流れの生じにくさ)のいっそうの向上が要求されている。
本発明は、上記のような要求に応え、画像流れが生じにくく、高品位な画像を長期に渡って出力することのできる電子写真感光体、および、該電子写真感光体を有する電子写真装置を提供することを目的とする。
本発明は、導電性の基体と、該基体上に形成された光導電層と、該光導電層上に形成された表面層とを有する電子写真感光体において、
該光導電層が、ケイ素原子を主成分とするアモルファス材料で形成された層であり、
該表面層が、主として、アルミニウム原子、窒素原子および酸素原子で構成されており、
該表面層中のアルミニウム原子に対する窒素原子の含有量が、80原子%以上95原子%以下であり、
該表面層中のアルミニウム原子に対する酸素原子の含有量が、1原子%以上30原子%以下であり、
該表面層が、水素原子およびハロゲン原子を含有しない
ことを特徴とする電子写真感光体である。
また、本発明は、上記電子写真感光体、帯電器、画像露光装置および現像器を有する電子写真装置である。
本発明によれば、表面層中の欠陥が効果的に補償され、かつ、長期に渡って画像出力を繰り返した場合であっても表面層中の欠陥が新たに生じにくく、そして、光感度および耐傷性にも優れた電子写真感光体を提供することができる。
その結果、本発明によれば、画像流れが生じにくく、高品位な画像を長期に渡って出力することのできる電子写真感光体、および、該電子写真感光体を有する電子写真装置を提供することができる。
本発明の電子写真感光体は、上述のとおり、導電性の基体と、該基体上に形成された光導電層と、該光導電層上に形成された表面層とを有する電子写真感光体であって、
該光導電層が、ケイ素原子を主成分とするアモルファス材料で形成された層であり、
該表面層が、主として、アルミニウム原子、窒素原子および酸素原子で構成されており、
該表面層中のアルミニウム原子に対する窒素原子の含有量が、80原子%以上95原子%以下であり、
該表面層中のアルミニウム原子に対する酸素原子の含有量が、1原子%以上30原子%以下であり、
該表面層が、水素原子およびハロゲン原子を含有しない
ことを特徴としている。なお、ケイ素原子を主成分とするアモルファス材料のことを、以下「a−Si」ともいう。
表面層は、水素原子およびハロゲン原子を含有しない(実質的に含有しない)ことが好ましい。ここで、表面層が水素原子およびハロゲン原子を含有しない(実質的に含有しない)とは、これらの原子が積極的には用いられずに表面層が形成されているということを意味している。
さらに、光導電層と表面層との間には、ケイ素原子および窒素原子を主成分とするアモルファス材料で形成された中間層、または、ケイ素原子および炭素原子を主成分とするアモルファス材料で形成された中間層を有させることが好ましい。なお、ケイ素原子および窒素原子を主成分とするアモルファス材料のことを、以下「a−SiN」ともいう。また、ケイ素原子および炭素原子を主成分とするアモルファス材料のことを、以下「a−SiC」ともいう。
中間層をa−SiNで形成する場合は、ケイ素原子に対する窒素原子の含有量を10原子%以上55原子%以下の範囲とすることが好ましい。
中間層をa−SiCで形成する場合は、ケイ素原子に対する炭素原子の含有量を10原子%以上100原子%以下の範囲とすることが好ましい。
以下、図面を用いて電子写真感光体の構成について詳細に説明する。
図1は、本発明の電子写真感光体の層構成の一例を模式的に示した図である。図1に示した電子写真感光体10は、アルミニウムなどで形成された円筒状で導電性の基体13と、基体13上に形成された光導電層12と、光導電層12上に形成された表面層11とを有している。
基体13、光導電層12および表面層11は以下のように構成される。
・表面層
表面層11は、主として、アルミニウム原子(Al)、窒素原子(N)および酸素原子(O)(以下「AlNO」ともいうが、各原子の組成比を表すものではない。)で構成されている。窒素原子は、アルミニウム原子と結合することによって、バンドギャップの広い表面層用の材料を形成するという効果を有する。表面層として必要な光透過率を有するためには、表面層中のアルミニウム原子に対する窒素原子の含有量(以下「N含有量」ともいう。)は、80原子%以上である必要がある。N含有量が80原子%未満では、バンドギャップが極端に狭まり、特に短波長(たとえば、波長が380〜500nm)の画像露光光を使用する場合、光導電層を形成するアモルファスシリコン材料で十分な光感度を得るための光透過率を得ることが難しくなる。
一方、N含有量が多くなるほど、表面層の硬度が低下する傾向がある。表面層の硬度が低下しすぎると、電子写真感光体の表面に傷が発生しやすくなるなど、電子写真感光体の耐久性が低下してしまう。こうした傾向は、N含有量が95原子%を超えると顕著になるため、本発明において、N含有量は、95原子%以下である。
本来、窒化アルミニウム(AlN)は、アルミニウム原子に対する窒素原子の含有量が100原子%となる。本発明において、アルミニウム原子に対する窒素原子の含有量が95原子%以下の範囲で最適値が得られたということは、併せて酸素原子が含有されることによる効果であると推測される。
本発明において、酸素原子の効果は、画像流れの抑制効果として現れる。これは、表面層の堆積膜が形成される過程で、酸素原子が窒素原子と選択的に置換してアルミニウム原子と結合しやすい性質により、アルミニウム原子と窒素原子との結合で形成されうる表面層中の欠陥を効果的に補償するためであると考えられる。
酸素原子を含有させることにより、表面層の化学的な安定性が増し、電子写真感光体の表面の劣化が起きにくくなることで、画像流れの発生が効果的に抑制されるものと考えられる。
こうした効果は、微量の酸素原子でも十分に得られ、アルミニウム原子に対する酸素原子の含有量(以下「O含有量」ともいう。)が1原子%以上であれば効果が見込める。一方、O含有量が30原子%を超えると、逆に画像流れが発生しやすくなる傾向が現れる。
これはAlNに対して、酸化アルミニウム(AlO)そのものが画像流れを発生しやすい傾向をもっているためと考えられる。
すなわち、O含有量が30原子%を超えると、画像流れしやすいAlOの性質が顕在化するものと推測される。
上述のAlNOは、水素原子(H)やハロゲン原子(X)を実質的に含有しないことが好ましい。
上述したように、水素原子(H)やハロゲン原子(X)は、表面層中に含有されることにより、堆積膜中の欠陥を補償する効果が知られている。
しかしながら、水素原子やハロゲン原子とアルミニウム原子との結合力は弱く、長期間に渡って画像形成を繰り返した場合、主として帯電工程の影響で、その結合が切れてしまうことが起こる。その結果、長期に渡る使用では、次第に画像流れが発生しやすくなる傾向にある。
したがって、画像流れを防止するためには、アルミニウム原子に対する水素原子の含有量(以下「H含有量」ともいう。)およびアルミニウム原子に対するハロゲン原子の含有量(以下「X含有量」ともいう。)はどちらも少ないほうがよく、実質的にゼロであること(含有しないこと)が好ましい。
表面層11の層厚は、機械的な特性および電子写真上の電気的な特性の点から、適宜決定されるが、表面保護の機能の確保の観点から、0.1μm以上であることが好適であり、また、残留電位増加の抑制の観点から、3μm以下であることが好適である。
本発明の電子写真感光体の表面層は、上述のとおり、AlNOで形成されることを特徴とする。その表面層の形成方法としては、プラズマCVD法、真空蒸着法、スパッタリング法などの公知の堆積膜形成方法を採用することができる。それら各種の形成方法の中でも、スパッタリング法が好ましい。スパッタリング法の中でも、アルミニウム原子をターゲットとして、窒素ガス(N)および酸素ガス(O)を導入する反応性スパッタリング法は、組成比を簡単に調整できるなどの理由から特に好ましい。また、水素原子およびハロゲン原子を含まない表面層を形成するためにも、上記の反応性スパッタリング法が特に好ましい。
・光導電層
本発明の電子写真感光体の光導電層12は、上述のとおり、ケイ素原子(Si)を主成分とするアモルファス材料(a−Si)で形成される。
a−Siは、硬度や安定性に優れるため、上述の表面層11と組み合わせることで、耐久性に優れた電子写真感光体を提供することができる。
本発明では、a−Si中の未結合手を補償するため、水素原子に加えて、ハロゲン原子を含有させることができる。光導電層12は表面層11に保護されるため、これらの原子を光導電層12に含有させても、電子写真感光体の安定性を損なうことはない。
光導電層12中の水素原子およびハロゲン原子の含有量の合計は、ケイ素原子、水素原子およびハロゲン原子の和に対して10原子%以上であることが好ましく、特には、15原子%以上であることがより好ましい。また、光導電層中の水素原子およびハロゲン原子の含有量の合計は、ケイ素原子、水素原子およびハロゲン原子の和に対して30原子%以下であることが好ましく、特には、25原子%以下であることがより好ましい。
また、光導電層中のケイ素原子の含有量は、光導電層中の全原子の和に対して60原子%以上90原子%以下であることが好ましく、65原子%以上85原子%以下であることがより好ましい。
光導電層12には、必要に応じて、導電性を制御するための原子を含有させることもできる。導電性を制御するための原子は、光導電層12中にまんべんなく均一に分布させてもよいし、表面層の層厚方向には不均一に分布させている部分があってもよい。
導電性を制御するための原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができる。たとえば、p型の導電特性を与える周期表13族に属する原子(以下「第13族原子」ともいう。)や、n型の導電特性を与える周期表15族に属する原子(以下「第15族原子」ともいう。)を用いることができる。
第13族原子としては、ホウ素原子(B)、アルミニウム原子(Al)、ガリウム原子(Ga)、インジウム原子(In)、タリウム原子(Tl)などが挙げられ、これらの中でも、ホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子が好適である。
第15族原子としては、リン原子(P)、ヒ素原子(As)、アンチモン原子(Sb)、ビスマス原子(Bi)などが挙げられ、これらの中でも、リン原子、ヒ素原子が好適である。
光導電層12中の導電性を制御するための原子の含有量は、ケイ素原子に対して1×10−2原子ppm以上であることが好ましく、特には5×10−2原子ppm以上であることがより好ましく、さらには1×10−1原子ppm以上であることがより好ましい。一方、導電性を制御するための原子の含有量は、1×10原子ppm以下であることが好ましく、特には5×10原子ppm以下であることがより好ましく、さらには1×10原子ppm以下であることがより好ましい。
光導電層12の層厚は、所望の電子写真特性が得られること、経済的効果などの観点から適宜決定されるが、帯電部材への通過電流量を抑制して劣化を抑える観点から、15μm以上であることが好ましく、特に20μm以上であることが好ましい。一方、光導電層中の異常成長部位の大きさを抑える観点から、光導電層12の層厚は、60μm以下であることが好ましく、特には50μm以下であることがより好ましく、さらには40μm以下であることがより好ましい。a−Siの異常成長部位は、水平方向で50〜150μm、高さ方向で5〜20μmになると、電子写真感光体の表面を摺擦する部材へのダメージが無視できなくなったり、出力画像に画像欠陥を生じさせたりする場合がある。
なお、光導電層12は、単一の層で構成してもよいし、キャリア発生層とキャリア輸送層とに分離して複数の層で構成してもよい。
光導電層12をa−Siで形成する方法としては、プラズマCVD法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの公知の堆積膜形成方法が挙げられる。これら各種の形成方法の中でも、原料供給の容易さなどから、プラズマCVD法が好ましい。
以下、光導電層12の形成方法について、プラズマCVD法を例にとって説明する。
プラズマCVD法によって、a−Siで形成された光導電層12を得るには、まず、ケイ素原子供給用の原料ガスと水素原子供給用の原料ガスとを、内部を減圧にしうる反応容器内にそれぞれ所望のガス状態で導入する。ケイ素原子供給用の原料ガスと水素原子供給用の原料ガスとは、同じものであってもよい。そして、該反応容器内にグロー放電を生起させ、導入した原料ガスを分解することによって、所定の位置に設置されている導電性の基体13上に光導電層12を形成すればよい。
ケイ素原子供給用の原料ガスとしては、シラン(SiH)、ジシラン(Si)などのシラン類が好適に使用できる。
また、水素原子供給用の原料ガスとしては、上記シラン類に加えて、水素ガス(H)も好適に使用できる。
また、光導電層12に、上述のハロゲン原子、導電性を制御するための原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子などの原子をさらに含有させる場合には、それぞれの原子を含むガスまたは容易にガス化しうる物質を材料として適宜使用すればよい。たとえば、炭素原子をさらに含有させる場合には、メタン(CH)などが好適に使用でき、ホウ素原子をさらに含有させる場合には、ジボラン(B)などが好適に使用できる。
・基体
基体13は、導電性を有し、その上に形成される光導電層12および表面層11を保持しうるものであれば、特に限定されない。たとえば、アルミニウム、クロム、モリブデン、金、インジウム、ニオブ、テルル、バナジウム、チタン、白金、パラジウム、鉄などの金属や、これらの合金、たとえばアルミニウム合金、ステンレスなどで形成された基体が挙げられる。また、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミドなどの合成樹脂のフィルムもしくはシート、または、ガラス、セラミックなどで形成された電気絶縁性支持体の少なくとも光導電層を形成する側の表面を導電処理したものも、導電性の基体として用いることができる。
図2は、本発明の電子写真感光体の層構成の別の例を模式的に示した図である。図2に示した電子写真感光体10は、円筒状で導電性の基体13と、基体13上に形成された光導電層12と、光導電層12上に形成された中間層14と、中間層14上に形成された表面層11とを有している。
基体13、光導電層12および表面層11に関しては図1に示した電子写真感光体と同様であるので、以下では、中間層14の構成のみを説明する。
・中間層
図2に示したように、光導電層12と表面層11との間には、ケイ素原子および窒素原子を主成分とするアモルファス材料(a−SiN)や、ケイ素原子および炭素原子を主成分とするアモルファス材料(a−SiC)で形成された中間層を設けてもよい。
中間層14を設けることで、光感度の向上させることができる。
a−Siで形成された光導電層12上に直接AlNOで形成された表面層11を設けようとした場合、条件によっては、光導電層12と表面層11との界面で互いの構成元素が交じり合った拡散層が形成される場合がある。拡散層が形成されると、その一部に若干の光吸収を起こす領域が発生し、結果として、光感度が低下する場合がある。
中間層14は、上記のような拡散層の形成を抑制し、光感度の低下を抑える効果を有する。この効果が得られる理由の詳細は、現時点では明確ではないが、a−SiNやa−SiCは、光導電層12を形成するa−Siに比べて化学的安定性が高いことにより、互いの成分の拡散が抑制されるものと推測される。
上記の効果を十分に得るためには、中間層14の組成比を適宜調整することが好ましい。具体的には、中間層14を形成する材料としてa−SiNを採用する場合は、上述のとおり、ケイ素原子に対する窒素原子の含有量を10原子%以上55原子%以下の範囲とすることが好ましい。また、中間層中のケイ素原子および窒素原子の含有量の合計は、中間層中の全原子の和に対して50原子%以上100原子%以下であることが好ましく、60原子%以上90原子%以下であることがより好ましく、70原子%以上80原子%以下であることがより一層好ましい。
また、中間層14を形成する材料としてa−SiCを採用する場合には、上述のとおり、ケイ素原子に対する炭素原子の含有量を10原子%以上100原子%以下の範囲とすることが好ましい。また、中間層中のケイ素原子および炭素原子の含有量の合計は、中間層中の全原子の和に対して50原子%以上100原子%以下であることが好ましく、60原子%以上90原子%以下であることがより好ましく、70原子%以上80原子%以下であることがより一層好ましい。
また、中間層14には、導電性を制御するための原子を含有させてもよい。導電性を制御するための原子としては、上記の光導電層12に含有させることのできる導電性を制御するための原子と同様の原子を使用することができる。
光導電層12上に表面層11を直接設けた場合の光感度の低下は、通常、電子写真感光体の使用の可否を区別するほどの影響を与えるものではない。
しかしながら、中間層14を用いて光感度の低下を抑えることにより、さらに広いプロセス条件で許容度の高い電子写真感光体の特性を実現するとともに、将来のさらなる高速な画像形成条件にも対応可能という優位性を確保することができる。
また、中間層14を形成する方法としては、光導電層12の場合と同様、プラズマCVD法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの公知の堆積膜形成方法が挙げられる。これら各種の形成方法の中でも、光導電層12の形成との連続性や原料供給の容易さなどから、プラズマCVD法が好ましい。
また、プラズマCVD法によって中間層14を形成する方法は、上述のプラズマCVD法によって光導電層12を形成する方法と同様である。
また、上記の層のほかに、光導電層12の下に下部電荷注入阻止層を設けてもよいし、光導電層12の上に上部電荷注入阻止層を設けてもよい。
下部電荷注入阻止層や上部電荷注入阻止層は、光導電層12を構成する材料をベースとして形成することが好ましい。
すなわち、下部電荷注入阻止層や上部電荷注入阻止層を、水素原子やハロゲン原子によって未結合手を終端したa−Siをベースとし、これに13族元素や15族元素などのドーパントを含有させた層とすることにより、層の導電型を制御し、キャリアの注入阻止能を持たせたものを使用することができる。
また、下部電荷注入阻止層は、必要に応じて、炭素原子、窒素原子および酸素原子から選ばれる少なくとも1種の原子を含有させることで応力を調整し、光導電層12の密着性向上の機能を持たせることもできる。
また、中間層14に導電性を制御するための物質を含有させることで、注入阻止機能を兼ね備えさせ、これを上部電荷注入阻止層としてもよい。
これらの層は、電子写真感光体に要求される特性に応じて適宜選択して形成すればよい。
図3は、下部電荷注入阻止層を形成した場合の電子写真感光体の層構成の一例を模式的に示した図である。図3に示した電子写真感光体10は、アルミニウムなどで形成された円筒状で導電性の基体13と、基体13上に形成された下部電荷注入阻止層15と、下部電荷注入阻止層15上に形成された光導電層12と、光導電層12上に形成された中間層14と、中間層14上に形成された表面層11とを有している。
次に、本発明の電子写真感光体の光導電層の形成手順を、プラズマCVD法による堆積膜形成装置を用いて形成する場合を例にとって詳細に説明する。
図4は、電源周波数としてRF帯を用いた高周波プラズマCVD法による堆積膜形成装置の構成の一例を模式的に示した図である。
この堆積膜形成装置は、主として、堆積装置6100、原料ガス供給装置6200、および、反応容器6111内を減圧するための排気装置(不図示)から構成されている。堆積装置6100中の反応容器6111内には、円筒状の基体6112を載置する載置台6110、基体加熱用ヒーター6113、および、原料ガス導入管6114が設置されている。また、高周波電源6120は、高周波マッチングボックス6115を介して反応容器6111を兼ねるカソード電極に接続されている。
反応容器6111は、排気バルブ6118を介して排気装置(不図示)に接続されており、真空排気が可能になっている。
また、6117はリークバルブであり、6119は真空計である。
原料ガス供給装置6200は、原料ガスのボンベ6221〜6226、バルブ6231〜6236、6241〜6246および6251〜6256、ならびに、マスフローコントローラー6211〜6216から構成されている。各原料ガスのボンベは、バルブ6260を介して反応容器6111内のガス導入管6114に接続されている。
また、6261〜6266はレギュレーターである。
この堆積膜形成装置を用いた光導電層の堆堆膜の形成は、たとえば以下のような手順によって行われる。
まず、反応容器6111内に円筒状の基体6112を設置し、たとえば真空ポンプなどの排気装置(不図示)により反応容器6111内を排気する。続いて、基体加熱用ヒーター6113により、基体6112の温度を200℃〜350℃の所定の温度に制御する。
次に、堆積膜形成用の原料ガスを、ガス供給装置6200により流量制御して、反応容器6111内に導入する。そして、真空計6119の表示を見ながら排気バルブ6118を操作し、所定の圧力に設定する。
以上のようにして堆積の準備が完了した後、以下に示す手順で各層の形成を行う。
圧力が安定したところで、高周波電源6120によって所定値に設定された電力を、高周波マッチングボックス6115を通じてカソード電極に供給し、高周波グロー放電を生起させる。放電に用いる周波数は1MHz〜30MHzのRF帯が好適に使用できる。
この放電エネルギーによって反応容器6111内に導入された各原料ガスは分解され、基体6112上に所定のケイ素原子を主成分とする堆積膜が形成される。所定の膜厚の堆積膜の形成が行われた後、高周波電力の供給を止め、ガス供給装置の各バルブを閉じて反応容器6111への各原料ガスの流入を止め、堆積膜の形成を終える。
同様の操作を複数回繰り返すことによって、所定の多層構造の光導電層が形成される。また、形成される堆積膜の均一化を図るために、堆積膜の形成を行っている間は、基体6112を駆動装置(不図示)によって所定の速度で回転させることも有効である。なお、上述のガス種およびバルブ操作は、各々の層の作製条件にしたがって変更が加えられる。
すべての堆積膜の形成が終わった後、リークバルブ6117を開き、反応容器6111内を大気圧として、基体6122を取り出す。
次に、本発明の電子写真感光体の表面層の形成手順を、スパッタリング法による堆積膜形成装置を用いて形成する場合を例にとって説明する。
図5は、反応性ガスを用いたスパッタリング法による堆積膜形成装置の構成の一例を模式的に示した図である。
この堆積膜形成装置は、主として、反応炉5100、および、投入炉5200から構成されている。反応炉5100には、反応容器5108、反応性ガスノズル5103、回転軸5104、スパッタガス導入管5105、および、カソード5102が含まれている。
反応容器5108は、バルブ5117を通して排気装置(不図示)に接続されており、真空排気が可能になっている。基体上に光導電層を形成してなるもの122は、ホルダー5113を介して回転軸5104に設置される。回転軸5104は、回転軸シール5119により回転可能に支持され、大気下で、モーター5118と接続されている。堆積膜形成中、モーター5118によって基体上に光導電層を形成してなるもの122(以下単に「基体122」ともいう。)を回転させることにより、基体122上には全周にわたって均一な堆積膜が形成される。
回転軸5104の外側には、ホルダー5113に内包される形状のヒーター5114が設置され、基体122を所望の温度に加熱することができる。
反応性ガスノズル5103は、ガス放出孔5116を備え、バルブ5115を通して、原料ガス供給装置(不図示)に接続されており、窒素ガス(N)や酸素ガス(O)などからなる反応性ガスを供給する。なお、原料ガス供給装置には、図4に示した堆積膜形成装置の原料ガス供給装置6200と同様のものを使用することができる。
カソード5102は、絶縁部材5107を介してそれぞれ反応容器5108に支持されており、その外周は、シールド5111によってプラズマから隔離されている。また、カソード5102は、外部から冷却水配管5131、5132を通してスパッタリングプロセス中に冷却することが可能になっている。
また、カソード5102は、反応容器5108の外部で電源5109に接続されている。カソード5102は、アルミニウムからなるターゲット5106を備えており、さらに磁石5129、5130が設置されている。磁石5129、5130は、基体122の長さに対応して、その配置を適宜調整することが可能になっていることにより、基体122の母線方向に均一な膜を形成することができるようになっている。
カソード5102の近傍には、スパッタガス導入管5105が設置されており、また、バルブ5110を介して原料ガス供給装置(不図示)に接続されており、アルゴンガス(Ar)などのスパッタリング用のガスが導入される。
投入炉5200は、真空容器5201、アクチュエーター5203、および、扉5202からなる。真空容器5201は、ゲートバルブ5101によって反応容器5108と連通している。また、真空容器5201は、バルブ5205を介して接続されている排気装置によって、反応容器5108とは個別に真空排気が可能になっている。
アクチュエーター5203のシャフト5207は、真空シール5206によって真空容器5201に支持されている。シャフト5207には、チャッキング機構5208が設置されており、真空中で基体122を保持し、ゲートバルブ5101を開き、シャフト5207を伸縮させることで、基体122を反応炉5100と投入炉5200との間で搬送することができる。
また、真空容器5201には、バルブ5204を介してその内部をベント可能にしている。
図5に示した堆積膜形成装置を用いた表面層の堆積膜の形成は、たとえば以下のような手順によって行われる。
まず、バルブ5117を開き、排気装置を用いて反応容器5108の内部を排気しておく。同時にたとえば基体122(基体上に光導電層を形成してなるもの122)を扉5202より投入炉5200に投入し、チャッキング機構5208にセットする。次に、扉5202を閉じ、バルブ5205を開いて投入炉5200の内部を排気する。
反応容器5108および投入炉5200の内部が、ともに、たとえば0.1Pa以下の真空度になったところで、バルブ5101を開き、アクチュエーター5203を操作して、シャフト5207を伸ばす。次いで、基体122を反応容器5108内のホルダー5113に設置し、チャッキング機構5208を開いて、基体122をホルダー5113上に残置する。
その後、シャフト5207を縮めて、チャッキング機構5208を投入炉5200内に収納し、ゲートバルブ5101を閉じる。
この状態で、必要に応じて、ヒーター5114に通電し、基体122を所望の温度に加熱することができる。
基体122が所望の温度になったところで、バルブ5110、5115を開き、スパッタガスおよび反応性ガスをそれぞれ原料ガス供給装置(不図示)から反応容器5108内に供給する。次いで、反応容器5108に接続された真空計(不図示)により、所定の圧力になったところで電源よりカソード5102に電力を供給してグロー放電を生起させる。
この際、回転軸5104をモーター5118により回転させることで、基体122の周方向に均一に堆積膜を得ることができる。
所望の堆積膜が形成されたところで、電源5109より電力の供給を止め、堆積膜の形成を終える。
複数の領域からなる表面層を形成するためには、所望のガス、圧力、基板温度などの条件を設定しなおしたうえで、再度カソード5102に電力を供給してグロー放電を生起させればよい。
バルブ5110、5115を閉じ、反応性ガスおよびスパッタガスの供給を終えると同時に、ヒーター5114の通電を止め、いったん反応容器5108内をたとえば0.1Pa以下の圧力になるまで排気し、ゲートバルブ5101を開く。
ここで、アクチュエーター5203を操作し、シャフト5207を伸ばし、チャッキング機構5208によって基体122を保持した後、再びシャフト5207を縮め、基体122が投入炉5200内に収納されたところで、ゲートバルブ5101を閉じる。
ゲートバルブ5101が閉じたことを確認した後、バルブ5204を開き、真空容器5201内をベントし、扉5202を開いて、基体122を取り出し、表面層の形成を終え、電子写真感光体を得る。
なお、上記の説明では、図4に示したプラズマCVD法による堆積膜形成装置を用いて基体上に光導電層を形成したものをいったん大気中に取り出し、その後、図5に示したスパッタリング法による堆積膜形成装置に投入したが、この手順には特に限定はない。たとえば、両装置を結ぶ真空搬送可能な搬送装置を設置して、基体上に光導電層を形成したものの移送を、真空中で行ってもよい。
次に、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
(実施例1〜3、および、比較例1)
導電性の基体13として直径80mm、長さ358mm、肉厚3mmのアルミニウム材料の表面に鏡面加工を施したシリンダーを用い、光導電層12、表面層11を順次形成して電子写真感光体を作製した。
光導電層12は、図4に示したプラズマCVD法による堆積膜形成装置を用い、表1の条件で形成した。ここで、高周波電力の周波数は、13.56MHzにした。
Figure 0005349936
また、表面層11は、図5に示したスパッタリング法による堆積膜形成装置を用い、AlNOで形成した。
なお、本実施例では、ターゲットにはアルミニウム、反応性ガスには窒素ガス(N)および酸素ガス(O)、スパッタリング用のガスにはアルゴンガス(Ar)を用いた。NおよびOの流量を変化させることで、N含有量を変化させるとともに、O含有量がほぼ一定となるように調整した。
表面層11の形成条件を表2、表3に示す。
Figure 0005349936
Figure 0005349936
また、表3中のN含有量およびO含有量は、同一条件で作製した電子写真感光体を12mm×12mmの大きさに切り出すことによってサンプルを作製し、ESCA(商品名:Quantum2000 Scaning ESCA、PHI社製)により、2mm×2mmの範囲を4kVで5分間スパッタして表面付着物の影響を取り除いたうえで測定し、アルミニウム原子に対するそれぞれの含有量を原子%で示したものである。
なお、本実施例および比較例では、水素原子(H)およびハロゲン原子(X)を積極的に用いていない。したがって、これらの原子は、各例の電子写真感光体の表面層には実質的に含有されていない。
このようにして作製した電子写真感光体を、次のようにして評価した。
まず、作製した電子写真感光体を、評価用の電子写真装置(複写機、商品名:iR6000、キヤノン(株)製)の改造機に装着した。
この評価用の電子写真装置は、電源を切った際に電子写真感光体に内蔵されたヒーターの電源も切れるように設定されており、立ち上げの際は通常の立ち上げシーケンスと同時にヒーターに通電され、電子写真感光体の表面が約45℃になるように制御を行うものである。
また、この評価用の電子写真装置は、クリーニングローラーの部材をマグネットローラーからウレタンゴムのスポンジローラーに変更されている。また、スポンジローラーは、電子写真感光体に5mmのニップ幅をもって当接されるようになっており、電子写真感光体の回転に対して順方向、120%の周速差で回転するように改造されている。また、画像露光装置としては、発振波長が405nmの画像露光用レーザーを備えたものを用いた。すなわち、電子写真感光体に照射する画像露光光の波長を405nmとした。
・帯電能
まず、上記の評価用の電子写真装置に作製した電子写真感光体を設置し、画像露光装置(レーザー)をOFFにしたうえで、帯電器に+6kVの高電圧を印加してコロナ帯電を行った。この際の電子写真感光体の表面電位(すなわち暗部電位)を、現像器に相当する位置に設置した表面電位計(商品名:Model334、TREK社製)を用いて測定し、その測定値を電子写真感光体の帯電能とした。なお、本実施例においては、帯電器としてコロナ帯電器を用いたが、本発明の電子写真感光体は、接触帯電器を備えた電子写真装置に用いることもできる。
・光感度
上記の評価用の電子写真装置に作製した電子写真感光体を設置し、現像器の位置での暗部電位が450Vとなるように帯電器に印加する帯電電流を調整した。
この帯電電流を維持したまま、画像露光光(レーザー光)を照射し、現像器の位置での電子写真感光体の表面電位(すなわち明部電位)が50Vとなるように画像露光光(レーザー光)の強度を調整した。このときの画像露光光(レーザー光)の強度を電子写真感光体の光感度とした。
・残留電位
光感度の評価と同様、作製した電子写真感光体の現像器の位置での暗部電位が450Vとなるように調整したのち、強度1.2μJ/cmの画像露光光(レーザー光)を照射し、明部電位を測定し、その測定値を残留電位とした。
上記の評価の後、電子写真装置の原稿台に、6ポイントのひらがな文字を全面に形成したテスト用チャートを置き、気温30℃、湿度80%RHの環境下で、A4用紙50万枚分の画像形成を繰り返す耐久試験を行った。
耐久試験を行った後、下記の要領にしたがって傷および画像流れの評価を行った。
・傷
上記耐久試験を行った後、耐久試験と同一環境下でハーフトーン画像を出力して、出力画像上に現れる傷の画像欠陥の有無を目視で調べ、また、電子写真感光体を評価用の電子写真装置から取り出し、電子写真感光体の表面の画像形成領域における傷の有無を目視にて調べ、下記の基準で判定した。
A:電子写真感光体の表面に傷は見られない。
B:電子写真感光体の表面に傷は見られるが、出力画像上には傷の画像欠陥は現れない。
C:出力画像上に傷の画像欠陥が現れるが、微小かつ軽微である。
D:出力画像上に傷が現れ、文字の誤読などの可能性がある。
・画像流れ
上記耐久試験を行った後、耐久試験と同一環境下、電子写真装置の電源を切った状態で12時間放置した。その後、電子写真装置の電源を投入し、通常のシーケンスに沿って立ち上げた。
この際、グレースケールチャート(1200dpiにて画素密度0%〜100%の濃度を10段階に直線的に変化させたチャート)を原稿台に設置しておき、電子写真装置が起動した直後に画像を出力した。
このとき、得られたグレースケール画像の画素濃度0%の部分の画像濃度と、画素濃度100%の部分の画像濃度とを、透過濃度計(商品名:Gretag Macbeth D200−II、AG社製)で計測した。なお、画素濃度0%の部分と画素濃度100%の部分との透過濃度の差が1.2程度になるようにあらかじめ調整しておいた。
こうして得られたグレースケール画像の各段階の透過濃度をあらためて計測し、画素濃度0%の部分の透過濃度と画素濃度100%の部分の透過濃度との間を合計10段階になるように直線的に補間した濃度と、グレースケール画像を実測した各段階の濃度との差の絶対値を合計し、これを画像流れとして評価した。
すなわち、画像流れにおいて、数値が小さいほど画像流れが少なく、階調の再現性に優れた画像が得られていることを示している。
実施例1〜3、および、比較例1の結果を表4に示す。
Figure 0005349936
なお、表4以下、帯電能、光感度、残留電位、画像流れの値は、実施例2のそれぞれの値を1(1.00)とした場合の相対値を用いている。
これらの評価において、帯電能は、数値が大きいほど優れていることを示し、特に0.90以上であれば、特に良好な特性であるといえる。また、光感度は、数値が小さいほど優れていることを示し、特に1.10以下であれば幅広いプロセス条件に適応可能であり、特に良好な特性であるといえる。
残留電位は、数値が小さいほど優れていることを示し、特に3.00以下であれば幅広いプロセス条件に適応可能であり、特に良好な特性であるといえる。
また、画像流れについては、1.20以下であれば、階調性に富み、フルカラー画像においても色ムラのほとんど認識できない良好な画像が得られる。
図6に、表4におけるN含有量と光感度の関係を示す。
図6から、光感度が1.10以下となるN含有量は、80原子%以上であることがわかる。
(実施例4〜6、および、比較例2)
導電性の基体13として直径80mm、長さ358mm、肉厚3mmのアルミニウム材料の表面に鏡面加工を施したシリンダーを用い、光導電層12、表面層11を順次形成して電子写真感光体を作製した。なお、光導電層は、実施例1〜3と同様の条件で形成した。
表面層11は、図5に示したスパッタリング法による堆積膜形成装置を用い、AlNOで形成した。
なお、本実施例では、ターゲットにはアルミニウム、反応性ガスには窒素ガス(N)および酸素ガス(O)、スパッタリング用のガスにはアルゴンガス(Ar)を用い、NおよびOの流量を変化させることで、N含有量を変化させながら、O含有量をほぼ一定となるように調整した。
表面層11の形成条件を表5、表6に示す。
Figure 0005349936
Figure 0005349936
なお、表6中の各元素のアルミニウム原子に対する含有量は、実施例1〜3と同様の手法で測定している。
なお、本実施例および比較例では、水素原子(H)およびハロゲン原子(X)を積極的に用いていない。したがって、これらの原子は、各例の電子写真感光体の表面層には実質的に含有されていない。
このようにして作製した電子写真感光体を、実施例1〜3と同様にして評価した。
結果を表7に示す。
Figure 0005349936
なお、表7において、帯電能、光感度、残留電位、画像流れの値は、実施例2のそれぞれの値を1(1.00)とした場合の相対値を用いている。
表7の結果から、N含有量が95原子%以下であれば、傷に対して高い耐性(耐傷性)が得られることがわかる。
なお、実施例1〜3と比較例1、実施例4〜6と比較例2では、互いに条件を変更しているが、これは実験に使用した装置においては、ガス供給能力、真空排気能力、放電特性などの制限から、NおよびOを変化させるだけでは、O含有量をほぼ一定とし、かつ、N含有量を所望の範囲に変化させることが困難であったことによる。
しかしながら、実施例1〜6と比較例1および比較例2との結果から、O含有量によらず、N含有量を80原子%以上95原子%以下とすることで、光感度および耐傷性に優れた電子写真感光体を得られることが分かる。
(実施例7〜9、および、比較例3)
導電性の基体13として直径80mm、長さ358mm、肉厚3mmのアルミニウム材料の表面に鏡面加工を施したシリンダーを用い、光導電層12、表面層11を順次形成し電子写真感光体を作製した。なお、光導電層は、実施例1〜3と同様の条件で形成した。
表面層11は、図5に示したスパッタリング法による堆積膜形成装置を用い、AlNOで形成した。
なお、本実施例では、ターゲットにはアルミニウム、反応性ガスには窒素ガス(N)および酸素ガス(O)、スパッタリング用のガスにはアルゴンガス(Ar)を用い、NおよびOの流量を変化させることで、N含有量をほぼ一定に保ちながら、O含有量を変化させた。
表面層11の形成条件を表8、表9に示す。
Figure 0005349936
Figure 0005349936
なお、表9中の各元素のアルミニウム原子に対する含有量は、実施例1〜3と同様の手法で測定している。
なお、本実施例および比較例では、水素原子(H)およびハロゲン原子(X)を積極的に用いていない。したがって、これらの原子は、各例の電子写真感光体の表面層には実質的に含有されていない。
このようにして作製した電子写真感光体を、実施例1〜3と同様にして評価した。
結果を表10に示す。
Figure 0005349936
なお、表10において、帯電能、光感度、残留電位、画像流れの値は、実施例2のそれぞれの値を1(1.00)とした場合の相対値を用いている。
図7に、表10におけるO含有量と画像流れの関係を図7に示す。
図7から、画像流れが1.20以下となるO含有量は、1.0原子%以上であることがわかる。
(実施例10〜12、および、比較例4)
導電性の基体13として直径80mm、長さ358mm、肉厚3mmのアルミニウム材料の表面に鏡面加工を施したシリンダーを用い、光導電層12、表面層11を順次形成して電子写真感光体を作製した。なお、光導電層は、実施例1〜3と同様の条件で形成した。
表面層11は、図5に示したスパッタリング法による堆積膜形成装置を用い、AlNOで形成した。
なお、本実施例では、ターゲットにはアルミニウム、反応性ガスには窒素ガス(N)および酸素ガス(O)、スパッタリング用のガスにはアルゴンガス(Ar)を用い、NおよびOの流量を変化させることで、N含有量をほぼ一定に保ちながら、O含有量を変化させた。
表面層11の形成条件を表11、表12に示す。
Figure 0005349936
Figure 0005349936
なお、表12中の各元素のアルミニウム原子に対する含有量は、実施例1〜3と同様の手法で測定している。
なお、本実施例および比較例では、水素原子(H)およびハロゲン原子(X)を積極的に用いていない。したがって、これらの原子は、各例の電子写真感光体の表面層には実質的に含有されていない。
このようにして作製した電子写真感光体を、実施例1〜3と同様にして評価した。
結果を表13に示す。
Figure 0005349936
なお、表13において、帯電能、光感度、残留電位、画像流れの値は、実施例2のそれぞれの値を1(1.00)とした場合の相対値を用いている。
図8に、表13におけるO含有量と画像流れの関係を示す。
図8から、画像流れが1.20以下となるO含有量は、30原子%以下であることがわかる。
なお、実施例7〜9と比較例3、実施例10〜12と比較例4では、互いに条件を変更しているが、これは実験に使用した装置においては、ガス供給能力、真空排気能力、放電特性などの制限から、NおよびOを変化させるだけでは、N含有量をほぼ一定とし、かつ、O含有量を所望の範囲に変化させることが困難であったことによる。
しかしながら、実施例7〜12と比較例3および4との結果から、N含有量によらず、O含有量を1.0原子%以上30原子%以下にすることで、画像流れが生じにくい良好な電子写真感光体が得られることがわかる。
(実施例13〜16)
導電性の基体13として直径80mm、長さ358mm、肉厚3mmのアルミニウム材料の表面に鏡面加工を施したシリンダーを用い、光導電層12、表面層11を順次形成して電子写真感光体を作製した。なお、光導電層は、実施例1〜3と同様の条件で形成した。
表面層11は、図5に示したスパッタリング法による堆積膜形成装置を用い、AlNOで形成した。
なお、本実施例では、ターゲットにはアルミニウム、反応性ガスには窒素ガス(N)および酸素ガス(O)、スパッタリング用のガスにはアルゴンガス(Ar)を用い、さらに水素ガス(H)を添加してAlNOに水素原子(H)を含有させた。その際、N、OおよびHの流量を変化させることで、H含有量を変化させながら、O含有量、および、N含有量がほぼ一定となるように調整した。
表面層11の形成条件を表14、表15に示す。
Figure 0005349936
Figure 0005349936
なお、表15中の各元素のアルミニウム原子に対する含有量は、実施例1〜3と同様の手法で測定している。X含有量は、アルミニウム原子に対するハロゲン原子の含有量の総和を原子%で記載したものである。実際の測定では、X含有量は有意な数値が得られなかったため、実質的に含有されていないものと考えられ、数値は記載していない。
また、H含有量は、おのおのの実施例の表面層と同一の形成条件でコーニング社製のガラス(商品名:7059)上に膜厚0.5μmの膜を形成したサンプルを作製して測定した。
測定は、後方散乱測定装置(商品名:AN−2500、日新ハイボルテージ(株))を用い、水素前方散乱分析(HFS)法により、表面層の表面より0.4μmの深さの部分のH含有量を計測し、アルミニウム原子に対するHの含有量を算出した。
なお、実施例13については、H含有量は有意な数値が得られなかったため、水素原子は実質的に含有されていないものと考えられ、数値は記載していない。
本実施例では、このようにして作製した電子写真感光体を、実施例1〜3と同様にして評価した後、さらに、上述の耐久試験を追加で50万枚(合計で100万枚となる。)分行い、その後、再度、画像流れを上述の手法で評価した。
結果を表16に示す。
Figure 0005349936
なお、表16において、帯電能、光感度、残留電位、画像流れ(50万枚耐久、100万枚耐久とも)の値は、実施例2のそれぞれの値を1(1.00)とした場合の相対値を用いている。
表16の結果から、いずれの電子写真感光体も、50万枚の耐久試験後は、画像流れが生じにくい良好な特性であった。一方、100万枚の耐久試験後に関して、表面層に水素原子(H)が実質的に含有されていない実施例13の電子写真感光体は、50万枚の耐久試験とほぼ同じ画像流れのレベルであったのに対し、表面層に水素原子(H)が含有されている他の電子写真感光体は、いずれも画像流れのレベルが低下する傾向がみられた。さらに、H含有率が大きいほど、その低下傾向が大きくなった。
これは長期に渡って画像形成を繰り返すにしたがい、次第に水素原子との結合が切れることにより欠陥が発生し、これが画像流れの誘因になっているものと考えられる。
なお、本実施例においては、表面層11の形成をスパッタリング法で行ったため、NおよびOに加え、Hを添加することでH含有量を調整し、画像流れにおけるH含有量の効果の検証を行ったが、他の成膜方法でも同様の結果が得られると推測される。
(実施例17〜20)
導電性の基体13として直径80mm、長さ358mm、肉厚3mmのアルミニウム材料の表面に鏡面加工を施したシリンダーを用い、光導電層12、表面層11を順次形成して電子写真感光体を作製した。なお、光導電層は、実施例1〜3と同様の条件で形成した。
表面層11は、図5に示したスパッタリング法による堆積膜形成装置を用い、AlNOで形成した。
なお、本実施例では、ターゲットにはアルミニウム、反応性ガスには窒素ガス(N)および酸素ガス(O)、スパッタリング用のガスにはアルゴンガス(Ar)を用い、さらにフッ素ガス(F)を添加してAlNOにフッ素原子(ハロゲン原子の一種)を含有させた。その際、N、OおよびFの流量を変化させることで、アルミニウム原子に対するフッ素原子の含有量(以下「F含有量」ともいう。)を変化させながら、O含有量、および、N含有量をほぼ一定となるように調整した。
表面層11の形成条件を表17、表18に示す。
Figure 0005349936
なお、フッ素ガス(F)の流量は、アルゴンガス(Ar)にて10%に希釈したガスのうちのフッ素ガス(F)の実流量を示しており、表記した値の9倍のアルゴンガス(Ar)とともに添加されている。
Figure 0005349936
なお、表18中の各元素のアルミニウム原子に対する含有量は、実施例1〜3と同様の手法で測定している。X含有量は、アルミニウム原子に対するハロゲン原子の含有量の総和を原子%で記載したものである。
なお、実際の測定では、フッ素原子(F)以外のハロゲン原子の含有量として有意な値が得られなかったため、X含有量とF含有量は実質的に同一値である。また、H含有量は有意な数値が得られなかったため、実質的に含有されていないものと考えられ、数値は記載していない。また、実施例17については、X含有量は有意な数値が得られなかったため、実質的に含有されていないものと考えられ、数値は記載していない。
本実施例ではこのようにして作製した電子写真感光体を、実施例1〜3と同様にして評価した後、さらに、上述の耐久試験を追加で50万枚(合計で100万枚となる。)分行い、その後、再度、画像流れを上述の手法で評価した。
結果を表19に示す。
Figure 0005349936
なお、表19において帯電能、光感度、残留電位、画像流れ(50万枚耐久、100万枚耐久とも)の値は、実施例2のそれぞれの値を1(1.00)とした場合の相対値を用いている。
表19の結果から、いずれの電子写真感光体も、50万枚の耐久試験後は、画像流れが生じにくい良好な特性であった。一方、100万枚の耐久試験後に関して、表面層にハロゲン原子(X)が実質的に含有されていない実施例17は、50万枚の耐久試験とほぼ同じ画像流れのレベルであったのに対し、表面層にハロゲン原子(X)が含有されている他の電子写真感光体は、いずれも画像流れのレベルが低下する傾向がみられた。さらに、X含有率が大きいほど、その低下傾向が大きくなった。
これは長期に渡って画像形成を繰り返すにしたがい、次第にハロゲン原子との結合が切れることにより欠陥が発生し、これが画像流れの誘因になっているものと考えられる。
実施例13〜20の結果から、電子写真感光体の表面層に水素原子(H)およびハロゲン原子(X)が実質的に含有されていないことで、長期に渡る画像形成においても画像流れが生じにくくなるということがわかる。
ただし、N含有量およびO含有量が本発明の範囲にある電子写真感光体であれば、表面層に水素原子(H)やハロゲン原子(X)が含有されたものであっても、耐久試験の画像形成枚数を増やすことで若干画像流れのレベルが低下する傾向は見られたものの、いずれも良好な特性を得ることができ、画像流れに対して効果が得られることは変わらない。
(実施例21〜28)
導電性の基体13として直径80mm、長さ358mm、肉厚3mmのアルミニウム材料の表面に鏡面加工を施したシリンダーを用い、下部電荷注入阻止層15、光導電層12、中間層14、表面層11を順次形成して電子写真感光体を作製した。
本実施例では、中間層14としてa−SiNを採用し、窒素ガス(N)の流量によって、中間層14中のケイ素原子(Si)に対する窒素原子(N)の含有量(以下「Nt含有量」ともいう。)を変化させた。
なお、光導電層12および中間層14は、図4に示したプラズマCVD法による堆積膜形成装置を用い、表20および表21の条件で形成した。ここで、高周波電力の周波数は、13.56MHzにした。
Figure 0005349936
Figure 0005349936
なお、表21中のNt含有量は、各電子写真感光体の中間層と同一条件でコーニング社製のガラス(商品名:7059)上に膜厚1μmの堆積膜を形成し、これを、実施例1〜3と同様にしてESCAで測定したものである。
表面層11は、図5に示したスパッタリング法による堆積膜形成装置を用い、実施例2と同じ条件にて、AlNOで形成した。
また、本実施例では、光導電層12と表面層11の間に中間層14を形成しないものも作製し、実施例28とした。
このようにして作製した電子写真感光体を、実施例1〜3と同様にして評価した。
結果を表22に示す。
Figure 0005349936
なお、表22のN含有量およびC含有量は、アルミニウム原子に対するものであり、実施例1〜3と同様にして求めた。また、表22において、帯電能、光感度、残留電位、画像流れの値は、実施例2のそれぞれの値を1(1.00)とした場合の相対値を用いている。
表22から、中間層14を設けた電子写真感光体(実施例21〜27)では、いずれも中間層14を設けていない電子写真感光体(実施例28)に対して光感度の向上が認められた。
図9に、表22におけるNt含有量と光感度の関係を示す。
光感度が0.92以下であれば、電子写真装置を20%程度の高速化しても十分な光感度が得られると考えられる。図9によれば、Nt含有量が10原子%以上55原子%以下の範囲であれば、光感度が0.92以下まで向上し、特に良好な特性が得られることがわかる。
(実施例29〜36)
導電性の基体13として直径80mm、長さ358mm、肉厚3mmのアルミニウム材料の表面に鏡面加工を施したシリンダーを用い、下部電荷注入阻止層15、光導電層12、中間層14、表面層11を順次形成して電子写真感光体を作製した。
本実施例では、中間層14としてa−SiCを採用し、メタンガス(CH)の流量によって、中間層14中のケイ素原子(Si)に対する炭素原子(C)の含有量(以下「C含有量」ともいう。)を変化させた。
なお、光導電層12および中間層14は、図4に示したプラズマCVD法による堆積膜形成装置を用い、表23および表24の条件で形成した。ここで、高周波電力の周波数は、13.56MHzにした。
Figure 0005349936
Figure 0005349936
なお、表24中のC含有量は、各実施例の電子写真感光体の中間層と同一条件でコーニング社製のガラス(商品名:7059)上に膜厚1μmの堆積膜を形成し、これを、実施例1〜3と同様にしてESCAで測定したものである。
表面層11は、図5に示したスパッタリング法による堆積膜形成装置を用い、実施例2と同じ条件にて、AlNOで形成した。
また、本実施例では、光導電層12と表面層11の間に中間層を形成しないものも作製し、実施例36とした。
このようにして作製した電子写真感光体を、実施例1〜3と同様にして評価した。
結果を表25に示す。
Figure 0005349936
なお、表25のN含有量およびC含有量は、アルミニウム原子に対するものであり、実施例1〜3と同様にして求めた。また、表25において、帯電能、光感度、残留電位、画像流れの値は、実施例2のそれぞれの値を1(1.00)とした場合の相対値を用いている。
表25から、中間層14を設けた電子写真感光体(実施例29〜35)では、いずれも中間層14を設けていない電子写真感光体(実施例36)に対して光感度の向上が認められた。
図10に、表25におけるC含有量と光感度の関係を示す。
図10によれば、C含有量が10原子%以上100原子%以下の範囲であれば、光感度が0.92以下まで向上し、特に良好な特性が得られることがわかる。
(比較例5)
導電性の基体13として直径80mm、長さ358mm、肉厚3mmのアルミニウム材料の表面に鏡面加工を施したシリンダーを用い、光導電層12、中間層14、表面層11を順次形成して電子写真感光体を作製した。
本比較例では、光導電層12、中間層14、表面層11は図4に示したプラズマCVD法による堆積膜形成装置を用い、表26の条件で形成した。ここで、高周波電力の周波数は、13.56MHzにした。
すなわち、本比較例の電子写真感光体は、実施例32の電子写真感光体の下部電荷注入阻止層を形成せず、かつ、表面層をプラズマCVD法によりa−SiNで形成した層に変更したものである。
Figure 0005349936
また、比較例5について、実施例1〜3と同様の手順でサンプルを作製し、ケイ素原子、炭素原子および酸素原子の総和に対する窒素原子の含有量、ケイ素原子、炭素原子および酸素原子の総和に対する炭素原子の含有量、ならびに、ケイ素原子、炭素原子および酸素原子の総和に対する酸素原子の含有量を、ESCAを用いて測定した。また、ケイ素原子に対する水素原子の含有量は、実施例13〜16と同様にしてHFS法で測定した。
その結果、ケイ素原子、炭素原子および酸素原子の総和に対する窒素原子の含有量は39原子%であり、ケイ素原子、炭素原子および酸素原子の総和に対する炭素原子の含有量は2.5原子%であり、ケイ素原子、炭素原子および酸素原子の総和に対する酸素原子の含有量は2.7原子%であった。また、ケイ素原子に対する水素原子の含有量は11原子%であった。
このようにして作製した電子写真感光体を、実施例1〜3と同様にして評価した。
結果を表27に示す。
Figure 0005349936
なお、表27において帯電能、光感度、残留電位、画像流れの値は、実施例2のそれぞれの値を1.00とした場合の相対値を用いている。
表27の結果から、比較例5の電子写真感光体は本発明の実施例のいずれの電子写真感光体よりも画像流れの特性が悪いものであった。特に実施例16の電子写真感光体の評価結果から、最も含有量の多い元素に対するHの含有量が同程度のもので比較しても、本発明のAlNOによる表面層を有する電子写真感光体は画像流れに優位であることがわかる。
本発明の電子写真感光体の層構成の一例を模式的に示した図である。 本発明の電子写真感光体の層構成の別の例を模式的に示した図である。 下部電荷注入阻止層を形成した場合の電子写真感光体の層構成の一例を模式的に示した図である。 電源周波数としてRF帯を用いた高周波プラズマCVD法による堆積膜形成装置の構成の一例を模式的に示した図である。 反応性ガスを用いたスパッタリング法による堆積膜形成装置の構成の一例を模式的に示した図である。 表4におけるN含有量と光感度の関係を示した図である。 表10におけるO含有量と画像流れの関係を示した図である。 表13におけるO含有量と画像流れの関係を示した図である。 表22におけるNt含有量と光感度の関係を示した図である。 表25におけるC含有量と光感度の関係を示した図である。
符号の説明
10 電子写真感光体
11 表面層
12 光導電層
13 基体
14 中間層
15 下部電荷注入阻止層
122 基体(基体上に光導電層を形成してなるもの)
5100 反応炉
5101 ゲートバルブ
5102 カソード
5103 反応性ガスノズル
5104 回転軸
5105 スパッタガス導入管
5106 ターゲット
5108 反応容器
5109 電源
5110 バルブ
5111 シールド
5113 ホルダー
5114 ヒーター
5116 ガス放出孔
5117 バルブ
5118 モーター
5119 回転軸シール
5129、5130 永久磁石
5131、5132 冷却水配管
5200 投入炉
5201 真空容器
5202 扉
5203 アクチュエーター
5204 バルブ
5205 バルブ
5206 真空シール
5207 シャフト
5208 チャッキング機構
6100 堆積装置
6110 載置台
6111 反応容器
6112 基体
6113 基体加熱用ヒーター
6114 原料ガス導入管
6115 高周波マッチングボックス
6117 リークバルブ
6118 排気バルブ
6119 真空計
6120 高周波電源
6200 原料ガス供給装置
6211〜6216 マスフローコントローラー
6221〜6226 ボンベ
6231〜6236 バルブ
6241〜6246 バルブ
6251〜6256 バルブ
6261〜6266 レギュレーター

Claims (4)

  1. 導電性の基体と、該基体上に形成された光導電層と、該光導電層上に形成された表面層とを有する電子写真感光体において、
    該光導電層が、ケイ素原子を主成分とするアモルファス材料で形成された層であり、
    該表面層が、主として、アルミニウム原子、窒素原子および酸素原子で構成されており、
    該表面層中のアルミニウム原子に対する窒素原子の含有量が、80原子%以上95原子%以下であり、
    該表面層中のアルミニウム原子に対する酸素原子の含有量が、1原子%以上30原子%以下であり、
    該表面層が、水素原子およびハロゲン原子を含有しない
    ことを特徴とする電子写真感光体。
  2. 前記光導電層と前記表面層との間に、ケイ素原子および窒素原子を主成分とするアモルファス材料で形成された中間層、または、ケイ素原子および炭素原子を主成分とするアモルファス材料で形成された中間層を有する請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 請求項1または2のいずれかに記載の電子写真感光体、帯電器、画像露光装置および現像器を有する電子写真装置。
  4. 前記画像露光装置が、波長が380〜500nmの画像露光光を前記電子写真感光体に照射するための装置である請求項に記載の電子写真装置。
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