JP2004206090A - 電子写真用感光体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】感光体製造工程で光導電層にできる異常成長部分の成長を抑制させて、それが画像上に現れず画像欠陥を大幅に改善させることができる電子写真感光体を提供する。
【解決手段】少なくとも表面が導電性である支持体上に、シリコンを主体とする非晶質材料を含む光導電層を有する電子写真感光体において、前記光導電層が2つ以上の層領域を有し、かつ前記層領域の中で前記電子写真感光体の自由表面に最も近い前記層領域に接する層領域の突起は該層領域の表面で成長が停止していることを特徴とする電子写真感光体。
【選択図】図1

Description

本発明は、画像欠陥が少なく、帯電能が高く、濃度が濃い良好な画像形成を長期間維持することができるアモルファスシリコン電子写真感光体及びその製造方法に関する。
固体撮像装置、あるいは像形成分野における電子写真感光体や原稿読み取り装置における光導電層を形成する材料には、高感度でSN比[光電流(Ip)/暗電流(Id)]が高く、照射する電磁波のスペクトル特性にマッチングした吸収スペクトル特性を有すること、光応答性が速く、所望の暗抵抗値を有すること、使用時において人体に無公害であること、さらには固体撮像装置においては、残像を所定時間内に容易に処理することができる等の特性が要求される。特に事務機としてオフィスで使用される電子写真感光体の場合には、上記の使用時における無公害性は重要な点である。
この様な観点に立脚して注目されている材料に、水素やハロゲン原子等の一価の元素でダングリングボンドが修飾されたアモルファスシリコン(以後、「a−Si」と表記する)があり、例えば特許文献1には、電子写真用電子写真感光体への応用が記載されている。
従来、導電性支持体上にa−Siからなる電子写真感光体を形成する方法として、スパッタリング法、熱により原料ガスを分解する方法(熱CVD法)、光により原料ガスを分解する方法(光CVD法)、プラズマにより原料ガスを分解する方法(プラズマCVD法)等、多数知られている。なかでもプラズマCVD法、すなわち、原料ガスを直流又は高周波、マイクロ波などのグロー放電によって分解し、導電性支持体上に層を積層する方法は電子写真感光体の形成方法等、現在実用化が非常に進んでいる。
例えばこのような感光体の層構成として、従来から行われてきたa−Siを母体とし、適宜修飾元素を添加した電子写真感光体に加えて、更に表面側に阻止能を持った、いわゆる表面層や上部阻止層を積層する構成も提案されている。例えば特許文献2では、光導電層と表面層との間に、炭素原子の含有量を表面層より減らし、伝導性を制御する原子を含有させた中間層(上部阻止層)を設けた感光体が開示されている。
特開昭54−86341号公報 特開平8−15882号公報
このような従来の電子写真感光体の製造方法により、ある程度実用的な特性と均一性を持つ電子写真感光体を得ることが可能になった。また、真空反応容器内の清掃を厳格に行えばある程度欠陥の少ない電子写真感光体を得ることは可能である。しかし、これら従来の電子写真感光体の製造方法では、電子写真用感光体のように大面積で比較的厚い堆積膜が要求される製品については、例えば均一膜質で光学的及び電気的諸特性の要求を満足し、かつ電子写真プロセスにより画像形成時に画像欠陥の少ない堆積膜を高収率で得るのは難しいという問題が残存している。
特に、a−Si堆積膜は、支持体表面あるいは堆積膜表面に数μmオーダーのダストの如き核となるものが付着していた場合、堆積中にダストが核として突起が成長してしまうという性質を持っている。図2は、従来の電子写真感光体の突起の一例を示す模式的断面図である。この感光体は、導電性の表面を有する支持体201上に、光導電層202、表面層203が、順次積層形成されてなるものである。この光導電層202の形成過程においてダスト204が混入すると、膜の堆積中にこれが核となって異常成長が生じ、突起205が生成する。突起は、核を起点とした円錐形を逆転させた形をしており、正常部に比べて帯電電荷の保持能力が低い性質を持っている。
このため、突起のある部分は、画像上ではべた黒画像で白い点となって現れる(反転現像の場合はべた白画像に黒い点となって現れる)。このいわゆる「ポチ」と呼ばれる画像欠陥は年々規格が厳しくなっている。カラー複写機に搭載される場合にはさらに厳しい規格が適用されている。この突起の核を少なくするため、使用する支持体は堆積前に精密に洗浄され、反応容器に設置する行程は全てクリーンルームあるいは真空下で作業が行われる。このようにして、堆積開始前における支持体上の付着物は極力少なくするよう努力されてきており、効果を上げてきた。しかし、突起の発生原因は支持体上の付着物のみではない。すなわち、a−Si感光体を製造する場合、要求される層厚が数μmから数10μmと非常に厚いため、堆積時間は数時間から数十時間に及び、この間に、a−Si堆積膜は支持体のみではなく、反応容器壁や反応容器内の構造物にも堆積膜や粉体状のポリシランが堆積する。
これらの炉壁、構造物は支持体のように管理された表面を有していないため、場合によっては密着力が弱く、長時間に渡る堆積中に膜剥がれを起こす場合があった。堆積中に僅かでも剥がれが発生すると、それがダストとなり、堆積中の感光体表面に付着し、これが起点となって異常成長して突起が発生してしまう。従って高い歩留まりを維持していくためには、堆積前の支持体の管理のみならず、堆積中における反応容器内の膜剥がれの防止についても慎重な管理が必要とされ、a−Si感光体の製造を難しいものにしていた。
本発明の目的は、上述のごとき従来の電子写真感光体における諸問題を、電気的特性を犠牲にすることなく克服して、安定して歩留まり良く製造し得る、画像欠陥が少なく高画質の使いやすい電子写真感光体及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上述の問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、電子写真感光体を以下のように製造することにより、電気特性に何ら悪影響を与えず、ポチなどの画像欠陥を大幅に改善した感光体を安定して製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明及びその好適な実施形態は、以下の通りである。
(1)少なくとも表面が伝導性である支持体上に、シリコンを主体とする非晶質材料を含む光導電層を有する電子写真感光体において、前記光導電層が2つ以上の層領域を有し、かつ前記層領域の中で前記電子写真感光体の自由表面に最も近い前記層領域に接する層領域の突起は該層領域の表面で成長が停止していることを特徴とする電子写真感光体。
(2)光導電層の層領域表面の長径15μm以上の突起の数が、5個/100cm2以下である(1)記載の電子写真感光体。
(3)光導電層の層厚が、10〜60μmである(1)又は(2)に記載の電子写真感光体。
(4)層領域内の厚みが3μm以上15μm以内にある(1)乃至(3)の何れか一つに記載の電子写真感光体。
(5)層領域の数が、層厚方向に2つ以上6つ以下存在する(1)乃至(4)の何れか一つに記載の電子写真感光体。
(6)支持体上に、少なくとも電荷注入阻止層、光導電層がこの順に積層されている(1)乃至(5)の何れか一つに記載の電子写真感光体。
(7)光導電層上に表面保護層が積層されている(1)乃至(6)の何れか一つに記載の電子写真感光体。
(8)光導電層上に電荷注入阻止層と表面保護層が積層されている(1)乃至(7)の何れか一つに記載の電子写真感光体。
(9)少なくとも表面が導電性である支持体上に、シリコンを主体とする非晶質材料を含んだ2つ以上の層領域を有する光導電層を備えた電子写真感光体の製造方法において、前記光導電層の形成過程において突起の成長を停止させる処理を行うことにより、前記電子写真感光体の自由表面に最も近い前記層領域に接する層領域の表面で前記突起の成長が停止している部分を有する前記光導電層を形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
(10)突起の成長を停止させる処理は、光導電層の層領域が堆積された支持体を反応容器から取り出すことにより行う(9)に記載の電子写真感光体の製造方法。
(11)突起の成長を停止させる処理は、支持体を反応容器から真空中に取り出すことにより行う(10)に記載の電子写真感光体の製造方法。
(12)突起の成長を停止させる処理を、光導電層領域の支持体側から3μm以上15μm以内に行う(9)乃至(11)の何れか一つに記載の電子写真感光体の製造方法。
(13)支持体投入容器、支持体加熱容器、反応容器、支持体冷却及び排出容器をそれぞれ真空容器で形成し、搬送用真空容器を前記支持体投入容器等間を移動させ、前記搬送用真空容器と前記支持体投入容器等の各真空容器とを開閉ゲートを介して接続させて、支持体を前記搬送用真空容器と前記支持体投入容器等の各真空容器間で出し入れ移動可能とし、前記反応容器内に設置された前記支持体上に、シリコンを主体とする非晶質材料を含む光導電層領域を堆積した後に前記搬送用真空容器で前記光導電層領域が堆積された支持体を、別の容器に搬送設置しシリコンを主体とする非晶質材料を含む光導電層領域の堆積を繰り返す(9)乃至(12)の何れか一つに記載の電子写真感光体の製造方法。
(14)搬送用真空容器は、支持体投入容器から反応容器に搬送する搬送用真空容器、反応容器から同一もしくは別の反応容器に搬送する搬送用真空容器、反応容器から排出容器に搬送する搬送用真空容器を有している(13)記載の電子写真感光体の製造方法。
(15)反応容器の容器内面のクリーニング処理後に、光導電層領域が堆積された支持体が搬送されて光導電層領域を積層する(13)に記載の電子写真感光体の製造方法。
(16)1つの反応容器で堆積される前記光導電層領域の厚さは、3μm以上15μm以内である(13)乃至(15)の何れか一つに記載の電子写真感光体の製造方法。
(17)光導電層領域の積層を複数回繰り返して光導電層を積層する(9)乃至(16)の何れか一つに記載の電子写真感光体の製造方法。
(18)光導電層領域の表面を水素プラズマ処理する(9)乃至(17)の何れか一つに記載の電子写真感光体の製造方法。
(19)堆積された光導電層領域を、堆積時よりも高い支持体温度で熱処理する(9)乃至(18)の何れか一つに記載の電子写真感光体の製造方法。
(20)熱処理を、搬送用真空容器内で行う(19)に記載の電子写真感光体の製造方法。
(21)熱処理を、光導電層領域が堆積された支持体を搬送した後に別の反応容器内で行う(19)に記載の電子写真感光体の製造方法。
本発明においては、光導電層の形成過程において、ポチの原因となるダストの少ない状況にしたのちに堆積を再開して、層厚方向に異常成長による突起が停止した部分を有する電子写真感光体とする。このような電子写真感光体を製造する方法としては、例えば、光導電層堆積を中断し光導電層の一部が堆積された支持体を反応容器から取り出して、クリーンな反応容器に支持体を移して光導電層の堆積を再開させることが好ましい。さらに、光導電層領域が堆積された導電性支持体を反応容器から取り出す際には、真空中に取り出すことがより好ましい。また、1回に堆積させる光導電層領域の層厚あるいは堆積時間は短い方が反応容器壁面や内部構造物に堆積する膜及びポリシランの堆積量も少なくなり、ダストの飛散も少なくなるので、画像欠陥は大幅に減少することができる。
本発明は、以下の検討により完成されたものである。
本発明者らは、一度、突起が成長はじめたとしても、ある程度の大きさになるまでは、画像欠陥とはならないことを、画像欠陥と突起の大きさ、断面の観察結果から得た。さらに、画像欠陥とならない成長初期の小さな突起は、不連続な処理を行えば成長が進まず、そこで成長が中断されて大きな突起とはならないことを確認した。
図1は、本発明の電子写真感光体の突起の一例を示す模式的断面図である。この感光体は、導電性の表面を有する支持体101上に、光導電層領域102を積層した光導電層、表面層103が、順次積層形成されてなるものである。106は自由表面である。そして、この光導電層領域の形成過程における突起の成長を停止させる処理により、光導電層領域の表面に突起の成長が停止した部分が形成されている。ここで突起の表面は光導電層領域の表面に含まれている。また、各光導電層領域の堆積で生じた突起105は、この処理により成長が進まず、電子写真感光体の表面に表われる突起は小さなものとなる。
本発明者らが突起表面を詳細に観察したところ、小さな突起は、その最表面の正常部との差異(凸状、ドーム状の盛り上がり)が小さく、僅かな膨らみがある程度であった。大きく成長した突起を観察すると、その最表面の正常部との差異(凸状、ドーム状の盛り上がり)が大きく、正常部との境界部分からの立ち上がりが明確な突起が多かった。
本発明によれば、例えば、排気手段と原料ガス供給手段を備えた真空気密可能な反応容器内に円筒状支持体を設置し、少なくとも原料ガスを高周波電力により分解し、該支持体上に少なくとも非単結晶材料からなる光導電層領域を堆積する工程と、光導電層領域を堆積した円筒状支持体を反応容器から取り出し、別の反応容器に移す工程と別の反応容器内で少なくとも原料ガスを高周波電力により分解し、光導電層を所定の層厚になるまで、別の反応容器に移し変えて堆積させる工程とを行う等の方法により、光導電層に突起の成長が停止した部分を形成すれば、突起が画像上に現れる大きさ以下になるようにできる。その結果、画像欠陥を大幅に改善させた電子写真感光体を提供する事が可能となった。また画像欠陥を大幅に改善できる電子写真感光体製造方法を提供することが可能となった。
また、光導電層の堆積を再開する前に水素プラズマ処理することで、電気的接合性を改良して、電気的特性の改善を図ることができる。
さらに、光導電層の堆積を再開する前に熱処理することで、構造緩和を促進させて電気的特性分布の改善を図ることができる。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
「a−Si感光体」
図3に本発明の電子写真感光体の一例を示す。本発明の電子写真感光体は、例えばAl、ステンレス等の導電性材料からなる支持体301上に、第一の反応容器において光導電層領域303までを堆積し、次に堆積途中の感光体を第一の反応容器から取り出し、次の反応容器に移し、光導電層領域304をさらに積層させ、光導電層が所定の層厚になるまで新しい反応容器に移して積層したものである。このように製造することによって、支持体表面から発生している突起や、積層途中から発生している突起の成長を途中で、小さな突起のまま止めて堆積することができ、画像欠陥には現れず、良好な画質を保つことが可能となる。
このような処理は、例えば、光導電層領域が堆積された支持体を反応容器から真空中等に取り出すことにより行なうことができる。また、このような処理は、光導電層領域の厚さが支持体側から3μm以上15μm以内に行うことが好ましい。
より具体的には、例えば、支持体を反応容器から真空中に取り出すために、支持体投入容器、支持体加熱容器、反応容器、支持体冷却及び排出容器をそれぞれ真空容器で形成し、搬送用真空容器を各真空容器(前記支持体投入容器等)間を移動させ、前記搬送用真空容器と前記支持体投入容器等の各真空容器とを開閉ゲートを介して接続させて、支持体を前記搬送用真空容器と前記支持体投入容器等の各真空容器間で出し入れ移動可能とし、前記反応容器内に設置された円筒状支持体上に、シリコンを主体とする非晶質材料を含む光導電層領域を積層したのちに、搬送用真空容器で前記光導電層領域が堆積された支持体を、別の反応容器に搬送設置しシリコンを主体とする非晶質材料を含む光導電層領域の積層を複数回繰り返し光導電層を形成することが好ましい。
さらに、その搬送用真空容器は、投入容器から反応容器に搬送する搬送用真空容器、反応容器から同一もしくは別の反応容器に搬送する搬送用真空容器、反応容器から搬出容器に搬送する搬送用真空容器が独立していることが好ましい。また、容器内面のクリーニング処理後の反応容器に、光導電層領域が堆積された支持体が搬送されて、光導電層領域の積層することも好ましい。さらに、突起の成長を停止させる処理は、堆積された光導電層領域の表面を水素プラズマで処理であることが好ましい。
本発明においては、光導電層の材料として、通常はa−Siが用いられる。
また、最表面には、必要に応じて表面層305を設けてもよい。表面層305はa−Siを母体とし、必要に応じて炭素、窒素、酸素の少なくとも1つを比較的多量に含有した層が用いられ、耐環境性、耐摩耗性や耐傷性を向上させることができる。
尚、必要に応じて更に下部阻止層302を設けてもよい。下部阻止層302を設け、周期表第13族元素(以下第13族元素)、周期表第15族元素(以下第15族元素)といったドーパントを選択して含有させることにより、正帯電、負帯電といった帯電極性の制御も可能となる。
また、図4に示すように、必要に応じて更に上部阻止層406を設けてもよい。なお、図4中の401〜405は、各々、図3中の301〜305と同じものである。上部阻止層406は必要に応じて設けられ、その材料としてa−Siを母体とし、必要に応じて炭素、窒素、酸素を含有した層が用いられる。
「支持体の形状及び材質」
支持体301の形状は、電子写真感光体の駆動方式などに応じた所望のものとしてよい。例えば、平滑表面あるいは凹凸表面の円筒状又は板状無端ベルト状であることができ、その厚さは、所望通りの電子写真用感光体を形成し得るように適宜決定する。電子写真用感光体としての可撓性が要求される場合には、支持体としての機能が充分発揮できる範囲内で可能な限り薄くすることができる。しかしながら、支持体は製造上及び取り扱い上、機械的強度等の点から通常は10μm以上とされる。
支持体材質としては上記Alやステンレスの如き導電性材料が一般的であるが、例えば各種のプラスチックやガラス、セラミックス等、特には導電性を有しないものにこれら導電性材料を少なくとも光受容層を形成する側の表面に蒸着するなどして導電性を付与したものも用いることができる。
導電性材料としては上記の他、Cr、Mo、Au、In、Nb、Te、V、Ti、Pt、Pd、Fe等の金属、及びこれらの合金が挙げられる。
プラスチックとしてはポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド等のフィルム又はシートが挙げられる。
「光導電層」
光導電層を構成する光導電層領域303、304としては、本発明ではシリコン原子を母体とし、通常は、更に水素原子及び/又はハロゲン原子を含む非晶質材料(「a−Si(H,X)」と略記する)で構成される。
a−Si堆積膜は、プラズマCVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって作製可能であるが、プラズマCVD法を用いて作製した堆積膜は特に高品質の堆積膜が得られるため好ましい。
とくに、光導電層は、電子写真感光体の中で最も厚い層厚が必要とされ、かつ膜質の均一性が要求される。また、画像欠陥の原因である突起が成長するのも、この光導電層堆積時である。したがって、支持体表面に付着したダスト起因の突起が、10μm台の大きさになるまでに、突起の成長を停止させる処理を施すことが望ましい。さらに、反応容器内壁面に堆積したものが剥落する前に、処理をすることが望ましい。
上記のような要因から、最大でも1回で堆積させる光導電層領域の厚さが15μm以内に突起の成長を停止させる処理を施すことが望ましい。
また、堆積膜が薄い、あるいは堆積時間が短いほど突起の大きさも小さく、反応容器内壁面への堆積量も少なくなるが、電子写真感光体として機能するためには、通常は、最低でも10μm以上の層厚が必要であることと、突起の成長を停止させる処理を繰り返すことでの製造時間の長大化によるコストを考慮すると、最低でも1回で堆積させる層領域の厚さをが3μm以上にした後の処理が好ましい。
原料としてはSiH4、Si26、Si38、Si410等のガス状態の、又はガス化し得る水素化珪素(シラン類)を原料ガスとして用い、高周波電力によって分解することによって作製可能である。更に層作製時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点でSiH4、Si26が好ましいものとして挙げられる。
このとき、支持体の温度は、200℃〜450℃、より好ましくは250℃〜350℃程度の温度に保つことが特性上好ましい。これは支持体表面での表面反応を促進させ、充分に構造緩和をさせるためである。
反応容器内の圧力も同様に層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合1×10-2〜1×103Pa、好ましくは5×10-2〜5×102Pa、最適には1×10-1〜1×102Paである。
また、これらのガスに、更に水素ガス(H2)あるいはハロゲン原子を含むガスを所望量混合して層形成することも特性向上の上で好ましい。ハロゲン原子供給用の原料ガスとして有効なのは、弗素ガス(F2)、BrF、ClF、ClF3、BrF3、BrF5、IF5、IF7等のハロゲン間化合物を挙げることができる。ハロゲン原子を含む珪素化合物、いわゆるハロゲン原子で置換されたシラン誘導体としては、具体的には、たとえばSiF4、Si26等の弗化珪素が好ましいものとして挙げることができる。また、これらの炭素供給用の原料ガスを必要に応じてH2、He、Ar、Ne等のガスにより希釈して使用してもよい。
光導電層の全体の層厚としては特に限定はないが、製造コストなどを考慮すると10〜60μm程度が適当である。
更に、特性を向上させる為に光導電層領域303、304を複数の層構成にしても良い。例えばよりバンドギャップの狭い層を表面側に、よりバンドギャップの広い層を基板側に配置することで光感度や帯電特性を同時に向上させることができる。特に、半導体レーザーの様に、比較的長波長であって且つ波長ばらつきのほとんどない光源に対しては、こうした層構成の工夫によって画期的な効果が現れる。
「下部阻止層」
本発明の電子写真感光体において、必要に応じて光導電層の下部に設けられる下部阻止層302は、一般的にa−Si(H,X)をベースとし、第13族元素、第15族元素などのドーパントを含有させることにより伝導型を制御し、支持体からのキャリアの注入阻止能を持たせることが可能である。この場合、必要に応じて、C、N、Oから選ばれる少なくとも1つ以上の元素を含有させることで応力を調整し、感光層の密着性向上の機能を持たせることもできる。
下部阻止層において、ドーパントとなる第13族原子としては、具体的には硼素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等があり、特にB、Alが好適である。第15族原子としては、具体的には、燐(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等があり、特にPが好適である。
また、第13族原子導入用の原料物質として具体的には、硼素原子導入用としては、B26、B410、B59、B511、B610、B612、B614等の水素化硼素、BF3、BCl3、BBr3等のハロゲン化硼素等が挙げられる。この他、AlCl3、GaCl3、Ga(CH3)3、InCl3、TlCl3等も挙げることができる。中でもB26は取り扱いの面からも好ましい原料物質の一つである。
第15族原子導入用の原料物質として有効に使用される燐原子導入用としては、PH3、P24等の水素化燐、PF3、PF5、PCl3、PCl5、PBr3、PI3等のハロゲン化燐、さらにPH4I等が挙げられる。この他、AsH3、AsF3、AsCl3、AsBr3、AsF3、SbH3、SbF3、SbF5、SbCl3、SbCl5、BiH3、BiCl3、BiBr3等が第15族原子導入用の出発物質の有効なものとして挙げられる。
ドーパントの原子の含有量としては、好ましくは1×10-2〜1×104原子ppm、より好ましくは5×10-2〜5×103原子ppm、最適には1×10-1〜1×103原子ppmとされるのが望ましい。
「上部阻止層」
本発明の電子写真感光体において、必要に応じて光導電層の上部に設けられる上部阻止層406は、感光体が一定極性の帯電処理をその自由表面に受けた際、表面側より光導電層側に電荷が注入されるのを阻止する機能を有し、逆の極性の帯電処理を受けた際にはそのような機能は発揮されない。このような機能を付与するために、上部阻止層406には伝導性を制御する不純物原子を適切に含有させることが必要である。そのような目的で用いられる不純物原子としては、本発明においては第13族原子、あるいは第15族原子を用いることができる。第13族原子としては、具体的には、硼素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等があり、特に硼素が好適である。第15族原子としては、具体的にはリン(P)、砒素(As),アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等があり、特にリンが好適である。
上部阻止層406に含有される伝導性を制御する不純物原子の必要な含有量は、上部阻止層406の組成や製造方法により一概にはいえないが、一般的にはネットワーク構成原子に対して100原子ppm以上、30000原子ppm以下とされ、500原子ppm以上、10000原子ppm以下とすることが更に好ましい。
上部阻止層406に含有される伝導性を制御する原子は、上部阻止層406中に万偏なく均一に分布されていても良いし、あるいは層厚方向に不均一に分布する状態で含有していてもよい。しかしながら、いずれの場合にも支持体の表面と平行面内方向においては、均一な分布で万偏なく含有されることが面内方向における特性の均一化を図る点からも必要である。
上部阻止層406は、a−Si系の材料であればいずれの材質でも可能であるが、表面層407と同様の材料で構成することが好ましい。すなわち、「a−SiC:H,X」、「a−SiO:H,X」、「a−SiN:H,X」、「a−SiCON:H,X」等の材料が好適に用いられる。上部阻止層406に含有される炭素原子又は窒素原子又は酸素原子は、該層中に万偏なく均一に分布されても良いし、あるいは層厚方向に不均一に分布する状態で含有していてもよい。しかしながら、いずれの場合にも支持体の表面と平行面内方向においては、均一な分布で万偏なく含有されることが面内方向における特性の均一化を図る点からも必要である。
本発明における上部阻止層406の全層領域に含有される炭素原子及び/又は窒素原子及び/又は酸素原子の含有量は、本発明の目的が効果的に達成されるように適宜決定されるが、1種類の場合はその量として、2種類以上の場合はその総和量として、シリコンとの総和に対して10%から70%の範囲とするのが好ましい。
また、本発明においては上部阻止層406に、通常は、水素原子及び/又はハロゲン原子が含有されることが必要であるが、これはシリコン原子の未結合手を補償し、層品質の向上、特に光導電性特性及び電荷保持特性を向上させるために有効である。水素含有量は、構成原子の総量に対して通常の場合30〜70原子%、好適には35〜65原子%、最適には40〜60原子%とするのが望ましい。又、ハロゲン原子の含有量として、通常の場合は0.01〜15原子%、好適には0.1〜10原子%、最適には0.5〜5原子%である。
さらに、上部阻止層406は光導電層404側から表面層405に向かって組成を連続的に変化させることも好ましく、密着性の向上だけでなく干渉防止等に効果がある。
本発明の目的を達成し得る特性を有する上部阻止層406を形成するには、Si供給用のガスとC及び/又はN及び/又はO供給用のガスとの混合比、反応容器内のガス圧、放電電力ならびに支持体の温度を適宜設定することが必要である。
反応容器内の圧力も同様に層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合1×10-2〜1×103Pa、好ましくは5×10-2〜5×102Pa、最適には1×10-1〜1×102Paである。
さらに、支持体の温度は、層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合、好ましくは150〜350℃、より好ましくは180〜330℃、最適には200〜300℃である。
本発明において、上部阻止層406を形成するための希釈ガスの混合比、ガス圧、放電電力、支持体温度の望ましい数値範囲として前記した範囲が挙げられるが、これらの層作製ファクターは通常は独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する感光体を形成すべく相互的かつ有機的関連性に基づいて各層作製ファクターの最適値を決めるのが望ましい。
「表面層」
本発明の電子写真感光体において、必要に応じて最表面に設けられる表面層305は自由表面を有し、主に耐湿性、連続繰り返し使用特性、電気的耐圧性、使用環境特性、耐久性の改善に効果を奏する。
また、a−Si系の表面層305は、光導電層を構成する光導電層領域303、304と表面層305とを形成する非晶質材料の各々がシリコン原子という共通の構成要素を有しているので、積層界面において化学的な安定性の確保が十分成されている。表面層305の材質としてa−Si系の材料を用いる場合は、炭素、窒素、酸素より選ばれた元素を少なくとも1つ含むシリコン原子との化合物が好ましく、特にa−SiCを主成分としたものが好ましい。
表面層305が炭素、窒素、酸素のいずれか一つ以上を含む場合、これらの原子の含有量は、ネットワークを構成する全原子に対して30%から95%の範囲が好ましい。
通常は、表面層305中に水素原子及び/又はハロゲン原子が含有されることが必要であるが、これはシリコン原子の未結合手を補償し、層品質の向上、特に光導電性特性及び電荷保持特性を向上させるためである。水素含有量は、構成原子の総量に対して通常の場合30〜70原子%、好適には35〜65原子%、最適には40〜60原子%とするのが望ましい。また、弗素原子の含有量として、通常の場合は0.01〜15原子%、好適には0.1〜10原子%、最適には0.5〜5原子%である。
これらの水素及び/又は弗素含有量の範囲内で形成される感光体は、実際面において優れたものとして充分適用させ得るものである。すなわち、表面層305内に存在する欠陥(主にシリコン原子や炭素原子のダングリングボンド)は、電子写真感光体としての特性に悪影響を及ぼすことが知られている。例えば自由表面から電荷の注入による帯電特性の劣化、使用環境、例えば高い湿度のもとで表面構造が変化することによる帯電特性の変動、更にコロナ帯電時や光照射時に光導電層より表面層に電荷が注入され、この表面層内の欠陥に電荷がトラップされることによる繰り返し使用時の残像現象の発生等が、この悪影響として挙げられる。
しかしながら、前記表面層305内の水素含有量を30原子%以上に制御することで表面層内の欠陥が大幅に減少し、その結果、従来に比べて電気的特性面及び高速連続使用性において向上を図ることができる。
一方、前記表面層305中の水素含有量が70原子%を越えると表面層の硬度が低下するために、繰り返し使用に耐えられなくなる。従って、水素含有量を前記の範囲内に制御することが優れた所望の電子写真特性を得る上で重要な因子の1つである。表面層407中の水素含有量は、原料ガスの流量、希釈ガスと原料ガスの流量比、支持体温度、放電パワー、ガス圧等によって制御し得る。
また、前記表面層305中の弗素含有量を0.01原子%以上の範囲に制御することで、表面層内のシリコン原子と炭素原子との結合の発生をより効果的に達成することが可能となる。さらに、弗素原子の働きとして、コロナ等のダメージによるシリコン原子と炭素原子との結合の切断を効果的に防止することができる。
一方、前記表面層305中の弗素含有量が15原子%を超えると表面層内のシリコン原子と炭素原子との結合の発生の効果及びコロナ等のダメージによるシリコン原子と炭素原子との結合の切断を防止する効果がほとんど認められなくなる。さらに、過剰の弗素原子が表面層中のキャリアの走行性を阻害するため、残留電位や画像メモリーが顕著に認められてくる。従って、弗素含有量を前記範囲内に制御することが所望の電子写真特性を得る上で重要な因子の1つである。前記表面層305中の弗素含有量は、水素含有量と同様に弗素原子を含有している原料ガスの流量、支持体温度、放電パワー、ガス圧等によって制御し得る。
さらに、表面層305には必要に応じて伝導性を制御する原子を含有させてもよい。伝導性を制御する原子は、表面層中に万偏なく均一に分布した状態で含有されても良いし、あるいは層厚方向には不均一な分布状態で含有している部分があってもよい。
前記の伝導性を制御する原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができ、第13族原子、又は第15族原子を用いることができる。
表面層305の層厚としては、通常0.01〜3μm、好適には0.05〜2μm、最適には0.1〜1μmである。層厚が0.01μmよりも薄いと感光体を使用中に摩耗等の理由により表面層305が失われてしまい、3μmを越えると残留電位の増加等の電子写真特性の低下がみられる。
本発明の目的を達成し得る特性を有する表面層305を形成するには、支持体の温度、反応容器内のガス圧を所望により適宜設定する必要がある。支持体温度は、層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合、好ましくは150〜350℃、より好ましくは180〜330℃、最適には200〜300℃である。
反応容器内の圧力も同様に層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合1×10-2〜1×103Pa、好ましくは5×10-2〜5×102Pa、最適には1×10-1〜1×102Paである。
本発明においては、表面層305を形成するための支持体温度、ガス圧の望ましい数値範囲として前記した範囲が挙げられるが、条件は通常は独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する感光体を形成すべく相互的且つ有機的関連性に基づいて最適値を決めるのが望ましい。
「a−Si感光体製造装置」
図5は、Radio Frequency(RF)帯の高周波電源を用いたRFプラズマCVD法による感光体の堆積装置の一例を模式的に示した図である。また、図6は、RF帯より周波数の高いVHF帯を用いるVHF電源を使用したVHFプラズマCVD法による感光体の堆積装置の一例を模式的に示した図である。
これらの装置は大別すると、堆積装置5100、6100、原料ガスの供給装置5200、反応容器5110、6110内を減圧する為の排気装置(図示せず)から構成されている。図5及び図6の両装置は、図5の堆積装置5100と図6の堆積装置6100とを置き換えることで構成される。
但し、印加する高周波電力は50MHz〜450MHz、例えば周波数105MHzのVHF電源により行ない、圧力は13.3mPa〜1330Pa程度とRFプラズマCVD法よりも低めに保たれる。
堆積装置6100中の判の容器6110内にはアースに接続された支持体6112、支持体の加熱用ヒーター6113、原料ガス導入管6114が設置され、更に高周波マッチングボックス6115を介して高周波電源6120が接続されている。
原料ガス供給装置5200は、SiH4、H2、CH4、NO、B26、CF4等の原料ガスボンベ5221〜5226とバルブ5231〜5236、5241〜5246、5251〜5256及びマスフローコントローラー5211〜5216から構成され、各構成ガスのボンベはバルブ5260を介して反応容器6110内のガス導入管6114に接続されている。
支持体6112は導電性受け台6123の上に設置されることによってアースに接続される。
以下、図6の装置を用いた感光体の形成方法の手順の一例について説明する。
反応容器6110内に支持体6112を設置し、不図示の排気装置(例えば真空ポンプ)により反応容器6110内を排気する。続いて支持体加熱用ヒーター6113により支持体6112の温度を200℃〜450℃、より好ましくは250℃〜350℃の所望の温度に制御する。次いで、感光体形成用の原料ガスを反応容器6110内に流入させるにはガスボンベのバルブ5231〜5236、反応容器のリークバルブ(不図示)が閉じられている事を確認し又、流入バルブ5241〜5246、流出バルブ5251〜5256、補助バルブ5260が開かれている事を確認し、メインバルブ6118を開いて反応容器6110及びガス供給配管6116を排気する。
その後、真空計6119の読みが0.5mPaになった時点で補助バルブ5260、流出バルブ5251〜5256を閉じる。その後ガスボンベ5221〜5226より各ガスをバルブ5231〜5236を開いて導入し圧力調整器5261〜5266により各ガス圧を0.2MPaに調整する。次に流入バルブ5241〜5246を徐々に開けて各ガスをマスフローコントローラー5211〜5216内に導入する。
以上の手順によって成膜準備を完了した後、支持体6112上に、光導電層の形成を行なう。
即ち、支持体6112が所望の温度になったところで、各流出バルブ5251〜5256のうちの必要なものと補助バルブ5260とを徐々に開き、各ガスボンベ5221〜5226から所望の原料ガスをガス導入管6114を介して反応容器6110内に導入する。次に、各マスフローコントローラー5211〜5216によって、各原料ガスが所望の流量になる様に調整する。その際、反応容器6110内が13.3mPa〜1330Paの所望の圧力になる様に、真空計6119を見ながらメインバルブ6118の開口を調整する。内圧が安定したところで、高周波電源6120を所望の電力に設定して例えば、50MHz〜450MHz、例えば周波数105MHzのVHF電源を用いて高周波電力を高周波マッチングボックス6115を通じてカソード電極6111に供給し高周波グロー放電を生起させる。この放電エネルギーによって反応容器6110内に導入させた各原料ガスが分解され、支持体6112上に所望のシリコン原子を主成分とする光導電層が堆積される。
本装置においては支持体6112により取り囲まれた放電空間6130において、導入された原料ガスは、放電エネルギーにより励起されて解離し、支持体6112上に所定の堆積膜が形成される。この時、層形成の均一化を図るため支持体回転用モーター6120によって、所望の回転速度で回転させる。
所望の層厚の形成が行なわれた後、高周波電力の供給を止め、各流出バルブ5251〜5256を閉じて反応容器6110への各原料ガスの流入を止め、1回目の光導電層領域の形成を終える。光導電層の組成や層厚は公知のものを使用することができる。上記光導電層と支持体の間に下部阻止層を形成する場合も基本的には上記の操作をあらかじめ行えばよい。
上記の手順で1回目の光導電層領域まで堆積した支持体は一旦、第一の反応容器から取り出し、第二の反応容器に移すことが重要である。
そして、上記と同様の手順で所望の厚さの光導電層領域を複数回にわたり堆積させることが重要である。
さらに、最表面には、Si含有ガス及び炭素含有ガスを用いて、SiC系の表面層を積層する。その場合も基本的には上記の操作を行えばよい。
表面層を形成する場合も基本的には上記の操作を行えばよい。
図5に示すRFプラズマCVD法の場合は、印加する高周波電力は周波数1MHz〜50MHz未満、例えば13.56MHzの高周波電力を高周波マッチングボックス5115を通じてカソード電極5111に供給し高周波グロー放電を生起させる。この放電エネルギーによって反応容器5110内に導入させた各原料ガスが分解され、支持体5112上に所望のシリコン原子を主成分とする光導電層が堆積される。その時、圧力は13.3Pa〜1330Pa程度とVHFプラズマCVD法よりも高めに保たれる。
その他、手順は上記図6の装置での形成方法と同様である。
「電子写真装置」
本発明の電子写真感光体を用いた電子写真装置の一例を図9に示す。尚、本例の装置は、円筒状の電子写真感光体を用いる場合に好適なものであるが、本発明の電子写真装置は本例に限定されるものではなく、感光体形状は無端ベルト状等の所望のものであってよい。
図9において、904が本発明で言うところの電子写真感光体であり、905は該感光体904に静電潜像形成のための帯電を行なう一次帯電器である。図ではコロナ帯電器を記載してあるが、接触帯電器でもよい。906は静電潜像の形成された感光体904に現像材(トナー)906aを供給するための現像器であり、907は感光体表面のトナーを転写材に移行させるための転写帯電器である。図ではコロナ帯電器を記載してあるが、ローラー電極でもよい。908は感光体表面の浄化を図るクリーナーである。本例では感光体表面の均一浄化を有効に行なうため、弾性ローラー908-1とクリーニングブレード908-2を用いて感光体表面の浄化を行なっているが、いずれか一方のみ、もしくはクリーナー908自体を具備しない構成も設計可能である。909及び910は、それぞれ次回の複写動作にそなえて感光体表面の除電を行なうためのAC除電器及び除電ランプであるが、もちろんいずれかがない、若しくは両者ともない構成も設計可能である。913は紙等の転写材、914は転写材の送りローラーである。露光Aの光源には、ハロゲン光源、或いは単一波長を主とするレーザー、LEDなどの光源を用いる。
このような装置を用い、複写画像の形成は例えば以下のように行なわれる。
まず電子写真感光体904を所定の速度で矢印の方向へ回転させ、一次帯電器905を用いて感光体904の表面を一様に帯電させる。次に、帯電された感光体904の表面に画像の露光Aを行ない、該画像の静電潜像を感光体904の表面に形成させる。そして感光体904の表面の静電潜像の形成された部分が現像器906の設置部を通過する際に、現像器906によってトナーが感光体904の表面に供給され、静電潜像がトナー906aによる画像として顕像化(現像)され、更にこのトナー画像は感光体904の回転とともに転写帯電器907の設置部に到達し、ここで送りローラー914によって送られてくる転写材913に転写されるのである。
転写終了後、次の複写工程に備えるために電子写真感光体904の表面から残留トナーがクリーナー908によって除去され、更に該表面の電位がゼロ若しくは殆どゼロとなるように除電器909及び除電ランプ910により除電され1回の複写工程を終了する。
「真空搬送装置を用いた電子写真感光体の製造装置」
図10に示すように、本実施形態の電子写真感光体の製造装置は、導電性材料から成る円筒状支持体1009を製造装置内に投入するための投入容器1001と、円筒上支持体1009を所定の温度に加熱するための加熱容器1002と、円筒状支持体1009を各加熱容器、反応容器へ真空に気密した状態で移動させる真空搬送装置1006を有している。円筒状支持体1009上に光導電層を形成するための反応容器1003と、反応容器1003で光導電層が途中まで堆積した円筒状支持体1009を真空搬送装置1006を用いて、別の反応容器1004に移し替えて、光導電層領域304及び表面層305を堆積させる。そして、堆積膜が形成された円筒状支持体1009を製造装置から冷却して取り出すための取り出し容器1005に移される。
装置構成は、投入容器1001内に投入された円筒状支持体1009を、加熱容器1002、反応容器1003、反応容器1004、及び冷却取り出し容器1005の順にそれぞれ搬送するための真空搬送容器1006とを有する。なお、反応容器1003には反応容器1003内に高周波電力を供給する第1の高周波電源1007が接続され、反応容器1004には第2の反応容器1004内に高周波電力を供給する第2の高周波電源1008が接続されている。
以下、実験例及び実施例により、本発明を更に詳細に説明する。
[実験例1]
図5に示したa−Si感光体製造装置を用いて、表1に示した条件で外径108mm、厚さ5mmのAl支持体に、光導電層を1回の堆積で形成した感光体を製造した。このとき、光導電層の層厚を2〜38μmまで変化させて、光導電層層厚と突起の個数及び大きさの関係を感光体表面を光学顕微鏡を用いて観察した。その感光体表面の100cm2当たりの突起の大きさと個数を測定した。測定結果をグラフにして図7に示す。
Figure 2004206090
[実験例2]
図5に示したa−Si感光体製造装置を用いて、表2に示した条件で実験例1と同様のAl支持体に、下部阻止層、光導電層、表面層を堆積した感光体を10本製造した。このとき、光導電層は実験例1の表1と同じ条件で、層厚を30μm堆積させた。
10本の感光体表面の突起の大きさを光学顕微鏡を用いて測定した。
次に、その測定した突起に起因する黒ポチの大きさを測定するために、一次帯電器としてコロナ放電を採用し、また、クリーナーにクリーニングブレードを具える電子写真装置に、本実施例で作製した電子写真用感光体を装着して画像形成を行った。具体的には、キヤノン製GP605(プロセススピード300mm/sec、イメージ露光)を用いて、A3サイズの白紙原稿を複写した。こうして得られた画像を観察し、黒ポチの長径を測定した。
次に、その黒ポチの個数を数えた。感光体表面の突起の大きさと黒ポチの大きさの関係を図8に示す。
Figure 2004206090
図7より、層厚が15μmよりも厚くなると、突起の長径10μmを越える物が増加することがわかる。また、図8より、0.1mmを越える黒ポチになるものは、突起の長径が15μmよりも大きいもので有ることが分かる。さらに、0.05mmを越える黒ポチになるものは、突起の長径が10μmよりも大きいもので有ることが分かる。
以上より、突起の長径で15μmを越える物を作らないこと、すなわち一つの反応容器で堆積させる層厚を15μm以下にすることが重要である。また長径15μm以上の突起数は5個/100cm2以下であることが好ましい。さらに好ましくは、突起の長径が10μm以上の突起数を10個/100cm2以下に押さえること、すなわち一つの反応容器で堆積させる層厚を12μm以下にすることが重要である。
[実施例1]
図5に示した製造装置を用いて、表3に示した条件で外径108mm、厚み5mmのAl支持体に、下部阻止層から1回目の光導電層領域まで堆積した感光体を製造した。次いで、その状態で搬送チャンバーを用いて真空状態で、別の反応容器に移し、表4に示した条件で第二の積層を行い2回目の光導電層領域を堆積させた。さらに、光導電層の層厚が30μmに達するまで、表6に示す様に一つの反応容器で堆積させる光導電層の層厚にしたがって複数回、別の反応容器に移し替えて堆積させた。最期の反応容器では表5に示す表面層を堆積させた。
Figure 2004206090
Figure 2004206090
Figure 2004206090
Figure 2004206090
以上の手順で得られた感光体は正帯電で用いられる感光体であり、次のように評価した。
(突起の数)
得られた感光体の表面を光学顕微鏡で観察した。そして、長径10μm以上の突起の数を数え、100cm2当たりの個数を調べた。
得られた結果は、比較例1での値を100%とした場合の相対比較でランク付けを行った。
「☆」…0%以上15%未満。
「◎」…15%以上30%未満。
「○」…30%以上50%未満。
「△」…50%以上80%未満。
「×」…80%以上105%未満。
(画像欠陥)
一次帯電器としてコロナ放電を採用し、また、クリーナーにクリーニングブレードを具える電子写真装置に、本実施例で作製した電子写真用感光体を装着して画像形成を行った。具体的には、キヤノン製GP605(プロセススピード300mm/sec、イメージ露光)を用いた。
また、負帯電用感光体を評価するときには、GP605ベースに負帯電が可能なように改造し、トナーをネガトナーに変更した複写機を試験用電子写真装置として用い、A3サイズの白紙原稿を複写した。こうして得られた画像を観察し、直径0.1mm以上の突起に起因する黒ポチの個数を数えた。
得られた結果は、比較例1での値を100%とした場合の相対比較でランク付けを行った。
「☆」…0%以上15%未満。
「◎」…15%以上30%未満。
「○」…30%以上50%未満。
「△」…50%以上80%未満。
「×」…80%以上105%未満。
(帯電能)
電子写真感光体を電子写真装置に設置し、帯電器に+6kV(負帯電の場合には−6kV)の高電圧を印加しコロナ帯電を行ない、現像器位置に設置した表面電位計により電子写真感光体の暗部表面電位を測定する。
得られた結果は、比較例1での値を100%とした場合の相対評価でランク付けを行った。数値の比較は絶対値で行った。
「☆」…120%以上。
「◎」…110%以上、120%未満。
「○」…105%以上、110%未満。
「△」…95%以上、105%未満。
「×」…95%未満。
(残留電位)
電子写真感光体を、一定の暗部表面電位(450V、負帯電の場合は−450V)に帯電させる。そして直ちに一定光量の比較的強い光(1.5Lx・sec)を照射する。この時、現像器位置に設置した表面電位計により電子写真用光感光体の残留電位を測定する。
得られた結果は、比較例1での値を100%とした場合の相対評価でランク付けを行った。数値の比較は絶対値で行った。
「☆」…75%未満。
「◎」…75%以上、85%未満。
「○」…85%以上、95%未満。
「△」…95%以上、105%未満。
「×」…105%以上。
(電位均一性)
電子写真感光体を、一定の暗部表面電位(450V、負帯電の場合は−450V)に帯電させる。そして直ちに一定光量の光(0.5Lx・sec)を照射する。この時、現像器位置に設置した表面電位計により電子写真用光感光体のドラム軸方向中央部の表面電位をおよそ200V(負帯電の場合は−200V)になるように、光量を調節する。そして、周方向の電位分布及び、ドラム軸方向の電位分布を測定し、最大値−最小値の値を計算する。
得られた結果は、比較例1での値を100%とした場合の相対評価でランク付けを行った。数値の比較は絶対値で行った。
「☆」…85%未満。
「◎」…85%以上、95%未満
「○」…95%以上、105%未満。
「△」…105%以上、110%未満。
「×」…110%以上。
(コスト)
1本の感光体当たりの生産時間を計算して、各々の例のコストとした。図6に示したVHF方式の堆積装置は、1回に8本の電子写真感光体が生産できる。また図5に示したRF方式の堆積装置は1回に1本とした。
比較例1での値を100%とした場合の相対評価でランク付けを行った。
「☆」…95%未満。
「◎」…95%以上、110%未満。
「○」…110%以上、125%未満。
「△」…125%以上、140%未満。
「×」…140%以上。
(総合評価)
本発明の効果である画像欠陥改善の効果を重点において、総合的な評価をランクで示す。
「☆」…非常に良好。
「◎」…良好。
「○」…やや良好。
「△」…実用上問題なし。
「×」…実用面で問題有り。
以上の方法で総合評価を行なった。結果を比較例1と共に表8に示す。
[比較例1]
図5に示した製造装置を用いて、外径108mm、厚み5mmのAl支持体に、表7に示した条件で一つの反応容器で下部阻止層、光導電層、表面層を連続して堆積した。以上のように作製した正帯電用感光体は実施例1と同様に評価し、結果を表8に示した。
Figure 2004206090
Figure 2004206090
表8から分かるように、1つの反応容器で堆積する層領域の厚さを15μm以下にすることで、突起の数及び画像欠陥であるポチの数は非常に改善することが分かる。しかしながら、1つの反応容器で堆積する厚さを薄くしていくと入れ替え回数が増え、コストが増大してしまい、入れ替え回数は1〜5回が好ましいことが分かる。
[実施例2]
図5に示した製造装置を用いて、表9に示した条件で実施例1と同様のAl支持体に感光体(2-A〜2-F)を製造した。光導電層は、表10に示すように1つの反応容器で堆積させる層領域の厚みを変化させた。
さらに、図5に示した製造装置を用いて、実施例1と同様のAl支持体に、表9に示した条件で一つの反応容器で下部阻止層、光導電層、表面層を堆積して、感光体(2−G〜2−I)を製造した。光導電層は、表10に示すように1つの反応容器で堆積させる層領域の厚さを変化させた。以上のように作製した正帯電用感光体は実施例1と同様に評価し、結果を表11に示した。
Figure 2004206090
Figure 2004206090
Figure 2004206090
表11から分かるように、光導電層領域の支持体側から厚さが3μm以上15μm以内に、反応容器を入れ替えることで、突起の数及び画像欠陥であるポチの数は非常に改善することが分かる。光導電層の層厚を厚くしていくと、帯電能、残留電位は改善するが、突起、画像欠陥及びコストの面で不利になることが分かる。以上より、光導電層の層厚は10μm以上60μm以下が、総合的に良好なことが分かる。
[実施例3]
実施例2において、表面層を変化させながら作製した。実施例2と同様のAl支持体に、表12に示した条件で下部阻止層、光導電層、表面層を堆積した。このとき、光導電層は光導電層領域を10μmごとに反応容器を変えて3回堆積させ形成した。
Figure 2004206090
以上のように作製した正帯電用感光体は実施例1と同様に評価したところ、結果を表14に示した。
[実施例4]
光導電層の堆積条件を実施例3とは異ならせる以外は、実施例3と同様にしてAl支持体に、表13に示した条件で下部阻止層、光導電層、表面層を堆積した。このとき、光導電層は光導電層領域を10μmごとに反応容器を変えて3回堆積させ形成した。
Figure 2004206090
以上のように作製した正帯電用感光体は実施例1と同様に評価したところ、結果を表14に示した。
Figure 2004206090
表14から分かるように、表面層に変化領域を設けても、堆積条件が異なる光導電層領域を積層して光導電層を設けても、光導電層領域を堆積する時に支持体側から厚さ3μm以上15μm以内に反応容器を入れ替えることで本発明の効果は得られて、突起の数及び画像欠陥であるポチの数は非常に改善することが分かる。
[実施例5]
図5の製造装置を用いて、表15に示した条件で下部阻止層、光導電層、上部阻止層、表面層を堆積した以外は実施例2と同様にして、負帯電用感光体を作製した。このとき、光導電層は光導電層領域を10μmごとに反応容器を変えて3回堆積させ形成した。
Figure 2004206090
以上のように作製した負帯電用感光体は実施例1と同様に評価した。表17に結果を示す。
[実施例6]
実施例5と同様にして、下部阻止層にリンを含有させた負帯電用感光体を作製した。表16に示した条件で下部阻止層、光導電層、上部阻止層、表面層を堆積し、下部阻止層にリンを含有させた負帯電用感光体を作製した。このとき、光導電層は光導電層領域を12μmごとに反応容器を変えて3回堆積させ形成した。
Figure 2004206090
以上のように作製した負帯電用感光体は実施例1と同様に評価した。結果を表17に示す。
Figure 2004206090
表17から分かるように、Pを含有する下部阻止層を有する負帯電用感光体や、a−Si,C,N,O:Hの下部阻止層を有する負帯電用感光体であっても、光導電層領域の支持体側から厚さ3μm以上15μm以内に反応容器を入れ替えることで本発明の効果は得られて、突起の数及び画像欠陥であるポチの数は非常に改善することが分かる。
[実施例7]
図6に示したVHF−CVD法の製造装置を用いて、表18に示した条件で外径108mm、厚さ5mmのAl支持体に、光導電層として下部阻止層と光導電層、表面層からなる感光体を製造した。このとき、光導電層は光導電層領域を8μmごとに反応容器を変えて4回堆積させ形成した。
Figure 2004206090
以上のように作製した正帯電用感光体は実施例1と同様に評価した。評価結果を表20に示す。
[実施例8]
実施例7と同様にして、図6に示したVHF−CVD法の製造装置を用いて、負帯電用感光体を作製した。表19に示した条件でAl支持体に、光導電層として下部阻止層と光導電層、上部阻止層、表面層からなる感光体を製造した。このとき、光導電層は光導電層領域を15μmごとに反応容器を変えて3回堆積させ形成した。
Figure 2004206090
以上のように作製した負帯電用感光体は実施例1と同様に評価した。評価結果を表20に示す。
[比較例2]
図6示した製造装置を用いて、外径108mm、厚さ5mmのAl支持体に、表18に示した条件で、ただし光導電層については、突起の成長を停止させる処理を行わずに、一つの反応容器で下部阻止層、光導電層、表面層を堆積した。以上のように作製した正帯電用感光体は実施例1と同様に評価し、結果を表20に示した。
[比較例3]
図6示した製造装置を用いて、外径108mm、厚さ5mmのAl支持体に、表19に示した条件で、ただし光導電層については、突起の成長を停止させる処理を行わずに、一つの反応容器で下部阻止層、光導電層、上部阻止層、表面層を堆積した。以上のように作製した正帯電用感光体は実施例1と同様に評価し、結果を表20に示した。
Figure 2004206090
表20から分かるように、RF−CVD法に変えてVHF−CVD法で感光体を作製した場合でも、光導電層領域の支持体側から厚さ3μm以上15μm以内に反応容器を入れ替えることで本発明の効果は得られて、突起の数及び画像欠陥であるポチの数は非常に改善することが分かる。
[実施例9]
実施例9では、図10に示した製造装置を用いて光導電層の途中で、反応容器を移し替える際には、搬送用真空容器を用いて行うようにした。その他は、実施例4と同じようにしてAl支持体に、表21に示した条件で下部阻止層、光導電層、表面層を堆積させた。このとき、光導電層は光導電層領域を10μmごとに反応容器を変えて3回堆積させ形成した。
Figure 2004206090
以上のように作製した正帯電用感光体は実施例1と同様に評価した。評価結果を表23に示す。
[実施例10]
図10に示した製造装置を用いて光導電層の途中で、反応容器を移し替える際には、搬送用真空容器に堆積させた支持体を移し、その間に堆積に使用した反応容器のクリーニングを行い、清浄な状態にした後に、真空搬送装置から堆積途中の支持体を移して、光導電層の堆積に行うようにした。その他は、実施例3と同じようにしてAl支持体に、表22に示した条件で下部阻止層、光導電層、表面層を堆積させた。このとき、光導電層は光導電層領域を10μmごとに反応容器を変えて3回堆積させ形成した。
Figure 2004206090
以上のように作製した正帯電用感光体は実施例1と同様に評価した。評価結果を表23に示す。
Figure 2004206090
表23から分かるように、搬送用真空容器を用いた製造装置で感光体を作製した場合でも、またクリーニング後の反応容器で感光体を作製した場合でも、光導電層領域の支持体側から厚さ3μm以上15μm以内に反応容器を入れ替えることで本発明の効果は得られて、突起の数及び画像欠陥であるポチの数は非常に改善することが分かる。
[実施例11]
図10に示した製造装置を用いて光導電層の途中で、反応容器を移し替える際には、真空搬送装置を用いて行うようにした。
実施例11では、反応容器に堆積途中の支持体を設置後に、光導電層表面を表25に示す条件で水素プラズマ処理を施してから、光導電層の堆積を再開した。その他は、実施例4と同じようにしてAl支持体に、表24に示した条件で下部阻止層、光導電層、表面層を堆積させた。このとき、光導電層は光導電層領域を10μmごとに反応容器を変えて、その度にプラズマ処理を行ってから堆積させた。
Figure 2004206090
Figure 2004206090
以上のように作製した正帯電用感光体は実施例1と同様に評価した。結果を表27に示す。
[実施例12]
図10に示した製造装置を用いて光導電層の途中で、反応容器を移し替える際には、真空搬送装置を用いて行うようにした。
実施例12では、反応容器に堆積途中の支持体を設置後に、光導電層が堆積された支持体を加熱し、300℃で120分から保持して熱処理した、その後所定の温度にして光導電層の堆積を再開した。その他は、実施例4と同じようにしてAl支持体に、表26に示した条件で下部阻止層、光導電層、表面層を堆積させた。このとき、光導電層は光導電層領域を10μmごとに反応容器を変えて、その度に熱処理を行ってから堆積させた。
Figure 2004206090
以上のように作製した正帯電用感光体は実施例1と同様に評価した。結果を表27に示す。
Figure 2004206090
表27から分かるように、プラズマ処理することによって、層の電気的接合性が改善されて、帯電能、残留電位の面で改善が見られた。また、堆積途中の感光体を熱処理することで、膜構造の緩和が進み、電位特性が改善された。
さらに、光導電層領域の支持体側から厚さ3μm以上15μm以内に、反応容器を入れ替えることで、突起の数及び画像欠陥であるポチの数は非常に改善することが分かる。
[実施例13]
図5に示した製造装置を用いて、外径80mm,長さ358mm、厚み3mmのAl支持体に、下部阻止層にリンを含有させた負帯電用感光体を作製した。表28に示した条件で下部阻止層、光導電層、上部阻止層、表面層を堆積した。このとき、光導電層は光導電層領域を9μmごとに反応容器を変えて4回堆積させ形成した。
Figure 2004206090
以上のように作製した負帯電用感光体を、キヤノン製、PIXEL CLC-500機の帯電系及び現像系を改造し、アモルファスシリコン電子写真感光体用に調整したフルカラー電子写真装置を用いた以外は、実施例1と同様に評価した。結果を表30に示す。
[実施例14]
実施例13と同様に、図5に示した製造装置を用いて、外径80mm,長さ358mm厚み3mmのAl支持体に、下部阻止層に炭素を含有させた負帯電用感光体を作製した。表29に示した条件で下部阻止層、光導電層、上部阻止層、表面層を堆積した。このとき、光導電層は光導電層領域を10μmごとに反応容器を変えて3回堆積させ形成した。
Figure 2004206090
以上のように作製した負帯電用感光体を、実施例13と同様に評価した。結果を表30に示す。
Figure 2004206090
表30から分かるように、負帯電用感光体や、a−Si,C,N,O:Hの下部阻止層を有する負帯電用感光体は、光導電層領域の支持体側から層厚さが3μm以上15μm以内で反応容器を入れ替えることで、突起及び画像欠陥であるポチの数は非常に改善することが分かる。このような負帯電用感光体をフルカラー電子写真装置で用いることで、高画質なフルカラー画像が得られる。
本発明の電子写真感光体の突起の一例を示す模式的断面図である。 従来の電子写真感光体の突起の一例を示す模式的断面図である。 本発明の電子写真感光体の層構成の一例を示す模式的断面図である。 本発明の電子写真感光体の層構成の一例を示す模式的断面図である。 RFを用いたa−Si感光体製造装置の模式的断面図である。 VHFを用いたa−Si感光体製造装置の模式的断面図である。 1回に堆積させる光導電層の厚さと突起の数の関係を示すグラフである。 突起の長径とポチの大きさの関係を示すグラフである。 本発明の電子写真装置の一例の模式的断面図である。 本発明の真空搬送装置を有するa−Si感光体製造装置の模式的断面図である。
符号の説明
101、201 導電性の表面を有する支持体
102 光導電層領域
202 光導電層
103、203 表面層
104、204 ダスト
105、205 突起
106 自由表面
301、401 導電性の表面を有する支持体
302、402 下部阻止層
303、403 第1の光導電層領域
304、404 第2の光導電層領域
305、405 表面層
406 上部阻止層
5100、6100 製造装置
5110、6110 反応容器
5111、6111 カソード電極
5112、6112 導電性の表面を有する支持体
5113、6113 支持体加熱用ヒーター
5114、6114 ガス導入管
5115、6115 高周波マッチングボックス
5116、6116 ガス配管
5117 リークバルブ
5118、6118 メインバルブ
5119、6119 真空計
5120、6120 高周波電源
6123、5123 受け台
5200 ガス供給装置
5211〜5216マスフローコントローラー
5221〜5226ボンベ
5231〜5236バルブ
5241〜5246流入バルブ
5251〜5256流出バルブ
5260 補助バルブ
5261〜5266 圧力調整器
6120 回転モーター
6130 放電空間
904 電子写真感光体
905 一次帯電器
906 現像器
906a 現像剤(トナー)
907 転写帯電器
908 クリーナー
908−1 弾性ローラー
908−2 クリーニングブレード
909 AC除電器
910 除電ランプ
913 転写材
914 送りローラー
A 画像露光(アナログ光、或いはデジタル光)
1001 投入容器
1002 加熱容器
1003 第1の反応容器
1004 第2の反応容器
1005 冷却取り出し容器
1006 真空搬送容器
1007 第1の高周波電源
1008 第2の高周波電源

Claims (21)

  1. 少なくとも表面が伝導性である支持体上に、シリコンを主体とする非晶質材料を含む光導電層を有する電子写真感光体において、前記光導電層が2つ以上の層領域を有し、かつ前記層領域の中で前記電子写真感光体の自由表面に最も近い前記層領域に接する層領域の突起は該層領域の表面で成長が停止していることを特徴とする電子写真感光体。
  2. 光導電層の層領域表面の長径15μm以上の突起の数が、5個/100cm2以下である請求項1記載の電子写真感光体。
  3. 光導電層の層厚が、10〜60μmである請求項1又は2記載の電子写真感光体。
  4. 層領域内の厚みが3μm以上15μm以内にある請求項1乃至3の何れか一項記載の電子写真感光体。
  5. 層領域の数が、層厚方向に2つ以上6つ以下存在する請求項1乃至4の何れか一項記載の電子写真感光体。
  6. 支持体上に、少なくとも電荷注入阻止層、光導電層がこの順に積層されている請求項1乃至5の何れか一項記載の電子写真感光体。
  7. 光導電層上に表面保護層が積層されている請求項1乃至6の何れか一項記載の電子写真感光体。
  8. 光導電層上に電荷注入阻止層と表面保護層が積層されている請求項1乃至7の何れか一項記載の電子写真感光体。
  9. 少なくとも表面が導電性である支持体上に、シリコンを主体とする非晶質材料を含んだ2つ以上の層領域を有する光導電層を備えた電子写真感光体の製造方法において、前記光導電層の形成過程において突起の成長を停止させる処理を行うことにより、前記電子写真感光体の自由表面に最も近い前記層領域に接する層領域の表面で前記突起の成長が停止している部分を有する前記光導電層を形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
  10. 突起の成長を停止させる処理は、光導電層の層領域が堆積された支持体を反応容器から取り出すことにより行う請求項9記載の電子写真感光体の製造方法。
  11. 突起の成長を停止させる処理は、支持体を反応容器から真空中に取り出すことにより行う請求項10記載の電子写真感光体の製造方法。
  12. 突起の成長を停止させる処理を、光導電層領域の支持体側から3μm以上15μm以内に行う請求項9乃至11の何れか一項記載の電子写真感光体の製造方法。
  13. 支持体投入容器、支持体加熱容器、反応容器、支持体冷却及び排出容器をそれぞれ真空容器で形成し、搬送用真空容器を前記支持体投入容器等間を移動させ、前記搬送用真空容器と前記支持体投入容器等の各真空容器とを開閉ゲートを介して接続させて、支持体を前記搬送用真空容器と前記支持体投入容器等の各真空容器間で出し入れ移動可能とし、前記反応容器内に設置された前記支持体上に、シリコンを主体とする非晶質材料を含む光導電層領域を堆積した後に前記搬送用真空容器で前記光導電層領域が堆積された支持体を、別の容器に搬送設置しシリコンを主体とする非晶質材料を含む光導電層領域の堆積を繰り返す請求項9乃至12の何れか一項記載の電子写真感光体の製造方法。
  14. 搬送用真空容器は、支持体投入容器から反応容器に搬送する搬送用真空容器、反応容器から同一もしくは別の反応容器に搬送する搬送用真空容器、反応容器から排出容器に搬送する搬送用真空容器を有している請求項13記載の電子写真感光体の製造方法。
  15. 反応容器の容器内面のクリーニング処理後に、光導電層領域が堆積された支持体が搬送されて、光導電層領域を積層する請求項13記載の電子写真感光体の製造方法。
  16. 1つの反応容器で堆積される前記光導電層領域の厚さは、3μm以上15μm以内である請求項13乃至15の何れか一項記載の電子写真感光体の製造方法。
  17. 光導電層領域の積層を複数回繰り返して光導電層を積層する請求項9乃至16の何れか一項記載の電子写真感光体の製造方法。
  18. 光導電層領域の表面を水素プラズマ処理する請求項9乃至17の何れか一項記載の電子写真感光体の製造方法。
  19. 堆積された光導電層領域を、堆積時よりも高い支持体温度で熱処理する請求項9乃至18の何れか一項記載の電子写真感光体の製造方法。
  20. 熱処理を、搬送用真空容器内で行う請求項19記載の電子写真感光体の製造方法。
  21. 熱処理を、光導電層領域が堆積された支持体を搬送した後に別の反応容器内で行う請求項19記載の電子写真感光体の製造方法。
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