JP2004332026A - 堆積膜形成方法 - Google Patents

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秀彰 松岡
Hiroyuki Katagiri
宏之 片桐
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寿康 白砂
Satoshi Furushima
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Abstract

【課題】電気的特性を犠牲にすることなく、安定して歩留まり良く、微小な異常成長(球状突起)に基づく、画像欠陥が少ない高画質の使いやすい電子写真感光体を製造する方法を提供する。
【解決手段】少なくとも2つのガス導入系統を設けた堆積膜形成装置を用い、、第1のガス導入系統から原料ガスを導入し、その際にその他のガス導入系統からは希釈ガスを導入して膜を堆積し、堆積膜の切換え時にはガス導入系統も切換えることにより上記課題は達成される。なお、ガス系統の切換えは徐々に行なうことが好ましい。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、支持体上に堆積膜、とりわけ機能性堆積膜、殊に半導体デバイス、電子写真感光体、画像入力用のラインセンサー、撮像デバイス、光起電力素子等に用いられるアモルファスあるいは多結晶等の非単結晶の堆積膜を利用した光受容部材を形成するのに適したプラズマCVD法による堆積膜形成方法及び該堆積膜形成に適した装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体デバイス、電子写真用感光体デバイス、画像入力用ラインセンサー、撮像デバイス、光起電力デバイス、その他各種エレクトロニクス素子、光学素子等に用いる素子部材として、アモルファスシリコン、例えば水素原子及び/又はハロゲン原子(例えば弗素、塩素等)で補償されたアモルファスシリコン(以下、“a−Si:(H,X)”と記す。)等のアモルファス材料で構成された半導体等用の堆積膜が提案され、その中のいくつかは実用に供されている。
【0003】
こうした堆積膜はプラズマCVD法、即ち原料ガスを直流、又は高周波、マイクロ波グロー放電によって分解し、ガラス、石英、耐熱性合成樹脂フィルム、ステンレス、アルミニウムなどの材質の支持体上に薄膜状の堆積膜を形成する方法が知られており、電子写真用感光体のような大面積を有する堆積膜を形成する場合、膜厚、膜特性の均一化が必要であり、そのための装置構成も各種提案されている。
【0004】
円筒電極内壁円筒面に配列された原料ガス噴出口の開口率がガス導入管の連結位置から排気方向に向かって逓増(例えば、特許文献1参照)/逓減(例えば、特許文献2参照)するように構成することによって画像欠陥の原因となる突起を抑制する技術が開示されている。
【0005】
また、原料ガス導入に、円筒状電極とは独立した、ガス導入用ガス導入管を用い、該ガス導入管に設けたガス噴出口の断面積と間隔を円筒形支持体の長手方向で変化させ、原料ガスを均一に放出することにより、膜厚及び電子写真用感光体として使用する場合の画像ムラを改善する技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
ガス導入管のガス放出孔と円筒状支持体との角度と、円筒状電極の内径、該円筒状支持体の内径との関係を規定することにより、支持体を回転させなくても膜厚、膜特性の均一性を改善する技術が開示されている(例えば、特許文献4、特許文献5参照)。
【0007】
ガス導入管を用い、ガス導入管の断面積、ガス放出孔の断面積と数の関係を規定することにより、円筒形支持体を回転させずに、形成される堆積膜の膜厚及び膜特性を均一にする技術が開示されている(例えば、特許文献6参照)。
【0008】
原料ガス導入管を複数のガス導入系で構成し、堆積膜形成用原料ガス導入系と希釈ガス導入系を独立させることにより反応空間のガスの流速及び分布を均一にする技術が開示されている(例えば、特許文献7参照)。
【0009】
円筒状支持体の同軸外周部にガス放出孔を設けたガス導入系と円筒支持体の長手方向に沿って設けたガス導入系の両方から同時に原料ガスを導入し、さらに各々のガス導入系の流量の関係を規定することで、コンダクタンスの違い等から起こる原料ガスの不均一性を改善し、特に堆積容器内上部の不均一性が低減し、膜厚、膜特性の均一性を向上させる技術が開示されている(例えば、特許文献8参照)。
【0010】
二つ以上のガス導入系を有し、かつガス導入管には2方向の放出孔を持ち、ガス導入系毎に原料ガス混合比率を独立に制御して導入することにより、反応空間の上部と下部でプラズマ強度が不均一になってしまうことを改善する技術が開示されている(例えば、特許文献9参照)。
【0011】
電極に複数の長手方向のガス導入系を内接させることで、ガスを均一に反応容器内に導入する技術が開示されている(例えば、特許文献10参照)。
【0012】
【特許文献1】
特開平3−44475号公報
【特許文献2】
特開平3−44476号公報
【特許文献3】
特開昭58−30125号公報
【特許文献4】
特許第2553330号公報
【特許文献5】
特開平10−168573号公報
【特許文献6】
特開昭63−7373号公報
【特許文献7】
特許第2620782号公報
【特許文献8】
特開平10−183356号公報
【特許文献9】
特許平11−323563号公報
【特許文献10】
特開2000−192242号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の電子写真感光体の製造方法により、ある程度実用的な特性と均一性を持つ電子写真感光体を得ることが可能になった。また、真空反応容器内の清掃を厳格に行えば、ある程度欠陥の少ない電子写真感光体を得ることは可能である。しかし、これら従来の電子写真感光体の製造方法では、電子写真用感光体のように大面積で比較的厚い堆積膜が要求される製品については、例えば均一膜質で光学的及び電気的諸特性の要求を満足し、かつ電子写真プロセスにより画像形成時に画像欠陥の少ない堆積膜を高収率で得るのは難しいという問題が残存している。
【0014】
特に、a−Si堆積膜は、支持体の表面あるいは堆積膜の表面に数μmオーダーのダスト等の核となるものが付着していた場合、堆積中にそれを核として異常成長、いわゆる「球状突起」が成長してしまうという性質を持っている。
【0015】
図8は、電子写真感光体の球状突起が発生メカニズムの例を示す模式的断面図である。この感光体は、少なくとも表面が導電性である支持体801上に、光導電層802と表面層803が、順次堆積形成されてなるものである。光導電層802の形成過程においてダスト804が混入すると、膜の堆積中にこのダスト804が核となって膜内で異常成長が生じ、球状突起805が生成する。この球状突起805は、核を円錐頂点とした形をしており、正常部に比べて帯電電荷の保持能力が低い性質を持っている。
【0016】
このため、球状突起のある部分は、画像上ではベタ黒画像で白い点となって現れる(反転現像の場合はベタ白画像に黒い点となって現れる)。このいわゆる「ポチ」と呼ばれる画像欠陥の改善は高画質を達成するために必要であり、カラー複写機に搭載される場合には特に重要である。
【0017】
この球状突起の核を少なくするため、使用する支持体は堆積前に精密に洗浄され、反応容器に設置する工程は全てクリーンルームあるいは真空下で作業が行われる。このようにして、堆積開始前における支持体上の付着物は極力少なくするよう努力されてきており、効果を上げてきた。
【0018】
また、膜厚や膜特性の均一性向上のために、堆積させる層の特性や処方毎に、最適化したガス導入孔の配置や孔径であるガス導入管を有するガス導入系に切り替えて堆積させる方法が行われている。しかし、この場合はガス導入系の切換により、ガス導入孔付近に付着した反応生成物が飛散し、堆積中に支持体に付着し球状突起になることがある。
【0019】
本発明は、このように膜厚や膜特性というマクロ的均一性を高めるだけでなく、微小な異常成長(球状突起)を低減させて、デジタル画像すなわちミクロなドットの集まりの均一性を向上させることが目的である。
【0020】
すなわち、本発明の目的は、上述のごとき従来の電子写真感光体の製造における諸問題を、電気的特性を犠牲にすることなく克服して、安定して歩留まり良く、画像欠陥が少なく高画質の使いやすい電子写真感光体を製造し得る方法を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、電子写真感光体を以下のように製造することにより、電気特性に何ら悪影響を与えず、膜厚や膜特性の均一性に優れ、ポチなどの画像欠陥を大幅に改善した感光体を安定して製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0022】
すなわち、本発明及びその好適な実施形態は、以下の通りである。
【0023】
(1)上壁、電極を兼ねる円筒壁及び底壁を備えた反応容器内に円筒状支持体を設置し、前記円筒状支持体の同軸外周上に該円筒状支持体の長手方向に沿って設けられた複数の堆積膜形成用原料ガス導入管を有する、少なくとも2つのガス導入系統を用い、前記反応容器内に原料ガスを導入し、該原料ガスを放電エネルギーにより励起させて、前記円筒状支持体上に堆積膜を形成するプラズマCVD法による堆積膜形成方法であって、
一方のガス導入から系統堆積膜の原料ガスの主たる導入を行い、
その他のガス導入系統からは、原料ガス導入配管がガス導入系統毎に分岐した後に接続された希釈ガス専用ラインを通じて希釈ガスのみを導入する
ことを特徴とするプラズマCVD法による堆積膜形成方法。
【0024】
(2)希釈ガス専用ラインから導入する希釈ガスは、水素及び/又はヘリウムを主成分としたガスである上記(1)のプラズマCVD法による堆積膜形成方法。
【0025】
(3)堆積層を切り換える時に、ガス導入系統も切り換える場合は、原料ガスと希釈ガスを徐々に切り換える上記(1)又は(2)のプラズマCVD法による堆積膜形成方法。
【0026】
(4)堆積膜形成用原料ガス導入管のガス導入孔の配置が異なっている上記(1)〜(3)のいずれかのプラズマCVD法による堆積膜形成方法。
【0027】
(5)同一のガス導入系統に属している堆積膜形成用原料ガス導入管は、長手方向のガス導入孔の配列が同じである上記(1)〜(4)のいずれかのプラズマCVD法による堆積膜形成方法。
【0028】
(6)円筒状支持体は軸を中心に回転させる上記(1)〜(5)のいずれかのプラズマCVD法による堆積膜形成方法。
【0029】
(7)前記堆積膜がアモルファスシリコンを主成分とする光導電層である上記(1)〜(6)のいずれかのプラズマCVD法による堆積膜形成方法。
【0030】
本発明においては、長手方向にガス導入孔を有するガス導入管を少なくとも2系統持つ反応容器において、原料ガスの導入は1つのガス導入系統を用い、そのとき、その他のガス導入系統からも希釈ガスを導入してプラズマCVD法により堆積膜を形成させることにより、均一性に優れかつ微小な異常成長が少なく、極めて画像濃度が均一な感光体を得ることができる。それは以下のような理由によるものと推測される。
【0031】
任意の処方の堆積膜を均一にするには、特定のガス導入孔の孔径・配列を定める必要がある。そのため、処方の異なる堆積膜を積層するような場合には、特定の孔径・配列のガス導入管を持つガス導入系統を堆積膜の数に応じて用意しなければならない。
【0032】
電子写真感光体を製造する場合には、電子写真特性を主に担う堆積膜は光導電層であり、電子写真感光体の中で最も厚く堆積される。従来、この光導電層は一層で構成されるものが多かったが、昨今のデジタル化により、機能分離型と呼ばれる電荷発生層・電荷輸送層など二層以上の積層がなされる様になってきている。
従来の2つ以上のガス導入系統を有する堆積装置では、該処方に最適化された孔径・配列のガス導入孔をもつガス導入管を備えた原料ガス導入系統を使用して堆積膜を形成している間、他の原料ガス導入系統は原料ガスを導入することなく待機状態であった。
【0033】
しかし、このような待機状態では、原料ガス導入管のガス導入孔付近にも反応生成物が堆積する。その堆積した反応生成物が、ガス導入系統の切り換えにより待機状態から噴出状態に換わることで、該ガス導入孔付近から剥離し飛散が生じることが分かった。このために、微小な異常成長(球状突起)が発生していると考えている。
【0034】
本発明者らは、微小な異常成長を低減するために、待機状態の原料ガス導入系統から希釈ガスのみを導入することを検討した。
【0035】
その結果、使用していたガス導入系統から、待機状態のガス導入系統に切り換える場合に、待機状態のガス導入系統から希釈ガスのみを導入させることで、待機状態のガス導入系統のガス放出孔付近の反応生成物の生成量を低減することができ、ガス導入系統切り換え時の反応生成物の剥離や飛散を抑制でき、その結果、膜厚や膜特性というマクロな均一性を維持したまま、微小な異常成長を抑制することで、ミクロな均一性を改善できることを見出し、本発明に至った。
【0036】
すなわち、本発明は、堆積膜の原料ガスの主たる導入は1つのガス導入系統を用い、その他のガス導入系統からは希釈ガス専用ラインから希釈ガスのみを導入すると良く、さらに堆積膜の形成に用いる原料ガスのガス導入系統にも希釈ガス専用ラインから希釈ガスを導入しても良い。その結果、マクロな均一性と、ミクロな均一性を共に改善した堆積膜の形成方法である。
【0037】
本発明は、ガス導入系統を切り換える場合、堆積膜の原料ガスのガス導入系統を、その他のガス導入系統に徐々に連続的に切り換えることで、ガス導入孔からのガス噴き出しを止めることが無くなり、その結果、ガス流の急激な変動、あるいは内圧の変動による、プラズマの乱れを抑制しつつ、次に堆積する膜の処方に最適化された原料ガス導入管に切り換えることができる。
【0038】
また、膜厚や膜特性の均一性を向上させるためには、円筒状支持体を回転させながら堆積膜を形成することは効果的である。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
【0040】
「アモルファスシリコン(a−Si)感光体製造装置」
図1は、本発明のRF帯の高周波電源を用いたRFプラズマCVD法によるアモルファスシリコン(a−Si)感光体の堆積装置の一例を模式的に示した図であり、図3は、図1の堆積装置におけるガス導入系統を模式的に示した図である。
【0041】
この装置は、大別すると、堆積装置100、原料ガス混合供給装置101、希釈ガス供給装置185、及び反応容器103内を減圧するための排気装置102から構成されている。
【0042】
堆積装置100への高周波電力の印加は周波数10〜50MHz、例えば13.56MHz、のRF電源によりおこない、反応容器内の圧力は1×10−2〜1×10Pa程度に保たれる。
【0043】
堆積装置100の反応容器103には、アースに接続された支持体104、前記支持体104を加熱するヒーター105及び原料ガス導入管106が設置され、更に高周波マッチングボックス108を介して高周波電源109が接続されている。
【0044】
原料ガス混合供給装置101は、SiH、CH、NO、B、CF等の原料ガスボンベ170〜175、原料ガスボンベバルブ120〜125、流入バルブ130〜135、流出バルブ140〜145、原料ガスマスフローコントローラー150〜155及び原料ガス圧力調整バルブ160〜165から構成され、流出バルブから出た配管が統合されたあとに第1のマスフローコントローラー118が配設されている。
【0045】
図3に示すように混合されてきた原料ガス315が、第1のマスフローコントローラー118及び第1の流量調整バルブ116を経て、第1の原料ガス導入配管114から反応容器103内に導入される。
【0046】
一方、H、He等の希釈ガスボンベ176〜177、希釈ガスボンベバルブ126〜127、希釈ガス流入バルブ136〜137、希釈ガス流出バルブ146〜147、希釈ガスマスフローコントローラー156〜157及び希釈ガス圧力調整バルブ166〜167から構成され、希釈ガス流出バルブから出た配管が統合されたあとに第2のマスフローコントローラー183が配設された希釈ガス供給部から、希釈ガス316のみが第2の原料ガス導入配管115に設けた希釈ガス専用ライン180を通じて、第2のマスフローコントローラー183及び第2の流量調整バルブ182を経て、第2の原料ガス導入配管115から反応容器103内に導入される。支持体104は導電性受け台の上に設置されることによってアースに接続される。
【0047】
以下、図1の装置を用いた感光体形成方法の手順の一例について説明する。
【0048】
反応容器103内に支持体104を設置し、排気装置102(例えば真空ポンプ)により反応容器103内を排気する。続いて加熱用ヒーター105により支持体104の温度を200〜450℃、より好ましくは250〜350℃の所定の温度に制御する。次いで、各ガスボンベのバルブ120〜127、反応容器103のリークバルブ111が閉じられている事を確認し、また各流入バルブ130〜137、各流出バルブ140〜147及び各流量調節バルブ116〜117、181〜182が開かれていることを確認し、排気装置102のメインバルブ112を開いて反応容器103及び第1の原料ガス供給配管114、第2の原料ガス供給配管115を排気する。その後、真空計110の読みが所定の値、例えば0.5mPaになった時点で各流出バルブ140〜147及び最初は使用しない側の流量調節バルブ117、181を閉じる。
【0049】
その後、原料ガスボンベ170〜175及び希釈ガスボンベ176〜177のバルブ120〜127を開いて、各原料ガスを導入し各圧力調整バルブ160〜167により各原料ガスの圧力を所定の値、例えば0.2MPaに調整する。次に原料ガス流入バルブ130〜135を徐々に開けて各原料ガスを第1の原料ガス導入配管114に導入する。また、希釈ガス専用ライン180を通じて第2の原料ガス導入配管115内に希釈ガスを導入する。
【0050】
以上の手順によって成膜準備を完了した後、支持体104上に、堆積膜を堆積する。
【0051】
すなわち、支持体104が所定の温度になったところで、各流出バルブ140〜145のうちの第1の光導電層形成に必要なものを徐々に開き、各原料ガスボンベ170〜175から所望の原料ガスを第1の原料ガス導入配管114に、同様に希釈ガスのみを第2の原料ガス導入配管115に導入し、原料ガス導入管106を介して反応容器103内に導入する。その際、反応容器103内が1×10−2〜1×10Paの所定の圧力になる様に、真空計110を見ながらメインバルブ112の開口を調整する。
【0052】
内圧が安定したところで、高周波電源109を所定の電力に設定して、周波数10〜50MHz、例えば13.56MHz、のRF電源を用いて高周波電力を、高周波マッチングボックス108を通じてカソード電極107に供給し、高周波グロー放電を生起させる。この放電エネルギーによって反応容器103内に導入した各原料ガスと希釈ガスが分解され、支持体104上に所定のシリコン原子を主成分とする第1の光導電層が堆積される。この時、層形成の均一化を図るため回転用モーター113によって、支持体104を回転させることも有効である。
【0053】
所定の層厚の堆積が行なわれた後、次ぎに第2の光導電層の形成にあったガス組成になるようガス流量を調節し、内圧、高周波電力に徐々に変化させる。そのとき、第1の原料ガス導入配管114側からは希釈ガスのみを、第2の原料ガス導入配管115側からは原料ガスを導入するように切り換えるように制御する。
【0054】
そして、所定の層厚の層堆積が行なわれた後、高周波電力109の供給を止め、各流出バルブ140〜147を閉じて反応容器103内への各原料ガスと希釈ガスの流入を止め、光導電層の堆積を終える。光導電層の組成や層厚は公知のものとすることができる。
【0055】
光導電層と支持体の間に下部阻止層を形成する場合も基本的には上記の操作をあらかじめ行えばよい。
【0056】
上記の手順で光導電層まで堆積した感光体は、さらに最表面にSi含有ガス及び炭素含有ガスを用いて、a−SiC系の表面層を積層する。その場合も基本的には上記の操作と同様でよい。
【0057】
「ガス導入系統」
本発明におけるガス導入系統は、1つのガス導入系統を主とし、他のガス導入系統も独立して制御することが好ましい。また、ガス導入系統の数は、処方の異なる堆積膜を堆積する数と、均一性の度合いを総合的に判断して決めることとなるが、2つ以上であれば特に制限はないが、多すぎると反応容器内へのガス導入管の設置が物理的に困難になる、あるいは装置コストの上昇を招くので、好ましくは2〜10系統であり、最適には2〜5系統内とすることが好ましい。
【0058】
また、図7に本発明に用いる原料ガス導入管の一例を示す。
【0059】
原料ガス導入管703に設けるガス導入孔701、702の大きさについては特に制限はないが、大きすぎても小さすぎてもプラズマが不均一になる可能性があるため好ましくは直径0.1〜3mmの範囲、最適には0.2〜2mmが適している。ガス導入孔701、702の数についても特に制限はないが、多すぎても少なすぎてもプラズマが不均一になる可能性があるため好ましくは原料ガス導入管1mあたり20〜150個の範囲、最適には30〜100個の範囲が適している。
【0060】
ガス導入孔701、702を設ける間隔(原料ガス導入管の長手方向のガス放出孔間隔)については、その絶対値、及び等間隔か不均一な間隔で設けるかについても特に制限はなく、形成する堆積膜に求める特性に応じて適宜設けることが望ましいが、概ね1〜200mmとすることが好ましい。
【0061】
さらに、ガス導入孔701、702の支持体に対する角度については、特に制限はないが、支持体側には向かないほうが良い。すなわち、ガス導入孔が支持体方向書面に向いたときの角度(a)を0°としたときに、角度が70°未満で支持体側に向けると支持体周辺のプラズマを乱す場合があるので、70°以上が適しており、好ましくは90°以上が好ましい。
【0062】
本発明の原料ガス導入管703の材質については、真空中にて使用可能で、放電を乱さず、実用強度を備え、また放電空間を汚染しない材質であればいずれも使用可能であり、好適なものとしては、ガラス、セラミックス等が挙げられる。特にアルミナセラミックスが好ましい。
【0063】
また、原料ガス導入管の本数は特に制限はないが、1つのガス導入系統当たり、2〜10本、反応容器内に設置する全数で4〜20本が適当である。
【0064】
原料ガス導入管についていうと、ガス導入系統毎に割り当てられた堆積膜に適したガス導入孔の配列・孔径となっていることが好ましく、また、同一のガス導入系統に属しているものであっても反応容器内の原料ガス雰囲気が均一になるならば異なっていてもよい。なお、原料ガスのコントロールが容易であることから同一のガス導入系統に属する原料ガス導入管のガス導入孔の配列・孔径が同じであることが好ましい。
【0065】
「支持体の形状及び材質」
支持体の形状は、電子写真感光体の駆動方式などに応じた所望のものとしてよい。例えば、平滑表面あるいは凹凸表面の円筒状で、その厚さは、所望通りの電子写真用感光体を形成し得るように適宜決定する。電子写真用感光体としての可撓性が要求される場合には、シリンダーとしての機能が充分発揮できる範囲内で可能な限り薄くすることができる。しかしながら、シリンダーは製造上及び取り扱い上、機械的強度等の点から通常は1mm以上とされる。
【0066】
支持体材質としては、Alやステンレスのごとき導電性材料が一般的であるが、例えば各種のプラスチックやガラス、セラミックス等、特には導電性を有しないものにこれら導電性材料を少なくとも光受容層を形成する側の表面に蒸着するなどして導電性を付与したものも用いることができる。導電性材料としては上記の他、Cr、Mo、Au、In、Nb、Te、V、Ti、Pt、Pd、Fe等の金属及びこれらの合金が挙げられる。
【0067】
プラスチックとしてはポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースアセテート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド等が挙げられる。
【0068】
「アモルファスシリコン(a−Si)堆積膜」
図1の装置を用いて、グロー放電法によって堆積膜を形成するには、基本的にはシリコン原子Siを供給し得るSi供給用の原料ガスと、水素原子Hを供給し得る水素原子H供給用の原料ガス又は/及びハロゲン原子Xを供給し得るハロゲン原子X供給用の原料ガスを、反応容器内に所望のガス状態で導入して、該反応容器内にグロー放電を生起させ、あらかじめ所定の位置に設置されてある所定の支持体上にa−Si:(H,X)からなる層を形成すればよい。
【0069】
本発明においてSi供給用ガスとなり得る物質としては、SiH、Si、Si、Si10等のガス状態の又はガス化し得る水素化珪素(シラン類)が有効に使用されるものとして挙げられ、膜形成時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さ等の点でSiH、Siが好ましいものとして挙げられる。
【0070】
そして、形成される堆積膜中に水素原子を構造的に導入し、水素原子の導入割合の制御をいっそう容易になるようにはかり、本発明の目的を達成する膜特性を得るために、これらのガスに更にH、He、水素原子を含む珪素化合物のガス等も所望量混合して堆積することが好ましい。また、各ガスは単独種のみでなく所定の混合比で複数種混合しても差し支えない。
【0071】
本発明においてハロゲン原子X供給用の原料ガスとしては、例えば、ハロゲンガス、ハロゲン化物、ハロゲンを含むハロゲン間化合物、ハロゲンで置換されたシラン誘導体等のガス状の又はガス化し得るハロゲン化合物が好ましく挙げられる。また、さらにはシリコン原子とハロゲン原子とを構成要素とするガス状の又はガス化し得る、ハロゲン原子を含む水素化珪素化合物も好ましいものとして挙げることができる。
【0072】
本発明において好適に使用し得るハロゲン化合物としては、具体的には弗素ガス(F)、BrF、ClF、ClF、BrF、BrF、IF、IF等を挙げることができる。ハロゲン原子を含む珪素化合物、いわゆるハロゲン原子で置換されたシラン誘導体としては、具体的には、たとえばSiF、Si等の弗化珪素が好ましい。
【0073】
堆積膜中に含有される水素原子やハロゲン原子の量を制御するには、例えば、支持体の温度、水素原子やハロゲン原子を含有させるために使用される原料物質の反応容器内へ導入する量、放電電力等を制御すればよい。
【0074】
本発明においては、堆積膜には必要に応じて伝導性を制御する原子を含有させることが好ましい。伝導性を制御する原子は、堆積膜中に万偏なく均一に分布した状態で含有されても良いし、あるいは層厚方向には不均一な分布状態で含有している部分があってもよい。前記伝導性を制御する原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができ、周期律表第13族に属する原子(以後「第13族原子」と略記する)又は周期律表第15族に属する原子(以後「第15族原子」と略記する)を用いることができる。第13族原子としては、具体的には、硼素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等があり、特にB、Al、Gaが好適である。第15族原子としては、具体的には燐(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等があり、特にP、Asが好適である。
【0075】
堆積膜に含有される伝導性を制御する原子の含有量としては、好ましくは1×10−2〜1×10原子ppm、より好ましくは5×10−2〜5×10原子ppm、最適には1×10−1〜1×10原子ppmとされるのが望ましい。
【0076】
伝導性を制御する原子、たとえば、第13族原子あるいは第15族原子を構造的に導入するには、膜形成の際に、第13族原子導入用の原料物質あるいは第15族原子導入用の原料物質をガス状態で反応容器中に、堆積膜を形成するための他のガスとともに導入してやればよい。第13族原子導入用の原料物質あるいは第15族原子導入用の原料物質となり得るものとしては、常温常圧でガス状の又は、少なくとも膜形成条件下で容易にガス化し得るものが採用されるのが望ましい。
【0077】
そのような第13族原子導入用の原料物質として具体的には、硼素原子導入用としては、B、B10、B、B11、B10、B12、B14等の水素化硼素、BF、BCl、BBr等のハロゲン化硼素等が挙げられる。この他、AlCl、GaCl、Ga(CH、InCl、TlCl等も挙げることができる。
【0078】
第15族原子導入用の原料物質として有効に使用されるのは、燐原子導入用としては、PH、P等の水素化燐、PF、PF、PCl、PCl、PBr、PI等のハロゲン化燐、さらにPH等が挙げられる。この他、AsH、AsF、AsCl、AsBr、AsF、AbH、SbF、SbF、SbCl、SbCl、BiH、BiCl、BiBr等が出発物質の有効なものとして挙げられる。
【0079】
また、これらの伝導性を制御する原子導入用の原料物質を必要に応じてH及び/又はHeにより希釈して使用してもよい。
【0080】
本発明の目的を達成し、所望の膜特性を有する堆積膜を形成するには、Si供給用ガスと希釈ガスとの混合比、反応容器内のガス圧、放電電力ならびに支持体温度を適宜設定することが必要である。
【0081】
希釈ガスとして使用するH及び/又はHeの流量は、層設計あるいは堆積条件にしたがって適宜最適範囲が選択される。希釈ガスを希釈ガス専用ラインより導入する場合は、Si供給用ガスに対し、通常の場合1/1000〜1/2倍、好ましくは1/800〜1/10倍、最適には1/600〜1/20倍の範囲に制御することが望ましい。
【0082】
反応容器内のガス圧も同様に層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合1×10−2〜1×10Pa、好ましくは5×10−2〜5×10Pa、最適には1×10−1〜2×10Paとするのが好ましい。
【0083】
放電電力もまた同様に層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、Si供給用のガスの流量(ml/min(normal))に対する放電電力(w)を、通常の場合0.1〜7倍、好ましくは0.5〜6倍、最適には0.7〜5倍の範囲とすることが望ましい。
【0084】
さらに、支持体の温度は、層設計にしたがって適宜最適範囲が選択されるが、通常の場合200〜450℃とするのが望ましい。
【0085】
本発明においては、堆積膜を積層するための支持体温度、ガス圧の望ましい数値範囲として前記した範囲が挙げられるが、これらの条件は通常は独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する堆積膜を形成すべく相互的且つ有機的関連性に基づいて最適値を決めるのが望ましい。
【0086】
次に、電子写真感光体を作成する場合について、詳しく述べる。
【0087】
「アモルファスシリコン(a−Si)感光体」
図6に本発明の堆積膜形成方法で作製される電子写真感光体の例を示す。図6(a)は支持体601、下部阻止層602、光導電層603及び表面層605からなる例であり、図6(b)は光導電層を2層603、604とした例であり、図6(c)は更に上部阻止層606を有する例である。
【0088】
図6(a)の電子写真感光体は、例えば、Al、ステンレス等の導電性材料からなる支持体601上に第1の原料ガス導入配管を用いて、下部阻止層602を堆積し、次に堆積途中で徐々に第2の原料ガス導入配管に切り換えて光導電層603と表面層605を、さらに堆積させて作成したものである。
【0089】
原料ガスの反応容器への導入に第1の原料ガス導入配管を用いている間は、堆積する堆積膜に用いる原料ガスに対する希釈ガスの混合比を変化させないように希釈ガス、例えばHを第2のガス導入配管に設けた希釈ガス専用ラインから導入して堆積させた。また、第2の原料ガス導入配管から原料ガスを導入している間は、堆積する堆積膜に用いる原料ガスに対する希釈ガスの混合比を変化させないように希釈ガスを第1のガス導入配管に設けた希釈ガス専用ラインから導入して堆積させた。
【0090】
このように製造することによって、マクロな均一性だけでなく、微小な球状突起も極めて少ないミクロな均一性にも優れた電子写真感光体を堆積することができ、良好な画質を保つことが可能となる。
【0091】
原料ガス導入配管に導入する原料ガスと希釈ガスの流量については、堆積膜の主たる原料ガスの混合比及び/又は原料ガス組成が変化する時に、一系統のガス導入配管から、その他の一系統のガス導入配管に、徐々に切り換えることが好ましい。
【0092】
以下、図3と図6により説明する。
【0093】
支持体601上に下部阻止層602の主たる原料ガス315を第1の原料ガス導入配管114を用いて導入し、その際に第2の原料ガス導入配管115からは、下部阻止層の堆積に用いる原料ガスに対する希釈ガスの混合比を変化させないように、希釈ガス316を第2のガス導入配管115に設けた希釈ガス専用ライン180から導入して下部阻止層602を堆積させる。
【0094】
次に徐々にガス流量・内圧・電力を光導電層603の処方に変化させるときに、主たる原料ガス315を徐々に第1の原料ガス導入配管114から第2の原料ガス導入配管115に切り換え、その際に第1の原料ガス導入配管114に、光導電層の堆積に用いる原料ガスに対する希釈ガスの混合比を変化させないように、希釈ガス316を第1のガス導入配管114に設けた希釈ガス専用ライン180から導入し、光導電層603を堆積させる。なお、必要に応じ設けられる表面層605は光導電層603の堆積に引き続き堆積される。
【0095】
このように、堆積膜の種類の数に応じて、複数のガス導入系を切り換え、その際に待機状態となるガス導入系に設けた希釈ガス専用ライン180からも、積層する堆積膜に用いる原料ガス315に対する希釈ガス316の混合比を変化させないように希釈ガス316のみを導入することが好ましい。
【0096】
本発明においては、光導電層の材料として、通常はアモルファスシリコン(a−Si)が用いられる。
【0097】
また、最表面には、図6(a)〜(c)に示すように、必要に応じて表面層605を設けてもよい。この際の表面層605はアモルファスシリコン(a−Si)を母体とし、必要に応じて炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)の少なくとも1つを比較的多量に含有した層が用いられ、耐環境性、耐摩耗性や耐傷性を向上させることができる。
【0098】
また、図6(c)に示すように、必要に応じて更に上部阻止層606を設けてもよい。なお、上部阻止層606は必要に応じて設けられ、その材料としてアモルファスシリコン(a−Si)を母体とし、必要に応じて炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)を含有した層が用いられる。
【0099】
「光導電層」
光導電層は、アモルファスシリコン(a−Si)を主成分としており、電子写真感光体の中で最も厚い層厚が必要とされ、かつ膜質の均一性が要求される。したがって、光導電層に最適化したガス導入孔の孔径・配列をもつ原料ガス導入系を採用することが望ましい。
【0100】
また、画像欠陥の原因である球状突起が成長するのも、この光導電層を堆積する時である。したがって、支持体表面に球状突起の核となるものが付着を防止しなければならない。
【0101】
また、従来では、この光導電層は一層で構成されるものが多かったが、昨今のデジタル化により、機能分離型と呼ばれる第1の光導電層(電荷発生層)と第2の光導電層(電荷輸送層)を有するなど二層以上とされる様になってきている。
【0102】
原料としてはSiH、Si、Si、Si10等のガス状態の、又はガス化し得る水素化珪素(シラン類)を原料ガスとして用い、高周波電力によって分解することによって光導電層は堆積される。層形成時の取り扱い易さ、Si供給効率の良さ等からSiH、Siが好ましいものとして挙げられる。
【0103】
このとき、支持体の温度は、200〜450℃、より好ましくは250〜350℃程度に保つことが特性上好ましい。これは膜成長表面での表面反応を促進させ、充分に構造緩和をさせるためである。
【0104】
反応容器内の圧力も同様に層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合1×10−2〜1×10Ra、好ましくは5×10−2〜5×10Pa、最適には1×10−1〜1×10Paである。
【0105】
また、これらのガスに、更に水素原子あるいはハロゲン原子を含むガスを所望量混合して層形成することも特性向上の上で好ましい。ハロゲン原子供給用の原料ガスとして有効なのは、弗素ガス(F)、BrF、ClF、ClF、BrF、BrF、IF、IF等のハロゲン間化合物を挙げることができる。ハロゲン原子を含む珪素化合物、いわゆるハロゲン原子で置換されたシラン誘導体としては、具体的には、たとえばSiF、Si等の弗化珪素が好ましいものとして挙げることができる。
【0106】
また、これらの炭素供給用の原料ガスを必要に応じてH、He、Ar、Ne等のガスにより希釈して使用してもよい。
【0107】
光導電層の全体の層厚としては特に限定はないが、製造コストなどを考慮すると10〜60μm程度が適当である。
【0108】
更に、特性を向上させるために光導電層を複数の層構成にしても良い。例えばよりバンドギャップの狭い層を表面側に、よりバンドギャップの広い層を基板側に配置することで光感度や帯電特性を同時に向上させることができる。特に、半導体レーザーの様に、比較的長波長であって且つ波長ばらつきのほとんどない光源に対しては、こうした層構成の工夫によって画期的な効果が現れる。
【0109】
「下部阻止層」
電子写真感光体において、必要に応じて光導電層の下部に設けられる下部阻止層は、一般的にa−Si:(H,X)をベースとし、第13族原子、第15族原子などのドーパントを含有させることにより伝導型を制御し、支持体からのキャリアの注入阻止能を持たせることが可能である。この場合、必要に応じて炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)から選ばれる少なくとも1つ以上の元素を含有させることで応力を調整し、光導電層との密着性向上の機能を持たせることもできる。
【0110】
下部阻止層において、ドーパントとなる第13族原子としては、具体的には、硼素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等があり、特にB、Alが好適である。また、第15族原子としては、具体的には、燐(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等があり、特にPが好適である。
【0111】
また、第13族原子導入用の原料物質として具体的には、硼素原子導入用としては、B、B10、B、B11、B10、B12、B14等の水素化硼素、BF、BCl、BBr等のハロゲン化硼素等が挙げられる。この他、AlCl、GaCl、Ga(CH、InCl、TlCl等も挙げることができる。中でもBは取り扱いの面からも好ましい原料物質の一つである。
【0112】
第15族原子導入用の原料物質として有効に使用されるのは、燐原子導入用としては、PH、P等の水素化燐、PF、PF、PCl、PCl、PBr、PI等のハロゲン化燐、さらにPHI等が挙げられる。この他、AsH、AsF、AsCl、AsBr、AsF、SbH、SbF、SbF、SbClS、LSbCl、BiH、BiCl、BiBr等が、第15族原子導入用の原料物質の有効なものとして挙げられる。
【0113】
下部阻止層におけるドーパントの原子の含有量としては、好ましくは1×10−2〜1×10原子ppm、より好ましくは5×10−2〜5×10原子ppm、最適には1×10−1〜1×10原子ppmとされるのが望ましい。
【0114】
「上部阻止層」
電子写真感光体において、必要に応じて光導電層の上部に設けられる上部阻止層は、感光体が一定極性の帯電処理をその自由表面に受けた際、表面側より光導電層に電荷が注入されるのを阻止する機能を有し、逆の極性の帯電処理を受けた際にはそのような機能は発揮されない、いわゆる極性依存性を有している。そのような機能を付与するために、上部阻止層には伝導性を制御する不純物原子を適切に含有させる。そのような目的で用いられる不純物原子としては、本発明においては第13族原子、あるいは第15族原子を用いることができる。
【0115】
このような第13族原子としては、具体的には、硼素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等があり、特に硼素が好適である。また、第15族原子としては、具体的には燐(P)、砒素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)等があり、特にPが好適である。
【0116】
上部阻止層に含有される伝導性を制御する不純物原子の必要な含有量は、上部阻止層の組成や製造方法により一概にはいえないが、一般的にはネットワーク構成原子に対して1×10〜3×10原子ppmとされ、5×10〜1×10原子ppmとすることが更に好ましい。
【0117】
上部阻止層に含有される伝導性を制御する原子は、上部阻止層中に万偏なく均一に分布されていても良いし、あるいは層厚方向に不均一に分布する状態で含有していてもよい。しかしながら、いずれの場合にも支持体の表面と平行面内方向においては、均一な分布で万偏なく含有されることが面内方向における特性の均一化を図る点からも必要である。
【0118】
上部阻止層は、a−Si系の材料であればいずれの材質でも可能であるが、表面層と同様の材料で構成することが好ましい。すなわち、「a−SiC:(H,X)」、「a−SiO:(H,X)」、「a−SiN:(H,X)」、「a−SiCON:(H,X)」等の材料が好適に用いられる。
【0119】
上部阻止層に含有される炭素原子又は窒素原子又は酸素原子は、層中に万偏なく均一に分布されても良いし、あるいは層厚方向に不均一に分布する状態で含有していてもよい。しかしながら、いずれの場合にも支持体の表面と平行面内方向においては、均一な分布で万偏なく含有されることが面内方向における特性の均一化を図る点からも必要である。
【0120】
本発明における上部阻止層の全層領域に含有される炭素原子、窒素原子及び酸素原子の含有量は、本発明の目的が効果的に達成されるように適宜決定されるが、1種類の場合はその量として、2種類以上の場合はその総和量として、シリコンとの総和に対して10〜70原子%の範囲とするのが好ましい。
【0121】
また、本発明においては上部阻止層に、通常は、水素原子やハロゲン原子が含有されるが、これはシリコン原子の未結合手を補償し、層品質の向上、特に光導電性特性及び電荷保持特性を向上させる。水素含有量は、構成原子の総量に対して通常の場合30〜70原子%、好適には35〜65原子%、最適には40〜60原子%とするのが望ましい。又、ハロゲン原子の含有量として、通常の場合は0.01〜15原子%、好適には0.1〜10原子%、最適には0.5〜5原子%である。
【0122】
さらに、上部阻止層は光導電層側から表面層に向かって組成を連続的に変化させることも好ましく、密着性の向上だけでなく干渉防止等に効果がある。
【0123】
本発明の目的を達成し得る特性を有する上部阻止層を形成するには、Si供給用のガスとC、N、O供給用のガスとの混合比、反応容器内のガス圧、放電電力ならびに支持体の温度を適宜設定することが必要である。
【0124】
反応容器内の圧力も同様に層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合1×10−2〜1×10Pa、好ましくは5×10−2〜5×10Pa、最適には1×10−1〜1×10Paである。
【0125】
さらに、支持体の温度は、層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合、好ましくは150〜350℃、より好ましくは180〜330℃、最適には200〜300℃である。
【0126】
本発明において、上部阻止層を形成するための希釈ガスの混合比、ガス圧、放電電力、支持体温度の望ましい数値範囲として前記した範囲が挙げられるが、これらの層堆積ファクターは通常は独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する感光体を形成すべく相互的かつ有機的関連性に基づいて最適値を決めるのが望ましい。
【0127】
「表面層」
電子写真感光体において、必要に応じて最表面に設けられる表面層は自由表面を有し、主に耐湿性、連続繰り返し使用特性、電気的耐圧性、使用環境特性、耐久性の改善に効果を奏する。
【0128】
また、a−Si系の表面層は、光導電層を構成する光導電層と表面層とを形成する非晶質材料の各々がシリコン原子という共通の構成要素を有しているので、積層界面において化学的な安定性の確保が十分成されている。
【0129】
表面層の材質としてa−Si系の材料を用いる場合は、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)より選ばれた元素を少なくとも1つ含むシリコン原子との化合物が好ましく、特にa−SiCを主成分としたものが好ましい。
【0130】
表面層が、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)のいずれか一つ以上を含む場合、これらの原子の含有量は、ネットワークを構成する全原子に対して30〜95原子%の範囲が好ましい。
【0131】
通常は、表面層中に水素原子やハロゲン原子が含有されるが、これはシリコン原子の未結合手を補償し、層品質、特に光導電性特性及び電荷保持特性を向上させる。水素含有量は、構成原子の総量に対して通常の場合30〜70原子%、好適には35〜65原子%、最適には40〜60原子%とするのが望ましい。又はロゲン原子として弗素原子が好ましく、その弗素原子の含有量として、通常の場合は0.01〜15原子%、好適には0.1〜10原子%、最適には0.5〜5原子%である。
【0132】
これらの水素原子や弗素原子を上記の含有量の範囲で形成された感光体は、実際面において優れたものとして充分使用できるものである。すなわち、表面層内に存在する欠陥(主にシリコン原子や炭素原子のダングリングボンド)は、電子写真感光体としての特性に悪影響を及ぼすことが知られている。例えば自由表面から電荷の注入による帯電特性の劣化、使用環境、例えば高い湿度のもとで表面構造が変化することによる帯電特性の変動、更にコロナ帯電時や光照射時に光導電層より表面層に電荷が注入され、この表面層内の欠陥に電荷がトラップされることによる繰り返し使用時の残像現象の発生等がこの悪影響として挙げられるが、この悪影響が軽減されている。
【0133】
しかしながら、前記表面層内の水素原子含有量を30原子%以上に制御することで表面層内の欠陥が大幅に減少し、その結果、従来に比べて電気的特性面及び高速連続使用性において向上を図ることができる。
【0134】
一方、前記表面層中の水素原子含有量が70原子%を越えると表面層の硬度が低下するために、繰り返し使用に耐えられなくなる。従って、水素原子含有量を前記の範囲内に制御することが優れた電子写真特性を得る上で重要な因子の1つである。
【0135】
表面層中の水素原子含有量は、原料ガスの流量(比)、支持体温度、放電パワー、ガス圧等によって制御し得る。
【0136】
また、前記表面層中の弗素原子含有量を0.01原子%以上の範囲に制御することで表面層内のシリコン原子と炭素原子との結合をより効果的に達成することが可能となる。さらに、弗素原子の働きとして、コロナ等のダメージによるシリコン原子と炭素原子との結合の切断を効果的に防止することができる。
【0137】
一方、前記表面層中の弗素原子含有量が15原子%を超えると表面層内のシリコン原子と炭素原子との結合の形成の効果及びコロナ等のダメージによるシリコン原子と炭素原子との結合の切断を防止する効果がほとんど認められなくなる。さらに、過剰の弗素原子が表面層中のキャリアの走行性を阻害するため、残留電位や画像メモリーが顕著に認められてくる。従って、弗素原子含有量を前記範囲内に制御することが所望の電子写真特性を得る上で重要な因子の1つである。
【0138】
表面層中の弗素原子含有量は、水素原子含有量と同様に原料ガスの流量(比)、支持体温度、放電パワー、ガス圧等によって制御し得る。
【0139】
さらに、表面層には必要に応じて伝導性を制御する原子を含有させてもよい。伝導性を制御する原子は、表面層中に万偏なく均一に分布した状態で含有されても良いし、あるいは層厚方向には不均一な分布状態で含有している部分があってもよい。
【0140】
前記の伝導性を制御する原子としては、半導体分野における、いわゆる不純物を挙げることができ、第13族原子又は第15族原子を用いることができる。
【0141】
表面層の層厚としては、通常0.01〜3μm、好適には0.05〜2μm、最適には0.1〜1μmである。層厚が0.01μmよりも薄いと感光体を使用中に摩耗等の理由により表面層が失われてしまい、3μmを越えると残留電位の増加等の電子写真特性の低下がみられる。
【0142】
本発明の目的を達成し得る特性を有する表面層を形成するには、支持体の温度、反応容器内のガス圧を所望により適宜設定する必要がある。
【0143】
支持体温度は、層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合、好ましくは150〜350℃、より好ましくは180〜330℃、最適には200〜300℃である。
【0144】
反応容器内の圧力も同様に層設計にしたがって最適範囲が適宜選択されるが、通常の場合1×10−2〜1×10Pa、好ましくは5×10−2〜5×10Pa、最適には1×10−1〜1×10Paである。
【0145】
本発明においては、表面層を形成するための支持体温度、ガス圧の望ましい数値範囲として前記した範囲が挙げられるが、条件は通常は独立的に別々に決められるものではなく、所望の特性を有する感光体を形成すべく相互的且つ有機的関連性に基づいて最適値を決めるのが望ましい。
【0146】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0147】
実施例1
図1に示す、各系統の原料ガス導入配管毎に希釈ガス専用ライン180を設けたRF−CVD法(高周波に13.56MHzを使用)のa−Si感光体製造装置を用いて、下記表1に示した条件で外径108mm(肉厚5mm)のAl製の支持体104(601)に、図6(a)に示す下部阻止層602、光導電層603及び表面層605からなる電子写真感光体を以下に示す手順により製造した。
【0148】
下部阻止層602の堆積は、下部阻止層602の堆積に最適化した特定のガス導入孔の孔径・配列を持つ8本のガス導入管106を第1の原料ガス導入配管114に接続して、原料ガスを導入して行なった。このとき、第2の原料ガス導入配管115から希釈ガスとしてHを導入した。
【0149】
光導電層603の堆積は、光導電層603の堆積に最適化した特定のガス導入孔の孔径・配列を持つ8本の原料ガス導入管106を第2の原料ガス導入配管115に接続して、原料ガスを導入して行なった。このとき、第1の原料ガス導入配管114には希釈ガスとしてHを導入した。
【0150】
表面層605の堆積は、光導電層603の堆積終了後に表面層605の堆積原料ガスに切換え、希釈ガスの導入量も変更した。
【0151】
下部阻止層602と光導電層603の堆積の切換えは、第1の原料ガス導入配管114及び第2の原料ガス導入配管115に導入するガス原料ガス、希釈ガスの導入割合のコントロールを図9の(a)に示す様に行なった。なお、図9においては縦軸のガス量は流すべき流量に対して上部が100%を下部が0%を示している。
【0152】
【表1】
Figure 2004332026
【0153】
以上のようにして作製した電子写真感光体について、球状突起数、画像欠陥、画像濃度均一性及び電位均一性について評価し、その結果から総合評価を行なった。その評価結果を表3に示した。
【0154】
(球状突起数)
得られた感光体の表面を光学顕微鏡で観察し、5μm以上の大きさの球状突起の4cm当たりの個数を調べ、比較例1での値を100%とした場合の相対比較でランク付けを行った。
◎ 55%以上、75%未満。
○ 75%以上、95%未満。
△ 95%以上、110%未満。
× 110%以上。
【0155】
(画像欠陥)
一次帯電器としてコロナ放電を採用し、また、クリーナーにクリーニングブレードを具える電子写真装置GP605(キヤノン製、プロセススピード300mm/sec、イメージ露光)に、作製した電子写真用感光体を装着して、A3サイズの白紙原稿を複写した。得られた画像を観察し、直径0.1mm以上の球状突起に起因する黒ポチの個数を数え、比較例1での値を100%とした場合の相対比較でランク付けを行った。
◎ 55%以上、75%未満。
○ 75%以上、95%未満。
△ 95%以上、110%未満。
× 110%以上。
【0156】
(画像濃度均一性)
電子写真感光体を、一定の暗部表面電位(450V)に帯電させて直ちに一定光量の光(0.2 lux・sec)を照射した。その状態で、A3のハーフトーン均一画像を出力し、出力した画像面内を均等に25分割し、そのエリア内の画像濃度を測定し、25点の最大濃度と最小濃度の差を算出した。比較例1での差を100%とした場合の相対評価でランク付けを行った。
◎ 85%以上、95%未満。
○ 95%以上、105%未満。
△ 105%以上、110%未満。
× 110%以上。
【0157】
(電位均一性)
電子写真感光体を、一定の暗部表面電位(450V)に帯電させ、直ちに一定光量の光(約0.5 lux・sec)を照射した。この時の光量としては、現像器位置に設置した表面電位計により電子写真用光感光体のドラム長手方向中央部の表面電位がおよそ200Vになるようにする。そして、周方向の電位分布及びドラム長手方向の電位分布を測定し、その最大値と最小値の差を算出した。比較例1での差を100%とした場合の相対評価でランク付けを行った。
◎ 85%以上、95%未満。
○ 95%以上、105%未満。
△ 105%以上、110%未満。
× 110%以上。
【0158】
(総合評価)
本発明の効果である電位均一性と画像欠陥改善の効果を重点において、総合的な評価をランクで示した。
◎ 非常に良好。
○ 良好。
△ 実用上問題なし。
× 実用面で問題有り。
【0159】
実施例2
実施例1において、希釈ガス導入を表2に示すように変更する他は実施例1と同様にして、外径108mm(肉厚5mm)のAl製の支持体601上に、下部阻止層602、光導電層603及び表面層605からなる電子写真感光体を製造した。このようにして作製した電子写真感光体について実施例1と同様に評価し、結果を表3に示した。
【0160】
【表2】
Figure 2004332026
【0161】
比較例1
実施例1において、a−Si感光体製造装置として図2及び図4に示す様な希釈ガス専用ラインを設けていないRF−CVD法(高周波に13.56MHzを使用)の製造装置を用い、希釈ガスを原料ガスとともに導入すること以外は実施例1と同様にして、外径108mm(肉厚5mm)のAl製の支持体204(601)上に、下部阻止層602、光導電層603及び表面層605を有する電子写真感光体を製造した。なお、下部阻止層602の堆積には、原料ガス315及び希釈ガス316の導入は第1の原料ガス導入配管114を用い、その際には第2の原料ガス導入配管115は待機状態とした。また、光導電層603と表面層605の堆積には、原料ガス315及び希釈ガス316の導入は第2の原料ガス導入配管115を用い、第1の原料ガス導入配管114を待機状態とするように切り換えた。このようにして作製した電子写真感光体について実施例1と同様に評価し、結果を表3に示した。なお、本比較例の感光体を各評価の標準として用いた。
【0162】
比較例2
比較例1において、原料ガス及び希釈ガスを図5に示すように、第1の原料ガス導入配管114及び第2原料ガス導入配管115の両方に均等に流して、層の堆積の切替えに従う使用する配管の切替えを行なわないこと以外は比較例1と同様にして電子写真感光体を製造した。このようにして作製した感光体について実施例1と同様に評価し、結果を表3に示した。
【0163】
【表3】
Figure 2004332026
【0164】
表3の結果から、複数の堆積膜形成用原料ガス導入管を有する少なくとも2つのガス導入系統を有する堆積膜形成装置において、堆積膜の原料ガスの主たる導入は1つのガス導入系統を用い、そのとき他のガス導入系統から希釈ガスのみを導入することで全ての項目について良好な結果が得られる事がわかる。
【0165】
実施例3
実施例1において、下部阻止層の堆積から光導電層の堆積への切換えに際し、原料ガスと希釈ガスの導入量の切換えを図9(a)から図9(b)〜(d)に変える他は実施例1と同様にして電子写真感光体を製造した。このようにして作成した電子写真感光体について実施例1と同様に評価し、結果を実施例1の結果とともに表4に示した。
【0166】
【表4】
Figure 2004332026
【0167】
表4の結果から、堆積膜の原料ガスと希釈ガスの主たる導入と、希釈ガスの切り換えを徐々に切り換えることで、球状突起数、画像欠陥の数が減少していく事がわかる。
【0168】
実施例4
実施例1で用いたRF−CVD法(高周波に13.56MHzを使用)のa−Si感光体製造装置により、下記表5に示した条件で外径108mm(肉厚5mm)のAl製の支持体104(601)の上に、図6(b)に示す下部阻止層602、第1の光導電層603、第2の光導電層604及び表面層605を堆積した電子写真感光体を製造した。
【0169】
第1の光導電層603の堆積に最適化した特定のガス導入孔の孔径・配列を持つ8本のガス導入管106(303)を第1の原料ガス導入配管114に接続し、下部阻止層602と第1の光導電層603の堆積に使用した。また、第2の原料ガス導入配管115には第2の光導電層604の堆積に最適化した特定のガス導入孔の孔径・配列を持つ8本の原料ガス導入管106(304)を接続し、第2の光導電層604及び表面層605の堆積に使用した。また、光導電層の堆積を切換える際に、原料ガスと希釈ガスの切換えは図9(d)にしたがって行なった。以上のようにして電子写真感光体を作成し、得られた感光体について、実施例1と同様に評価し、結果を実施例3の図9(d)での結果とともに表7に示した。
【0170】
【表5】
Figure 2004332026
【0171】
実施例5
実施例1で用いたRF−CVD法(高周波に13.56MHzを使用)のa−Si感光体製造装置により、下記表6に示した条件で外径108mm(肉厚5mm)のAl製の支持体104(601)の上に、図6(c)に示す下部阻止層602、光導電層603、上部阻止層606及び表面層605を堆積した電子写真感光体を製造した。
【0172】
光導電層603の堆積に最適化した特定のガス導入孔の孔径・配列を持つ8本のガス導入管106(303)を第1の原料ガス導入配管114に接続し、下部阻止層602と光導電層603の堆積に使用した。また、第2の原料ガス導入配管115には上部阻止層606の堆積に最適化した特定のガス導入孔の孔径・配列を持つ8本の原料ガス導入管106(304)を接続し、上部阻止層606及び表面層605の堆積に使用した。また、光導電層の堆積と上部阻止層の堆積を切換える際に、原料ガスと希釈ガスの切換えは図9(d)にしたがって行なった。以上のようにして電子写真感光体を作成した。得られた感光体について、実施例1と同様に評価し、結果を表7に示した。
【0173】
【表6】
Figure 2004332026
【0174】
【表7】
Figure 2004332026
【0175】
表7の結果から明らかな様に、層構成が変わった場合であっても、堆積膜の原料ガスと希釈ガスの主たる導入と希釈ガスの導入の切り換えを徐々に行なうことで、球状突起数、画像欠陥の数について良好な結果が得られる。
【0176】
実施例6
実施例4において、堆積条件を下記表8のように変え、各層の堆積中は支持体を1rpmで回転させる他は実施例4と同様にして電子写真感光体を作成した。得られた感光体について、実施例1と同様に評価し、結果を実施例4の結果とともに表9に示した。
【0177】
【表8】
Figure 2004332026
【0178】
【表9】
Figure 2004332026
【0179】
表9の結果から明らかな様に、堆積膜の原料ガスと希釈ガスの主たる導入と、希釈ガスの切り換えを徐々に切り換え、さらに回転させながら各層を堆積することで、球状突起数、画像欠陥だけでなく、電位均一性及び画像濃度均一性も良好な電子写真感光体が得られる。
【0180】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、堆積膜の原料ガスの主たる導入は1つのガス導入系統を用い、その他のガス導入系統からは、分岐した後に希釈ガス専用ラインを接続し、該希釈ガス専用ラインから希釈ガスのみを導入し、堆積膜の積層をおこなうことで、使用していた原料ガス導入系から、待機状態の原料ガス導入系に切り換える場合に待機状態の原料ガス導入系のガス放出孔付近の反応生成物の、生成量を低減することで、ガス導入系切り換え時の反応生成物の剥離や飛散を抑制でき、その結果、膜厚や膜特性というマクロな均一性を維持したまま、微小な異常成長を抑制することで、ミクロな均一性を改善できる電子写真感光体製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】原料ガス導入配管に希釈ガス専用ラインを設けたRF−CVD法による堆積装置の一例を示す模式的断面図である。
【図2】従来のRFプラズマCVD法による堆積装置の一例を示す模式的断面図である。
【図3】本発明の導入経路に原料ガスが流れる状態と希釈ガス専用ラインより希釈ガスが流れる状態の一例を示す模式的断面図である。
【図4】従来の導入経路毎に原料ガスと希釈ガスが流れる状態の一例を示す模式的断面図である。
【図5】従来の導入経路すべてに同時に原料ガスと希釈ガスが流れる状態の一例を示す模式的断面図である。
【図6】a−Si電子写真感光体の層構成の例を示す模式図である。
【図7】原料ガス導入管における原料ガス導入孔の長手方向の配列と、原料ガスの吹き出し方向、角度の例を示す模式的断面図である。
【図8】a−Si電子写真感光体の堆積中に支持体にダストが付着し、球状突起が形成される過程を示す模式図である。
【図9】本発明の第1の原料ガス導入系統と、第2の原料ガス導入系統との原料ガスと希釈ガスの切り換える際の様子を示すタイムチャートである。なお、縦軸のガス量は流すべき流量に対して上部が100%を下部が0%を示している。
【符号の説明】
100 堆積装置
101 原料ガス混合供給装置
102 排気装置
103 反応容器
104 支持体
105 支持体加熱用ヒーター
106 原料ガス導入管
107 カソード電極
108 高周波マッチングボックス
109 高周波電源
110 真空計
111 リークバルブ
112 メインバルブ
113 回転用モーター
114 第1の原料ガス導入配管
115 第2の原料ガス導入配管
116〜117 第1の流量調整バルブ
118 第1のマスフローコントローラー
119 原料ガス導入配管
120〜125 原料ガスボンベバルブ
126〜127 希釈ガスボンベバルブ
130〜135 原料ガス流入バルブ
136〜137 希釈ガス流入バルブ
140〜145 原料ガス流出バルブ
146〜147 原料ガス流出バルブ
150〜155 原料ガスマスフローコントローラー
156〜157 希釈ガスマスフローコントローラー
160〜165 原料ガス圧力調整バルブ
166〜167 希釈ガス圧力調整バルブ
170〜175 原料ガスボンベ
176〜177 希釈ガスボンベ
181〜182 第2の流量調整バルブ
183 第2のマスフローコントローラー
185 希釈ガス供給装置
303 第1の原料ガス導入管
304 第2の原料ガス導入管
315 原料ガス
316 希釈ガス
601 支持体
602 下部阻止層
603 (第1の)光導電層
604 第2の光導電層
605 表面層
606 上部阻止層
701〜702 ガス導入孔
703 原料ガス導入管
801 支持体
802 光導電層
803 表面層
804 ダスト
805 球状突起

Claims (1)

  1. 上壁、電極を兼ねる円筒壁及び底壁を備えた反応容器内に円筒状支持体を設置し、前記円筒状支持体の同軸外周上に該円筒状支持体の長手方向に沿って設けられた複数の堆積膜形成用原料ガス導入管を有する、少なくとも2つのガス導入系統を用い、前記反応容器内に原料ガスを導入し、該原料ガスを放電エネルギーにより励起させて、前記円筒状支持体上に堆積膜を形成するプラズマCVD法による堆積膜形成方法であって、
    一方のガス導入系統から堆積膜の原料ガスの主たる導入を行い、
    その他のガス導入系統からは、原料ガス導入配管がガス導入系統毎に分岐した後に接続された希釈ガス専用ラインを通じて希釈ガスのみを導入する
    ことを特徴とするプラズマCVD法による堆積膜形成方法。
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