以下、実施形態に係る医療用照明装置及び医療用診断装置について説明する。
<医療用診断装置の全体構成>
図1は医療用診断装置10の全体構成を示す概略斜視図である。
この医療用診断装置10は、椅子12と、医療用照明装置20とを備えている。ここでは、本医療用診断装置10が歯科医療用に用いられるものとして説明するが、医療用照明装置及び医療用診断装置自体は歯科医療用に限られず、各種医療用に用いることができる。
椅子12は患者を支持可能に構成されている。ここでは、椅子12は、フットコントローラ13等への操作に応じて、患者を着座姿勢と仰向け姿勢との間で姿勢変更可能かつ昇降可能に支持するように構成されている。
この椅子12に隣設して、うがい用スピットン14及びトレーテーブル19が設けられ、トレーテーブル19には表示装置15が設けられている。表示装置15は、液晶表示装置或はCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置等で構成されており、別途撮影されたX線画像或は別の撮影装置により撮影された患部画像等、診断に用いられる各種情報を表示可能に構成されている。また、これらのうがい用スピットン14、及び表示装置15を備えるトレーテーブル19等に、診療器具ホルダ部16が設けられており、診療に用いられる各種器具(例えば、歯科用インスツルメント等)が当該診療器具ホルダ部16に支持されるようになっている。
また、この医療用診断装置10は、可動アーム部18を備えている。ここでは、可動アーム部18は、うがい用スピットン14に支持固定されている。もっとも、可動アーム部18は、その他の部分、例えば、椅子12等に支持固定されていてもよい。また、可動アーム部18は、専用の固定部材によって支持固定されていてもよい。専用の固定部材としては、床上に立設された専用スタンド、或は、天井或は壁等への取付ブラケット等が想定される。
可動アーム部18は、曲げ可能なリンク機構等を含む構成によって、曲げ可能でかつ曲げられた一定姿勢で維持可能に構成されている。この可動アーム部18の先端部に、医療用照明装置20が取付固定されており、可動アーム部18を適宜曲げることによって、医療用照明装置20の位置及び姿勢を調整できるようになっている。そして、医療用照明装置20の位置及び姿勢を調整することによって、医療用照明装置20からの照明光を、椅子12上の患者の患部である口腔内に対して各種方向から照射できるようになっている。これにより、利用者は、医療用照明装置20を手で持って支持しなくても、当該医療用照明装置20を一定姿勢及び一定位置に配設した状態で、各種医療作業を行うことができる。
<医療用照明装置の全体構成>
医療用照明装置20について説明する。図2は医療用照明装置20を示す斜視図であり、図3は医療用照明装置20の内部構造を示す斜視図である。なお、図2では医療用照明装置20に対して諸指示を与える手のモーション例を示している。
この医療用照明装置20は、照明機構部22と、モーション検出部40と、照明制御部50とを備えている。そして、利用者による照明に関する諸指示がモーション検出部40によって受付けられ、モーション検出部40によって受付けられた指示に応じて照明制御部50が照明機構部22の照明動作を制御するようになっている。
より具体的に説明すると、照明機構部22は、筐体23と、照明モジュール30とを備えている。
筐体23は、一方側(正面側)に開口する筺状に形成されている。筐体23の背面側に、上記可動アーム部18の先端部が連結固定されることで、本医療用照明装置20が一定姿勢及び一定位置に配設した状態で支持される。
また、筐体23には、取っ手部24が設けられている。ここでは、筐体23の両側部に取っ手部24が設けられている。利用者は、本取っ手部24を持って操作することにより、本医療用照明装置20の位置及び姿勢を調整できるようになっている。
また、筐体23の一方側開口に、取付枠体26が一体的に取付固定されている。取付枠体26には、ネジ挿通孔26hが形成されている。ここでは、一対の取付枠体26のそれぞれに2つのネジ挿通孔26hが形成されている。取付枠体26は、筐体23に対して一体形成された部分であっても、筐体23とは別体形成され、後から、ネジ止或は嵌め込み構造等で一体化された構成であってもよい。そして、ネジSをネジ挿通孔26hに挿通して照明モジュール30に螺合させることにより、4箇所のネジ止構造によって、照明モジュール30が筐体23に着脱可能に取付けられる構成とされている。照明モジュールを筐体に対して着脱可能とする構成としては、ネジ止以外に、各種嵌め込み構造、弾性片の端部に設けられた突起部が相手側に係脱可能にロックする構成等、種々の着脱可能な構成を採用することができる。
照明モジュール30は、光源32と鏡体34とが一体化された構成とされている。
光源32は、照明光の発生源であり、ここでは、光源32としてLED(Light Emitting Diode)が用いられている。もっとも、光源としては、LEDの他、ハロゲンランプ等の各種光源を用いることができる。
光源32としては、異なる波長領域分布を持つ光を照射可能な複数種類のLED等が組合わされ、発光されるLEDの種類を切替えることで、異なる波長分布の光を照射可能な構成とされていることが好ましい。ここでは、光源32として、通常光照射用のLEDと、レジンモード用のLEDとを含んでいる。通常光照射用のLEDは、比較的多様な波長の可視光線が含まれた白色光を発する光源であり、患部の一般的な目視診療に適した光を発する。レジンモード用のLEDは、診療に用いられる光硬化性の樹脂を硬化させる波長領域(例えば、460μm〜470μm)をカットした光を発する光源であり、前記光硬化性の樹脂を用いた診療に適した光を発する。そして、通常光照射用のLEDとレジンモード用のLEDとの発光を切替えることで、通常光の照射モードと光硬化性の樹脂を硬化させにくいレジンモードとに切替えて照射できるようになっている。
もっとも、照明モジュールからの光の波長領域分布の切替は、光源自体の切替による他、別途設けた光学フィルターの切替等によって実現してもよいし、フルカラーLEDのように、複数の発光素子を制御によって組み合わせたり、各発光素子の発光強度を制御によってそれぞれ調整したりすることで、照明光の波長を調節し、所望の波長領域分布を持つ光への切替を実現してもよい。
鏡体34は、上記光源32からの光を反射して所定の照射方向に向けて照射可能に構成されている。より具体的には、鏡体34は、筐体23内に配設可能な筺状に形成されており、その内面が光反射面に形成されている。また、この鏡体34の底部及び天井部のそれぞれの2箇所に光源32が取付けられている(図3で底部側の光源32のみ図示)。そして、光源32からの光が光反射面によって反射され、鏡体34の一方側開口及び筐体23の一方側開口を通って外部に照射されるようになっている。
なお、ここでは、上記照明モジュール30は、光源32からの光を、複数方向から照射野に照射する無影灯として構成されている。
また、上記筐体23の一方側開口には、カバー28が取付けられている。カバー28は、光源32からの光を透過可能なカバーであり、筐体23の一方側開口全体を閉塞可能な大きさを有している。そして、本カバー28が筐体23の一方側開口を覆うことで筐体23内を保護する役割を有している。また、カバー28は、ネジ止構造或は嵌め込み構造等により、筐体23の一方側開口に対して着脱可能に取付けられるようになっている。
なお、このカバー28に、特定波長範囲の光だけを透過或は透過しない光学フィルターの性質を持たせることで、本医療用照明装置20による照明光の波長を調整することができる。カバー28に光学フィルターの性質を付与するためには、カバー28自体を、そのような光学フィルターとしての性質を持った材料で形成する構成、或は、光学フィルターフィルムを貼着ける構成等を採用することができる。
上記筐体23には、モーション検出部40及び照明制御部50が設けられている。ここでは、筐体23の下面略中央部に、円柱を縦割にしたような形状の突出部25が形成されている。モーション検出部40は、その検出面を外部正面に向けた姿勢で、突出部25の一主面(正面)に取付けられている。そして、物体、より具体的には、利用者の手指Fがモーション検出部40の前方を動くと(矢符号X、Y、Z、R参照)、その動きがモーション検出部40によって検出されるようになっている。また、照明制御部50は、突出部25内に組込まれている。そして、照明制御部50は、モーション検出部40によって検出された物体の動きに基づいて照明機構部22の照明動作を制御する構成とされている。
もっとも、モーション検出部40及び照明制御部50の配設位置は、上記例に限られない。モーション検出部40及び照明制御部50は、筐体23の上部或は側部、その他、可動アーム部18、医療用診断装置10のいずれかの部位等に設けられていてもよい。
<モーション検出部及び照明制御部>
上記モーション検出部40及び照明制御部50についてより具体的に説明する。図4はモーション検出部40及び照明制御部50を示すブロック図であり、図5はモーション検出部40を概念的に示す図である。
モーション検出部40は、非接触で物体の動きを検出し、検出した動きに応じた信号を出力可能に構成されている。この実施形態では、モーション検出部40は一つだけ設けられている。ここで、モーション検出部40が一つとは、内部構成部品の数に拘らず、本医療用照明装置20の組立作業段階等において一つの部品として把握されるように、1部品化或は1モジュール化されていることをいう(図5参照)。
ここでは、モーション検出部40は、複数の検知ポイント42(1)、42(2)、42(3)に対する物体の近接状況に応じて物体の動きを検出可能に構成されている。より具体的には、本モーション検出部40は、発光部41aと受光部41bとを複数組(ここでは3つ)有しており、それぞれの配置位置が検知ポイント42(1)、42(2)、42(3)として把握される。ここでは、2次元方向の物体の動きを検出できるように、検知ポイント42(1)、42(2)、42(3)は、正面視略矩形状領域のうち3つのコーナー部分に、即ち、三角形の頂点に対応する位置に設けられている(図5参照)。
このモーション検出部40では、発光部41aと受光部41bとの各組において、自己の発光部41aから照射された光が物体によって反射され対応する受光部41bにおいて受光されると、物体の近接検知信号が出力される。そして、複数(ここでは3つ)の受光部41bそれぞれからの近接検知信号が、物体の動きを検出した信号として出力される。
例えば、図5において、モーション検出部40の前方を、物体が下方から上方に移動したとする(矢符A参照)。すると、下側の検知ポイント42(3)において物体の近接が検出された後、上側の検知ポイント42(1)、42(2)において物体の近接が検出される。また、例えば、モーション検出部40の前方を、物体が左方から右方に移動したとする(矢符B参照)。すると、左側の検知ポイント42(1)において物体の近接が検出された後、右側の検知ポイント42(2)、42(3)において物体の近接が検出される。同様に、物体がモーション検出部40の前方を斜めに移動した場合、或は、物体がモーション検出部40の前方周りを時計回り或は反時計回りした場合にも、その動きに応じて検知ポイント42(1)、42(2)、42(3)が物体の近接を検出するタイミング(或は順)が異なると想定される。そこで、各検知ポイント42(1)、42(2)、42(3)における近接検出状態の経時的な変化に基づいて、物体の動きを検出できる。
本実施形態においては、モーション検出部40から複数の検知ポイント42(1)、42(2)、42(3)に対する物体の近接の有無を示す信号が出力され、当該信号の経時的な変化に基づいてモーション検出部40の検出面に対して略平行な面における物体の2次元的な動きを判別できることを想定して説明する。
さらに、上記モーション検出部40から受光部41bの受光強度を示す信号を出力することで、当該信号に基づいて物体がモーション検出部40に近づいているかを判別することもできる。すなわち、受光部41bの受光強度が大きくなるように変化している場合には物体が近づきつつあると判定することができ、受光部41bの受光強度が小さくなるように変化している場合には物体が遠ざかりつつあると判定することができる。なお、受光部41bの受光強度は、複数の受光部41bの平均値或は総和であってもよいし、或は、代表値であってもよい。
本実施形態においては、必要に応じて、モーション検出部40から前記受光強度を示す信号が出力され、その信号の経時的な変化に基づいて、モーション検出部40の検出面に対する物体の遠近移動を判別できることを想定して説明する。もっとも、モーション検出部40の検出面に対する物体の遠近移動を判別できることは必須ではない。
なお、上記発光部41aと受光部41bとを組合わせたものとしては、赤外線LED等の発光素子と赤外線を受光して電気信号に変換する受光素子とを有する赤外線近接センサを用いることができる。
もっとも、複数の検知ポイント42(1)、42(2)、42(3)のそれぞれに、発光素子と受光素子とが存在する必要はない。
例えば、発光素子が一つだけ設けられ、受光素子は複数の検知ポイントのそれぞれに設けられていてもよい。また、逆に、発光素子が複数の検知ポイントのそれぞれに設けられ、受光素子が一つだけ設けられていてもよい。後者の場合、複数の発光素子を時分割して発光駆動させ、単一の受光素子から複数の検知ポイントにおける近接状況を示す信号が時分割多重化された信号として出力されるようにするとよい。複数の検知ポイントにおける近接状況を示す信号が時分割多重化された信号は、本モーション検出部40において複数の検知ポイントにおける近接状況を示す信号として分けられてもよいし、或は、照明制御部50において分けられてもよい。このような形態も、モーション検出部が赤外線近接センサによって構成されている場合に含まれる。つまり、検知ポイントとは、光等の検出媒体の発信位置或は受信位置であるかに拘らず、物体の近接状況を検出する基準となる位置をいう。
また、モーション検出部は、上記の他、複数の超音波センサ、或は、複数の静電容量型近接センサによって構成されていてもよい。これらの場合でも、複数の超音波センサ、或は、複数の静電容量型近接センサが、複数の検知ポイントに対応して設けられ、それぞれの検知ポイントにおいて物体の近接状況を検知することで、上記と同様に、物体の動きを検出することが可能となる。
照明制御部50は、モーション検出部40によって検出された物体の動きに基づいて、照明機構部22の照明動作を制御するように構成されている。より具体的には、照明制御部50は、マイクロプロセッサの一種であるCPU52と、記憶部54と、照明動作特定部56とを備えており、これらは信号線を介してデータ送受可能に接続されている。
CPU52は、記憶部54からプログラムを読込み、当該プログラムに記述された指示に従って処理を実行することで、照明動作を制御する照明動作制御部としての処理を実行する。
記憶部54は、上記CPUと結合された主記憶部と、補助記憶部とを有している。主記憶部は、RAM(Random Access Memory)等によって構成され、CPU52が諸処理を実行するための作業領域を提供する。補助記憶部は、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスク装置等の非一時的な記憶装置によって構成されている。補助記憶部には、CPU等に対する指示を記述したプログラム、照明動作判別用データ等が格納されている。
照明動作特定部56は、プロセッサ等により構成されており、プログラムに記述された指示に従って処理を実行することで、照明動作を特定する処理を実行する。本照明動作特定部56のためのプログラムは、上記記憶部54に格納されていてもよいし、本照明動作特定部56専用の記憶部に格納されていてもよいし、外部の機器に格納されたプログラムと照明制御部50とが通信することで照明動作を特定する処理を実行できる構成であってもよい。
もっとも、本照明制御部50の各処理機能は、物理的に一つのプロセッサにより実現されてもよいし、或は、物理的により多数のプロセッサに分散処理して実現されてもよい。また、照明制御部50の一部又は全部の機能がハードウェアで実現されてもよい。さらには、照明制御部50自体が一つのコンピュータ装置によって構成されている必要はなく、複数のコンピュータ装置によって実現されていてもよい。
なお、上記CPU52は、入出力回路を通じて光源駆動制御部60に接続されている。光源駆動制御部60は、オンオフ回路60aと、調光回路60bと、モード切替回路60bとを有している。光源駆動制御部60は、筐体23及び照明モジュール30のいずれに設けられていてもよい。オンオフ回路60aは、光源32に対する電源回路をオンオフ等することで、光源32を点灯及び消灯する回路である。調光回路60bは、インバータ回路等により電源に対する電力供給量を調整すること等で、光源32の照度を調整する回路である。モード切替回路60cは、光源32のうち発光させるべきLEDの種類、数等を適宜切替等することで、光源32の照射モードを切替えるための回路である。つまり、複数の照射モードは、光の波長分布、照度のうち少なくとも一つが異なることで区別される。ここでは、必要に応じて、モード切替回路60cが、光源32を、通常光の照射モードとレジンモードと待機モードとに切替える例で説明する。通常光の照射モードは、上記した通り、比較的多様な波長の可視光線が含まれた白色光を発するモードであり、患部の観察に適しているため、治療モードとも呼ばれる。レジンモードは、上記した通り、光硬化性の樹脂を硬化させにくい波長分布の光を発するモードであり、光硬化性樹脂の取扱中等に用いられるモードである。待機モードは、治療中に患者の歯型などを採る場合等、患者側の治療待機時等において、照度を低減させたり暖色の照明光に切替たりして患者をリラックスさせるような光を発するモードである。この場合の照度の低減は、調光回路60bの調光機能によって実現されてもよい。
そして、CPU52から光源駆動制御部60にいずれかの照明動作を行うべき指令が与えられると、当該指令に従って光源駆動制御部60が光源32の照明動作を駆動制御する構成とされている。
上記照明動作特定部56が実行する処理及びCPU52が照明動作制御部として実行する処理についてより具体的に説明する。
ここで、図6を参照して記憶部54に格納された照明動作判別用データの一例について説明しておく。この照明動作判別用データは、物体の動きパターンと照明動作とが対応づけられている。動きパターンは、モーション検出部40からの出力信号によって判別可能な動きであり、ここでは、”下から上へ”、”上から下へ”、”左から右へ”、”右から左へ”の4つの動きパターンを想定している。これらの動きパターンは、例えば、上記したように各検知ポイント42(1)、42(2)、42(3)における近接検出状態の経時的な変化(各出力信号の時間軸方向の差分)に基づいて判別できる。
また、照明動作は、照明機構部22に対して制御可能な照明状態である。ここでは、照明動作として、点灯動作、消灯動作に加えて、調光切替(照度上昇)、調光切替(照度低減)、つまり、光量調整動作を想定している。
図6に示す照明動作判別用データでは、”下から上へ”、”上から下へ”、”左から右へ”、”右から左へ”の4つの動きパターンが点灯動作、消灯動作、調光切替(照度上昇)、調光切替(照度低減)のそれぞれに対応づけられている。
照明動作特定部56は、モーション検出部40からの出力信号に基づいて動きパターンを判別し、上記照明動作判別用データを参照して、当該判別された動きパターンに対応する照明動作を特定する。そして、照明動作特定部56は、特定された照明動作をCPU52に与える。
CPU52は、上記照明動作特定部56による特定結果に基づいて照明機構部22の照明動作を制御する処理を実行する。図7はCPU52が実行する照明動作制御部としての処理を示すフローチャートである。
まず、初期状態において、ステップS1に示すように、CPU52は照明機構部22を消灯状態とする(或は消灯状態から処理を開始する)。
次ステップS2において、CPU52は、照明動作特定部56によって特定された照明動作が点灯動作であるか否かを判別する。判別結果、点灯動作でないと判別された場合は、ステップS1に戻り、消灯状態を継続する。一方、点灯動作であると判別された場合は、ステップS3に進む。
ステップS3では、CPU52は、光源駆動制御部60に点灯指令を与える。これにより、照明機構部22が点灯する。なお、点灯初期状態における照明機構部22の照度及びモードは、利用者により設定可能に構成されていることが好ましい。つまり、利用者毎の点灯初期状態が設定可能であることが好ましい。この場合の入力装置としては、本モーション検出部40を利用してもよいし、医療用診断装置10内に設けられたその他のスイッチ等を利用してもよい。また、利用者の切替は、利用者毎に異なる動きパターンを設定しておき、利用者の動きを判別することで行われてもよいし、或は、他のスイッチ等の入力装置を用いて行われてもよい。
次ステップS4では、CPU52は、照明動作特定部56によって特定された照明動作が調光動作であるか否かを判別する。調光動作であると判別されるとステップS7に進む。ステップS7では、CPU52は、調光動作が調光切替(照度上昇)である場合には光源駆動制御部60に照度上昇指令を与え、調光動作が調光切替(照度低減)である場合には光源駆動制御部60に照度低減指令を与える。これにより、照明機構部22の照度が上昇或は低減するように調整される。ステップS7後、ステップS3に戻る。なお、このステップS4及びステップS7の処理が繰返されることによって、照明装置20の照度が多段階で調整されることになる。
一方、ステップS4において、調光動作ではないと判別されると、ステップS5に進む。
ステップS5では、CPU52は、照明動作特定部56によって特定された照明動作が消灯動作であるか否かを判別する。消灯動作でないと判別されると、ステップS3に戻る。従って、点灯後は、ステップS4、S5、S7の処理が繰返し行われる。そして、ステップS4及びステップS7の処理が複数回繰返されることによって、多段階的な調光調整がなされるようになっている。
一方、ステップS5において消灯動作であると判別されると、CPU52は、光源駆動制御部60に消灯指令を与える。これにより、照明機構部22が消灯する。これにより、CPU52は、照明動作制御部としての一通りの処理を終了する。
もっとも、制御対象となる照明動作は、上記例に限られない。照明動作は、光源32の点灯動作及び消灯動作だけであってもよいし、これらの動作に加えて、照射モードの切替動作を行う場合、若しくは、光源32の光量調整動作及び照射モードの切替動作を行う場合であってもよい。照明動作として、光源32の点灯動作及び消灯動作に加えて、光源32の光量調整動作及び照射モードの切替動作を行う場合について説明する。
図8は照明動作判別用データの他の例を示す図である。ここでは、動きパターンとして、“左から右へ”、”右から左へ”、“遠方から近づく”、“近くから遠ざかる”、“時計回り”、“反時計回り”の6つを想定している。つまり、3次元的な動きパターンが想定されている。また、照明動作として、点灯動作、消灯動作に加えて、調光切替(照度上昇)、調光切替(照度低減)、モード切替(正順)、モード切替(逆順)を想定しており、それぞれ上記動きパターンに対応づけられている。ここで、モードとしては、照射モードとレジンモードと待機モードとを想定している。モード切替(正順)はモードを前記記述順で循環的に切替える動作であり、例えば、モード切替(逆順)とはモードを前記記述順とは逆順で循環的に切替えるモードである。3つ以上のモードがある場合には、このようにモードを循環的に切替えることで、より少ない動きでもモード切替を実行できる。
図9はCPU52が実行する照明動作制御部としての他の処理を示すフローチャートである。図9に示すフローチャートは、図7に示すフローチャートと比較して、ステップS11、ステップS12が追加されている点で異なっている。本例では動きパターンの内容が異なるだけであるため、点灯、消灯及び調光に係る各処理は、図7に示す処理と同様である。
すなわち、図9に示すフローチャートでは、ステップS4において調光動作でないと判別されたときに、ステップS11に進み、切替動作であるか否かを判別する。切替動作であると判別されるとステップS12に進む。なお、点灯初期状態では、先頭のモード(つまり、通常の照射モード)である。
ステップS12では、CPU52は、モード切替がモード切替(正順)である場合には光源駆動制御部60に正順によるモード切替指令を与え、モード切替がモード切替(逆順)である場合には光源駆動制御部60に逆順によるモード切替指令を与える。これにより、光源駆動制御部60は上記モードの切替順に従って照明機構部22のモードを切替えるように駆動制御する。なお、CPU52において照明機構部22の現状のモードを特定し、その現状のモード及び特定されたモード切替(正順)或はモード切替(逆順)に従って、次に切替えるべきモードを光源駆動制御部60に指令してもよい。ステップS12の終了後、ステップS3に戻る。
一方、ステップS11においてモードの切替動作でないと判別されると、ステップS5に進む。
なお、図9に示すフローチャートにおいては、レジンモード及び待機モードのいずれにおいても、さらに照度調整を行えるようになっているが、レジンモード及び待機モードでは照度調整を行えないようにしてもよい。
また、照度調整後にモード切替を行う場合、モード切替後の照度は、直前の操作で調整された照度に対応する照度であってもよいし、各モード毎に予め設定された初期の照度であってもよい。
なお、物体の動きパターンと照明動作との対応付及びその対応付に基づく照明動作の制御処理例は上記例に限られない。
例えば、図10に示す照明動作判別用データでは、図6に示す照明動作判別用データにおいて、“下から上へ”の動きパターンに、点灯動作とモード切替動作とが対応づけられている。この場合、図9に示すフローチャートにおいて、ステップS2(つまり、消灯状態の判別処理)で、点灯動作/モード切替動作の照明動作であると判別されると、ステップS3に進み点灯を行う。また、ステップS11(つまり、点灯状態の判別処理)で、点灯動作/モード切替動作の照明動作であると判別されると、ステップS12に進みモード切替を行う。つまり、点灯動作に係る指示は消灯状態で行われ、モード切替動作に係る指示は点灯状態で行われ、両指示は排他的なタイミングでなされる。そこで、点灯動作とモード切替動作とを、共通する動きパターン(ここでは“下から上へ”の動きパターン)に対応づけている。
また、図11に示す照明動作判別用データでは、動きパターンとして、“左から右へ”、”下から上へ移動後、左から右へ“、”下から上へ移動後、右から左へ“、”下から上へ“、”上から下へ“の5つを想定している。また、照明動作として、点灯及び消灯動作、調光切替(照度上昇)、調光切替(照度低減)、解除、モード切替を想定しており、それぞれ上記5つの動きパターンに対応づけられている。なお、解除の動作とは、調光調整或はモード切替後に、点灯初期状態に戻すための動作である。また、モード切替の動作とは、上記モード切替(正順)動作を想定している。
この場合、図9に示すフローチャートにおいて、ステップS2(つまり、消灯状態の判別処理)で、点灯/消灯の照明動作であると判別されると、ステップS3に進み点灯を行う。また、ステップS5(つまり、点灯状態の判別処理)で、点灯/消灯の照明動作であると判別されると、ステップS6に進み消灯する。つまり、この場合も、点灯動作に係る指示は消灯状態で行われ、消灯動作に係る指示は点灯状態で行われ、両指示は排他的なタイミングでなされる。そこで、点灯動作と消灯動作とを、共通する動きパターン(ここでは“左から右へ”の動きパターン)に対応づけている。
また、図6に示すフローチャートにおいて、ステップS3とステップS4との間、ステップS4とステップS11との間、ステップS11とステップS5との間のいずれか等において、解除であるか否かを判別するステップを行うとよい。そして、解除動作であると判別されると、点灯初期状態に戻すようにCPU52から光源駆動制御部60に指令を与えて照明機構部22を点灯初期状態に戻し、解除動作でないと判別されると次ステップに進むとよい。
なお、動きパターンとしては、上記に限られるものではなく、他にも、モーション検出部によって何らかの動きが検出できる動きであればよい。例えば、その他の動きパターンとして、上記動きパターンの繰返し(例えば、“下から上へ”の複数回繰返し)、斜め方向の動き、○或は×等の図形的な動き、手のひらを開いた状態と握った状態との間で開閉する動き、手の甲或は手の平をモーション検出部側を向けるように手のひらを返す動き等であってもよい。つまり、モーション検出部によって区別して検出可能な動きであればよい。
また、右手で指示する場合と、左手で指示する場合とで、上記した動きパターンの左右及び回転方向が逆に設定されてもよい。右手用と左手用との切替は、本モーション検出部40により検出された動き或は別途設けたスイッチ等で行われてもよい。
つまり、通常、利用者は利手で治療用のハンドピース等を把持しているところ、把持するハンドピースに接続されるチューブの長さにより利き手の可動範囲が制限されることがある。また、ハンドピースを把持したままで利手を大きく動かすと、患者の上方にハンドピースがかざされ、患者に恐怖感を与えてしまう恐れがある。これらの支障を回避するためには、ハンドピースを一端ホルダ等に収容する必要があり、煩わしい。そこで、診療中、利き手と逆の手でも照明動作を制御できるように、右手用と左手用との切替えを行えるようにしておくことが好ましい。
以上のように構成された医療用照明装置20によると、本医療用照明装置20の利用者が、モーション検出部40の前方で、手指F等を上記動きパターンのいずれかに従って動かすと、その動きがモーション検出部40で検出される。そして、モーション検出部40の検出結果に基づき、照明動作特定部56で照明動作が特定され、その特定結果がCPU52に与えられる。そして、CPU52は、その特定結果に基づいて照明機構部22の照明動作を制御する。これにより、利用者の手指F等の動きに応じて、照明機構部22の点灯、消灯、照度調整、モード切替等を制御できる。
このため、非接触で照明機構部22の照明動作を制御でき、衛生的な照明装置を提供できる。
しかも、利用者の手指F等の多様な動きによって、照明機構部22の照明動作を制御するための多様な指示を受付けて、照明動作を制御することができる。つまり、本医療用照明装置20は、単に近接センサのオンオフによって照明をオンオフするのではなく、モーション検出部40によって少なくとも二次元以上の物体の動きを検出し、その動きに応じて多様な指示を受付けて照明制御している。ここでは、照明機構部22の点灯及び消灯に加えて、光源の光量調整、照射モードの切替等の多様な指示を受付けて制御できる。このため、多様な指示を受付けて照明制御することができ、より使い勝手のよい照明装置を提供することができる。
また、物体の動きによって照明動作を指示することができるため、その多様な指示を短時間で行える。例えば、入力手段として光センサ等を用い、当該光センサの検知光が遮光される時間の長さによって照明動作を制御する場合と比べると、比較的短時間で各種照明動作を区別して受付けることができる。
また、モーション検出部40が組立作業段階等において一つの部品として把握されるように、1部品化或は1モジュール化されたものを用いることで、その組付及びメンテナンス作業等が容易となる。もっとも、モーション検出部40が一つの部品であることは必須ではない。図12に示すように、モーション検出部40に対応するモーション検出部140が複数(ここでは3つ)の発光部142と一つの受光部143とを有しており、各発光部142及び受光部143が筐体23の前面に分離して設けられていてもよい。より具体的には、複数の発光部142が筐体23の下部一端部(右部)、上部の左右部分に分離して設けられている。また、受光部143が筐体23の下部中央部に設けられている。そして、複数の発光素子を時分割して発光駆動すると、単一の受光部143から複数の検知ポイントにおける近接状況を示す信号が時分割多重化された信号として出力されるようにするとよい。これにより、上記と同様にして、筐体23の前方における物体の動きを検出できる。
また、モーション検出部40は、複数の検知ポイント42(1)、42(2)、42(3)に対する物体の近接状況に応じて物体の動きを検出する。また、モーション検出部40はそのような近接状況の検出を、赤外線近接センサ、超音波センサ、静電容量型近接センサのうちの少なくとも一つで実現する。このため、多数のセンサを縦横にアレイ状に配設したイメージセンサ等を用いる場合と比べると、モーション検出部40自体の構成及びその後の信号処理回路、動きパターンの判別アルゴリズム等が簡素化される。このため、照明装置20の各種照明動作制御を行える程度の複雑な物体の動き検出を行いつつ、本医療用照明装置20自体の簡素化、軽量化、低コスト化を図ることができる。
なお、より複雑な物体の動きを検出するためには、少なくとも物体の2次元の動きを検出できることが好ましい。このためには、モーション検出部は、近接の有無を判断できる検知ポイントを少なくとも3つ有していればよい。或は、モーション検出部は、近接の程度(物体に対する距離)を判断できる検知ポイントを少なくとも2つ有していればよい。
また、本実施形態では、動きに応じてステップS4及びS7の処理が繰返されることによって、多段階で照明機構部22の光量調整が行われるため、便利である。どの程度段階的で光量調整を行うかによっては、各ステップS7における照度調整の幅によって定められる。各ステップS7における照度調整の幅を小さくすれば、各段階間での光量変化が滑らかで実質的には無段階光量調整と把握されるような態様での光量調整も可能となる。
モーション検出部としてより細かな動き或は位置を検出可能なもの(例えば、後述する撮像素子等)を用い、その移動量或は位置に応じて実質的に無段階と把握されるような態様で光量調整を行うようにしてもよい。例えば、図6において、“左から右へ”の動きによって調光動作(照度上昇)を判別する際、その移動量を検出し、当該移動量に応じて照度調整幅(照度上昇幅)を決定するようにしてもよい。
また、このような医療用照明装置20が医療用診断装置10に組込まれているため、医療中に無接触で多様な照明動作を切替えることができ、便利である。
また、上記モーション検出部は、カバーによって保護されていることが好ましい。例えば、モーション検出部をカバー28で覆われる位置に配設するとよい。これにより、簡易な構成でモーション検出部の汚れを防止することができる。
<その他の変形例>
上記実施形態及びその中で適宜言及した変形例は、例示であって、本発明の内容は当該例示の内容に限られない。その他の各種変形例について説明する。
例えば、モーション検出部として、図13に示すように、CCD(Charge Coupled Device Image Sensor)素子等の撮像素子242を含む撮像装置240を用いてもよい。この場合、照明動作特定部56に対応する照明動作特定部256は、撮像素子242によって撮像された動画に基づいて物体の動きを検出する。動画における物体の動きは、時間軸に沿ったフレーム間差分に基づく手法、時間軸に沿った各フレームにおいて手指F等を表す検出対象画像の位置をパターンマッチング等によって認識する手法等により判別することができる。物体の動きを認識する処理機能部分は、撮像装置240に組込まれていてもよいし、照明動作特定部256に組込まれていてもよい。撮像装置240は、ズーム調整可能であってもよく、また、望遠モードと広角モードとの切替が可能であってもよく、さらに、静止画も動画も撮像可能であることが好ましい。なお、図13において、上記した箇所以外は、図4と同様であるため、ここでは共通部分の説明は省略する。
また、モーション検出部としては、その他、熱分布を検出し、その熱分布を画像化して時間的に変化する信号として出力可能なサーモグラフィー等を利用することもできる。
また、好ましくは、モーション検出部は、3次元的な物体の動きを検出できることが好ましく、そのためには、モーション検出部は、例えば、近接の程度(物体に対する距離)を判断できる検知ポイントを少なくとも3つ有しているとよい。このような例として、モーション検出部として、3次元超音波ソナー等を用いてもよい。
また、図14に示す例では、筐体23に、撮像装置310が設けられている。ここでは、筐体23の上部に撮像装置310が取付けられている。撮像装置310は、医療用照明装置20による照明方向と略同方向を向いており、医療用照明装置20による照明対象を撮像可能とされている。撮像装置310は、CCD素子或はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)撮像素子等を含む撮像装置であり、撮像された画像は、表示装置15等に表示される。
この撮像装置310によって、医療用照明装置20による照明対象を撮像することが可能となり、より利便性に優れた医療用照明装置20を提供することができる。
また、筐体23には、従来から実施されている形態を適用して、患部を写し出すことが可能なミラーが設けられていてもよい。この場合、ミラーは、患部を映し出すのに適した位置(例えば、カバー28と重なる位置)と、照明光を阻害しない位置(例えば、カバー28から待避した位置)との間で位置変更可能に配設されていることが好ましい。
図15及び図16は、照明モジュール30、430を筐体23に対して着脱交換する例を示す図である。
すなわち、上記したように、筐体23に一対の取付枠体26が取付固定されている。そして、ネジSを、取付枠体26のネジ挿通孔26h(図15及び図16参照)に挿通して照明モジュール30に螺合させることにより、照明モジュール30が筐体23に取付固定されている(図3参照)。このため、筐体23の背面カバーを取外した状態で、ネジSを緩めれば、図15に示すように、照明モジュール30を筐体23から取外すことができる。
図16に示す照明モジュール430は、光源432と鏡体434とを有している。光源432は、ハロゲンランプであり、鏡体434の略中央部に設けられている。鏡体434は、上記鏡体34と外形同形状に形成され、光源432の光を前方に向けて反射可能に構成されている。ネジSを、取付枠体26のネジ挿通孔26hに挿通して照明モジュール430に螺合させることにより、照明モジュール430が筐体23に取付固定されるようになっている。
これにより、光源32、432と鏡体34、434とを一体として容易に交換できることになる。
なお、この場合、光源駆動制御部60(図4参照)は、照明モジュール30、430用それぞれ別々のものとして、別々に照明モジュール30、430に一体的に組込まれているとよい。そして、照明モジュール30、430を筐体23に取付ける際に、コネクタ等を介して照明制御部50に接続される構成としておけばよい。
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。