JP5634598B2 - キャップおよびこれを用いた固定構造部 - Google Patents
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Description
また、ファスナの先端部およびカラーを包囲するように、樹脂製のキャップを設ける場合がある。このキャップは、航空機に着雷した場合に、複合材とされた構造材と金属製のファスナやカラーとの間でスパークが発生することを防止するために用いられる。特に、燃料タンク側にファスナ先端部およびカラーが位置する場合には、このようなキャップが有用である。
特に、航空機は、その運用中に、地上では高温(例えば100℃)となり飛行時には低温(例えば−60℃)となるといった過酷な温度変動を受ける。そのため、このような温度変動が生じる場合であってもキャップが脱落しないように固定することが要求される。
しかし、同図に示された構成は、キャップ103を確実に固定できるものの、ファスナ101の先端に、キャップ103に螺合する雄ネジ部101aを形成するために、ファスナ101の先端部を軸線方向に延長する必要がある。すなわち、特別な構造のファスナを用いることになり、従来の汎用品とされたファスナを用いることができずコストの増大を招く。また、ファスナ101の先端部が軸線方向に延長されるので、これに伴いキャップ103の軸線方向長さが増大し、キャップの材料費が嵩むという問題もある。
すなわち、本発明に係るキャップは、重ね合わされた複数の構造材に形成された貫通穴に挿通されたファスナと、該構造材の表面から突出した前記ファスナの先端部に対して締結されたカラーとによって、これら構造材同士を固定する固定構造部に適用され、前記ファスナの前記先端部および前記カラーを包囲するように配置される航空機構造材固定用キャップにおいて、その内周面には、該内周面と前記構造材の前記表面との間に形成される空間に充填される充填材に対して係合する係合部が形成され、前記係合部は、前記ファスナの中心軸線を共通の中心軸線とする螺旋形状に沿ってキャップの開口端部まで形成され、前記キャップが前記ファスナおよび前記カラーに取り付けられる時に、該キャップと、前記ファスナおよび前記カラーとの間に充填された前記充填材中に生じたボイドを、該キャップの外部へと排出可能にしたことを特徴とする。
また、キャップを螺合させる雄ネジ部をファスナの先端部に対して追加的に設ける必要がないので、追加的な雄ネジ部を備えていない既存のファスナを使用することができ、また、追加的に設けた雄ネジ部によってファスナの先端部分が長くなり、これによりキャップの軸線方向長さが長くなることを回避できる。さらに、ファスナの先端部分およびキャップの軸線方向長さを短くできるので、周辺構造材との干渉リスクを低減することができ、また、重量を低減することができる。
なお、充填材としては、典型的にはシーラントが挙げられるが、例えば接着剤のような他の充填材であってもよい。
しかも、螺旋状に係合部を形成して係合部が形成される領域を広くすることにより、さらにキャップと充填材との機械的結合力を強めることができる。
また、係合部が螺旋状に形成されているので、キャップを射出成形によって製造する場合には、螺旋状に沿って回転させることによって容易に型抜きが可能となるので、成形性に優れたキャップとすることができる。
また、係合部が凹部とされている場合には、螺旋状の凹溝が形成されることになり、充填材中に生じたボイド(気泡)を螺旋状の凹溝に沿って導き、キャップの外部へと排出することができる。これにより、充填材中のボイドを排除することができ、信頼性を向上させることができる。
また、複数条化された係合部のいずれもが螺旋形状に形成されているので、キャップを射出成形によって製造する場合には、螺旋形状に沿って回転させることによって容易にキャップの型抜きが可能となるので、成形性に優れたキャップとすることができる。
さらに、係合部が螺旋形状に複数条形成されているので、キャップを射出成形によって製造する場合には、キャップの回転角度を小さくして、キャップの生産性を向上させることができる。
したがって、螺旋形状をキャップの底部に達しないように形成することにより、充填材に混入している空気がキャップの内部に残留することを防止し、キャップの固定性能と着雷時のスパーク防止性能を向上させることができる。
特に、キャップの内部に、充填材と係合する螺旋形状の係合部が設けられて軸方向への抜脱を防止するようにしてある場合には、このようにキャップの回動を規制する回動規制形状の係合部を併設することにより、螺旋形状に沿ってキャップが自然回動して緩むことが規制され、キャップの脱落が一層有効に防止される。
このため、充填材に混入している空気がキャップの内部に残留することが防止され、キャップの固定性能と着雷時のスパーク防止性能を向上させることができる。
また、キャップを螺合させる雄ネジ部をファスナの先端部に対して追加的に設ける必要がないので、追加的な雄ネジ部を備えていない既存のファスナを使用することができ、また、追加的に設けた雄ネジ部によってファスナの先端部分が長くなることを回避できる。
なお、充填材としては、典型的にはシーラントが挙げられるが、例えば接着剤のような他の充填材であってもよい。
また、キャップの外周面と構造材の表面との間に充填材を設けるには、キャップを取り付ける際にキャップの開口端部と構造材の表面との間の隙間から充填材を漏出(スクイーズアウト)させることによって実現することができる。
また、キャップを螺合させる雄ネジ部をファスナの先端部に対して追加的に設ける必要がないので、追加的な雄ネジ部を備えていない既存のファスナを使用することができ、また、追加的に設けた雄ネジ部によってファスナの先端部分が長くなり、これによりキャップの軸線方向長さが長くなることを回避できる。
[第1参考実施形態]
以下、本発明の第1参考実施形態について、図1を用いて説明する。
図1には、本参考実施形態の固定構造部1を示した縦断面が示されている。
固定構造部1は、本参考実施形態では航空機の燃料タンク周りに適用され、重ね合わされた構造材3,3に形成された貫通穴3aに挿通されたファスナ5と、ファスナ5の先端部5aに対してワッシャ8を介して締結されたカラー7と、ファスナ5の先端部5aおよびカラー7を包囲するように配置されたキャップ9とを備えている。
構造材3,3としては、例えば航空機の外板、ストリンガ、リブ、スパー等が挙げられ、アルミ合金等の金属材料やCFRP(炭素繊維強化プラスチック)やGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)とされた複合材料が用いられる。図1において、構造材3の一側面3b側(同図において上方側)が燃料タンク外となり、構造材3の他側面3c側(同図において下方側)が燃料タンク内となる。
頭部5dは、軸部5bの直径よりも大きな直径とされており、かつ、構造材3に形成された貫通穴3aの直径よりも大きな直径とされている。これにより、頭部5dは、貫通穴3aに入り込まずに構造材3の一側面3b側にて係止されるようになっている。
ファスナ5の軸部5bの先端部5a側には、カラー7を螺結するための雄ネジ溝が形成されている。
キャップ9は、図1から明らかなように、ファスナ5の先端部5aおよびカラー7に対して非係合状態で取り付けられている。すなわち、キャップ9は、ファスナ5やカラー7に対して直接的に固定されるものではない。
シーラント11は、キャップの内周面9eに形成された凹溝9d内に進入して収容されるようになっている。これにより、キャップ9とシーラント11とが係合して機械的に結合されるようになっている。
先ず、重ね合わされた構造材3,3に形成された貫通穴3aにファスナ5の軸部5bを先端部5aから挿通させる。そして、構造材3,3の他側面3cから突出した先端部5aに対して、ワッシャ8を介挿した上でカラー7を螺合させる。これにより、重ね合わされた構造材3,3同士が固定される。
そして、キャップ9の内部にシーラント11を所定量だけ投入した上で、ファスナ5の先端部5a及びカラー7を包囲するようにキャップ9を挿入する。キャップ9の開口端部9aが、構造材3の他側面3cに当接するように挿入する際に、キャップ9内のシーラント11がファスナ5及びカラー7の周囲に流動し、キャップ9の内周面9eと構造材3の他側面3cとで囲まれた領域内にシーラント11が充填される。その後、この状態にて保持することにより、シーラント11が固化し、シーラント11に対してキャップ9が固定される。
なお、キャップ9に形成した凹溝9dは、外部から視認可能な場合には、シーラント11の充填量を示す目印ラインとしても使用することができる。
ファスナ5の先端部5aおよびカラー7に対して非係合状態でキャップ9を取り付けた上で、キャップ9の内周面9eに凹溝9dを形成し、この凹溝9d内にシーラント11を収容して係合させることにより、キャップ9とシーラント11とを機械的に結合することとした。これにより、キャップとファスナの先端部とを螺合させる構成(特許文献2及び3参照)を採用することなく、キャップ9を脱落させることなく安定的に固定することができる。
また、キャップを螺合させる雄ネジ部(図20の雄ネジ部101a参照)をファスナの先端部に対して追加的に設ける必要がないので、追加的な雄ネジ部を備えていない既存のファスナを使用することができ、また、追加的に設けた雄ネジ部によってファスナ5の先端部分が長くなり、これによりキャップ9の軸線方向長さが長くなることを回避できる。さらに、ファスナ5の先端部分およびキャップ9の軸線方向長さを短くできるので、周辺構造材との干渉リスクを低減することができ、また、重量を低減することができる。
また、凹溝9dをキャップ9の内周面9eの全周に渉って形成して係合領域を全周に形成することとしたので、キャップ9とシーラント11との機械的結合力を強めることができる。
[第1変形例]
図3に示すように、凹溝9dに、キャップ9の外周部9cへと半径方向に延在して貫通する貫通溝9kを1つまたは複数設けることとしてもよい。これにより、キャップ9の装着時に、キャップ9内のシーラント11を押し出してキャップ9の外周部9c側まで導くようにして凹溝9d内に確実にシーラント11を充填することができる。
図4に示されているように、離散的に形成された複数の分割凹溝9fによってシーラント11との係合部を構成してもよい。各分割凹溝9fは、中心軸線CLを中心とする円環形状の軌跡上に沿って形成されている。
隣り合う分割凹溝9fの間隔は、等間隔であってもよいし、不等間隔であってもよい。また、分割凹溝9fの数についても任意である。
さらに、各分割凹溝9fには、図3に示したような貫通溝9kを設けてもよい。
図5に示されているように、図1に示した凹溝9dを中心軸線CL方向に複数段設けても良い。図5では、一例として2段の凹溝9dが設けられている。このように凹溝9dを複数段設けることにより、シーラント11との係合部を増加させてさらに機械的結合力を増大させることができる。
図6に示されているように、図4に示した分割凹溝9fを中心軸線CL方向に複数段設けても良い。図6では、一例として2段の分割凹溝9fが設けられている。このように分割凹溝9fを複数段設けることにより、シーラント11との係合部を増加させてさらに機械的結合力を増大させることができる。
さらに、図示しないが、図1に示した凹溝9dと図4に示した分割凹溝9fを組み合わせて複数段の係合部を構成してもよい。例えば、キャップ9の底部9b側に凹溝9d(又は分割凹溝9f)を形成し、キャップ9の開口端部9a側に分割凹溝9f(又は凹溝9a)を形成してもよい。
また、図7に示すように、キャップ9の開口端部9aの外周部9cと構造材3の他側面(同図において下方側)3cとの間の角部に、シーラント11aが設けられる構成としてもよい。このように、キャップ9の外周部9cと構造材3の他側面3cとの間にシーラント11aを設けることにより、キャップ9を外周面側から押さえ込んで固定することができる。これにより、さらにキャップ9の結合力を向上させることができる。
図7に示すようにシーラント11aを設けるには、キャップ9を取り付ける際にキャップ9の開口端部9aと構造材3の他側面3cとの間の隙間からシーラント11を漏出(スクイーズアウト)させることによって実現することができる。
次に、本発明の第2参考実施形態について、図8を用いて説明する。
本参考実施形態は、第1参考実施形態の係合部が凹溝9dや分割凹溝9fであったのに対し、凸部9gである点で相違し、それ以外については同様である。したがって、同一構成部については同一符号を付し、その説明を省略する。
図8に示されているように、キャップ9の内周面9eには、シーラント11側に突出する凸部9gが設けられている。凸部9gは、図9に示されているように、ファスナ5の中心軸線CLを共通の中心軸線とする円環形状の軌跡上に沿って、無端状に形成されている。本参考実施形態では、凸部9gが1つとされている。
キャップ9は、図8から明らかなように、ファスナ5の先端部5aおよびカラー7に対して非係合状態で取り付けられており、凸部9gについてもカラー7に対して非係合状態にて配置される。すなわち、キャップ9は、ファスナ5やカラー7に対して直接的に固定されるものではない。
また、凸部9gは、凹溝9dと同様に、外部から視認可能な場合には、シーラント11の充填量を示す目印ラインとして利用することもできる。
さらに、凸部9gの突出量を調整し、カラー7やファスナ5との間のクリアランスを所望量に設定することにより、凸部9gを芯出し部として利用することができる。これにより、キャップ9の取付時に、作業者の熟練度に応じてキャップ9がずれて配置されることが回避されるので、着雷時のスパーク防止性能を低下させることがない。
また、凸部9gを中心軸線CL方向に複数段設けることとしてもよい。
図10及び図11に示すように、キャップ9の開放端部9a側に第1参考実施形態に示した凹溝9d(図1参照)を形成し、キャップ9の底部9b側に本参考実施形態の凸部9gを設けてもよい。このように複数の係合部を設けることにより、キャップ9とシーラント11との機械的結合力を向上させることができる。また、凸部9gをキャップ9の底部9b側に設けることで、ファスナ5の先端部5aに対する芯出し部として利用することができる。
また、凸部9gと凹溝9dとの組合せは、任意であり、キャップ9の開放端部9a側に凸部9gを設け、底部9b側に凹溝9dを設けてもよく、さらに3段以上の係合部を構成するようにしてもよい。さらに、凸部9gに代えて分割凸部としてもよく、凹溝9dに代えて分割凹溝9f(図4参照)としてもよい。
次に、本発明の第1実施形態について、図12を用いて説明する。
本実施形態は、第1参考実施形態の凹溝9dに代えて、螺旋状に形成された螺旋凹溝9hとされている点で相違し、それ以外については同様である。したがって、同一構成部については同一符号を付し、その説明を省略する。
図12に示されているように、キャップ9の内周面9eには、ファスナ5の中心軸線CLを共通の中心軸線とする螺旋形状に沿って、螺旋凹溝9hが形成されている。螺旋凹溝9hは、一連に形成されている。
また、螺旋凹溝9hによって係合部が螺旋状に形成されているので、キャップ9を射出成形によって製造する場合には、螺旋凹溝9hに沿って回転させることによって容易に型抜きが可能となるので、成形性に優れたキャップ9とすることができる。
また、キャップ9の取付時に、シーラント11中に生じたボイド(気泡)を螺旋凹溝9hに沿って導き、キャップ9の外部へと排出することができる。これにより、シーラント11中のボイドを排除することができ、信頼性を向上させることができる。
次に、本発明の第2実施形態について、図13から図15を用いて説明する。
本実施形態は、第1実施形態の螺旋状に形成された螺旋凹溝9hに代えて、螺旋状に形成されている螺旋凸部9iが4条設けられる点で相違し、それ以外については同様である。したがって、同一構成部については同一符号を付し、その説明を省略する。
図13A、図13Bには、本実施形態に係るファスナ5やカラー7に対して非係合状態とされたキャップ9が示されており、図13Aは、その縦断面図、図13Bは、キャップ9の左側面図である。また、図14は、図13A中のXIV部の部分拡大図であり、図15は、図13A中のXV-XV部の断面図である。
なお、所定の距離とは、キャップ9の後述する突出部9jとファスナ5のリセス穴5eとを係合させて、キャップ9をファスナ5およびカラー7に対して取り付けた際に、シーラント11がキャップ9の開口部端9a側の内周面9eとカラー7の開口部端7a側の外周縁との間を満たすことが可能な距離であり、0.2mm以上2mm以下が好適である。
このようにファスナ5に設けられているリセス穴5eは、カラー7をファスナ5に締結する際にファスナ5を位置決めするために用いるものである。また、突出部9jの断面形状は、リセス穴5eに対応した形状であれば略六角形状等であってもよい。
なお、リード角としては、10°以上30°以下であれば好適である。
なお、螺旋凸部9iの突出量は、0.5mm以上2mm以下であれば好適であり、ファスナ5やカラー7に対して非係合状態となるように突出量が調整され、突出端のR形状としては、半径が0.2mm以上であれば好適である。
また、4条設けられている螺旋凸部9iのいずれもが螺旋形状に形成されているので、キャップ9の内周面9eが底部9bに向かって縮径する形状であっても、キャップ9を射出成形によって製造する場合に、成形されたキャップ9を螺旋形状に沿って回転させることによって、容易にキャップ9の型抜きが可能となる。したがって、成形性に優れたキャップ9にすることができる。
さらに、螺旋凸部9iが螺旋形状に4条設けられているので、キャップ9を射出成形によって製造する場合にキャップ9の回転角度を小さくして、キャップ9の生産性を向上させることができる。
また、螺旋凸部9iの先端部が略R形状として説明したが、C面形状であってもよい。
次に、本発明の第3実施形態について、図16から図19を用いて説明する。
本実施形態は、第2実施形態のキャップ9の底部9bに設けられている突出部9jに代えて、カラー7がキャップ9の底部9b近傍に設けられている螺旋凸部9iによって支持される点で相違し、それ以外については同様である。したがって、同一構成部については同一符号を付し、その説明を省略する。
図16には、本実施形態に係るカラー7を支持可能とされたキャップ9の縦断面図が示されており、図17A、図17Bは、図16に示すキャップ9を単体で示し、図17Aは、その縦断面図、図17Bは、左側面図を示している。また、図18は、図17A中のXVIII部の部分拡大図であり、図19は、図17B中のXIX−XIX部の断面図である。
次に、本発明の第4実施形態について、図20、図21A、図21Bを用いて説明する。図20は本発明の第4実施形態に係る固定構造部を示した縦断面図であり、図21Aはキャップの縦断面図、図21Bはキャップの底面図である。なお、図21Aは図21BのXXIA-XXIA線に沿う縦断面図である。
本実施形態では、第3実施形態のキャップ9の外周部9cに複数の貫通穴9mが形成され、底部9bに複数の貫通穴9nが形成され、さらに底部9bの外面に多角形状の枠部9pが形成されている点で相違し、それら以外については同様である。したがって、同一構成部については同一符号を付し、その説明を省略する。
一方、貫通穴9nは、枠部9pの内側に位置するように、且つ、ファスナ5の中心軸線CLに対して偏心した位置となるように、底部9bに形成されている。枠部9pは、例えば平面視(図21B参照)六角形であり、スパナやソケットレンチ等の工具を使用して回せるようになっている。
なお、貫通穴9m,9nの内径は2ミリ程度が好ましい。それ以上大きくなると、貫通穴9m,9nから膨出したシーラント11が固化する際に退け(痩せ)が発生し、貫通穴9m,9nとの係合が不十分になる懸念がある。
また、シーラント11を使用して航空機の機体に取り付けられたキャップ9を取り外す場合には、シーラント11の固着力のために素手で取り外すのは困難であるが、その時には枠部9pにスパナ等の工具を掛けて回すことにより、キャップ9を迅速かつ容易に取り外すことができる。
なお、本実施形態のように、キャップ9の内部に充填された充填材11を貫通穴9m,9nから膨出させるようにしたことにより、充填材11の充填量が適正であることを外部から認識できるという効果が奏される。
次に、本発明の第5実施形態について、図22A、図22Bを用いて説明する。本実施形態では、第4実施形態のキャップ9の貫通穴9m,9nが設けられていない代わりに、回動規制形状である係合部として、キャップ9の内周面9eに一対の縦溝部9qが形成されている点で相違し、それら以外については同様である。したがって、同一構成部については同一符号を付し、その説明を省略する。
次に、本発明の第6実施形態について、図23A、図23Bを用いて説明する。本実施形態では、第5実施形態のキャップ9の縦溝部9qが設けられていない代わりに、回動規制形状である係合部として、ディンプル9rが形成されている点で相違し、それら以外については同様である。したがって、同一構成部については同一符号を付し、その説明を省略する。
こうすることにより、キャップ9を樹脂材料により射出成形する場合に、キャップ9の回動を規制する係合部(9m,9n,9q,9r)を成形しなくてもよくなるため、射出成型の金型を簡素な構造にすることができる。また、既製のキャップ9に後から回動を規制する係合部(9m,9n,9q,9r)を追加工して、脱落しにくいものに改良することができる。
次に、本発明の第7実施形態について、図24A、図24Bを用いて説明する。本実施形態では、第6実施形態のキャップ9のディンプル9rが設けられていない代わりに、回動規制形状である係合部として、キャップ9の開口端部9aに突起9sが形成されている点で相違し、それら以外については同様である。したがって、同一構成部については同一符号を付し、その説明を省略する。
次に、本発明の第8実施形態について、図25A、図25Bを用いて説明する。本実施形態では、第7実施形態のキャップ9の突起9sの代わりに、回動規制形状である係合部として、キャップ9の開口端部9aに切欠部9tが形成されている点で相違し、それら以外については同様である。したがって、同一構成部については同一符号を付し、その説明を省略する。
次に、本発明の第9実施形態について、図26を用いて説明する。本実施形態では、第4実施形態のキャップ9の貫通穴9mが設けられていない点と、底部9bの内面側の面形状が浅い円錐面となっている点と、螺旋状の螺旋凸部9iが底部9bに達しないように形成されている点が相違し、それら以外については同様である。したがって、同一構成部については同一符号を付し、その説明を省略する。
これに対して、螺旋凸部9iの形成されない平坦区間9uを設けたことにより、シーラント11に混入している空気がキャップ9の内部に残留することを防止し、キャップ9の固定性能と着雷時のスパーク防止性能を向上させることができる。
このため、シーラント11に混入している空気がキャップ9の内部に残留することを防止し、キャップ9の固定性能と着雷時のスパーク防止性能を向上させることができる。
3 構造材
3c 表面
5 ファスナ
5a 先端部
5e リセス穴
7 カラー
8 ワッシャ
9 キャップ
9a 開口端部
9b 底部
9c 外周部
9e 内周面
9h 螺旋凹溝(凹部、係合部)
9i 螺旋凸部(螺旋形状)
9j 突出部
9m 貫通穴(係合部、回動規制形状)
9n 貫通穴(係合部、回動規制形状)
9p 枠部(係合部、回動規制形状)
9q 縦溝部(係合部、回動規制形状)
9r ディンプル(係合部、回動規制形状)
9s 突起(係合部、回動規制形状)
9t 切欠(係合部、回動規制形状)
9u 平坦区間
11 シーラント(充填材)
CL 中心軸線
Claims (21)
- 重ね合わされた複数の構造材に形成された貫通穴に挿通されたファスナと、該構造材の表面から突出した前記ファスナの先端部に対して締結されたカラーとによって、これら構造材同士を固定する固定構造部に適用され、前記ファスナの前記先端部および前記カラーを包囲するように配置される航空機構造材固定用キャップであって、
その内周面には、該内周面と前記構造材の前記表面との間に形成される空間に充填される充填材に対して係合する係合部が形成され、
前記係合部は、前記ファスナの中心軸線を共通の中心軸線とする螺旋形状に沿ってキャップの開口端部まで形成され、
前記キャップが前記ファスナおよび前記カラーに取り付けられる時に、該キャップと、前記ファスナおよび前記カラーとの間に充填された前記充填材中に生じたボイドを、該キャップの外部へと排出可能にしたことを特徴とするキャップ。 - 前記螺旋形状は、複数条設けられていることを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
- 前記螺旋形状は、当該キャップの底部に達しないように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のキャップ。
- 前記係合部の底部または先端部が略R形状であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のキャップ。
- 前記係合部の底部または先端部がC面形状であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のキャップ。
- 前記ファスナは、その前記先端部の略中心に、前記カラーを前記ファスナに締結する際に該ファスナを支持する工具を挿入可能な位置決め穴を備え、
前記キャップの内周面には、前記ファスナの前記先端部に対向する位置に前記ファスナに向かって突出して、前記位置決め穴に挿入されて位置決めを行う突出部が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のキャップ。 - 前記内周面は、前記ファスナの中心軸線が共通の中心軸線となるように前記係合部の一部を介して前記カラーを支持する形状に形成されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のキャップ。
- 前記係合部は、固化した前記充填材と係合することにより、当該キャップが前記ファスナおよび前記カラーに対して前記ファスナの中心軸線を中心に回動することを規制する回動規制形状とされていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のキャップ。
- 前記回動規制形状が前記充填材と係合する位置は、前記ファスナの中心軸線に対して偏心した位置であることを特徴とする請求項8に記載のキャップ。
- 前記回動規制形状である係合部は、当該キャップの外周部の少なくとも1箇所に貫通形成された貫通穴とされていることを特徴とする請求項8または9に記載のキャップ。
- 前記回動規制形状である係合部は、当該キャップの底部の、前記ファスナの中心軸線に対して偏心した位置に少なくとも1つ貫通形成された貫通穴とされていることを特徴とする請求項8または9に記載のキャップ。
- 前記回動規制形状である係合部は、前記内周面を前記中心軸線に沿って延びる縦溝部とされていることを特徴とする請求項8または9に記載のキャップ。
- 前記回動規制形状である係合部は、前記内周面に刻設されたディンプルとされていることを特徴とする請求項8または9に記載のキャップ。
- 前記回動規制形状である係合部は、当該キャップの樹脂成形後に切削工具により後加工されて形成されることを特徴とする請求項8から13のいずれかに記載のキャップ。
- 前記回動規制形状である係合部は、当該キャップの開口端部の外周部から、前記構造材の表面の面方向に沿って延びる突起とされていることを特徴とする請求項8または9に記載のキャップ。
- 前記回動規制形状である係合部は、当該キャップの開口端部に形成された切欠部とされていることを特徴とする請求項8または9に記載のキャップ。
- 前記回動規制形状である係合部は、当該キャップの底部の外面に形成された多角形状の枠部と、この枠部の内側に位置するように前記底部に形成された貫通穴とされていることを特徴とする請求項8または9に記載のキャップ。
- 当該キャップの底部の内面側の面形状が、その外周部から中心部に向かって前記ファスナの先端部から遠退く円錐面とされ、この底部に貫通穴が形成されていることを特徴とする請求項1から17のいずれかに記載のキャップ。
- 重ね合わされた複数の構造材に形成された貫通穴に挿通されたファスナと、
該構造材の表面から突出した前記ファスナの先端部に対して締結されたカラーと、
前記ファスナの前記先端部および前記カラーを包囲するように配置されるキャップと、
を備え、
前記ファスナおよび前記カラーによって前記構造材同士を固定する航空機構造材固定用固定構造部であって、
その内周面には、該内周面と前記構造材の前記表面との間に形成される空間に充填される充填材に対して係合する係合部が形成され、
前記係合部は、前記ファスナの中心軸線を共通の中心軸線とする螺旋形状に沿ってキャップの開口端部まで形成され、
前記キャップが前記ファスナおよび前記カラーに取り付けられる時に、該キャップと、前記ファスナおよび前記カラーとの間に充填された前記充填材中に生じたボイドを、該キャップの外部へと排出可能にしたことを特徴とする固定構造部。 - 前記係合部は、前記キャップの外周面と前記構造材の表面との間に充填された前記充填材を、前記ファスナの中心軸線に対して偏心した位置で前記キャップに係合させる回動規制形状であることを特徴とする請求項19に記載の固定構造部。
- 前記キャップの外周面と前記構造材の表面との間に、前記充填材が設けられていることを特徴とする請求項19または20に記載の固定構造部。
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