JP5628704B2 - 無電解ニッケルめっき廃液の処理方法 - Google Patents
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Description
上記還元剤としては主として次亜リン酸が使用されているが、上記メッキ工程が進行するにつれ、上記還元剤は酸化され、上記ニッケル塩は消費されていくから、適宜上記還元剤やニッケル塩を補給することが必要である。
このような無電解ニッケルめっき工程にあっては、めっき工程が進行するにつれ、上記還元剤の酸化物等の反応残渣が蓄積され、めっき液のめっき処理能力が低下していくから、ある時点でめっき液の更新が必要となる。そして処理能力が低下しためっき液は廃液として廃棄されるが、上記廃液(老化液)には上記還元剤の酸化物、残存ニッケル塩、キレート剤、pH調整剤等のBOD成分、COD成分が数万ppmの単位で含まれており、環境汚染を防止するためにも該老化液に含まれる上記BOD成分、COD成分等の除去処理が必要である。
上記処理方法として、従来からフェントン酸化処理方法、次亜塩素酸カルシウムによる処理方法、オゾンによる処理方法、電解酸化処理方法、光触媒を用いて光照射による酸化処理方法等が行なわれてきた。しかし上記処理方法は酸化処理効果が悪かったり、処理時間が長かったり、高濃度でBOD成分、COD成分を含む廃液に対しては処理効果が充分でなかったり、あるいは処理操作が煩雑であったり、多量の薬品を使用する等課題が多かった。
また特許文献2では第1工程として廃液に無機酸を添加してpH2未満の酸性廃液として廃液中の次亜リン酸ナトリウム由来のナトリウムを塩として除去し、第2工程として上記廃液にカルシウム化合物を添加してpHを2〜7に調整し、亜リン酸カルシウム及び硫酸カルシウムを含む沈殿を除去し、第3工程として上記廃液にアルカリ剤を添加してpHを9.5以上に調整し、水酸化ニッケルの沈殿を生成せしめて除去する方法が開示されている。
上記特許文献2の方法では、第1工程でのpH調整のために無機酸が必要であり、更に第1工程において廃液のpHを2未満にするので、第2工程において廃液のpHを2〜7に調整するためのカルシウム化合物の使用量が多くなる。また沈殿除去工程も二段階必要となる。
この場合、上記工程1、工程2で用いられる水酸化カルシウムと水酸化ナトリウムの量が1:0.05〜1:0.1モル比であることが望ましい。
更に上記工程2において、固体として析出するニッケル含有成分を老化液から分離する手段がフィルタープレスまたは吸引濾過であることが望ましい。
無電解ニッケルめっき廃液(老化液)に対して活性汚泥処理を施すためには、該老化液中のニッケル濃度を20ppm(20mg/l)以下にすることが必要である。上記老化液は、多量のニッケル塩およびキレート剤、pH調整剤等のBOD成分、COD成分を含むので、活性汚泥処理に先立ってニッケル塩が20ppm以下になるように過剰のニッケル塩を除去することが必要である。上記老化液中のニッケル塩を除去するためには、該老化液をアルカリ性として該老化液中のニッケル塩を水酸化ニッケルとして液分から析出させればよく、この場合pH12以上のアルカリ性とすることで該老化液中のニッケル濃度を20ppm(20mg/l)以下とすることが出来る。
しかしここで、上記老化液のpHを12以上とするために、濾過や取扱いの容易さから水酸化カルシウムのみを添加した場合、上記水酸化カルシウムの未溶解粒子の表面にリン酸カルシウムの結晶が析出してしまい、上記水酸化カルシウムと老化液中のニッケル塩との更なる反応を阻害するようになるから、上記水酸化カルシウム粒子が不溶性となり、上記老化液中の水酸化カルシウムとニッケル塩との更なる反応を促進し、上記老化液を所定のpHとするためには多量の水酸化カルシウムが必要となる。
一方水酸化ナトリウムのみを添加した場合には、上記水酸化ナトリウムによる界面活性剤としての分散効果のために、析出する水酸化ニッケルが微粒子となって廃液中に細かく分散してしまうため、濾過性が悪くなり、固液分離効率が低いものとなる。
そのため本発明では、先ず工程1では老化液に水酸化カルシウムを添加してpHを6〜7に調整する。上記工程1におけるpH領域では、析出する水酸化ニッケル結晶の量も過多にならず、水酸化カルシウム粒子の不溶性化も著しくない。しかし工程1においては、上記老化液中にいまだ析出しないニッケル塩がある程度の量で残存しているので、沈殿を分離することなく更に工程2では水酸化ナトリウムを添加してpHを12以上にして残存するニッケル塩を水酸化ニッケルとして析出させ、上記老化液中のニッケル濃度を20ppm以下にする。
上記工程2においては、上記老化液中のpHは工程1で既に6〜7に調整されているから、pH12以上にするための水酸化ナトリウム使用量も少なくて済み、したがって上記老化液中に析出したニッケルを含む固形分は効率良く分離され、該老化液中のニッケル濃度を20ppm以下にすることが容易に実施される。
更に、上記工程1、工程2で用いられる水酸化カルシウムと水酸化ナトリウムの使用量は、上記したように大巾に削減することが出来るが、水酸化カルシウムと水酸化ナトリウムの量が1:0.05〜1:0.1モル比であると、上記老化液中の水酸化ニッケル生成反応が効率良く行なわれ、該老化液中のニッケルの除去が円滑に行なわれる。
また更に、上記工程2における固液分離を、フィルタープレスまたは吸引濾過を用いて行なうことでより簡便かつ効率よく固液分離処理を行なうことが出来る。
本発明によれば、無電解ニッケルめっき廃液(老化液)からニッケルを20ppm以下になるまで除去するための処理を、使用する薬品の量を出来るだけ少なくし、かつ工程を短縮して、処理操作も簡便にすることで経済的かつ効果的に行なうことができ、このようにしてニッケルを20ppm以下になるまで除去された上記老化液に対しては、活性汚泥処理を円滑に行なうことができる。
〔工程1〕
本発明の廃液処理方法の工程1では、老化液に水酸化カルシウムを添加することで、上記老化液のpHを6〜7に調整する。この時点でニッケル、リン等がある程度固体として析出するが、本工程においては固液分離等の処理を行なわない。
本工程において調整される老化液のpHが6未満の場合、下記の工程2で水酸化ナトリウムを多量に添加しなければならなくなり、固液分離の効率も悪くなる。またpHが7を超えた場合には、前記したように未溶融の水酸化カルシウム粒子の表面にリン酸カルシウムの結晶が析出して、結果として水酸化カルシウムが不溶性化し易くなるから、該水酸化カルシウムの添加量が過剰となる。
本発明の廃液処理方法の工程2では、上記工程1でpHを6〜7に調整された老化液に水酸化ナトリウムを添加することで、該老化液のpHを12以上に調整する。本工程ではpHを12以上とすることにより、老化液中に残存するニッケルを上記工程1よりも更に固体として析出せしめることが出来、該老化液から析出したニッケルを固形分として固液分離することで、ニッケル濃度を20ppm以下とすることが出来る。更に加えて本工程では、リンや他のBOD成分,COD成分も大部分が塩等として上記老化液から析出せしめることが出来るので、該塩等をも固形分として上記老化液から固液分離することが出来る。
ここで、上記老化液のpHが12未満の場合、液中のニッケルが充分に析出せず、上記固液分離後も老化液中にニッケルが20ppm以上残留することになる。
上記工程2における固液分離によって固形分を分離された上記老化液はニッケルの大部分が除去されており、残存ニッケル量は20ppm以下となる。しかし上記老化液中にはリンやBOD成分、COD成分がある程度残留している。
そこで本発明の廃液処理方法の工程3では、上記工程2で処理された老化液を被処理液として活性汚泥処理を行なう。活性汚泥処理を行うにあたり、pHを12以上に調整された上記老化液のpHを塩酸、硫酸等の酸を使用して、pH7〜8に調整する。そして上記老化液(被処理液)は残存ニッケル量が20ppm以下であるため、円滑に活性汚泥処理を施すことが充分可能なものとなっている。
この場合、活性汚泥処理方法であれば回分式活性汚泥法や連続式活性汚泥法、またはそれ以外の方法であっても構わない。一般的には槽内に空気吹き込み手段を具備した好気槽内に被処理液を充填し、該被処理液中に活性汚泥を分散させ、空気を吹き込みつつ好気的にBOD成分やCOD成分を分解処理する好気的活性汚泥処理が適用されるが、攪拌機を付した嫌気槽内に活性汚泥を分散させた被処理液を充填し、攪拌することによってBOD成分やCOD成分を分解する嫌気的活性汚泥処理が適用されてもよい。特に上記被処理液中にリンが大量に残留している場合には、好気性微生物存在下において雰囲気を酸素欠乏状態から好気性状態に変化させた時に、上記微生物がリン分を過剰に摂取することを利用して、嫌気槽と好気槽、または嫌気槽と無酸素槽と好気槽とを設けて微生物にポリリン酸を蓄積させることで被処理液中のリン分を除去する活性汚泥処理法が望ましい方法として挙げられる。
上記活性汚泥法を施された被処理液は、液中のリンやBOD成分,COD成分が効率的に生物学的分解除去され、このようにして浄化された被処理液は、分解物を沈殿分離した後、河川等に排水しても問題のない品質となる。
〔実施例1〕
老化液である無電解ニッケルめっき廃液(ニッケル:4900mg/l)1リットルに、10質量%水酸化カルシウム水溶液2.4リットルを添加し、30分攪拌した。この時のpHは6.6であった。
次に10質量%水酸化ナトリウム水溶液132mlを添加してニッケルを析出させた。添加した水酸化カルシウムと水酸化ナトリウムのモル比は1:0.055である。この時のpHは12.0であった。これを吸引濾過によって濾過した。濾液中の残存ニッケル濃度は3.1mg/l(20ppm以下)であった。
老化液である無電解ニッケルめっき廃液(ニッケル:4900mg/l)1リットルに、10質量%水酸化カルシウム水溶液3.08リットルを添加し、30分攪拌した。この時のpHは13.0であった。これを吸引濾過によって濾過したが、濾過性そのものは良いもののpHの調整が難しく、水酸化カルシウム水溶液の所要量(3.08リットル)が、実施例1の所要量(2.4リットル)に比べて、28vol%増となった。濾液中の残存ニッケル濃度は1.2mg/l(20ppm以下)であった。
無電解ニッケルめっき廃液(ニッケル:4900mg/l)1リットルに、10質量%水酸化ナトリウム水溶液496mlを添加し、30分攪拌した。この時のpHは12.0であった。これを吸引濾過によって濾過した。濾液中の残存ニッケル濃度は29mg/lであり、濾過にも長時間を要した。
実施例1では濾過時間と濾液発生量とに良好な相関がみられ、また濾液中の残存ニッケル濃度も活性汚泥処理を行なうことができるほど充分に低いものであった。
参考例1の水酸化カルシウムのみを添加したものは、濾液中の残存ニッケル濃度は低い値であったが、水酸化カルシウムの溶解速度が遅く、また水酸化カルシウムのイオン解離が少ないため多量の水酸化カルシウムを添加する必要があり、更に所定のpHにコントロールするのが困難であった。
参考例2の水酸化ナトリウムのみを添加したものは、濾液中の残存ニッケル濃度が高く、活性汚泥処理を行なうことが困難であり、更に濾過処理において、水酸化ニッケル等の固体成分が微粒子として液中に分散しており、濾過初期(図1のグラフで濾過時間が1分までの間)から濾材の目詰まりが生じ、濾液発生量の伸びが悪くなった。
Claims (3)
- 無電解ニッケルめっき廃液である老化液に水酸化カルシウムを添加することで上記老化液のpHを6〜7とする工程1、
上記工程1で処理された上記老化液に、更に水酸化ナトリウムを添加することで該老化液のpHを12以上とし、固体として析出するニッケル含有成分を該老化液から分離し、該老化液のニッケル濃度を20ppm以下とする工程2、
上記工程2で得られた老化液を被処理液として活性汚泥処理する工程3、
以上の工程を有することを特徴とする無電解ニッケルめっき廃液の処理方法。 - 上記工程1、工程2で用いられる水酸化カルシウムと水酸化ナトリウムの量が1:0.05〜1:0.1モル比である請求項1に記載の無電解ニッケルめっき廃液の処理方法。
- 上記工程2において、固体として析出するニッケル含有成分を老化液から分離する手段がフィルタープレスまたは吸引濾過である請求項1または請求項2に記載の無電解ニッケルめっき廃液の処理方法。
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