JP5626709B2 - 非水電解質電池 - Google Patents

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Description

本発明は、ガス発生が抑制され体積変化の少ない非水電解質電池、特に、高温保存時においてガス発生が抑制され、電池膨れが抑制された非水電解質電池に関するものである。
現在、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質電池は、エネルギー密度の高い非水電解質電池として、小型携帯機器等のコンシューマー用途に多用されている。最近、新規用途として、電力貯蔵設備やHEV等の車載用動力として、非水電解質電池を中・大型化して応用することへの期待が高まっている。
非水電解質電池を中・大型化するにあたっては、高い信頼性が要求される。一般に、非水電解質電池は、遷移金属酸化物を正極活物質として用いた正極、炭素材料を負極活物質として用いた負極及びLiPF等電解質塩をカーボネート系等の非水溶媒に溶解した非水電解質が用いられているが、負極の炭素材料に対するリチウムイオンの挿入・脱離反応は非水電解質の還元分解電位より卑な電位にて専ら起こるため、エネルギー密度が高くなる反面、寿命、高温特性などの信頼性に関しての弱点が存在する。
前記信頼性の向上を期待として、リチウムイオンの挿入・脱離反応が炭素材料に比べて貴な電位(1.5V付近)で起こるチタン酸リチウムを負極活物質として用いた非水電解質電池が提案されている。しかしながら、チタン酸リチウムを負極活物質として用いた場合、製造工程中の初期充放電過程において、主にチタン酸リチウムと非水溶媒との反応によりガス発生が起こる。ガス発生反応が起こると、電解液の分解反応による電極表面の特性変化や、電解液の物性や量の変化により電池の出力特性や寿命特性を悪化させる原因となる。また、電池膨れの原因となる。
非水電解質電池は、電池内への水分の混入を嫌うことから、製造工程において、電槽内への非水電解質の注液後、密閉せず長時間放置開放状態とすることは多大な設備投資を要し現実的でないことから、非水電解質の注液後は直ちに密閉することが強く求められる。
チタン酸リチウムを負極活物質として用いた非水電解質電池は、現在、主にバックアップ用途として製品化もされている(例えば、非特許文献1及び2参照、コイン型リチウムイオン二次電池(Sony)など)が、これらは容量が最大でも20mAh程度、最大電流0.5ItA程度のコイン型電池である。容量の小さいコイン型電池においては、電槽体が強固である等の理由から、製造工程中の上記ガス発生は大きな問題とはならない。しかしながら、チタン酸リチウムを負極活物質として用いた非水電解質電池を中・大型化、大容量化する場合、上記ガス発生が看過できない課題となる。その理由としては、製造ライン上で注液後に開放状態である区間が存在する場合には設備投資規模が大きいものとなること、電槽表面が大面積化するに伴って、電槽が膨れへの影響を受けやすくなること、一部のガスを透過可能な樹脂製封口剤を用いている場合には内部圧力の平衡点が大きくなることからも膨れへの影響を受けやすくなること等が挙げられる。ここで、中・大型、大容量電池とは、少なくとも10mAh以上、中でも100mAh以上、特に200mAh以上の電池をいう。
Journal of Power Sources 146 (2005) 636〜639 信学技報 EE2005-50 CPM2005-174
中・大型電池においてガス発生による膨れ等の影響を緩和する方法として、電池内のデッドスペースを大きく設けることが挙げられるが、このような電池設計は高エネルギー密度電池の設計思想と相反するものである。この観点から、電槽の内容積から発電要素・電極素子・電解液等の固体物及び液体物が占める体積を差し引いたデッドスペースは、少なくとも35体積%以下であることが妥当である。
チタン酸リチウムを負極活物質として用いた中・大型、大容量の非水電解質電池は、製造工程中に行う初期充放電の工程でのガス発生を抑えることはいうまでもなく、完成後の電池のガス発生、特に高温保存時におけるガス発生を抑制し、非水電解質電池の膨れを抑制する技術が求められてきた。
ガスは電極表面で発生することから、電極表面に理想的な被膜を設けることができれば上記課題が解決できることは自明であるが、従来技術によれば、前記理想的な被膜を設けることができなかった。例えば電極表面にポリエチレンの強固な被膜を設ければ水素ガスの発生をほぼ完全に抑えることができるが、電極反応が大きく阻害され電池性能が極端に悪化することとなる。このように、理想的な被膜としては、徒に緻密であったり徒に厚く電極反応を阻害するものであってはならず、充放電の繰り返しや放置によっても被膜厚みの増加や崩壊がなく、水素ガスやその他のガスを発生するものでもないものであることが求められる。
チタン酸リチウムを負極活物質として用いた非水電解質電池のガス発生を抑制するための方策が種々提案されている。例えば、特許文献1には、導電剤である炭素質材料を最適化することが提案されている。また、特許文献2には、不定比酸化チタンを導電剤として用いることが提案されている。しかし、特許文献1及び2には、負極表面の被膜の形成、発生ガスの成分については記載がないから、非水電解質電池の負極表面に被膜を形成し、電池内部気体を特定することにより、保存時のガス発生が抑制された非水電解質電池を得ることを当業者が容易に想到し得るとはいえない。
特開2005−100770号公報 特開2005−332684号公報
特許文献3には、「チタン酸リチウムを活物質とする負極と、ジエチレングリコールジメチルエーテルを含む非水電解液とを使用することにより、チタン酸リチウムとジエチレングリコールジメチルエーテルが反応し、負極のチタン酸リチウムの表面にイオン伝導性の被膜が生成する。この被膜が活物質であるチタン酸リチウムと非水電解液との反応を抑制することにより、本願発明のリチウム二次電池の保存特性が向上するものと考えられる。」(段落0006)と記載されて、チタン酸リチウムが作動する比較的貴な電位で分解する溶媒を併用することで被膜を生成させ保存特性を向上させる技術思想が示されている。また、「電解液溶媒が、プロピレンカーボネートとジエチレングリコールジメチルエーテルとの混合溶媒からなることを特徴とするリチウム二次電池」(請求項3)が記載されている。しかしながら、本明細書の実施例においても示されるように、プロピレンカーボネートとジエチレングリコールジメチルエーテルとの混合溶媒を用いても、ガス発生や電池膨れを十分に抑制することはできない。
特開2004−95325号公報
また、特許文献4には、ポリフェニリンスルフィド又は、ポリエーテルエーテルケトンを主材とするセパレータを用いることにより、サイクル特性や保存特性を向上させることが提案されている。また、特許文献5には、フッ素化したリチウム含有チタン酸化物を用いることによりサイクル寿命を向上させることが提案されている。さらに、特許文献4には、「セパレータの主材であるポリフェニレンスルフィド(PPS)又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)は、化学的安定性に優れるので、還元力の強いチタン酸リチウムや酸化チタンとほとんど反応しない。これに加えて、非水溶媒である環状カーボネートと鎖状カーボネートとが、チタン酸リチウム等と反応して負極表面に化学的に安定な被膜を形成する。これにより、電池保存時にセパレータとチタン酸リチウムや酸化チタンとが反応することによる電池性能の劣化を防止することができる。」(段落0009)と記載されているが、保存後の容量維持率が示されているだけで、保存時のガス発生を抑制することについては示されていないから、特許文献4及び5の記載に基づいて、非水電解質電池の負極表面に予め被膜を形成し、電池内部気体を特定することにより、保存時のガス発生が抑制された非水電解質電池を得ることを当業者が容易に想到し得るとはいえない。
特開2004−87229号公報 特開2005−302601号公報
特許文献6には、「チタン酸リチウムを負極活物質に用いた非水電解質二次電池を携帯機器の主電源として用いる場合には特に問題がないが、この非水電解質二次電池を、作動電圧が3.0V前後のメモリーバックアップ用の電源として使用した場合に電池特性が低下するという問題があった。この理由は、上記のような非水電解質二次電池を携帯機器の主電源として用いる場合、充電時には上記の負極がリチウム金属基準で0.1V付近まで充電されるため、この負極の表面にイオン伝導性が良好な被膜が形成され、この被膜により負極と非水電解液とが反応するのが抑制され、非水電解液が分解したり、負極の構造が破壊されたりするのが防止される。これに対して、この非水電解質二次電池を作動電圧が3.0V前後のメモリーバックアップ用の電源として使用する場合、3.0V前後の定電圧状態を長期間維持しながら1〜5μA程度の微小電流で充電が行われ、上記の負極がリチウム金属基準で0.8V付近までしか充電されないため、負極の表面に上記のような被膜が形成されず、負極と非水電解液とが反応して、非水電解液が分解したり、負極の構造が破壊されたりするためであると考えられる。」(段落0006〜0007参照)と記載され、チタン酸リチウムを負極活物質に用いた非水電解質二次電池をリチウム金属基準で0.1V付近まで充電すると、負極の表面に形成される被膜により負極と非水電解液との反応が抑制されることが記載されているが、0.1V付近まで充電した負極表面に被膜が形成された電池を、リチウム電位に対して0.8Vより貴な負極電位の領域にて使用することについては記載がなく、反対に、特許文献6の記載によれば、リチウム電位に対して0.8Vより貴な負極電位の領域にて使用する電池は、負極表面に被膜が形成されないことを前提とするものであるから、負極表面に被膜が形成された電池を、リチウム電位に対して0.8Vより貴な負極電位の領域にて使用することは、阻害事由があり、当業者が容易になし得るものではない。また、本明細書の実施例において後述するように、負極表面に被膜が形成された電池を、リチウム電位に対して0.2V程度の負極電位の領域にて使用する場合には、ガス発生の抑制、電池の膨れの抑制が十分ではないから、負極表面に被膜が形成された電池を、リチウム電位に対して0.8Vより貴な負極電位の領域にて使用することにより、ガスの発生、電池の膨れを顕著に抑制できることは予測し得るものではない。
特開2005−317509号公報
また、同文献には、「本発明における非水電解質二次電池において、非水電解質に用いる非水系溶媒としては、一般に用いられている公知の非水系溶媒を用いることができ、特に、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを混合させた混合溶媒を用いることが好ましい。ここで、環状カーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等を用いることができる。また、鎖状カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等を用いることができる。また、上記の非水系溶媒として、γ−ブチロラクトンやγ−ブチロラクトンと環状カーボネートとを混合させた混合溶媒を用いることもできる。なお、上記の環状カーボネートは、一般に高い電位において分解されやすいため、非水系溶媒中における環状カーボネートの割合を、10〜50体積%の範囲にすることが好ましく、さらに好ましくは10〜30体積%の範囲にする。特に環状カーボネートとしてエチレンカーボネートを用いた場合、保存特性に優れる。」(段落0025)と記載されているが、これらの非水系溶媒を用いる非水電解質二次電池は、「正極における正極活物質にLiMnxNiyCoz2 (x+y+z=1、0≦x≦0.5、0≦y≦1、0≦z≦1)で表われされるリチウム遷移金属複合酸化物を用いた場合において、この正極活物質に対する上記の負極活物質の質量比を0.57以上0.95以下にすると、3.0V前後の定電圧状態で維持しながら充電させる場合に、負極における充電終止時の電圧がリチウム金属基準で0.8V付近になり、非水電解液が負極と反応して分解されたり、負極の構造が破壊されたりするのが抑制される・・・」(段落0022)と記載されているように、「負極における充電終止時の電圧がリチウム金属基準で0.8V付近」であるから、前述した同文献の段落0007の記載からみて、負極の表面に被膜が形成されることはなく、同文献の記載に基づいて、「エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等」の環状カーボネートを含む非水電解質を用いて負極の表面に被膜を形成し、ガス発生を抑制することを当業者が容易に想到し得るとはいえない。
特許文献7には、リチウムチタン化合物を負極活物質とする非水電解液二次電池の高負荷放電特性を改善するために、プロパンサルトンあるいはエチレンサルファイト等のS=O結合を有する化合物を含有させることにより、Li4/3Ti5/3を含む電極の導電性が改善されることが記載されている。しかしながら、本明細書の実施例においても示されるように、非水電解質にプロパンサルトン(1,3−プロパンスルトン)を含有させても、ガス発生や電池膨れを十分に抑制することはできない。
特開2003−163029号公報
また、炭素材料を負極に用いた非水電解質電池の非水電解質に、プロピレンカーボネートを用いた際に生じるプロピレンカーボネートの分解によるガス発生抑制を目的として、種々の添加剤を含有させる提案は数多くなされている(例えば、特許文献8参照)。
特開2005−11768号公報
そして、特許文献9には、「クロム、バナジウム、マンガン、鉄、コバルトおよびニッケルからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属とリチウムとの複合金属化合物を正極材料とする正極と、炭素材料を負極材料とする負極と、非水溶媒に電解質が溶解されてなる電解液とからなるリチウム二次電池であって、前記非水溶媒が、プロピレンカーボネート10重量%以上60重量%以下、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルブチルカーボネートから選ばれる少なくとも1種以上の鎖状カーボネート30重量%以上80重量%以下およびビニレンカーボネート(VC)0.01重量%以上5重量%以下を含有することを特徴とするリチウム二次電池。」(請求項1)の発明が記載されているが、この発明は、「PC系電解液は負極材料として結晶性の高いグラファイトを用いたリチウム二次電池では、電解液中のPCがグラファイトによって充電時に分解され、良好なサイクル特性が得られないという欠点がある。」(段落0003)という課題を解決しようとするものであり、また、「高誘電率溶媒としてECやVCより凝固点のはるかに低いPC(凝固点−55℃)を選択し、さらに低粘度の鎖状カーボネートおよびVCとからなる非水溶媒に電解質を溶解させた電解液が、グラファイト負極でもPCが分解せず、しかも低温で極めて優れた電池特性を示すという驚くべき事実を見い出し本発明に至った。」(段落0007)と記載されているから、炭素材料を負極に用いた非水電解質電池に固有の課題(電池の膨れを抑制するという課題は示されていない)を解決するために、上記非水溶媒を採用するものであり、上記非水溶媒を、炭素材料以外を負極に用いる非水電解質電池に適用することを示唆するものではない。
特許第3632389号公報
さらに、特許文献10には、「金属ラミネート樹脂シートからなる電池容器に、正極とセパレータと炭素材料からなる負極とを有する巻回扁平状発電要素と、電解液とを備えており、前記電解液の溶媒がビニレンカーボネートとプロピレンカーボネートと鎖状炭酸エステルとの混合溶媒であり、前記ビニレンカーボネートの全溶媒に対する組成をA体積%とし、前記プロピレンカーボネートの全溶媒に対する組成をB体積%とすると、10≦(A+B)≦50(ただし、A≠0かつB≠0)および3≦A≦20であることを特徴とする非水電解質電池。」(請求項1)の発明が記載されており、この発明は、「従来から使用されている金属製の剛性のあるものと比較して、このラミネートケースは外力に対して弱く、変形しやすい。そのため、特に高温下にて放置した場合、電解液が気化したり、正極・負極活物質表面での酸化や還元による電解液の電気化学的分解または熱分解により、電池内において過度の気体が発生し、電池内圧の上昇によってラミネートケースを用いた電池は膨張変形してしまう。」(段落0005)という課題を解決しようとするものであるが、「一方、リチウム系電池では、高電圧を得ることができるため、耐電圧特性に優れた電解液の選択が望ましく、その候補としてはプロピレンカーボネートがあげられるが、負極に炭素材料を用いた場合にはプロピレンカーボネートが分解されてしまう。よって、負極として炭素材料を用いた非水電解質電池の電解液には、電解液としての利点を有しているにもかかわらず、プロピレンカーボネートの使用は不適当であった。」(段落0006)、「前記実施例においては、負極材料たるリチウムを吸蔵放出する物質として黒鉛を使用しているが、負極材料はこれに限定されるものではなく、リチウムを吸蔵放出可能な炭素材料であれば負極材料として使用可能である。」(段落0063)と記載されているから、やはり、炭素材料を負極に用いた非水電解質電池に固有の課題を解決するために、上記混合溶媒を採用するものであり、上記混合溶媒を、炭素材料以外を負極に用いる非水電解質電池に適用することを示唆するものではない。
特許第3410027号公報
上記特許文献9及び10には、炭素材料を用いた負極の表面に被膜が形成されることは示されていないが、特許文献11の以下の記載からみて、炭素材料を負極活物質として用いた場合に、負極表面に被膜が形成されることは明らかであるとしても、チタン酸リチウムを負極活物質として用いた場合には、負極表面に被膜が形成されるとはいえない。
すなわち、特許文献11には、「負極活物質としてチタン酸リチウム、導電剤として炭素質物を用いた非水電解質二次電池は、高温環境において炭素質物と電解液の反応が生じ、多量のガスを発生するため、高温貯蔵特性、高温サイクル特性等の様々な高温特性に劣ることが解った。しかし、負極活物質にリチウムを吸蔵・放出する炭素材料を用いた非水電解質二次電池では、このような問題は生じない。両者を比較検討した結果、次のことが解った。充放電サイクルにおいて、負極活物質が炭素材料の場合、炭素材料の表面は皮膜で被覆されるが、負極活物質がチタン酸リチウムの場合、チタン酸リチウム及び炭素質物の表面は皮膜で被覆されない。従って、皮膜が、炭素材料と電解液の反応によるガス発生を抑制していると考えられる。皮膜は、負極電位がLi金属の電位に対して約0.8V(以後の電位は、特に説明のない限り、Li金属の電位に対する値とする。)以下、特に良質な皮膜は負極電位約0.4V以上0.5V以下で形成される。リチウムを吸蔵・放出する炭素材料のLi吸蔵放出電位の範囲は約0.1V以上約0.9V以下であり、初回充電時において負極電位は0.1V近傍まで低下する。このため、負極電位約0.8V以下で、炭素材料と電解液が反応して皮膜が形成し、その後、炭素材料は安定に存在する。一方、チタン酸リチウムのLi吸蔵放出電位の範囲は約1.3V以上約3.0V以下であり、皮膜は形成しないと考えられる。従って、チタン酸リチウムに代表されるLi吸蔵放出電位が金属リチウムの電位に対して1Vよりも貴である負極活物質では、表面に皮膜が形成されず、導電剤である炭素質物と非水電解質の反応によるガス発生を抑制することができなかった。」(段落0014〜0017)と記載されているから、特許文献9及び10に記載されたような非水電解液を用いても、リチウム電位に対して1.2V以上の電位にてリチウムイオンが挿入・脱離するチタン酸リチウム等の負極活物質を用いた場合には、負極表面に被膜が形成されるという認識はなかった。したがって、負極の表面に被膜を形成し、ガス発生を抑制するために、特許文献9及び10に記載された非水電解液をチタン酸リチウム等の負極活物質を用いた非水電解質電池に適用することを当業者が容易に想到し得るとはいえない。
特開2005−317508号公報
そして、特許文献11には、「本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、チタン酸リチウムと炭素質物を含有する負極と、鎖状サルファイトを含む非水電解質とを備えることにより、負極表面にイオン伝導性に優れた良質な皮膜を形成することができ、高温特性と大電流特性に優れた非水電解質二次電池を実現できることを見出したのである。」(段落0018)と記載されているように、非水電解質に鎖状サルファイトを含有させることで、偶々、チタン酸リチウムを負極活物質として用いた負極表面に被膜が形成されたものであるが、本明細書の実施例(鎖状サルファイトであるジエチルサルファイトを含有させた比較例)においても示されるように、負極表面に被膜を形成するだけでは、ガス発生や電池膨れを十分に抑制することはできなかった。
ところで、特許文献1,2,11等の実施例を見てもわかるように、チタン酸リチウム負極の集電体には従来アルミニウムが用いられているが、アルミニウムは、0.4V以下の電位にてリチウムと合金化することは周知であるから、かかる電池に対して負極電位が0.4V以下になるまで深充電をするという発想は導かれ得ない。
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、チタン酸リチウム等のリチウム電位に対して1.2V以上の電位にてリチウムイオンが挿入・脱離する負極活物質を有する負極を備えた非水電解質電池のガス発生を抑制すること、特に、高温保存時におけるガス発生を抑制し、非水電解質電池の膨れを抑制することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、負極の表面に被膜が存在した非水電解質電池は、60℃で2週間放置した後の電池内部気体が特定の組成範囲にある場合、該電池をリチウム電位に対して0.8Vより貴な負極電位の領域にて使用すると、この被膜により高温保存時のガス発生が抑制されることを知見して、本発明に到達した。
本発明は、上記の課題を解決するために以下の手段を採用する。
(1)電解質塩と非水溶媒を含む非水電解質、正極、及びスピネル型チタン酸リチウムである負極活物質を有する負極を備えた非水電解質電池において、前記非水溶媒は、環状カーボネート及び鎖状カーボネート、並びにビニレンカーボネート、ビニレンカーボネートと1、3−プロパンスルトン、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、又はビス(トリメチルシリル)サルフェートを含有し、前記非水電解質電池を使用する前に、少なくとも1回は負極電位をリチウム電位に対して0.4V以下に下げて前記負極表面に被膜存在させたものであり、該電池を60℃で2週間放置する間に発生する電池内部気体は、水素と二酸化炭素とメタンとエチレンとエタンを合計した体積中に占めるメタンとエチレンとエタンを合計した体積の比率が0.3%未満、及び二酸化炭素の体積が電池容量に対して0.4μl/mAh未満であり、かつ、該電池を、リチウム電位に対して0.8Vより貴な負極電位の領域にて使用することを特徴とする非水電解質電池。
(2)前記環状カーボネートが、プロピレンカーボネートであることを特徴とする前記(1)の非水電解質電池。
(3)前記負極表面の被膜の厚みが10nm以上であることを特徴とする前記(1)又は(2)の非水電解質電池。
(4)前記正極活物質が、LiMnNiCo(x+y+z=1、0≦x≦0.5、0≦y≦1、0≦z≦1)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか一項の非水電解質電池。
(5)負極電位がリチウム電位に対して0.4V以下となる領域においても、0.4V以下の全領域にわたって、正極電位がリチウム電位に対して4.5Vを超えない電池設計になっていることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか一項の非水電解質電池。
なお、前記(1)において、「電池容量に対する二酸化炭素の体積(μl/mAh)」を求めるに当たって用いる電池容量の値は、設計容量すなわち電池の製造業者が規定する公称容量の値を用いるものとする。
本発明においては、チタン酸リチウム等のリチウム電位に対して1.2V以上の電位にてリチウムイオンが挿入・脱離する負極活物質を有する負極を備えた非水電解質電池の負極の表面に被膜を存在させ、60℃で2週間放置した後の電池内部気体を特定の組成範囲のものとすることにより、該電池を、リチウム電位に対して0.8Vより貴な負極電位の領域にて使用した場合に、高温保存時のガス発生が抑制されるという効果を奏する。
本発明に係る非水電解質電池が備える負極の主成分として用いる負極活物質としては、電位がリチウム電位に対して1.2V以上にてリチウムイオンが挿入・脱離するものが挙げられる。例えば、酸化タングステン、酸化モリブデン、硫化鉄、硫化チタン、チタン酸リチウムなどを用いることができる。特に、化学式Li4+xTi12(0≦x≦3)で表され、スピネル型構造を有するチタン酸リチウムが好ましい。導電剤としては、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等を挙げることができる。結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴムなどが挙げられる。
本発明に係る非水電解質電池が備える正極に用いることのできる正極活物質としては、何ら限定されるものではなく、種々の酸化物、硫化物等が挙げられる。例えば、二酸化マンガン(MnO)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLiMn又はLiMnO)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLiNiO)、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1−yCo)、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNiCoMn1−y−z)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(LiMn2−yNi)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(LiFePO、LiFe1−yMnPO、LiCoPOなど)、硫酸鉄(Fe(SO)、バナジウム酸化物(例えばV)などが挙げられる。また、ポリアニリンやポリピロールなどの導電性ポリマー材料、ジスルフィド系ポリマー材料、イオウ(S)、フッ化カーボンなどの有機材料および無機材料も挙げられる。特に、LiMnNiCo(x+y+z=1、0≦x≦0.5、0≦y≦1、0≦z≦1)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物が好ましい。
前記正極には、周知の導電材や結着剤を周知の処方で適用し含有させることができる。導電剤としては、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等を挙げることができる。結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴムなどが挙げられる。正極集電体は、周知の材料を周知の方法で用いることができる。たとえば、アルミニウムあるいはアルミニウム合金を挙げることができる。
セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、またはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む多孔質フィルム、合成樹脂製不織布等を挙げることができる。
支持電解質としては、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCFSO)、ビストリフルオロメチルスル ホニルイミトリチウム[LiN(CFSO]などのリチウム塩が挙げられる。
本発明においては、非水溶媒として、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)などの環状カーボネートを含有させることが好ましい。また、以下に記載するように、本発明においては、非水溶媒としての環状カーボネートとは別に、環内に炭素−炭素二重結合を有する環状カーボネートであるビニレンカーボネートを含有させることが好ましい。さらに、環状カーボネートと共に、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)などの鎖状カーボネートを含有させることが好ましい。非水溶媒である環状カーボネートと鎖状カーボネートの配合割合は限定されるものではないが、例えば、環状カーボネート:鎖状カーボネートを7:3〜3:7の範囲とすることができる。その他、テトラヒドロフラン(THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)などの環状エーテル、ジメトキシエタン(DME)などの鎖状エーテル、γ−ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル(AN)、スルホラン(SL)等を用いてもよい。非水電解質として、リチウムイオンを含有した常温溶融塩も用いることができる。
環状カーボネートとしてプロピレンカーボネート、鎖状カーボネートとしてジエチルカーボネートを用いた場合に、非水電解質電池のガス発生を抑制し、非水電解質電池の膨れを抑制する効果が大きいから、プロピレンカーボネートとジエチルカーボネートを含有する混合溶媒を用いることがより好ましい。
本発明においては、ガス発生による非水電解質電池の膨れを抑制するために、少なくとも非水電解質電池の製造工程中の初期充放電工程の前において、非水電解質にビニレンカーボネートを含有させることが好ましく、さらに、1,3−プロパンスルトンを含有させてもよい。また、ビニレンカーボネートの代わりに、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、ビス(トリメチルシリル)サルフェート等の添加剤を含有させることによっても、ガス発生による非水電解質電池の膨れを抑制することができる。ビニレンカーボネートや1,3−プロパンスルトンは、前記初期充放電工程を経ることによって少なくとも一部が消失するので、初期充放電工程を経て完成された非水電解質電池が備える非水電解質中に検出されない場合もあるが、本発明の製造方法によって製造された非水電解質電池には、上記のようなものも含む。非水電解質電池の組み立て時に用いる非水電解質にビニレンカーボネートを含有させる場合、非水電解質電池の膨れを抑制する効果からみて、含有量は非水電解質の10質量%以下が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。さらに、1,3−プロパンスルトンを含有させる場合、含有量は非水電解質の0.5〜5重量%が好ましい。1,3−プロパンスルトンを併用することで、ビニレンカーボネートの最適含有量、又は、ビニレンカーボネート及び1,3−プロパンスルトンの最適含有量を低減させることができる。
本発明の非水電解質電池は、上記のように添加剤を含有させることにより、チタン酸リチウム等の負極活物質を有する負極を備えた非水電解質電池の負極表面に被膜を存在させ、特定の電池内部気体を有するものとし、かつ、リチウム電位に対して0.8Vより貴な負極電位の領域にて使用することで、前記被膜により高温保存時のガス発生が抑制されるものである。
非水電解質電池が、リチウム電位に対して0.8V以下の負極電位の領域に至って使用される場合には、後述する比較例(高温放置試験における充電末時の負極電位がリチウム電位に対して0.2V)のように、リチウム電位に対して0.8Vより貴な負極電位の領域にて使用される場合と比較して、高温保存時のガス発生は抑制されない。
以下の実施例に示されるように、非水電解質電池を60℃で2週間放置した後の電池内部気体を分析したところ、水素、二酸化炭素、メタン、エチレン、エタンの発生ガスが確認された。これらの発生ガスが、電池の膨れに影響しているといえるが、非水電解質電池の非水電解質にビニレンカーボネート、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、ビス(トリメチルシリル)サルフェート等の添加剤を含有させ、負極表面に被膜を存在させると、炭化水素ガス(メタン、エチレン、エタン)及び二酸化炭素が全く存在しないか、殆ど存在しない(炭化水素ガス及び二酸化炭素が実質的に検出されない)ことが確認され、これにより、高温保存時のガス発生が抑制され、電池の膨れが顕著に小さくなることが分かった。したがって、本発明においては、60℃で2週間放置した後の電池内部気体を、「水素と二酸化炭素とメタンとエチレンとエタンを合計した体積中に占めるメタンとエチレンとエタンを合計した体積の比率が0.3%未満」、「二酸化炭素の体積が電池容量に対して0.4μl/mAh未満」とすることにより、高温保存時のガス発生、電池の膨れを抑制するものである。なお、「0.3%未満」、「0.4μl/mAh未満」という数値は、臨界的意義を有するものではなく、以下の実施例に示されるように、電池内部気体に炭化水素ガス及び二酸化炭素、又は二酸化炭素が少なからず検出される従来の非水電解質電池と区別するための要件であり、炭化水素ガス及び二酸化炭素が全く存在しないか、殆ど存在しないことを意味するものである。このことは、本発明の非水電解質電池においては、炭化水素ガス及び二酸化炭素を発生しない被膜という、炭化水素ガスを発生する従来の被膜とは全く性質の異なる被膜が負極表面に形成されていることを示唆するものである。
また、例えば、正極電位がリチウム電位に対して4.5Vを超える場合や、非水電解質がビニレンカーボネートを大量に含有する場合には、正極から二酸化炭素が大量に発生することがあるが、本発明の非水電解質電池には、そのような二酸化炭素が大量に発生する電池は含めない。したがって、この点からも、60℃で2週間放置した後の電池内部気体を、二酸化炭素の体積が電池容量に対して0.4μl/mAh未満とするものである。
さらに、ガス発生を抑制するためには、負極表面に一定の厚みを持った被膜を存在させることが重要である。この被膜は、カーボネート構造を有するものである。
このような被膜は、以下の実施例に示すとおり、電気化学的処方により形成することができるが、化学的、物理的処方などによって形成してもよい。本発明は、正極活物質の種類によらず適用することができる。
水素ガス発生を抑制し、非水電解質電池の膨れを抑制するために、被膜の厚みは、10nm以上であることが好ましく、10〜20nmであることがより好ましい。
電気化学的処方による負極表面への被膜の形成は、非水電解質電池を使用する前に初期充放電を行うことにより可能であるが、本発明において、ビニレンカーボネート、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、ビス(トリメチルシリル)サルフェート等の添加剤を含有する非水電解質を用いた場合には、初期充放電を、充電末の負極電位がリチウム電位に対して0.8Vを超える条件(例えば、約1.5V)で行っても、負極表面に被膜が形成され、ガス発生が抑制される。
また、初期充放電時に、少なくとも1回は負極電位をリチウム電位に対して0.4V以下(例えば、約0.2V)に下げるという方法を採用した場合には、より効果的にガス発生が抑制される被膜が負極表面に形成される。
本発明の非水電解質電池は、リチウム電位に対して0.8Vより貴な負極電位の領域にて使用するものであるが、初期充放電時に充電電圧を使用時よりも高くすることにより、負極電位をリチウム電位に対して0.4V以下に下げることができる。
負極電位をリチウム電位に対して0.4V以下とすることにより、カーボネート構造を有する非水溶媒の還元分解により負極表面にカーボネート構造を有する被膜を存在せしめることが容易となるため、0.4V以下とすることが好ましい。
さらに、以下の実施例に示されるように、負極電位がリチウム電位に対して0.4V以下(例えば約0.2V)となる領域においても、その全領域にわたって、正極電位がリチウム電位に対して4.5V以下(例えば約4.3V)となるような電池設計にすることが好ましい。
負極がリチウム電位に対して0.4V以下となったときに正極電位がリチウム電位に対して4.5Vを超える場合、正極から二酸化炭素が大量に発生する虞があるので、好ましくない。
また、負極をリチウム電位に対して0.4V以下に下げる場合には、負極の集電体として、リチウムと合金化しない銅、ニッケル又はそれらの合金を使用することが好ましい。
(参考例1)
以下、実施例、参考例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
(非水電解質の作製)
非水電解質には、以下の7種類のものを用いた。
〔1〕1M LiPF6 PC:DEC=7:3(体積%)(比較例)
〔2〕1M LiPF6 PC:DEC=7:3(体積%)+ 1質量% VC(参考例、本発明例)
〔3〕1M LiPF6 PC:DEC=7:3(体積%)+ 5質量% VC(参考例、本発明例)
〔4〕1M LiPF6 PC:DEC=7:3(体積%)+ 5質量% VC + 5質量% PS(参考例、本発明例)
〔5〕1M LiPF6 PC:DEC=7:3(体積%)+ 5質量% PS(比較例)
〔6〕1M LiPF6 PC:DEC=7:3(体積%)+ 5質量% DES(比較例)
〔7〕1M LiPF6 PC:DiEE=5:5(体積%)(比較例)
なお、上記で、用いた略号の意味は次のとおりである。
PC:プロピレンカーボネート
DEC:ジエチルカーボネート
VC:ビニレンカーボネート
PS:1,3−プロパンスルトン
DES:ジエチルサルファイト
DiEE:ジエチレングリコールジメチルエーテル
(非水電解質電池の作製)
正極活物質であるリチウム遷移金属複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)粉末90質量部、導電材であるアセチレンブラック5質量部及び結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量部を含有し、N−メチルピロリドン(NMP)を溶剤とする正極スラリーを正極集電体(アルミニウム製、厚み20μm)の両面に電極合剤層の密度が26mg/cm(集電体含まず)になるように塗布した後、乾燥しプレスすることにより正極を作製した。
負極活物質であるスピネル型チタン酸リチウム(LiTi12)粉末(石原産業社製、品番:LT855(Lot.0036)、BET比表面積:3.0m/g、嵩密度:1.0g/cm、レーザー回折散乱法によるメジアン径:21.2μm)85質量部、導電材であるアセチレンブラック7質量部及び結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)8質量部を含有し、N−メチルピロリドン(NMP)を溶剤とする負極スラリーを負極集電体(銅製、厚さ10μm)の両面に電極合剤層の密度が21mg/cm(集電体含まず)になるように塗布した後、乾燥しプレスすることにより負極を作製した。
ポリエチレン製の多孔質セパレータを介して前記正極及び負極を扁平捲回してなる捲回極群をアルミニウム製の角形電槽缶(高さ49.3mm、幅33.7mm、厚みが5.17mm)に収納し、減圧下にて、上記〔1〕〜〔7〕のそれぞれの非水電解質を3.5g注液後、前記電槽缶を封口し、25℃にて一晩放置した。次に、「初期充放電」を実施した。該初期充放電の条件は、温度25℃、充電電流100mA、充電電圧2.5V、充電時間20時間、放電電流100mA、放電終止電圧1.0Vとした。この電池の2.5V充電末の正極電位はリチウム電位に対して約4.0V、負極電位はリチウム電位に対して約1.5Vであった。充電後及び放電後にそれぞれ30分の放置期間を設け、上記充放電を3サイクル繰り返した。このようにして、設計容量500mAhの非水電解質電池を作製した。なお、上記のようにして作製した電池は電槽内に0.25mlのデッドスペースを有する。該デッドスペースは、封口後であって初期充放電工程前の時点において同体積の空気及び電解液成分に由来する蒸気で満たされている。
上記のようにして、それぞれ、非水電解質〔1〕〜〔7〕を用いた実験No.1-1〜No.1-7の非水電解質電池を作製した。
作製後、この電池の初期充放電と同一の条件で1サイクルの充放電を行い、放電容量(初期電池容量)を測定した。また、前記初期充放電工程の前後において電池中央部の厚みを測定することにより、初期充放電工程中の電池厚み変化を評価した。
(高温放置試験)
上記により作製した電池に対し、高温放置試験を行った。即ち、充電電流100mA、充電電圧を2.5V(充電末の負極電位はリチウム電位に対して約1.5V)、充電時間20時間の定電流定電圧充電を行った後、60℃雰囲気にて2週間放置した。前記放置後、25℃にて1日放置した後、再び電池中央厚みを測定し、初期充放電工程の前に測定した厚みとの差を求めた。次いで、放電電流値100mA、放電終止電圧1.0Vの定電流放電を行い、残存容量を測定した。
(被膜厚みの測定)
上記により作製した電池の負極表面をX線光電子分光分析装置(XPS)によって観察した。なお、XPS測定は、X線を試料に照射してその跳ね返りのデータを観測することにより行うものであるが、X線の最小入射深度が10nmであるため、測定開始時には、10nm以内の表層部に関する情報が平均化されたデータとして得られる。したがって、測定開始時に活物質固有のピークが存在していた場合には、10nm以下とした。測定開始時に活物質固有のピークが認められず、カーボネート構造を有する被膜の情報のみが現れた場合には、被膜の厚みを10nm以上とし、次いで、Arスパッタにより1分当たり2nmのスピードで試料を掘り進めながら測定を続け、活物質固有の情報が混在するようになった時点で、被膜の厚みを決定した。
(ガス量の測定とガス成分の分析)
電池内のガス量の測定は次の手順にて行った。流動パラフィンを満たした水槽を用意し、目盛り付きメスシリンダーを前記水槽内に沈めた。電池を前記水槽内に沈め、該水槽内で電池の電槽を開封し、前記メスシリンダー内に電池内のガスを泡として全量捕集した。捕集されたガス体積を前記メスシリンダーの目盛りを読み取ることにより求め、電池内ガス量とした。
採取したガスについて、ガスクロマトグラフィー(GC)分析装置(島津社製、型番:GC−14BPTF)を用いて定量分析を行った。分析にあたり、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、メタン、エチレン及びエタンについて標準ガスを用いて検量線を求めた。同一測定対象成分に対する繰り返し測定数は2以上とし再現性を確認した。測定条件は、水素、窒素及び酸素に対しては、カラムにDB5MSを用い、カラム温度40℃とし、検出器にTCDを用いた。二酸化炭素、メタン、エチレン及びエタンに対しては、カラムにCarbo-bondを用い、カラム温度50℃とし、検出器に二酸化炭素についてTCDを、メタン、エチレン及びエタンについてCDDを用いた。注入ガス量は50μlとした。
定量結果から、水素と二酸化炭素とメタンとエチレンとエタンを合計した体積中に占めるメタンとエチレンとエタンを合計した体積の比率を算出した。
電池内部気体の二酸化炭素の体積は、まず、GC測定の結果得られたデータに基づき窒素と酸素を除く体積中に占める二酸化炭素の体積の比を求め、これに、電池内のガス量の測定の結果得られた体積から電槽内のデッドスペースの体積(本実施例においては0.25ml)を減じた値を乗じて求めた。
すなわち、上記計算にあたり、空気中に元々存在する二酸化炭素量については無視し、かつ、窒素及び酸素は空気中に元々存在したもののみに由来すると仮定している。かかる計算方法によれば、窒素及び酸素の測定値を計算根拠に含めていないので、仮に、ガス分析の過程で分析室内の空気が測定試料に混入する虞を否定できない場合であっても、その影響を除外することができる。
なお、前記実施例におけるGC測定条件における各ガス成分の検出限界濃度は0.1%であり、それぞれのガス成分について含有比率が0.1%未満の場合はピークとして検出されない条件であった。「水素と二酸化炭素とメタンとエチレンとエタンを合計した体積中に占めるメタンとエチレンとエタンを合計した体積の比率」についても、その真の含有比率が0.1%未満の場合は測定の検出限界以下であり、前記実施例におけるGC測定条件においては検出されないといえる。
電池厚みの変化、電池容量、負極表面の被膜厚み、電池内ガス量(ガス成分)の測定結果を表1に示す。
Figure 0005626709
表1から、初期充放電工程の条件を、充電末の負極電位をリチウム電位に対して約1.5Vである条件とした場合、即ち、過充電を行わない場合には次のようなことがいえる。
まず、60℃で2週間放置した後(以下、「60℃放置後」という)における電池厚みの増加は、負極表面の被膜厚み、電池内部気体の成分中の「水素と二酸化炭素とメタンとエチレンとエタンを合計した体積中に占めるメタンとエチレンとエタンを合計した体積の比率(以下、「炭化水素分率」という)」、及び二酸化炭素発生量に関係していることが分かった。
添加剤を含有しない非水電解質〔1〕を用いた比較例の電池(実験No.1-1)は、被膜厚みは10nm未満であり、炭化水素分率が3.8%と大きく、二酸化炭素発生量が0.4μl/mAh以上であるため、60℃放置後における電池厚みの増加が大きい。
これに対して、添加剤としてVCを含有する非水電解質〔3〕、VCに加えてさらにPSを含有する非水電解質〔4〕を用いた参考例の電池(実験No.1-3及びNo.1-4)は、被膜厚みは10〜20nmであり、炭化水素ガスであるメタン、エチレン、及びエタンは実質的に検出されず(炭化水素分率が0)、二酸化炭素発生量も0.4μl/mAh未満であるため、60℃放置後における電池厚みの増加が小さい。
しかし、添加剤としてPSのみを含有する非水電解質〔5〕を用いた比較例の電池(実験No.1-5)は、被膜厚みは10nm未満であり、炭化水素分率が0.4%と0.3%以上であるため、60℃放置後における電池厚みの増加は、添加剤を含有しない非水電解質〔1〕を用いた電池(実験No.1-1)と比較して大きく改善されてはいない。
添加剤としてDESを含有する非水電解質〔6〕を用いた比較例の電池(実験No.1-6)は、被膜厚みは10〜20nmであったが、炭化水素分率が56.2%と大きく、二酸化炭素発生量も多いため、60℃放置後における電池厚みの増加は最も大きかった。
PCとDiEEの混合溶媒を用いた非水電解質〔7〕を用いた比較例の電池(実験No.1-7)は、被膜厚みは10〜20nmであったが、炭化水素分率が12.9%と大きいため、60℃放置後における電池厚みの増加が、添加剤を含有しないPCとDECの混合溶媒を用いた非水電解質〔1〕を用いた電池(実験No.1-1)よりも大きかった。
また、非水電解質〔2〕、〔3〕、〔4〕を用いた高温放置後における電池厚みの増加が小さい参考例の電池は、非水電解質〔1〕、〔5〕〜〔7〕を用いた60℃放置後における電池厚みの増加が大きい比較例の電池に比べて、60℃放置後における残存容量が大きかった。
(実施例
前記初期充放電工程において、充電電圧を4.1Vとした以外は、参考例1と同様にして、非水電解質〔1〕〜〔7〕を、それぞれ用いた実験No.2-1〜No.2-7の非水電解質電池を作製した。この電池の4.1V充電末の正極電位はリチウム電位に対して約4.3V、負極電位はリチウム電位に対して約0.2Vであった。作製後、充電電圧を2.5Vに変更したことを除いては、この電池の初期充放電と同一の条件で1サイクルの充放電を行い、放電容量(初期電池容量)を測定した。
高温放置試験、被膜厚みの測定、ガス量の測定とガス成分の分析は、参考例1と同様に行った。
電池厚みの変化、電池容量、負極表面の被膜厚み、電池内ガス量(ガス成分)の測定結果を表2に示す。
Figure 0005626709
表2から、初期充放電工程の条件を、充電末の負極電位をリチウム電位に対して約0.2Vである条件とした場合、即ち、過充電を行った場合、60℃放置後における電池厚みの増加は、電池内部気体の成分中の炭化水素分率及び二酸化炭素発生量に関係していることが分かった。
添加剤を含有しない非水電解質〔1〕を用いた比較例の電池(実験No.2-1)は、過充電を行った場合、10〜20nmの厚みの被膜が形成されるが、過充電を行わない場合よりも、炭化水素分率が大きくなり(3.8%→5.0%)、二酸化炭素発生量も多くなった(0.4μl/mAh→1.1μl/mAh)ため、60℃放置後における電池厚みの増加は大きくなった。
これに対して、添加剤としてVCを含有する非水電解質〔3〕、VCに加えてさらにPSを含有する非水電解質〔4〕を用いた本発明例の電池(実験No.2-3及びNo.2-4)は、過充電を行った場合には、炭化水素ガスであるメタン、エチレン、及びエタンは実質的に検出されず(炭化水素分率が0)、二酸化炭素も実質的に検出されないため、過充電を行わない場合より、60℃放置後における電池厚みの増加はさらに小さくなった。
しかし、添加剤としてPSのみを含有する非水電解質〔5〕を用いた比較例の電池(実験No.2-5)は、過充電を行った場合、過充電を行わない場合よりも、炭化水素分率が逆に大きくなった(0.4%→3.3%)ため、60℃放置後における電池厚みの増加は大きくなった。
添加剤としてDESを含有する非水電解質〔6〕を用いた比較例の電池(実験No.2-6)は、過充電を行った場合、過充電を行わない場合と比較して、炭化水素分率がさらに大きくなった(56.2%→78.5%)ため、60℃放置後における電池厚みの増加は大きくなった。
PCとDiEEの混合溶媒を用いた非水電解質〔7〕を用いた比較例の電池(実験No.2-7)は、過充電を行った場合、炭化水素分率が18.6%と大きいため、60℃放置後における電池厚みの増加は大きい(過充電を行わない場合と比較するとやや小さくなった)。
(実施例
(高率放電試験)
上記実施例により作製したいくつかの電池(実験No.3-1、No.3-2、No.3-3、No.3-4の電池は、それぞれ、実験No.2-1、No.2-3、No.2-4、No.2-5の電池と同一)に対し、高率放電試験を行った。電池作製後と高温放置試験において、充電電流100mA、充電時間20時間の定電流定電圧充電を行った後、放電電流500mA(1Itに相当)又は3500mA(7Itに相当)にて、1.0Vの終止電圧までそれぞれ放電し、放電容量を記録した。
高率放電試験の結果を表3に示す。
Figure 0005626709
表3から、添加剤としてVCを含有する非水電解質〔3〕を用いた本発明例の電池(実験No.3-2)、VCに加えてさらにPSを含有する非水電解質〔4〕を用いた本発明例の電池(実験No.3-3)は、添加剤を含有しない非水電解質〔1〕を用いた比較例の電池(実験No.3-1)、添加剤としてPSのみを含有する非水電解質〔5〕を用いた比較例の電池(実験No.3-4)と比較して、高率放電を行った場合でも、60℃放置後における残存容量の低下が少ないことが分かる。
(実施例
(比較例)
添加剤としてVCに加えてさらにPSを含有する非水電解質〔4〕を用いた電池(実験No.2-4)を、高温放置試験において、充電電圧を4.1V(充電末の負極電位はリチウム電位に対して約0.2V)とした以外は、実施例と同様にして、電池厚みの変化、電池容量、ガス量(ガス成分)を測定した。
その結果を、実施例の実験No.2-4の結果と併せて表4に示す。
Figure 0005626709
表4に示すとおり、添加剤としてVCに加えてさらにPSを含有する非水電解質〔4〕を用いた電池を、高温放置試験において、充電電圧を2.5V(負極電位はリチウム電位に対して約1.5V)とした場合(実験No.2-4)には、電池厚みの変化が0.1mmであったのに対して、高温放置試験において、充電電圧を4.1V(負極電位はリチウム電位に対して約0.2V)とした場合(実験No.4-1)には、電池厚みの変化が0.8mmであり、前者の場合と比較して大きくなっていることから、本発明の非水電解質電池は、リチウム電位に対して0.8Vより貴な負極電位の領域にて使用することが重要であることが分かる。
(参考例2)
非水電解質として、以下の2種類の[1]、[2]を用いた以外は、参考例1と同様に、実験No.5-1、No.5-2(それぞれ[1]、[2]を使用)の非水電解質電池を作製して、試験を行った。
[1]1M LiPF6 PC:DEC=5:5(体積%)(比較例)
[2]1M LiPF6 PC:DEC=5:5(体積%)+5質量% VC(参考例)
電池厚みの変化、電池容量、負極表面の被膜厚み、電池内ガス量(ガス成分)の測定結果を表5に示す。
Figure 0005626709
表5から、PC:DEC=5:5(体積%)の非水電解質を用い、過充電を行わない場合、60℃放置後における電池厚みの増加は、負極表面の被膜厚み、電池内部気体の成分中の炭化水素分率及び二酸化炭素発生量、特に二酸化炭素発生量に関係していることが分かった。
添加剤を含有しない非水電解質[1]を用いた比較例の電池(実験No.5-1)は、炭化水素ガスであるメタン、エチレン、及びエタンは実質的に検出されなかった(炭化水素分率が0)が、被膜厚みは10nm未満であり、二酸化炭素発生量が0.7μl/mAhと多いため、60℃放置後における電池厚みの増加が大きい。
これに対して、添加剤としてVCを含有する非水電解質[2]を用いた参考例の電池(実験No.5-2)は、被膜厚みは10〜20nmであり、炭化水素ガスであるメタン、エチレン、及びエタンは実質的に検出されず(炭化水素分率が0)、二酸化炭素発生量も0.4μl/mAh未満であるため、60℃放置後における電池厚みの増加が小さい。
(実施例
非水電解質として、以下の5種類の[1]〜[5]を用いた以外は、実施例と同様に、実験No.6-1〜No.6-5(それぞれ[1]〜[5]を使用)の非水電解質電池を作製して、試験を行った。
[1]1M LiPF6 PC:DEC=5:5(体積%)(比較例)
[2]1M LiPF6 PC:DEC=5:5(体積%)+5質量% VC(本発明例)
[3]1M LiPF6 PC:DEC=5:5(体積%)+5質量% VC + 5質量% PS(本発明例)
[4]1M LiPF6 PC:DEC=5:5(体積%)+10質量% VC(本発明例)
[5]1M LiPF6 PC:DEC=5:5(体積%)+20質量% VC(比較例)
電池厚みの変化、電池容量、負極表面の被膜厚み、電池内ガス量(ガス成分)の測定結果を表6に示す。
Figure 0005626709
表6から、PC:DEC=5:5(体積%)の非水電解質を用い、過充電を行った場合、60℃放置後における電池厚みの増加は、電池内部気体の成分中の炭化水素分率及び二酸化炭素発生量、特に二酸化炭素発生量に関係していることが分かった。
添加剤を含有しない非水電解質[1]を用いた比較例の電池(実験No.6-1)は、過充電を行った場合、10〜20nmの厚みの被膜が形成されるが、過充電を行わない場合よりも、二酸化炭素発生量が多くなった(0.7μl/mAh→2.0μl/mAh)ため、60℃放置後における電池厚みの増加は大きくなった。
これに対して、添加剤として5質量%VCを含有する非水電解質[2]、VCに加えてさらにPSを含有する非水電解質[3]を用いた本発明例の電池(実験No.6-2及びNo.6-3)は、過充電を行った場合には、10〜20nmの厚みの被膜が形成され、炭化水素ガスであるメタン、エチレン、及びエタンは実質的に検出されず(炭化水素分率が0)、二酸化炭素も実質的に検出されないため、過充電を行わない場合より、60℃放置後における電池厚みの増加はさらに小さくなった。
また、過充電を行った場合、非水電解質中のVCの含有量が10質量%VC(非水電解質[4])、20質量% VC(非水電解質[5])と多くなるにしたがって、二酸化炭素発生量が増加し、60℃放置後における電池厚みの増加が大きくなる(実験No.6-4及びNo.6-5)ので、VCの含有量は10質量%以下が好ましいことが分かった。
(参考例3)
非水電解質として、以下の3種類の〈1〉〜〈3〉を用いた以外は、参考例1と同様に、実験No.7-1〜No.7-3(それぞれ〈1〉〜〈3〉を使用)の非水電解質電池を作製して、試験を行った。
〈1〉1M LiPF6 EC:DEC=5:5(体積%)(比較例)
〈2〉1M LiPF6 EC:DEC=5:5(体積%)+5質量% VC(比較例)
〈3〉1M LiPF6 EC:DEC=5:5(体積%)+5質量% VC + 5質量% PS(参考例)
電池厚みの変化、電池容量、負極表面の被膜厚み、電池内ガス量の測定結果を表7に示す。
Figure 0005626709
表7から、EC:DEC=5:5(体積%)の非水電解質を用い、過充電を行わない場合、60℃放置後における電池厚みの増加は、負極表面の被膜厚み、電池内部気体の成分中の炭化水素分率及び二酸化炭素発生量、特に二酸化炭素発生量に関係していることが分かった。
添加剤を含有しない非水電解質〈1〉を用いた比較例の電池(実験No.7-1)は、炭化水素ガスであるメタン、エチレン、及びエタンは実質的に検出されなかった(炭化水素分率が0)が、被膜厚みは10nm未満であり、二酸化炭素発生量0.4μl/mAhであったため、60℃放置後における電池厚みの増加が大きい。
添加剤としてVCを含有する場合でも、非水溶媒が、EC(エチレンカーボネート)とDECの混合溶媒である非水電解質〈2〉を用いた参考例の電池(実験No.7-2)は、被膜厚みは10〜20nmであり、炭化水素ガスであるメタン、エチレン、及びエタンは実質的に検出されなかった(炭化水素分率が0)が、二酸化炭素発生量が1.1μl/mAhであったため、60℃放置後における電池厚みの増加が、VCを含有しない電池(実験No.7-1)と比較して、大きくは抑制されていない。
VCに加えてさらにPSを含有する非水電解質〈3〉を用いた参考例の電池(実験No.7-3)は、被膜厚みは10〜20nmであり、炭化水素ガスであるメタン、エチレン、及びエタンは実質的に検出されず(炭化水素分率が0)、二酸化炭素発生量も0.4μl/mAh未満であるため、60℃放置後における電池厚みの増加が小さい。
(実施例
非水電解質として、以下の3種類の〈1〉〜〈3〉を用いた以外は、実施例と同様に、実験No.8-1〜No.8-3(それぞれ〈1〉〜〈3〉を使用)の非水電解質電池を作製して、試験を行った。
〈1〉1M LiPF6 EC:DEC=5:5(体積%)(比較例)
〈2〉1M LiPF6 EC:DEC=5:5(体積%)+5質量% VC(本発明例)
〈3〉1M LiPF6 EC:DEC=5:5(体積%)+5質量% VC + 5質量% PS(本発明例)
電池厚みの変化、電池容量、負極表面の被膜厚み、電池内ガス量(ガス成分)の測定結果を表8に示す。
Figure 0005626709
表8から、EC:DEC=5:5(体積%)の非水電解質を用い、過充電を行った場合、60℃放置後における電池厚みの増加は、電池内部気体の成分中の炭化水素分率及び二酸化炭素発生量、特に二酸化炭素発生量に関係していることが分かった。
添加剤を含有しない非水電解質〈1〉を用いた比較例の電池(実験No.8-1)は、過充電を行った場合、10〜20nmの厚みの被膜が形成されるが、過充電を行わない場合よりも、二酸化炭素発生量が多くなった(0.4μl/mAh→1.7μl/mAh)ため、60℃放置後における電池厚みの増加は大きくなった。
これに対して、添加剤として5質量%VCを含有する非水電解質〈2〉、VCに加えてさらにPSを含有する非水電解質〈3〉を用いた本発明例の電池(実験No.8-2及びNo.8-3)は、過充電を行った場合には、10〜20nmの厚みの被膜が形成され、炭化水素ガスであるメタン、エチレン、及びエタンは実質的に検出されず(炭化水素分率が0)、二酸化炭素が殆ど存在しないか、実質的に存在しないため、過充電を行わない場合より、60℃放置後における電池厚みの増加はさらに小さくなった。
(参考例4)
非水電解質として、以下の4種類の{1}〜{4}を用いた以外は、参考例1と同様に、実験No.9-1〜No.9-4(それぞれ{1}〜{4}を使用)の非水電解質電池を作製して、試験を行った。
{1}1M LiPF6 PC:DEC=3:7(体積%)(比較例)
{2}1M LiPF6 PC:DEC=3:7(体積%)+0.5質量% VC(参考例)
{3}1M LiPF6 PC:DEC=3:7(体積%)+0.5質量% TMSP(参考例)
{4}1M LiPF6 PC:DEC=3:7(体積%)+0.5質量% TMSS(参考例)
なお、上記で、用いた略号の意味は次のとおりである。
TMSP:トリス(トリメチルシリル)ホスフェート
TMSS:ビス(トリメチルシリル)サルフェート
電池厚みの変化、電池容量、負極表面の被膜厚み、電池内ガス量(ガス成分)の測定結果を表9に示す。
Figure 0005626709
表9から、添加剤としてVCの代わりにTMSP、TMSSを含有する非水電解質{3}、{4}を用いた電池(実験No.9-3、No.9-4)は、被膜厚みは10〜20nmであり、炭化水素ガスであるメタン、エチレン、及びエタンは実質的に検出されず(炭化水素分率が0)、二酸化炭素も実質的に検出されないため、添加剤を含有しない非水電解質{1}を用いた比較例の電池(実験No.9-1)と比較して、60℃放置後における電池厚みの増加が小さいことが分かった。
また、この実験においては、TMSP、TMSSを含有する非水電解質{3}、{4}を用いた電池(実験No.9-3、No.9-4)の方が、VCを含有する非水電解質{2}を用いた電池(実験No.9-2)よりも、60℃放置後における電池厚みの増加が小さかった。
以上のように、チタン酸リチウム等の負極活物質を有する負極を備えた非水電解質電池において、前記非水電解質電池を使用する前に、少なくとも1回は負極電位をリチウム電位に対して0.4V以下に下げて負極表面に被膜を存在させ、電池内部気体の炭化水素分率を0.3%未満及び二酸化炭素の体積を0.4μl/mAh未満とし、かつ、該電池を、リチウム電位に対して0.8Vより貴な負極電位の領域にて使用することにより、高温保存時のガス発生が抑制され、電池膨れが抑制されるという本発明の効果が確認された。
本発明の非水電解質電池は、中・大型、大容量の非水電解質電池とした場合に、ガス発生による膨れ等の影響を緩和することができるので、電力貯蔵設備やHEV等の車載用動力を含む多くの用途に使用することができる。

Claims (5)

  1. 電解質塩と非水溶媒を含む非水電解質、正極、及びスピネル型チタン酸リチウムである負極活物質を有する負極を備えた非水電解質電池において、前記非水溶媒は、環状カーボネート及び鎖状カーボネート、並びにビニレンカーボネート、ビニレンカーボネートと1、3−プロパンスルトン、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、又はビス(トリメチルシリル)サルフェートを含有し、前記非水電解質電池を使用する前に、少なくとも1回は負極電位をリチウム電位に対して0.4V以下に下げて前記負極表面に被膜存在させたものであり、該電池を60℃で2週間放置する間に発生する電池内部気体は、水素と二酸化炭素とメタンとエチレンとエタンを合計した体積中に占めるメタンとエチレンとエタンを合計した体積の比率が0.3%未満、及び二酸化炭素の体積が電池容量に対して0.4μl/mAh未満であり、かつ、該電池を、リチウム電位に対して0.8Vより貴な負極電位の領域にて使用することを特徴とする非水電解質電池。
  2. 前記環状カーボネートが、プロピレンカーボネートであることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質電池。
  3. 前記負極表面の被膜の厚みが10nm以上であることを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の非水電解質電池。
  4. 前記正極活物質が、LiMnNiCo(x+y+z=1、0≦x≦0.5、0≦y≦1、0≦z≦1)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の非水電解質電池。
  5. 負極電位がリチウム電位に対して0.4V以下となる領域においても、0.4V以下の全領域にわたって、正極電位がリチウム電位に対して4.5Vを超えない電池設計になっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の非水電解質電池。
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