JP5623835B2 - ジカルボニル化合物、その中間体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ジカルボニル化合物、その中間体及びその製造方法に関する。
ジカルボン酸化合物等のジカルボニル化合物には、機能性ポリマーの原料としての用途や医薬中間体としての用途等、多様な用途が知られている。例えば、特許文献1には、高融点多環脂環式ポリカルボン酸の製造方法が開示され、該高融点多環脂環式ポリカルボン酸により、耐熱性、耐候性、物質的強度等の優れた樹脂や繊維を製造できることが記載されている。
特開2004−331645号公報
本発明は、s−ジヒドロインダセン骨格を有する新規なジカルボニル化合物、その中間体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、下記式(1−1)又は(1−2)で表されるジカルボニル化合物を提供する。本発明に係るジカルボニル化合物は、s−ジヒドロインダセン骨格を有しているため、耐熱性、耐候性、物理的強度等の特性に優れた樹脂や繊維等を製造するための原料としての用途、抗真菌剤等として使用できる医薬化合物の中間体としての用途、等に好適に用いることができる。
Figure 0005623835
[式(1−1)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示す。]
Figure 0005623835
[式(1−2)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示す。]
本発明はまた、下記式(1−3)又は(1−4)で表されるジハロゲン化合物を提供する。このようなジハロゲン化合物は、本発明に係るジカルボニル化合物の中間体として有用である。
Figure 0005623835
[式(1−3)中、X及びXはそれぞれ独立に、ハロゲン原子を示す。]
Figure 0005623835
[式(1−4)中、X及びXはそれぞれ独立に、ハロゲン原子を示す。]
本発明はまた、下記式(1−5)で表されるジハロゲン化合物を提供する。このようなジハロゲン化合物は、本発明に係るジカルボニル化合物の中間体として有用である。
Figure 0005623835
[式(1−5)中、X及びXはそれぞれ独立にハロゲン原子を示し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は−CO−Rで表される基(Rは、置換基を有していてもよいアルキル基を示す。)を示す。]
本発明はまた、金属触媒存在下における下記式(1−3)又は(1−4)で表されるジハロゲン化合物と一酸化炭素との反応を経て、下記式(1−1)又は(1−2)で表されるジカルボニル化合物を得る、ジカルボニル化合物の製造方法を提供する。
Figure 0005623835

[式(1−3)中、X及びXはそれぞれ独立に、ハロゲン原子を示す。]
Figure 0005623835

[式(1−4)中、X及びXはそれぞれ独立に、ハロゲン原子を示す。]
Figure 0005623835

[式(1−1)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示す。]
Figure 0005623835

[式(1−2)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示す。]
本発明はまた、下記式(2−1)で表されるジカルボニル化合物を提供する。本発明に係るジカルボニル化合物は、s−ジヒドロインダセン骨格を有しているため、耐熱性、耐候性、物理的強度等の特性に優れた樹脂や繊維等を製造するための原料としての用途、抗真菌剤等として使用できる医薬化合物の中間体としての用途、等に好適に用いることができる。
Figure 0005623835

[式(2−1)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示す。]
本発明はまた、下記式(2−2)で表されるジエステル化合物を提供する。このようなジエステル化合物は、本発明に係るジカルボニル化合物の中間体として有用である。
Figure 0005623835

[式(2−2)中、R13及びR14はそれぞれ独立に、−SO15で表される基(式中、R15は、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、4−メチルフェニル基又は2−ニトロフェニル基を示す。)を示す。]
本発明はまた、下記式(2−3)で表されるジケトン化合物を提供する。このようなジケトン化合物は、本発明に係るジカルボニル化合物の中間体として有用である。
Figure 0005623835
本発明はまた、金属触媒存在下における下記式(2−2)で表されるジエステル化合物と一酸化炭素との反応を経て、下記式(2−1)で表されるジカルボニル化合物を得る、ジカルボニル化合物の製造方法を提供する。
Figure 0005623835

[式(2−2)中、R13及びR14はそれぞれ独立に、−SO15で表される基(式中、R15は、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、4−メチルフェニル基又は2−ニトロフェニル基を示す。)を示す。]
Figure 0005623835

[式(2−1)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示す。]
本発明によれば、s−ジヒドロインダセン骨格を有する新規なジカルボニル化合物、その中間体及びその製造方法が提供される。
本発明のジカルボニル化合物、その中間体及びその製造方法の好適な実施形態について以下に説明する。
第1実施形態に係るジカルボニル化合物は、下記式(1−1)又は(1−2)で表される化合物である。式中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示す。
Figure 0005623835
Figure 0005623835
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。これらのアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、環状であってもよい。また、これらのアルキル基における水素原子の一部又は全部は、後述する置換基で置換されていてもよい。
アルキル基は、式(1−1)又は(1−2)で表される化合物のエステル交換反応によって適宜変更することができる。したがって、エステル交換可能なアルコール化合物に由来するアルキル基は、容易に製造することができる観点から好ましい。
また、アルキル基としては、エステル交換反応の反応性に優れる観点から、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素数1〜2のアルキル基がより好ましい。
上記置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルコキシ基等が挙げられる。
第1実施形態に係るジカルボニル化合物は、式(1−1)で表されるジカルボニル化合物及び式(1−2)で表されるジカルボニル化合物のいずれか一方あってもよく、これらの混合物であってもよい。
第1実施形態に係るジカルボニル化合物は、例えば、金属触媒存在下における下記式(1−3)又は(1−4)で表されるジハロゲン化合物と一酸化炭素との反応(以下、場合により「第1のカルボニル化反応」と称する。)を経る製造方法により製造することができる。式中、X及びXはそれぞれ独立に、ハロゲン原子を示す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。これらのうち、反応性に優れるという観点から、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が好ましく、臭素原子又はヨウ素原子がより好ましい。
Figure 0005623835
Figure 0005623835
金属触媒としては、例えば、パラジウム触媒、ルテニウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられ、これらのうちパラジウム触媒が好ましい。
パラジウム触媒としては、パラジウムテトラキストリフェニルホスフィン(Pd(PPh)、酢酸パラジウム(Pd(OAc))、ビストリフェニルホスフィンパラジウムクロリド(PdCl(PPh)等が挙げられる。
第1実施形態に係るジカルボニル化合物のうち、R及びRがアルキル基である化合物は、第1のカルボニル化反応を、下記式(a)で表されるアルコール化合物の存在下で行うことにより、製造することができる。
−OH (a)
[式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基である。]
また、第1実施形態に係るジカルボニル化合物のうち、R及び/又はRが水素原子である化合物は、第1のカルボニル化反応を、式(a)で表されるアルコール化合物の存在下で行った後、加水分解反応を行うことにより、製造することができる。また、R及びRがいずれも水素原子である化合物は、式(1−3)又は(1−4)で表されるジハロゲン化合物と二酸化炭素との反応により製造してもよい。
また、第1実施形態に係るジカルボニル化合物のうち、R及びRがアルキル基である化合物は、R及び/又はRが水素原子である化合物とアルコール化合物との脱水縮合反応により、製造することもでき、さらに、R及びRがアルキル基である化合物とアルコール化合物とのエステル交換反応によって、R及びRを適宜変更することもできる。
第1のカルボニル化反応は、例えば、一酸化炭素圧が1〜6MPaとなるように一酸化炭素が導入された反応容器中で、金属触媒と溶媒と上記ジハロゲン化合物とを含有する反応溶液を80〜150℃に加熱することにより、行うことができる。
溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。また、溶媒として、式(a)で表されるアルコール化合物を用いることもできる。
上記反応溶液は、さらに共触媒を含有していてもよく、共触媒としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のアミン化合物が挙げられる。
上記ジハロゲン化合物は、式(1−3)で表されるジハロゲン化合物及び式(1−4)で表されるジハロゲンか化合物のうちいずれか一方であってもよく、これらの混合物であってもよい。式(1−3)で表されるジハロゲン化合物を用いることで、式(1−1)で表されるジカルボニル化合物が得られ、式(1−4)で表されるジハロゲン化合物を用いることで、式(1−2)で表されるジハロゲン化合物が得られる。
式(1−3)又は(1−4)で表されるジハロゲン化合物は、例えば、下記式(1−5−1)で表される化合物と脱水試薬との反応(以下、場合により「脱水反応」と称する。)により得ることができる。式中、X及びXはそれぞれ独立に、ハロゲン原子を示す。
Figure 0005623835
脱水試薬としては、例えば、ヨウ化メチルトリフェノキシホスフォニウム、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。
脱水反応は、例えば、式(1−5−1)で表される化合物と脱水試薬とを含有する反応溶液を50〜100℃に加熱することにより、行うことができる。
上記反応溶液は、さらに溶媒を含有していてもよく、溶媒としては、ヘキサメチルリン酸トリアミド、トルエン、キシレン等が挙げられる。
式(1−5−1)で表される化合物は、例えば、下記式(1−5−2)で表される化合物を加水分解することにより得ることができる。式中、X及びXはそれぞれ独立に、ハロゲン原子を示し、R及びRはそれぞれ独立に、−CO−Rで表される基(Rは、置換基を有していてもよいアルキル基を示す。)を示す。ここで、アルキル基としては上記と同様のものが例示できる。
Figure 0005623835
上記加水分解は、例えば、式(1−5−2)で表される化合物と塩基と溶媒とを含有する反応溶液を40〜120℃に加熱することにより、行うことができる。
上記塩基としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
上記溶媒としては、水;メタノール、エタノール等のアルコール化合物;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられる。また、上記溶媒は、水を含有することが好ましく、水及びアルコール化合物を含有することがより好ましい。
式(1−5−2)で表される化合物は、例えば、下記式(1−6)で表される化合物のハロゲン化反応により製造することができる。
Figure 0005623835
ハロゲン化反応としては、フッ素化反応、塩素化反応、臭素化反応及びヨウ素化反応が挙げられる。
フッ素化反応は、例えば、式(1−6)で表される化合物をフルオロピリジニウムトリフラートと反応させることにより行うことができる。また、塩素化反応は、例えば、式(1−6)で表される化合物を還元鉄触媒存在下、塩素と反応させることにより行うことができる。
また、ブロモ化反応は、例えば、式(1−6)で表される化合物を、塩化ガリウム触媒存在下、臭素と反応させることにより行うことができる。さらに、ヨウ素化反応は、例えば、式(1−6)で表される化合物をピリジン触媒存在下、一塩化ヨウ素と反応させることにより行うことができる。
第1実施形態に係るジカルボニル化合物の製造方法の好適な一例を以下に示す。本製造方法では、以下のスキームに記載の方法により、第1実施形態に係るジカルボニル化合物が製造される。なお、本明細書中、Meはメチル基、Etはエチル基、Acはアセチル基を示す。
Figure 0005623835
すなわち、第1ステップ(A−1)では、デュレン(式(a−1)で表される化合物)を出発原料とし、デュレンが有する4つのメチル基を全てブロモ化することにより、式(a−2)で表される化合物を合成する。ブロモ化は、デュレンとブロモ化試薬との反応により行うことができ、ブロモ化試薬としては、例えば、N−ブロモコハク酸イミドを用いることができる。
第2ステップ(A−2)では、式(a−2)で表される化合物と活性メチレン部位を有するカルボン酸エステル(ここでは、エチルアセトアセテート)との環化反応により、式(a−3)で表される化合物を製造する。具体的には、例えば、式(a−2)で表される化合物とエチルアセトアセテートとを塩基存在下反応させることにより、式(a−3)で表される化合物が得られる。ここで塩基としては、例えば、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドを用いることができる。
第3ステップ(A−3)では、式(a−3)で表される化合物からカルボン酸エチル部位(−COEtで表される部位)を脱離させ、式(a−4)で表される化合物を合成する。具体的には、例えば、酸存在下、式(a−3)で表される化合物を、水を含む溶媒中で加熱することで、エステル部位(カルボン酸エチル部位)が加水分解され、次いで、該加水分解により生成したカルボキシル基の脱炭酸反応が進行し、式(a−4)で表される化合物が製造される。
第4ステップ(A−4)では、式(a−4)で表される化合物と過酸化物との反応、いわゆるバイヤービリガー酸化反応、を行うことにより、ケトン基(−C(=O)Me)がエステル基(ーOC(=O)Me)に変換された、式(a−5)で表される化合物を合成する。過酸化物としては、例えば、m−クロロ過安息香酸を用いることができる。
第5ステップ(A−5)では、式(a−5)で表される化合物をブロモ化し、ベンゼン環の水素原子が臭素原子に置換された、式(a−6)で表される化合物を合成する。ブロモ化反応は、例えば、塩化ガリウム触媒存在下、式(a−5)で表される化合物と臭素とを反応させることにより行うことができる。
第6ステップ(A−6)では、式(a−6)で表される化合物を加水分解して、式(a−7)で表される化合物を合成する。具体的には、例えば、塩基存在下、アルコール/水共溶媒中、加熱還流条件下で、式(a−6)で表される化合物を加水分解することにより、式(a−7)で表される化合物を製造することができる。ここで塩基としては、例えば、水酸化カリウムを用いることができる。
第7ステップ(A−7)では、式(a−7)で表される化合物と脱水試薬とを反応させて、5員環に二重結合が導入された、式(a−8−1)で表される化合物及び式(a−8−2)で表される化合物(以下、「化合物(a−8)」と総称する。)を合成する。脱水試薬は、例えば、ヨウ化メチルトリフェノキシホスフォニウムを用いることができる。
第8ステップ(A−8)では、化合物(a−8)と一酸化炭素及びメタノールとのクロスカップリング反応により、式(a−9−1)で表される化合物及び式(a−9−2)で表される化合物(以下、「化合物(a−9)」と総称する。)を合成する。具体的には、例えば、パラジウム触媒存在下、一酸化炭素雰囲気中で、化合物(a−8)と一酸化炭素とメタノールとを反応させることで、化合物(a−9)を製造することができる。
第9ステップ(A−9)では、化合物(a−9)を加水分解して、式(a−10−1)で表される化合物及び式(a−10−2)で表される化合物(以下、「化合物(a−10)」と総称する。)を合成する。当該加水分解は、概ね第6ステップ(A−6)と同様の操作により行うことができる。
次に、第2実施形態に係るジカルボニル化合物及びその製造方法について説明する。第2実施形態に係るジカルボニル化合物は、下記式(2−1)で表される化合物である。式中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示す。
Figure 0005623835
アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。これらのアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、環状であってもよい。また、これらのアルキル基における水素原子の一部又は全部は、後述する置換基で置換されていてもよい。
アルキル基は、式(2−1)で表される化合物のエステル交換反応によって適宜変更することができる。したがって、エステル交換可能なアルコール化合物に由来するアルキル基は、容易に製造することができる観点から好ましい。
また、アルキル基としては、エステル交換反応の反応性に優れる観点から、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、炭素数1〜2のアルキル基がより好ましい。
上記置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アルコキシ基等が挙げられる。
第2実施形態に係るジカルボニル化合物は、例えば、金属触媒存在下における下記式(2−2)で表されるジエステル化合物と一酸化炭素との反応(以下、場合により「第2のカルボニル化反応」と称する。)を経る製造方法により製造することができる。
Figure 0005623835
式中、R13及びR14はそれぞれ独立に、−SO15で表される基(式中、R15は、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、4−メチルフェニル基又は2−ニトロフェニル基を示す。)を示す。
第2実施形態に係るジカルボニル化合物の製造方法において、反応性に優れる観点から、上記R15はトリフルオロメチル基又はフェニル基であることが好ましい。
金属触媒としては、例えば、パラジウム触媒、ルテニウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられ、これらのうちパラジウム触媒が好ましい。
パラジウム触媒としては、パラジウムテトラキストリフェニルホスフィン(PdPPh)、酢酸パラジウム(Pd(OAc))、ビストリフェニルホスフィンパラジウムジクロリド(PdCl(PPh)等が挙げられる。
第2実施形態に係るジカルボニル化合物のうち、R11及びR12がアルキル基である化合物は、第2のカルボニル化反応を、下記式(b)で表されるアルコール化合物の存在下で行うことにより、製造することができる。
−OH (b)
[式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基である。]
また、第2実施形態に係るジカルボニル化合物のうち、R11及び/又はR12が水素原子である化合物は、第2のカルボニル化反応を、式(b)で表されるアルコール化合物の存在下で行った後、加水分解反応を行うことにより、製造することができる。また、R11及びR12がいずれも水素原子である化合物は、式(2−2)で表されるジエステル化合物と二酸化炭素との反応により製造してもよい。
第2のカルボニル化反応は、例えば、一酸化炭素圧が1〜6MPaとなるように一酸化炭素が導入された反応容器中で、金属触媒と溶媒と上記ジエステル化合物とを含有する反応溶液を80〜150℃に加熱することにより、行うことができる。
溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。また、溶媒として、式(b)で表されるアルコール化合物を用いることもできる。
上記反応溶液は、さらに共触媒を含有していてもよく、共触媒としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のアミン化合物が挙げられる。
式(2−2)で表されるジエステル化合物は、例えば、塩基存在下、下記式(2−3)で表されるジケトン化合物と、下記式(2−4)で表される酸無水物又は下記式(2−5)で表される酸塩化物と、を反応させることにより、得ることができる。式中、R15は上記と同義である。
Figure 0005623835
Figure 0005623835
Figure 0005623835
ここで塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等が挙げられる。
式(2−3)で表されるジケトン化合物は、例えば、式(2−6)で表される化合物の酸化反応により得ることができる。酸化反応には、例えば、スヴァン酸化(Swern酸化)を適用することができる。
Figure 0005623835
スヴァン酸化は、例えば、ジメチルスルホキシドとオキサリルクロリドとを混合した反応溶液に、式(2−6)で表される化合物を加えて撹拌し、その後トリエチルアミン等の塩基を加えて更に撹拌することにより、行うことができる。
次いで、第2実施形態に係るジカルボニル化合物の製造方法の好適な一例を以下に示す。本製造方法では、以下のスキームに記載の方法により、第2実施形態に係るジカルボニル化合物が製造される。なお、本明細書中、Tfは、−SOCFで表される基(トリフルオロメチルスルホニル基)を示す。
Figure 0005623835
すなわち、第1ステップ(B−1)では、第1の実施形態に係るジカルボニル化合物の製造方法の好適な一例にも示した式(a−5)で表される化合物を、加水分解して式(b−1)で表される化合物を合成する。具体的には、例えば、塩基存在下、アルコール/水共溶媒中、加熱還流条件下で、式(a−5)で表される化合物を加水分解することにより、式(b−1)で表される化合物を製造することができる。ここで塩基としては、例えば、水酸化カリウムを用いることができる。
第2ステップ(B−2)では、式(b−1)で表される化合物の酸化反応により、式(b−2)で表される化合物を合成する。酸化反応は、例えば、ジメチルスルホキシドとオキサリルクロリドとを混合した反応溶液に、式(2−6)で表される化合物を加えて撹拌し、その後トリエチルアミン等の塩基を加えて更に撹拌することにより、行うことができる。
第3ステップ(B−3)では、式(b−2)で表される化合物をエノール化し、生成したヒドロキシル基をトリフルオロメチルスルホニル基で保護した式(b−3)で表される化合物を合成する。具体的には、例えば、塩基存在下で、式(b−2)で表される化合物と無水トリフルオロメタンスルホン酸とを反応させることで、式(b−3)で表される化合物を合成することができる。
第4ステップ(B−4)では、式(b−3)で表される化合物と一酸化炭素及びメタノールとのクロスカップリング反応により、式(b−4)で表される化合物を合成する。具体的には、例えば、パラジウム触媒存在下、一酸化炭素雰囲気中で、式(b−3)で表される化合物と一酸化炭素とメタノールとを反応させることで、式(b−4)で表される化合物を製造することができる。
第5ステップ(B−5)では、式(b−4)で表される化合物を加水分解して、式(b−5)で表される化合物を合成する。当該加水分解は、概ね第1ステップ(B−1)と同様の操作により行うことができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
[合成例1−1:1,2,4,5−テトラキス(ブロモメチル)ベンゼン(式(a−2)で表される化合物)の合成]
500mLナスフラスコに、和光純薬工業(株)製の炭酸バリウム(4.0g,20.3mmol)、和光純薬工業(株)製の四塩化炭素(175mL)を加えた。脱気し、フラスコ内を窒素雰囲気とした後に、2時間還流した。還流終了後、室温まで降温し、和光純薬工業(株)製のデュレン(9.001g,67.1mmol)、和光純薬工業(株)製のN−ブロモコハク酸イミド(47.04g,268mmol)を加え、ハロゲンランプにより加熱、光照射しながら、1時間還流した。反応終了後50℃まで降温し、ろ過することで副生するコハク酸イミドを除去した。ろ液を回収し、0℃に冷却し一昼夜放置することで、式(a−2)で表される化合物の粗結晶を得た。得られた粗結晶に和光純薬工業(株)製のクロロホルムを徐々に加え、加熱しながら完全に溶解させた後、室温で再結晶を行うことで、式(a−2)で表される化合物を8.665g得た。(収率:29%)
得られた1,2,4,5−テトラキス(ブロモメチル)ベンゼンのH−NMRの結果を以下に示す。
H−NMR(599.9MHz,CDCl,TMS):δ=6.93(s,2H),4.86(q,8H)
[合成例1−2:2,6−ジアセチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロ−s−インダセン−2,6−ジカルボン酸ジエチル(式(a−3)で表される化合物)の合成]
300mLの2ツ口ナスフラスコに、式(a−2)で表される化合物(8.058g,17.9mmol)を加え、シグマ−アルドリッチ製のn−ブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(濃度:40%、46.49g,71.7mmol)と水(23g)との混合物が入った100mL滴下ロートを取り付け、300mL2ツ口ナスフラスコ部分を窒素置換した。続いて、300mL2ツ口ナスフラスコに東京化成工業(株)製のアセチル酢酸エチル(4.680mL,36.7mmol)と和光純薬工業(株)製の塩化メチレン(70mL)を加え、攪拌しながら加熱し、還流を確認した後に、n−ブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を15分かけてゆっくりと滴下し、滴下終了後、1時間還流した。TLC(薄層クロマトグラフィー,Thin−Layer Chromatography)により反応の終了を確認後(展開溶媒:ヘキサン/ジエチルエーテル(4/1)、Rf=0.4)、塩化メチレン(30mL)を用いて生成物の抽出操作を行った。有機層を回収し、ヤマト科学(株)製のロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去し、純水(30mL)を加え、和光純薬工業(株)製のジエチルエーテル(30mL×2)を用いて分液した。更に、有機層を飽和食塩水(20mL)で洗浄し、和光純薬工業(株)製の硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。ろ過により硫酸ナトリウムを除去し、ヤマト科学(株)製のロータリーエバポレーターにより溶媒を除去後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル:富士シリシア化学(株)製、展開溶媒:ヘキサン/ジエチルエーテル(3/1→1/1))により精製し、純粋な式(a−3)で表される化合物(3.539g)を得た。(収率:51%)
得られた2,6−ジアセチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロ−s−インダセン−2,6−ジカルボン酸ジエチルのH−NMRの結果を以下に示す。
H−NMR(599.9MHz,CDCl,TMS):δ=6.98(s,2H),4.19(q,4H),3.42(s,8H),2.19(s,4H),1.23(t,6H)
[合成例1−3:2,6−ジアセチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロ−s−インダセン(式(a−4)で表される化合物)の合成]
式(a−3)で表される化合物(3.217g,8.324mmol)、和光純薬工業(株)製の酢酸(16.2mL)及び和光純薬工業(株)製の塩酸(濃度37%、17.0mL)を100mLナスフラスコに加え脱気し、窒素雰囲気で、15時間還流した。その後室温まで冷却し、純水290mL及び和光純薬工業(株)製のジエチルエーテル100mLを加えた。分液して有機層を回収後、水層に対して、和光純薬工業(株)製のジエチルエーテル(50mL×2)を用いて抽出操作を行った。回収した有機層を飽和炭酸水素ナトリウム溶液100mL、純粋100mL、飽和食塩水100mLで洗浄した。和光純薬工業(株)製の硫酸ナトリウムにより有機層を乾燥後、ヤマト科学(株)製のロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル:富士シリシア化学(株)製、展開溶媒:ヘキサン/ジエチルエーテル(3/1))により精製し、純粋な式(a−4)で表される化合物(1.522g)を得た。(収率:76%)
得られた2,6−ジアセチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロ−s−インダセンのH−NMRの結果を以下に示す。
H−NMR(599.9MHz,CDCl,TMS):δ=6.97(s,2H),3.6−2.5(m,10H),2.17(s,6H)
[合成例1−4:2,6−ジアセチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロ−s−インダセン−2,6−イルジアセテート(式(a−5)で表される化合物)の合成]
式(a−4)で表される化合物(0.4074g,1.681mmol)を30mLナスフラスコに加え、窒素置換した。続いて和光純薬工業(株)製の塩化メチレン(6.0mL)、シグマ−アルドリッチ製のm−クロロ過安息香酸(1.238g,5.380mmol)を加え、室温にて50時間攪拌した。その後和光純薬工業(株)製のクロロホルム30mLを加え反応液を希釈し、NaHSO水溶液(濃度4%、20mL)、水酸化ナトリウム水溶液(濃度0.3mol/L,20mL)、純水20mL、飽和食塩水20mLの順で反応液を洗浄した。有機層に和光純薬工業(株)製の硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、ろ過し、ヤマト科学(株)製のロータリーエバポレーターにより溶媒を除去後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル:富士シリシア化学(株)製、展開溶媒:ヘキサン/ジエチルエーテル(1/1))により精製することで純粋な式(a−5)で表される化合物(0.4518g)を得た。(収率:98%)
得られた2,6−ジアセチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロ−s−インダセン−2,6−イルジアセテートのH−NMRの結果を以下に示す。
H−NMR(599.9MHz,CDCl,TMS):δ=7.10(s,2H),5.51(s,2H),3.26(d,4H),2.98(d,4H),2.06(s,6H)
[実施例1−5:4,8−ジブロモ−2,6−ジアセチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロ−s−インダセン−2,6−イルジアセテート(式(a−6)で表される化合物)の合成]
式(a−5)で表される化合物(0.0784g,0.2858mmol)をすり付き試験管に加え、窒素置換した。試験管に三津和化学薬品(株)製の塩化ガリウム(0.0151g,0.08574mmol)と和光純薬工業(株)製の塩化メチレン(5mL)を加え、室温で10分間攪拌した。その後、東京化成工業(株)製の臭素(0.0589mL,1.143mmol)を加え、室温で7時間攪拌した。TLCにより反応の終了を確認後(展開溶媒:ヘキサン/ジエチルエーテル(4/1)、Rf=0.5)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液5.0mLを加えてクエンチし、和光純薬工業(株)製の塩化メチレン(4mL×2)を用いて水層の抽出操作を行った。得られた有機層を、飽和食塩水5mLで洗浄し、和光純薬工業(株)製の硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。ろ過後、ヤマト科学(株)製のロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し、PTLC(分取TLC,Preparative TLC)(展開溶媒:ヘキサン/ジエチルエーテル(4/1))により精製し、純粋な式(a−6)で表される化合物(0.0726g)を得た。(収率:59%)
得られた4,8−ジブロモ−2,6−ジアセチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロ−s−インダセン−2,6−イルジアセテートのH−NMRの結果を以下に示す。
H−NMR(599.9MHz,CDCl,TMS):δ=5.52(m,2H),3.36(d,4H),3.11(d,4H),2.04(s,6H)
[実施例1−6:4,8−ジブロモ−2,6−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロ−s−インダセン−2,6−ジオール(式(a−7)で表される化合物)の合成]
式(a−6)で表される化合物(0.0726g,0.168mmol)、ナカライテスク(株)のメタノール(3.0mL)、関東化学(株)製のDMF(1.9mL)、純水(0.3mL)をすり付き試験管に加え、65℃に加熱した。式(a−6)で表される化合物が完全に溶解したのを確認後、関東化学(株)製の水酸化カリウム(0.0548g,0.8401mmol)を加え、65℃で2時間、室温で29時間攪拌した。TLCにより原料の消失を確認後(展開溶媒:ヘキサン/ジエチルエーテル(4/1)、Rf=0.5)、減圧下、100℃に加熱して溶媒を除去し、和光純薬工業(株)製のジエチルエーテル(15.0mL)、純水(10mL)を加え、残渣を完全に溶解させた。分液して、有機層を取り出し、水槽には和光純薬工業(株)製のジエチルエーテル(10.0mL×3)を加えて抽出操作を行い、回収した有機層を合わせ、飽和食塩水(10mL)で洗浄した。和光純薬工業(株)製の硫酸ナトリウムを加えて有機層を乾燥後、ヤマト科学(株)製のロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し、式(a−7)で表される化合物の粗生成物を得た。該粗生成物を精製し、式(a−7)で表される化合物を得た。
[実施例1−7:4,8−ジブロモ−1,7−ジヒドロ−s−インダセン(式(a−8−1)で表される化合物)及び4,8−ジブロモ−1,5−ジヒドロ−s−インダセン(式(a−8−2)で表される化合物)の合成]
式(a−6)で表される化合物から、実施例1−6と同様の方法により、式(a−7)で表される化合物の粗生成物を得た。得られた粗生成物をすり付き試験管に加え、窒素置換した。次いで、シグマ−アルドリッチ(株)製のヘキサメチルリン酸トリアミド(2.0mL)、シグマ−アルドリッチ(株)製のよう化メチルトリフェノキシホスフォニウム(0.330g,0.7225mmol)を加え、75℃にて5時間半攪拌した。TLCにより反応の終了を確認後(展開溶媒:ヘキサン、Rf=0.5)、反応液を室温まで冷却し、水酸化カリウム水溶液(濃度:2mol/L)16mLを加えて反応液を希釈した。その後、シクロヘキサン(8mL×3)により抽出を行い、有機層を純水15mL、飽和食塩水15mLにより洗浄した。和光純薬工業(株)製の硫酸ナトリウムを加えて有機層を乾燥後、ヤマト科学(株)製のロータリーエバポレーターにより溶媒を除去した。その後カラムクロマトグラフィー(シリカゲル:富士シリシア化学(株)製、展開溶媒:ヘキサン)により精製し、式(a−8−1)で表される化合物と式(a−8−2)で表される化合物との混合物(以下、場合により「化合物(a−8)」と称する。)(0.029g)を得た。該混合物のH−NMRを測定したところ、式(a−8−1)で表される化合物のピークと、式(a−8−2)で表される化合物のピークは、ほぼ完全に一致した。収率:55%。
得られた化合物(a−8)のH−NMRの結果を以下に示す。
H−NMR(599.9MHz,CDCl,TMS):δ=7.07−7.01(m,2H),6.67−6.61(m,2H),3.52(s,4H)
[実施例1−8:1,7−ジヒドロ−s−インダセン−4,8−ジカルボン酸ジメチル(式(a−9−1)で表される化合物)及び1,5−ジヒドロ−s−インダセン−4,8−ジカルボン酸ジメチル(式(a−9−2)で表される化合物)の合成]
オートクレーブに、実施例1−7で得られた化合物(a−8)(0.062g,0.20mmol)と東京化成工業(株)製のパラジウムテトラキストリフェニルホスフィン(23mg,0.02mmol)を入れ、脱気した関東化学(株)製のN,N−ジメチルホルムアミド(1mL)、(株)ゴードー製のメタノール(1mL)、和光純薬工業(株)製のトリエチルアミン(0.25mL)を加え、一酸化炭素ガス(2MPa)で3回置換した。COガスを4.5MPaまで導入し、120℃で加熱攪拌した。15時間後、TLC(展開溶媒:ヘプタン/クロロホルム(1/4)、Rf=0.43)及びGCMSにて反応追跡したところ、原料が若干残存しているが反応の進行を確認した。反応溶液を濃縮し、得られた残渣をPTLC(展開溶媒:ヘプタン/クロロホルム(1/4))で精製し、微黄色結晶の式(a−9−1)で表される化合物と式(a−9−2)で表される化合物との混合物(以下、場合により「化合物(a−9)」と称する。)を15.1mg得た。(収率:28.1%)
得られた化合物(a−9)のH−NMRの結果を以下に示す。なお、「a−9−1」は、式(a−9−1)で表される化合物に由来するピークであることを示し、「a−9−2」は、式(a−9−2)で表される化合物に由来するピークであることを示す。
H−NMR(300MHz,CDCl,TMS):δ=7.61−7.51(m,4H,Ar(a−9−2)),6.79−6.74(m,4H,Ar(a−9−1)),4.02(s,3H,COOMe(a−9−2)),4.01(s,6H,COOMe(a−9−1及びa−9−2)),4.00(s,3H,COOMe(a−9−1)),3.76−3.79(m,8H,CH(a−9−1及びa−9−2))
[実施例1−9:1,7−ジヒドロ−s−インダセン−4,8−ジカルボン酸(式(a−10−1)で表される化合物)及び1,5−ジヒドロ−s−インダセン−4,8−ジカルボン酸(式(a−10−2)で表される化合物)の合成]
反応容器に実施例1−8で得られた化合物(a−9)(0.015g,0.055mmol)、和光純薬工業(株)製の水酸化カリウム、(株)ゴードー製のメタノール(0.15mL)、純水(0.15mL)を入れ、加熱還流下した。4時間後、TLC(展開溶媒:ヘプタン/クロロホルム(1/4)、Rf=0)で反応追跡したところ、原料の消失を確認した。また、反応系内に黒褐色の不溶物を確認した。室温まで放冷後、不溶物をろ去した。得られた母液を一旦濃縮し、メタノールを留去した。得られた残渣に純水を2mL加え、溶解し、氷冷下、塩酸(濃度:1mol/l)を滴下し、pH=2.0に調整した。晶析した結晶をメンブランフィルターでろ取した。得られた湿結晶を80℃で4時間乾燥し、式(a−10−1)で表される化合物と式(a−10−2)で表される化合物との混合物(以下、場合により「化合物(a−10)」と称する。)である黒色結晶を8.3mg得た。(収率:61.9%)
得られた化合物(a−10)のH−NMR及びMALDI−TOFMSの結果を以下に示す。なお、「a−10−1」は、式(a−10−1)で表される化合物に由来するピークであることを示し、「a−10−2」は、式(a−10−2)で表される化合物に由来するピークであることを示す。
H−NMR(300MHz,DMSO−d,TMS):δ=13.25(bs,4H,COOH(a−10−1及びa−10−2)),7.56−7.47(m,4H,Ar(a−10−2)),6.83−6.76(m,4H,Ar(a−10−1)),3.76−3,70(m,8H,CH(a−10−1及びa−10−2))
MS:m/z=242.25(M
[合成例2−1:1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロ−s−インダセン−2,6−ジオール(式(b−1)で表される化合物)の合成]
反応容器に式(a−5)で表される化合物(0.4518mg,1.647mmol)とエタノール(12.3mL)を加え、80℃に加熱して式(a−5)で表される化合物を完全に溶解させた。その後、和光純薬工業(下部)製の水酸化カリウム(純度:86%,0.5910g,9.059mmol)と水(2.3mL)を加え、80℃で6時間攪拌させた。次に、反応液を室温まで下げ、50時間攪拌し、更に50℃で9時間攪拌した。TLCにより反応の終了を確認後(展開溶媒:ヘキサン/ジエチルエーテル(1/1)、Rf=0.2)、エタノールを除去し、ジエチルエーテルで抽出したところ、式(b−1)で表される化合物の白色結晶が0.1633g得られた。(収率:52%)
得られた1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロ−s−インダセン−2,6−ジオールのH−NMRの結果を以下に示す。
H−NMR(599.9MHz,DMSO,TMS):δ=6.98(s,2H),4.84(d,2H),4.7−4.2(m,2H),3.3−2.4(m,8H)
[実施例2−2:工程2−2:1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロ−s−インダセン−2,6−ジオン(式(b−2)で表される化合物)の合成]
試験管を窒素置換し、和光純薬工業(株)製の塩化メチレン0.5mL、キシダ化学(株)製のジメチルスルホキシド(0.0512ml,0.7204mmol)を加えた。−78℃まで冷却し、東京化成工業(株)製のオキサリルクロリド(0.0610mL,0.7204mmol)を加えて30分攪拌した。続いて、式(b−1)で表される化合物(57.1mg,0.3001mmol)のジメチルスルホキシド(0.5ml)を調製し、反応溶液に滴下し、2時間攪拌した。その後、関東化学(株)製のトリエチルアミン(0.1255ml,0.9004mmol)を加え室温にて1時間攪拌した。反応溶液を塩化メチレン(2mL)で希釈後、純水(2mL)を加え、塩化メチレンで抽出した。抽出した有機層を飽和食塩水(2mL)で洗浄し、和光純薬工業(株)製の硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。溶液をろ過後、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/ジエチルエーテル=3/1)で精製することにより、式(b−2)で表される化合物が39.1mg得られた。(収率:70%)
得られた1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロ−s−インダセン−2,6−ジオンのH−NMRの結果を以下に示す。
H−NMR(599.9MHz,CDCl,TMS):δ=6.88(s,2H),3.71−3.70(m,8H)
[実施例2−3:2,6−ジトリフルオロメタンスルホン酸−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロ−s−インダセン(式(b−3)で表される化合物)の合成]
反応容器に式(b−2)で表される化合物(65.2mg,0.35mmol)と和光純薬工業(株)製のクロロホルム(5mL)を加え、トリエチルアミン(100μL,0.72mmol)を加え、容器を氷冷して0℃まで下げた。次に、氷冷しながら無水トリフルオロメタンスルホン酸(140μL,0.54mmol)を加え、そのまま3時間攪拌した。TLCにより反応の終了を確認後(展開溶媒:ヘキサン/ジエチルエーテル(4/1)、Rf=0.4)、反応溶液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/ジエチルエーテル=4/1)で精製することにより、式(b−3)で表される化合物が135.5mg得られた。(収率:86%)
得られた2,6−ジトリフルオロメタンスルホン酸−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロ−s−インダセンのH−NMRの結果を以下に示す。
H−NMR(599.9MHz,CDCl,TMS):δ=7.03(s,1H),6.65(s,2H)、6.46(s,1H)、3.3−3.2(m,4H)
[実施例2−4:1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロ−s−インダセン−2,6−ジカルボン酸ジメチル(式(b−4)で表される化合物)の合成]
オートクレーブに式(b−3)で表される化合物(90.1mg,0.20mmol)と東京化成工業(株)製のパラジウムテトラキストリフェニルホスフィン(23.1mg,0.020mmol)を入れ、脱気した関東化学(株)製のN,N−ジメチルホルムアミド(1mL)、(株)ゴードー製のメタノール(1mL)、和光純薬工業(株)製のトリエチルアミン(0.25mL)を加え、一酸化炭素ガス(2MPa)で3回置換した。COガスを4.5MPaまで導入し、120℃で加熱攪拌した。15時間後、TLC(展開溶媒:ヘプタン/クロロホルム(1/3)、Rf=0.35)及びGCMSにて反応追跡したところ、原料が若干残存しているが反応の進行を確認した。反応溶液を濃縮し、得られた残渣をPTLC(展開溶媒:ヘプタン/クロロホルム(1/3))で精製し、式(b−4)で表される化合物を23.8mg得た。(収率:44%)
得られた1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロ−s−インダセン−2,6−ジカルボン酸のH−NMRの結果を以下に示す。
H−NMR(300MHz,CDCl,TMS):δ=7.60(s,2H)、7.03(s,1H),6.46(s,1H)、3.8(s,6H)、3.7−3.6(m,4H)
[実施例2−5:1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロ−s−インダセン−2,6−ジカルボン酸(式(b−5)で表される化合物)の合成]
反応容器に式(b−4)で表される化合物(23.8mg,0.088mmol)、和光純薬工業(株)製の水酸化カリウム(50mg,0.89mmol)、(株)ゴードー製のメタノール(0.15mL)、純水(0.15mL)を入れ、加熱還流した。4時間後、TLC(展開溶媒:ヘプタン/クロロホルム(1/3)、Rf=0)で反応追跡したところ、原料の消失を確認した。室温まで放冷後、得られた母液を一旦濃縮し、メタノールを留去した。得られた残渣に純水を2ml加え、溶解し、氷冷下、塩酸(濃度:1mol/L)を滴下し、pH=2.0に調整した。晶析した結晶をメンブランフィルターでろ取した。得られた湿結晶を50℃で3時間乾燥し、式(b−5)で表される化合物の結晶を6.4mg得た。(収率:73%)
得られた1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロ−s−インダセン−2,6−ジカルボン酸のH−NMRおよびMALDI−TOFMSの結果を以下に示す。
H−NMR(300MHz,DMSO−d,TMS):δ=13.20(bs,2H)、7.55(s,2H),7.00(s,2H),6.40(s,1H)、3.6−2.5(m,4H)
MS:m/z=242.04(M
本発明に係るジカルボニル化合物は、本発明に係るジカルボニル化合物は、s−ジヒドロインダセン骨格を有しているため、耐熱性、耐候性、物理的強度等の特性に優れた樹脂や繊維等を製造するための原料としての用途、抗真菌剤等として使用できる医薬化合物の中間体としての用途、等に好適に用いることができ、有用である。

Claims (7)

  1. 下記式(1−1)又は(1−2)で表されるジカルボニル化合物。
    Figure 0005623835

    [式(1−1)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示し、前記置換基はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子及びアルコキシ基からなる群より選択される。]
    Figure 0005623835

    [式(1−2)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示し、前記置換基はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子及びアルコキシ基からなる群より選択される。]
  2. 下記式(1−3)又は(1−4)で表されるジハロゲン化合物。
    Figure 0005623835

    [式(1−3)中、X及びXはそれぞれ独立に、ハロゲン原子を示す。]
    Figure 0005623835

    [式(1−4)中、X及びXはそれぞれ独立に、ハロゲン原子を示す。]
  3. 下記式(1−5)で表されるジハロゲン化合物。
    Figure 0005623835

    [式(1−5)中、X及びXはそれぞれ独立にハロゲン原子を示し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は−CO−Rで表される基(Rは、置換基を有していてもよいアルキル基を示し、前記置換基はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子及びアルコキシ基からなる群より選択される。)を示す。]
  4. 金属触媒存在下における下記式(1−3)又は(1−4)で表されるジハロゲン化合物と一酸化炭素との反応を経て、下記式(1−1)又は(1−2)で表されるジカルボニル化合物を得る、ジカルボニル化合物の製造方法。
    Figure 0005623835

    [式(1−3)中、X及びXはそれぞれ独立に、ハロゲン原子を示す。]
    Figure 0005623835

    [式(1−4)中、X及びXはそれぞれ独立に、ハロゲン原子を示す。]
    Figure 0005623835

    [式(1−1)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示し、前記置換基はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子及びアルコキシ基からなる群より選択される。]
    Figure 0005623835

    [式(1−2)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示し、前記置換基はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子及びアルコキシ基からなる群より選択される。]
  5. 下記式(2−2)で表されるジエステル化合物。
    Figure 0005623835

    [式(2−2)中、R13及びR14はそれぞれ独立に、−SO15で表される基(式中、R15は、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、4−メチルフェニル基又は2−ニトロフェニル基を示す。)を示す。]
  6. 下記式(2−3)で表されるジケトン化合物。
    Figure 0005623835
  7. 金属触媒存在下における下記式(2−2)で表されるジエステル化合物と一酸化炭素との反応を経て、下記式(2−1)で表されるジカルボニル化合物を得る、ジカルボニル化合物の製造方法。
    Figure 0005623835

    [式(2−2)中、R13及びR14はそれぞれ独立に、−SO15で表される基(式中、R15は、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、4−メチルフェニル基又は2−ニトロフェニル基を示す。)を示す。]
    Figure 0005623835

    [式(2−1)中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を示し、前記置換基はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子及びアルコキシ基からなる群より選択される。]
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