JP5620547B2 - 窒化物半導体発光素子 - Google Patents

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Description

本発明は、窒化物半導体レーザ素子などの基板とその製造方法、及び該基板上に窒化物半導体層を積層することにより形成された窒化物半導体発光素子とその製造方法に関する。
GaN、AlN、InNおよびそれらの混晶に代表される窒化物半導体材料により、紫外から可視領域で発振する半導体レーザ素子が試作されている。基板には、GaN基板が用いられることが多く、各研究機関において精力的に研究されている。現在、十分な寿命の半導体レーザ素子が得られておらず、更なる長寿命化が必要とされている。この半導体レーザ素子の寿命は、GaN基板に元々存在する欠陥(本明細書において欠陥とは、結晶中の空孔、格子間原子、転位等を指す)密度に強く依存することが知られている。しかし、長寿命化に効果があると言われる欠陥密度の低い基板は得られにくく、盛んに研究されている。
一例として、GaN基板の製造には次の方法を用いることが非特許文献1に報告されている。MOCVD法(Metalorganic Chemical Vapor Deposition)により、サファイア基板上に2.0μm厚の下地GaN層を成長させ、その上に0.1μmの膜厚の周期的なストライプ状の開口部をもつSiO2マスクパターンを形成し、再びMOCVD法により20μm厚のGaN層を形成してウェハーを得る。これは、ELOG(Epitaxially Lateral Overgrown)と呼ばれる技術であり、ラテラル成長の利用により欠陥を低減する手法である。
さらに、HVPE法(Hydride Vapor Phase Epitaxy)により200μm厚のGaN層を形成し、下地であるサファイア基板を除去することで150μm厚のGaN基板を作製する。次に、得られたGaN基板の表面を平坦に研磨する。このようにして得られた基板には基板面内に欠陥集中領域と低欠陥領域とを含むことになる。一般的には、SiO2上の一部に欠陥を多く含む欠陥集中領域と、SiO2上の残りの低欠陥領域とに分けられる場合が多い。
Applied Physics Letter. Vol.73 No.6 (1998) pp.832−834
しかしながら、欠陥集中領域と低欠陥領域を含む基板上に窒化物半導体層をMOCVD法等により成長させた場合、それから作製される半導体レーザ素子の特性がばらつき、大きく歩留まりを下げていた。
欠陥集中領域と低欠陥領域を含む基板上に窒化物半導体層をMOCVD法等により成長させた場合、半導体レーザ素子の特性がばらつき、大きく歩留まりを下げる原因を解明すべく、鋭意研究を行った結果、膜表面の平坦性が悪く凸凹した表面モフォロジーになっていることが原因であることが分かった。凸凹した膜上に窒化物半導体層(特に活性層と呼ばれるInGaN層)を成長した場合、層厚や組成が凸凹に依存して面内で異なり、設定値から大きくずれるためである。更に、凸凹した表面モフォロジーは、窒化物半導体層の欠陥集中領域の形状に大きく依存していることを突き止めた。つまり欠陥集中領域の形状に、薄膜の成長方向や成長モードが強く依存し、欠陥集中領域の形状が不均一であると、膜表面の平坦性が悪くなり、凸凹した表面モフォロジーになることが分かった。この凸凹の表面に活性層等の薄膜を成長することにより、素子の特性がばらつくのである。
上記の考察を導いた実験について説明する。まず、欠陥集中領域と低欠陥領域が存在する基板上に窒化物半導体層を成長させる場合について説明する。図15(a)は従来の半導体レーザ素子の断面図、図15(b)は図15(a)の上面図である。10が欠陥集中領域と低欠陥領域の存在する基板であり、11が欠陥集中領域、12が低欠陥領域、13が窒化物半導体層、13aが窒化物半導体層の表面である。
基板10上にそのまま(基板等に前処理などしないで)窒化物半導体層を成長させた場合、欠陥集中領域は低欠陥領域に比べ結晶性が悪く、また低欠陥領域と異なる成長面が出ることがあり、低欠陥領域と大きく成長速度が異なる。このため、低欠陥領域よりも欠陥集中領域の成長速度が遅くほとんど成長は起こらない。
図16(a)は線状の欠陥集中領域を有した窒化物半導体層の成長時の上面図、図16(b)は点状の欠陥集中領域を有した窒化物半導体層の成長時の上面図である。欠陥集中領域で成長がほとんど起こらないため、欠陥集中領域xが起点となり矢印Aの方向に成長が進み、また、欠陥集中領域yが起点となり矢印Bの方向に成長が進む。このように異なる2方向に成長が起こった場合、その会合部とそれ以外の領域おいて層厚が変わり、表面平坦性が悪化する。
図17は、線状の欠陥集中領域に垂直方向[11−20]と水平方向[1−100]にラフネスを測定した図である。ラフネスの測定は、A SUBSIDIARY OF VEECO INSTRUMENTS INC社製DEKTAK3STを用いて測定した。測定条件として、測定長600μm、測定時間3s、触針圧30mg、水平分解能1μm/sampleで行っている。測定した600μm幅の中で、最も高い部分と、最も低い部分の高低差は200nmにも及んでいる。但し、欠陥集中領域の大きな溝は除く。
また、会合部は非発光領域となることが分かった。以上より、ウェハー面内で各層の層厚が異なることが素子特性のばらつき要因になっているといえる。
本発明は、上記の問題点に鑑み、ウェハー面内の特性の均一化を図り歩留まりを向上させる基板及び該基板上に積層された窒化物半導体発光素子を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の基板は、欠陥集中領域と、欠陥集中領域を除いた領域である低欠陥領域とを有する基板であって、欠陥集中領域を含む部分に、低欠陥領域の表面よりも掘り込まれた掘り込み領域が形成されていることを特徴とする。
このように、欠陥集中領域を含む部分を掘り込むことにより、成長方向が均一になり表面平坦性が向上し、ウェハー面内の特性の均一化が図られて歩留まりを向上させることができる。
さらに、本発明の基板は、低欠陥領域に、低欠陥領域の表面よりも掘り込まれた掘り込み領域が形成されていることを特徴とする。このとき、低欠陥領域に形成された掘り込み領域は、欠陥集中領域を含む部分に形成された掘り込み領域の両側に形成されていてもよい。
このように、低欠陥領域に掘り込まれた掘り込み領域は、低欠陥領域に欠陥や成長面が異なる領域等の異常成長箇所が含まれていた場合に、その影響が広範囲に及ぶのを防ぐことができる。
さらに、本発明の基板は、欠陥集中領域を含む部分に形成された掘り込み領域の端から、欠陥集中領域の端までの距離が5μm以上であることを特徴とする。
また、本発明の基板は、欠陥集中領域と、欠陥集中領域を除いた領域である低欠陥領域とを有する基板であって、低欠陥領域のみに、低欠陥領域の表面よりも掘り込まれた掘り込み領域が形成されていることを特徴とする。
このように、低欠陥領域のみに掘り込み領域を形成することによっても、異常成長領域の伝播を止めることができ、表面平坦性を改善することができる。
本発明の基板において、低欠陥領域のみに形成される掘り込み領域は、欠陥集中領域の片側又は両側に形成されていることが好ましい。
さらに、本発明の基板は、低欠陥領域のみに形成された掘り込み領域の端から欠陥集中
領域の端までの距離が5μm以上であることを特徴とする。
また、本発明の基板は、窒化ガリウムからなることを特徴とする。
また、本発明の基板において、欠陥集中領域は線状又は点状であることを特徴とする。
そして、欠陥集中領域が線状である場合、線状の欠陥集中領域は[1−100]方向に伸びていることが好ましい。
さらに、本発明の基板において、掘り込み領域の掘り込み深さは0.5μm以上50μm以下であることを特徴とする。
また、本発明の窒化物半導体発光素子は、上記の特徴を有するいずれかの基板と、この基板上に積層された窒化物半導体層とを備えたことを特徴とする。
さらに、本発明の窒化物半導体発光素子は、窒化物半導体層がレーザ光導波領域であるリッジ部を有し、リッジ部は、掘り込み領域の端から5μm以上離れて形成されていることを特徴とする。
さらに、本発明の窒化物半導体発光素子は、基板の下面にn型電極が形成され、窒化物半導体層の上面にp型電極が形成されていることを特徴とする。
また、本発明は、欠陥集中領域と、欠陥集中領域を除いた領域である低欠陥領域とを有する基板の製造方法であって、欠陥集中領域を含む部分に、低欠陥領域の表面よりも掘り込まれた掘り込み領域を形成する工程が含まれていることを特徴とする基板の製造方法に関するものである。
さらに、本発明の基板の製造方法では、低欠陥領域に、低欠陥領域の表面よりも掘り込まれた掘り込み領域を形成する工程が含まれていることを特徴とする。このとき、低欠陥領域に形成された掘り込み領域を、欠陥集中領域を含む部分に形成された掘り込み領域の両側に形成する工程が含まれていてもよい。
さらに、本発明の基板の製造方法では、欠陥集中領域を含む部分に形成された掘り込み領域の端から、欠陥集中領域の端までの距離が5μm以上となるように、欠陥集中領域を含む部分に掘り込み領域を形成する工程が含まれていることを特徴とする。
また、本発明は、欠陥集中領域と、欠陥集中領域を除いた領域である低欠陥領域とを有する基板の製造方法であって、前記低欠陥領域のみに、該低欠陥領域の表面よりも掘り込まれた掘り込み領域を形成する工程が含まれていることを特徴とする基板の製造方法に関するものである。
さらに、本発明の基板の製造方法は、低欠陥領域のみに形成される掘り込み領域を、欠陥集中領域の片側又は両側に形成する工程を含んでいることを特徴とする。
さらに、本発明の基板の製造方法は、低欠陥領域のみに形成された掘り込み領域の端から欠陥集中領域の端までの距離が5μm以上となるように、掘り込み領域を形成する工程が含まれていることを特徴とする。
また、本発明の基板の製造方法において、低欠陥領域の表面よりも掘り込まれた掘り込み領域を形成する工程は、気相エッチングを用いて行われることが好ましい。気相エッチングとしては、反応性イオンエッチング(RIE)が好適に挙げられる。
さらに、本発明の基板の製造方法において、基板は窒化ガリウムであることを特徴とする。
さらに、本発明の基板の製造方法において、欠陥集中領域が線状である場合、線状の欠陥集中領域が[1−100]方向に伸びている基板を用いることを特徴とする。
また、本発明は、上記の基板の製造方法により得られた基板上に窒化物半導体層を形成する工程が含まれていることを特徴とする窒化物半導体発光素子の製造方法に関するものである。
本発明の窒化物半導体発光素子の製造方法では、窒化物半導体層に、掘り込み領域の端から5μm以上離れて、レーザ光導波領域であるリッジ部を形成する工程が含まれていることを特徴とする。
さらに、本発明の窒化物半導体発光素子の製造方法では、基板の下面にn型電極を形成し、窒化物半導体層の上面にp型電極を形成する工程が含まれていることを特徴とする。
基板が、欠陥集中領域と欠陥集中領域を除いた領域である低欠陥領域とを有する場合に、基板の所定箇所に低欠陥領域の表面よりも掘り込まれた掘り込み領域を設けることにより、基板上に積層された窒化物半導体層の成長方向が均一になり表面平坦性が向上し、ウェハー面内の特性の均一化が図られて歩留まりを向上させることができる。
また、基板の所定箇所に掘り込み領域を設けることにより、基板上に積層される窒化物半導体層に内在する歪みを開放することができ、クラックの発生を防止できる。
(a)実施例1の窒化物半導体レーザ素子の断面図である。(b)は図1(a)の上面図である。 窒化物半導体層の層構成を示す断面図である。 (a)欠陥集中領域付近を拡大した上面図の一例である。(b)欠陥集中領域付近を拡大した上面図の一例である。(c)欠陥集中領域付近を拡大した上面図の一例である。 (a)実施例1の基板の上面図である。(b)図4(a)の断面図である。 (a)[11−20]方向の表面平坦性を示す図である。(b)[1−100]方向の表面平坦性を示す図である。 (a)線状の欠陥集中領域を有した窒化物半導体層の成長時の上面図である。(b)点状の欠陥集中領域を有した窒化物半導体層の成長時の上面図である。 掘り込み深さXと歩留まりの相関を示す図である。 (a)線状の欠陥集中領域を有した基板の上面図である。(b)点状の欠陥集中領域を有した基板の上面図である。 距離Yと歩留まりの相関を示す図である。 実施例2の点状の欠陥集中領域を有した基板の上面図である。 (a)実施例3の基板の上面図である。(b)図11(a)の断面図である。 (a)掘り込み領域を有しない場合の窒化物半導体層の成長時の上面図である。(b)掘り込み領域を有する場合の窒化物半導体層の成長時の上面図である。 (a)実施例4の基板の上面図である。(b)図13(a)の断面図である。 (a)実施例4の窒化物半導体レーザ素子の断面図である。(b)図14(a)の上面図である。 (a)従来の半導体レーザ素子の断面図である。(b)図15(a)の上面図である。 (a)従来の線状の欠陥集中領域を有した窒化物半導体層の成長時の上面図である。(b)従来の点状の欠陥集中領域を有した窒化物半導体層の成長時の上面図である。 (a)従来の窒化物半導体レーザ素子の[11−20]方向の表面平坦性を示す図である。(b)従来の窒化物半導体レーザ素子の[1−100]方向の表面平坦性を示す図である。
以下、本発明を図面を用いて詳細に説明する。
本明細書において、結晶の面や方位を示す指数が負の場合、絶対値の上に横線を付して表記するのが結晶学の決まりであるが、本明細書では、そのような表記ができないため、絶対値の前に負号「−」を付して負の指数を表す。
本発明において、基板とは従来例で説明した下地を除去してフリースタンディングの状態のGaN基板を用いても良いし、下地のサファイアを取り除かず、そのままの状態で用いても良い。つまり窒化物半導体レーザの薄膜がMOCVD法で成長する前の基板の表面に、欠陥集中領域と低欠陥領域をもつ基板を用いる場合を考える。
図1(a)は窒化物半導体レーザ素子の断面図、図1(b)は図1(a)の上面図である。n型GaN基板10中には、欠陥集中領域11が存在し、欠陥集中領域11以外の部分は低欠陥領域12となっている。
本明細書において、欠陥集中領域とは、基板又は基板上に作製された窒化物半導体層を硫酸、燐酸の混合酸を250℃に加熱した液に浸してエッチングを行った結果、多数のエッチピットが現れ、欠陥(あるいは転位等)が極めて集中している領域を指す。一方、低欠陥領域とは、EPD(エッチピット密度)104〜105/cm2台の領域を指す。欠陥集中領域のEPDは、これよりも2桁以上大きい。なお、EPDを測定する方法としては、RIE(Reactive Ion Etching)等の気相エッチングを用いても良いし、MOCVD炉中で成長を止めて、高温(1000℃程度)に晒すことによっても測定できる。測定手段としては、AFM(atomic force microscope)、CL(cathode luminescence)、顕微PL(photo luminescence)等を用いることができる。
基板10上には、窒化物半導体層(エピタキシャル成長層)13が形成されている。また基板10には、欠陥集中領域11を含むように掘り込み領域14が形成されている。掘り込み領域14はRIEによって掘り込まれた領域である。また、窒化物半導体層13上面にレーザ光導波路構造であるリッジ部15、電流狭窄を目的としたSiO2層16、その上面にp型電極17が形成されている。また基板10下面には、n型電極18が形成されている。
本明細書において、リッジ部15の中心と掘り込み領域14の端との距離をdで表す。図1(a)においてはd=40μmとする。
図2は、窒化物半導体層13の層構成を示す断面図である。窒化物半導体層13は、n型GaN層(層厚3.5μm)20上にn型Al0.062Ga0.938N第1クラッド層(層厚2.3μm)21、n型Al0.1Ga0.9N第2クラッド層(層厚0.2μm)22、n型Al0.062Ga0.938N第3クラッド層(層厚0.1μm)23、n型GaNガイド層(層厚0.1μm)24、InGaN/GaN−3MQW活性層(InGaN/GaN層厚=4nm/8nm)25、p型Al0.3Ga0.7N蒸発防止層(層厚20nm)26、p型GaNガイド層(層厚0.05μm)27、p型Al0.062Ga0.938Nクラッド層(層厚0.5μm)28、p型GaNコンタクト層29(層厚0.1μm)が順番に積層されて構成される。
図1(b)に示すように、線状の欠陥集中領域11は[1−100]方向に伸びている。上面から見た線状の欠陥は欠陥集中密度や種類によって形状が異なる場合があり、図3(a)〜(c)に欠陥集中領域の形状の例を図示した。線状の欠陥集中領域(図3(a))、穴状の欠陥集中領域(図3(b))、微細な穴状の欠陥集中領域が密集した状態(図3(c))等がある。ここでの穴や線状コアのオーダーは1nm程度から数十μmまでの大きさである。本実施の形態においては、図3(a)の場合を用いて説明する。なお、図3(b)、(c)の場合も同様の効果を生じる。
次に、製造方法について説明する。欠陥集中領域が線状になっているGaN基板10の製造方法は、従来例でも説明した通り、MOCVD法によりサファイア基板上に2.5μm厚の下地GaN層を成長させ、その上に周期的なストライプ状の開口部をもつSiO2マスクパターン(周期20μm)を形成し、再びMOCVD法により15μm厚のGaN層を形成してウェハーを得る。SiO2上は膜が成長しないため、開口部から成長が始まる。膜厚がSiO2より厚くなると、SiO2上に開口部から横方向に成長する。SiO2の中心部で左右から各々成長してきた膜が会合し、会合した部分は高い欠陥密度を有する欠陥集中領域11となる。SiO2が線状に形成されるため、欠陥集中領域11も線状に形成される。ここで、欠陥集中領域11の幅は約40μmであり、欠陥集中領域11どうしの間隔は約400μmである。
ここでは、ELOG法を用いた基板の作製方法を示したが、他の作製方法を用いることもできる。欠陥集中領域と低欠陥領域が存在する基板を用いて、その基板上に窒化物半導体層を成長させる方法であれば良く、基板はサファイアであっても、SiC、GaN、GaAs、Si基板、またスピネル基板、ZnO基板等であっても構わない。
次に、この基板10の全面にSiO2等を膜厚400nmでEB蒸着し、その後、一般的なフォトリソ工程により、レジストで[1−100]方向に欠陥集中領域を含むように幅60μmのストライプのウィンドウを形成する。その後ICP、もしくはRIEにより、SiO2及びGaN基板10をエッチングする。GaN基板10のエッチング深さは4μmとする。その後、HFなどのエッチャントによりSiO2を除去して窒化物半導体層13を成長する前の基板処理を終了する。
このようにして得られた基板10を図4に示した。図4(a)は基板10の上面図、図4(b)は図4(a)の断面図である。14aは欠陥集中領域11を含むようにRIEでエッチングした領域であり、その深さをXで示す。本明細書においてエッチング方法は、気相エッチングを用いても良いし、液相のエッチャントを用いて行ってもよい。
そして、この基板10上に窒化物半導体層13を積層し、リッジ部15、SiO2層16、p電極17、n電極18を形成する。
上記のように、基板10の欠陥集中領域11をRIEで掘り込み、基板10に窒化物半導体層13を積層した場合、掘り込み領域14の表面平坦性は非常に荒れており、図15に示した従来の窒化物半導体レーザ素子のラフネス(図17参照)と同レベルであった。しかし、図5(b)に示すように、掘り込み領域14以外の掘り込まれていない領域を測定した600μm幅の中で、最も高い部分と最も低い部分の高低差は20nm以下であった。但し、図5(a)に示す欠陥集中領域11の溝部のくぼみは除く。
この理由に関して図6を用いて説明する。図6(a)は線状の欠陥集中領域11を有した窒化物半導体層13の成長時の上面図、図6(b)は点状の欠陥集中領域11を有した窒化物半導体層13の成長時の上面図である。図16のように欠陥集中領域11の形状により成長方向が面内でばらついていた場合と明らかに異なり、掘り込み領域14の形成によって成長方向が図6の矢印C、Dに示すようにほぼ同一方向になり、成長方向の違いによる会合部は生じなくなる。このため、各層厚が面内でばらつくことなく均一になる。
また、図6(a)、(b)に示すように、掘り込み領域14により欠陥集中領域11の形状に依存せずに面内の成長方向を均一にすることができるため、表面平坦性を改善するために有効である。
この非常に平坦な領域にリッジ部15を形成することにより、素子特性の面内分布を抑え歩留まりを飛躍的に改善することができる。このようにして得られた半導体レーザ素子をAPC駆動で60℃、30mWで寿命試験を行った。ここで示す寿命とは、寿命試験を行う前のIop(光出力が30mW時の電流値)が寿命試験によって1.5倍になった時点の時間をいう。各素子の発光波長は405±5nmであった。各ウェハーから無作為に50素子を取り出し、半導体レーザ素子の寿命が3000時間を越えた数を歩留まりとして調べた。
その結果、歩留まりは80%を超えるものであった。なお、従来例に示した基板10にそのまま窒化物半導体層13を成長させた場合には、歩留まりは30%以下であった。このように、窒化物半導体層13の表面平坦性(掘り込み領域14以外)の改善が、ウェハー面内の各層厚、組成の均一化を可能にし、歩留まりの向上に繋がるといえる。
次に、図4に示した掘り込み領域14の深さXに関して検討する。図7に掘り込み深さXと歩留まりの相関を示した。図7では掘り込み深さXが5μmまでしか図示されていないが、それ以上の深さの場合も80%を超える歩留りであった。掘り込み深さXが0.5μm未満であると、下地であるn型GaNが成長した際に掘り込み領域がすぐに埋まってしまい、掘り込み領域14の表面平坦性の悪さが伝播してしまい、掘り込み領域14以外の表面平坦性を悪化させる。また、X=50μm以上の場合は、通常素子分割のために基板を研削、研磨するが、この工程の際に割れ等が発生して歩留まりを落とすことが分かった。このため、掘り込み深さXは0.5μm以上50μm以下が良い。
次に、掘り込み領域14の位置に関して検討する。図8(a)は線状の欠陥集中領域を有した基板10の上面図、図8(b)は点状の欠陥集中領域を有した基板10の上面図である。図8(a)、(b)に示すように、欠陥集中領域11の端から掘り込み領域14の端までの距離をYとする。ここで、欠陥集中領域11の幅方向の両端において距離Yが異なるが、距離の短い方を距離Yと定義する。
図9に、距離Yと歩留まりの相関を図示した。距離Yが5μm未満である場合、欠陥集中領域11の結晶性の悪い部分を完全に掘り込み領域14に含むことができず、掘り込み領域14以外に含むことになるため、歩留まりの低下が見られた。従って、距離Yは5μm以上であることが好ましい。
次に、リッジ部15の位置に関して検討する。リッジ部15の位置は図1に示す距離dで規定される。この距離dが5μm未満の場合は、エッジグロース(掘り込まれていない領域の端部分の成長速度が上がり、層厚が厚くなる)により層厚が異なるために好ましくない。従って、距離dが5μm以上であれば問題はない。
そして、従来例の窒化物半導体レーザ素子では、窒化物半導体層13中の1cm角の面積の中に5〜7本のクラックが入っていた。これは、窒化物半導体層13の中に含まれるAlGaNクラッド層とGaN層の格子定数の違い、または熱膨張係数の違いから生じる歪によって引き起こされると考えられる。このように、クラックが存在すると、クラックをチップ内に含んだ窒化物半導体素子は著しく特性を悪化させ歩留まりを落とすことになる。
それに対して、本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子では、1cm角の面積の中にクラックは0本であった。このように、本実施の形態を用いた場合には、窒化物半導体層13中のクラックを著しく低減することが可能である。これは、窒化物半導体層13に内在する歪が、掘り込み領域14の存在により開放されるためと考えられる。
本実施の形態においては、欠陥集中領域11が点状の場合について説明する。基板10の欠陥集中領域11が点状である以外、実施例1とプロセス、構造等同じである。
従来例のように掘り込み領域14を形成しない場合は、欠陥集中領域11から円状に窒化物半導体層13が成長し、その会合部では大きな平坦性の悪化が生じた。そして、表面ラフネスを測定した結果、表面の高低差は200nmにも及んだ。
図10は、点状の欠陥集中領域11を有した基板10の上面図である。点状の欠陥集中領域11を含む線状に掘り込み領域14を形成することにより、表面平坦性の改善を行うことができる。
実施例1の方法により作製したウェハーの表面平坦性を測定した結果、表面の高低差は20nm以下であった。また、歩留まりは、実施例1とほぼ同様な結果が得られた。また、掘り込み領域の深さXや距離Yや距離dも実施例1と同様とすることが好ましい。
本実施の形態においては、欠陥集中領域11を含む掘り込み領域14の他にも掘り込みを形成した半導体レーザ素子について説明する。基板10の掘り込み領域の位置以外は、実施例1とプロセス、構造等同じである。
図11(a)は実施例3の基板の上面図、図11(b)は図11(a)の断面図である。掘り込み領域として、欠陥集中領域11を含む掘り込み領域14と、低欠陥領域12中に形成された掘り込み領域14aとが存在する。
この掘り込み領域14aは、低欠陥領域に欠陥や成長面が異なる領域等の異常成長箇所が含まれていた場合に、その影響が広範囲に及ぶのを防ぐことを目的としている。図12(a)は掘り込み領域14aを有しない場合の窒化物半導体層13の成長時の上面図、図12(b)は掘り込み領域14aを有する場合の窒化物半導体層13の成長時の上面図である。図12(a)に示すように、もし低欠陥領域12にイレギュラーに欠陥等が存在した場合、そこは掘り込まれていないため異常成長が起こり、低欠陥領域12に広範囲に広がることになる。しかし、低欠陥領域12にも掘り込み領域14aを形成することにより、図12(b)に示すように、異常成長の伝播を防ぐことができることが分かった。つまり、図12(b)の低欠陥領域12aで発生した異常成長も掘り込み領域14aにより伝播が止まり、低欠陥領域12bは表面平坦性の高い領域を保つことができる。
低欠陥領域12aで発生した異常成長が低欠陥領域12bに伝播せず、表面平坦性の高低差が20nm以下に抑えられる条件は、掘り込み領域14aの幅が3μm以上であった。3μm以下の幅では掘り込み領域14aが埋まってしまい、異常成長を止める効果はなかった。また、幅が200μmより大きくなると、低欠陥領域12の面積が狭くなり、従ってp電極17等を作りこむ領域が狭くなり、プロセス歩留まりが落ちるため好ましくない。
また、掘り込み領域14aの掘り込み深さも実施の形態1と同様の理由により、掘り込み深さXは0.5μm以上50μm以下が良い。
なお、掘り込み領域14aは掘り込み領域14間に複数本設けてもよく、形成位置も低欠陥領域内であれば、どこに形成しても効果は同じである。
本実施の形態は、欠陥集中領域11をRIE等のエッチング法を用いて掘り込むことをせず、欠陥集中領域11の両端に掘り込み領域を作ることにより、窒化物半導体層13の表面平坦性を改善し半導体レーザ素子の特性の面内歩留まりを大幅に改善するものである。なお、基板10の掘り込み領域の位置以外は、実施例1とプロセス、構造等同じである。
図13(a)は実施例4の基板の上面図、図13(b)は図13(a)の断面図である。欠陥集中領域11の両側に掘り込み領域14bが設けられている。例えば、掘り込み領域14bの幅は20μm、深さは3μmとすることができる。12cは掘り込み領域14b間の低欠陥領域であり、リッジ部形成領域と称する。リッジ部形成領域とは、この基板10上に窒化物半導体層13を成長し、更に窒化物半導体レーザ素子を作りこむ際に、光導波領域であるリッジ部を作製する領域をいう。
図13の基板10に窒化物半導体層13をエピタキシャル成長させる。そして、そのウェハーに窒化物半導体レーザ素子を作製する。図14(a)は実施例4の窒化物半導体レーザ素子の断面図、図14(b)は図14(a)の上面図である。図1(a)と同様に、リッジ部15の中心と掘り込み領域14bの端との距離をdで表すとき、d=100μmとする。
本実施の形態のように、基板10の欠陥集中領域11の両脇に掘り込み領域14bを設け、その基板10に窒化物半導体層13を成長させた場合、欠陥集中領域11を含む掘り込み領域14bに挟まれた領域の表面平坦性は非常に荒れている。
しかし、図13で示したリッジ部形成領域12cの表面平坦性は窒化物半導体層13をエピタキシャル成長させた後であっても、表面平坦性を測定した600μm幅の中で最も高い部分と最も低い部分の高低差は20nm以下であった。この理由として、図12の掘り込み領域14aと同様の作用によって、異常成長領域の伝播を止めることができるものと考えられる。従って、欠陥集中領域11を掘り込まなくても、欠陥集中領域11を含むように低欠陥領域12に掘り込み領域14bを形成することにより、表面平坦性を改善することができることが分かった。それにより、素子特性の面内分布を抑え歩留まりを飛躍的に改善することができる。
また、歩留まりは、実施例1とほぼ同様な結果が得られた。また、掘り込み領域の深さXや距離Yや距離dも実施例1と同様とすることが好ましい。
また、表面平坦性の高低差が20nm以下に抑えられる条件として、掘り込み領域14bの幅は3μm以上150μm以下が好ましい。3μm以下の幅であった場合、掘り込み領域14bが埋まってしまい、欠陥集中領域11の異常成長が低欠陥領域12へ伝播する。また、150μmより幅が大きくなると、低欠陥領域12の面積が狭くなり、従ってp電極17等を作りこむ領域が狭くなり、プロセス歩留まりが落ちるため好ましくない。
また、本実施の形態の窒化物半導体レーザ素子では、1cm角の面積の中にクラックは0本であった。このように、本実施の形態を用いた場合には、窒化物半導体層13中のクラックを著しく低減することが可能である。理由に関しては、実施例1に記載した理由と同じである。
本発明は、基板及び窒化物半導体発光素子とそれらの製造時において、ウェハー面内の特性の均一化を図り歩留まりを向上させる基板及び窒化物半導体発光素子を提供することを目的とする。また、窒化物半導体層に内在する歪みを開放させて、クラックの発生を防止することを目的とする。
10 基板
11 欠陥集中領域
12 低欠陥領域
13 窒化物半導体層
14 掘り込み領域
15 リッジ部

Claims (10)

  1. 欠陥集中領域と、欠陥集中領域を除いた領域である低欠陥領域とを有する基板であって、
    前記低欠陥領域のみに、該低欠陥領域の表面よりも掘り込まれた掘り込み領域が前記欠陥集中領域の片側に形成されていることを特徴とする基板。
  2. 前記掘り込み領域の端から前記欠陥集中領域の端までの距離が5μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の基板。
  3. 前記基板が窒化ガリウムからなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基板。
  4. 前記欠陥集中領域が線状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の基板。
  5. 請求項4に記載の基板であって、線状の前記欠陥集中領域が[1−100]方向に伸びていることを特徴とする基板。
  6. 前記欠陥集中領域が点状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の基板。
  7. 前記掘り込み領域の掘り込み深さが0.5μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の基板。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の基板と、該基板上に積層された窒化物半導体層とを備えたことを特徴とする窒化物半導体発光素子。
  9. 前記窒化物半導体層がレーザ光導波領域であるリッジ部を有し、該リッジ部は、前記掘り込み領域の端から5μm以上離れて形成されていることを特徴とする請求項8に記載の窒化物半導体発光素子。
  10. 前記基板の下面にn型電極が形成され、前記窒化物半導体層の上面にp型電極が形成されていることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の窒化物半導体発光素子。
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