JP2008251893A - Iii族窒化物半導体の加工方法、iii族窒化物半導体発光素子の製造方法、iii族窒化物半導体発光素子、iii族窒化物半導体レーザ素子の製造方法およびiii族窒化物半導体レーザ素子 - Google Patents

Iii族窒化物半導体の加工方法、iii族窒化物半導体発光素子の製造方法、iii族窒化物半導体発光素子、iii族窒化物半導体レーザ素子の製造方法およびiii族窒化物半導体レーザ素子 Download PDF

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Abstract

【課題】表面にダメージを与えることなく、III族窒化物半導体を高精度にかつ高速に加工できるIII族窒化物半導体の加工方法を提供する。
【解決手段】大気圧または大気圧近傍の圧力下の塩素含有ガス雰囲気中で、被処理物である単結晶GaN基板6から離れた位置でラジカル供給部2によりプラズマを発生させてラジカルを生成する。上記基板6を、その基板6に含まれるIII族元素(Ga)の塩化物の沸点以上の温度に加熱し、同時に、プラズマ生成部(電極部81)のプラズマ中で生成されたラジカルを基板6の表面に接触させることにより、基板6の表面を加工する。
【選択図】図1

Description

この発明は、プラズマによるIII族窒化物半導体の加工方法、III族窒化物半導体発光素子の製造方法、III族窒化物半導体発光素子、III族窒化物半導体レーザ素子の製造方法およびIII族窒化物半導体レーザ素子に関するものである。
GaN、AlN、InN系III族窒化物半導体は、1.9eVから6.2eVまで広域のバンドギャップを持つため、紫外域から可視光全域をカバーする発光ダイオードやレーザダイオード等の発光素子材料として有望な半導体である。また、これらのIII族窒化物半導体はウルツ鉱型という安定な結晶構造を有し、熱伝導率も比較的高いという特徴から、通常の半導体デバイスに比較し、高温等の過酷な環境下での動作が可能であるため、トランジスタ等の電子デバイスへの応用も期待されている。
III族窒化物半導体を材料とするデバイス作製のためには、所望の組成のIII族窒化物半導体薄膜を、III族窒化物半導体バルクウェハーの表面にホモエピタキシャル成長させて作製する場合と、サファイアウェハー等の上にヘテロエピタキシャル成長させて作製する場合があり、デバイス性能の観点からは、III族窒化物半導体バルクウェハー上へのホモエピタキシャル成長であることが好ましい。このホモエピタキシャル成長のときに、III族窒化物半導体バルクウェハー表面の結晶状態がエピタキシャル成長層およびデバイス性能に大きな影響を及ぼす。したがって、III族窒化物半導体バルクウェハーを、高速かつ表面へダメージを与えることなく加工する技術の開発が必要不可欠である。すなわち、いかに結晶学的に乱れのない表面を実現するかということに集約される。
III族窒化物半導体の加工方法としては、水酸化カリウム等のアルカリ性溶液、もしくはリン酸や硫酸等の酸性溶液中で高温に加熱するという方法、いわゆるウェットエッチング法がある。この方法は化学的作用を用いた加工法であるため表面へのダメージは小さいが、III族窒化物半導体は化学的にきわめて安定であるため、エッチングレートが小さく実際のプロセスへの適用は困難である。
また、高速加工が可能な方法として、CMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械研磨)がある。CMPはIII族窒化物半導体表面に研磨液を流しながら研磨パッドを接触させ表面を加工する技術であり、表面の高速平坦化加工が可能であるのだが、化学的作用と物理的作用を組み合わせた方法であるため、純粋に物理的な作用による加工よりはダメージは小さいが、加工後のIII族窒化物半導体表面には、結晶学的にはわずかなダメージ層が残る。
また、ドライエッチング法としては、RIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)が一般的である。RIEは低圧下で塩素(Cl2)等によるプラズマを発生させ、III族窒化物半導体表面側に負のバイアスを印加することによりプラズマ中のイオンを加速し、III族窒化物半導体表面に作用させる加工法である。この方法では高速加工および平坦化が可能であるが、イオンの衝突という物理的作用を利用しているため、CMP同様、加工後のIII族窒化物半導体表面には、結晶学的にはわずかなダメージ層が残る。
一方、上記の加工方法とは異なるプラズマCVM(Chemical Vaporization Machining)という加工方法があり、特許第2521127号公報(特許文献1)には、その基本原理が記載されている。
さらに、特許第2816365号公報(特許文献2)には、より詳しい装置構成が記載されている。
また、特許第3069271号公報(特許文献3)には、高速でかつ高効率な加工を実現する方法が記載されている。プラズマCVMは、プラズマによって高密度に生成された中性ラジカルを被処理材表面に作用させ、被処理材の構成原子や分子と、中性ラジカルとの化学的な反応により化合物を生成し、それを気化させて被処理材を加工する無歪加工方法である。
本出願人は、プラズマCVMによる加工方法を用いてIII族窒化物半導体からなる基板表面の加工を行ったところ、基板の加工表面にIII族塩化物が付着して、加工の進展を阻害するため、精度の高い加工ができないという問題があることを見出した。
また、大気圧雰囲気で生成されたプラズマが基板の表面に直接接触するため、プラズマの接触した部分のみ局所的に基板表面が加熱される。基板温度はプラズマの生成状態に依存するため、プラズマ生成条件ごとに変化しやすく、加工量や加工速度を制御することが困難となり、条件出しが必要となるという課題があった。
特許第2521127号公報 特許第2816365号公報 特許第3069271号公報
そこで、この発明の課題は、表面にダメージを与えることなく、III族窒化物半導体を高精度にかつ高速に加工できるIII族窒化物半導体の加工方法を提供することにある。
また、この発明のもう1つの課題は、上記III族窒化物半導体の加工方法を用いて、発光領域を有するIII族窒化物半導体膜の歪みを抑えることができて、長寿命のIII族窒化物半導体発光素子を歩留まりよく、かつより簡便に作製することができるIII族窒化物半導体発光素子の製造方法を提供することにある。
さらに、この発明のもう1つの課題は、上記III族窒化物半導体の加工方法を用いて、端面表面近傍のマイクロクラックなどの結晶欠陥を容易に除去することができ、端面損傷に強くて信頼性が高くかつ寿命特性の良好なIII族窒化物半導体レーザ素子を作成できるIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法を提供することにある。
上記課題を達成するため、この発明のIII族窒化物半導体の加工方法は、
大気圧または大気圧近傍の圧力下の塩素含有ガス雰囲気中で、被処理物であるIII族窒化物半導体から離れた位置でプラズマを発生させてラジカルを生成するラジカル生成部を設け、
上記III族窒化物半導体を、上記III族窒化物半導体に含まれるIII族元素の塩化物の沸点以上の温度に加熱すると共に、
上記ラジカル生成部により上記プラズマ中で生成された上記ラジカルを上記III族窒化物半導体の表面に接触させることにより、上記III族窒化物半導体の表面を加工することを特徴とする。
上記構成のIII族窒化物半導体の加工方法によれば、大気圧または大気圧近傍の圧力下の塩素含有ガス雰囲気中でラジカル生成部により生成するプラズマ中の中性ラジカル(塩素活性種)をIII族窒化物半導体の表面の原子に作用させてできたIII族塩化物が気化することにより、III族窒化物半導体の表面が加工される。このとき、大気圧または大気圧近傍の圧力下の塩素含有ガス雰囲気中で発生させたプラズマを利用するため、III族窒化物半導体の加工に寄与する中性ラジカルの絶対数が多く、中性ラジカルとIII族窒化物半導体の構成原子との化学反応を増加させることができる。すなわち、III族窒化物半導体の加工速度を向上させることができる。
また、大気圧または大気圧近傍の圧力下の塩素含有ガス雰囲気中には多数の原子や分子等が存在するため、大気圧プラズマ中のイオンはIII族窒化物半導体の表面に到達する前に何らかの原子や分子と衝突し、平均自由行程は0.1μm程度となる。さらに、プラズマをIII族窒化物半導体の表面から離れた位置で発生させるため、大気圧プラズマ中のイオンが加工のときにIII族窒化物半導体の表面にダメージを与えることがない。すなわち、結晶学的に乱れのない表面が得られ、その表面に良好なエピタキシャル成長層を形成でき、デバイス性能の良好な半導体素子を実現できる。
また、上記III族窒化物半導体に含まれるIII族元素の塩化物の沸点以上にIII族窒化物半導体を加熱することによって、生成したIII族塩化物が十分に気化され、III族窒化物半導体の表面に残存せず、精度の高い加工が可能となる。したがって、より良好なエピタキシャル成長が可能な表面を有するIII族窒化物半導体を得ることができる。
さらに、プラズマをIII族窒化物半導体の表面から離れた位置で発生させて、プラズマ中で生成されたラジカルをIII族窒化物半導体の表面に対して接触させることにより、III族窒化物半導体の表面を加工することから、プラズマがIII族窒化物半導体の表面に直接接触しないため、局所的に加熱されることがなく、III族窒化物半導体の表面を所望の温度に制御してプラズマプロセスを行うことができる。それにより、加工速度や加工量の制御もより容易に行うことができる。
また、半導体プロセスにおいて低圧雰囲気を形成するために必要とされるような強度を有する反応容器や強力な排気システム等が必要でなくなり、装置コストを低減できるので、最終製品のコストダウンを図ることもできる。
また、一実施形態のIII族窒化物半導体の加工方法は、上記塩素含有ガスは、塩素ガスと希ガスとの混合ガスであることが好ましい。
また、一実施形態のIII族窒化物半導体の加工方法は、上記ラジカル生成部からの上記ラジカルを供給するラジカル供給口を、上記III族窒化物半導体の表面に対して平行方向に相対的に移動させながら、上記プラズマ中で生成されたラジカルを上記III族窒化物半導体の表面と接触させる。
上記実施形態のIII族窒化物半導体の加工方法によれば、上記ラジカル生成部からのラジカルを供給するラジカル供給口を、III族窒化物半導体の表面に対して平行方向に相対的に移動させながら、ラジカルをIII族窒化物半導体の表面と接触させることによって、III族窒化物半導体の表面が大きい場合でもIII族窒化物半導体の表面全体を加工できる。
また、一実施形態のIII族窒化物半導体の加工方法は、上記ラジカル供給口と上記III族窒化物半導体の表面との間の距離が略一定に保たれている。
上記実施形態のIII族窒化物半導体の加工方法によれば、上記ラジカル供給口とIII族窒化物半導体の表面との間の距離を略一定に保つことによって、III族窒化物半導体の表面の加工ばらつきを低減できる。
また、この発明のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法は、
少なくとも表面がIII族窒化物半導体である基板と、上記基板の表面上に積層され、発光領域を有するIII族窒化物半導体膜とを有するIII族窒化物半導体発光素子の製造方法であって、
上記III族窒化物半導体膜が積層される前、または、上記III族窒化物半導体膜の一部が形成された後に、上記のいずれか1つのIII族窒化物半導体の加工方法を用いて上記基板の表面に上記ラジカル生成部により上記プラズマ中で生成された上記ラジカルを接触させることにより凹部を形成し、
上記凹部を有する上記基板上に上記発光領域を設けることを特徴とする。
上記構成のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法によれば、上記III族窒化物半導体の加工方法を用いてIII族窒化物半導体である基板の表面に凹部を形成することによって、複数の工程を必要とせず、より簡便に基板表面上に凹部を形成することができる。この基板表面にピタキシャル成長によりIII族窒化物半導体膜を形成するとき、III族窒化物半導体膜が凹部に流れ込むため、歪みを外側に解放してクラックの発生を抑え、凹部以外の領域では、歪みが解放されて良好な結晶性のIII族窒化物半導体膜が得られる。したがって、発光領域を有するIII族窒化物半導体膜の歪みを抑えることができて、長寿命のIII族窒化物半導体発光素子を歩留まりよく、かつより簡便に作製することができる。
また、一実施形態のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法は、上記発光領域を上記基板の表面の上記凹部から外れた領域上に設ける。
上記実施形態のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法によれば、上記基板の表面の凹部から外れた領域上の歪がなくかつ結晶性の良好なIII族窒化物半導体膜に発光領域を設けることによって、III族窒化物半導体発光素子の信頼性と寿命特性が向上する。
また、一実施形態のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法は、上記凹部が上記基板の表面にストライプ状に形成される。
上記実施形態のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法によれば、上記基板の表面にストライプ状の凹部を形成することによって、その凹部に沿った両側の領域上に歪がなくかつ結晶性の良好なIII族窒化物半導体膜を形成できる。
また、一実施形態のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法は、上記凹部が上記基板の表面に網目状に形成される。
上記実施形態のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法によれば、上記基板の表面に網目状の凹部を形成することによって、その凹部に囲まれた領域上に歪がなくかつ結晶性の良好なIII族窒化物半導体膜を形成できる。
また、この発明のIII族窒化物半導体発光素子は、上記のいずれか1つのIII族窒化物半導体発光素子の製造方法により製造されたことを特徴とする。
上記構成のIII族窒化物半導体発光素子によれば、信頼性が高くかつ寿命特性の良好なIII族窒化物半導体発光素子を実現できる。
また、この発明のIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法は、
レーザ光導波路構造を有するIII族窒化物系半導体材料からなるIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法であって、
上記のいずれか1つのIII族窒化物半導体の加工方法を用いて、上記III族窒化物半導体レーザ素子の共振器端面の少なくとも一方を、上記ラジカル生成部により上記プラズマ中で生成された上記ラジカルを接触させることにより加工することを特徴とする。
上記構成のIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法によれば、上記III族窒化物半導体の加工方法を用いて、III族窒化物半導体レーザ素子の共振器端面の少なくとも一方の面を、ラジカル生成部によりプラズマ中で生成されたラジカルを接触させることにより加工することによって、共振器端面にダメージを与えることがない。これにより、共振器端面において結晶学的に乱れのない表面が得られる。したがって、III族窒化物半導体レーザ素子の共振器端面を形成するときに発生する端面表面近傍のマイクロクラックなどの結晶欠陥を容易に除去することができ、端面損傷に強くて信頼性が高くかつ寿命特性の良好なIII族窒化物半導体レーザ素子を作成できる。
また、一実施形態のIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法は、プラズマエッチングにより形成された上記共振器端面を、上記ラジカル生成部により上記プラズマ中で生成された上記ラジカルを接触させることにより加工する。
上記実施形態のIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法によれば、プラズマエッチングを用いた共振器端面の作成時に生じたマイクロクラックなどの欠陥を、プラズマ中で生成されたラジカルを接触させて加工することにより除去できる。
また、一実施形態のIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法は、結晶の劈開を用いて形成された上記共振器端面を、上記ラジカル生成部により上記プラズマ中で生成された上記ラジカルを接触させることにより加工する。
上記実施形態のIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法によれば、結晶の劈開を用いた共振器端面の作成時に生じたマイクロクラックなどの欠陥を、プラズマ中で生成されたラジカルを接触させて加工することにより除去できる。
また、この発明のIII族窒化物半導体レーザ素子は、上記のいずれか1つのIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法により製造されたことを特徴とする。
上記構成のIII族窒化物半導体レーザ素子によれば、信頼性が高くかつ寿命特性の良好なIII族窒化物半導体レーザ素子を実現できる。
以上より明らかなように、この発明のIII族窒化物半導体の加工方法によれば、表面にダメージを与えることなく、III族窒化物半導体を精度の高い高速加工が可能なIII族窒化物半導体の加工方法を実現することができる。
また、プラズマがIII族窒化物半導体の表面に直接接触しないため、局所的に加熱されることがなく、III族窒化物半導体の表面を所望の温度に制御してプラズマプロセスを行うことができ、加工速度や加工量の制御もより容易に行うことができる。
また、この発明のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法によれば、上記III族窒化物半導体の加工方法を用いて、発光領域を有するIII族窒化物半導体膜の歪みを抑えることができて、長寿命のIII族窒化物半導体発光素子を歩留まりよく、かつより簡便に作製できるIII族窒化物半導体発光素子を実現することができる。
また、この発明のIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法によれば、上記III族窒化物半導体の加工方法を用いて、III族窒化物半導体レーザ素子の共振器端面を形成するときに発生する端面表面近傍のマイクロクラックなどの結晶欠陥を容易に除去することができ、端面損傷に強いIII族窒化物半導体レーザ素子を実現することができる。
以下、この発明のIII族窒化物半導体の加工方法、III族窒化物半導体発光素子、III族窒化物半導体レーザ素子の製造方法およびIII族窒化物半導体レーザ素子を図示の実施の形態により詳細に説明する。
本発明においては、被処理物であるIII族窒化物半導体の表面から離れた位置でプラズマを生成し、プラズマ中で生成されたラジカルをIII族窒化物半導体の表面に対して接触させて処理を行う。
〔第1実施形態〕
図1はこの発明の第1実施形態のIII族窒化物半導体の大気圧プラズマ加工処理装置の模式的な側面透視図を示している。また、図2Aは図1に示す大気圧プラズマ加工処理装置の要部の断面拡大図を示しており、図2Bは上記大気圧プラズマ加工処理装置のラジカル供給部の要部の斜視図である。
図1, 図2A, 図2Bを参照にしてこの第1実施形態で使用する大気圧プラズマ加工処理装置について説明する。
この第1実施形態で使用する大気圧プラズマ加工処理装置は、反応容器1と、上記反応容器1内に一部が配置されたラジカル生成部の一例としてのラジカル供給部2と、上記電極2に一端が接続され、他端が反応容器1の上側に突出する電力供給部材3と、上記電力供給部材3の一端に一端が接続された整合器4と、上記整合器4の他端に接続された高周波電源5と、上記反応容器1内かつラジカル供給部2の下側に配置された基板ヒータ7と、上記基板ヒータ7が上側に取り付けられたXYステージ8と、上記反応容器1の上側に設けられたプロセスガスのガス供給部9と、上記ガス供給部9に一端が接続された流量制御装置10と、上記流量制御装置10の他端に接続されたガスボンベ11と、ガス排気部12とを主に有している。そして、上記XYステージ8上に、被処理物であるIII族窒化物半導体の一例としての単結晶GaN基板6を載置する。
図1に示すように、高周波電源5から出力された高周波電力は、整合器4と電力供給部材3を介して反応容器1内のラジカル供給部2内に設置されている電極部81に供給される。また、プロセスガスは、ガスボンベ11から流量制御装置10を介してガス供給部82に供給される。ここで、プロセスガスとは、プラズマの生成・維持を促進するヘリウムやアルゴンなどの希ガスや実際にエッチングなどの加工に寄与する塩素ガスなどのことを示す。上記電力供給部材3と電極部81とガス供給部82でラジカル供給部2を構成している。
上記基板ヒータ7およびXYステージ8は、金属材料からなり、それぞれが接地された状態になっている。
次に、図2Aを用いて、電極部81と、ガス供給部82と、ガス排気部83について説明する。図2Aは図1に示す大気圧プラズマ加工処理装置の要部の断面拡大図である。
上記電極部81は、電力投入電極84と、接地電極85と、絶縁体部材86と、窪み87とを有しており、窪み87がガス供給部82の内部に面した構成となっている。電力投入電極84を電気的に浮いた状態とし、接地電極85を接地した状態とし、絶縁体部材86により電力投入電極84と接地電極85とは絶縁された状態となっている。上記電極部81は、先端側がガス供給部82の通路内に露出するようにガス供給部82に取り付けられている。
電力供給部材3より高周波電力が供給されると、電力投入電極84と接地電極85の間で電界が形成される構造となっている。また、絶縁体部材86の一部(ガス供給部82の通路側)に窪み87を形成することにより、窪み87内で電界を集中させることにより、プラズマ放電開始時に必要な高周波電力の電圧を下げることを可能とし、プラズマが形成されやすくなる。そして、ガス供給部82から供給されるプロセスガスを励起し、ガス供給部82内部でプラズマ88が生成される。
このように構成された大気圧プラズマ加工処理装置において、プラズマプロセスを以下のようにして行う。
まず、図1に示すように、基板6を基板ヒーター7の所定の位置に載置した後、反応容器1内を、ガス排気部12を介して図示しない排気ポンプにより真空排気する。一度、反応容器1内を真空排気することにより、加工処理を行うときの反応容器1内の状況の再現性を向上させることができ、プラズマプロセスを安定して行うことができる。
次に、プロセスガスの供給を行う。ガスボンベ11から供給されたプロセスガスは、流量制御装置10により所定の混合比に設定された状態で、ガス供給部9により反応容器1内に大気圧近傍の圧力まで導入される。次に、プラズマプロセスを行う時間中、ガス供給部82からある一定の流量でプロセスガスを供給し、同時に反応容器1内の圧力が一定となるように、ガス排気部83からガスの排気を行う。
その後、高周波電源5より整合器4及び電力供給部材3を介して、高周波電力を電極部81に供給する。
そうすることにより、図2Aに示す電極部81の電力投入電極84と接地電極85との間で電界が形成され、ガス供給部82に供給されたプラズマプロセスガスを励起し、ガス供給部82内部でプラズマ88が形成される。プラズマ88内で生成されたラジカルは、ガス供給部82内に供給されるプロセスガスの流れにより、ラジカル供給口89より図中の矢印Aのように基板6表面に供給され、ラジカルが基板6に接触することによりプラズマプロセスが行われる。また、ラジカルと基板6が反応することにより生じる反応生成物を含んだガスを、図中の矢印Bのようにガス排気部83から排気する。
上記に示した大気圧プラズマ加工処理装置及びプロセスを用いて、単結晶GaN基板の加工量と基板加熱温度について検討を行った。
この第1実施形態においては、図2Bに示すように、ラジカル供給口89の形状が、1mm×70mmのスリットが開いたラジカル供給部2を有する大気圧プラズマ加工処理装置を使用した。供給する高周波の周波数を150MHz、投入電力を240W、基板6表面とラジカル供給口89の間隔を0.5mmと設定し、He=98%、Cl2=2%の条件下でプラズマを生成した。ガス供給部2から供給されるプロセスガスの流量は80sccmとした。XYステージ8の搬送スピードを10mm/min、搬送回数を4回と設定し、図2Aに示すようにラジカル供給部2に対して、図中の矢印Cの方向に基板6を相対的に移動させてプロセスを行った。
そして、基板ヒーター7により基板6を150℃に加熱した状態で、ラジカル供給部2から基板6表面に対してラジカルを供給し、基板6を加工した。同様に、190℃、230℃、340℃に加熱した状態で加工を実施した。
ここで、上記ラジカル供給部2のラジカル供給口89と基板6の表面との間の距離を略一定に保つことによって、基板6の表面の加工ばらつきを低減できる。
図3は、第1実施形態における単結晶GaN基板の加工量と加熱温度との関係を示している。図3に示すように、150℃、190℃の場合は、他に比べて加工量が非常に小さい。これは、Ga塩化物の沸点が200℃であるため、生成したGa塩化物が完全には気化せずに、単結晶GaN基板の表面に残存し、加工を阻害しているためと考えられる。250℃に加熱した場合と、340℃に加熱した場合とを比較すると、加工量に大きな差がなく、250℃の加熱によって、生成したGa塩化物が十分に気化している。
このことを裏付けるために、230℃に加熱して加工した単結晶GaN基板の加工後の表面をエネルギー分散型X線分析装置(EDAX:Energy Dispersive Analysis of X-ray)により組成分析を行った結果を図4A,図4Bに示している。図4A,図4Bにおいて、横軸はX線エネルギー[keV]を表し、縦軸は強度[任意目盛]を表している。
図4Aからは、GaのピークとNのピークによりGa,Nの存在を確認することができる。また、図4Bは、図4Aの点線で囲む領域を拡大したもので、Clが存在すればピークが観察されるエネルギー領域を拡大したものである。図4Bにおいて、ピークが観察されず、Clは検出されなかった。また、この組成分析において、加工前後でGaとNの組成比に変化がないことも確認できた。
さらに、カソードルミネッセンス(CL)法にて、加工前後のバンド端発光強度を比較した測定結果を図5に示している。図5において、横軸は波長[nm]を表し、縦軸はバンド端発光強度[任意目盛]を表し、点線がエッチング前のバンド端発光強度を示し、実線がエッチング後のバンド端発光強度を示している。
図5から明らかなように、波長364nmのバンド端発光強度が、加工後は大きく増加していた。表面全域において同様の傾向であり、ダメージのない精度の高い加工表面が実現されていることを確認できた。
なお、この発明において用いられる塩素含有ガスは、塩素ガスと希ガスとの混合ガスが好ましく、希ガスとしては、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガスまたはキセノンガスのいずれか1種または複数種を用いることができる。
また、反応容器1の内部の圧力は、特に大気圧において最もその効果を発揮するものであるが、この発明においては100Torr〜2気圧を好適な圧力範囲とし、適用可能な圧力範囲としては例えば10Torr〜5気圧が挙げられる。
また、III族窒化物半導体として、GaN、AlN、InNの他に、AlGaNやAlGaInN等の3元混晶や4元混晶も含まれる。
上記III族窒化物半導体の加工方法によれば、表面にダメージを与えることなく、III族窒化物半導体である基板6を精度の高い高速加工が可能なIII族窒化物半導体の加工方法を実現することができる。
また、プラズマがIII族窒化物半導体である基板6の表面に直接接触しないため、局所的に加熱されることがなく、基板6の表面を所望の温度に制御してプラズマプロセスを行うことができ、加工速度や加工量の制御もより容易に行うことができる。
上記ラジカル供給部2からのラジカルを供給するラジカル供給口89を、基板6の表面に対して平行方向に相対的に移動させながら、ラジカルを基板6の表面と接触させることによって、基板6の表面が大きい場合でも基板6の表面全体を加工できる。
〔第2実施形態〕
次に、この発明のIII族窒化物半導体の加工方法を用いたIII族窒化物半導体発光素子の製造方法の第2実施形態について説明する前に、その背景について詳細を説明する。
GaN、AlN、InNおよびそれらの混晶に代表されるIII族窒化物半導体材料により、紫外線領域から可視光領域で発振する半導体レーザ素子が試作されている。この半導体レーザ素子の基板には、GaN基板が用いられることが多く、各研究機関において精力的に研究されている。ただし、現在のところ半導体レーザ素子の寿命は十分ではなく、更なる長寿命化が必要とされる。この半導体レーザ素子の寿命は、GaN基板にもともと存在する欠陥(結晶の規則性を乱す空孔、格子間原子、転位等)の密度に強く依存することが知られている。しかし、長寿命化に効果があると言われる欠陥密度が低い基板は得られにくく、欠陥密度の低減に向けて盛んに研究がなされている。
一例として、GaN基板の製造に、次の方法を用いることが、「Applied Physics Letter. Vol.73 No.6 (1998) pp.832-834」に報告されている。すなわち、サファイア基板上にGaN層を成長し、そのGaN層上に0.1μmの膜厚の周期的なストライプ状の開口部をもつSiO2マスクパターンを形成し、再びMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属気相成長)法により、20μm厚のGaN層を形成して、ウェハーを得る。これは、ELOG(Epitaxially Lateral Over Grown)と呼ばれる技術であり、ラテラル成長の利用により、欠陥を低減する手法である。
さらに、HVPE法(Hydride Vapor Phase Epitaxy)により200μm厚のGaN層を形成し、下地であるサファイア基板を除去することで150μm厚のGaN基板を製造する。次に、得られたGaN基板の表面を平坦に研磨する。この様にして得られた基板では、欠陥密度が106cm-2以下と低いことが知られている。
しかし、上記の方法で得られた基板のように低欠陥な基板上に、発光領域を有するIII族窒化物半導体膜をMOCVD等の成長方法で成長して半導体レーザ素子を作製した場合においても、実用化に十分な寿命が得られないことが分かった。この原因に対して本発明者が鋭意研究を重ねた結果、III族窒化物半導体膜に内包される歪みおよびクラックが半導体レーザ素子の劣化および歩留まりに大きな影響を与えていることが判明した。例え、III族窒化物半導体膜とホモエピタキシャルとなるGaN基板を用いたとしても、成長されるIII族窒化物半導体膜には、GaNと格子定数や熱膨張係数が異なるInGaN、AlGaNなどの層が含まれる。これらGaNとは異なる層の存在により、活性層のInGaNなどは圧縮応力を受けることになる。膜内部に内包されるこれらの歪みのために、半導体レーザ素子の劣化が加速されることが分かった。
また、III族窒化物半導体膜にクラックが多数発生し、歩留まりが悪くなるという問題があるが、クラックの発生にも膜内部に内包される歪みが大きく影響している。
この点を詳細に説明する。III族窒化物半導体膜からなるレーザ構造をIII族窒化物半導体基板上にエピタキシャル成長した場合、クラックが多数(例えば、1mm幅内に数本以上)発生し、所要の特性のデバイスが得られる歩留まりが極めて低くなるという問題がある。得られたデバイス内にクラックが発生していると、レーザ発振が得られない。または、レーザ発振が起こるにしても、そのデバイスの寿命が極めて短く、とても実用に耐えられるものではない。このようなクラックの発生は、Alを含む層を設けたデバイス構造において顕著であって、III族窒化物系半導体レーザ素子においては通常このような層が存在するので、クラックの発生を低減することは非常に重要であった。
このようなクラックの発生を低減するために、特開2005−64469号公報では、次のような技術が開示されている。
少なくとも表面がIII族窒化物半導体である基板と、基板の表面上に積層されストライプ状のレーザ光導波路構造を有するIII族窒化物半導体膜より成るIII族窒化物半導体レーザ素子において、基板の表面が、欠陥密度が106cm-2以下の低欠陥領域と凹部とを有し、III族窒化物半導体膜のレーザ光導波路構造が、基板の表面の凹部から外れた低欠陥領域の上方に位置する構成とする。
上記のように、基板表面に凹部を形成することにより、III族窒化物半導体膜を成長させるとき、基板の凹部上については様々な方向から成長が進んで成長の会合部に欠陥が生じる一方で、凹部以外の部位では規則正しく成長が進行して、欠陥を伴う成長の会合が抑えられる。また、凹部から外れた低欠陥領域の上方は、基板の欠陥に由来する欠陥が少ない上、新たに生じる欠陥も抑えられることになり、歪みが生じ難い。III族窒化物半導体膜のレーザ光導波路構造が、このように歪みのない部位に存在することで、長寿命の素子となる。また、例えクラックが発生したとしても、その位置はレーザ光導波路構造から離れた位置に限られるため、歩留まりも向上する。
しかし、上記特開2005−64469号公報では、III族窒化物半導体基板表面に凹部を形成するとき、図15に示すような次の工程を必要としていた。
まず、III族窒化物半導体基板としてのGaN基板上にSiO2等を膜厚1μmでスパッタ蒸着を行う(ステップS1)。その後、一般的なフォトリソグラフィ工程により、レジストで [1−100]方向にストライプのウィンドウを形成する(ステップS2,S3)。その後、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合高周波プラズマ)またはRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)により、SiO2およびIII族窒化物半導体基板をエッチングする(ステップS4)。その後、HFなどのエッチャントによりSiO2を除去する(ステップS5)。以上の工程を経て、III族窒化物半導体基板表面にストライプ状に凹部を形成している。
このように、上記特開2005−64469号公報では、III族窒化物半導体基板表面に凹部を形成するために、複数の工程が必要であり、大きなコストと時間を要していた。
この発明のIII族窒化物半導体の加工方法を用いたIII族窒化物半導体発光素子の製造方法は、欠陥密度が低い基板を用いたIII族窒化物半導体レーザ素子等のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法であって、III族窒化物半導体膜に内包される歪みが少なく、長寿命のものを、より簡便にかつ高い歩留まりで提供する。
以下、この発明の第2実施形態のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法について図面を参照しながら説明する。なお、結晶の面や方位を示す指数が負の場合、絶対値の上に横線を付して表記するのが結晶学の決まりであるが、本明細書では、そのような表記ができないため、絶対値の前に負号「−」を付して負の指数を表す。
この第2実施形態のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法におけるIII族窒化物半導体基板は、基板全面において、ほぼ106cm-2以下の低欠陥密度の基板とする。なお、低欠陥密度の基板とは、基板面内全域において低欠陥領域が存在する基板だけでなく、基板面内の一部に低欠陥密度の領域を含む基板をさす。低欠陥領域はどのように分布してもよいが、低欠陥領域を含むように半導体レーザ素子のレーザストライプを作りこむ必要がある。
次に、上記基板の表面に対して、ストライプ状に凹部を形成する。
ここで、この第2実施形態においては、大気圧または大気圧近傍の圧力下でプラズマを生成し、プラズマ中のラジカルを基板の表面に接触させることにより、上記凹部を形成する。以下、図6を参照にしてこの発明のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法について説明する。
使用する大気圧プラズマ加工処理装置は、第1実施形態に示す大気圧プラズマ加工処理装置と同様であり、ラジカル供給口の形状が異なるラジカル供給部を有する大気圧プラズマ加工処理装置を使用した。その他の装置構成は第1実施形態と同一であり、図1,図2Aを援用する。また、プロセスの手順も同じである。
なお、この第2実施形態では、ハロゲンガスとして塩素ガスを用い、被処理物の基板として窒化ガリウム基板を用いて、基板表面をエッチング加工する処理を例として説明する。
この第2実施形態においては、図6に示すようにラジカル供給口189の形状が、0.1mmΦの穴が開いたラジカル供給部102を有する大気圧プラズマ加工処理装置を使用した。供給する高周波の周波数を150MHz、投入電力を240W、基板の表面とラジカル供給口189の間隔を0.2mmと設定し、He=98%、Cl2=2%の条件下でプラズマを生成した。ガス供給部82から供給されるプロセスガスの流量は120sccmとした。また、基板温度は、ガリウムと塩素の化合物であるGaCl3の沸点以上となる230℃と設定した。XYステージ8の搬送スピードを10mm/min、搬送回数を1回と設定し、図6に示すようにラジカル供給部102に対して、図中の矢印Cの方向に基板のを相対的に移動させてプロセスを行う。
このような条件で加工を行った結果、基板の表面上にフォトリソグラフィ工程を経て作成した場合とほぼ同形状のストライプ状の凹部を形成することができた。このように、基板のを移動させてストライプ状の凹部を形成する方法を用いると、ラジカルの生成条件を変更することなく、基板のの搬送速度や搬送回数を変更するだけで、加工量を制御することができる。
以上のように、この発明によるIII族窒化物半導体発光素子の製造方法を用いることにより、従来の製造方法と比べて、複数の工程を必要とせず、より簡便に基板表面上に凹部を形成することができる。
また、この発明を用いることにより、以下のような効果も得ることができる。
この発明によるIII族窒化物半導体発光素子の製造方法においては、大気圧近傍の圧力下でプラズマを生成する。大気圧近傍の圧力下でプラズマを生成することにより、低圧雰囲気でプラズマを生成した場合と比較して、莫大な量のラジカルを効率的に生成することができる。また、電気的に中性なラジカル(塩素活性種)が基板の表面に達することにより、基板の表面の加工が進行するが、この際、化学的な反応のみを起こす。よって、基板の表面に対する物理的な損傷を抑制することができる。また、プラズマを基板の表面から離れた位置で生成することにより、基板の表面が局所的に加熱されることがなくなるので、基板のの加熱温度を所望の状態で制御しやすくなり、その結果、加工速度や加工量の制御をより容易に行うことができる。
また、従来例のように、SiO2膜を基板表面に形成する必要がないので、III族窒化物半導体発光素子に対する異種材料の混入を防ぐことができる。また、ストライプ状の凹部を形成するために、SiO2およびGaN基板をエッチングするとき、RIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)を用いた場合、基板に対してイオンの衝突が発生するので、物理的な損傷が発生する恐れがある。これに対して、この発明を用いた場合は、上記のように基板に対する物理的な損傷を抑制することができる。また、従来のように工程数が多い場合、使用する装置の数が増加し、各々の装置の経時的な変化が発生すると、プロセスの再現性が低下する可能性があった。しかし、この発明を用いた場合、1工程のみの加工プロセスなので、再現性良く行うことができる。
ここで、ラジカル供給口189の形状については、図6に示すような形状のものと限らない。図2Bと同様に帯状にスリットが開いた形状のものでもよい。この場合、基板を走査することなく、ストライプ状の凹部を形成することが可能である。また、このような帯状のスリットが開いたラジカル供給口を複数並列に配置されたラジカル供給部としても良い。
なお、この第2実施形態において、ヘリウムガスと塩素ガスとの混合ガスを使用したが、必ずしもこれに限らない。ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガスまたはキセノンガスのいずれか1種または複数種を用いることができる。
また、この第2実施形態において、反応容器1の内部の圧力は、特に大気圧において最もその効果を発揮するものであるが、100Torr〜2気圧を好適な圧力範囲とし、適用可能な圧力範囲としては例えば10Torr〜5気圧が挙げられる。
また、この第2実施形態においてIII族窒化物半導体基板としてGaNを用いたが、AlNやInNでも適用することができる。
次に、この第2実施形態のIII族窒化物半導体の加工方法を用いたIII族窒化物半導体発光素子の製造方法により、表面にストライプ状の凹部を形成した基板を用いてIII族窒化物半導体発光素子を形成した場合の効果について説明する。
図7(a)に、この第2実施形態のIII族窒化物半導体の加工方法を用いたIII族窒化物半導体発光素子の製造方法を用いて得られた基板を示す。150はGaN基板、151は表面平坦部、152は大気圧プラズマでエッチングした掘り込み領域である。以下、GaN基板150のうち、エッチングによって除去されて凹部となった部分を掘り込み領域152と呼ぶ。この掘り込み領域152の作製は、低欠陥領域を含むGaN基板上に、一度GaN、InGaN、AlGaN、InAlGaN等の薄膜を成長し、その後に行っても構わない。つまり、一度成長を行い、次に掘り込み領域を形成して、III族窒化物半導体膜を成長した場合であっても、この発明に含まれる。
このGaN基板150上に、図8に示す発光領域を有するIII族窒化物半導体膜を成長させて、図7(b)に示すような第2実施形態のIII族窒化物半導体レーザ素子を得る。図7(b)は、半導体レーザ素子の断面図であり、光出射方向から見た図である。
ここで、150はn型GaN基板であり、この基板150中には低欠陥領域が存在している。
図8に示すIII族窒化物半導体膜は、n型GaN層(1.0μm)160上にn型Al0.062Ga0.938N第一クラッド層(1.5μm)161、n型Al0.1Ga0.9N第二クラッド層(0.2μm)162、n型Al0.062Ga0.938N第三クラッド層(0.1μm)163、n型GaNガイド層(0.1μm)164、InGaN/GaN−3MQW活性層(InGaN/GaN=4nm/8nm)165、p型Al0.3Ga0.7N蒸発防止層(20nm)166、p型GaNガイド層(0.05μm)167、p型Al0.062Ga0.938Nクラッド層(0.5μm)168、p型GaNコンタクト層169(0.1μm)が順番に積層されている。
この図8のIII族窒化物半導体膜と同じ構成のIII族窒化物半導体膜(エピタキシャル成長層)153が基板150上に形成されている。また、III族窒化物半導体膜153上面には、レーザ光導波路構造であるレーザストライプ154が作製されている。このレーザストライプ154は、基板150に含まれる低欠陥領域上に位置するように形成される必要がある。この第2実施形態で用いている基板は、基板全面で低欠陥領域であるため、どこにレーザストライプを形成してもよいが、掘り込み領域上には、レーザストライプを形成してはいけない。その理由に関しては後述する。
III族窒化物半導体膜153の上面には、電流狭窄を目的とした電流狭窄用SiO2膜155が形成されており、その電流狭窄用SiO2膜155の上面にはp型電極156が形成されている。また、基板50下面には、n型電極157が形成されている。III族窒化物半導体膜153のうちの掘り込み領域152上に位置する部位の上面は、掘り込み領域152の影響を受けて凹部となっている。
上記掘り込み領域152上の部位の上面が凹部となるか否かは、III族窒化物半導体膜の厚さによる。なお、III族窒化物半導体膜の厚さが大きくなると、掘り込み領域152上の部位の上面の平坦性が上がるが、この発明のIII族窒化物半導体の加工方法を用いたIII族窒化物半導体発光素子の製造方法においては、掘り込み領域の上部が凹部となっているか平坦であるかは問題ではない。
図7(b)において、レーザストライプ154の中央部と掘り込み領域152の端との距離をdで表すとき、d=40μmとした。この第2実施形態では、全面においてクラックが全くない窒化物半導体膜153が得られた。
そして、ウェハーを分割してIII族窒化物半導体レーザ素子とするには、一般の素子化プロセスを採用することができる。この素子化プロセスについては説明を省略する。チップ分割後のIII族窒化物半導体レーザ素子内には、クラックは認められなかった。そのため、III族窒化物半導体レーザ素子の発振特性が安定し、この第2実施形態のIII族窒化物半導体レーザ素子の所定の発振特性(光出力が30mWの時の駆動電流Iopが70mA以下である)が得られる歩留まりは90%を超えた。
このようにして素子化されたIII族窒化物半導体レーザ素子の寿命試験を、APC(Automatic Power Control)駆動で60℃、出力30mWの条件下で行った。寿命試験における各素子の発光波長は405±5nmであった。各ウェハーから、所定の初期特性を満足した素子を無作為に50素子取り出し、III族窒化物半導体レーザ素子の寿命が3000時間を越えた数を歩留まりとして調べた。このとき、この第2実施形態のIII族窒化物半導体レーザ素子の歩留まりは85%を超えた。
ここで、掘り込み領域上部に、レーザストライプを形成してはいけない理由について説明する。
III族窒化物半導体膜のエピタキシャル成長工程において、掘り込み領域上部は、掘り込まれていない両脇部分から横方向に膜の成長が起こり、掘り込み領域の凹部に流れ込みが生じる。このとき両脇から押されるため、掘り込み領域上部は、掘り込まれていない領域に比べ大きな歪みを内包することになると考えられる。また、掘り込み領域は両側が壁になっているために、両側に広がろうとする成長を壁によって妨げられて歪みを内包することになる。掘り込み領域の成長は複雑で、色々な方向からの成長(掘り込み領域の底面からの通常の成長、掘り込み領域の側面からの成長、掘り込まれていない領域からの流れ込み成長など)が起こるため、歪み量が掘り込み領域内でも異なるばかりでなく、歪む方向も場所によって異なってくるため、再現性に乏しく安定しない。このことが、掘り込み領域上にレーザストライプを作製したときの歩留まりを落とす原因であると考えられる。
また、III族窒化物半導体膜のエピタキシャル成長工程において、色々な方向からの成長が起こるため、各成長の会合部には、転位や欠陥等が多く発生する。したがって、掘り込み領域上にレーザストライプを作製すると、この転位や欠陥等により劣化が促進されることになって、長寿命化ができない。
一方、掘り込まれていない領域は、III族窒化物半導体膜のエピタキシャル成長に際して掘り込み領域に流れ込むため、歪みを外側に解放することができる。この歪みの解放がクラックの発生を抑えると同時に、掘り込まれていない領域の歪みを解放する。この歪みの解放は非常に再現性良く安定して生じる。また、掘り込み領域上とは異なり、色々な方向からの成長がないため、転位、欠陥等も少なく良好な結晶性の膜となる。これらの理由で、掘り込まれていない領域上にレーザストライプを作製すると、III族窒化物半導体レーザ素子の信頼性が向上し、寿命特性も向上したものと考えられる。
この第2実施形態では、掘り込み領域152を作製し、掘り込み領域152の上部以外の表面平坦部151にレーザストライプ154を作りこむことにより、LD素子特性の信頼性を格段に向上させ、クラックの発生を抑え、歩留まりを飛躍的に改善することができた。
ここで、III族窒化物半導体レーザ素子のレーザストライプ154は、掘り込み領域152の影響によるばらつき(歪みと平坦性)を抑えるために、掘り込み領域152からある程度の距離、最低でも5μm以上離す必要がある(30μm以上離したほうが望ましい)。掘り込み領域152から5μm未満の位置では、基板からの欠陥の伝搬を横方向成長によって抑制するような効果は得られない。
この発明のIII族窒化物半導体の加工方法を用いたIII族窒化物半導体発光素子の製造方法において、基板に設ける掘り込み領域152は、いわゆるラテラル(横方向)成長技術(例えばELOG技術など)の効果により、基板から結晶成長膜に伸びる欠陥の密度を低減する目的で基板に溝を設ける技術とは、全く異なっている。欠陥密度を低減する目的の場合、横方向成長による効果を得るために、溝の間隔は、通常形成させられる層の膜厚程度以下であり、最大限の間隔を広げたとしても、その3倍程度以下である。この構造では、上記に示したような溝に平行な方向に層厚が均一になるという領域が得がたいため、レーザストライプを形成したときに、ストライプ方向に変化した均一でない膜厚分布になってしまい好ましくない。
一方、この発明のIII族窒化物半導体の加工方法を用いたIII族窒化物半導体発光素子の製造方法における掘り込み領域152は、このような基板から結晶成長膜に伸びる欠陥の密度を低減する目的で設けられたものではなく、レーザストライプ位置における平坦度をある程度保持し、かつ、クラックを有効に防止する目的で設けるものである。その間隔は、半導体レーザ素子の幅程度のオーダであって、最小限で、50μm程度になる。好ましくは100μm以上離したほうが良い。
ここで、掘り込み領域のパターンとしては、図9(a)に示すように、2本の掘り込み領域172がある間隔で並んでいる場合であっても良いし、図9(b)〜図9(d)に示すように、掘り込み領域172の本数が2本以上であっても、また異なる周期が、混在していてもよく、また、1本と2本の掘り込み領域172のパターンが混在しているなど、様々な場合が考えられるが、表面平坦部171と掘り込み領域172との周期が、III族窒化物半導体レーザ素子の幅程度のオーダである50μm以上あればよい。
また、掘り込み領域の方向に関して、図7において[1−100]方向に平行に掘り込み領域を形成しているが、例えば[11−20]方向に平行に掘り込み領域を形成しても良いし、この発明の効果は基本的に掘り込む方向には依存しないため、どの方向に形成してもよい。
また、使用する基板には、欠陥密度の高い領域があっても良いが、エピタキシャル成長するときに、表面モフォロジーの悪化を引き起こすことがあるため、無い方が好ましい。
さらに、ここでは、III族窒化物半導体発光素子の一例として半導体レーザ素子に関して詳細に記述したが、この発明のIII族窒化物半導体の加工方法を用いたIII族窒化物半導体発光素子の製造方法は、これに限定したものではなく、発光ダイオード(LED(Light Emitting Diode))、FET(Field Effect Transistor)などの電子デバイスを、この第2実施形態で示した基板上に作製した場合においても、上述した内容と同様の議論により、III族窒化物半導体膜に内包される歪みおよびクラックを大幅に低減して、歩留まりを向上させることができる。LEDなどでは、膜に内包される歪みにより、発光パターンにムラを生じる、発光強度の低下など問題が指摘されている。
このようなデバイスの場合、図10A,図10Bに示すように、凹部の一例としての掘り込み領域181を、ストライプ状に作成し、網目状に縦横に掘り込んでも良い。図10A,図10Bにおいて、182はn型GaN基板、183はp型電極、184はn型電極、185はIII族窒化物半導体膜である。図10A,図10Bのような構造でLEDを作成した場合においても、III族窒化物半導体膜に内包される歪みを低減し、発光パターンのムラを抑え、クラックを0本に抑え込むことができた。
また、半導体レーザ素子と同様、掘り込まれていない領域上に発光ダイオード(LED)などの電子デバイスを作製することが、信頼性が向上し、寿命特性も向上することから好ましい。
上記III族窒化物半導体発光素子の製造方法によれば、III族窒化物半導体である基板の表面にピタキシャル成長によりIII族窒化物半導体膜を形成するとき、III族窒化物半導体膜が凹部に流れ込むため、歪みを外側に解放してクラックの発生を抑え、凹部以外の領域では、歪みが解放されて良好な結晶性のIII族窒化物半導体膜が得られる。したがって、発光領域を有する窒化物半導体膜の歪みを抑えることができて、長寿命のIII族窒化物半導体発光素子を歩留まりよく、かつより簡便に作製することができる。
また、上記基板の表面の凹部から外れた領域上の歪がなくかつ結晶性の良好なIII族窒化物半導体膜に発光領域を設けることによって、III族窒化物半導体発光素子の信頼性と寿命特性が向上する。
また、上記基板の表面にストライプ状の凹部を形成することによって、その凹部に沿った両側の領域上に歪がなくかつ結晶性の良好なIII族窒化物半導体膜を形成できる。
また、図10A,図10Bに示すように、基板の表面に網目状の凹部(掘り込み領域181)を形成することによって、その凹部に囲まれた領域上に歪がなくかつ結晶性の良好なIII族窒化物半導体膜を形成できる。
〔第3実施形態〕
次に、この発明のIII族窒化物半導体の加工方法を用いたIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法およびそれを用いて製造されたIII族窒化物半導体レーザ素子の第3実施形態について説明する前に、その背景について詳細を説明する。
GaN、AlN、InNおよびそれらの混晶に代表される半導体材料から成るIII−V族化合物半導体は、高温等の過酷な環境下での動作が可能であるため、トランジスタ等の電子デバイスへの応用も期待されており、特に青色より短波長の光を発する半導体レーザ素子は光記録ディスク用の光源として期待されており、今後も光出力のさらなる増大が期待されている。
このような半導体レーザ素子において、光出力が増大するにつれて問題となるのが、レーザ共振器端面に発生する損傷である。この損傷は、一般的な光学素子でも起こる現象であるが、半導体レーザ素子の場合では、特にCOD(Catastrophic Optical Damage:光学損傷)と呼ばれ、GaAsあるいはInP系の赤外・赤色レーザにおいても観測されている現象である。この損傷は、光出力端面がレーザ光を吸収して局所的に温度が上昇し、溶融するために生じる損傷であり、ファブリペロー共振器の端面が損傷により反射鏡の役目を果たさなくなるため、レーザ発振が止まってしまうという、半導体レーザ素子にとっては致命的な損傷である。
特に、III族窒化物半導体を用いた半導体レーザ素子では、強固でしかも、六方晶系の結晶構造を持つという理由から、劈開による共振器端面の形成がGaAsやInP系といった正方晶系の半導体を用いた発光素子と比較して大変困難である。そのために、劈開後の端面にも多くの微細な結晶欠陥(マイクロクラック)が存在し、これも端面損傷(COD)を引き起こす原因の一つであると考えられる。
特開2004−260058号公報では、劈開もしくは誘導結合プラズマエッチングにより形成されたIII族窒化物半導体素子の少なくとも一方の端面に低エネルギーのイオンビームエッチングを行い、劈開もしくはエッチングの際に形成される端面のマイクロクラックを除去するという技術が開示されている。
しかし、この方法ではプラズマ中で発生したイオンを電圧で加速させ、イオンを被処理物表面に衝突させて加工を行うため、加速電圧を十分に低くしたとしても、その加工の機構から物理的なダメージが基板表面に発生すると考えられる。
この発明のIII族窒化物半導体の加工方法を用いたIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法は、容易に高出力で長寿命なIII族窒化物半導体レーザ素子を提供する。
以下、この発明の第3実施形態について図面を参照しながら説明する。
第3実施形態においては、大気圧または大気圧近傍の圧力下でプラズマを発生させてラジカルを生成し、そのラジカルをIII族窒化物半導体レーザ素子の共振器端面に接触させて処理を行う。
使用する大気圧プラズマ加工処理装置は、第1,第2実施形態に示す大気圧プラズマ加工処理装置と同様であり、ラジカル供給口の形状が異なるラジカル供給部を有する大気圧プラズマ加工処理装置を使用した。その他の装置構成は、第1,第2実施形態と同一であり、また、プロセスの手順も同じである。なお、この第3実施形態では、ハロゲンガスとして塩素ガスを用い、被処理物の基板として窒化ガリウム基板を用いて、基板表面をエッチング加工する処理を例として説明する。
次に、この第3実施形態における被処理物206について、図11,図12を参照にして説明する。
図11は第3実施形態のIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法によって製造されるIII族窒化物半導体レーザ素子の構成を示す断面図であり、光出射方向から見た図である。230はGaN基板であり、そのGaN基板230上には、図12に示すIII族窒化物半導体膜と同じ構成のIII族窒化物半導体膜(エピタキシャル成長層)231が形成されている。また、III族窒化物半導体膜231上面には、レーザ光導波路構造であるレーザストライプ232が作製されている。III族窒化物半導体膜231の上面には電流狭窄用SiO2233が形成されており、その電流狭窄用SiO2233上面にはp型電極234が形成されている。また、GaN基板230下面には、n型電極235が形成されている。
次に、III族窒化物半導体膜(エピタキシャル成長層)の構造について図12を用いて説明する。図12に示すように、n型GaN層(1.0μm)240上にn型Al0.062Ga0.938N第一クラッド層(1.5μm)241、n型Al0.1Ga0.9N第二クラッド層(0.2μm)242、n型Al0.062Ga0.938N第三クラッド層(0.1μm)243、n型GaNガイド層(0.1μm)244、InGaN/GaN−3MQW活性層(InGaN/GaN=4nm/8nm)245、p型Al0.3Ga0.7N蒸発防止層(20nm)246、p型GaNガイド層(0.05μm)247、p型Al0.062Ga0.938Nクラッド層(0.5μm)248、p型GaNコンタクト層249(0.1μm)が順番に積層されている。
このような構造を有するIII族窒化物半導体膜231、レーザストライプ232、電流狭窄用SiO2233、p型電極234、n型電極235は、直径1インチのGaN基板全面に対して形成される。
ここで、GaN基板全面に対して、上記の構造を形成した物体を積層体250と呼ぶことにする。
図13(a)〜(d)はこの第3実施形態のIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法を工程順に示した構造断面図である。
まず、積層体250に対して、GaN結晶の[1−100]方向と平行にストライプを形成するためと、所望の共振器長となるようGaN結晶の[1−100]方向と垂直な方向に共振器端面を形成するため、および、レジストパターン251を形成する(図13(a))。レジストを塗布した積層体250上にGaN結晶の[1−100]方向と平行な方向と垂直な方向にストライプが切ってある。レーザ共振器に沿った間隔は100〜500μmとし、レーザ共振器長を決める共振器端面に沿った間隔は600〜800μmとした。なお、ここで述べている使用基板、窒化物系半導体の構成および膜厚、レジストパターンの間隔、共振器長、その他積層体250の構成は一例であり、この発明の適用範囲を限定するものではない。
その後、低圧雰囲気下で行うICPプラズマエッチング装置を用いてn型GaN層240(図12に示す)までエッチングを行うことにより、溝252を形成する。この工程により積層体250は、レーザ共振器部分のみが格子状に残った状態となる(図13(b))。
次に、III族窒化物半導体が部分的にエッチングされた箇所である溝252に対して、レーザ出射面と平行にサファイア基板をスクライブすることによりスクライブ溝253を形成し(図13(c))、破線254に沿ってバー状に分割する(図13(d))。このバー状に分割された積層体をバー状積層体255と呼ぶことにする。
ここで、第3実施形態では、積層体250をバー状に分割する方法として、ICPプラズマエッチング法を用いた方法を示したが、必ずしもこれに限らない。高い異方性エッチングが可能であり、被処理物である共振器端面に対してダメージを与えることが抑制でき、かつ端面表面の形状が滑らかであれば、マイクロ波を利用した方式など、その他の方式のプラズマエッチング装置を用いてもよい。また、劈開により積層体250をバー状に分割して、端面を形成してもよい。
分割されたバー状積層体255は、洗浄された後、図14に示すように共振器端面が上向きになるような状態で、複数を一度にホルダー261に配置する。このホルダー261上にバー状積層体255が配置されたものが被処理物206であり、大気圧プラズマ加工処理装置に搬入される。
この大気圧プラズマ加工処理装置により、ICPプラズマエッチングや劈開により形成された端面に対して大気圧プラズマプロセスを行い、端面作成時に生じるマイクロクラックなどの欠陥を除去する。
この第3実施形態においては、図6に示すラジカル供給口189と同様の形状であり、先端部の穴径が0.3mmΦであるラジカル供給部202を有する大気圧プラズマ加工処理装置を使用した。供給する高周波の周波数を150MHz、投入電力を240W、バー状積層体255の共振器端面とラジカル供給口289の間隔を0.5mmと設定し、He=98%、Cl2=2%の条件下でプラズマを生成した。ガス供給部202から供給されるプロセスガスの流量は80sccmとした。また、被処理物206の加熱温度は、ガリウムと塩素の化合物であるGaCl3の沸点以上となる230℃と設定した。XYステージ8の搬送スピードを50mm/min、搬送回数を1回と設定し、図14に示すようにラジカル供給部202に対して、図中の矢印Dの方向及び矢印Eに被処理物206を相対的に移動させてプロセスを行う。
この第3実施形態の大気圧プラズマ加工処理装置を用いることにより、以下に示す効果を得ることができる。
この第3実施形態のIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法においては、大気圧近傍の圧力下でプラズマを生成する。大気圧近傍の圧力下でプラズマを生成することにより、低圧雰囲気でプラズマを生成した場合と比較して、莫大な量のラジカルを効率的に生成することができる。また、電気的に中性なラジカル(塩素活性種)が被処理物206表面(バー状積層体255の共振器端面)に達することにより、被処理物206表面の加工が進行するが、この際、化学的な反応のみを起こす。よって、被処理物206表面に対する物理的な損傷を抑制することができる。また、プラズマを被処理物206表面から離れた位置で生成することにより、被処理物206表面が局所的に加熱されることがなくなるので、被処理物206の加熱温度を所望の状態で制御しやすくなり、その結果、加工速度や加工量の制御がより容易に行うことができる。
また、この第3実施形態の大気圧プラズマ加工処理装置を用いることにより、プラズマの生成条件を変更することなく、被処理物206の搬送速度や搬送回数を変更するだけで、加工量を制御することができる。
以上の処理を行ったバー状積層体255の共振器端面に誘電体膜(図示せず)を形成した後、個々の素子に分割して、III族窒化物半導体レーザ素子が完成する。
このようにして素子化されたIII族窒化物半導体レーザ素子の寿命試験を、APC(Automatic Power Control)駆動で60℃、出力30mWの条件下で行った。寿命試験における各素子の発光波長は405±5nmであった。各ウェハーから、所定の初期特性を満足した素子を無作為に50素子取り出し、半導体レーザ素子の寿命を測定した結果、大気圧プラズマプロセスを行った素子の寿命は、上記プロセスを行っていない素子の寿命の1.5倍となることが確認され、端面損傷(COD)に強いIII族窒化物半導体レーザ素子を得ることができた。
ここで、ラジカル供給口289の形状については、図14に示すような形状のものと限らない。図2Bと同様に帯状にスリットが開いた形状のものでもよい。この場合、被処理物206を走査することなく、被処理物206表面を加工することが可能である。また、このような帯状のスリットが開いたラジカル供給口を複数並列に配置されたラジカル供給部としても良い。
また、この第3実施形態のIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法おいて、プロセスガスとしてヘリウムガスと塩素ガスとの混合ガスを使用したが、必ずしもこれに限らない。ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、クリプトンガスまたはキセノンガスのいずれか1種または複数種を用いることができる。但し、水素原子が含まれていないガスを使用することとする。水素原子が含まれていると、半導体レーザ素子の端面にプラズマ処理をしたときに、水素原子が活性層に侵入して、結晶性を低下させる可能性がある。また、活性層の周囲の化合物半導体層に水素原子が拡散すると、水素パッシベーションが行われ、化合物半導体層が高抵抗化し、素子性能を劣化する可能性がある。以上の理由により、水素原子が含まれていないガスを使用することとする。
また、この第3実施形態のIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、反応容器101の内部の圧力は特に大気圧において最もその効果を発揮するものであるが、100Torr〜2気圧を好適な圧力範囲とし、適用可能な圧力範囲としては例えば10Torr〜5気圧が挙げられる。
また、この発明のIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法では、基板に窒化ガリウム基板を用いた例を挙げているが、この発明は共振器端面の処理に関するものであり、基板にサファイア基板などを用いた場合においても、同様の効果が得られる。また、横方向選択成長を用いて低転位密度のIII族窒化物半導体結晶を成長させることにより得た半導体レーザ素子においても、同様の効果が得られる。
また、レーザ光出射端面付近に不純物を拡散することによりバンドギャップを大きくするいわゆる窓効果と、この発明のレーザ共振器端面に対する大気圧プラズマプロセスとを組み合わせた場合においても、この発明は同様の効果が得られる。
以上のように、この発明によるIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法を用いることにより、レーザ光出射端面近傍に生じるマイクロクラックなどの結晶欠陥の除去を行い、端面損傷を抑制することができ、従来のIII族窒化物半導体レーザ素子と比べて、寿命と光出力を向上した素子を得ることを可能とする。
ここで、上記第1〜第3実施形態では、III族窒化物半導体として単結晶GaN基板の加工を行い、III族塩化物としてGa塩化物の沸点200℃以上に単結晶GaN基板を加熱したが、III族窒化物半導体がGaN以外の例えばAlNやInNの場合は、それぞれのIII族塩化物の沸点温度以上にIII族窒化物半導体を加熱する。また、III族窒化物半導体が例えばAlGaNやAlGaInN等の3元混晶や4元混晶の場合は、複数のIII族元素の塩化物のうち、最も高いIII族塩化物の沸点温度以上にIII族窒化物半導体を加熱する。
以上の第1〜第3実施形態に示したように、ダメージのない高精度な加工が可能である。なお、上記第1〜第3実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではなく、この発明の範囲は、上記第1〜第3実施形態の説明だけではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。また、説明に使用した図面は一部分を誇張して表現したものであり、図面内の寸法、寸法比率および位置関係は必ずしも正しいものではない。
この発明により加工されたIII族窒化物半導体は、発光ダイオード、レーザダイオード等の発光素子やパワーデバイス等の半導体素子に好適に利用される。
図1はこの発明の第1実施形態のIII族窒化物半導体の大気圧プラズマ加工処理装置の模式的な側面透視図である。 図2Aは図1に示す大気圧プラズマ加工処理装置の要部の断面拡大図である。 図2Bは上記大気圧プラズマ加工処理装置のラジカル供給部の要部の斜視図である。 図3は上記第1実施形態において加工された単結晶GaN基板の加工量と基板加熱温度の関係を示す図である。 図4Aは上記第1実施形態において加工された単結晶GaN基板の加工後の表面を組成分析した結果を示す図である。 図4Bは図4Aの一部を拡大した図である。 図5は上記第1実施形態において加工された単結晶GaN基板の加工前後において、カソードルミネッセンス(CL)法でバンド端発光を計測した結果を示す図である。 図6はこの発明の第2実施形態のIII族窒化物半導体の加工方法を用いたIII族窒化物半導体発光素子の製造方法による大気圧プラズマ加工処理装置の断面図である。 図7はこの発明を用いて作製したIII族窒化物半導体レーザ素子の構成を模式的に示す図である。 図8は上記III族窒化物半導体レーザ素子のIII族窒化物半導体膜の層構造を模式的に示す図である。 図9は上記III族窒化物半導体基板の掘り込み領域の形成パターンを模式的に示す図である。 図10Aは掘り込み基板上のLEDの構成を模式的に示す平面図である。 図10Bは掘り込み基板上のLEDの構成を模式的に示す側面図である。 図11はこの発明の第3実施形態における被処理物となるIII族窒化物半導体レーザ素子の構成を模式図である。 図12は上記III族窒化物半導体レーザ素子のIII族窒化物半導体膜の層構造を模式図である。 図13は上記III族窒化物半導体レーザ素子の製造方法を工程順に示した構造断面図である。 図14は上記第3実施形態におけるプラズマプロセスを行うときの被処理物近傍の斜視図である。 図15は従来のIII族窒化物半導体基板表面上への溝加工を行う工程を示す図である。
符号の説明
1…反応容器
2…ラジカル供給部
3…電力供給部材
4…整合器
5…高周波電源
6…基板
7…基板ヒータ
8…XYステージ
9…ガス供給部
10…流量制御装置
11…ガスボンベ
12…ガス排気部
81…電極部
82…ガス供給部
83…ガス排気部
84…電力投入電極
85…接地電極
86…絶縁体部材
87…窪み
88…プラズマ
89…ラジカル供給口
102…ラジカル供給部
150…n型GaN基板
151…表面平坦部
152…掘り込み領域
153…III族窒化物半導体膜
154…レーザストライプ
155…電流狭窄用SiO2
156…p型電極
157…n型電極
160…n型GaN層(1.0μm)
161…n型Al0.062Ga0.938N第一クラッド層
162…n型Al0.1Ga0.9N第二クラッド層
163…n型Al0.062Ga0.938N第三クラッド層
164…n型GaNガイド層
165…InGaN/GaN−3MQW活性層
166…p型Al0.3Ga0.7N蒸発防止層
167…p型GaNガイド層
168…p型Al0.062Ga0.938Nクラッド層
169…p型GaNコンタクト層
171…表面平坦部
172…掘り込み領域
181…表面平坦部
182…掘り込み領域
183…p型電極
184…n型電極
185…III族窒化物半導体膜
189…ラジカル供給口
202…ラジカル供給部
206…被処理物
225…プラズマ
230…GaN基板
231…III族窒化物半導体膜
232…レーザストライプ
233…電流狭窄用SiO2
234…p型電極
235…n型電極
240…n型GaN層(1.0μm)
241…n型Al0.062Ga0.938N第一クラッド層
242…n型Al0.1Ga0.9N第二クラッド層
243…n型Al0.062Ga0.938N第三クラッド層
244…n型GaNガイド層
245…InGaN/GaN−3MQW活性層
246…p型Al0.3Ga0.7N蒸発防止層
247…p型GaNガイド層
248…p型Al0.062Ga0.938Nクラッド層
249…p型GaNコンタクト層
250…積層体
251…レジストパターン
252…溝
253…スクライブ溝
254…破線
255…バー状積層体
261…ホルダー
289…ラジカル供給口

Claims (13)

  1. 大気圧または大気圧近傍の圧力下の塩素含有ガス雰囲気中で、被処理物であるIII族窒化物半導体から離れた位置でプラズマを発生させてラジカルを生成するラジカル生成部を設け、
    上記III族窒化物半導体を、上記III族窒化物半導体に含まれるIII族元素の塩化物の沸点以上の温度に加熱すると共に、
    上記ラジカル生成部により上記プラズマ中で生成された上記ラジカルを上記III族窒化物半導体の表面に接触させることにより、上記III族窒化物半導体の表面を加工することを特徴とするIII族窒化物半導体の加工方法。
  2. 請求項1に記載のIII族窒化物半導体の加工方法において、
    上記塩素含有ガスは、塩素ガスと希ガスとの混合ガスであることを特徴とするIII族窒化物半導体の加工方法。
  3. 請求項1または2に記載のIII族窒化物半導体の加工方法において、
    上記ラジカル生成部からの上記ラジカルを供給するラジカル供給口を、上記III族窒化物半導体の表面に対して平行方向に相対的に移動させながら、上記プラズマ中で生成されたラジカルを上記III族窒化物半導体の表面と接触させることを特徴とするIII族窒化物半導体の加工方法。
  4. 請求項3に記載のIII族窒化物半導体の加工方法において、
    上記ラジカル供給口と上記III族窒化物半導体の表面との間の距離が略一定に保たれていることを特徴とするIII族窒化物半導体の加工方法。
  5. 少なくとも表面がIII族窒化物半導体である基板と、上記基板の表面上に積層され、発光領域を有するIII族窒化物半導体膜とを有するIII族窒化物半導体発光素子の製造方法であって、
    上記III族窒化物半導体膜が積層される前、または、上記III族窒化物半導体膜の一部が形成された後に、請求項1乃至4のいずれか1つに記載のIII族窒化物半導体の加工方法を用いて上記基板の表面に上記ラジカル生成部により上記プラズマ中で生成された上記ラジカルを接触させることにより凹部を形成し、
    上記凹部を有する上記基板上に上記発光領域を設けることを特徴とするIII族窒化物半導体発光素子の製造方法。
  6. 請求項5に記載のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法において、
    上記発光領域を上記基板の表面の上記凹部から外れた領域上に設けることを特徴とするIII族窒化物半導体発光素子の製造方法。
  7. 請求項5または6に記載のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法において、
    上記凹部が上記基板の表面にストライプ状に形成されることを特徴とするIII族窒化物半導体発光素子の製造方法。
  8. 請求項5または6に記載のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法において、
    上記凹部が上記基板の表面に網目状に形成されることを特徴とするIII族窒化物半導体発光素子の製造方法。
  9. 請求項5乃至8のいずれか1つに記載のIII族窒化物半導体発光素子の製造方法により製造されたことを特徴とするIII族窒化物半導体発光素子。
  10. レーザ光導波路構造を有するIII族窒化物系半導体材料からなるIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法であって、
    請求項1乃至4のいずれか1つに記載のIII族窒化物半導体の加工方法を用いて、上記III族窒化物半導体レーザ素子の共振器端面の少なくとも一方を、上記ラジカル生成部により上記プラズマ中で生成された上記ラジカルを接触させることにより加工することを特徴とするIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  11. 請求項10に記載のIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、
    プラズマエッチングにより形成された上記共振器端面を、上記ラジカル生成部により上記プラズマ中で生成された上記ラジカルを接触させることにより加工することを特徴とするIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  12. 請求項10に記載のIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法において、
    結晶の劈開を用いて形成された上記共振器端面を、上記ラジカル生成部により上記プラズマ中で生成された上記ラジカルを接触させることにより加工することを特徴とするIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法。
  13. 請求項10乃至12のいずれか1つに記載のIII族窒化物半導体レーザ素子の製造方法により製造されたことを特徴とするIII族窒化物半導体レーザ素子。
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