JP5620166B2 - 積層体 - Google Patents

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Description

本発明は、熱硬化性樹脂を主成分とする熱硬化性樹脂層と、熱可塑性樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層とが積層してなる構成を備えた積層体に関し、中でも剛性、軽量性、難燃性に優れた積層体に関する。
熱硬化性樹脂を主成分とする熱硬化性樹脂層と、熱可塑性樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層とが積層してなる構成を備えた積層体として、例えば、炭素繊維強化熱硬化性樹脂シートに、表面材として熱可塑性樹脂フィルムを積層してなる積層体が知られている(例えば特許文献1)。
また、塩化ビニル系樹脂からなるシートとマット状の繊維補強材とを積層し、熱圧着してなる構成の繊維補強塩化ビニル系樹脂成形体も知られている(例えば特許文献2)。
特開平10−138354 特開平11−291416
前述の如く、熱硬化性樹脂を主成分とする熱硬化性樹脂層と、熱可塑性樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層とが積層してなる構成を備えた積層体や、熱可塑性樹脂炭素繊維を積層した積層体は、従来から種々開示されていたが、剛性、軽量性、難燃性が同時に優れている積層体は開示されていなかった。
そこで本発明は、熱硬化性樹脂を主成分とする熱硬化性樹脂層と、熱可塑性樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層とが積層してなる構成を備えた積層体において、剛性、軽量性、難燃性が同時に優れた積層体を提供せんとするものである。
本発明は、熱硬化性樹脂Aを主成分として含有する熱硬化性樹脂層(A層)と、熱可塑性樹脂Bを主成分とし、且つ以下の(a)〜(c)から選択される1種又は2種以上の成分Xを含有する熱可塑性樹脂層(B層)と、多孔質構造から形成されるコア層(C層)と、を積層してなる構成を備えた積層体を提案する。
(a)フェノキシ樹脂
(b)グリシジルエーテル型エポキシ樹脂
(c)アリールアミン型酸化防止剤
熱硬化性樹脂を主成分とする熱硬化性樹脂層(A層)と、熱可塑性樹脂Bを主成分とする熱可塑性樹脂層(B層)とを積層する場合に、熱可塑性樹脂Bに特定の成分Xを配合することにより、A層とB層間の界面接着性を顕著に良好にすることができる。さらに、多孔質構造から形成されるコア層(C層)を積層することにより、軽量化を実現することができる。よって、本発明は、剛性、軽量性、難燃性が同時に優れた積層体を提供することができる。
また、ハロゲン含有熱可塑性樹脂Dを主成分として含有する熱可塑性樹脂層(D層)を積層することにより、特にこの層を最外層に配置することにより、剛性を阻害せずに、難燃性をより一層優れたものとすることができる。
本発明の一例に係る積層体の積層構成例を示した断面図である。
以下、本発明の実施形態の一例について説明するが、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
<本積層体>
本実施形態に係る積層体(以下「本積層体」と称する)は、熱硬化性樹脂Aを主成分として含有する熱硬化性樹脂層(A層)と、熱可塑性樹脂Bを主成分とし、且つ特定の成分Xを含有する熱可塑性樹脂層(B層)と、多孔質構造から形成されるコア層(C層)と、好ましくはさらに、ハロゲンを含有する熱可塑性樹脂Dを主成分とする熱可塑性樹脂層(D層)とが積層してなる構成を備えた積層体である。
<熱硬化性樹脂層(A層)>
熱硬化性樹脂層(A層)は、熱硬化性樹脂Aを主成分として含有する層であり、例えば炭素繊維を含有する熱硬化性樹脂Aを主成分として形成することができる。
(熱硬化性樹脂A)
熱硬化性樹脂Aとしては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネートエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂からなる群より選ばれた1種の樹脂又は2種以上の樹脂、或いは、これらの変性体、又は、前記1種の樹脂又は2種以上の樹脂或いはこれらの変性体に、エラストマーやゴム成分、硬化剤、硬化促進剤、触媒等を添加した樹脂組成物を挙げることができる。
中でも、製品物性の観点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂からなる群より選ばれた1種の樹脂又は2種以上の樹脂を使用するのが好ましい。
特にエポキシ樹脂は接着性が高いため、例えば炭素繊維を含有する熱硬化性樹脂複合化物、すなわち炭素繊維と熱硬化性樹脂との複合化物からA層を形成する場合に、マトリックス樹脂としてエポキシ樹脂を用いると、高い力学特性を得ることができる。よって、炭素繊維を含有するエポキシ樹脂複合化物が好ましい。
この際のエポキシ樹脂としては、アミン類、フェノール類及び炭素−炭素二重結合を有する化合物を前駆体とするエポキシ樹脂を用いるのが好ましい。
アミン類を前駆体とするグリシジルアミン型エポキシ樹脂として、例えばテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール及びトリグリシジルアミノクレゾールの各種異性体などを挙げることができる。中でも、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンは、耐熱性に優れており好ましい。
エポキシ樹脂を用いる場合は、硬化剤や硬化触媒等を含んでもよいし、含まなくてもよいが、ライフの面から後者の方が好ましい。前者の場合でも潜在性の高い硬化剤や硬化触媒であれば、特に大きな問題とはならない。
また、エポキシ樹脂は、添加剤としてフェノキシ樹脂やビスフェノールA型エポキシ樹脂モノマー及びジフェニルアミンを含んでもよい。
熱硬化性樹脂Aは、熱可塑性樹脂Bとの接着性の観点から、熱硬化温度が100〜250℃のものが好適であり、120〜220℃がより好ましい。
(炭素繊維)
熱硬化性樹脂層(A層)は、例えば熱硬化性樹脂Aのみを主成分として形成してもよいし、また、例えば炭素繊維を主成分とする繊維体と、マトリックス樹脂としての熱硬化性樹脂Aとを複合一体化してなる複合化物を主成分として形成してもよい。
この際の炭素繊維としては、炭素の含有率が85〜100質量%の範囲内であり、少なくとも部分的にグラファイト構造を有する繊維状材料であるのが好ましい。例えばポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、リグニン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブなどを挙げることができる。
中でも、高剛性、二次加工性の発現などの面から、ポリアクリロニトリル系炭素繊維やピッチ系炭素繊維が特に好ましい。
炭素繊維は、経済性、炭素繊維の取扱い性の観点から、1.5万〜50万本の範囲内、特に3万〜25万本の範囲内、中でも特に6万〜12万本の炭素繊維が束ねられたものが好ましい。
炭素繊維の繊維形状は、例えば短繊維状、糸状、織物状などの何れであってもよい。
炭素繊維の特性上も、高強度炭素繊維、高弾性率炭素繊維、またはそれらの混合物など、成形物の用途に応じて選択すればよい。中でも、糸状の連続繊維が特に好ましい。
連続繊維の連続とは、繊維強化樹脂の少なくとも一方向に、連続した繊維が配列されていることをいうのであって、成形品全体にわたって連続しているフィラメントであることが好ましいが、必ずしも成形品全体にわたって連続している必要はなく、途中で分断されていても問題はない。
連続した炭素繊維の長さは、連続繊維で強化された繊維強化樹脂の取扱い性に優れることや、高い剛性が得られるため、10mm以上であるのが好ましい。
連続繊維の形態としては、例えばフィラメント、クロス、繊維を一方向に引き揃えて集束したシート、繊維を一方向に引き揃えたウェブ状シート(UD;UNI-DIRECTIONAとも称される)、平織や朱子織してなる織物状シート、或いは長尺な繊維を編んだ編物状シート、ブレイド、マルチフィラメントや紡績糸をドラムワインドなどで一方向にひきそろえた形態の強化繊維の形態が例示できる。中でも、製造プロセス面の生産性の観点から、クロス、UDが好適に使用できる。また、これらの強化形態は単独で使用しても、2種以上の強化形態を併用してもよい。
(複合化方法)
炭素繊維と熱硬化性樹脂とを複合化する方法としては、細かく切断した繊維をプラスチック中に均一に混入させる方法や、連続繊維に方向性を持たせたままプラスチックに浸潤させる方法などを挙げることができる。より具体的には、熱硬化性樹脂中に炭素繊維を含浸させた薄いシート状の含浸体からなるプリプレグを作製しておき、このプリプレグを積層して加熱溶融一体化してなる構成の樹脂複合材を挙げることができる。
本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、上記炭素繊維と併用して、黒鉛繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、チタニア繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維等の無機系繊維を用いることもできる。この際、併用する無機系繊維の繊維形状や形態、樹脂との複合化方法は、上記炭素繊維と同様である。
<熱可塑性樹脂層(B層)>
B層は、熱可塑性樹脂Bを主成分として含有し、且つ所定の成分Xを含有する層であればよい。熱可塑性樹脂Bに特定の成分Xを配合することにより、A層とB層間、B層とC層間、さらにはB層とD層間の界面接着性を顕著に良好にすることができる。
(熱可塑性樹脂B)
熱可塑性樹脂Bとしては、例えばエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、オキシメチレン系樹脂、アミド系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア系樹脂、カーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、フェニレン系樹脂、エーテルイミド系樹脂、スルホン系樹脂、アリレート系樹脂、エーテルスルホン、ケトン、エーテルケトン、エーテルエーテルケトン、エーテルケトンケトン、アリレート、エーテルニトリル系樹脂、イミド、アミドイミド系樹脂、フェノール系樹脂、テトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂等を挙げることができ、これらのうちの一種又は2種以上の混合樹脂或いは共重合体を選択して用いることができる。
中でも、好適な成形温度を有するという観点から、例えばABS樹脂(ブレンドタイプ)、ABS樹脂(グラフトタイプ)、メタクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合物(AS樹脂)、塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂などが好ましく、これらのうちの一種又は2種以上の混合樹脂或いは共重合体を選択して好適に用いることができる。
なお、熱可塑性樹脂Bは発泡性であってもよい。
以上の中でも、本積層体では、難燃性や耐薬品性などの観点から、塩素含有熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。
塩素含有熱可塑性樹脂の具体例としては、例えばポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル−エチレンコポリマー、塩化ビニル−プロピレンコポリマー、塩化ビニル−イソプレンコポリマー、塩化ビニル−イソブチレンコポリマー、塩化ビニル−塩化ビニリデンコポリマー、塩化ビニル−塩素化プロピレンコポリマー、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル−アクリル酸エステルコポリマー、塩化ビニル−メタクリル酸エステルコポリマー、塩化ビニル−マレイン酸エステルコポリマー、塩化ビニル−アクリロニトリルコポリマー、塩化ビニル−N−置換マレイミドコポリマー、塩化ビニル−スチレンコポリマー、塩化ビニル−ポリウレタンコポリマー、塩化ビニル−エチレン−酢酸ビニル三元コポリマー、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元コポリマー、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元コポリマー、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル三元コポリマー、塩化ビニル−エチレン−酢酸ビニル三元コポリマー、塩化ビニル−アクリルゴムグラフトポリマー及び塩化ビニル−ポリウレタングラフトポリマー等、並びに、これらの塩素含有熱可塑性樹脂とポリエチレンとの混合物、ポリプロピレンとの混合物、ポリブテンとの混合物、ポリ−3−メチルブテン等のα−オレフィンポリマーとの混合物、エチレン−酢酸ビニルコポリマーとの混合物、エチレン−プロピレンコポリマーとの混合物、ポリスチレンとの混合物、アクリル樹脂との混合物、スチレンと他のモノマー(例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、無水マレイン酸等)とのコポリマーとの混合物、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーとの混合物、アクリル酸エステル−ブタジエン−スチレンコポリマーとの混合物及びメタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレンコポリマーとの混合物等を挙げることができる。
これらの塩素含有熱可塑性樹脂は、懸濁重合、乳化重合及び溶液重合等のいずれの方法によって製造されたものも使用することができる。
塩素含有熱可塑性樹脂には、熱安定性を改善するための安定剤、混合樹脂の粘度を調整するための可塑剤、その他公知の配合剤などが含まれていてもよい。
この際、安定剤としては、例えばカルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、スズ、鉛などの金属の有機酸塩、無機酸塩などから選ばれる1種以上を採用することができる。
可塑剤としては、例えばジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジエチルフタレートなどのジアルキルフタレート類、トリクレジルホスフェート、トリエチルホスフェートなどのホスフェート類、エポキシ化大豆油などのエポキシ化合物類などから選ばれる1種以上を採用することができる。
滑剤としては、例えばポリエチレンワックスなどの炭化水素類、ステアリン酸などの高級脂肪酸類、ブチルステアレートなどのエステル類などから選ばれる1種以上を採用することができる。
なお、熱可塑性樹脂Bは、積層強度の観点から、成形加工温度が100〜250℃のものが好適であり、120℃〜220℃がより好ましい。
(成分X)
熱可塑制樹脂Bに多種類の樹脂を添加して試験した結果、次の(a)〜(c)を配合すると、B層の界面接着性を顕著に良好にすることができ、剛性に優れた性能を得られることが分かった。
(a)フェノキシ樹脂
(b)グリシジルエーテル型エポキシ樹脂
(c)アリールアミン型酸化防止剤
(a)フェノキシ樹脂
フェノキシ樹脂は、末端にエポキシ基を有する樹脂であり、これがエポキシ樹脂と反応するため、熱硬化性樹脂Aとしてエポキシ樹脂を使用する場合に特に好適である。
本積層体に用いるフェノキシ樹脂として、例えばビスフェノールA骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールF骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールM骨格(4,4’-(1,3-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール骨格)を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールP(4,4’-(1,4)-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール骨格)骨格を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールZ(4,4’-シクロヘキシィジエンビスフェノール骨格)骨格を有するフェノキシ樹脂等ビスフェノール骨格を有するフェノキシ樹脂、ノボラック骨格を有するフェノキシ樹脂、アントラセン骨格を有するフェノキシ樹脂、フルオレン骨格を有するフェノキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノキシ樹脂、ノルボルネン骨格を有するフェノキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するフェノキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するフェノキシ樹脂等を挙げることができる。
また、フェノキシ樹脂として、これら中の骨格を複数種類有した構造を用いることもできるし、それぞれの骨格の比率が異なるフェノキシ樹脂を用いることができる。さらに異なる骨格のフェノキシ樹脂を複数種類用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有するフェノキシ樹脂を複数種類用いたり、それらのプレポリマーを併用したりすることもできる。
前記フェノキシ樹脂の分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量が5,000〜100,000であることが好ましい。さらに好ましくは10,000〜70,000である。製膜性樹脂の重量平均分子量が前記下限値以上であれば、製膜性を向上させる効果を十分に得ることができる。一方、前記上限値以下であれば、製膜性樹脂の溶解性を維持することができて好適である。そして、製膜性樹脂の重量平均分子量を前記範囲内とすることにより、これらの特性のバランスに優れたものとすることができる。
フェノキシ樹脂の市販品としては、ビフェニルエポキシ樹脂とビスフェノールSエポキシ樹脂との共重合体であり、末端部にエポキシ基を有しているものとして、ジャパンエポキシレジン社製「YX-8100H30」(重量平均分子量30,000)を挙げることができ、フェノキシ樹脂B/ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂との共重合体であり、末端部にエポキシ基を有しているものとして、ジャパンエポキシレジン社製「JER E4275」(重量平均分子量60,000)を挙げることができる。
また、エピクロルヒドリンとビスフェノールA若しくはF等との共重合体であるものとして巴化学社製「PKHC、PKHH、PKHJ」を、ビスフェノールA及びビスフェノールF混合タイプのフェノキシ樹脂として日本化薬社製「エピコート4250、エピコート4275、エピコート1255HX30」を、臭素化エポキシを用いたフェノキシ樹脂として日本化薬社製「エピコート5580BPX40」を、ビスフェノールAタイプのフェノキシ樹脂として東都化成社製「YP-50、YP-50S、YP-55、YP-70」やジャパンエポキシレジン社製「JER E1256、E4250、E4275、YX6954BH30、YL7290BH30」などを挙げることができる。
これらの中でも、上述した好ましい重量平均分子量60,000を有するJER E1256が好ましく使用される。
(b)グリシジルエーテル型エポキシ樹脂
本積層体に用いるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂として、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂及びレゾルシノール型エポキシ樹脂などを挙げることができる。
液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びレゾルシノール型エポキシ樹脂は、低粘度であるために、他のエポキシ樹脂と組み合わせて使うことが好ましい。
他方、固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂は、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂に比較し架橋密度の低い構造を与えるため耐熱性は低くなるが、より靭性の高い構造が得られるため、グリシジルアミン型エポキシ樹脂や液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂などと組み合わせて用いるのが好ましい。
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂は、低吸水率で、かつ高耐熱性の硬化樹脂を与えるため、好適に用いることができる。
また、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂及びジフェニルフルオレン型エポキシ樹脂も、低吸水率の硬化樹脂を与えるため、好適に用いることができる。
ウレタン変性エポキシ樹脂及びイソシアネート変性エポキシ樹脂は、破壊靱性と伸度の高い硬化樹脂を与えるため、好適に用いることができる。
これらのエポキシ樹脂は、単独で用いてもよいし適宜配合して用いてもよい。少なくとも2官能のエポキシ樹脂及び3官能以上のエポキシ樹脂を配合することは、樹脂の流動性と硬化後の耐熱性を兼ね備えるものとすることができる。特に、グリシジルアミン型エポキシとグリシジルエーテル型エポキシの組み合わせは、耐熱性及び耐水性とプロセス性の両立を可能にするから、好ましい。また、常温で液状のエポキシ樹脂を少なくとも1種と、常温で固形状のエポキシ樹脂を少なくとも1種を配合することは、プリプレグのタック性とドレープ性を適切なものとなるため、好ましい。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂は、耐熱性が高く吸水率が小さいため、耐熱耐水性の高い硬化樹脂を与える。これらのフェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いることによって、耐熱耐水性を高めつつプリプレグのタック性とドレープ性を調節することができる。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、ジャパンエポキシレジン社製「JER825、834」、大日本インキ化学工業(株)製「エピクロン850」、東都化成(株)製「エポトートYD―128」、ダウケミカル社製「DER―331、332」などを挙げることができる。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、ジャパンエポキシレジン社製「JER806、807及び1750」、大日本インキ化学工業(株)製「エピクロン830」、及び東都化成(株)製「エポトートYD―170」などを挙げることができる。
レゾルシノール型エポキシ樹脂の市販品としては、ナガセケムテックス(株)製「デコナールEX−201」などを挙げることができる。
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型のエポキシ樹脂市販品としては、住友化学(株)製「ELM434」、Vantico社製「アラルダイトMY720、MY721、MY9512、MY9663、東都化成(株)製「エポトートYH―434」などを挙げることができる。
アミノフェノール型のエポキシ樹脂市販品としては、住友化学(株)製「ELM120やELM100」、ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート630」、Vantico社製「アラルダイトMY0510」などを挙げることができる。
グリシジルアニリン型のエポキシ樹脂市販品としては、日本化薬(株)製「GANやGOT」などを挙げることができる。
ビフェニル型エポキシ樹脂の市販品としては、日本化薬(株)「NC−3000」などを挙げることができる。
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の市販品としては、大日本インキ化学工業(株)製「HP7200」などを挙げることができる。
ウレタン変性エポキシ樹脂の市販品としては、旭化成エポキシ(株)製「AER4152」などを挙げることができる。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、ダウケミカル社製「DEN431やDEN438」、及びジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート」などを挙げることができる。
(c)アリールアミン型酸化防止剤
本積層体に用いるアリールアミン型酸化防止剤として、アリール基を有する2級アミンであれば好適に使用することができる。例えば4,4’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(精工化学社製「ノンフレックスDCD」)、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン(精工化学社製「ノンフレックスOD」)、フェニル−1−ナフチルアミン(大内新興化学社製「ノックラックPA」)、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン(大内新興化学社製「ノックラックホワイト」)、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(大内新興社化学製「ノックラックDP」)、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン(大内新興化学社製「ノックラック810−NA」)、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(大内新興化学社製「ノックラック6C」)、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジアミン(大内新興化学社製「ノックラックG−1」)等を挙げることができる。
(成分Xの含有量)
成分Xは、熱可塑制樹脂B100質量部に対して0.01〜100質量部の割合で含まれるのが好ましい。0.01質量部以上であれば接着性向上効果が発揮でき、100質量部以下であれば成形性が良好である。よって、かかる観点から、成分Xの含有量は、熱可塑制樹脂B100質量部に対して0.1〜30質量部であるのが特に好ましく、中でも0.1〜10質量部であるのがさらに好ましい。
(その他の成分)
B層は、諸物性を改良、調整する目的で、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で他の樹脂や、改質剤、充填剤、可塑剤、紫外線吸収剤、安定剤などを適宜含有することは適宜可能である。
<多孔質構造コア層(C層)>
コア層(C層)は、多孔質構造からなる層である。コア層として多孔質構造層が介在することにより、積層体全体の軽量性を向上させることができる。
多孔質構造を形成するには、例えば熱可塑性樹脂に発泡剤や中空粒子を添加して成形する方法を挙げることができる。また、ハニカム構造体を用いて形成することもできる。但し、これらの方法に限定するものではない。
熱可塑性樹脂に発泡剤を添加して多孔質構造層を成形する場合、当該発泡剤としては、例えばアゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;N,N’ージニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;p−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等のスルホニルヒドラジド化合物などを挙げることができ、これらを単独或いは2種以上を併用して用いることができる。但し、これらに限定するものではない。
この際、必要に応じて発泡助剤を添加するのが好ましい。
該発泡助剤としては、例えばしゅう酸、トリオールスルホン酸、乳酸、くえん酸、こはく酸、正りん酸、りんご酸、炭酸グアニジン、無水炭酸カリ、ほう砂、エタノールアミン、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、酸化亜鉛、ステアリン酸バリウム、炭酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、酸化マグネシウム、酢酸鉛、酸化鉛、硫酸鉛、デキシクレー、ハイシール、ジメチルホルムアルデヒド、ステアリン酸アルミニウム、酸化チタンなど挙げることができ、これらを単独或いは2種以上を併用して用いることができる。但し、これらに限定するものではない。
熱可塑性樹脂に中空粒子を添加して多孔質構造層を成形する場合、当該中空粒子としては、例えばガラス原料の微小中空体材料(ガラスバルーン)や、火山灰原料の微小中空体材料(シラスバルーン),アルミナ珪酸原料の微小中空体材料(アルミナ珪酸質バルーン),高分子原料の微小中空体材料(高分子中空微小球)など挙げることができ、これらを単独或いは2種以上を併用して用いることができる。但し、これらに限定するものではない。
ハニカム構造体を用いて多孔質構造層を形成する場合、例えば熱可塑性樹脂シートをハニカム加工した市販の構造体を用いることができる。例えば、新日本フェザーコア社製「ハニコーム」などである。
上述のようにして多孔質構造層を形成する場合において、発泡剤や中空粒子を添加する熱可塑性樹脂、並びにハニカム加工する熱可塑性樹脂は、難燃性や耐薬品性などの観点から、塩素含有熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。
この際の塩素含有熱可塑性樹脂の具体例としては、例えばポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル−エチレンコポリマー、塩化ビニル−プロピレンコポリマー、塩化ビニル−イソプレンコポリマー、塩化ビニル−イソブチレンコポリマー、塩化ビニル−塩化ビニリデンコポリマー、塩化ビニル−塩素化プロピレンコポリマー、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル−アクリル酸エステルコポリマー、塩化ビニル−メタクリル酸エステルコポリマー、塩化ビニル−マレイン酸エステルコポリマー、塩化ビニル−アクリロニトリルコポリマー、塩化ビニル−N−置換マレイミドコポリマー、塩化ビニル−スチレンコポリマー、塩化ビニル−ポリウレタンコポリマー、塩化ビニル−エチレン−酢酸ビニル三元コポリマー、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元コポリマー、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元コポリマー、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル三元コポリマー、塩化ビニル−エチレン−酢酸ビニル三元コポリマー、塩化ビニル−アクリルゴムグラフトポリマー及び塩化ビニル−ポリウレタングラフトポリマー等、並びに、これらの塩素含有熱可塑性樹脂とポリエチレンとの混合物、ポリプロピレンとの混合物、ポリブテンとの混合物、ポリ−3−メチルブテン等のα−オレフィンポリマーとの混合物、エチレン−酢酸ビニルコポリマーとの混合物、エチレン−プロピレンコポリマーとの混合物、ポリスチレンとの混合物、アクリル樹脂との混合物、スチレンと他のモノマー(例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、無水マレイン酸等)とのコポリマーとの混合物、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーとの混合物、アクリル酸エステル−ブタジエン−スチレンコポリマーとの混合物及びメタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレンコポリマーとの混合物等を挙げることができる。
これらの塩素含有熱可塑性樹脂は、懸濁重合、乳化重合及び溶液重合等のいずれの方法によって製造されたものも使用することができる。
塩素含有熱可塑性樹脂には、熱安定性を改善するための安定剤、混合樹脂の粘度を調整するための可塑剤、その他公知の配合剤などが含まれていてもよい。
この際、安定剤としては、例えばカルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、スズ、鉛などの金属の有機酸塩、無機酸塩などから選ばれる1種以上が採用される。
可塑剤としては、例えばジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジエチルフタレートなどのジアルキルフタレート類、トリクレジルホスフェート、トリエチルホスフェートなどのホスフェート類、エポキシ化大豆油などのエポキシ化合物類などから選ばれる1種以上が採用される。
滑剤としては、例えばポリエチレンワックスなどの炭化水素類、ステアリン酸などの高級脂肪酸類、ブチルステアレートなどのエステル類などから選ばれる1種以上が採用される。
<熱可塑性樹脂層(D層)>
D層は、ハロゲンを含有する熱可塑性樹脂D(以下「ハロゲン含有熱可塑性樹脂D」とも称する)を主成分とする層であればよい。
含有するハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれでもよいが、耐薬品と難燃性との観点から、塩素、或いはフッ素が好ましい。
ハロゲン含有熱可塑制樹脂Dは、熱可塑性樹脂Bと同じ樹脂であってもよいし、また、異なる樹脂であってもよい。
具体的には、例えばポリ塩化ビニル、ポリ臭化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体、エチレン・四フッ化エチレン共重合体、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体等を挙げることができ、これら2種類以上の樹脂からなるアロイも、ハロゲン含有熱可塑性樹脂Dとして用いることもできる。
また、これらのハロゲン含有樹脂と、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート等の非含ハロゲン樹脂とのアロイも、ハロゲン含有熱可塑性樹脂Dとして用いることもできる。
さらにまた、チーグラー型触媒を用いて製造されるオレフィン樹脂中には、ハロゲン含有触媒残渣を含むが、かかるハロゲン含有触媒残渣を含んだオレフィン樹脂も、ハロゲン含有熱可塑性樹脂Dとして用いることができる。
以上の中でも、難燃性及びコストなどの観点から、塩素含有熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。
塩素含有熱可塑性樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン等のホモポリマー、塩化ビニルに共重合可能な不飽和結合を有するモノマーと塩化ビニルとのコポリマー、ポリ塩化ビニルにグラフト重合可能な不飽和結合を有するモノマーとポリ塩化ビニルとのグラフトポリマー、塩化ビニルにグラフト重合可能な不飽和結合を有するポリマーと塩化ビニルとのグラフトポリマー、及びこれらの混合物を挙げることができる。
ここで、前記の塩化ビニル又はポリ塩化ビニルに共重合又はグラフト重合可能なモノマーとしては、例えばエチレン、プロピレン等のオレフィン類、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の塩化ビニルを除くハロゲン化オレフィン類、酢酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のビニルエステル類、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸又はそのエステル類、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等のメタクリル酸又はそのエステル類、マレイン酸又はそのエステル類、アクリロニトリル等のアクリル誘導体、N−t−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類、無水マレイン酸及びスチレン等を挙げることができ、これらは単独又は2種以上の組み合わせで用いることができる。
また、前記の塩化ビニルにグラフト重合可能なポリマーとしては、例えばエチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−アクリル酸エチルコポリマー、塩素化ポリエチレン、ポリウレタン、ポリブタジエン−スチレン−メチルメタクリレート、ポリブタジエン−アクリロニトリル−(α−メチル)スチレン、ポリブチルアクリレート、ブチルゴム、ポリスチレン、スチレン−ブタジエンコポリマー、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素三元コポリマー及びアクリルゴム等を挙げることができる。
より具体的には、例えばポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル−エチレンコポリマー、塩化ビニル−プロピレンコポリマー、塩化ビニル−イソプレンコポリマー、塩化ビニル−イソブチレンコポリマー、塩化ビニル−塩化ビニリデンコポリマー、塩化ビニル−塩素化プロピレンコポリマー、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、塩化ビニル−アクリル酸エステルコポリマー、塩化ビニル−メタクリル酸エステルコポリマー、塩化ビニル−マレイン酸エステルコポリマー、塩化ビニル−アクリロニトリルコポリマー、塩化ビニル−N−置換マレイミドコポリマー、塩化ビニル−スチレンコポリマー、塩化ビニル−ポリウレタンコポリマー、塩化ビニル−エチレン−酢酸ビニル三元コポリマー、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元コポリマー、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸三元コポリマー、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル三元コポリマー、塩化ビニル−エチレン−酢酸ビニル三元コポリマー、塩化ビニル−アクリルゴムグラフトポリマー及び塩化ビニル−ポリウレタングラフトポリマー等、並びに、これらの塩素含有熱可塑性樹脂とポリエチレンとの混合物、ポリプロピレンとの混合物、ポリブテンとの混合物、ポリ−3−メチルブテン等のα−オレフィンポリマーとの混合物、エチレン−酢酸ビニルコポリマーとの混合物、エチレン−プロピレンコポリマーとの混合物、ポリスチレンとの混合物、アクリル樹脂との混合物、スチレンと他のモノマー(例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、無水マレイン酸等)とのコポリマーとの混合物、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーとの混合物、アクリル酸エステル−ブタジエン−スチレンコポリマーとの混合物及びメタクリル酸エステル−ブタジエン−スチレンコポリマーとの混合物等を挙げることができる。
これらの塩素含有熱可塑性樹脂は、懸濁重合、乳化重合及び溶液重合等のいずれの方法によって製造されたものも使用することができる。
塩素含有熱可塑性樹脂には、熱安定性を改善するための安定剤、混合樹脂の粘度を調整するための可塑剤、その他公知の配合剤などが含まれていてもよい。
この際、安定剤としては、例えばカルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、スズ、鉛などの金属の有機酸塩、無機酸塩などから選ばれる1種以上が採用される。
可塑剤としては、例えばジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジエチルフタレートなどのジアルキルフタレート類、トリクレジルホスフェート、トリエチルホスフェートなどのホスフェート類、エポキシ化大豆油などのエポキシ化合物類などから選ばれる1種以上が採用される。
滑剤としては、例えばポリエチレンワックスなどの炭化水素類、ステアリン酸などの高級脂肪酸類、ブチルステアレートなどのエステル類などから選ばれる1種以上が採用される。
なお、ハロゲン含有熱可塑性樹脂Dは、積層強度の観点から、成形加工温度が100〜250℃のものが好適であり、120℃〜220℃がより好ましい。
(その他の成分)
D層は、諸物性を改良、調整する目的で、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で他の樹脂や、改質剤、充填剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定剤などを適宜含有することは適宜可能である。
<積層構成>
本積層体の積層構成としては、熱硬化性樹脂層(A層)と熱可塑性樹脂層(B層)とコア層(C層)をそれぞれ1層以上備えていればよい。例えばA層/C層/B層などの3層構成であってもよいし、A層/B層/C層/A層、B層/A層/C層/A層、B層/A層/C層/B層などの4層構成であってもよいし、A層/B層/C層/B層/A層などの5層構成であってもよいし、或いはさらにそれ以上の多層構成であってもよい。
また、必要に応じて、A層とB層の間、A層とC層の間、B層とC層の間に他の層が介在してもよく、好ましくは熱可塑性樹脂層(D層)を最外層として備える積層構造が好ましい。具体的には、例えば図1に示すように、D層/B層/A層/B層/C層/B層/A層/B層/D層などと積層するのが好ましい。
以上の中でも、熱可塑制樹脂Bに特定の成分Xを配合することにより、A層とB層の界面接着性を良好にすることができるため、A層とB層を隣接するように配置するのが好ましい。
また、耐薬品性を考慮すると、D層を最外層に配置する構成、特にD層を表裏層として配置するのが好ましい。
A層の厚さは、特に限定するものでないが、例えば炭素繊維と熱硬化性樹脂とが複合一体化してなる炭素繊維強化樹脂から形成する場合には、例えば0.005mm〜1mmが好ましく、特に0.01mm〜0.5mm、中でも特に0.02mm〜0.5mmがさらに好ましい。
B層の厚さは、特に限定するものではないが、図1のような積層構成において剛性を必要とする用途を考慮すると、B層は0.01mm〜10mm、特に0.01mm〜1mm、中でも特に0.01mm〜0.5mmであるのが好ましい。
C層の厚さは、特に限定するものではないが、軽量性を高める観点等の観点から、1mm〜100mm、特に1mm〜50mm、中でも特に1mm〜30mmであるのが好ましい。
D層の厚さは、特に限定するものではないが、例えば図1のように表裏層としてD層を設ける場合、表面平滑性と剛性を必要とする用途を考慮すると、0.1mm〜100mm、特に0.1mm〜1mm、中でも特に0.5mm〜1mmであるのが好ましい。
積層体の厚さは、特に限定するものではないが、図1のような積層構成において軽量性と生産性を考慮すると、1mm〜200mm、特に1mm〜50mm、中でも特に5mm〜50mmであるのが好ましい。
<製造方法>
本積層体は、未硬化状態の熱硬化性樹脂Aを主成分するA層形成シート、熱可塑性樹脂Bを主成分とするB層形成シート、多孔質構造から形成されるC層形成シート、さらに必要に応じてハロゲン含有熱可塑性樹脂Dを主成分とするD層形成シートをそれぞれ作製し、これらのシートを積層し、互いに結合させることにより作製することができる。但し、この製法に限定されるものではない。
A層形成シートの製法は任意である。例えば炭素繊維と熱硬化性樹脂とが複合一体化してなる炭素繊維強化樹脂を主成分とする場合には、例えば熱硬化性樹脂中に炭素繊維を含浸させた薄いシート状の含浸体からなるプリプレグを作製すればよい。
他方、B層形成シート、C層形成シート及びD層形成シートは、例えばカレンダ法または押出し法などの公知の成形方法で成形すればよい。
A層形成シート、B層形成シート及びC層形成シート、必要に応じてさらにD層形成シートを積層して互いに結合する手段は、特に限定するものではないが、互いに熱圧着するのが好ましい。
熱可塑制樹脂Bに特定の成分Xを配合することにより、A層とB層間、B層とC層間、並びにB層とD層間の熱圧着による界面接着性を顕著に良好にすることができる。
例えば、未硬化状態の熱硬化性樹脂Aを主成分するA層形成シートと、熱可塑性樹脂Bを主成分とするB層形成シートと、多孔質構造から形成されるC層形成シートと、ハロゲン含有熱可塑性樹脂Dを主成分とするD層形成シートとを重ねて積層し、これらを加熱及び加圧して熱圧着すればよい。
この際の熱圧着条件の目安としては、例えば温度を160〜220℃、圧力を1kg/cm2〜100kg/cm2 とするのが好ましい。
<本積層体の特徴・用途>
本積層体は、熱硬化性樹脂Aの硬化温度に加熱することにより、熱硬化性樹脂Aの硬化と同時に成形を行うことができる。この際、B層に含有される成分Xは、熱可塑性樹脂Bに相容性を付与すると共に化学結合を付与することができるため、特に熱硬化性樹脂層(A層)と熱可塑性樹脂層(B層)との間に強固な界面接着性を付与することができる。
さらに、コア層であるC層と、ハロゲン含有樹脂を主成分とする熱可塑性樹脂層D層との界面接着性も良好であることから、本積層体を成形して得られる成形体は、強固な界面接着性であるために、高剛性特性を有しながら、軽量性と難燃性をも兼ね備えた積層体を形成することができる。
このように本積層体は、高剛性、軽量性、難燃性が同時に優れているため、化学薬品を使用する半導体や液晶洗浄装置筐体部材等や周辺部材、化学工場のダクト等の工業部材等に好適に使用することができる。
<用語の説明>
本発明において「主成分」とは、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含する。この際、当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分(2成分以上が主成分である場合には、これらの合計量)が組成物中の50質量%以上、特に70質量%以上、中でも特に90質量%以上(100%含む)を占めるのが好ましい。
また、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。例えば厚さに関して言えば、狭義では100μm以上のものをシートと称し、100μm未満のものをフィルムと称すことがある。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
本発明において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、下記実施例は本発明を制限するものではない。
<実施例1>
(A層形成シート)
未硬化エポキシ樹脂を含浸させたPAN系炭素繊維プリプレグシート(炭素繊維:引張弾性率230GPa、目付け250g/m)をA層形成シートA1として用意した。
(B層形成シートB1の作製)
熱可塑性樹脂層(B層)を形成するために用いる樹脂組成物として、塩素含有熱可塑性樹脂としての塩化ビニル樹脂(大洋塩ビ社製「TH−800」)100質量部と、錫系熱安定剤(日東化成社製「MA300A」)5質量部と、滑剤(コグニス社製「VPN882」)0.5質量部とを混合して樹脂組成物B1を調製した。
また、熱可塑性樹脂層(B層)を形成するために用いる成分Xとして、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製「JER E1256」、重量平均分子量60,000)からなるフェノキシ樹脂を用意した。
上記の樹脂組成物B1(合計105.5質量部)に上記の成分X(フェノキシ樹脂)を3質量部の割合で添加して8インチロールで5分間混練し、0.2mm厚みのロールシートB1を得た。
(C層形成シートC1の作製)
多孔質構造コア層Cを形成すための樹脂組成物として、塩素含有熱可塑性樹脂としての塩化ビニル樹脂(大洋塩ビ社製「TH−800」)100質量部と、錫系熱安定剤(日東化成社製「MA300A」)5質量部と、滑剤(コグニス社製「VPN882」)0.5質量部と、ADCA系発泡剤(永和化成社製「ビニホールAC3」)0.5質量部とを混合して樹脂組成物C1を調製した。
この樹脂組成物C1を、8インチロールを使って発泡剤が発泡しない温度で5分間混練し、1mm厚みのロールシートとして、C層形成シートC1を得た。
(D層形成シートD1の作製)
熱可塑性樹脂Dを形成するための樹脂組成物として、塩素含有熱可塑性樹脂としての塩化ビニル樹脂(大洋塩ビ社製「TH−800」)100質量部と、錫系熱安定剤(日東化成社製「MA300A」)5質量部と、滑剤(コグニス社製「VPN882」)0.5質量部と、紫外線吸収剤(城北化学工業株式会社製「JF77」0.1部とを混合して樹脂組成物D1を調製した。
この樹脂組成物D1を8インチロールで5分間混練し、1mm厚みのロールシートとして、D層形成シートD1を得た。
(積層体の作製)
2枚のB層形成シートB1でA層形成シートA1を挟むように積層して3層の積層シート(B1/A1/B1)を2組形成した。さらに、この2組の積層シートの間にC層形成シートC1を挟むと共に、全体の最外層としてD層形成シートD1を2枚積層して、9層構成(D1/B1/A1/B1/C1/B1/A1/B1/D1)の積層シートを形成し、これを温度180℃×圧力30kg/cmで熱圧着すると共に、さらに発泡剤の発泡温度まで熱圧着温度を上昇させてC層を多孔質構造として、積層体(D層/B層/A層/B層/C層/B層/A層/B層/D層=1mm/0.2mm/0.2mm/0.2mm/6.8mm/0.2mm/0.2mm/0.2mm/1mm)を得た。
<実施例2>
実施例1において、熱可塑性樹脂層(B層)を形成するために用いる成分Xとして、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂を、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製「JER825」)に変更した以外は、実施例1と同様に積層体を作製した。
<実施例3>
実施例1において、熱可塑性樹脂層(B層)を形成するために用いる成分Xとして、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂を、アリールアミン型酸化防止剤(大内新興化学社製「ノックラックDP」)に変更した以外は、実施例1と同様に積層体を作製した。
<比較例1>
実施例1において、熱可塑性樹脂層(B層)を介在させない以外は、実施例1と同様に積層体(D層/A層/C層/A層/D層=1mm/0.2mm/7.6mm/0.2mm/1mm)を得た。
<実施例4>
実施例1の多孔質構造コア層Cを形成すための樹脂組成物として、ADCA系発泡剤を0.5質量部混合する代わりに、中空粒子(アクシーズケミカルズ社製「ウィンライトMSB3011」)を15質量部混合した以外は、実施例1と同様に積層体を作製した。
<比較例2>
実施例1において、樹脂組成物C1の代わりに、塩素含有熱可塑性樹脂としての塩化ビニル樹脂(大洋塩ビ社製「TH−800」)100質量部と、錫系熱安定剤(日東化成社製「MA300A」)5質量部と、滑剤(コグニス社製「VPN882」)0.5質量部とを混合した樹脂組成物を用いた、すなわち、実施例1において発泡剤を無添加とした以外は、実施例1と同様に積層体を作製した。
<実施例5>
実施例1において、D層の塩化ビニル樹脂をフッ素樹脂(ダイキン工業社製ネオフロンRP4020)に変更した以外は、実施例1と同様に積層体を作製した。
<積層体の評価試験>
1.溶接強度試験
JISZ3831「プラスチック溶接技術検定における試験方法及び判定基準」に従い、積層体(サンプル)同士を突合せ溶接を実施し、下記基準で判定した。
その際、突合せ溶接を実施した試験片を、幅20ミリ、長さ120ミリに切断し、引張試験機で引張溶接強度試験を実施した。
なお、溶接棒は、使用される熱可塑性樹脂と同一組成のものを使用した。
溶接強度試験の評価は次のように行った。
先ず、次のように基準積層体を作製した。
ハロゲン含有熱可塑性樹脂Dとしての塩素含有熱可塑性樹脂である塩化ビニル樹脂(大洋塩ビ社製「TH−800」)100質量部と、錫系熱安定剤(日東化成社製「MA300A」)5質量部と、滑剤(コグニス社製「VPN882」)0.5質量部と、紫外線吸収剤(城北化学工業株式会社製「JF77」)0.1部とからなる樹脂組成物を、8インチロールで5分間混練して得られた1mm厚みのロールシート10枚を重ね合わせ、これを温度180℃×圧力30kg/cmで熱圧着して基準積層体を作製した。
この基準積層体について引張溶接強度を試験したところ、溶接強度は43MPaであった。そこで、各実施例・比較例で得た積層体(サンプル)の溶接強度を測定し、当該基準積層体に対する溶接強度低下率(:((基準積層体の溶接強度−サンプルの溶接強度)/基準積層体の溶接強度)×100)をもって次のように評価を行った。
◎:溶接強度低下率が25%未満。
○:溶接強度低下率が25%以上、30%未満。
△:溶接強度低下率が30%以上、35%未満。
×:溶接強度低下率が35%以上。
Figure 0005620166
この結果、B層を設けることで、溶接強度を高めることができることが分かった。この理由は、B層を設けることで、A層とB層間、B層とC層間、B層とD層間の界面接着性を顕著に良好にすることができるためであると考えることができる。
2.軽量性(比重)
実施例及び比較例で得た積層体について、比重測定試験を実施した。
比重測定試験としてはJIS K 7112による測定を実施した。
表2の基準積層体は、溶接強度試験で作製したものと同様である。
3.剛性(曲げ弾性率)
実施例及び比較例で得た積層体について、機械強度試験を実施した。
機械強度試験として、JIS K 7171による曲げ弾性率を測定した。
評価基準としては、基準積層体(溶接強度試験で作製したものと同様)の曲げ弾性率と比較して、次の基準で判定した。
○:2倍以上
×:2倍未満
4.燃焼性
実施例及び比較例で得た積層体について難燃性を評価した。
難燃性評価試験として、UL94V(IEC60695−11−10B法、ASTEM D3801)による燃焼試験を実施した。
表2の基準積層体は、溶接強度試験で作製したものと同様である。
評価基準としては、燃焼性試験の測定結果を以下基準で判定した。
○:V−0
×:V−1
Figure 0005620166
比較例2のように、発泡剤を加えないで非多孔質構造からなるC層を介在させた場合に比べて、実施例1−5のように、発泡剤を加えたり、中空粒子を加えるなどして、多孔質構造からなるC層を介在させた場合には、剛性を維持しつつ、軽量性を高めることができることが分かった。

Claims (6)

  1. 炭素繊維と熱硬化性樹脂Aとの複合化物を主成分として含有する熱硬化性樹脂層(A層)と、塩素含有熱可塑性樹脂を主成分とし、且つ以下の(a)〜(c)から選択される1種又は2種以上の成分Xを含有する熱可塑性樹脂層(B層)と、多孔質構造から形成されるコア層(C層)と、を積層してなる構成を備えた積層体。
    (a)フェノキシ樹脂
    (b)グリシジルエーテル型エポキシ樹脂
    (c)アリールアミン型酸化防止剤
  2. さらに、ハロゲンを含有する熱可塑性樹脂Dを主成分とする熱可塑性樹脂層(D層)を備えた請求項1記載の積層体。
  3. 熱可塑性樹脂層(D層)を最外層として配置してなる構成を備えた請求項2に記載の積層体。
  4. 上記熱硬化性樹脂層(A層)と熱可塑性樹脂層(B層)が隣接する配置よりなる構成を備えた請求項1〜3の何れかに記載の積層体。
  5. 熱圧着されてなることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の積層体。
  6. 熱硬化性樹脂層(A層)の主成分が、炭素繊維を含有するエポキシ樹脂複合化物であることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の積層体。
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