JP7278132B2 - プリプレグ、及び繊維強化複合材料の製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂は硬化収縮が大きいことである。硬化収縮は成形品のそり、ひけ、クラックなどの発生の原因となる。硬化収縮を低減するために低収縮剤を添加するケースなどがあるが、低収縮剤の添加により耐熱性低下や強度低下等が起こる。
また、樹脂の粘度制御が難しい課題もある。一般に、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂を用いたプリプレグの製造方法では、強化繊維へ含浸した樹脂組成物の粘度を酸化マグネシウムやイソシアネート等の増粘剤を用いて目標とする粘度に上げることでタックを抑制している。しかし、水分や温度、増粘剤の添加量の影響で増粘後の粘度が大きくばらつき、安定したタックの制御が難しくなることがある。
更に、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂には反応性希釈剤としてスチレンを含むことが一般的である。未硬化の樹脂組成物を扱う成形作業場では、揮発したスチレンにより作業環境が悪化する課題があり、エポキシ樹脂をベース樹脂とするFRPの中間材料の開発が望まれている。
エポキシ樹脂、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン,1,3-ビス-(アミノメチル)-シクロヘキサン,イソホロンジアミン等のアミノ化合物、ジシアンアミド、及びイミダゾール化合物を含有するエポキシ樹脂組成物(特許文献1)。
特定の脂肪族エポキシ化合物からなる反応性希釈剤と、特定構造の脂環式ジアミンを用い、Bステージ化のポットライフが長いエポキシ樹脂組成物、成形材料および繊維強化複合材料(特許文献2)。
前記炭素繊維基材内に含浸するエポキシ樹脂組成物と、
から成り、
前記エポキシ樹脂組成物が、少なくとも以下の[A]成分~[D]成分
[A]成分:少なくともグリシジルアミン型エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂
[B]成分:[A]成分と硬化反応する下記式(1)
で表される芳香族アミンからなる第1の硬化剤、
[C]成分:増粘粒子及び/又は[A]成分と40℃以下の温度で硬化反応する第2の硬化剤、
[D]成分:粒子径が1000nm以下の有機粒子
を含み、
[A]成分内で[C]成分の少なくとも一部が膨潤している、及び/又は少なくとも一部の[A]成分と[C]成分とが硬化反応していることにより増粘状態にあることを特徴とするプリプレグ。
を含み、
前記炭素繊維基材内に含浸するエポキシ樹脂組成物と、
から成り、
前記エポキシ樹脂組成物が、少なくとも以下の[A]成分~[D]成分
[A]成分:少なくともグリシジルアミン型エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂、
[B]成分:[A]成分と硬化反応する下記式(1)
で表される芳香族アミンからなる第1の硬化剤、
[C]成分:増粘粒子及び/又は[A]成分と40℃以下の温度で硬化反応する第2の硬化剤、
[D]成分:粒子径が1000nm以下の有機粒子
を含み、
[A]成分内で[C]成分の少なくとも一部が膨潤している、及び/又は少なくとも一部の[A]成分と[C]成分とが硬化反応していることにより増粘状態にある。
本発明で用いるエポキシ樹脂組成物は[A]成分~[D]成分を必須成分とし、以下の[E]成分
[E]成分:ジシアンジアミドとウレア系促進剤からなる第3の硬化剤
を任意成分として含む。
なお、特に断りのない限り、本明細書における粘度は、2℃/分の速度で温度を上げた粘度をいう。また、特に断りのない限り、本明細書における粒子径はレーザー回折法による平均粒子径をいう。
トウプリプレグとは、数千~数万本の強化繊維のフィラメントが一方向に配列した強化繊維束に、マトリックス樹脂組成物を含浸させた後、これを紙管等のボビンに巻き取ることにより得られる細幅の中間基材である。なお、本発明において、このようにボビンに巻き取られたもの、或いは巻き取られた後に解舒されたものを「トウプリプレグ」と称す。
炭素繊維基材としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などいずれであって良いが、繊維強度の高いPAN系炭素繊維が好ましい。これらの強化繊維の中でも、比強度、比弾性率が良好で、軽量かつ高強度のFRPが得られる点で、PAN系炭素繊維が特に好ましい。
[A]成分としては、グリシジルアミン型エポキシ樹脂が用いられる。
[B]成分は、下記式(1)
で表される芳香族アミンからなる第1の硬化剤である。
[C]成分は、増粘粒子及び/又は[A]成分と40℃以下の温度で硬化反応する第2の硬化剤である。第2の硬化剤としては、[A]成分と40℃以下の温度で硬化反応をさせる化合物であれば特に制限なく用いられる。本発明において、[C]成分としては、アミン及び/又は酸無水物であることが好ましく、また、25℃で液状の化合物であることが好ましい。アミンとしては、例えば、脂肪族アミン、脂環式アミン、芳香族アミン系硬化剤の各種異性体が挙げられる。
脂環式アミンとしては、例えば1,3-ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、4,4’-メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン等が挙げられる。
芳香族アミンとしては、例えば、ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4-アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート等が挙げられる。
複素環式アミンとしては、例えばピペラジン、1-アミノエチルピペラジン、1,4-ジアミノエチルピペラジン、3-アミノピロリジン、2-(2-アミノエチル)ピロリジン、4,4’-ビピペラジン、4,4’-エチレンジピペリジン、4,4’-トリメチレンジピペリジン、4-(アミノメチル)ピペリジン、3-(4-アミノブチル)ピペリジン等が挙げられる。
酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
25℃での可使時間が30分未満の場合、硬化反応が早過ぎ、樹脂の粘度が上昇し、強化繊維基材内への樹脂含浸が不十分となる場合がある。25℃での可使時間が360分を超える場合、プリプレグ中でエポキシ樹脂組成物が十分に増粘しないため、プレス成形時において後述の増粘粒子が膨潤を開始する前に粘度が大幅に低下して樹脂フローを生じたり、増粘粒子がプリプレグ中で偏在したりする場合がある。
(i)アクリル酸エステル系化合物又はメタクリル酸エステル系化合物、ジエン系化合物の少なくとも1種からなる重合体と、
(ii)アクリル酸エステル系化合物又はメタクリル酸エステル系化合物とラジカル重合性不飽和カルボン酸とからなる重合体と、に、
(iii)金属イオンを添加することでイオン架橋させた複合樹脂であってもよい。
具体的にはエポキシ樹脂組成物を2℃/分で昇温する場合において、増粘粒子が60℃以上で膨潤を開始することが好ましく、80~110℃で膨潤を開始することがより好ましく、85~105℃で膨潤を開始することが特に好ましい。
[D]成分は、粒子径が体積平均粒子径で1000nm以下の有機粒子である。有機粒子は平均粒子径が体積平均粒子径で1~500nmであることが好ましく、10~300nmであることが更に好ましい。この範囲内であれば、本発明のエポキシ樹脂組成物を炭素繊維あるいは炭素繊維を主成分とする織物に含浸させるときに、炭素繊維あるいは織物に含まれるその他の繊維により粒子が濾別され難いため、繊維層の内部にまで粒子を含侵させることができる。ここで、有機粒子の粒子径は、プリプレグ内における粒子径を意味するが、プリプレグ内に含まれている有機粒子の粒子径を測定することは困難である。そのため、炭素繊維あるいは炭素繊維を主成分とする織物に含浸させる前における有機粒子の粒子径が1000nm以下であれば、プリプレグ内における有機粒子の粒子径も1000nm以下であると看做す。ただし、有機粒子が前述の[A]~[C]成分又は後述の[E]成分に溶解して粒子形状が消失する物質である場合は、本発明の[D]成分から除外される。即ち、本発明における[D]成分は、プリプレグに加工する前の原料段階における粒子径が1000nm以下であり、且つプリプレグに加工した後も粒子としてプリプレグ内に残存する有機粒子を意味する。また、前述の[A]~[C]成分又は後述の[E]成分に該当し、かつ粒子径が体積平均粒子径で1000nm以下である物質も本発明の[D]成分から除外される。
有機粒子としては、特に制限はないが、熱可塑樹脂粒子、ブロック共重合体の粒子、コアシェルゴム粒子が好ましい。特に、エポキシ樹脂組成物により高い開口モードの靱性(KIc)を付与させる観点から、コアシェルゴム粒子が好ましい。
コアシェルゴムとは、架橋されたゴム状ポリマーまたはエラストマーを主成分とする粒子状コア成分の表面にコア成分とは異種のシェル成分ポリマーをグラフト重合することで粒子状コア成分の表面の一部あるいは全体をシェル成分で被覆したものである。
コアシェルゴムを構成するコア成分としては、共役ジエン系モノマー、アクリル酸および/またはメタクリル酸エステル系モノマーより選ばれる1種または複数種から重合されたポリマーまたはシリコーン樹脂などがあるが、特に共役ジエン系モノマーであるブタジエンを重合した架橋ポリブタジエンをコア成分として適用したものが、極低温下における破壊靭性の向上に優れているため好適に用いることができる。
コアシェルゴムを構成するシェル成分は、前記したコア成分にグラフト重合されており、コア成分を構成するポリマーと化学結合していることが好ましい。かかるシェル成分としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物等から選ばれた1種または複数種から重合された重合体である。
また、該シェル成分には分散状態を安定化させるために、本発明のエポキシ樹脂組成物を構成する成分と反応する官能基が導入されていることが好ましい。かかる官能基としては、例えばヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基が挙げられる。
コアシェルゴムは平均粒子径が体積平均粒子径で1~500nmの範囲であることが好ましく10~300nmであることが更に好ましい。この範囲内であれば、本発明のエポキシ樹脂組成物を炭素繊維あるいは炭素繊維を主成分とする織物に含浸させるときに、炭素繊維あるいは織物に含まれるその他の繊維によりコアシェルゴム粒子が濾別され難いため、含浸後においてもコアシェルゴム粒子の分散状態が変化しない。
[E]成分は、ジシアンジアミドとウレア系促進剤からなる第3の硬化剤である。
ジシアンジアミド(DICY)の具体例としては、三菱化学(株)製のjERキュアーDICY7、DICY15(商品名)等が挙げられる。
DICYは、ウレア系硬化促進剤と併用する。DICYはエポキシ樹脂への溶解性がそれほど高くないため、十分に溶解させるためには160℃以上の高温に加熱する必要がある。しかし、ウレア系の硬化促進剤と併用することにより溶解温度を下げることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、上記の[A]~[E]成分の他に熱可塑性樹脂を含有していてもよい。熱可塑性樹脂としては、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリアラミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリエーテルスルホンポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリビニルホルマールのようなエンジニアリングプラスチックに属する熱可塑性樹脂の一群がより好ましく用いられる。耐熱性や靭性、取り扱い性に優れることから、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びポリビニルホルマールなどが特に好ましく使用される。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、難燃剤や無機系充填剤、内部離型剤が配合されてもよい。
有機ホスフィン酸金属塩としては、例えばトリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、ビスジフェニルホスフィン酸チタニルなどが挙げられる。これらの中でも、高い難燃性や耐湿性を有するエポキシ樹脂組成物が得られる点で、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウムが好ましい。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機ホスフィン酸金属塩やその複合体の市販品としては、例えばExolit OP930、OP935、OP1230(以上、クラリアントジャパン株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
有機ホスフィン酸金属塩の平均粒子径は50μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。平均粒子径が50μm以下であれば、十分な難燃性がより発現しやすくなる。
エポキシ樹脂組成物は、[A]~[D]成分、及び必要に応じて[E]成分を混合することにより製造できる。エポキシ樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のいずれの方法を用いてもよい。例えば、各成分を同時に混合して調製してもよく、あらかじめ[A]成分に[B]成分を加熱溶解した後、[C]成分の増粘粒子、[D]成分を各々適宜分散させたマスターバッチを調製し、これを用いて調製してもよい。強化繊維基材層内への含浸性の観点から、[A]成分、[B]成分、[C]成分の増粘粒子、[D]成分を予め分散させたマスターバッチを調製し、炭素繊維基材への含浸前に、25℃で[C]成分の第2の硬化剤、を混合することが好ましい。マスターバッチ樹脂と[C]成分の第2の硬化剤を混合後、180分以内に強化繊維基材への含浸することが好ましく、120分以内がより好ましい。
本発明のプリプレグの製造方法は、ホットメルト法により強化繊維基材内にエポキシ樹脂組成物を含浸させた後、所定の加熱処理を行うことにより作製することができる。
本発明のトウプリプレグは、上記エポキシ樹脂組成物を調製し、これを強化繊維束に含浸させ、さらに紙管などのボビンに巻き取ることにより製造することができる。エポキシ樹脂組成物を含浸させる強化繊維束は、樹脂組成物との接触面積が広くなるため、拡幅され扁平形状であることが好ましい。
強化繊維束を拡幅する方法としては、円筒バーに擦過させる方法;振動を加える方法;押しつぶす方法などが挙げられる。
本発明のSMCは、上述したエポキシ樹脂組成物を均一に塗布したフィルムを一対製造し、片方のフィルムの樹脂組成物塗布面に強化繊維束を無秩序に撒き、もう一方のフィルムの樹脂組成物塗布面と貼り合わせ、シート状にしたものを圧着含浸し、その後、当該エポキシ樹脂組成物に含まれる増粘粒子の膨潤、及び/又は[A]成分と[C]成分の硬化反応で室温又は加温下で増粘することにより製造することができる。
本発明の多積層織物プリプレグは、上述したエポキシ樹脂組成物を均一に塗布したフィルムを一対製造し、片方のフィルムの樹脂組成物塗布面に多積層織物を置き、もう一方のフィルムの樹脂組成物塗布面と貼り合わせ、シート状にしたものを圧着含浸し、その後、当該エポキシ樹脂組成物に含まれる増粘粒子の膨潤、及び/又は[A]成分と[C]成分の硬化反応で室温又は加温下で増粘することにより製造することができる。
エポキシ樹脂組成物フィルムをホットメルト法で強化繊維基材層内に含浸させる際の含浸圧力は、その樹脂組成物の粘度・樹脂フローなどを勘案し、適宜決定する。
本発明のプリプレグを加熱加圧して硬化させることにより、本発明のCFRPを得ることができる。
本発明のCFRPの製造方法としては、オートクレーブ成形法が好ましく用いられる。オートクレーブ成形法は、金型の下型にプリプレグ及びフィルムバッグを順次敷設し、該プリプレグを下型とフィルムバッグとの間に密封し、下型とフィルムバッグとにより形成される空間を真空にするとともに、オートクレーブ成形装置で、加熱と加圧をする成形方法である。成形時の条件は、昇温速度を1~10℃/分とし、0.2~0.7MPa、130~180℃で20~120分間、加熱及び加圧することが好ましい。
本発明のCFRPの製造方法としては、プリプレグを構成するエポキシ樹脂組成物の特徴を活かして、生産性が高く、良質なCFRPが得られるという観点から、プレス成形法が好ましい。プレス成形法によるCFRPの製造は、本発明のプリプレグ又は本発明のプリプレグを積層して形成したプリフォームを、金型を用いて加熱加圧することにより行う。金型は、予め硬化温度に加熱しておくことが好ましい。
本発明のCFRPの製造方法としては、内圧成形法も好ましく採用される。内圧成形法とは、袋状の内圧バッグの外側にプリプレグを敷設して、内部に内圧バッグを有するプリプレグ積層体を得、このプリプレグ積層体を金型内に配置して型締し、該金型内で前記内圧バッグを膨張させることにより、プリプレグを該金型の内壁に内接させ、この状態で加熱硬化させる成形方法である。
生産性の観点から、プリプレグを敷設する前に、金型を硬化温度に予熱しておくことが好ましい。
本発明のCFRPの製造方法としては、真空アシスト圧空加圧成形法も好ましく用いられる。真空アシスト圧空加圧成形法とは、金型の下型にプリプレグ及びフィルムバッグを順次敷設し、該プリプレグを下型とフィルムバッグとの間に密封し、下型とフィルムバッグとにより形成される空間を真空にするとともに、上型と下型とを型締めして形成される金型のキャビティ内を空気加圧してプリプレグを加熱硬化させる成形方法である。
生産性の観点から、下型は急速に加熱できるような加熱機構を有していることが好ましい。
・“テナックス(登録商標)”STS40-24K:(引張強度4.2GPa、引張弾性率240GPa、帝人(株)製)
・“テナックス(登録商標)”IMS655-24K:(引張強度5.9GPa、引張弾性率290GPa、帝人(株)製)
(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)
・“Araldite(登録商標) MY721”:テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ハンツマン社製、グリシジルエーテル個数/芳香環個数=0、以下「MY721」と略記する)
・“Araldite(登録商標) MY0510”: 4-グリシジルオキシ-N,N-ジグリシジルアニリン、ハンツマン社製、以下「MY0510」と略記する)
・”3,4’-TGDDE”:
この3,4’-TGDDEエポキシ樹脂の合成方法は以下の通りである。
温度計、滴下漏斗、冷却管および攪拌機を取り付けた四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で3,4’-ジアミノジフェニルエーテル1000g(5.0mol)、トルエン2500g、蒸留水250gを仕込んだ。これにエピクロロヒドリン5545g(60mol)を加え、80℃で24時間撹拌して付加反応を完結させ、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシ-3-クロロプロピル)-3,4’-ジアミノジフェニルエーテルを得た。続いて、フラスコ内温度を30℃に下げてから硫酸水素テトラブチルアンモニウム50.9g(150mmol)を加え、これに48%NaOH水溶液2497g(30mol)を60分かけて滴下し、更に4時間撹拌した。得られた反応液へ蒸留水3000mLを加え、有機層を分取した。得られた有機層を0.5%食塩水で1回、蒸留水で1回洗浄を行い、有機層を硫酸ナトリウムで脱水した後に濾過し、濾液を濃縮することで赤褐色の粘性液体を得た。
(グリシジルアミン型エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂)
・“jER(登録商標)”828:液状ビスフェニールA型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製
・キュアハードMED:上記化学式(2)の構造を有する(クミアイ化学工業(株)製)。
・M-MIPA:上記化学式(4)の構造を有する(ロンザ社製)。
・M-CDEA:上記化学式(5)の構造を有する(ロンザ社製)。
“IPDA:(イソフォロンジアミン、ピイ・ティ・アイ・ジャパン(株)製)
“PACM:(ビスパラアミノシクロヘキシルメタン、ピイ・ティ・アイ・ジャパン(株)製)
“ゼフィアック(登録商標)”F320:(メタクリル酸アルキル重合体)、平均重合度30,000、アイカ工業(株)製)
“ゼフィアック(登録商標)”F325:(メタクリル酸アルキル重合体)、平均重合度4,000、アイカ工業(株)製)
カネエース(登録商標)”MX-416”: グリシジルアミン型エポキシ樹脂であるテトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンにコアシェルゴム粒子を25質量%分散させた液状マスターバッチ、コアシェルゴム粒子径:100nm(カタログ値)
Dicy7:(ジシアンジアミド、三菱化学(株)製)
“オミキュア(登録商標)”24:(2,4’-トルエンビス(3,3-ジメチルウレア)、ピイ・ティ・アイ・ジャパン(株)製)
2P4MHZ-PW:(2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、四国化成工業(株)製)
・PES 5003P:ポリエーテルスルホン(エポキシ樹脂に可溶な熱可塑性樹脂)(以下、PES)、住友化学工業株式会社製、平均粒子径20μm
(B以外の硬化剤)
・4,4’-DDS:4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化社製の芳香族アミン系硬化剤)
(1) エポキシ樹脂組成物の調合
エポキシ樹脂組[A]、[B]成分、[C]成分の増粘粒子、[D]成分、[E]成分等を表1~4に記載する割合で計量し、三本ロールで混練した。この混合樹脂に、[C]成分の第2の硬化剤を表1に記載する割合で混合し、エポキシ樹脂混合物を得た。
(2-1) 多軸織物プリプレグの作製
多軸織物プリプレグは、次のように作製した。リバースロールコーターを用いて、離型紙上に、上記で得られたエポキシ樹脂組成物を塗布して205g/m2目付の樹脂フィルムを作製した。次に、炭素繊維「IMS650-24K」からなる炭素繊維多軸織物〈1〉(+45/90/-45/0の角度で4枚積層しステッチしたもの、織物基材の炭素繊維総目付760g/m2)、および、炭素繊維多軸織物〈2〉(-45/90/+45/0の角度で4枚積層しステッチしたもの、織物基材の炭素繊維総目付760g/m2)を使用し、この炭素繊維多軸織物の両面に上記樹脂フィルムを積重し、温度80℃、圧力0.2MPaの条件で加熱加圧した。その後、多軸織物プリプレグを40℃で48時間加熱処理して多軸織物プリプレグを作製した。この多軸織物プリプレグの炭素繊維含有率は65質量%であった。
エポキシ樹脂組成物の増粘前の粘度は、調整後1時間以内のエポキシ樹脂組成物を、レオメトリクス社製レオメーターARES-RDAを用いて測定した。
また、エポキシ樹脂組成物の増粘後の粘度は、40℃で48時間放置した後のエポキシ樹脂組成物を、レオメトリクス社製レオメーターARES-RDAを用いて測定した。
粘度評価は、直径25mmのパラレルプレート間の樹脂の厚さを0.5mmとし、角速度10ラジアン/秒の条件で昇温速度2℃/分で150℃まで粘度測定を行った。
上記で得られた多軸織物プリプレグ〈1〉を2積層、多積層織物プリプレグ〈2〉を2積層、合計4積層した積層物をバッグ内に入れ、これをオートクレーブ内で2℃/分で昇温し、180℃にて120分間加熱し、硬化させて成形板(炭素繊維強化複合材料)を作製した。この間、オートクレーブ内を0.7MPaに加圧し、バッグ内を真空に保った。CFRP硬化物を ASTM D7028法に准じて、炭素繊維強化複合材料のガラス転移温度を測定した。上記成形板を長さ(繊維方向)55mm×幅6mmの試験片に加工し、ユービーエム社製Rheogel-E4000を用い、測定周波数1Hz、昇温速度5℃/分、条件で、30℃からゴム弾性領域まで貯蔵弾性率E’を測定した。logE’を温度に対してプロットし、logE’の平坦領域の近似直線と、E’が転移する領域の近似直線との交点から求められる温度をガラス転移温度(Tg)として記録した。
上記、ガラス転移温度測定で成形した成形版を50mm×50mmの試験片に加工し、プレッシャークッカーPC-422R8((株)平山製作所製)を用い、121℃、100%RH、2気圧の条件で24時間湿熱処理を行い、処理前後の重量を比較することにより吸水率の評価とした。
上記、ガラス転移温度測定で成形した方法で、成形板を作製し、ASTM D 6484法に准じて、試験速度1.27mm/minで炭素繊維強化複合材料の有孔圧縮強度を測定した。サンプル数は5個とし、その平均値を用いた。
(2-2) 熱可塑樹脂製の不織布入り多軸織物プリプレグの作製
熱可塑樹脂製の不織布入り多軸織物プリプレグは、次のように作製した。一方向に引き揃えた炭素繊維「IMS650-24K」を1層あたり190g/m2のシート状にして、ポリアミド樹脂製の不織布(1枚当たりの目付:g/m2)を片面に配置し、炭素繊維多軸織物〈3〉(+45/V/90/V/-45/V/0/Vの角度で4枚積層しステッチしたもの、織物基材の炭素繊維総目付760g/m2)、および、炭素繊維多軸織物〈4〉(-45/V/90/V/+45/V/0/Vの角度で4枚積層しステッチしたもの、織物基材の炭素繊維総目付760g/m2)を準備した。ここでは、Vはポリアミド樹脂製の不織布を示す。
リバースロールコーターを用いて、離型紙上に、上記で得られたエポキシ樹脂組成物を塗布して、多軸織物プリプレグの炭素繊維含有率が65質量%になるようにした以外は、実施例1と同様な方法でプリプレグを作製した。
上記で得られた多軸織物プリプレグ〈3〉を3積層、多積層織物プリプレグ〈4〉を3積層、合計6積層した積層物をバッグ内に入れ、これをオートクレーブ内で2℃/分で昇温し、180℃にて120分間加熱し、硬化させて成形板(炭素繊維強化複合材料)を作製した。この間、オートクレーブ内を0.7MPaに加圧し、バッグ内を真空に保った。CFRPの厚みは4.7mmtであった。CFRP硬化物を ASTM D 7137法に准じて、30.5Jの衝撃を加えた後、圧縮強度を測定した。結果は表2に示した。
(2-3) SMCの作製
SMCは次のように作製した。ポリエチレンフィルムの片面上に、目付量が600g/m2となるように上記で得られたエポキシ樹脂組成物を均一に塗布して第一の樹脂シートを作成した。次いで、前記第一の樹脂シートの面上に、炭素繊維「STS40-24K」を長さ約25mmに切断して、繊維の目付量が1200g/m2となるように二次元ランダムに堆積させて強化繊維束のシート状物を作成した。更に、第二の支持体となるポリエチレンフィルムの片面上に、第一の樹脂シートと同じ目付量の樹脂を塗布して第二の樹脂シートを作成し、前記強化繊維シートの繊維に向けて第二の樹脂シートを貼付した。これを温度80℃、圧力0.5MPaの条件で加熱加圧し、SMC前駆体を得た。その後、このSMC前駆体を40℃で48時間加熱処理してSMCを作製した。このSMCの炭素繊維含有率は50質量%であった。
上記で得られたSMCを2ply積層し、成形用金型にチャージ率(金型面積に対するSMCの面積の割合)65%でチャージして、金型温度160℃、圧力5MPaの条件で20分間加熱圧縮し、エポキシ樹脂組成物を硬化させ、厚さ約2mm、300mm角の平板状の繊維強化複合材料を得た。
上記で得られた2mm厚の炭素繊維複合材料に関して、試験片(長さ100mm×幅25mm)に加工し、ASTM D790法に准じて、温度23℃、湿度50%RHの環境下、3点曲げ治具で曲げ試験を行い、曲げ強度、曲げ弾性率および曲げ伸度を算出した。結果は表3に示した。
尚、曲げ試験のサポート間距離は、厚み×16倍の32mmとした。
(2-4) トウプレグの作製
強化繊維束として、フィラメント数24,000本の炭素繊維「STS40-24K」を用いてトウプリプレグを作製した。
具体的な作製方法を以下に示す。クリールから幅10mmの強化繊維束を送り出し、開繊バーを通し、幅15mmに拡幅させた。拡幅された強化繊維束を、40℃程度に加温されたエポキシ樹脂組成物が塗布されたタッチロールに接触させ、強化繊維束にエポキシ樹脂組成物を付着させた。エポキシ樹脂組成物が付着した強化繊維束を、80℃程度に加温された含浸ロールを通過させることにより、エポキシ樹脂組成物を強化繊維束内部まで含浸させた後、ワインダーにて紙管に巻き取った。その後、40℃で48時間加熱処理してトウプリプレグを作製した。
なお、ドクターブレードとタッチロール間のクリアランスを調整することによって、強化繊維束に対する樹脂の付着量を調整した。トウプレグの炭素繊維含有率は65質量%であった。トウプレグの幅は、約8.5mmであった。
上記で得られたトウプレグを8.5mm間隔で平板上に配置し、[45°/0°/-45°/90°]2s の合計16層に積層してなる350mm×300mmのプリフォームを得た。得られたプリフォームをバッグ内に入れ、これをオートクレーブ内で2℃/分で昇温し、180℃にて120分間加熱し、硬化させて成形板(炭素繊維強化複合材料)を作製した。この間、オートクレーブ内を0.7MPaに加圧し、バッグ内を真空に保った。結果は表4に示した。
Claims (14)
- 炭素繊維基材と、
前記炭素繊維基材内に含浸するエポキシ樹脂組成物と、
から成るプリプレグであって、
前記エポキシ樹脂組成物が、少なくとも以下の[A]成分~[D]成分
[A]成分:少なくともグリシジルアミン型エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂、
[B]成分:[A]成分と硬化反応する下記式(1)
で表される芳香族アミンからなる第1の硬化剤、
[C]成分:[A]成分と40℃以下の温度で硬化反応する第2の硬化剤、
[D]成分:粒子径が1000nm以下の有機粒子
を含み、
前記エポキシ樹脂組成物が、増粘前における粘度(30℃)が5~100Pa・sであり、増粘後における粘度(30℃)が5,000~100,000Pa・sであり、
前記プリプレグにおいて、前記エポキシ樹脂組成物が、前記増粘後における粘度に増粘していることを特徴とするプリプレグ。 - 前記[A]成分が、グリシジルアミン型エポキシ樹脂を、エポキシ樹脂の総量に対して50質量%以上含むエポキシ樹脂である請求項1に記載のプリプレグ。
- 前記第2の硬化剤がアミン系硬化剤であり、その含有量がエポキシ基の総量あたり、活性水素当量が0.1~0.35当量となる量である請求項1項又は2に記載のプリプレグ。
- 前記アミン系硬化剤が、1,3-ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、4,4’-メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4-アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエートの何れかである請求項3に記載のプリプレグ。
- 前記アミン系硬化剤が、1,3-ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、4,4’-メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタンの何れかである請求項3に記載のプリプレグ。
- 前記アミン系硬化剤が、イソホロンジアミン、又はビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタンである請求項3に記載のプリプレグ。
- 前記[D]成分が、コアシェルゴムである請求項1乃至6の何れか1項に記載のプリプレグ。
- さらに[E]成分:ジシアンジアミドとウレア系促進剤からなる第3の硬化剤を含む請求項1乃至7の何れか1項に記載のプリプレグ。
- 前記[C]成分が、メタクリル酸エステル系化合物、アクリル酸エステル系化合物及びビニル系化合物から成る群から選択される1種又は2種以上の重合単位を有する重合体から成る増粘粒子をさらに含み、[A]成分内で前記増粘粒子の少なくとも一部が膨潤している請求項1乃至8の何れか1項に記載のプリプレグ。
- 前記炭素繊維基材が炭素繊維ストランドである請求項1乃至9の何れか1項に記載のプリプレグ。
- 前記炭素繊維基材が多積層織物である請求項1乃至9の何れか1項に記載のプリプレグ。
- 前記多積層織物が、各層間に存在する熱可塑樹脂製の不織布を介して一体化された多積層織物である請求項11に記載のプリプレグ。
- 前記炭素繊維基材が平均繊維長5~100mmの短繊維で形成されたマットである請求項1乃至9の何れか1項に記載のプリプレグ。
- 請求項1乃至13の何れか1項に記載のプリプレグを、温度130~180℃、圧力0.2~10MPaで10~120分間加熱加圧する炭素繊維強化複合材料の製造方法。
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