JP2022137823A - エポキシ樹脂組成物、樹脂硬化物および繊維強化複合材料 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物、樹脂硬化物および繊維強化複合材料 Download PDF

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Abstract

【課題】粘度が低く、可使時間が長く、速硬化性を有するエポキシ樹脂組成物、樹脂硬化物および繊維強化複合材料を提供する。
【解決手段】硬化剤A、硬化剤B、硬化剤C、エポキシ樹脂D、エポキシ樹脂Eおよび樹脂粒子Fを含有してなるエポキシ樹脂組成物であって、硬化剤Aは、アミノ基に対する2つのオルト位にそれぞれ置換基を有する芳香族ポリアミンであり、該置換基はアルキル基、芳香族基およびハロゲン基から選択され、硬化剤Bは、25℃で液体である芳香族ポリアミンであり、硬化剤Cは、芳香族ポリアミンであり、該芳香族ポリアミンは、アミノ基に対するオルト位に電子供与基をただ一つ有するかオルト位に置換基を有しない芳香族ポリアミンであり、エポキシ樹脂Dは、グリシジル基を4つ以上含むモノマーから構成されるエポキシ樹脂から構成され、エポキシ樹脂Eは、グリシジル基を2つまたは3つ含むモノマーから構成されるエポキシ樹脂から構成されることを特徴とする、エポキシ樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、エポキシ樹脂用硬化剤組成物に関し、詳しくは、可使時間が長く、速硬化性を有するエポキシ樹脂組成物、樹脂硬化物および繊維強化複合材料に関する。
繊維強化複合材料は、軽量かつ高強度、高剛性であるため、釣り竿やゴルフシャフト等のスポーツ・レジャー用途、自動車や航空機等の産業用途等の幅広い分野で用いられている。熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とする複合材料の成形方法としては、型内に配置した繊維強化基材に液状の樹脂組成物を含浸、硬化して繊維強化複合材料を得るレジン・トランスファー・モールディング(RTM)法や、予め樹脂を繊維強化基材に含浸させてシート状に形成したプリプレグ(中間基材)を成形する方法、等が知られている。
近年では、その中でも特に、繊維強化複合材料を製造するための工程が少なく、オートクレーブのような高価な設備を必要としない、低コストで生産性の優れた製造方法であるRTM成形法が注目されている。RTM成形法に用いるマトリックス樹脂の組成としては、主としてエポキシ樹脂と硬化剤とを含み、場合により他の添加剤を含む。高い力学物性を有する硬化物や繊維強化複合材料を得るために、硬化剤に芳香族ポリアミンを利用することが一般的である。
RTM成形法に利用するエポキシ樹脂組成物においては、強化繊維基材へのエポキシ樹脂組成物含浸時に硬化剤が濾別されることを防ぐため、硬化剤や添加剤は主剤となるエポキシ樹脂へ溶解した状態で保管、使用することが多い。この様に、主剤のエポキシ樹脂へ硬化剤や添加剤を溶解混合したエポキシ樹脂組成物を、1液型のエポキシ樹脂組成物という。この時、エポキシ樹脂へ硬化剤が溶解した状態で存在するため、エポキシ樹脂と硬化剤の反応が比較的起こり易く、エポキシ樹脂組成物のシェルフライフが短くなるという問題点があった。そのため、1液型のエポキシ樹脂組成物は冷凍保管する必要があった。
この課題を解決するため、エポキシ樹脂と硬化剤を使用する直前に混合する、2液型エポキシ樹脂組成物が検討されている。2液型エポキシ樹脂組成物とは、エポキシ樹脂を主成分として含む主剤液と、硬化剤を主成分として含む硬化剤液(硬化剤組成物)とから構成され、使用直前にこれらの2液を混合して得られるエポキシ樹脂組成物のことである。
2液型エポキシ樹脂組成物においては、主剤液と硬化剤液を使用直前に混合するため、その混合の容易さが重要となる。1液型エポキシ樹脂組成物に使用される硬化剤を2液型エポキシ樹脂組成物の硬化剤とすることも可能ではあるが、特許文献1に記載されるように、1液型エポキシ樹脂組成物に使用される芳香族ポリアミン硬化剤は通常固体であり、主剤液との混合不良が起きやすい。そのため、硬化剤組成物は液状であることが望ましい。
液状の芳香族ポリアミンを硬化剤としたエポキシ樹脂組成物としては、特許文献2および3に記載のものが例示される。しかしながら、特許文献2や3に記載のエポキシ樹脂組成物から得られる樹脂硬化物は、自動車や航空機等の産業用途に求められる弾性率や破壊靭性などの力学特性は備えておらず、その向上が要求される。
また、RTM法において、繊維強化複合材料を高効率で生産するために、樹脂硬化時間の短縮を実現する、速硬化性が要求される。特許文献4には、フェノール性水酸基を有する芳香族環を2個以上有する化合物を用いた、速硬化性の2液型エポキシ樹脂組成物が提
案されている。しかしながら、フェノール性水酸基を有する化合物をエポキシ樹脂組成物へ添加した場合、その反応性の高さにより樹脂組成物の粘度上昇が速く、RTM成形における可使時間が極端に短くなってしまい、強化繊維基材内部に、十分な量の樹脂を含浸させることが困難となる。そのため、この様なエポキシ樹脂組成物を用いて作製される繊維強化複合材料は、ボイド等の多くの欠陥を内在する。その結果、繊維強化複合材料構造体の圧縮性能及び損傷許容性などが低下するという問題があった。
このように、繊維強化複合材料の高い生産性を実現するための十分な速硬化性を有し、かつ自動車や航空機等の産業用途で要求される耐熱性や力学特性を高レベルで兼ね備えた樹脂硬化物を得ることのできる2液型エポキシ樹脂組成物はこれまで存在しなかった。
特開2014-148572号公報 特開2015-193713号公報 WO2009/119467号公報 特許第6617559号公報
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、粘度が低く、可使時間が長く、速硬化性を有するエポキシ樹脂組成物を提供することにある。また、本発明のさらなる目的は、このエポキシ樹脂組成物を使用して作製され、産業用途に求められる耐熱性と力学特性を備えたエポキシ樹脂組成物、樹脂硬化物および繊維強化複合材料を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討した結果、所定のエポキシ樹脂と硬化剤および樹脂粒子成分との組み合わせから成るエポキシ樹脂組成物を用いることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、硬化剤A、硬化剤B、硬化剤C、エポキシ樹脂D、エポキシ樹脂Eおよび樹脂粒子Fを含有してなるエポキシ樹脂組成物であって、硬化剤Aは、アミノ基に対する2つのオルト位にそれぞれ置換基を有する芳香族ポリアミンであり、該置換基はアルキル基、芳香族基およびハロゲン基から選択され、硬化剤Bは、25℃で液体である芳香族ポリアミンであり、硬化剤Cは、芳香族ポリアミンであり、該芳香族ポリアミンは、アミノ基に対するオルト位に電子供与基をただ一つ有するかオルト位に置換基を有しない芳香族ポリアミンであり、エポキシ樹脂Dは、グリシジル基を4つ以上含むモノマーから構成されるエポキシ樹脂から構成され、エポキシ樹脂Eは、グリシジル基を2つまたは3つ含むモノマーから構成されるエポキシ樹脂から構成されることを特徴とする、エポキシ樹脂組成物である。
本発明によれば、粘度が低く、可使時間が長く、速硬化性を有するエポキシ樹脂組成物を提供することができる。また、産業用途に求められる耐熱性と力学特性を備えたエポキシ樹脂組成物、樹脂硬化物および繊維強化複合材料を提供することができる。
本発明によればさらに、このエポキシ樹脂組成物を使用して作製され、産業用途に求められる耐熱性と力学特性を備えたエポキシ樹脂組成物、樹脂硬化物および繊維強化複合材料を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、繊維強化複合材料を「FRP」、炭素繊維強化複合材料を「CFRP」と略記することがある。
〔硬化剤〕
本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれる硬化剤A、硬化剤Bおよび硬化剤Cの合計量は、エポキシ樹脂組成物中に配合されている全てのエポキシ樹脂を硬化させるのに適した量であり、用いるエポキシ樹脂および硬化剤の種類に応じて適宜調節される。
具体的には、本発明のエポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂に含まれるエポキシ基の数と硬化剤A、硬化剤Bおよび硬化剤Cに含まれる活性水素の数との比率を、好ましくは0.7~1.3、さらに好ましくは0.8~1.2、特に好ましくは0.9~1.1とする。この比率が0.7未満であるか1.3を超えると、エポキシ基と活性水素のモルバランスが崩れ、得られる樹脂硬化物の架橋密度が不十分となり、耐熱性や、弾性率や破壊靭性などの力学特性が低くなってしまう。
本発明において、硬化剤A、硬化剤Bおよび硬化剤Cを混合して硬化剤液として用いるとき、その硬化剤液は、200℃以下の温度に加熱することで均一な液体となり、その後室温で均一な液体状態を保持することが可能な期間は、好ましくは1週間以上、さらに好ましくは3週間以上、特に好ましくは1ヶ月以上である。室温で均一な液体状態を保持することが可能な期間が1週間未満であると、実質的に液状の熱硬化性樹脂用硬化剤組成物として扱うことが困難となり、エポキシ主剤液との混合不良が起きやすくなってしまい好ましくない。
〔硬化剤A〕
硬化剤Aは、アミノ基に対する2つのオルト位にそれぞれ置換基を有する芳香族ポリアミンであり、該置換基はアルキル基、芳香族基およびハロゲン基から選択される。また、硬化剤Aは25℃で固体である。この硬化剤Aを含有することで、エポキシ樹脂との組成物として硬化させたときに、優れた耐熱性や弾性率、破壊靭性などの力学特性を備えるエポキシ樹脂硬化物を得ることができる。
硬化剤Aとして用いる、アミノ基に対する2つのオルト位にそれぞれ置換基を有する芳香族ポリアミンとして、下記化学式(1)で表される化合物を用いることができる。
Figure 2022137823000001
ただし、上記の化学式(1)中、R~Rはそれぞれ独立に、脂肪族置換基、芳香族置換基、アルコキシ基およびハロゲン原子のいずれかであり、かつ少なくとも1つの置換基は炭素数1~6の脂肪族置換基、芳香族置換基およびハロゲン原子のいずれかである。Xは-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-S-、-O-、-SO-、-CO-、-CONH-、-NHCO-、-C(=O)-および-O-C(=O)-のいずれかである。
化学式(1)において、炭素数は1~6の脂肪族置換基として、メチル基、エチル基、
プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基が例示される。芳香族置換基として、フェニル基、ナフチル基が例示される。
硬化剤Aの芳香族ポリアミンは、好ましくは芳香族ジアミンであり、なかでも、4,4’-ジアミノジフェニルメタン誘導体が特に好ましい。
この芳香族ポリアミンとして、具体的には下記化学式(2)~(5)で示される化合物が例示される。これらは単独で用いてもよく、併用しても用いてもよい。
Figure 2022137823000002
〔硬化剤B〕
硬化剤Bは、25℃で液体である芳香族ポリアミンである。この芳香族ポリアミンを含有することで、室温で液体の状態を保持することができる熱硬化性樹脂用硬化剤組成物を得ることができる。
硬化剤Bの芳香族ポリアミンとして、好ましくはフェニレンジアミン誘導体または4,4’-ジアミノジフェニルメタン誘導体を用いる。この芳香族ポリアミンとして、下記化学式(6)または(7)で表される化合物を例示することができる。
Figure 2022137823000003
ただし、化学式(6)中、R~Rはそれぞれ独立に、水素原子、脂肪族置換基、アルコキシ基およびチオアルコキシ基のいずれかであり、かつ少なくとも1つの置換基は炭素数1~6の脂肪族置換基およびチオアルコキシ基のいずれかである。
Figure 2022137823000004
ただし、化学式(7)中、R~R10はそれぞれ独立に、脂肪族置換基、メトキシ基、アルコキシ基およびチオアルコキシ基のいずれかである。
硬化剤Bとして用いる芳香族ポリアミンとして。具体的には下記化学式(8)~(12)で表される化合物を例示すことができる。これらは単独で用いてもよく、併用してもよい。
Figure 2022137823000005
〔硬化剤C〕
硬化剤Cは、芳香族ポリアミンであり、該芳香族ポリアミンは、アミノ基に対するオルト位に電子供与基をただ一つ有するかオルト位に置換基を有しない芳香族ポリアミンである。硬化剤Cの芳香族ポリアミンの電子供与基は、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基またはエトキシ基である。この硬化剤Cを含有することで、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化反応が促進され、エポキシ樹脂組成物に、速硬化性を付与することができる。
硬化剤Cとして、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-チオジアニリン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニ
ルメタン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、2,4,6-トリメチル-1,3-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、o-ジアニシジン、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジンを例示することができる。なかでも、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,6-ジアミノトルエン、m-フェニレンジアミンを用いることが好ましく、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,6-ジアミノトルエン、m-フェニレンジアミンが好ましい。
硬化剤Cの融点は、好ましくは200℃以下、さらに好ましくは150℃以下、特に好ましくは120℃以下である。融点が200℃を超えると、硬化剤Cを硬化剤Aおよび硬化剤Bと混合したときに液体状の組成物を得ることが困難となり、得られる熱硬化性樹脂用硬化剤組成物を室温で液体状に保持することが困難となり易く好ましくない。また、硬化剤Aは25℃で固体である。
〔エポキシ樹脂D〕
本発明のエポキシ樹脂組成物は、グリシジル基を4つ以上含むモノマーから構成されるエポキシ樹脂Dを含む。エポキシ樹脂Dは、1種類のモノマーから構成されるホモポリマーであってもよく、2種類以上のモノマーから構成されるコポリマーであってもよく、ホモポリマーおよび/またはコポリマーの混合物であってもよい。
グリシジル基を4つ以上含むモノマーから構成されるエポキシ樹脂Dの構成モノマーは、好ましくは下記化学式(13)で示される。
Figure 2022137823000006
(ただし、化学式(13)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる1つを表し、Xは-CH-、-O-、-S-、-CO-、-C(=O)O-、-O-C(=O)-、-NHCO-、-CONH-、-SO-から選ばれる1つを表す。)
~Rが、脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基である場合、その炭素数は1~4であることが好ましい。
エポキシ樹脂Dの構成モノマーとして、テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-3,4’-ジアミノジフェニルエーテルおよびテトラグリシジル-3,3’-ジアミノジフェニルメタンからなる群から選択される1種または2種以上の組み合わせであることが特に好ましい。
エポキシ樹脂Dは、これらのモノマーから構成されるホモポリマー、コポリマー、また
はそれらの混合物であることが好ましい。R~Rが水素原子であると、樹脂硬化物の特殊な立体構造形成が阻害され難いため好ましい。また、化合物の合成が容易になるため、Xは-O-であることが好ましい。
エポキシ樹脂Dの構成モノマーは、どのような方法で合成してもよい。例えば、原料である芳香族ジアミンとエピクロロヒドリンなどのエピハロヒドリンとを、好ましくは酸触媒の存在下で反応させてテトラハロヒドリン体を得た後、次いでアルカリ性化合物を用いて環化反応することにより得ることができる。具体的には、後述の実施例の方法で合成することができる。
芳香族ジアミンとして、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルメタンを例示することができる。これらの中でも、耐熱性の観点からアミノ基を有する2つの芳香環がエーテル結合により連結している芳香族ジアミンが好ましく、エーテル結合に対して一方のアミノ基がパラ位、もう一方のアミノ基がオルト位に位置している芳香族ジアミンであることがより好ましい。このような芳香族ジアミンとして、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルスルホンを例示することができる。
エピハロヒドリンとして、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピフルオロヒドリンを例示することができる。これらの中でも、反応性や取扱性の観点から、エピクロロヒドリンおよびエピブロモヒドリンが特に好ましい。
原料である芳香族ジアミンとエピハロヒドリンとの質量比は、好ましくは1:1~1:20、さらに好ましくは1:3~1:10である。反応時に用いる溶媒として、エタノールやn-ブタノールなどのアルコール系溶媒、メチルイソブチルケトンやメチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、アセトニトリルやN,N-ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性極性溶媒、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒を例示することができる。特に、エタノールやn-ブタノールなどのアルコール系溶媒、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒が好ましい。
溶媒の使用量は芳香族ジアミンに対して、好ましくは1~10質量倍である。酸触媒としてはブレンステッド酸とルイス酸のいずれも好適に用いることができる。ブレンステッド酸としてはエタノールや水、酢酸が好ましく、ルイス酸としては四塩化チタンや硝酸ランタン六水和物、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体が好ましい。
反応時間は、好ましくは0.1~180時間、さらに好ましくは0.5~24時間である。反応温度は、好ましくは20~100℃、さらに好ましくは40~80℃である。
環化反応時に用いるアルカリ性化合物として、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが例示される。アルカリ性化合物は固体として添加しても水溶液として添加してもよい。
環化反応時には相間移動触媒を用いてもよい。相間移動触媒として、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、硫酸水素テトラブチルアンモニウムなどの第四級アンモニウム塩、臭化トリブチルヘキサデシルホスホニウム、臭化トリブチルドデシルホスホニウムなどのホスホニウム化合物、18-クラウン-6-エーテルなどのクラウンエーテル類を例示することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物における、エポキシ樹脂の総量(エポキシ樹脂主剤液)に対する、エポキシ樹脂Dが占める割合は、好ましくは50~90質量%、特に好ましくは
60~80質量%である。エポキシ樹脂Dの割合が50質量%以上であることで、得られる樹脂硬化物の耐熱性および弾性率をより向上させることができる。その結果、得られる繊維強化複合材料の各種力学特性も向上する。
〔エポキシ樹脂E〕
本発明のエポキシ樹脂組成物は、グリシジル基を2つまたは3つ含むモノマーから構成されるエポキシ樹脂Eを含む。このエポキシ樹脂Eを含むことで、エポキシ樹脂組成物の粘度を低下させて強化繊維基材への樹脂含浸性を向上させることができ、可使時間を長くすることができ、RTM成形法に使用する金型の設計自由度を高めることができる。
エポキシ樹脂Eとエポキシ樹脂Dとを組み合わせて用いることにより、強化繊維基材への樹脂含浸性を向上させるとともに、耐熱性及び高弾性率を維持した樹脂硬化物および繊維強化複合材料を得ることができる。
エポキシ樹脂Eの構成モノマーとして、グリシジル基を2つまたは3つ有するモノマーを用いる。これは、芳香族化合物であることが好ましい。
グリシジル基を2つ有するモノマーは、ジグリシジルアニリンやその誘導体であるジグリシジル-o-トルイジン、ジグリシジル-m-トルイジン、ジグリシジル-p-トルイジン、ジグリシジル-キシリジン、ジグリシジル-メシジン、ジグリシジル-アニシジン、ジグリシジル-フェノキシアニリン、ジグリシジル-ナフチルアミンおよびその誘導体を用いることが好ましい。
特にジグリシジル-アニリン、ジグリシジル-o-トルイジン、ジグリシジル-m-トルイジン、ジグリシジル-p-トルイジン、ジグリシジル-フェノキシアニリンを用いることがより好ましく、ジグリシジル-アニリンまたはジグリシジル-o-トルイジンを用いることがさらに好ましい。
グリシジル基を2つまたは3つ含むモノマーから構成されるエポキシ樹脂として、多環芳香族炭化水素骨格を有するエポキシ樹脂が好ましい。
多環芳香族環化水素骨格として、例えば、ナフタレン骨格、アントラセン骨格を例示することができ、樹脂硬化物の物性の観点から、ナフタレン骨格が好ましい。
多環芳香族炭化水素基は、グリシジル基の他に置換基を有していてもよい。ナフタレン骨格を有するモノマーとして、1,6-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、1,5-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、2,6-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、2,7-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン、2,2′-ビス(グリシジルオキシ)-1,1′-ビナフタレン、2,7-ビス(グリシジルオキシ)-1-[2-(グリシジルオキシ)-1-ナフチルメチル]ナフタレンを例示することができる。これらの化合物を構成モノマーとするエポキシ樹脂を用いることによって、エポキシ樹脂組成物の粘度を低下させ、かつ樹脂硬化物の耐熱性を向上させることができる。
グリシジル基を2つまたは3つ含むモノマーから構成されるエポキシ樹脂として、多環芳香族炭化水素骨格を有するエポキシ樹脂を用いると、硬化物の架橋密度が過剰に上昇することがないため、樹脂硬化物の靭性低下を防ぐことができ好ましい。
グリシジル基を2つまたは3つ含むモノマーから構成されるエポキシ樹脂のなかでも、エポキシ樹脂Eの構成モノマーとして、グリシジル基を3つ有する芳香族化合物が好ましい。このエポキシ樹脂として、トリグリシジルアミノフェノール誘導体エポキシ樹脂が好ましい。トリグリシジルアミノフェノール誘導体エポキシ樹脂として、トリグリシジル-m-アミノフェノール、トリグリシジル-p-アミノフェノールを例示することができる
。このエポキシ樹脂Eを含有することで、エポキシ樹脂組成物の粘度を低下させることができ、さらに樹脂硬化物の耐熱性を向上させることができる。
グリシジル基を2つまたは3つ含むモノマーから構成されるエポキシ樹脂のなかでも、エポキシ樹脂Eの構成モノマーとして、グリシジル基を3つ有するヘテロ芳香族化合物も好ましい。すなわち、エポキシ樹脂Eは、トリグリシジルイソシアヌレート誘導体エポキシ樹脂を含んでいることも好ましい。トリグリシジルイソシアヌレート誘導体エポキシ樹脂として、1,3,5-トリグリシジルイソシアヌレート、1,3,5-トリ(エチルグリシジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリ(ペンチルグリシジル)イソシアヌレートを例示することができる。これらを含有することで、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性と弾性率を向上させることができる。このため、エポキシ樹脂Dと組み合わせて用いることにより、耐熱性および高弾性率を維持した樹脂硬化物および繊維強化複合材料を得ることができる。
エポキシ樹脂Eの構成モノマーとして、ジグリシジルアニリン、ジグリシジル-o-トルイジン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、トリグリシジル-m-アミノフェノール、1,6-ビス(2,3-エポキシプロパン-1-イルオキシ)ナフタレンおよび1,3,5-トリグリシジルイソシアヌレートから選択される1種類または2種以上の組み合わせが特に好ましい。エポキシ樹脂Eは、これらのモノマーから構成されるホモポリマー、コポリマーおよびそれらの混合物であることが特に好ましい。
エポキシ樹脂Eのその他の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を例示することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物における、エポキシ樹脂の総質量(エポキシ樹脂主剤液)あたりのエポキシ樹脂Eの含有率は、好ましくは10~50質量%、さらに好ましくは20~40質量%である。エポキシ樹脂の総質量に対するエポキシ樹脂Eの含有率をこの範囲とすることにより、RTM成形法に適した粘度や可使時間を有し、かつ耐熱性の高いエポキシ樹脂組成物を作製することができる。
〔樹脂粒子F〕
本発明のエポキシ樹脂組成物は、樹脂粒子Fを含む。樹脂粒子Fは、エポキシ樹脂組成物に溶解せずに分散して存在し、かつエポキシ樹脂組成物が硬化した後の樹脂硬化物においても分散した状態で樹脂硬化物中に存在する。樹脂硬化物を海成分としたときに、樹脂粒子Fは島成分として樹脂硬化物中に存在する。
樹脂粒子Fが含有されることで、樹脂硬化物や繊維強化複合材料において高い破壊靭性と耐衝撃性を得ることができる。
樹脂粒子Fとして、例えば熱可塑性樹脂粒子、熱硬化性樹脂粒子、ゴム粒子を用いることができ、好ましくはゴム粒子を用いる。ゴム粒子として、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレンゴムを例示することができる。
樹脂粒子Fとして用いるゴム粒子の市販品として、MX-153(ビスフェノールA型エポキシ樹脂に、33質量%のブタジエンゴムを単一分散させたもの、株式会社カネカ製)、MX-257(ビスフェノールA型エポキシ樹脂に、37質量%のブタジエンゴムを単一分散させたもの、株式会社カネカ製)、MX-154(ビスフェノールA型エポキシ樹脂に、40質量%のブタジエンゴムを単一分散させたもの、株式会社カネカ製)、MX-960(ビスフェノールA型エポキシ樹脂に、25質量%のシリコーンゴムを単一分散させたもの、株式会社カネカ製)、MX-136(ビスフェノールF型エポキシ樹脂に、25質量%のブタジエンゴムを単一分散させたもの、株式会社カネカ製)、MX-965(ビスフェノールF型エポキシ樹脂に、25質量%のシリコーンゴムを単一分散させたもの、株式会社カネカ製)、MX-217(フェノールノボラック型エポキシ樹脂に、25質量%のブタジエンゴムを単一分散させたもの、株式会社カネカ製)、MX-227M75(ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂に、25質量%のスチレンブタジエンゴムを単一分散させたもの、株式会社カネカ製)、MX-334M75(臭素化エポキシ樹脂に、25質量%のスチレンブタジエンゴムを単一分散させたもの、株式会社カネカ製)、MX-416(4官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂に、25質量%のブタジエンゴムを単一分散させたもの、株式会社カネカ製)、MX-451(3官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂に、25質量%のスチレンブタジエンゴムを単一分散させたもの、株式会社カネカ製)、を例示することができる。
樹脂粒子Fの平均粒子径は、好ましくは1.0μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下、特に好ましくは0.3μm以下である。そして、平均粒子径は、好ましくは0.03μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上、特に好ましくは0.08μm以上である。
平均粒子径が1μm以下であることで、強化繊維基材へのエポキシ樹脂組成物含浸工程において、樹脂粒子Fが強化繊維基材表面で濾されることがなく、強化繊維束内部への含浸が容易になる。これにより、樹脂の含浸不良を防ぐことができ、優れた物性を有する繊維強化複合材料を得ることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物における樹脂粒子Fの含有量は、エポキシ樹脂組成物全量のうち、好ましくは0.1~50質量%、さらに好ましくは0.5~20質量%、特に好ましくは1~15質量%である。0.1質量%以上の含有量とすることで、樹脂硬化物や繊維複合材料の破壊靭性や耐衝撃性を十分に向上させることができる。
樹脂粒子Fは、エポキシ樹脂に高濃度で分散させたマスターバッチとして用いることもできる。この場合、樹脂粒子Fをエポキシ樹脂組成物に対して高度に分散させることが容易になる。
〔エポキシ樹脂組成物の組成比〕
本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれる硬化剤の全質量を基準として、硬化剤A、硬化剤Bおよび硬化剤Cの合計が70~100質量%、好ましくは80~100質量%を占める。70質量%未満であると硬化物の耐熱性が不十分となる可能性がある。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、硬化剤Aと硬化剤Bの質量比率は、好ましくは1:99~99:1、さらに好ましくは20:80~80:20、特に好ましくは40:60~70:30である。硬化剤Aの割合が1未満であると、得られる樹脂硬化物の耐熱性や弾性率、破壊靭性などの力学特性が不十分となりやすく好ましくない。他方、硬化剤Aの割合が99を超えると、得られる熱硬化性樹脂用硬化剤組成物が、室温で液状を保持することが困難となり好ましくない。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、硬化剤Aと硬化剤Bとの合計100質量部に対して、硬化剤Cは好ましくは1~43質量部、さらに好ましくは3~30質量部、さらに好ましくは5~20質量部が含有される。硬化剤Cが1質量部未満であると、得られるエポキシ樹脂組成物に速硬化性を付与することが困難となり好ましくない。他方、43質量部を超えると、得られるエポキシ樹脂組成物の反応性が過剰に高くなり、RTM成形における可使時間が極端に短くなり好ましくない。この場合、強化繊維基材内部に十分な量の
樹脂を含浸させることが困難となり、この様なエポキシ樹脂組成物を用いて作製される繊維強化複合材料は、ボイド等の多くの欠陥を内在することになり、繊維強化複合材料構造体の圧縮性能および損傷許容性が低下する。
〔その他の任意成分〕
本発明のエポキシ樹脂組成物には、硬化剤A、硬化剤Bおよび硬化剤C以外の硬化剤が含まれていてもよく、エポキシ樹脂Dおよびエポキシ樹脂E以外のエポキシ樹脂や、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂が含まれていてもよく、樹脂粒子F以外の熱可塑性樹脂やその他の添加剤が含まれていてもよい。
硬化剤A、硬化剤Bおよび硬化剤C以外の硬化剤として、脂肪族ポリアミン、芳香族アミン系硬化剤の各種異性体、アミノ安息香酸エステル、酸無水物を例示することができる。
脂肪族ポリアミンとして、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、m-キシリレンジアミンを例示することができる。
アミノ安息香酸エステルとして、トリメチレングリコールジ-p-アミノベンゾエートやネオペンチルグリコールジ-p-アミノベンゾエートを例示することができる。これらの硬化剤を用いて硬化させた硬化物や繊維強化複合材料は引張伸度が高い。
酸無水物として、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を例示することができる。これらの硬化剤を用いた場合、未硬化樹脂組成物の可使時間が長く、電気的特性、化学的特性、機械的特性などに比較的バランスがとれた硬化物を得ることができる。
エポキシ樹脂Dおよびエポキシ樹脂E以外のエポキシ樹脂として、例えば、1官能のエポキシ樹脂を用いることができる。中でも、好ましくは芳香族基を含有するエポキシ樹脂、さらに好ましくはグリシジルアミン構造およびグリシジルエーテル構造のいずれかの構造を含むエポキシ樹脂を用いる。脂環族エポキシ樹脂も好適に用いることができる。
これらのエポキシ樹脂は、必要に応じて、芳香族環構造などに、非反応性置換基を有していてもよい。非反応性置換基として、メチル基、エチル基、イソプロピル基などのアルキル基、フェニル基などの芳香族基、アルコキシル基、アラルキル基、塩素や臭素などのハロゲン基を例示することができる。
エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂として、ビニルエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミド‐トリアジン樹脂を例示することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、樹脂粒子F以外にも、エポキシ樹脂組成物中に溶解させる成分として、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂は、得られる繊維強化複合材料の破壊靭性や耐衝撃性を向上させる。かかる熱可塑性樹脂は、エポキシ樹脂組成物の硬化過程でエポキシ樹脂組成物中に溶解させてもよい。
熱可塑性樹脂の具体的例として、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネートを例示することができる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
この熱可塑性樹脂は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量(Mw)が8000~100000の範囲のポリエーテルスルホンまたはポリスルホンが特に好ましい。重量平均分子量(Mw)が8000以上であることで、得られるFRPの耐衝撃性が十分となり、また100000以下であることで、粘度が著しく高くなることなく、良好な取扱性を示すエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
この熱可塑性樹脂の分子量分布は均一であることが好ましく、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である多分散度(Mw/Mn)は好ましくは1~10、さらに好ましくは1.1~5である。
この熱可塑性樹脂は、エポキシ樹脂と反応性を有する反応基または水素結合を形成する官能基を有していることが好ましい。このような熱可塑性樹脂は、エポキシ樹脂の硬化過程中における溶解安定性を向上させることができる。また、硬化後に得られる繊維強化複合材料に破壊靭性、耐薬品性、耐熱性及び耐湿熱性を付与することができる。
エポキシ樹脂との反応性を有する反応基として、水酸基、カルボン酸基、イミノ基、アミノ基などが好ましい。水酸基末端のポリエーテルスルホンを用いると、得られる繊維強化複合材料の耐衝撃性、破壊靭性及び耐溶剤性が特に優れるためより好ましい。
エポキシ樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の含有量は、粘度に応じて適宜調整される。熱可塑性樹脂が含有される場合、繊維強化基材への含浸の観点から、エポキシ樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、されに好ましくは0.5~5質量部である。0.1質量部以上含有されることで、得られる繊維強化複合材料は十分な破壊靭性や耐衝撃性を示す。含有量が10質量部以下であることで、エポキシ樹脂組成物の粘度が著しく高くなることなく、繊維強化基材への含浸が容易となり、得られる繊維強化複合材料の特性が向上する。
熱可塑性樹脂には、アミン末端基を有する反応性芳香族オリゴマー(以下、単に「芳香族オリゴマー」ともいう)を含むことが好ましい。
エポキシ樹脂組成物は、加熱硬化時にエポキシ樹脂と硬化剤との硬化反応により高分子量化する。高分子量化により二相域が拡大することによって、エポキシ樹脂組成物に溶解していた芳香族オリゴマーは、反応誘起型の相分離を引き起こす。この相分離により、硬化後のエポキシ樹脂と、芳香族オリゴマーと、が共連続となる樹脂の二相構造をマトリックス樹脂内に形成する。また、芳香族オリゴマーはアミン末端基を有していることから、エポキシ樹脂との反応も生じる。この共連続の二相構造における各相は互いに強固に結合しているため、耐溶剤性も向上している。
この共連続の構造は、繊維強化複合材料に対する外部からの衝撃を吸収してクラック伝播を抑制する。その結果、アミン末端基を有する反応性芳香族オリゴマーを含むエポキシ樹脂組成物を用いて作製される繊維強化複合材料は、高い耐衝撃性及び破壊靭性を有する。
この芳香族オリゴマーとしては、公知のアミン末端基を有するポリスルホン、アミン末端基を有するポリエーテルスルホンを用いることができる。アミン末端基は第一級アミン(-NH)末端基であることが好ましい。
エポキシ樹脂組成物に芳香族オリゴマーを配合する場合、芳香族オリゴマーはゲル浸透クロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量が8000~40000であることが好ましい。重量平均分子量が8000以上であると、マトリクス樹脂の靱性向上効果が高い。また、重量平均分子量が40000以下であると、樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎることなく、強化繊維基材へ樹脂組成物が含浸しやすくなる等の加工上の利点が得られる。
芳香族オリゴマーとしては、「Virantage DAMS VW-30500 R
P(登録商標)」(Solvay Specialty Polymers社製)のような市販品を好ましく用いることができる。
エポキシ樹脂組成物に配合する前の熱可塑性樹脂の形態は、粒子状であることが好ましい。粒子状の熱可塑性樹脂は、樹脂組成物中に均一に配合、溶解することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、その他の添加剤として、例えば導電性粒子や難燃剤、無機系充填剤、内部離型剤が配合されてもよい。
導電性粒子として、ポリアセチレン粒子、ポリアニリン粒子、ポリピロール粒子、ポリチオフェン粒子、ポリイソチアナフテン粒子及びポリエチレンジオキシチオフェン粒子等の導電性ポリマー粒子;カーボン粒子;炭素繊維粒子;金属粒子;無機材料または有機材料から成るコア材を導電性物質で被覆した粒子を例示することができる。
難燃剤として、リン系難燃剤を例示することができる。リン系難燃剤としては、分子中にリン原子を含むものであればよく、リン酸エステル、縮合リン酸エステル、ホスファゼン化合物、ポリリン酸塩などの有機リン化合物や赤リンを例示することができる。
無機系充填剤として、ホウ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸ケイ素、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、グラファイト、硫酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸塩鉱物を例示することができる。特に、ケイ酸塩鉱物を用いることが好ましい。ケイ酸塩鉱物の市販品として、THIXOTROPIC AGENT DT 5039(ハンツマン・ジャパン株式会社製)を挙げることができる。
内部離型剤として、金属石鹸、ポリエチレンワックスやカルバナワックス等の植物ワックス、脂肪酸エステル系離型剤、シリコンオイル、動物ワックス、フッ素系非イオン界面活性剤を例示することができる。これらの内部離型剤を配合する場合、その配合量は、前記エポキシ樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、さらに好ましくは0.2~2質量部である。この範囲内において金型からの離型効果が好適に発揮される。
内部離型剤の市販品として、“MOLD WIZ(登録商標)” INT1846(AXEL PLASTICS RESEARCH LABORATORIES INC.製)、Licowax S、Licowax P、Licowax OP、Licowax PE190、Licowax PED(クラリアントジャパン社製)、ステアリルステアレート(SL-900A;理研ビタミン(株)製)を例示することができる。
〔エポキシ樹脂組成物の性質〕
上記の硬化剤A、硬化剤B、硬化剤C、エポキシ樹脂D、エポキシ樹脂Eおよび樹脂粒子Fを含有してなる本発明のエポキシ樹脂組成物は、以下の性質を備えることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、100℃における粘度が、好ましくは300mPa・s以下、さらに好ましくは0.1~100mPa・s、特に好ましくは0.5~50mPa・sである。100℃における粘度が、300mPa・s以下であるとエポキシ樹脂組成物の強化繊維基材への含浸が容易であり、得られる繊維強化複合材料において物性の低下を引き起こすボイドの形成を防ぐことができる。なお、粘度と含浸性の関係は強化繊維基材構成にも左右される。
本発明のエポキシ樹脂組成物の可使時間は、複合材料の成形条件によって異なるが、例えば、大型の複合材料をレジントランスファー成形法(RTM法)を用いて比較的低い含浸圧力で繊維基材に含浸させる場合、可使時間として、100℃で保持した際の粘度が5
0mPa・sを超えるまでの時間が、好ましくは40分間以上、さらに好ましくは60分間以上、特に好ましくは90分以上である。
〔エポキシ樹脂組成物の製造方法〕
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂主剤液と硬化剤液と樹脂粒子Fとを混合することにより製造することができる。樹脂粒子Fはエポキシ樹脂主剤液に混合してから硬化剤液と混合してもよく、樹脂粒子Fは硬化剤液に混合してからエポキシ樹脂主剤液と混合してもよい。これらの混合の順序は問わない。
エポキシ樹脂組成物の状態としては、各成分が均一に混和した一液の状態でもよく、一部の成分が固体として分散したスラリーの状態でもよい。
エポキシ樹脂組成物の製造方法は、従来公知のいずれの方法を用いてもよい。混合温度は例えば40~180℃、好ましくは50~160℃、さらに好ましくは50~120℃である。180℃を超えると即座に硬化反応が進行して強化繊維基材への含浸性が低下したり、硬化物の物性が低下したりする場合がある。40℃未満であると、エポキシ樹脂主剤の粘度が高く、実質的に混合が困難となる場合がある。
混合機械装置として、従来公知のものを用いることができる。具体的な例として、ロールミル、プラネタリーミキサー、ニーダー、エクストルーダー、バンバリーミキサー、攪拌翼を備えた混合容器、横型混合槽を例示することができる。各成分の混合は、大気中または不活性ガス雰囲気下で行うことができる。大気中で混合を行る場合は、温度および湿度が管理された雰囲気が好ましい。例えば、30℃以下の一定温度に管理された温度や、相対湿度50%RH以下の低湿度雰囲気で混合することが好ましい。
〔硬化剤液の製造方法〕
硬化剤液は、硬化剤A、硬化剤Bおよび硬化剤Cを含有する。硬化剤A、硬化剤Bおよび硬化剤Cは、必要に応じてその他の成分を含めて混合して、硬化剤液として用いる。
この硬化剤液の状態としては、各成分が均一に混和した一液の状態でもよく、一部の成分が固体として分散したスラリーの状態でもよい。
硬化剤液の製造方法は、従来公知のいずれの方法を用いてもよい。混合温度は、例えば50~200℃、好ましくは50~150℃、さらに好ましくは80~120℃である。200℃を超えると、添加する成分が熱分解してしまう場合がある。他方、50℃未満であると、固体である硬化剤Aおよび硬化剤Cが融解せず、硬化剤Bへ融解しにくくなるため、液状の熱硬化性樹脂用硬化剤組成物である硬化剤液を得ることが困難となる。
混合機械装置としては、従来公知のものを用いることができる。具体的な例としては、ロールミル、プラネタリーミキサー、ニーダー、エクストルーダー、バンバリーミキサー、攪拌翼を備えた混合容器、横型混合槽を例示することができる。各成分の混合は、大気中または不活性ガス雰囲気下で行うことができる。大気中で混合を行う場合は、温度および湿度が管理された雰囲気が好ましい。例えば、30℃以下の一定温度に管理された温度や、相対湿度50%RH以下の低湿度雰囲気で混合することが好ましい。
〔エポキシ樹脂主剤液の製造方法〕
エポキシ樹脂組成物を製造するために用いるエポキシ樹脂主剤液は、エポキシ樹脂Dとエポキシ樹脂Eと、必要に応じて樹脂粒子Fとその他の任意成分とを混合することにより製造することができる。これらの混合の順序は問わない。
エポキシ樹脂主剤液の状態としては、各成分が均一に混和した一液の状態でもよく、一部の成分が固体として分散したスラリーの状態でもよい。
エポキシ樹脂主剤液の製造方法は、従来公知のいずれの方法を用いてもよい。混合温度は例えば40~200℃、好ましくは50~100℃、さらに好ましくは50~90℃である。200℃を超えると、部分的にエポキシ樹脂の自己重合反応が進行して強化繊維基材への含浸性が低下したり、得られるエポキシ樹脂主剤液を用いて製造される硬化物の物性が低下したりする場合がある。40℃未満であると、エポキシ樹脂主剤の粘度が高く、実質的に混合が困難となる場合がある。
混合機械装置として、従来公知のものを用いることができる。具体的な例として、ロールミル、プラネタリーミキサー、ニーダー、エクストルーダー、バンバリーミキサー、攪拌翼を備えた混合容器、横型混合槽を例示することができる。各成分の混合は、大気中または不活性ガス雰囲気下で行うことができる。大気中で混合を行う場合は、温度および湿度が管理された雰囲気が好ましい。例えば、30℃以下の一定温度に管理された温度や、相対湿度50%RH以下の低湿度雰囲気で混合することが好ましい。
〔樹脂硬化物〕
本発明のエポキシ樹脂組成物は硬化させることにより樹脂硬化物を得ることができる。得られる樹脂硬化物は、以下の性質を備えることができる。
誘電硬化度測定によって評価されるエポキシ樹脂組成物の180℃40分間加熱後の硬化物の硬化度は、繊維強化複合材料の生産性の観点から、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
乾燥状態のガラス転移温度(dry-Tg)は、好ましくは140℃以上、さらに好ましくは170℃以上、特に好ましくは180℃以上である。
飽和吸水時におけるガラス転移温度(wet-Tg)が、好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150~200℃である。
JIS K7171法で測定する室温乾燥曲げ弾性率(RTD-FM)が、好ましくは3.0GPa以上、さらに好ましくは3.3~10.0GPa、さらに好ましくは3.5~9.0GPaである。3.0GPaを超えることで、本発明のエポキシ樹脂組成物を使用して得られる繊維強化複合材料は優れた力学特性を有する。
JIS K7171法で測定する昇温吸水後曲げ弾性率(HTW-FM)が、好ましくは2.4GPa以上、さらに好ましくは2.5~9.0GPa、特に好ましくは2.8~8.0GPaである。
ASTM D5045で測定する変形モードI臨界応力拡大係数KIcが、好ましくは0.7MPa・m1/2以上、さらに好ましくは0.8~3.0MPa・m1/2である。
〔繊維強化複合材料〕
繊維強化基材と、本発明のエポキシ樹脂組成物とを複合化して硬化させることにより、繊維強化複合材料を得ることができる。
強化繊維基材の繊維として、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、ポリエステル繊維、セラミック繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、金属繊維、鉱物繊維、岩石繊維、スラッグ繊維を例示することができる。
これらの強化繊維の中でも、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維が好ましい。比強度および比弾性率が良好で、軽量かつ高強度の繊維強化複合材料が得られることから、炭素繊維がより好ましい。炭素繊維のなかでも引張強度に優れることからポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維が特に好ましい。
強化繊維にPAN系炭素繊維を用いる場合、その引張弾性率は、好ましくは100~600GPa、さらに好ましくは200~500GPa、さらに好ましくは230~450GPaである。引張強度は、好ましくは2000~10000MPa、さらに好ましくは3000~8000MPaである。
強化繊維として炭素繊維を用いる場合、炭素繊維の直径は、好ましくは4~20μm、さらに好ましくは5~10μmである。このような炭素繊維を用いることにより、得られる繊維強化複合材料の機械的性質を向上させることができる。
本発明において、強化繊維はサイジング剤で処理されているのが好ましい。この場合、サイジング剤が付着した強化繊維の質量に対して、サイジング剤の付着量は好ましくは0.01~10質量%、さらに好ましくは0.05~3.0質量%、さらに好ましくは0.1~2.0質量%である。サイジング剤の付着量が多い方が強化繊維とマトリクス樹脂の接着性が強くなる傾向がある。他方、付着量が少ない方が、得られる複合材料の層間靱性が優れる傾向にある。
繊維強化基材には、強化繊維をシート状に形成した強化繊維シートを用いることが好ましい。強化繊維シートとして、例えば、多数本の強化繊維を一方向に引き揃えたシートや、平織や綾織などの二方向織物、多軸織物、不織布、マット、ニット、組紐、強化繊維を抄紙した紙を挙げることができる。中でも、強化繊維を連続繊維としてシート状に形成した一方向引揃えシートや二方向織物、多軸織物基材を用いると、より機械物性に優れた繊維強化複合材料が得られるため好ましい。
二方向織物や多軸織物基材は、複数の一方向引揃えシートを積層してステッチしたものであってもよい。この場合、得られる繊維強化複合材料の層間靭性を向上させるために、一方向引揃えシートの片面に熱可塑性樹脂の不織布層を配置した後に積層して織物としてもよい。熱可塑性樹脂の不織布層としては、例えば、ポリエステル樹脂繊維、ポリアミド樹脂繊維、ポリエーテルスルホン樹脂繊維、ポリスルホン樹脂繊維、ポリエーテルイミド樹脂繊維、ポリカーボネート樹脂繊維、およびこれらの樹脂混合物からなる繊維を例示することができる。
一方向引揃えシートの目付や積層数は、繊維強化複合材料の用途に応じて適宜設定できる。例えば、一方向引揃えシートの目付としては、例えば100~300g/m、好ましくは150~250g/mである。強化繊維基材の一方向引揃えシートの1層あたりの厚さは、好ましくは0.01~3mm、さらに好ましくは0.05~1.5mmである。
本発明によれば、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化して成る樹脂硬化物と、繊維強化基材と、を含んで構成される繊維強化複合材料が提供される。
本発明により提供される繊維強化複合材料は、ASTM D7136で測定される衝撃後圧縮強度CAI(衝撃エネルギー30.5J)が、好ましくは240MPa以上、さらに好ましくは250~400MPa、さらに好ましくは260~380MPaである。
本発明により提供される繊維強化複合材料は、SACMA SRM3で測定される室温乾燥有孔圧縮強度(RTD-OHC)が、好ましくは260MPa以上、さらに好ましくは280~450MPa、さらに好ましくは300~400MPaである。
本発明により提供される繊維強化複合材料は、SACMA SRM3で測定される昇温吸水後有孔圧縮強度(HTW-OHC)が、好ましくは200MPa以上、さらに好ましくは220~400MPa、さらに好ましくは240~350MPaである。
〔繊維強化複合材料の製造方法〕
エポキシ樹脂組成物を硬化して成る樹脂硬化物と、繊維強化基材と、を含んで構成される繊維強化複合材料を得るために繊維強化基材とエポキシ樹脂組成物とを複合化する方法として、繊維強化基材と樹脂組成物とを予め複合化してもよく、例えば、レジントランスファー成形法(RTM法)、ハンドレイアップ法、フィラメントワインディング法、プルトルージョン法のように、成形時に複合化してもよい。
繊維強化基材と、本発明のエポキシ樹脂組成物とを複合化した後、加熱して硬化させることにより、繊維強化複合材料を得ることができる。したがって、本発明によれば、上記のエポキシ樹脂組成物を、型内に配置した繊維強化基材へ含浸させた後、加熱硬化する工程 を含む繊維強化複合材料の製造方法が提供される。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて繊維強化複合材料を製造する方法として、RTM法やオートクレーブ成形法、プレス成形法等の公知の成形法を例示することができる。本発明の樹脂組成物は、特にRTM法に適している。
複雑形状の繊維強化複合材料を効率よく得る観点から、RTM法は好ましい成形方法である。このRTM法は、型内に配置した繊維強化基材へ液状のエポキシ樹脂組成物を含浸、硬化して繊維強化複合材料を得る方法である。
本発明において、RTM法に用いる型は、剛性材料からなるクローズドモールドを用いてもよく、剛性材料のオープンモールドと可撓性のフィルム(バッグ)を用いてもよい。後者の場合、繊維強化基材は、剛性材料のオープンモールドと可撓性フィルムの間に設置することができる。剛性材料としては、例えばスチールやアルミニウムなどの金属、繊維強化プラスチック、木材、石膏を用いることができる。可撓性のフィルムの材料には、例えばポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、フッ素樹脂、シリコーン樹脂を用いることができる。
RTM法において剛性材料のクローズドモールドを用いる場合には、加圧して型締めし、エポキシ樹脂組成物を加圧して注入することが通常行われる。このとき、注入口とは別に吸引口を設け、真空ポンプに接続して吸引してもよい。吸引を行い、特別な加圧手段を用いることなく大気圧のみでエポキシ樹脂組成物を注入してもよい。この方法は、複数の吸引口を設けることにより大型の部材を製造することができるため、好適に用いることができる。
RTM法において、剛性材料のオープンモールドと可撓性フィルムを用いる場合には、吸引を行い、特別な加圧手段を用いることなく大気圧のみでエポキシ樹脂を注入してもよい。大気圧のみでの注入で良好な含浸を実現するためには、樹脂拡散媒体を用いることが有効である。さらに、繊維強化基材の設置に先立って、剛性材料の表面にゲルコートを塗布することが好ましく行われる。
RTM法において、繊維強化基材にエポキシ樹脂組成物を含浸した後、加熱硬化が行われる。加熱硬化時の型温は、通常、エポキシ樹脂組成物の注入時における型温より高い温度が選ばれる。加熱硬化時の型温は好ましくは80~200℃である。加熱硬化の時間は好ましくは1分間~20時間である。加熱硬化が完了した後、脱型して繊維強化複合材料を取り出す。その後、得られた繊維強化複合材料を、より高い温度で加熱して後硬化を行ってもよい。この後硬化の温度は好ましくは150~200℃、時間は好ましくは1分間~4時間である。
エポキシ樹脂組成物をRTM法で繊維強化基材に含浸させる際の含浸圧力は、その樹脂
組成物の粘度や樹脂フローなどを勘案して適宜決定する。具体的な含浸圧力は、例えば0.001~10MPa、好ましくは0.01~1MPaである。RTM法を用いて繊維強化複合材料を得る場合、エポキシ樹脂組成物の粘度は、100℃における粘度が好ましくは1~200mPa・sである。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。実施例、比較例において使用した成分および試験方法は以下のとおりである。なお、繊維強化複合材料を「FRP」、特に炭素繊維強化複合材料を「CFRP」と略記することがある。
〔成分〕
(1)硬化剤A
・4,4’-ジアミノ-3,3’-ジイソプロピル-5,5’-ジメチルジフェニルメタン(ロンザ社製 Lonzacure M-MIPA(製品名)、以下「M-MIPA」と略記する、融点70℃、25℃で固体)
・4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタン(クミアイ化学社製 MED-J(製品名)、以下「MED-J」と略記する、融点76℃、25℃で固体)
(2)硬化剤B
・ジエチルトルエンジアミン(クミアイ化学社製 ハートキュア10(製品名)、以下「DETDA」と略記する、25℃で液体)
・ジメチルチオトルエンジアミン(クミアイ化学社製 ハートキュア30(製品名)、以下「DMTDA」と略記する、25℃で液体)
・4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン(日本化薬社製 カヤハードA-A(製品名)、以下「カヤハードAA」と略記する、25℃で液体)
(3)硬化剤C
・3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(帝人社製、以下「3,4’-DAPE」と略記する、融点80℃、25℃で固体)
・1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(東京化成工業社製、以下「TPE-R」と略記する、融点116℃、25℃で固体)
・m-フェニレンジアミン(富士フイルム和光純薬社製、以下「MPD」と略記する、融点65℃、25℃で固体)
(4)エポキシ樹脂D
・テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(ハンツマン社製 Araldite MY721(製品名)、以下「4,4’-TGDDM」と略記する)
・テトラグリシジル-3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(合成例1の方法で合成、以下「3,4’-TGDDE」と略記する)
(5)エポキシ樹脂E
・N,N-ジグリシジル-o-トルイジン(日本化薬社製 GOT(製品名)、以下「GOT」と略記する)
・N,N-ジグリシジルアニリン(日本化薬社製 GAN(製品名)、以下「GAN」と略記する)
・トリグリシジル-p-アミノフェノール(ハンツマン社製 Araldite MY0510(製品名)、以下「TG-pAP」と略記する)
・1,6-ビス(グリシジルオキシ)ナフタレン(DIC社製 HP-4032SS(製品名)、以下「1,6-DON」と略記する)
・1,3,5-トリグリシジルイソシアヌレート(日産化学社製 TEPIC-S(製品名)、以下「TEPIC」と略記する)
・ビスフェノールA-ジグリシジルエーテル(三菱化学社製 jER825(製品名)、以下「DGEBA」と略記する)
(6)樹脂粒子F
・MX-416(株式会社カネカ製 MX-416(製品名)、グリシジルアミン型4官能エポキシ樹脂へ粒子状ブタジエンゴム成分を25質量%の濃度となる様に分散させたマスターバッチ)(製品中のグリシジルアミン型4官能エポキシ樹脂は本発明のエポキシ樹脂Dに相当)
(7)炭素繊維ストランド
・炭素繊維1:“テナックス(登録商標)”IMS65 E23 830tex(炭素繊維ストランド、引張強度 5.8GPa、引張弾性率 290GPa、サイジング剤付着量 1.2質量%、帝人(株)製)
(8)熱可塑性樹脂不織布
・不織布1:ポリアミド12樹脂を使用し、スパンボンド法で作製した繊維目付が5g/mの不織布
(9)炭素繊維多層織物
・炭素繊維多軸織物1:一方向に引き揃えた炭素繊維1を1層あたり190g/mのシート状にして、このシート状炭素繊維の片面に不織布1を配置し、(+45/V/90/V/-45/V/0/V)の角度で4枚積層しステッチしたもの(織物基材の炭素繊維総目付760g/m)。
・炭素繊維多軸織物2:一方向に引き揃えた炭素繊維1を1層あたり190g/mのシート状にして、シート状炭素繊維の片面に不織布1を配置し、(-45/V/90/V/+45/V/0/V)の角度で4枚積層しステッチしたもの(織物基材の炭素繊維総目付760g/m)。ここでは、Vは不織布1を示す。
(10)エポキシ樹脂の合成例
以下の合成例1の方法で合成した。
合成例1 3,4’-TGDDEの合成
温度計、滴下漏斗、冷却管および攪拌機を取り付けた四つ口フラスコに、エピクロロヒドリン1110.2g(12.0mol)を仕込み、窒素パージを行いながら温度を70℃まで上げて、これにエタノール1000gに溶解させた3,4’-ジアミノジフェニルエーテル200.2g(1.0mol)を4時間かけて滴下した。さらに6時間撹拌し、付加反応を完結させ、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシ-3-クロロプロピル)-3,4’-ジアミノジフェニルエーテルを得た。続いて、フラスコ内温度を25℃に下げてから、これに48重量%NaOH水溶液500.0g(6.0mol)を2時間で滴下してさらに1時間撹拌した。環化反応が終わってからエタノールを留去して、400gのトルエンで抽出を行い5%食塩水で2回洗浄を行った。有機層からトルエンとエピクロロヒドリンを減圧下で除くと、褐色の粘性液体が361.7g(収率85.2%)得られた。主生成物である3,4’-TGDDEの純度は、84%(HPLC面積%)であった。
〔評価方法〕
(1)樹脂組成物の特性
(1-1)エポキシ樹脂組成物の調製
表1に記載する割合でエポキシ樹脂および樹脂粒子を計量し、撹拌機を用いて80℃で
30分間混合し、エポキシ樹脂主剤液を調製した。表1に記載する割合で硬化剤成分を計量し、撹拌機を用いて80℃で30分間混合し、硬化剤液を調製した。これら別々に調製したエポキシ樹脂主剤液と硬化剤液とを、撹拌機を用いて80℃で30分間混合し、エポキシ樹脂組成物を調製した。なお、表1に記載の組成において、エポキシ樹脂のグリシジル基と硬化剤のアミノ基は当量となる。
(1-2)硬化剤液の液状保持特性
上記の(1-1)で調製した硬化剤液を、25℃で1週間静置保管し、目視で固体成分の析出を確認した。析出がないものを「○」、析出の認められたものを「×」とした。
(1-3)初期粘度および可使時間
粘度測定は、東機産業株式会社製B型粘度計TVB-15Mを用い、100℃の条件にて行った。測定開始直後の最小測定値を初期粘度とし、粘度が50mPa・sに到達した時間を可使時間とした。
(1-4)180℃40分間加熱後硬化特性(DEA硬化度)
硬化特性は、NETZSCH社製誘電分析装置DEA288 Ionicを用い、未硬化樹脂の180℃40分間加熱後の樹脂硬化物のDEA硬化度αを下記式で評価した。この硬化度が90%以上の場合に、40分間硬化特性を有する樹脂組成物であると評価することができる。
α(t=40)
=(logε”-logε”t=40)/(logε”-logε”)×100
(ただし、ε”は測定開始時の誘電損失の最大値であり、ε”t=40は測定時間が40分の時の誘電損失値であり、ε”は測定時間が180分の時の誘電損失値である。)
測定条件
測定温度 :180±2℃等温
測定周波数 :1Hz
測定センサー :NETZSCH社製IDEX 115/35
(2)樹脂硬化物の特性
(2-1)樹脂硬化物の作成
上記の(1-1)で調製したエポキシ樹脂組成物を真空中で60分間脱泡した後、4mm厚のテフロン樹脂製スペーサーにより厚み4mmになるように設定したステンレス製モールド中に注入した。180℃の温度で40分間、加熱硬化させ、厚さ4mmの樹脂硬化物を得た。
(2-2)吸水後ガラス転移温度(wet-Tg)
SACMA 18R-94法に準じて、ガラス転移温度を測定した。
樹脂試験片の寸法は50mm×6mm×2mmで準備した。プレッシャークッカー(エスペック社製、HASTEST PC-422R8)を用い、121℃、24時間の条件にて準備した樹脂試験片の吸水処理を行った。UBM社製動的粘弾性測定装置Rheogel-E400を用い、測定周波数1Hz、昇温速度5℃/分、ひずみ0.0167%の条件で、チャック間の距離を30mmとし、50℃からゴム弾性領域まで、吸水処理した樹脂試験片の貯蔵弾性率E’を測定した。logE’を温度に対してプロットし、logE’の平坦領域の近似直線と、E’が転移する領域の近似直線との交点から求められる温度をガラス転移温度(wet-Tg)として記録した。
(2-3)室温乾燥樹脂曲げ弾性率(RTD-FM)
JIS K7171法に準じて、試験を実施した。上記の(2-1)で得た樹脂硬化板
を用いて、樹脂試験片を寸法80mm×10mm×4mm(厚みh)で準備した。25℃の環境温度で、支点間距離Lは、16×h(厚み)、試験速度2mm/minで曲げ試験を行い、曲げ強度と曲げ弾性率を測定した。
(2-4)樹脂硬化物靱性(変形モードI臨界応力拡大係数KIc)
ASTM D5045に従い、万能試験機(島津製作所製オートグラフ)を用いて靱性(KIc)を測定した。ASTM D5045法に準じて、試験を実施した。上記の(2-1)で得た樹脂硬化板を用いて、樹脂試験片を寸法50mm×8mm(幅W)×4mmで準備した。クラック長aは、0.45≦a/W≦0.55となるように調整した。なお、クラック長aは破壊試験後の破断面を光学顕微鏡を用いて観察し、クラックの先端までの長さ、および試験片両表面におけるクラック長さの平均値を採用した。
(3)CFRPの特性
(3-1)CFRPの作成
炭素繊維多軸織物1および炭素繊維多軸織物2を300×300mmにカットし、500×500mmの離型処理したアルミ板の上に、炭素繊維多軸織物1を3枚、炭素繊維多軸織物2を3枚、合計6枚重ねて積層体とした。
さらに積層体の上に、離型性機能を付与した基材であるピールクロスのRelease
Ply C(AIRTECH社製)と樹脂拡散基材のResin Flow 90HT(AIRTECH社製)を積層した。 その後、樹脂注入口と樹脂排出口形成のためのホースを配置し、全体をナイロンバッグフィルムで覆い、シーラントテープで密閉し、内部を真空にした。続いてアルミ板を120℃に加温し、バック内を5torr以下に減圧した後、上記の(1-1)で調製したエポキシ樹脂組成物を100℃に加熱し、樹脂注入口を通して真空系内へ注入した。
注入したエポキシ樹脂組成物がバック内に充満し、積層体に含浸した状態で180℃に昇温し、180℃で40分間保持して、炭素繊維強化複合材料(CFRP)を得た。
(3-2)衝撃後圧縮強度(CAI)
上記の(3-1)で得られたCFRPを、幅101.6mm×長さ152.4mmの寸法に切断し、衝撃後圧縮強度(CAI)試験の試験片を得た。試験はASTM D7136に従い実施した。供試体(サンプル)は各試験片の寸法測定後、衝撃試験は落錘型衝撃試験機(インストロン社製 Dynatup)を用いて、30.5Jの衝撃エネルギーを与えた。衝撃後、供試体の損傷面積は、超音波探傷試験機(クラウトクレーマー社製 SDS3600、HIS3/HF)にて測定した。衝撃後、供試体の強度試験は、供試体の上から25.4mmでサイドから25.4mmの位置に、歪みゲージを左右各1本ずつ貼付し、同様に表裏に合計4本/体の歪みゲージを貼付けた後、試験機(島津製作所製オートグラフ)のクロスヘッド速度を1.27mm/minとし、供試体の破断まで荷重を負荷した。
(3-3)室温乾燥有孔圧縮強度(RTD-OHC)
上記の(3-1)で得られたCFRPを、幅38.1mm×長さ304.8mmの寸法に切断し、試験片中心に直径6.35mmの穴あけ加工を施し、室温乾燥有孔圧縮強度(RTD-OHC)試験の試験片を得た。
試験は、SACMA SRM3に則って、25℃の環境温度で実施し、最大点荷重から有孔圧縮強度を算出した。
(4)平均粒子径
樹脂硬化物の断面を走査型電子顕微鏡もしくは透過型電子顕微鏡により2万5000倍で観察し、少なくとも50個以上の粒子の直径を測定して樹脂粒子の粒子径として、それを平均することにより平均粒子径を求めることが出来る。前記観察において、粒子が真円
状でない場合、即ち粒子が楕円状のような場合は、粒子の最大径をその粒子の粒子径とした。
〔実施例1〕
(エポキシ樹脂組成物の調製)
表1に記載する割合でエポキシ樹脂、樹脂粒子Fを計量し、撹拌機を用いて80℃で30分間混合し、エポキシ樹脂主剤液を調製した。表1に記載する割合で硬化剤成分を計量し、撹拌機を用いて80℃で30分間混合し、硬化剤液を調製した。これら別々に調製したエポキシ樹脂主剤液と硬化剤液とを、撹拌機を用いて80℃で30分間混合して、エポキシ樹脂組成物を調製した。
得られたエポキシ樹脂組成物の特性を表1に示す。なお、表1に記載の組成においては、エポキシ樹脂のグリシジル基と硬化剤のアミノ基とは当量となる。
(樹脂硬化物の作成)
上記で得られたエポキシ樹脂組成物を真空中で60分間脱泡した後、4mm厚のテフロン樹脂製スペーサーにより厚み4mmになるように設定したステンレス製モールド中に注入した。180℃の温度で40分間、加熱硬化させ、厚さ4mmの樹脂硬化物を得た。
得られた樹脂硬化物の特性を表1に示す。樹脂硬化物のwet-Tgは150℃以上、曲げ弾性率は3.0GPa以上、K1cは0.7MPa・m1/2以上であり、高い力学的特性を示した。
(繊維強化複合材料の作成)
つぎに、炭素繊維多軸織物1および炭素繊維多軸織物2を300×300mmにカットし、500×500mmの離型処理したアルミ板の上に、炭素繊維多軸織物1を3枚、炭素繊維多軸織物2を3枚、合計6枚重ねて積層体とした。
さらに積層体の上に、離型性機能を付与した基材であるピールクロスのRelease
Ply C(AIRTECH社製)と樹脂拡散基材のResin Flow 90HT(AIRTECH社製)を積層した。 その後、樹脂注入口と樹脂排出口形成のためのホースを配置し、全体をナイロンバッグフィルムで覆い、シーラントテープで密閉し、内部を真空にした。続いてアルミ板を120℃に加温し、バック内を5torr以下に減圧した後、上記で調製したエポキシ樹脂組成物を100℃に加熱し、樹脂注入口を通して真空系内へ注入した。
注入したエポキシ樹脂組成物がバック内に充満し、積層体に含浸した状態で180℃に昇温し、180℃で2時間保持して、炭素繊維強化複合材料(CFRP)を得た。得られたCFRPの特性を表1に示す。いずれも、250MPa以上の高いCAIと300MPa以上の優れたRTD-OHCを示した。
〔実施例2~14〕
表1に記載のとおり組成を変更した他は実施例1と同様に実施した。評価結果を表1に示す。
Figure 2022137823000007
Figure 2022137823000008
〔比較例1~8〕
表2に記載のとおり組成を変更した他は実施例1と同様に実施した。評価結果を表2に示す。
Figure 2022137823000009
比較例1、3および4では、硬化剤Bを用いなかったため、いずれも1週間以内に固体が析出してきた。
比較例1、2および5では、硬化剤Cを用いなかったため、DEA硬化度が大幅に小さくなり速硬化性を示さなかった。
比較例6では、エポキシ樹脂Dを用いなかったため、得られた樹脂硬化物のwet-Tgが116℃と低くなった。
比較例7では、エポキシ樹脂Eを用いなかったため、樹脂組成物の初期粘度が131mPa・sと高くなった。
比較例8では、樹脂粒子Fを用いなかったため、得られた樹脂硬化物のKIcが0.57MPa・m1/2と低くなった。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いると、優れた力学特性を有する樹脂硬化物を製造することができる。また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、低粘度で可使時間が長いため、成形時の取扱性が高く、かつ硬化時間が短いため、優れた品質と力学特性を有する繊維強化複合材料を従来よりも高い生産性で製造することができる。得られた繊維強化複合材料は、自動車や航空機の部材として用いることができる。

Claims (19)

  1. 硬化剤A、硬化剤B、硬化剤C、エポキシ樹脂D、エポキシ樹脂Eおよび樹脂粒子Fを含有してなるエポキシ樹脂組成物であって、硬化剤Aは、アミノ基に対する2つのオルト位にそれぞれ置換基を有する芳香族ポリアミンであり、該置換基はアルキル基、芳香族基およびハロゲン基から選択され、硬化剤Bは、25℃で液体である芳香族ポリアミンであり、硬化剤Cは、芳香族ポリアミンであり、該芳香族ポリアミンは、アミノ基に対するオルト位に電子供与基をただ一つ有するかオルト位に置換基を有しない芳香族ポリアミンであり、エポキシ樹脂Dは、グリシジル基を4つ以上含むモノマーから構成されるエポキシ樹脂から構成され、エポキシ樹脂Eは、グリシジル基を2つまたは3つ含むモノマーから構成されるエポキシ樹脂から構成されることを特徴とする、エポキシ樹脂組成物。
  2. エポキシ樹脂Dのグリシジル基を4つ以上含むモノマーが、下記化学式で表される、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
    Figure 2022137823000010
    (ただし、化学式(1)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基およびハロゲン原子からなる群から選択される1つを表し、Xは-CH-、-O-、-S-、-CO-、-C(=O)O-、-O-C(=O)-、-NHCO-、-CONH-、-SO-から選択される1つを表す。)
  3. エポキシ樹脂Dのグリシジル基を4つ以上含むモノマーが、テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-3,4’-ジアミノジフェニルエーテルおよびテトラグリシジル-3,3’-ジアミノジフェニルメタンからなる群から選択される1種または2種以上の組み合わせである、請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の全質量を基準として、エポキシ樹脂Dが50~90質量%含有される、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. エポキシ樹脂Eのグリシジル基を2つまたは3つ含むモノマーが、ジグリシジルアニリン、ジグリシジル-o-トルイジン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、トリグリシジル-m-アミノフェノール、1,6-ビス(2,3-エポキシプロパン-1-イルオキシ)ナフタレンおよび1,3,5-トリグリシジルイソシアヌレートからなる群から選択される1種または2種以上の組み合わせである、請求項1~4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
  6. エポキシ樹脂組成物に含まれる硬化剤の全質量を基準として、硬化剤A、硬化剤Bおよび硬化剤Cの合計が70~100質量%を占め、硬化剤Aと硬化剤Bの質量比率が1:99~99:1であり、硬化剤Aと硬化剤Bとの合計100質量部に対して硬化剤Cが1~43質量部である、請求項1~5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  7. 硬化剤Cの芳香族ポリアミンの電子供与基が、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、メトキシ基またはエトキシ基である、請求項1~6のいずれかに記載のエポ
    キシ樹脂組成物。
  8. 硬化剤Cの芳香族ポリアミンの融点が150℃以下である、請求項1~7のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  9. 硬化剤Aの芳香族ポリアミンが芳香族ジアミンである、請求項1~8のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  10. 硬化剤Bの芳香族ポリアミンが、フェニレンジアミン誘導体または4,4’-ジアミノジフェニルメタン誘導体である、請求項1~9のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  11. 硬化剤A、硬化剤Bおよび硬化剤Cの混合物が80~200℃の温度で均一な液体であり、かつ液温を200℃に昇温後に25℃に液温を低下させ25℃で1週間静置した後において均一な液体である、請求項1~10のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  12. エポキシ樹脂の総エポキシ基の数と硬化剤に含まれる活性水素の数の比率が0.7~1.3である、請求項1~11のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  13. 樹脂粒子の平均粒子径が1.0μm以下である、請求項1~12のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  14. 誘電硬化度測定によって評価される、180℃40分間加熱後の硬化度が70%以上である請求項1~13のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  15. 請求項1~14のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化して成る樹脂硬化物。
  16. 請求項1~14のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化して成る樹脂硬化物と、繊維強化基材と、を含んで構成される繊維強化複合材料。
  17. 繊維強化基材が炭素繊維強化基材である請求項16に記載の繊維強化複合材料。
  18. 繊維強化基材と、請求項1~14のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物と、を複合化して硬化させる繊維強化複合材料の製造方法。
  19. 請求項1~14のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を、型内に配置した繊維強化基材へ含浸させた後、加熱硬化する工程を含む繊維強化複合材料の製造方法。
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