JP2008255537A - 多軸織物 - Google Patents

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孝 谷内
Shinichi Okajima
真一 岡嶋
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Abstract

【課題】特に、複雑な形状の成形に適する補強用基布として有用な多軸織物に関するものである。
【解決手段】一方向に引き揃えた繊維束シートを角度を変えて積層した積層体を、ステッチ糸で厚さ方向に貫通して、積層体の表面と裏面の間を表面方向に沿って往復しステッチした多軸織物であって、この繊維束シートを構成する糸が、繰り返し単位の95モル%以上が下記式(1)で示されるポリケトンで構成される繊維のフィラメント糸であることを特徴とする多軸織物。
【化1】
Figure 2008255537

【選択図】なし

Description

本発明は、特にゴム又は樹脂との複合材料における補強用基布として有用な多軸織物に関するものであり、複雑な形状の成形に適する補強用基布を提供するものである。
特許文献1には、アラミド繊維等の補強繊維を多軸織物基材として用いることが開示されており、多軸織物基材の片面又は両面に一方向強化繊維シートを樹脂により接着・拘束させ、この一方向強化繊維シート方向に配列したステッチ糸により縫合一体化することによって、成形性等に優れた多軸織物基材が得られるという特徴を有するものであるが、さらに複雑な形状の成形に適する多軸織物基材が要望されている。
特開2006−150904号公報
本発明は、かかる要望に応えた補強用基布として有用な多軸織物を提供するものである。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達したものである。
すなわち、本発明は下記の通りである。
(1)一方向に引き揃えた繊維束シートを角度を変えて積層した積層体を、ステッチ糸で厚さ方向に貫通して、積層体の表面と裏面の間を表面方向に沿って往復しステッチした多軸織物であって、この繊維束シートを構成する糸が、繰り返し単位の95モル%以上が下記式(1)で示されるポリケトンで構成される繊維(以下、ポリケトン繊維という)のフィラメント糸であることを特徴とする多軸織物。
Figure 2008255537
(2)多軸織物が、ゴム又は樹脂との複合材料における補強用基布であることを特徴とする上記(1)記載の多軸織物。
本発明により、特に複雑な形状の成形に適する補強用基布として有用な多軸織物を提供することが可能となった。
本発明について以下に具体的に説明する。
本発明のポリケトン繊維を構成するポリケトンは、繰り返し単位の95モル%以上、好ましくは98モル%以上、特に好ましく99.6モル%以上が、上記式(1)で示されるものであり、5モル%未満の範囲で、上記式(1)以外の繰り返し単位、例えば、下記式(2)に示す繰り返し単等を含有していても良い。
Figure 2008255537
但し式中、Rはエチレン以外の炭素数1〜30の有機基であり、例えば、プロピレン、ブチレン、1−フェニルエチレン等の基であり、Rの水素原子の一部または全部が、ハロゲン基、エステル基、アミド基、水酸基、エーテル基で置換されていてもよい。もちろん、Rは二種以上であってもよく、例えば、プロピレン基と1−フェニルエチレン基が混在していてもよい。
ポリケトンの固有粘度[η]は、好ましくは1dl/g以上、より好ましくは2dl/g以上、特に好ましくは4dl/g以上であり、好ましくは20dl/g以下、より好ましくは15dl/g以下、特に好ましくは10dl/g以下である。
尚、ポリケトンの固有粘度[η]は次の定義式に基づいて求められる値である。
Figure 2008255537
式中のt及びTは、それぞれヘキサフルオロイソプロパノール(セントラル硝子(株)社製)及び該ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間である。Cは、上記希釈溶液の濃度であり、ヘキサフルオロイソプロパノール100ml中のポリケトンの質量(g)である。
ポリケトンには、必要に応じて、酸化防止剤、ラジカル抑制剤、他のポリマー、艶消し剤、紫外線吸収剤、難燃剤、金属石鹸等の添加剤を含有させてもよい。
次に、ポリケトン繊維の好ましい特性としては、引張強度は5cN/dtex以上、より好ましくは10cN/dtex以上、特に好ましくは15cN/dtex以上であり、30cN/dtex以下であり、引張伸度は3%以上、より好ましくは3.5%以上、特に好ましくは4%以上、8%以下、より好ましくは7%以下、特に好ましくは6%以下であり、引張弾性率は100cN/dtex以上、より好ましくは200cN/dtex以上、特に好ましくは300cN/dtex以上であり、1000cN/dtex以下である。
ポリケトン繊維の形態は、フィラメント糸であり、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、扁平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブーメラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
ポリケトン繊維の糸条形態としては、マルチフィラメント糸、モノフィラメント糸であり、本発明の目的達成上、マルチフィラメント糸が好ましい。
好ましい単糸繊度は、マルチフィラメント糸の場合は0.01〜10dtex、より好ましくは0.1〜10dtex、特に好ましくは0.5〜5dtexの範囲であり、モノフィラメント糸の場合は、10〜100000dtexの範囲である。又、好ましい総繊度は10〜100000dtex、より好ましくは30〜50000dtexである。
本発明において多軸織物とは、一方向に引き揃えた繊維束シートを、角度を変えて積層した積層体(多軸織物基材)を、ナイロン繊維糸等のステッチ糸で、この積層体の厚さ方向に貫通して、積層体の表面と裏面の間を表面方向に沿って往復しステッチした織物をいい、本発明では、一方向に引き揃えた繊維束シートをかかるポリケトン繊維で構成することに特徴を有する。
本発明では、一方向に引き揃えた繊維束シートを、全てポリケトン繊維で構成しても良いし、ポリケトン繊維以外の他の繊維を混用してもよい。例えば、一方向に引き揃えた繊維束シート内において引き揃えて混用する、積層する各繊維束シート単位で混用する、例えば、ポリケトン繊維束シートと炭素繊維等一種以上の他の繊維束シートとの混用、そしてこれらの組み合わせによる混用がある。
混用する他の繊維としては、例えば、ポリエステル繊維やポリアミド繊維、アラミド繊維(パラ系、メタ系)、ポリビニルアルコール繊維、ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、超高分子量ポリオレフィン繊維、炭素繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、金属繊維等公知の繊維が挙げられ、混用に際しては、複合材料等の要求特性に応じて混用する繊維の単糸繊度や総繊度を適宜選定してもよい。
多軸織物基材をステッチするステッチ糸としては、ポリケトン繊維をはじめ、ナイロン糸、ポリエステル糸、ガラス繊維糸、アラミド繊維糸等任意の繊維糸が利用できるものであり、低融点ポリマー糸(鞘部に低融点ポリマー使いの鞘芯構造糸を含む)を用いて、加熱成形によりステッチ糸を溶融させてもよい。
又、ステッチによる凹凸を回避する等のために、多軸織物基材と熱可塑性樹脂シート(樹脂が通過できる通孔を有するフィルムや不織布を含む)を積層(各々一枚又は複数枚用い、多軸織物基材の片面、両面及び又は層間に積層)してステッチ糸で縫合一体化してもよいし、多軸織物基材の片面又は両面に一方向配列強化繊維シート(この強化繊維シートの片面又は両面に、上記の熱可塑性樹脂シートを熱融着させたものを含む)を樹脂により接着・拘束したものをステッチ糸で縫合一体化してもよい。
多軸織物基材は、積層して用いる場合、面対称となるように選択するのが好ましい。多軸織物基材の目付は、好ましくは100〜2000g/m2 、特に200〜800g/m2 が好ましい。
好ましい多軸織物基材の例としては、[+45/−45/−45/+45]、[0/−45/−45/0]、[0/+45/−45/−45/+45/0]、[0/+45/90/−45/−45/90/+45/0]等が挙げられる。
積層して面対称となる多軸織物基材の組み合わせは、例えば、[+45/−45]及び[−45/+45]、[0/+45/−45]及び[−45/+45/0]、[0/+45/−45/90]及び[90/−45/+45/0]等が挙げられる。0、+45、−45、90は、多軸織物基材を構成する各層の積層角度を表し、それぞれ一方向に引き揃えた繊維束の繊維軸方向が、織物の長さ方向に対して0、+45、−45、90であることを示している。積層角度は、これらの角度に限定されず、任意の角度とすることができる。
本発明の多軸織物の特徴は、特に、ゴムや樹脂との複合材料の補強用基布に用いると、複雑な形状の成形に適合し得る補強用基布となることである。
複合材料に用いるゴムや樹脂としては、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR;水添NBRを含む)、オレフィン類と非共役ジエンとの共重合体(EPDM)、ニトリルゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロルスルホン化ポリエチレン、イソブチレンイソプレン共重合ゴム(IIR;塩素化−IIR、臭素化−IIRを含む)等のゴムが挙げられ、又、アクリル、ウレタン、シリコン、フッ素、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、オレフィン、ポリ塩化ビニル、アクリル、サーマルプラスチックエラストマー、エポキシ、不飽和ポリエステル、フェノール系等の樹脂が挙げられる。
尚、複合材料の補強用基布に用いるに際しては、必要に応じて、多軸織物をカレンダー加工により熱ロール圧縮処理したり、メラミン、アクリル、シリコーン、フッ素樹脂等の樹脂ディッピングにより硬く仕上げたりしてもよい。
又例えば、屋外で強い紫外線を受けることによってポリケトン繊維の引張強度等の低下が懸念される場合には、繊維、編地又は複合するゴムや樹脂中に、紫外線吸収剤(例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系の一種又は二種以上の組み合わせがある。)及び/又は紫外線遮蔽剤(例えば、酸化チタン、酸化鉄、酸化セリウム等の微粒子があり、平均粒径は0.01〜0.6μmが好ましい。)を含有させてもよい。含有させる方法としては、例えば、繊維又は編地に紫外線吸収剤及び/又は紫外線遮蔽剤を含有した樹脂やフィルムを付与又は被覆する方法があり、紫外線吸収剤及び/又は紫外線遮蔽剤の含有量は、樹脂やフィルムの質量に対して0.001〜10質量%が好ましい。
本発明を実施例、比較例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。
本発明における測定方法及び評価方法は以下の通りである。
(1)引張強度、引張伸度、引張弾性率
JIS−L−1013に準じて測定する。
サンプル長:20cm、引張速度:20cm/分で測定し、20回測定した時の平均値を求める。
(2)積層板の成形性
得られた積層板を予熱して半球状の型に入れ、熱プレスして直径10cmの半球状の成形品を作製し、成形品の外観を観察し下記基準にて評価した。
◎;シワが無く、織物のズレも無い極めて良好なもの
○;軽微なシワはあるが、織物のズレも殆ど無い良好なもの。
△;シワがあり、織物のズレが見られるもの。
×;シワが大きく入り、織物のズレが大きなもの。
[実施例1]
1670dtex/1250fのポリケトン繊維マルチフィラメント糸(旭化成せんい(株)社製;商標サイバロン;引張強度18cN/dtex、引張伸度5%、引張弾性率350cN/dtex)を一方向に配列した目付200g/m2 の繊維束シートを積層した多軸織物基材(+45/−45/+45/−45の角度で4枚積層;目付800g/m2 )を、ステッチ糸(ポリエチレンテレフタレート繊維マルチフィラメント糸)でステッチし、縫合一体化した。
次いで、得られた多軸織物を4枚積層し、織物の両面および織物の間にナイロン6フィルム(厚さ60μm)を重ねて熱プレスして積層板を得た。厚さは2mm、繊維の含有率は50容量%であった。
得られた積層板の成形性は、◎〜○とすぐれたものであった。
[比較例1]
実施例1において、ポリケトン繊維に代えて1670dtex/964fのパラ系アラミド繊維マルチフィラメント糸(引張強度20cN/dtex、引張伸度4.5%、引張弾性率500cN/dtex)を多軸織物基材に用いた以外は、実施例1同様にして積層板を得た。
得られた積層板の成形性は、△と実施例1に対比して劣ったものであった。
本発明は、特に複雑な形状の成形に適する補強用基布として有用な多軸織物を提供するものである。

Claims (2)

  1. 一方向に引き揃えた繊維束シートを角度を変えて積層した積層体を、ステッチ糸で厚さ方向に貫通して、積層体の表面と裏面の間を表面方向に沿って往復しステッチした多軸織物であって、この繊維束シートを構成する糸が、繰り返し単位の95モル%以上が下記式(1)で示されるポリケトンで構成される繊維のフィラメント糸であることを特徴とする多軸織物。
    Figure 2008255537
  2. 多軸織物が、ゴム又は樹脂との複合材料における補強用基布であることを特徴とする請求項1記載の多軸織物。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014000805A (ja) * 2012-05-25 2014-01-09 Gifu Plast Ind Co Ltd 積層構造体
JP2017014835A (ja) * 2015-07-03 2017-01-19 東レ・デュポン株式会社 建築土木資材補強用複合シートおよび建築土木資材
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CN113277867A (zh) * 2021-05-11 2021-08-20 广州三的投资管理企业(有限合伙) 一种碳/碳/碳化硅复合材料坩埚的制备方法

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