JP5620014B2 - 繊維補強セメント系混合材料 - Google Patents

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Description

本発明は、粗骨材を含まないセメント系組成物に繊維を混入して製造される強度が高い繊維補強セメント系混合材料に関するものである。
従来のコンクリートには、その使用目的に応じて土木・建築構造物に適用する通常のコンクリートから高流動コンクリート、高強度コンクリート、マスコンクリート、水中コンクリートなどがあるが、基本的には鉄筋による補強を前提とした材料である。しかし、近年、これら従来のコンクリートに、鉄筋補強の補助的役割、部材の角欠け防止、乾燥収縮によるひび割れ防止などの目的で短繊維を混入した、いわゆる繊維補強鉄筋コンクリート(FRC=Fiber Reinforced Concrete)が適用される傾向にある。
これらのコンクリートの配合における骨材粒子は、細骨材と粗骨材とから構成されている。一般的に従来のコンクリートでは、コンクリート単位体積中に含まれる骨材の単位重量が、粉体の単位重量(=セメントの単位重量+混和材の単位重量)に比べて大きい。例えば、骨材単位重量/粉体単位重量の比率で示すと、最も一般的に使用されるコンクリートでは、400−700%であり、粉体を多く含むとされる粉体系の高流動コンクリートでさえも250−300%程度である。
また、従来のコンクリートに使用する粗骨材の最大粒径は、一般の構造物への適用では、20mmや25mmに限定される場合が最も多く、ダムなどの適用では40mmや80mmに限定される。従って、従来の繊維補強鉄筋コンクリートにおける繊維とコンクリートとの付着機構は、コンクリートに配合された骨材を介した機械的付着力に期待するものではなく、コンクリート水和物(セメントペースト)と繊維との化学的付着力や摩擦力に期待するものである。
これに対して、最大骨材粒径が1−2mmの骨材粒子にセメントとポゾラン反応粒子(ポゾラン材)とを混合したセメント系マトリックスに、金属繊維や有機繊維などの補強繊維を混入した超高強度繊維補強コンクリートが知られている(特許文献5,6など参照)。
このような超高強度繊維補強コンクリートは、緻密で超高強度なセメント系マトリックスに引張強度の高い繊維を組み合わせることにより、ひび割れ発生後においても引張強度とじん性(ねばり強さ)をある程度確保できるという特性を有している。すなわち、材料に引張応力が作用してセメント系マトリックスにひび割れが発生した際に、セメント系マトリックスに代わって繊維が引張力を負担する、いわゆる架橋効果が発揮されるためと考えられている。
このため、このような超高強度繊維補強コンクリートは、従来の鉄筋コンクリートとは異なり、鉄筋による補強が不要となる。そして、このような超高強度繊維補強コンクリートを使って構築されるコンクリート構造物は、部材を薄肉化、軽量化することができる。
また、このような超高強度繊維補強コンクリートは多くの場合で熱養生されることが多く、セメント系マトリックスが熱養生される際の水和反応過程において常温養生される場合に比べて更なる緻密な水和組織が短時間に形成されるので、耐久生を大幅に向上させることができる。また熱養生後には乾燥収縮がほぼゼロになり、クリープ係数が大幅に減少するなどの特徴を有する。
特許文献1と特許文献2に開示されているセメント組成物は、セメントの種類を除けばほぼ同じ構成である。この2つの相違点は、セメント組成物のセメントの種類が、特許文献1では、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント又は中庸熱ポルトランドセメントであるのに対し、特許文献2では低熱ポルトランドセメントである点にある。特許文献1,2のセメント組成物の特徴は、特定の粒度分布を有する石灰石微粉末を配合することにより、流動性の向上、凝結時間の短縮、混練性の向上などの効果が得られるところにある。流動性や混練性の向上は、石灰石微粉末の粉末度(ブレーン比表面積)の調整だけで実現できるものではなく、特定の粒度分布に設定することが不可欠であるとしている。
しかしながら特許文献1,2に開示されたセメント組成物は、通常のコンクリート材料を構成するためのセメント組成物であって、上述したような粗骨材を含まない超高強度繊維補強コンクリートの超高強度なセメント系マトリックスを対象にしたものではない。そのため、これらのセメント組成物には、ポルトランドセメント、シリカフューム及び石灰石微粉末は含まれているが、ポゾラン材料などの混和材が配合された条件下での、石灰石微粉末の作用効果については記載も示唆もされていない。
また、特許文献3と特許文献4は、ともに超高強度繊維補強コンクリートに関する文献である。特許文献3の水硬性組成物に含まれる繊維は有機繊維や炭素繊維であり、特許文献4の繊維が金属繊維である点で双方は相違しているが、セメント系マトリックスに関しては共通している。これらの文献に開示されたセメント系マトリックスは、それぞれの材料に対して比表面積と重量部が規定されたセメントと、微粒子と、2種類の無機粒子とから構成されている。
また、特許文献3,4には、流動性と材料分離抵抗性の向上、及び硬化後の圧縮強度などの機械的特性の向上を目的に開発された水硬性組成物が開示されている。これら点について文献では、配合された材料の化学的反応に基づいて性能が向上していることを示しているのではなく、材料の粒度分布又はブレーン比表面積に着目することによって、流動性や材料分離抵抗性の性能向上を説明している。さらに、硬化後の圧縮強度の向上についても、構成される材料の配合が最密充填されることに着目したものである。これらの特許文献では、セメント、シリカフューム、少なくとも一種類のポゾラン材と石灰石微粉末を配合した粉体による、早期強度、低収縮、低水和熱、高流動性、高引張強度、高じん性などへの作用効果について記載も示唆もされていない。
また、特許文献5−8には、セメントとポゾラン反応する粒子とから構成されるセメント系マトリックスの組成が開示されている。そして、これらのセメント系マトリックスを補強する繊維として、金属繊維、有機繊維、又は有機繊維と金属繊維とを組み合わせた複合繊維などが含有されている。これらの文献に開示された超高強度繊維補強コンクリートの特徴は、流動性の向上、材料分離抵抗性の向上、セメント系マトリックスの緻密化による耐久性の向上、硬化後の力学的特性の向上が可能な点にある。ポゾラン反応粒子を配合することにより、セメントが存在することで生ずるポゾラン反応が期待できる状態になり、硬化後の機械的特性の向上を達成することができる。また、ポゾラン材は、セメント系マトリックス組成物の構成材料の粒度調整機能も果たすので、流動性の向上、材料分離抵抗性の向上、及び材料の緻密化の実現が可能になる。しかし、これらの特許文献では、ポゾラン反応粒子のほかに石灰石微粉末を配合することによる作用効果や、補強する繊維とセメント系マトリックスとの付着性能を向上させて高引張強度や高じん性を図ろうとする記載や示唆はされていない。
特開平08−26793号公報 特開平08−239249号公報 特開2002−348166号公報 特開2002−338323号公報 特表平9−500352号公報 特開平11−246255号公報 特開2007−55895号公報 特開2006−213550号公報
しかしながら、従来の超高強度繊維補強コンクリートは、i)単位セメント量が多い、ii)水/(セメント+シリカフューム)比が小さい(すなわち、材料費が高いセメント及びシリカフュームの使用量が多い。)、iii)骨材/粉体比が小さい、などの理由から養生期間中の収縮量が大きい。超高強度繊維補強コンクリート材料の総収縮量は、i)初期養生の段階、つまり凝結開始から型枠を脱型するまでの段階における一次養生中に生ずる自己収縮と水和反応により生ずる水和収縮と、ii)型枠脱型後から最終強度発生までに熱養生を行う二次養生中に発生する自己収縮、水和収縮及び乾燥収縮との総和で表せる。なお、二次養生として80℃−90℃で36時間−48時間の熱養生を行う理由は、i)短期間に最終の所定強度を得るため、ii)二次養生中に高熱と充分な水分を与えることで、短期間に水和反応を促進させて水和反応中に生ずる自己収縮、水和収縮及び乾燥収縮を早期に終わらせるため、iii)高温の熱養生を行うことによりセメント系マトリックス中の空隙構造のキャピラリー空隙をゲル空隙に移行させて耐久性に優れた緻密な水和物構造にするため、である。
また、超高強度繊維補強コンクリート材料を適用して、プレテンション部材を製作するような場合には、一次養生後の型枠脱型後にプレストレスを導入することになる。ここで、一次養生中に発生する自己収縮と水和収縮が大きいと、型枠が収縮を拘束するためにセメント系マトリックスに引張応力が発生してひび割れが発生するリスクが増大する。これを回避するために、型枠の拘束を緩和する方策が採られている。例えば、材料の収縮変形を吸収できるような発泡スチロールやゴムなどの変形しやすい材料を型枠材料として適用する方法である。この場合、従来の鋼製や木製の型枠よりも製作手間がかかり、また高価な材料を使用することによりコストが増加する。さらに、これらの型枠材料は、型枠の転用効率が非常に悪く、型枠費用の大幅な増大が大きな問題となる。
さらに、二次養生中に発生する自己収縮、乾燥収縮及び水和収縮などが大きいと、プレテンションによる部材を製作するような場合には、二次養生の前にプレストレスを導入するので、プレストレスの導入効果(有効プレストレス率)が低下する。つまり二次養生中の収縮量が大きいと構造部材が縮むために、導入した緊張力を損失することになる。このように有効プレストレス率が低下することになるので、緊張ロスを見込んだ余分の緊張材を配置する必要があった。
一方、従来の超高強度繊維補強コンクリートは、小さな水セメント比を維持しながらも流動性を向上させる必要があるために、多量の混和剤(例えば、高性能減水剤)を添加する必要がある。多量の混和剤を混入した場合、凝結開始時間が遅延して、所定の初期強度が発生するまでの養生時間が長くなる問題を生じていた。
また、従来の超高強度繊維補強コンクリートは、高価な高性能減水剤などの混和剤の使用量を削減し、少ない高性能減水剤で効率的に流動性を向上させるために、高性能減水剤の吸着効率の悪いセメント成分中のエーライト(CS)成分やアルミネート相(CA)を少なくして、高性能減水剤の吸着効率が良いビーライト(CS)成分を多くした、低熱ポルトランドセメントを配合する傾向にある。低熱ポルトランドセメントを使用した場合には、高性能減水剤の添加量を低減することができるものの、初期強度の発現に寄与するエーライト(CS)成分やアルミネート相(CA)が少なくなるために、初期強度発現が遅く、一次養生の養生時間が長くなる結果となっていた。
これに対して、プレテンション部材の場合は、脱型後にプレストレスを導入するために所定の強度が必要となる。初期強度発現が遅いことによる問題としては、型枠脱型やプレストレスを導入する作業ステップまでの一次養生の養生時間が長くなるので、この種の材料を適用した構造部材を製造するサイクルタイムが長くなり、製造効率が低下することにある。すなわち、一日あたりの生産量が予定されている計画に対して、初期強度が遅くなることへの対応としては、型枠基数の増加や製造ラインの増設などの設備投資を拡大する必要があり、結果として製造コストが増加することになる。
また、この種の材料は、二次養生として80℃−90℃で36時間−48時間の熱養生を行うことが多い。二次養生において熱を供給するのは、上述のように、必要な生産プロセスである。しかし、長時間にわたり高温を維持するためには、多量の燃料が必要となり、生産コストに占める燃料費用の割合が大きいことも問題になる。
従来の超高強度繊維補強コンクリートは、セメント系マトリックスの圧縮強度や引張強度を超高強度にするために、結合材であるセメントを多量に配合していた。そのために、セメント水和反応による水和発熱量が大きくなる問題があった。
発熱量を低減する一般的な方法には、使用するセメントの種類を低熱ポルトランドセメントにする方法がある。しかし、低熱ポルトランドセメントにすることにより、上述したように初期強度の発現が遅くなることによる問題が生ずる。この種の超高強度繊維補強コンクリートを適用して部材を製作する際において、水和発熱量が多いことによる問題点を以下に示す。
(1)養生初期において水和熱が大きい場合、部材の内部と外部との間で空間的に温度差が発生し、温度差による温度ひずみが生じることによる温度ひび割れの発生リスクが増大する。特に養生初期の場合は、超高強度繊維補強コンクリートの強度が充分に発現していないので、温度ひび割れの発生リスクが高くなる。
(2)部材が厚肉断面と薄肉断面とから構成されている場合に、水和発熱によって部材間に温度差が発生して、温度ひび割れのリスクが増大する。
(3)この種の材料を使うことによって薄肉断面に成形できることが特徴であるが、大型構造物を計画する場合には、厚肉断面の部材も必要とされることがある。例えば、緊張端部のプレキャストブロックは厚肉断面となるため、温度ひび割れの発生リスクが高くなる。
従来の超高強度繊維補強コンクリートの圧縮強度は、この種の材料を適用した実際の設計において、多くの場合で余裕を示し、問題となることはなかった。一方、この種の材料は、鉄筋補強せずに構造部材として適用することのメリットが大きいために、超高強度繊維補強コンクリート自体が曲げ引張強度部材や曲げじん性補強部材として適用される。しかしながら、従来の超高強度繊維補強コンクリートの曲げ引張強度や曲げじん性性能は限界があり、さらなる性能の向上が望まれている。
そこで、本発明は、フレッシュ時の流動性を保持しながら、初期強度発現が早いうえに水和発熱量が少なく、養生中の収縮量が少ないセメント系組成物を含有する高引張強度と高じん性性能を有する繊維補強セメント系混合材料を提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本発明の繊維補強セメント系混合材料は、セメント100重量部と、シリカフューム5−30重量部と、シリカフュームを除く少なくとも一種類のポゾラン材30−80重量部と、石灰石微粉末5−25重量部と、少なくとも一種類の混和剤と、水と、最大骨材粒径が1.2-3.5mmである骨材粒子70−150重量部と、表面に形成された凹凸の凹部の深さhの最小断面径Hに対する比率(h/H)が0.05−0.8となるように成形された凹凸繊維が少なくとも一部に含まれる繊維とを含有することを特徴とする。
このように構成された本発明の繊維補強セメント系混合材料に含有されるセメント系組成物は、流動性を保持したフレッシュ性状が維持された状態で、養生中の収縮量が少なく、一次養生中の初期強度発現が早く、水和反応による水和発熱量が小さいという特徴を有する。
また、セメント系組成物に補強繊維を混入して得られる超高強度の繊維補強セメント系混合材料は、流動性を保持したフレッシュ性状が維持された状態で、圧縮強度をはじめとして、高い引張強度、高い曲げ強度、さらに高いじん性性能を示すことができる。
そして、このセメント系組成物の骨材粒子の配合に適した凹凸形状を繊維表面に形成することにより、より高い引張強度とじん性性能を実現させることができる。
本発明の実施の形態の繊維補強セメント系混合材料に混入する凹凸繊維の構成を説明する斜視図である。 凹凸繊維と骨材粒子との機械的付着力を説明する説明図である。 実施例2の曲げじん性試験の結果(実施例B1から実施例B3)を説明するグラフである。 実施例2の曲げじん性試験の結果(実施例B4から実施例B6、比較例B7)を説明するグラフである。 実施例3の曲げじん性試験の結果(実施例−T1,実施例−T2、比較例−T1,比較例−T7,比較例−T8)を説明するグラフである。 実施例3の曲げじん性試験の結果(実施例−T3から実施例−T6、比較例−T2から比較例−T4)を説明するグラフである。 実施例3の曲げじん性試験の結果(実施例−T7、比較例−T5,比較例−T6)を説明するグラフである。
以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態の繊維補強セメント系混合材料は、セメント系組成物と、繊維とを含有した繊維補強コンクリートである。また、セメント系組成物は、セメントと、混和材と、水と、混和剤と、骨材粒子とを含有したセメント系マトリックスである。
まず、セメントには、ポルトランドセメント(普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメントなど)が使用できる。
特に初期強度発現を早期に得たい場合には、普通ポルトランドセメントや早強ポルトランドセメントの使用が好ましい。また、流動性の向上や水和発熱量を低減したい場合には、中庸熱ポルトランドセメントや低熱ポルトランドセメントの使用が好ましい。
本セメント系マトリックスは、これらの要求に対して、後述するようにセメントの種類のみで対応するのではなく、シリカフューム、ポゾラン材、石灰石微粉末の配合により対応する。すなわち、混和材には、シリカフューム、シリカフュームを除くポゾラン材、及び石灰石微粉末を使用する。
シリカフュームのBET比表面積(BET法によって測定される比表面積)は、10m2/g以上であることが望ましい。シリカフュームのBET比表面積が10m2/g未満の場合には、ポゾラン反応性が低くなり強度性能の向上効果が低減する。またシリカフュームの粒径も大きくなるために、後述するマイクロフィラー効果やベアリング効果が低減し、流動性への効果が低下することになる。
また、シリカフュームの粒径が大きくなると、セメント粒子間の間隙にシリカフューム粒子の最密充填が充分に行われなくなるので、セメント系マトリックスの緻密性が低下して高耐久性の向上効果が小さくなる。これに対して、BET比表面積が10m2/g以上のシリカフュームの場合には、強度の向上、流動性の向上、高耐久性の向上などの効果が期待できる。
シリカフュームは、シリコンメタル、フェロシリコン、シリコン合金、ジリコニュウムなどを製造する際に発生する排ガス中のダストを捕集することによって得られる超微粒子状の材料である。使用するシリカフュームの製品形態としては、運搬効率を上げるために機械的に凝集(densification)させて、単位容積質量を大きくしたものでもよい。また、シリカフュームを水に懸濁させたシリカフュームスラリーという形態で使用することもできる。
シリカフュームの化学組成の主成分は、非結晶質の二酸化珪素(SiO2)である。二酸化珪素(SiO2)の含有率が高いシリカフュームは、ポゾラン反応性が高まるために、セメント系マトリックスの強度性能の向上や、高耐久性の向上に寄与する。また、BET比表面積が大きくなれば、やはりポゾラン反応性が高まり、セメント系マトリックスの強度性能の向上や、高耐久性の向上に寄与する。
シリカフュームの粒径は、セメント粒子の1/40−1/100と非常に微細であるために、セメント硬化体の空隙を充填するマイクロフィラー効果を期待することができ、硬化体組織の大幅な緻密化の向上を図ることができる。高緻密な組織は、塩化物イオンや二酸化炭素、水などの浸入を防止するので、コンクリートの耐久性に影響を及ぼす化学物質を浸入抑制する効果が高い、すなわち高耐久性な組織となる。
また、シリカフュームの粒径は非常に微細であり、球形に近い形状をしているために、セメント系マトリックスを練混ぜる際において、セメント粒子やポゾラン材粒子の空隙に分散するように配置される。このために、これらの粒子間のベアリング効果を期待することができる。そしてこのベアリング効果は、セメント系マトリックスの流動性の大幅な向上に効果を発揮することになる。
シリカフュームは、セメント100重量部に対して5−30重量部が好ましい。シリカフュームが5重量部未満の場合には、本来シリカフュームが示すことができる、強度性能の向上、高耐久性の向上、流動性の向上などの性能向上効果が大きく減少する。また、シリカフュームの重量部が30を超えるような場合には、セメント系マトリックスの粘性が増大するために、所定の流動性を得ることはできない。無理やりに流動性を得るためには、高性能減水剤をさらに過剰添加して、水を加える必要がある。高性能減水剤の過剰添加は、材料単価を上げるだけでなく、セメント系マトリックスの初期強度の発現を遅延させる。
また、シリカフュームの配合が30重量部を超えると、自己収縮及びプラスチック収縮が増大し、ひび割れ発生のリスクが増大する。一般的に、単位セメント量が多いと自己収縮が多くなるように、単位シリカフューム量が多いと同様に自己収縮が多くなることが知られている。これに対して、本セメント系マトリックスでは、単位セメント量を小さくすると同時に、シリカフュームの混入量を、セメント重量部に対して5−30重量部と小さく設定している。このように単位シリカフューム量が低減された結果、自己収縮量を低減することができる。より好ましいシリカフュームの配合は、セメント100重量部に対して7−25重量部である。
そして、本セメント系マトリックスに配合されるポゾラン材のブレーン比表面積(ブレーン空気透過測定装置で測定した比表面積)は、2,500−20,000cm2/gであることが好ましい。ポゾラン材とは、反応性の高いシリカ成分を多く含み、セメントと混和してセメントのアルカリ成分により硬化して強度を発現する、いわゆるポゾラン反応を起こす材料である。
ポゾラン材は、天然ポゾラン材と人工ポゾラン材とに分類される。本実施の形態のポゾラン材としては、いずれのポゾラン材も使用できる。天然ポゾラン材としては、火山灰、珪藻土、珪藻白土、トラスなどが使用できる。また、人工ポゾラン材としては、高炉水砕スラグ微粉末(高炉スラグ微粉末)、高炉徐冷スラグ微粉末、フライアッシュ、分級フライアッシュ、石炭ガス化フライアッシュなどが使用できる。これらのポゾラン材は、単独で使用したり、複数の組み合せで使用したりすることができる。なお、シリカフュームは、人工ポゾラン材としてポゾラン反応性(又はポゾラン活性度)が高い材料として知られているが、ここで定義しているポゾラン材からは除外している。
本セメント系マトリックスにおけるポゾラン材の役目としては、i)ポゾラン材をセメント置換することにより単位セメント量を低減して、水和発熱量の低減に寄与する、ii)セメント中のエーライト(C3S)の初期水和を促進して、セメント系マトリックスの初期強度を向上させる、iii)ポゾラン反応による長期強度の発現に寄与する、iv)セメント中のアルミネート相(C3A)の初期水和を抑制して水和の発熱量の低減に寄与する、v)ポゾラン材のベアリング効果により少ない水に対してもセメント系マトリックスの流動性を向上させる、vi)セメント間隙を埋めるポゾラン材のマイクロフィラー効果によりセメント系マトリックスをより緻密な組織とする、などがある。ここで、ポゾラン材のブレーン比表面積が2,500cm2/g未満の場合は、ポゾラン反応する際のポゾラン反応性が低下するので、i)セメント中のエーライト(C3S)の初期水和を促進する効果が低下して初期強度の向上効果が低減する、ii)ポゾラン反応による長期強度発現効果が低減する、iii)セメント中のアルミネート相(C3A)の初期水和の抑制効果が低減する、などの影響がでる。また、ポゾラン材のブレーン比表面積が2,500cm2/g未満の場合は、ポゾラン材の平均粒径が大きくなるので、ベアリング効果やマイクロフィラー効果が低下して、流動性や緻密性の確保が困難となる。他方、シリカフュームを除くポゾラン材のブレーン比表面積が20,000 cm2/gより大きくなる場合は、ポゾラン反応性は増大するものの、分級又は粉砕分級による処理工程が必要となり材料入手が経済的でなくなる。より好ましい、シリカフュームを除くポゾラン材のブレーン比表面積は、2,500−18,000 cm2/gである。
また、本セメント系マトリックス中のポゾラン材は、セメント100重量部に対して30−80重量部が好ましい。ポゾラン材が30重量部未満の場合には、ポゾラン材としての役目を果たすことが充分にできない。これに対してポゾラン材が80重量部を超えるような場合には、単位セメント量を減少させたり、骨材粒子の配合量を減少させたりするなどの必要性が出てくるので、強度の低減を招いたり、流動性を確保できなかったり、あるいは収縮量が増大したりするなどの問題が発生する。このため、より好ましいポゾラン材の配合は、セメント100重量部に対して、35−80重量部である。
本セメント系マトリックスに使用する、シリカフュームを除く少なくとも一種類のポゾラン材の構成としては、ブレーン比表面積が2,500−18,000 cm2/gの分級フライアッシュや石炭ガス化フライアッシュを含むフライアッシュ、ブレーン比表面積が3,000−12,000 cm2/gの高炉スラグ微粉末、又はこれらを組み合わせたものが好ましい。これらの人工ポゾラン材は、材料としての品質が安定していて品質管理がし易く、また汎用性のある材料として広く調達が可能である。
例えば、人工ポゾラン材として高炉スラグ微粉末を配合することにより、高炉スラグ微粉末特有の潜在的水硬性の水和反応により長期的な強度発現が期待できる。さらに、高炉スラグ微粉末を配合した場合には、フライアッシュを配合した場合よりも初期の水和反応を活発にする働きがあり、初期強度の増進が実現できる。
そして、本セメント系マトリックスには、混和材として石灰石微粉末を使用する。石灰石微粉末は、混和材ではあるがポゾラン反応はしないのでポゾラン反応粒子(ポゾラン材)ではない。すなわち、本セメント系マトリックスは、セメントのほかに混和材としてシリカフュームと、シリカフュームを除くポゾラン材料と、石灰石微粉末とを配合することにより、単位セメント量を低減させて、単位セメント量の減少により生ずる強度の低減や初期強度発現の遅延などの損失をカバーするとともに、水和発熱の低減に寄与する。
特に、本セメント系マトリックスは、ポゾラン材料のほかにポゾラン反応しない石灰石微粉末を配合することによって、ポゾラン材のみの配合により得られていた収縮低減の効果よりも、さらに優れた収縮低減効果を得ることができる。すなわち、i)セメントの配合量を石灰石微粉末に置き換えることによって単位セメント量が低減されて全体の収縮を低減できる、ii)ポゾラン材の配合量を石灰石微粉末に置き換えることによってポゾラン反応による収縮に比較して収縮の小さい石灰石微粉末に置換されるので全体としての収縮を低減できる、からである。
ところで、早期に初期強度を発現させるには、使用するポルトランドセメントの種類を早強ポルトランドセメントにするなど、セメントの種類を変更することが考えられる。しかし、早強ポルトランドセメントにした場合、その鉱物相としてエーライト(CS)やアルミネート相(CA)が多く含まれているために、収縮量と水和発熱量が増大する問題が発生する。
そこで、本セメント系マトリックスは、セメントの種類を早強ポルトランドセメントに変更しなくても、石灰石微粉末をセメント重量部に対して5−25重量部の量で配合することにより、収縮量と水和発熱量を増大させることなく、早期の初期強度発現を可能とした。このような効果が得られる理由は、i)石灰石微粉末がセメント中のエーライト(CS)の初期水和を促進してセメント系マトリックスの初期強度を向上させ、さらに、ii)石灰石微粉末がセメント中のカルシュームアルミネート(CA)と反応してモノカーボ・アルミネート(CACaCO・11HO)などの水和物を生成して初期強度の発現に寄与するためと考えられる。
ここで、ポゾラン材の高炉スラグ微粉末やフライアッシュも、セメント中のエーライト(CS)の初期水和を促進してセメント系マトリックスの初期強度を向上させることができるので、本セメント系マトリックスではこれらのポゾラン材料を配合している。しかし、石灰石微粉末の初期強度発現効果は、高炉スラグ微粉末やフライアッシュなどの初期強度発現効果に比較して大きいために、石灰石微粉末を配合することにより効率的に初期強度を発現させることができる。
他方、石灰石微粉末は初期強度の発現には効果を発揮するが、長期強度に対しては、その効果が期待できない。そのために、ポゾラン材であるフライアッシュを配合することにより、長期的に強度発現するポゾラン反応が期待できるようになり、二次養生中におけるポゾラン反応による長期強度の増進が実現できる。あるいは、高炉スラグ微粉末を配合することにより、その潜在的水硬性の水和反応を期待して二次養生後の長期強度の増進が実現できる。
また、ポゾラン材のフライアッシュや高炉スラグ微粉末を配合することにより、石灰石微粉末の効果よりも低いものの、セメントの鉱物相の中で、最も発熱量の大きいアルミネート相(CA)の初期水和を抑制することができるので、セメントの種類を変更することなく水和発熱量の低減が実現できる。さらに、早期に初期強度を発現させることができる。
本セメント系マトリックスは、上述したように単位セメント量が低減されるので、セメントによる水和反応量が低減して水和発熱量を低減する効果を得ることができる。そして、単位セメント量が減少しても圧縮強度や引張強度などの強度特性を低下させないようにするために、ポゾラン材料のほかにブレーン比表面積が3,000−18,000 cm2/gの石灰石微粉末をセメント100重量部に対して5-25重量部配合する。このようにすることにより、ポゾラン材のみの配合により得られる水和熱低減の効果よりも更なる効果の向上を図ることができる。つまり、i)セメントの配合量を石灰石微粉末に置き換えることができるので、単位セメント量を更に低減することができ、水和発熱量が低減する、ii)ポゾラン材の配合量を石灰石微粉末と置き換えることができるので、ポゾラン反応による発熱よりも低い石灰石微粉末への置換によって全体としての発熱が低減できる、ためである。
ちなみに、セメントの鉱物相の水和発熱に関するデータ(エントロピー)を示すと、アルミネート相(CA)=8.41(cal/mol deg)、フェライト相(CAF)=6.31(cal/mol deg)、エーライト(C3S)=1.8(cal/mol deg)、ビーライト(C2S)=1.5(cal/mol deg)となる。これらのデータは、アルミネート相(CA)による水和抑制は効率的であることを示している。
本セメント系マトリックスでは、石灰石微粉末がセメントの鉱物相の中で、最も発熱量の大きいアルミネート相(CA)の初期水和を、ポゾラン材よりも効率的に抑制することができるため、水和発熱量の低減が効果的に実現できる。このため、例えば低熱ポルトランドセメントに変更するなど、セメントの種類を変更することなく水和発熱量の低減が実現できる。また、初期の水和発熱量を低減した状態で、早期に初期強度を発現させることができる。
このようにセメント系マトリックスに石灰石微粉末を混入することによって、収縮量の低減、早期の初期強度の発現、水和発熱量の低減などに効率的な効果をあげることができる。さらに、石灰石微粉末は、セメント系マトリックス及びそれを使用して製造される繊維補強セメント系混合材料の流動性の向上にも効果をあげることができる。
ここで、後述する高性能減水剤(例えば、ポリカルボン酸系など)による減水効果は、粉体に吸着した減水剤のポリマーの「立体障害効果」による分散作用であると考えられている。この吸着量の測定によれば、石灰石微粉末は、セメントや高炉スラグ微粉末などよりも優れた分散性能を保有しており、石灰石微粉末を使用することによって少ない高性能減水剤で大きな分散効果が得られるようになる。
また、石灰石微粉末の粒径は、セメント粒子よりも小さいので、シリカフューム又はフライアッシュ若しくは高炉スラグ微粉末などのポゾラン材と同様に、セメント間隙を埋めるマイクロフィラー効果があり、最密充填の材料として最適である。また、石灰石微粉末の粒状形状は球体に近く、ベアリング効果により、少ない水と高性能減水剤の下で、フライアッシュや高炉スラグ微粉末よりも効率的に流動性の向上を図ることができる。
石灰石微粉末のブレーン比表面積が3,000 cm2/g未満の場合には、石灰石微粉末としての活性度が低下するために、収縮低減効果をはじめ早期強度の実現、水和発熱量の低減などの効果が期待できなくなる。さらに、セメント間隙を埋めるマイクロフィラー効果やベアリング効果が充分に期待できなくなるので、流動性の向上が望めなくなる。他方、石灰石微粉末のブレーン比表面積が18,000 cm2/gより大きくなると、石灰石微粉末としての活性度が向上するために、上記の効果は満足できるものとなるが、高いブレーン比表面積の石灰石微粉末を製造するための分級や分級粉砕の処理設備が必要となり材料入手が経済的でなくなる。より好ましい石灰石微粉末のブレーン比表面積は、4,000−15,000 cm2/gである。
セメントの100重量部に対して、石灰石微粉末が5重量部未満であるような場合に、石灰石微粉末に期待している収縮低減、早期強度、水和熱量の低減などの効果が充分に期待できなくなる。特に重要な初期収縮の低減には、石灰石微粉末が5重量部以上必要である。他方、石灰石微粉末が25重量部より大きくなるような場合には、単位セメント量を変更しなければポゾラン材やシリカフュームの配合比率が低下するために、流動性が著しく低下する。逆にポゾラン材やシリカフュームを変更しなければ、単位セメント量を低下する必要があり、そのために強度特性が低下する結果となる。セメントの100重量部に対して、より好ましい石灰石微粉末の重量部は、8−20重量部である。
本セメント系マトリックスに配合される混和剤は、流動性や強度発現性の向上、凝結コントロール、耐久性の向上などの多くの目的で使用される添加剤で、少なくとも1種類を使用する。この混和剤には、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、消泡剤、凝結促進剤、凝結遅延剤、増粘剤、収縮低減剤、急結剤、発泡剤、防錆剤などを単独で使用したり、複数の組み合せで使用したりすることができる。
少ない単位水量で流動性の向上を目指すためには、高性能減水剤又は高性能AE減水剤が使用される。高性能減水剤としては、ポリカルボン酸塩系高性能減水剤、ポリアルキルアリルスルホン酸塩系高性能減水剤、芳香族アミノスルホン酸塩系高性能減水剤、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系高性能減水剤などがある。高性能AE減水剤としては、アルキルアリルスルホン酸塩系高性能AE減水剤、芳香族アミノスルホン酸塩系高性能AE減水剤、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系高性能AE減水剤、ポリカルボン酸塩系高性能AE減水剤などがある。これらの高性能減水剤は限定されるものではないが、使用量としてはセメント100重量部に対して3−5重量部であれば良好な流動性を得ることができる。また、混練り時に連行した空気を消泡するために、消泡剤を高性能減水剤と組み合わせて使用してもよい。
本セメント系マトリックスに配合される水は、水道水など不純物を含まないものであれば制限はない。使用する高性能減水剤や高性能AE減水剤、あるいは単位セメント量に依存するが、水の使用量としてはセメント100重量部に対して、21-26重量部であれば良好な流動性と強度特性を得ることができる。
本セメント系マトリックスに配合される骨材粒子には、川砂、海砂、珪砂、砕砂、石灰岩を粉砕した砂、再生骨材の砂、焼成ボーキサイトを粉砕した砂、鉄鉱石を粉砕した砂、石英へん岩を粉砕した砂、高炉スラグを粉砕した砂、石英微粉末、硅石微粉末、岩石微粉末などを単独で使用したり、あるいは複数の組み合わせで使用したりすることができる。
本セメント系マトリックスでは、骨材粒子の最大粒径Dmax、すなわち最大骨材粒径が1.2−3.5 mmの骨材粒子を、セメント100重量部に対して70−150重量部配合する。従来の超高強度繊維補強コンクリートに比較すると、本セメント系マトリックスは、骨材重量部が30−50重量部ほど多い。特許文献5−7に示されているような最大骨材粒径に比べると大きな最大骨材粒径から構成される骨材粒子が、多量にセメント系マトリックス中に混入されることにより、セメント系マトリックス中にしっかりとした骨材粒子による骨格が形成される。このような骨材粒子による骨格は、自己収縮若しくは水和収縮、又は乾燥収縮などの収縮に対して、局所的ではなくマクロ空間的に収縮抵抗の骨格として作用するので、結果として、収縮によるひび割れを発生させることなく収縮量を低減させることができる。
最大骨材粒径を1.2 mm未満にすると、セメント系マトリックスの収縮を低減するための骨材による骨格が充分に形成されず、収縮を抑制する効果が低減する。他方、最大骨材粒径を3.5 mmよりも大きくすると、骨材粒子の表面とセメントペーストとの境界面積が大きくなるために、この境界部における剥離強度あるいは付着強度の低下割合が、セメント系マトリックス全体に占める割合の中で大きくなる。この結果、セメント系マトリックスの曲げ強度や引張強度の低下が著しくなる。より好ましい最大骨材粒径は、1.5−3.0 mmである。
最大骨材粒径が1.2−3.5 mmである骨材粒子の構成は、セメント100重量部に対して骨材粒子70−150重量部であることが好ましい。骨材粒子が70重量部未満になった場合、相対的に粉体量が多くなるために骨材粒子の骨格が減少することになり、収縮量の増大、粉体が多くなりすぎることによる粘性の増大、粘性を低下させるための過剰な高性能減水剤の必要性、セメント水和熱の増大、骨材粒子量の低下によるセメント系マトリックス相互間のせん断伝達力の低下などの問題が生ずることになる。他方、骨格粒子が150重量部より大きくなった場合、相対的に粉体量が少なくなるので収縮を低減する効果は充分になるが、結合材が減少することによる圧縮強度、曲げ強度、引張強度などの低下が発生する。
このように構成された本実施の形態のセメント系マトリックスは、流動性を保持したフレッシュ性状が維持された状態で、養生中の収縮量が少なく、一次養生中の初期強度発現が早く、水和反応による水和発熱量が小さいという特徴を有する。また、二次養生中においても収縮量を少なくできるので、プレテンション部材の緊張ロスの見込み量を減らすことができ、緊張材料の費用や緊張材料の配置手間を節約することができる。
さらに、本セメント系マトリックスは、単位セメント量を低減することが可能であり、従来の超高強度繊維補強コンクリートと比較すると、少なくとも単位セメント量で100−250kg/m3程度低減することができる。
また、シリカフュームがセメント100重量部に対して5−30重量部であれば、シリカフュームの配合重量は、従来の材料に比較して低減された量である。すなわち、従来の超高強度繊維補強コンクリートを構成するセメント系マトリックスは、多量のセメントが配合されているうえに、シリカフュームなどの高価な原材料を多量に使用することで、超高強度な圧縮強度や引張高度などの強度を得るとともに、高緻密で耐久性の高い材料を実現してきた。しかし、材料単価が一番高いのはシリカフュームであり、従来の超高強度繊維補強コンクリートが非常に高価な材料であった一つの理由である。
このため、シリカフュームの使用量を低減できれば、経済的な材料にしやすくなる。本セメント系マトリックスは、シリカフュームの混入量が低減されても、シリカフューム以外の規定されたブレーン比表面積を有する石灰石微粉末及びポゾラン材を規定の重量部だけ配合するため、収縮量の低減、早期の初期強度発現、水和熱の低減が可能となる。このような理由で、本セメント系マトリックスは材料費が削減できる。
本実施の形態の超高強度の繊維補強セメント系混合材料(超高強度繊維補強コンクリート)は、上述した本セメント系マトリックスに、金属繊維、有機繊維、又は有機繊維と金属繊維とを混ぜ合わせた複合(ハイブリッド)繊維のいずれかを混入することにより得られる。すなわち、本実施の形態の繊維補強セメント系混合材料は、混入する繊維の材質に依存することはない。
繊維の形状としては、繊維の長さLiの繊維の平均断面径dに対する比率(Li/d)が10-500となる繊維がよい。この比率(Li /d)はアスペクト比ARと呼ばれるもので、繊維とセメント系マトリックスとの付着性能を示すパラメータである。アスペクト比ARが10未満の場合には、セメント系マトリックスと繊維との付着を充分に得ることは困難となり、繊維による引張補強を保持することができなくなる。他方、アスペクト比ARが500より大きくなると、繊維の長さが長くなりすぎることにより、セメント系マトリックスに混入した際に、繊維同士が絡み合うようになって、ファイバーボールができやすくなる。また、繊維がセメント系マトリックスの中に均等に分散できなくなり、流動性も失われる。より好ましくは、アスペクト比ARを20-300にする。
混入可能な金属繊維としては、鋼繊維、高張力鋼繊維、ステンレス繊維、チタン繊維、アルミニューム繊維などが挙げられる。また、有機繊維としては、ポリプロピレン(PP)繊維、ポリビニールアルコール(PVA)繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、超高強力ポリエチレン繊維、ポリエチレンテレフタラート(PET)繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、ポリ塩化ビニール繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、耐アルカリガラス繊維などが使用できる。
また、金属繊維に有機繊維を混入した複合繊維を使用することもできる。複合繊維を使用するメリットは、剛性と引張強度が高い金属繊維による引張補強により、引張ひずみの小さい領域(例えば、ひび割れ発生直後のひび割れ幅が小さい状態)において、金属繊維の補強効果が大きく期待できる。他方、ひび割れ幅が増大した、引張ひずみが大きい領域においては、有機繊維による引張補強効果が大きく期待できる。このように、繊維を複合化することにより、引張ひずみの幅広い領域において、繊維補強効果を有効に期待することが可能となる。
本実施の形態の超高強度繊維補強コンクリートの引張強度とじん性(ねばり強さ)を向上させるために、セメント系マトリックス及び混入する繊維表面形状の規定をおこなうことができる。すなわち、セメント系マトリックスの構成材料とそれぞれの構成材料の配合重量部の中でも、特に引張強度とじん性を向上させるために、セメント100重量部に対する骨材粒子70-150重量部の規定が、重要なポイントになる。さらに、セメント系マトリックスに混入する少なくとも一部の繊維の表面に凹凸形状を成形して、凹部の深さhの最小断面径Hに対する比率(=h/H)が0.05−0.8となるようにする(図1参照)。
ここで、超高強度繊維補強コンクリートに配合する骨材粒子の平均粒径φは、0.2−0.8mmとするのが好ましい。なお、骨材粒子の平均粒径φとは、骨材粒子の粒径加積曲線において、通過重量百分率(あるいは通過率)の重量比が50%にあたる粒径(直径)であり、いわゆる平均粒径D50に相当するものである。また、凹凸形状が成形された繊維の長さ方向における凹凸の凹部のピッチp(凹部とそれに隣接する凹部との長さ方向の距離)は、その繊維の最大断面径Bに対する比率(=p/B)が0.3−10.0となるように成形するのが好ましい(図1参照)。
この繊維の断面形状は、図1に示すような扁平な楕円形、円形、長方形などのいずれの形状であっても良い。なお、同じ断面積に対して円形断面は付着面積が最小となる。これに対して扁平断面は、同じ断面積に対して付着面積が円形断面よりも大きくなるため、扁平な楕円断面や長方形断面の方が付着に対して有利となる。
また、混入する繊維の合計量(繊維混入量)は、超高強度繊維補強コンクリート全容積に対する混入率(容積混入率)が0.7−8%となるように調整するのが好ましい。すなわち、0.7%の繊維の容積混入率があれば、超高強度繊維補強コンクリートとして繊維の架橋効果は小さいものの期待できる量である。一方、容積混入率8%は繊維の架橋効果を充分に期待できる量であるが、これ以上の量の繊維をセメント系マトリックスに混入すると、練りあがりのフレッシュ性状が保てなくなって自己充填が難しくなり、実質的に構造材として適用することができないおそれがある。混入する繊維の合計量は、より好ましくは1.0−5.5%の容積混入率とすることができる。
そして、超高強度繊維補強コンクリートに混入する繊維の少なくとも一部は、図1に示すように表面に凹凸が形成された凹凸繊維1とする。この凹凸繊維1は、複数の凹部11,・・・が繊維表面に間隔を置いて千鳥配置され、凹部11,11間が凸部12となる。この凹凸形状は、繊維表面に例えばエンボス加工を施すことによって成形できる。なお、凸部12は、凹部11の底面に対して突出していれば良いので、凹部11,11間が平坦であっても、ドーム状に盛り上がっていても凸部12になる。
この凹部11は、本実施の形態では、深さがhの平面視菱形に成形される。ここで、凹部11の深さhとは、図2に示すように凸部12の最も高い高さから凹部11の最も低い高さ(底面)までの距離をいう。また、図1に示すように凹凸繊維1の断面における重心点をGとすると、最大断面径Bは重心点Gを通る最大径となり、最小断面径Hは重心点Gを通る最小径となる。なお、断面に凹部11が現れる場合は、最小断面径Hは図1に示すように凹部11の底面を外周面として計測される。
ここで、本実施の形態の超高強度繊維補強コンクリートの付着力が増大されるメカニズムについて、図2を参照しながら説明する。この図2は、凹凸繊維1の拡大された上半部断面と、セメント系マトリックスに含有される骨材粒子2,・・・及びセメント水和物4とを模式的に描いた図である。この図2に示すように、凹凸繊維1の凹部11と凸部12に沿って形成されるセメント系マトリックスには骨材粒子2,・・・が点在しており、一部の骨材粒子2,・・・は凹凸繊維1の凹部11に入り込んでいる。
そして、超高強度繊維補強コンクリートによって構築された構造物にひび割れが発生するなどして架橋効果が生じて凹凸繊維1に引張力が作用すると、凹部11に充填された骨材粒子2,・・・を含むセメント系マトリックスが、凹凸繊維1に対するアンカー部となる。これに対して、凹凸繊維1の凹部11と凹部11との間の凸部12が、セメント系マトリックスに対するアンカー部となる。
このように本実施の形態の超高強度繊維補強コンクリートのセメント系マトリックスには、適切な大きさと量の骨材粒子2,・・・が含まれているために、従来の超高強度繊維補強コンクリートと比べて、セメント系マトリックス内部の相互のせん断伝達抵抗が骨材粒子2,・・・の噛み合せにより大きくなっている。
それに加えて、セメント系マトリックスによって形成される上述したアンカー部に含まれる骨材粒子2,・・・の一部が、図2に示すように、凹凸繊維1の凹部11に噛み合わされるために、凹凸繊維1の架橋効果に伴って凹部11周辺に発生するずれせん断力に対して、高いずれ剛性と、高いずれせん断抵抗力を発揮させることができる。
その主な理由として、配合された骨材粒子は、セメント系マトリックス中の骨材粒子を除いたセメント水和物4と比較すると、一般的に弾性係数や圧縮強度が高いために、高いずれ剛性と高いずれせん断抵抗力を期待できるものと考えられる。
骨材粒子の混入量に関しては、セメント100重量部に対して骨材粒子70-150重量部とするのが好ましい。骨材粒子の重量部規定については、前述したように、収縮量の低減、流動性の確保、水和熱の低減、セメント系マトリックス相互間のせん断伝達力、圧縮強度などの強度特性の向上などの観点からも必要とされる。それにもましてここに示す骨材粒子の重量部規定が重要な意味を持つのは、セメント系マトリックスに混入させる繊維の少なくとも一部を、図1に示すような表面に凹凸が形成された凹凸繊維1とした場合に、この規定された数値範囲内であれば相互の相乗効果を発揮させることができるためである。
図2を参照しながら説明すると、骨材粒子70重量部未満の場合には、凹凸繊維1の凹部11のセメント系マトリックスに含まれる骨材粒子2が少なすぎて、骨材粒子2が凹部11に噛み合わされる確率が減少し、結果として凹部11周辺に発生するずれせん断力に対して、高いずれ剛性と高いずれせん断抵抗力を期待できなくなる。一方、骨材粒子150重量部を超えた場合には、セメント系マトリックス中の粉体材料(=セメント+混和材)(結合材料)が大幅に減少するので、超高強度繊維補強コンクリート自体の圧縮強度や引張強度など、必要とされる力学的特性値を実現することが困難となる。つまり骨材粒子2を取り囲んでいるセメント系マトリックスの占める割合が低下するので、骨材粒子2が凹部11に引っ掛かっても周囲のセメント水和物4が骨材粒子2からのずれ力を充分に伝達できないので、結局、高いずれ剛性と高いずれせん断抵抗を期待できなくなる。骨材粒子の混入量は、75-145重量部とするのがより好ましい。
セメント系マトリックスの骨材粒子2と凹凸繊維1の付着相互作用を考慮して、凹凸繊維1の凹部11の深さhに関しては、凹凸繊維1の最小断面径Hに対する比率h/Hをパラメータとして設定している。この比率h/Hが小さくなると、凹部11の深さhが浅くなり、そのために機械的付着力(mechanical bond)が低下する傾向となる。
反対に、この比率h/Hを大きくすると、機械的付着力(mechanical bond)は増大するが、凹凸繊維1の断面欠損が大きくなり、凹凸繊維1自体の引張強度や繊維の剛性が低下して、セメント系マトリックスがずれせん断破壊する前に、凹凸繊維1が途中で破断するリスクが増大したり、繊維の引張剛性が低下することによりひび割れ幅が増大したりすることが考えられる。また、比率h/Hを大きくすると、凹凸繊維1をセメント系マトリックスに混入した際に、超高強度繊維補強コンクリートの流動性が低下する傾向となる。
そこで、比率h/Hを0.05−0.8の範囲にすることによって、凹凸繊維1の凹部や凸部に噛み合わされる適量の骨材粒子により生ずる機械的付着力(mechanical bond)の大幅な向上を期待することができ、さらに繊維が切れる可能性や繊維の剛性低下、あるいは流動性の低下を最小限に抑えることができる。
比率h/Hが0.05未満の場合には、凹凸繊維1における凹部11の相対深さが小さくなるために、骨材粒子2の平均粒径φが小さな組み合せの場合でも、凹凸繊維1の凹部11における骨材粒子2が大きすぎて骨材粒子2が凹部11に有効に噛み合わされる確率が減少し、高いずれせん断剛性や高いずれせん断抵抗を期待できなくなる。他方、比率h/Hが0.8を超えるような場合には、骨材粒子2との噛み合わせ効果は増大すると考えられるが、凹凸繊維1の断面欠損が大きくなるために、骨材粒子2を介したずれせん断力による機械的付着力(mechanical bond)が増大する前に、凹凸繊維1の凹部11付近の断面において凹凸繊維1が破断するリスクが増大する。また、凹凸繊維1の断面欠損が大きくなると、凹凸繊維1の引張剛性が低下するので、凹凸繊維1とセメント系マトリックスとの間の機械的付着力が充分であっても、繊維自身が伸び変形するので、セメント系マトリックスのひび割れ幅が増大して、繊維補強効果の目的を達成できなくなる。凹凸繊維1の凹部11の深さhに関する比率h/Hのパラメータは、0.05−0.5の範囲とするのがより好ましい。
骨材粒子2の平均粒径φは、0.2−0.8mmの範囲が好ましい。骨材粒子2の平均粒径φが0.2mm未満の場合には、凹凸繊維1の凹部11における骨材粒子2が小さすぎて骨材粒子2が凹部11に直接的に噛み合わされる確率が減少し、結果として凹凸繊維1の凹部11周辺における、高いずれ剛性や高いずれせん断抵抗の効果が減少する。また、平均粒径φが小さい場合には、骨材粒子2の1個当たりのずれせん断力抵抗力は、直径の自乗に比例して小さくなる。しかし、平均粒径φが大きい場合はこれとは逆に、直径の自乗に比例して大きくなる。他方、平均粒径φが0.8mmを超えるような場合には、骨材粒子2の1個当たりのずれせん断力抵抗力は増大するものの、凹凸繊維1の凹部11における骨材粒子2が大きすぎて骨材粒子2が凹部11に直接的に噛み合わされる確率が減少するために、結局、高いずれせん断剛性や高いずれせん断抵抗が低下する。骨材粒子2の平均粒径φは、0.2−0.6mmの範囲がより好ましい。
また、凹凸繊維1の長さ方向における凹凸のピッチpに関しては、凹凸繊維1の最大断面径Bに対する比率p/Bを0.3−10.0に設定している。この比率p/Bが0.3未満になると、長さ方向の凹凸のピッチpが短くなるので、すなわち凸部12の長さが短くなることになる。この結果、上述した凹凸繊維1のアンカー部の抵抗長さが減少することになるので、凹凸繊維1とセメント系マトリックスとの間に発生するずれせん断力に対して、凹凸繊維1の凸部12におけるずれせん断剛性の低下とずれせん断耐力の低下が生ずることになる。ずれせん断剛性の低下は、超高強度繊維補強コンクリートのひび割れ幅の増大とじん性の低下となり、またずれせん断耐力の低下は、超高強度繊維補強コンクリートの引張強度の低下となる。
反対に、比率p/Bが10.0を超えるようになると、上記の問題は改善されるが、凹凸繊維1の凹部11,・・・の数が減少することになり、上述したセメント系マトリックスのアンカー部の数が減少して、セメント系マトリックスのずれせん断破壊するリスクが増大して全体としてもずれせん断抵抗力、つまり機械的付着力が低下することになる。
そこで、比率p/Bを0.3−10.0とすることにより、セメント系マトリックスのアンカー部と凹凸繊維1のアンカー部とがバランスよく配置されることになり、大きなずれせん断変位(付着抜出し)が生じても、付着機構のアンバランスにより発生する付着抵抗力の大きな減少は生じなくなる。凹凸繊維1の長さ方向における凹凸の凹部11のピッチpに関する比率p/Bは、より好ましくは0.5−7.0の範囲にするのがよい。
このように本実施の形態の超高強度繊維補強コンクリートは、流動性を保持したフレッシュ性状が維持された状態で、圧縮強度をはじめとして、高い引張強度、高い曲げ強度、さらに高いじん性性能を示すことができる。
本実施の形態の超高強度繊維補強コンクリートは、一旦、繊維表面とセメント系マトリックスの化学的付着力(chemical bond) が切れたとしても、繊維表面に付与された凹凸とセメント系マトリックス中の骨材との間で機械的な噛み合わせを付与させることにより、繊維とセメント系マトリックスとの間で大変形の付着ずれ(すべり)が生じても機械的な噛み合わせが低下しないような持続的付着力(sustainable bond)を保持する機構を有している。これにより、ひび割れ幅が増大しても、引張力を負担している繊維の架橋効果が低下しないために、引張強度の増加とじん性の向上を図ることができる。すなわち、ある範囲で規定された配合重量の骨材粒子が配合されたセメント系マトリックスに、繊維表面の凹凸形状がある範囲で規定された凹凸繊維1を混入して組み合わせることにより、それぞれの単独では得られなかった凹凸繊維1とセメント系マトリックスとの付着効果及び繊維補強コンクリートとしての架橋効果を得ることができる。
そして、凹凸繊維1の凹凸形状と骨材粒子の配合重量との組み合せの相乗効果によって、従来の超高強度繊維補強コンクリートでは得られなかった高い引張強度と、ひび割れ発生後の高いじん性を得ることができるようになった。
また、超高強度繊維補強コンクリートにおけるセメント系マトリックスの配合は、水セメント比が従来のコンクリートに比べると極端に小さく、単位セメント量が多いので、セメント系マトリックスの圧縮強度は少なくても150N/mm2の超高強度を有することができる。そして、本実施の形態の超高強度繊維補強コンクリートを使用することにより、従来の土木・建築のコンクリート構造物の部材を薄肉化、軽量化することができ、また意匠の自由度の向上や耐久性の向上を達成することができる。その結果、建設コストの低減をはじめ維持管理費用の低減が可能となる。
以下、この実施例1では、前記した実施の形態で説明したセメント系マトリックスの性能を確認するためにおこなった試験の結果について説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
[使用材料]
表1に、実施例1の試験で使用した材料の諸元を示す。
Figure 0005620014

[試験項目と試験方法]
(1)フロー値:「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に準じた方法で、15回の落下運動を行わないで、さらにフロー試験開始から90秒経過した状態で測定した静置フロー値(mm)である。
(2)フロー時間:上記フロー値が200mmに達するまでに要する時間である。
(3)圧縮強度:「土木学会規準JSCE-F 506(モルタルまたはセメントペーストの圧縮強度試験用円柱供試体の作り方)」及び「土木学会規準JSCE-G 505(円柱供試体を用いたモルタルまたはセメントペーストの圧縮強度試験方法)」に準じた方法で、内空がφ5×10cmの型枠内に混練り材料を打設し、一次養生として20℃で48時間の養生を実施した後に、その硬化体を試験して測定された圧縮強度(一次養生後の圧縮強度)と、その後、二次養生として85℃までの昇温を+15℃/時間の昇温速度で行い、85℃で40時間保持し、20℃までの降温を−5℃/時間の降温速度で行った後に、その硬化体を試験して測定された圧縮強度(二次養生後の圧縮強度)である。なお、試験においては3体の供試体を作製し、強度試験の平均値を圧縮強度とした。
(4)曲げ強度:「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に準じた方法で、内空が4×4×16cmの四角柱状の型枠内に混練り材料を打設し、一次養生として20℃で48時間の養生を実施した後に、その硬化体を試験して測定された曲げ強度(一次養生後の曲げ強度)と、その後、二次養生として85℃までの昇温を+15℃/時間の昇温速度で行い、85℃で40時間保持し、20℃までの降温を−5℃/時間の降温速度で行った後に、その硬化体を試験して測定された曲げ強度(二次養生後の曲げ強度)である。なお、試験においては3体の供試体を作製し、曲げ試験の平均値を曲げ強度とした。
(5)割裂引張強度:「JIS A 1113 (コンクリートの割裂引張強度試験方法)」に準じた方法で、内空がφ10×20cmの型枠内に混練り材料を打設し、前述の一次養生後に続いて二次養生として85℃までの昇温を+15℃/時間の昇温速度で行い、85℃で40時間保持し、20℃までの降温を−5℃/時間の降温速度で行った後に、その硬化体を試験して測定された割裂引張強度(二次養生後の割裂引張強度)である。
(6)長さ変化:材料収縮時の型枠による拘束を避けるためのテフロンシート(登録商標)を内面に貼った内空が口10×10×40cmの四角柱状の型枠内において、型枠の中央部に標点距離100mmの埋め込み型ひずみ計(東京測器研究所製 KH-100HB)と熱電対を綿糸により宙づりに固定し、混練り材料を打設する。打設直後からひずみと温度の測定データをデータロガーにより記録し、材料の凝結終了後からのひずみ(長さ変化)を求める。なお、埋め込み型ひずみ計の測定データには、材料の温度変化(水和反応による熱や養生による熱)による長さ変化も含まれるので、温度記録から、熱による長さ変化の値を補正して、20℃における長さ変化の値として求める。
[配合条件]
表2に、本実施の形態(実施例)のセメント系マトリックスと比較例の20ケースの配合条件(数値は重量部を示す。)を示す。
Figure 0005620014

この表2のように配合条件を設定した目的は、i)中庸熱ポルトランドセメント(実験番号1-1から1-10)と普通ポルトランドセメント(実験番号2-1から2-10)とのセメント種類の違いが試験結果に及ぼす影響を明らかにする、ii)セメント100重量部に対する石灰石微粉末の重量部を、0−30重量部の間で変化させた場合の試験結果への影響を明らかにする、iii)ポゾラン材の組み合せを変えた場合でも、本セメント系マトリックスの発明効果が保持されることを明らかにする、iv)高炉スラグ微粉末のブレーン比表面積が規定値の範囲内で変化しても、本セメント系マトリックスの発明効果が保持されることを明らかにする、ことにある。
一方、表3には、別の観点から設定した本セメント系マトリックス(実施例)と比較例の15ケースの配合条件(数値は重量部を示す。)を示す。
Figure 0005620014

この表3のように配合条件を設定した目的は、i)セメントの種類を中庸熱ポルトランドセメントに固定して、セメント100重量部に対するシリカフューム、ポゾラン材及び石灰石微粉末の重量部を上限規定値又は下限規定値の範囲外に設定した場合の影響評価を明らかにする、ii)セメント100重量部に対する骨材粒子重量部を表2に示した配合条件と比較できるように変化させて、骨材粒子重量部の配合量の影響を明らかにする、ことにある。
[試験結果]
表2と表3に示した配合条件と対比するように、試験結果を表4と表5にそれぞれ示す。ここで、圧縮強度、曲げ強度及び割裂引張強度(「割裂強度」と表示)の値は、すべて3体の供試体から求めた平均強度である。一次養生と二次養生の条件は、上記[試験項目と試験方法]において記述した通りである。
Figure 0005620014
Figure 0005620014

以下に、試験結果の考察を記す。
(1)表2と表3に示す配合条件により実施した、全35ケースの実験の結果、本セメント系マトリックスに該当する実施例の20ケースの試験結果は、いずれもフレッシュ性状を示すフロー時間やフロー値が良好であった。他方、比較例の15ケースの内、7ケース(実験番号1-8、2-8、3-3、3-4、3-5、3-9、3-10)のフレッシュ性状は悪かった。その理由は、セメント100重量部に対するシリカフューム、ポゾラン材又は石灰石微粉末のいずれかの重量部が、上限又は下限規定値の範囲外にあることによるものである。また、実施例の一次養生後、二次養生後の圧縮強度、曲げ強度及び割裂引張強度は、比較例に比べて総じて優れた結果を示している。さらに、養生中の自己収縮についても、実施例は比較例に比べて少ない自己収縮の結果を示している。
(2)表2に示した実験番号1-1から1-10の中庸熱ポルトランドセメントを適用したシリーズ(実験番号1-* シリーズ)と、実験番号2-1から2-10の普通ポルトランドセメントを適用したシリーズ(実験番号2-* シリーズ)の実施例を比較すると、フレッシュ性状、圧縮強度や曲げ強度などの力学特性、及び収縮特性について、セメントの種類に依存した結果の相違は顕著に認められなかった。
(3)セメント100重量部に対する石灰石微粉末の重量部が5−20の実施例の場合(実験番号1-4から1-7、1-9、1-10、2-4から2-7、2-9、2-10)の養生中の収縮量(ひずみ)は、石灰石微粉末の重量部が0の配合条件で示された比較例の場合(実験番号1-1から1-3、2-1から2-3)と比較すると、少ない値になっていることがわかる。これは、本セメント系マトリックスの特徴である、ポゾラン材のほかにポゾラン反応しない石灰石微粉末を適量配合したことによるもので、ポゾラン材のみの配合により得られていた収縮低減の効果よりも、さらに優れた収縮低減効果が得られることが確認できた。収縮低減効果の理由は、石灰石微粉末は、水和反応初期の段階においてアルミネート相(CA)やフェライト相(CAF)の初期水和抑制をするためであると考えられる。
(4)セメント100重量部に対する石灰石微粉末の重量部を30とした比較例の場合(実験番号1-8と2-8)の結果は、さらに収縮量の低減が顕著となった。しかし、これらの比較例である実験番号1-8と実験番号2-8は、ともにフロー時間、フロー値の結果からフレッシュ性状が悪いといえる。また、割裂引張強度をはじめとする力学的特性も低下することがわかる。この理由としては、石灰石微粉末は、養生の最終段階(二次養生後)においては、結合材としての役割はないことが考えられる。
(5)表2と表3に示した配合条件では、セメント100重量部に対する骨材粒子重量部は、109−134である。比較例の実験番号1-1(骨材粒子128重量部)と実験番号3-10(骨材粒子109重量部)では、最終の収縮ひずみが1467μと1632μとなった。これに対して実施例の実験番号1-6(骨材粒子128重量部)と実験番号3-2(骨材粒子109重量部)では、最終の収縮ひずみが900μと1259μであった。また、実施例の実験番号4-2(骨材粒子134重量部)と実験番号3-6(骨材粒子118重量部)では、最終の収縮ひずみが895μと1120μであった。さらに、実施例の実験番号1-4(骨材粒子128重量部)と実験番号3-8(骨材粒子118重量部)では、最終の収縮ひずみが1041μと1269μであった。
これらの結果から、骨材粒子の重量部を大きくすることにより、収縮量が低減できることが明らかになった。そこで本セメント系マトリックスでは、最大骨材粒径となる最大粒径Dmaxが1.2-3.5 mmの骨材粒子を、セメント100重量部に対して70−150重量部配合することにより収縮を低減させる。
(6)セメント100重量部に対するシリカフュームの重量部が35となる比較例の実験番号3-5では、フレッシュ性状が悪い。その理由としては、比表面積の非常に大きなシリカフュームを多く配合することにより、ポゾラン材の重量部が少なくなり、その結果、シリカフューム粒子径とセメント粒子径の中間に位置する中間粒子径の材料が欠落して、最密充填が適用できなくなるためであると考えられる。さらに一次養生中の収縮量(ひずみ)が大きくなることがわかった。これは、水和初期の段階で水和反応が促進されるためであると考えられる。
(7)セメント100重量部に対するポゾラン材の重量部が85となる比較例の実験番号3-3や、ポゾラン材の重量部が99となる実験番号3-4では、いずれもフレッシュ性状が悪い。この理由としては、前項(6)で述べた理由と同様に、ポゾラン材の重量部が大きすぎると、中間粒子の粉体が多くなりすぎて、最密充填が適用できなくなったためであると考えられる。さらに収縮量(ひずみ)も大きくなった。また、割裂引張強度も実施例に比較すると小さい値しかでなかった。
(8)セメント100重量部に対してポゾラン材の重量部が24と小さい比較例の実験番号3-9の場合において、フレッシュ性状は悪く、さらに一次養生後、及び二次養生後の曲げ強度並びに二次養生後の割裂引張強度が実施例に比べて小さいことがわかる。フレッシュ性状が悪いのは、前項(6)や(7)の理由と同じである。割裂引張強度が低下した理由としては、ポゾラン材の重量部低下によりセメントを除く結合材の量が減少して引張強度低下を招いたと考えられる。
(9)実験番号1-2と2-2、1-4と2-4、1-6と2-6、1-8と2-8のペアの配合は、高炉スラグ微粉末のブレーン比表面積の違いを除けば、共通の配合である。これらペアのフレッシュ性状や力学特性、収縮量の比較から、ポゾラン材のブレーン比表面積が好ましい範囲内であれば、それらの結果に影響を与えないことがわかる。
以下、この実施例2では、前記した実施の形態で説明した超高強度繊維補強コンクリートの性能を確認するためにおこなった試験の結果について説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
[使用材料及び配合条件]
実施例1の表1に示した材料を使用し、以下の表6に示した配合条件のセメント系マトリックスを用意する。そして、各配合条件のセメント系マトリックスに、表7に示した繊維を混入して超高強度の繊維補強セメント系混合材料の供試体を作製し、これを用いた比較試験を行うことにより、本実施の形態で説明した超高強度繊維補強コンクリートの有効性を確認する。
Figure 0005620014
Figure 0005620014

表6に示したマトリックス符号M-AからM-Eまでの5種類のセメント系マトリックスには、すべて中庸熱ポルトランドセメントを適用した。また、比較例のマトリックス符号M-Eは、シリカフュームの重量部が4であり、本実施の形態のセメント系マトリックスの範囲からわずかに外れている。また、ポゾラン材の配合も86重量部であり、本セメント系マトリックスの範囲を超過している。
表7に示した繊維符号F-AからF-Dまでの4種類の繊維は、鋼繊維のみの場合(繊維符号F-C以外)と、長さの異なる鋼繊維を組み合せた場合(繊維符号F-B)と、鋼繊維とPP(ポリプロピレン)繊維との複合繊維の場合(繊維符号F-C)である。繊維の容積混入率(超高強度繊維補強コンクリート全容積に対する混入率)の合計は、2.0%と1.75%である。また、繊維の平均断面径(直径)dと長さLiを変化させて、アスペクト比AR(=Li/d)が46−91までの組み合わせとなるようにした。
[試験項目と試験方法]
(1)フロー値とフロー時間については、実施例1と同じであるため説明を省略する。
(2)圧縮強度:「JIS R 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法)」に準じた方法で、内空がφ10×20cmの型枠内に繊維補強セメント系混合材料の混練り材料を打設し、一次養生として20℃で48時間の養生を実施した後に、二次養生として90℃までの昇温を+15℃/時間の昇温速度で行い、90℃で30時間保持し、20℃までの降温を−5℃/時間の降温速度で行った後に、その硬化体を試験して測定された圧縮強度(二次養生後の圧縮強度)である。なお、試験においては3体の供試体を作製し、強度試験の平均値を圧縮強度とした。
(3)曲げ強度:「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)」に準じた方法で、内空が口4×4×16cmの四角柱状の型枠内に繊維補強セメント系混合材料の混練り材料を打設し、一次養生として20℃で48時間の養生を実施した後に、二次養生として90℃までの昇温を+15℃/時間の昇温速度で行い、90℃で30時間保持し、20℃までの降温を−5℃/時間の降温速度で行った後に、その硬化体を試験して測定された曲げ強度(二次養生後の曲げ強度)である。なお、試験においては3体の供試体を作製し、曲げ試験の平均値を曲げ強度とした。
(4)割裂引張強度:「JIS A 1113 (コンクリートの割裂引張強度試験方法)」に準じた方法で、内空がφ10×20cmの型枠内に繊維補強セメント系混合材料の混練り材料を打設し、前述の一次養生後に続いて二次養生として90℃までの昇温を+15℃/時間の昇温速度で行い、90℃で30時間保持し、20℃までの降温を−5℃/時間の降温速度で行った後に、その硬化体を試験して測定された割裂引張強度(二次養生後の割裂引張強度)である。
(5)曲げ強度及び曲げじん性係数:「JSCE-G 552-2010(鋼繊維補強コンクリートの曲げ強度および曲げタフネス試験方法)」に準じた方法で、内空が口10×10×40cmの四角柱状の型枠内に繊維補強セメント系混合材料の混練り材料を打設し、一次養生として20℃で48時間の養生を実施した後に、二次養生として90℃までの昇温を+15℃/時間の昇温速度で行い、90℃で30時間保持し、20℃までの降温を−5℃/時間の降温速度で行った後に、その硬化体を試験して測定された曲げ強度(二次養生後の曲げ強度)である。なお、曲げじん性係数は、「荷重−中央点のたわみ」測定を行い、上記試験方法に準じて曲げじん性係数を求めたものである。
[試験結果]
表8に、セメント系マトリックスと繊維の組み合わせと、試験結果を示す。
Figure 0005620014

表8に示すように、セメント系マトリックスと繊維の組み合せにより、実験番号B1からB7までの合計7ケースについて、フレッシュ性状の試験と二次養生後の強度試験を実施した。実施例は実験番号B1からB6で、比較例は実験番号B7である。実施例の実験番号B1からB3には、マトリックス符号M-Aの同じセメント系マトリックスを適用し、繊維の組み合せを繊維符号F-AからF-Cに変化させて繊維による影響を調べた。また、実験番号B5からB7は、繊維を繊維符号F-D(鋼繊維)の1種類とし、セメント系マトリックスをマトリックス符号M-CからM-Eへと変化させてセメント系マトリックスによる影響を調べた。
図3と図4は、曲げ強度及び曲げじん性係数の試験(曲げタフネス試験)の結果を、縦軸を曲げ応力、横軸を中央点のたわみとしたグラフにプロットしたものである。図3は、同じセメント系マトリックス(マトリックス符号M-A)に対して異なる繊維(繊維符号F-AからF-C)を組み合せた試験結果の比較であり、図4は、同じ繊維(繊維符号F-D)に対して、異なるセメント系マトリックス(マトリックス符号M-BからM-E)を組み合せた試験結果の比較である。
表8に示した引張強度の推定値は、曲げ強度(口10×10×40cmの四角柱状供試体)から推定したものである。引張強度は、直接引張試験によるか、切り欠き試験体による曲げ試験の荷重―ひび割れ幅から逆解析により推定することができる。曲げ強度と引張強度とは強い正の相関があることがわかっており、今回は、事前に求めた曲げ強度と引張強度の相関関係式から求めた。
以下に、試験結果の比較から得られた本実施の形態の超高強度繊維補強コンクリートの効果を箇条書きにする。
(1)表8に示したフレッシュ性状の試験結果から、実施例の本セメント系マトリックスを適用した本超高強度繊維補強コンクリートのフレッシュ性状は、流動性が高いことが明らかになった。他方、比較例のセメント系マトリックスを適用した場合は、水セメント比を大きくしたにもかかわらず、充分な流動性を得ることができなかった。
(2)同じセメント系マトリックス(マトリックス符号M-A)に対して異なる繊維(繊維符号F-A,F-B,F-C)を組み合わせた結果は、繊維の容積混入率が2.00%である実施例B1が最も良い力学的性能を示した。一方、全体の容積混入率が2.00%と同じである実施例B3は、鋼繊維の代わりに0.75%の量だけPP繊維に置換したものであり、曲げ強度や引張強度は、当然低下した。しかし、図3に示す曲げじん性曲線を見ると、中央点のたわみが1.5mmのところから、実施例B2と同等の抵抗曲げ応力を示していることがわかる。つまり、引張ひずみが大きい領域で、PP繊維の補強効果が表れていることを示している。
(3)表8に示した試験結果と、図3,4の曲げじん性曲線とから、本セメント系マトリックスと繊維との組合せによる本超高強度繊維補強コンクリートは、好ましいフレッシュ性状だけでなく、この種の材料として重要である割裂(引張)強度をはじめ、引張強度、曲げじん性係数の数値が、充分に満足できるものであることが証明された。
(4)実施例B4から実施例B6と比較例B7とを比較すると、比較例B7はフレッシュ性状のみならず、力学特性も満足できるものではないといえる。これに対して、本セメント系マトリックスのマトリックス符号M-BからM-Dは、上記実施の形態で説明した範囲でポゾラン材の組み合せや石灰石微粉末の配合量を変化させたものであるが、いずれの場合も、表8に示す力学特性及び図4に示した曲げじん性曲線から明らかなように、満足できる特性を示した。つまり、上記実施の形態で説明した範囲の配合であれば、配合の組み合せが異なっていても、安定的なフレッシュ性状と力学特性が得られることを示したことになる。
以下、この実施例3では、前記した実施の形態で説明した凹凸繊維1を混入した、引張強度とじん性(ねばり強さ)の高い繊維補強セメント系混合材料の性能を確認するためにおこなった試験の結果について説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1,2で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を付して説明する。
実施例3では、骨材粒子の重量部及び骨材粒子の平均粒径φを制御したセメント系マトリックスと、凹凸形状のパラメータを制御した凹凸繊維1との組み合わせにより、引張強度とじん性を向上させた超高強度繊維補強コンクリートの性状を証明するための実証試験を実施した。
[使用材料及び配合条件]
表9に骨材粒子に関するパラメータを変化させた、セメント系マトリックスの配合条件を示す。表9に示した圧縮強度は、繊維を含まないセメント系マトリックスのみによる供試体を作製し、二次養生後に圧縮試験を行い求めたものである。また、曲げ強度も同様の供試体を作製し、二次養生後に曲げ試験を行い曲げ強度を求めたものである。
Figure 0005620014

表10には、凹凸形状のパラメータ(凹部の深さhの最小断面径Hに対する比率(h/H)、凹凸の凹部のピッチpの最大断面径Bに対する比率(p/B))の他に、繊維の材質、繊維の容積混入率、繊維の引張強度、弾性係数、繊維一本あたりの断面積、繊維の長さなど、超高強度繊維補強コンクリートの曲げじん性試験の結果に影響を与える繊維の物性値を示した。ここで、実施例F-4と実施例F-5は、凹凸繊維1と凹凸の無い繊維(ここでは鋼繊維)との2種類の繊維を混合した配合である。
Figure 0005620014

[試験項目と試験方法]
圧縮強度、曲げ強度並びに曲げ強度及び曲げじん性係数の試験方法については、実施例2と同じであるため説明を省略する。また、曲げによる破壊エネルギーは、曲げ強度及び曲げじん性係数の試験によって得られる曲げじん性曲線で囲われた部分の面積を積分したものであり、じん性を表す指標となる。
[試験結果]
表11に、セメント系マトリックスと繊維の組み合わせと、試験結果を示す。
Figure 0005620014

図5−図7には、曲げ強度及び曲げじん性係数の試験結果を、曲げじん性曲線で示した。この曲げじん性曲線の共通した挙動として、以下のことが言及できる。なお、この実施例3では、補強繊維として有機繊維を主体に適用しているので、金属繊維を主体に適用した実施例2の図3,4で得られた曲げじん性曲線とは異なっている。すなわち、図3,4で示した曲げじん性曲線では、この実施例3で説明するような「第二ピーク」は存在しない。その理由は、金属繊維は有機繊維に比較して繊維軸方向の剛性が高いために、曲げひび割れ発生直後でも、急激な曲げ応力の低下を生じさせないで、曲げ応力の増加を保持するためである。
実施例3の曲げじん性曲線は、載荷荷重の初期段階においては、中央点のたわみに対して曲げ応力が直線的に増加し、その後、急激に曲げ応力が低下する挙動がある。この挙動を示すゾーンを「第一ゾーン」と称する。また、最初のピークを「第一ピーク」と称する。
その後、曲げ応力は再度、上昇する傾向にある。その上昇の程度は、最初の第一ピークに比べて大きくなる場合と、そうでない場合がある。上昇した曲げ応力は、中央点のたわみが増加するに伴い、再び緩やかに低下する傾向にある。この挙動を示すゾーンを「第二ゾーン」と称する。また、二番目のピークを「第二ピーク」と称する。
そして、第一ゾーンにおいて、初期段階の荷重上昇に伴い中央点のたわみが直線的に増加する挙動過程では、供試体にはひび割れが発生しておらず、弾性的挙動と考えられる。また、第一ピークを境に、曲げ応力が低下するが、これは供試体の中央付近の下端に曲げひび割れが発生したために、曲げ応力が急激に低下したものと考えられる。
この第一ピークにおける曲げ応力は、割裂試験により求められるセメント系マトリックスのひび割れ発生強度と正の相関関係にあると考えられる。また、第一ピーク以降に曲げ応力が急激に低下するのは、供試体の下端に曲げひび割れが発生するためであるが、その後、再び曲げ応力が増加する挙動が見られる。これは、ひび割れが発生したひび割れ面相互に架橋した繊維が引張力を負担したことによる挙動である。また、第一ピーク以降の曲げ応力の低下の程度は、繊維の軸方向の剛性が高く、繊維の混入量が多くなるほど、またセメント系マトリックスと繊維の初期付着抵抗が大きいほど、低下量が小さくなる傾向を示す。金属繊維の場合は、有機繊維に比べ繊維の軸方向の剛性が高いために、第一ピーク以降の曲げ応力の低下が見られない。
また、第二ゾーンにおいて、曲げ応力は再度、上昇する傾向にある。その上昇した第二ピークは、第一ピークに比べて大きくなる場合と、そうでない場合がある。このように曲げ応力が上昇するのは、ひび割れ面相互に架橋した繊維が引張力を負担するためである。
この第二ピークの曲げ応力は、超高強度繊維補強コンクリートの引張強度と強い正の相関があることが、実験データによって確認されている。この引張強度とは、超高強度の繊維補強セメント系混合材料の一種である超高強度繊維補強コンクリートに純引張力を作用させた際の最大の引張応力である。
超高強度繊維補強コンクリート材料の引張強度を試験により求める方法として、2つの方法が用いられている。一つは直接引張載荷試験により、引張強度のピークから直接求める方法である。この方法は、直接引張載荷試験そのものの試験制御の方法が難しく、試験結果に大きなバラツキが生ずる課題がある。
もう一つは、曲げ載荷試験をおこない、その試験によって得られる荷重―切欠きひび割れ幅曲線、又は荷重―たわみ曲線から逆解析により引張応力とひび割れ幅の関係を求め、そこから引張強度を算出する方法である。曲げ載荷試験には、曲げ供試体の中央に切欠きを入れる場合と入れない場合がある。また、この方法は、曲げ試験の管理方法が容易であり試験によるバラツキが少ない利点があるが、逆解析に時間と費用が必要となる。
そして、第二ピークを超えて、中央点のたわみが増加するに伴い、曲げ応力は再び緩やかに低下する傾向を示す。この挙動は、架橋している繊維が切れるか、あるいは繊維とセメント系マトリックスとの間の付着抵抗が徐々に低下するために起きる現象であると考えられる。
ここで、曲げじん性曲線で囲われた部分の面積は、その材料の破壊エネルギーを示していて、面積が大きいほど、じん性(又はねばり強さ)が高い材料といえる。
[曲げじん性試験の結果]
図5は、繊維の混入率がすべて3.0%となる同一条件下での比較であり、繊維混入量(容積混入率)が多いほど曲げ強度が高くなるという影響要因を除いた比較結果である。
この実施例−T1と実施例−T2は、表10に示した実施例F-1の凹凸繊維1と、表9に示した実施例M-2と実施例M-5のセメント系マトリックスとの組み合せである。
他方、比較例−T1の繊維は、実施例−T1及び実施例−T2と同じ実施例F-1の凹凸繊維1であるが、セメント系マトリックスは、表9に示した骨材粒子の重量部が小さい比較例M-1のセメント系マトリックスを使用している。また、比較例−T7と比較例−T8の繊維は、いずれも表10に示した比較例F-1の繊維であり、繊維の表面には凹凸形状が形成されていない。しかし、繊維の材質は親水性に富んだPVA繊維であるために、セメント系マトリックスとの付着力は高いものと考えられる。そして、比較例−T7のセメント系マトリックスは、骨材粒子の平均粒径が小さいうえに重量部も小さい材料(比較例M-1)であるが、比較例−T8のセメント系マトリックスは、実施例−T1に使用したセメント系マトリックスで骨材粒子が145重量部の実施例M-2を使用している。
続いて図5の曲げじん性曲線を見ると、実施例−T1及び実施例−T2は、比較例−T1、比較例−T7及び比較例−T8と比べて高い曲げ応力と高いじん性を示している。他方、図5に示した5ケースは、いずれも第一ピークが似たような値を示している。しかしながら、実施例−T1と実施例−T2の第二ピークは、他の3つの比較例よりも明らかに高い値を示しているうえに、いずれの第二ピークも第一ピークよりもはるかに高い値を示している。このことは、この2つの実施例が、高い引張強度を有していることを示している。
また、実施例−T1及び実施例−T2は、第二ピーク以降も曲げ応力の低下が緩やかであり、大変形に至るまで曲げ抵抗力が低下しない、すなわち高いじん性性能を示していることがわかる。上記した表11には、それぞれの実験において第二ピークから推定した引張強度と、曲げタフネス曲線の面積から求められた破壊エネルギーを示している。この表11に示した数値からも明らかなように、実施例の引張強度は比較例の引張強度の1.6倍−2.0倍あり、また曲げによる破壊エネルギーは、2.5倍−3.6倍あることがわかる。
ここで、曲げタフネス試験の比較例−T7では、第二ピークが第一ピークよりも小さく、第二ピーク以降も急速に曲げ応力が低下している。このことは、比較例−T7の繊維は、PVA繊維であるために親水性があり、初期の付着強度が高くなることによる。さらに、第二ピーク以降も曲げ応力が低下したのは、繊維の付着抵抗が消失するためにセメント系マトリックスから繊維が抜け出したためであると考えられる。
続いて、図6に示した曲げじん性試験の結果は、繊維表面が凹凸形状に形成されたPP繊維と凹凸形状の無い鋼繊維との複合(ハイブリッド)繊維であり、表10の実施例F-4と実施例F-5の繊維を使用している。この実施例F-4及び実施例F-5は、繊維全体の容積混入率が2.8%であって、その繊維量の内訳は、凹凸繊維1であるPP繊維の容積混入率が2.7%で、繊維表面に凹凸形状の無い鋼繊維の容積混入率が0.1%となっている。
そして、図6の曲げじん性曲線を見ると、いずれの実施例も比較例に比べて第二ピークが大きくなっており、また曲げじん性曲線の面積も大きいことがわかる。また、実施例の第二ピークは第一ピークよりも大きくなっているが、比較例では第二ピークは第一ピークより小さくなっている。さらに、表11に示すように、引張強度と曲げによる破壊エネルギーの数値も、実施例の方が比較例よりも大きくなっている。
図6に示した実施例−T3,T4,T5,T6に適用しているセメント系マトリックスはすべて骨材粒子が70-150重量部の範囲に入っている実施例M-5,M-1,M-4,M-3である。しかし実施例M-4のみが骨材粒子の平均粒径が0.15と、好ましい0.2−0.8mmの範囲よりも小さい。つまり、図6及び表11において、実施例−T5を比較例−T2,T3,T4と比較すると引張強度やじん性が優れていることがわかるので、セメント系マトリックスの骨材粒子の重量部と凹凸繊維の凹部の深さhに関する比率(h/H)の条件が、他のパラメータよりも重要であることがわかる。
また、図7に示した曲げじん性試験の結果は、すべてのケースで繊維の容積混入率を2.8%とし、すべて一種類の繊維を使用している。そして、実施例−T7と比較例−T5は、表10に示した実施例F-2という同じ繊維を混入している。しかしながら、比較例−T5で使用したセメント系マトリックスは比較例M-1を使用しており、これは骨材粒子の平均粒径が小さいうえに重量部も小さい材料である。その結果、実施例−T7と比較例−T5は、同じ種類の凹凸繊維1を使用しているにも関わらず、異なる曲げじん性曲線を描くことになった。すなわち、実施例−T7は、第二ピークが第一ピークよりも大きくなっているが、比較例−T5は、第一ピークは大きいものの、第二ピークが小さくなる結果となった。そして、表11からも、実施例−T7が、比較例−T5及び比較例−T6に比べて明らかに引張強度が高く、高いじん性を示していることがわかる。なお、実施例−T7に適用しているセメント系マトリックスの骨材粒子の平均粒径は0.15mmと小さいものの、骨材粒子が134重量部である。
以上の実験結果から、本実施の形態の超高強度繊維補強コンクリートは、セメント系マトリックスの骨材粒子の配合と、凹凸繊維1の表面の凹凸形状との組み合せにより、これまでには得られなかったような高い引張強度と高いじん性にできることがわかった。また、その組み合せを作るためには、特別に高価な材料を混入するのではなく、従来から使用されている材料を選択して使用するだけなので、経済的である。
すなわち、本実施の形態の超高強度繊維補強コンクリートの特徴は、セメント系マトリックスでは骨材粒子の重量部と平均粒径を特定し、凹凸繊維1に関しては材質を特定するのではなく表面の凹凸形状を特定しているのみである。
そして、超高強度繊維補強コンクリートの引張強度が高くなるのは、凹凸繊維1とセメント系マトリックスとの間の付着抵抗応力が大幅に向上するためである。また、じん性が高くなるのは、凹凸繊維1とセメント系マトリックスとの間の付着抵抗応力が、繊維の一部分の抜け出しが増大しても、セメント系マトリックスと凹凸繊維1とが接触(あるいは付着)している全長に対しては、低減しないことによるものである。そのために、繊維表面の適切な凹凸形状と、適切なセメント系マトリックス中に含まれる骨材粒子の重量部とを組み合せたことにより、じん性と曲げ引張強度の高い超高強度繊維補強コンクリートを実現できたといえる。
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態及び実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態又は実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
[関連出願への相互参照]
本出願は、2011年11月16日に日本国特許庁に出願された特願2011−250320及び2012年8月21日に日本国特許庁に出願された特願2012−182081に基づいて優先権を主張し、その全ての開示は完全に本明細書で参照により組み込まれる。
1 凹凸繊維
11 凹部
12 凸部
2 骨材粒子
h 深さ
H 最小断面径
p ピッチ
B 最大断面径

Claims (4)

  1. セメント100重量部と、
    シリカフューム5−30重量部と、
    シリカフュームを除く少なくとも一種類のポゾラン材35−80重量部と、
    石灰石微粉末5−25重量部と、
    少なくとも一種類の混和剤と、
    水と、
    最大骨材粒径が1.2-3.5mmであり、かつ骨材粒子の平均粒径が0.2−0.8mmである骨材粒子70−150重量部と、
    表面に形成された凹凸の凹部の深さhの最小断面径Hに対する比率(h/H)が0.05−0.8となるように成形された凹凸繊維が少なくとも一部に含まれる繊維とを含有するとともに、
    前記シリカフュームを除く少なくとも一種類のポゾラン材と前記石灰石微粉末との合計が57-88重量部であることを特徴とする繊維補強セメント系混合材料。
  2. 前記凹凸繊維の長さ方向における凹凸の凹部のピッチpが、最大断面径Bに対する比率(p/B)で0.3−10.0となるように成形されていることを特徴とする請求項1に記載の繊維補強セメント系混合材料。
  3. 前記繊維の長さLiが、平均断面径dに対する比率(Li/d)で10-500となることを特徴とする請求項1又は2に記載の繊維補強セメント系混合材料。
  4. 前記繊維の合計の容積混入率が0.7−8%であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の繊維補強セメント系混合材料。
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