JP5618727B2 - 形状測定法及び形状計測装置 - Google Patents

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Description

本発明は非球面光学素子の光学面形状等を測定する形状測定方法および形状計測装置に関する。
近年、半導体回路パターンの微細化に伴い、半導体露光装置に使用される光学部品にも高い精度が求められている。例えば、光源に極端紫外光(EUV光)を用いたEUV露光装置では、投影光学系が全て非球面ミラーで構成され、投影光学系ミラーには0.1nmRMS以下という極めて高い形状精度が求められている。
EUV露光装置用ミラーのような高精度非球面光学素子を製造するためには、要求形状精度を上回る測定精度を備えた形状測定器が不可欠であり、そのような測定器として特許文献1が提案されている。特許文献1は干渉測定技術を応用した測定器で、干渉計光軸に沿って被検非球面を走査する走査型干渉計によって被検非球面全面の形状を測定しており、干渉計の構成は図10に示す通りである。以下特許文献1の内容について説明する。
図10において、コヒーレント光源1から射出された光は、レンズ2、開口3、ビームスプリッタ4、コリメータレンズ5を経て平面波へと変換され、フィゾーレンズ167へ入射する。フィゾーレンズ167へ入射した光の一部は基準面204において反射し参照光を形成する。一方で基準面204を透過した光は球面波へと変換され、非球面の試験用表面9で反射して被検光を形成する。非球面に対して球面波を入射させているため、試験用表面9に対し概ね垂直に入射した光のみが基準面204へ再入射する。試験用表面9が軸対称な非球面である場合、試験用表面9の頂点近傍からの反射光と、頂点から離れた輪帯状の測定領域からの反射光が被検光として基準面204へ再入射する。
基準面204において反射した参照光と、試験用表面9にて反射し基準面204へ再入射した被検光は、共にコリメータ5、ビームスプリッタ4を経てビームスプリッタ212へ到達する。ビームスプリッタ212を透過した参照光と被検光は、開口170、レンズ168を経て第1CCDカメラ171へ到達し、干渉縞を形成する。そして第1CCDカメラ171で観察される干渉縞を解析することにより、輪帯状の干渉縞の位相を測定することができる。
一方、ビームスプリッタ212で反射した参照光と被検光は、開口210、レンズ208を経て第2CCDカメラ206へ到達し、干渉縞を形成する。ここで、第1CCDカメラ171側と第2CCDカメラ206側では倍率が異なっており、第2CCDカメラ206では試験用表面9の頂点近傍の反射光に対応した干渉縞が拡大されるように設計されている。このため、第2CCDカメラ206で観察される干渉縞を解析することにより試験用表面9の頂点近傍の位相を測定することができる。
図11に上述の走査型干渉計にて、参照光と試験用表面9にて反射した被検光との干渉によって生じる干渉縞のイメージを描いた。干渉縞の中心部にある周囲とくらべ干渉縞が疎な部分が試験用表面9の頂点近傍からの反射光に対応する。また輪帯状の干渉縞も周囲と比べて比較的に疎な領域となっており、試験用表面9の表面のうち概ね垂直に入射した光の反射光による干渉縞に対応している。この干渉縞の疎になっている2つの領域(頂点近傍に対応した干渉縞、輪帯状の干渉縞)以外では、きわめて稠密に干渉縞が生じているため位相を測定することはできない。
なお、試験用表面9が軸対称な非球面であるためこのような干渉縞が生じる。
また、リード11を駆動することにより試験用表面9を干渉計光軸方向に走査することができる。試験用表面9の移動量は測長干渉計24により測定する。試験用表面9を走査すると輪帯状の干渉縞が生じる領域が変化するため、試験用表面9の走査と第1CCDカメラ171による位相測定のセットを繰り返すことにより試験用表面9全面の位相を取得することができる。
一方で試験用表面9を走査しても試験用表面9の頂点近傍においては常に光が略垂直入射するため、第2CCDカメラ206により頂点近傍の位相は常に測定できる。そのため測長干渉計24により測定した試験用表面9の移動量を頂点近傍の位相変化量を用いて補正することで、移動量の高精度測定を実現している。
特許文献1では、試験用表面9を干渉計光軸方向に走査して被検非球面全面の位相を測定し、被検非球面全面の位相と試験用表面9の移動量とを用いて所定の方程式を解くことにより試験用表面9の形状を測定している。
特表2008−532010号公報(第33頁、第24図)
しかしながら、特許文献1で開示されている方法の場合、被検非球面に入射する光が被検非球面の頂点で概ね垂直に反射しなければ頂点近傍の位相を測定することができない。従って、頂点部が非軸対称形状をした非球面では頂点近傍の位相を測定できず、被検非球面の移動量を正確に計測することがすることができないため、形状測定精度が劣化する問題があった。また、頂点部に穴のあいた非球面の測定物からは頂点近傍に対応した干渉縞を得ることができないため、形状計測はできなかった。
さらに、被検非球面の頂点近傍からの反射光には被検物裏面や干渉計内部光学部品からの反射光が重畳しやすいため、頂点近傍の位相測定精度が劣化する場合がある。このため、頂点近傍の位相測定結果を用いて被検非球面の移動量を補正しても十分な精度がそもそも得られないという場合もあった。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、走査型干渉計に適用可能な測定方法であって、従来よりも高精度に測定可能な非球面形状測定法を提供する。
上記の課題を解決するための本願発明は、光源より射出された光を被検面および参照球面に照射し、前記被検面において反射した被検光と前記参照球面において反射した参照光とが干渉して生じた干渉縞に基づき前記被検面の表面形状を測定する形状測定方法であって、
前記参照球面の曲率中心を通る走査軸に沿って前記被検面を多段階にステップ走査する工程と、
前記ステップ走査の各ステップについて、撮像手段にて取得された干渉縞の形状測定領域に対応する位相、及び波長測定器にて前記光の波長、をそれぞれ計測する工程と、
被検面上の任意の点と前記参照球面の曲率中心との距離を、計測された前記位相と前記波長とをパラメータとして含む波数(整数)の関数として定義したうえで、隣接するステップ間の前記関数の関係から各ステップにおける波数を算出し、各ステップ間の移動量を算出する工程と、
前記算出された波数と前記関数から前記被検面上の任意の点と前記参照球面の曲率中心との距離の測定値を算出すると共に、
前記算出された移動量を用いて前記被検面上の任意の点と前記参照球面の曲率中心との距離の設計値を算出し、前記測定値と設計値の差分より前記被検面の形状誤差を算出工程と、を有することを特徴とする形状測定方法、
である。
本発明を用いることにより、参照球面からの反射光と被検査物の頂点部以外の領域からの反射光との干渉縞(輪帯状の干渉縞)のみから被検非球面の移動量を正確に計測することが可能となり、非球面頂点からの反射光を必要としない。
そのため、頂点部に穴のあいた非球面や、頂点部が非軸対称形状をした非球面であっても被検非球面の表面を直接干渉測定した高精度位相データに基づく移動量測定が可能となる。また、被検非球面以外からの反射光が干渉信号に及ぼす影響も軽減できるため、従来よりも高精度に測定することが可能となる。
本発明の第1実施例に係わる干渉計装置の模式図である。 第1実施例の干渉計装置により測定される干渉縞を示した模式図である。 第1実施例の干渉計装置に本発明を適用する場合のフローチャート図である。 第1実施例における本発明の移動量計算工程説明用の模式図である。 第1実施例における本発明の形状誤差計算工程を説明するための模式図である。 本発明の第2実施例に係わる干渉計装置の模式図である。 第2実施例の干渉計装置に本発明を適用する場合のフローチャート図である。 第2実施例における本発明の基準波数測定工程を説明するため模式図である。 第2実施例における本発明の基準波数測定工程を説明するため模式図である。 本発明の従来の技術に係わる干渉計装置の模式図である。 従来の走査型干渉計にて得られる干渉縞のイメージ図である。
以下、図面に基づいて本発明の実施形態の詳細について説明する。
図1は本発明を適用可能な実施例1の構成を示した形状計測機の模式図であり、頂点部に穴のあいた軸対称非球面を有する被検物8の形状を干渉計により測定する例を示している。本願発明は従来の走査型干渉計とは異なり、被検物の移動量νを周辺部の(輪帯状の)干渉縞のみに基づいて精密に計測することに特徴がある。以下図面を用いて順に説明する。
図1において、レーザー光源1から射出され、被検面に照射された測定光は、レンズ2、開口3、偏光ビームスプリッタ4、1/4波長板5、コリメータレンズ6を経て平面波へと変換され、フィゾーレンズ7へ入射する。フィゾーレンズ7へ入射した測定光の一部は参照球面7aにおいて反射し、この反射光が参照光を形成する。一方で参照球面7aを透過した測定光は球面波へと変換され、被検非球面8aで反射して被検光を形成する。ここで非球面に対して球面波を入射させているため、被検非球面8aに対し概ね垂直に入射した測定光のみが参照球面7aへ再入射する。
参照球面7aにおいて反射した参照光と、参照球面7aへ再入射した被検光は、共にコリメータ6、1/4波長板5を経て偏光ビームスプリッタ4へ入射する。ここで参照光と被検光は共に1/4波長板5を2回透過しており偏光面が90度回転しているため、偏光ビームスプリッタ4を透過する。偏光ビームスプリッタ4を透過した参照光と被検光は、共に開口9、レンズ10を経てCCDカメラ11へ到達して受光され、干渉縞を形成する。そしてCCDカメラ11で観察される干渉縞を解析することにより、干渉縞の位相を測定することができる。取得した干渉縞の画像データは、コンピュータに伝送され解析される。
被検物8はリード12に固定されて載置されており、リードを駆動させることで干渉計光軸14に沿って移動させることができる。このように被検物8は移動可能に載置され、その移動量は測長器13(たとえばレーザー干渉計等)により測定可能である。また、レーザー光源1には波長測定器15が接続されており、波長変化を随時測定することができる。
図2はCCDカメラ11において観察される干渉縞の模式図である。被検物8は頂点部に穴があいているため頂点部に対応した干渉縞は計測されない。CCDカメラ11へは被検非球面8aに対し概ね垂直に入射した被検光しか到達しないため、干渉縞としても被検非球面8a上の一部の領域に対応した(輪帯状の)干渉縞のみが観察される。被検非球面8aが軸対称非球面の場合干渉縞は図2に示すように輪帯状に分布し、干渉縞の径方向に対して干渉縞が疎となる領域に関しては位相測定領域16として干渉縞の位相を測定することができる。また、図2において被検非球面8a上で垂直反射した被検光に対応する領域を形状測定領域17(模式図中の干渉縞が疎となる部分で、明部の頂点に対応した部分)として破線で示している。本発明では、この形状測定領域17における非球面形状を測定することができる。
リード12を用いて被検物8を干渉計光軸14に沿った走査軸に従って走査させると、光が垂直に入射する被検非球面8a上の領域が移動するため、形状測定領域17も移動する。そのため、被検物8を干渉計光軸14に沿って適切に走査させることで被検非球面8a全面の形状を測定することができる。リード12、測長器13、波長測定器15およびCCDカメラ11の制御を含む形状計測機の制御および取得したデータの解析は制御部であるコンピュータにて行っている。
以下では本発明の計測方法に関して、図3のフローチャートを用いて順に説明する。
まず、被検物8を干渉計にセットしアライメントする(フロー101)。被検物8のアライメントは、被検物8を干渉計光軸14に沿って適切に走査することにより被検非球面8aの全域が位相測定可能となるように実施する必要がある。被検非球面8aが軸対称非球面の場合、非球面軸を干渉計光軸に一致するようにアライメントする。なお、アライメントが完了した時点における被検物8の位置を以降初期位置と呼称する。被検物8の初期位置は、形状測定領域17が被検非球面8aの光学有効領域にかかる位置であればよい。
被検物8をアライメントしたら、次に走査条件を決定する(フロー102)。走査条件とは被検非球面8aの形状を何回に分けて多段階にステップ走査して測定するかを定める総ステップ数Nと、ステップ走査における被検物8の目標移動量を意味している。被検物8の目標移動量は、隣接ステップ間の位相測定領域16が一部重なるように定める。なお以下で説明するが、被検物8の走査の1つのステップは極めて微小な距離のため、1ステップ走査したのちにどれだけ移動したのか、iステップ目の移動量νは干渉縞から精密に計測する必要がある。
さて、走査条件を決定したら、CCDカメラ11により取得した干渉縞の位相測定、波長測定器15によるレーザー光源1の波長測定、および測長器13による被検物8の光軸方向の位置測定を実施する(フロー103)。測長器13はたとえばレーザー干渉器などを用いて被検物8のフィゾーレンズ7に対する相対移動距離を計測してよい。ただし、この測長器13によって得られた移動距離はあくまで参照値であり、移動距離の精密な決定は撮像された干渉縞から得られる位相情報によってなされる。
以降は走査条件に従って、被検物8の移動と干渉縞位相測定、波長測定、被検物位置測定を繰り返す(フロー104、フロー105)。
以上のようにして測定した各ステップにおける干渉縞位相と波長、被検物位置情報を用いて、被検非球面8aの形状を計算する。形状計算は、フロー106の移動量計算工程、フロー107の形状誤差計算工程、フロー108の基準波数修正工程に大きく分かれており、以降各フローの詳細について説明する。
まず、フロー106の移動量計算について図4を用いて説明する。
フロー106では、被検物移動前後における干渉縞位相と被検物位置情報から被検物移動量を高精度に求める。図4は被検非球面8aをi−1ステップ目(前)の位置からiステップ目(後)の位置まで移動させる“前後”の位置関係を示している。
i−1ステップ目の被検非球面8a上の点Aに着目すると、点Aと参照球面7aの曲率中心Oとの距離は(1)式で表すことが出来る。
ここで、Rは参照球面7aの曲率半径、ni−1はi−1ステップ目の波数(整数)、λi−1はi−1ステップ目における波長測定器15によって計測された波長を表している。参照球面7aの曲率半径Rは予め測定し既知とすることが望ましいが、設計値等の公称値を用いることで既知とし、後述するフロー108の基準波数修正工程において修正することも可能である。θは線分OAと干渉計光軸14のなす頂角、ψは干渉計光軸14周りの回転角である。φi−1(θ,ψ)はθ、ψにおけるi−1ステップ目の干渉縞の位相をしめしていて、0〜2πの値として計測された干渉縞から算出される。位相φi−1はCCDカメラ11により取得された干渉縞から算出しているが、CCDカメラ11の各画素と頂角との関係を予め測定することでφi−1(θ,ψ)を定めることができる。CCDカメラ11の各画素と頂角θとの関係は、光学面にマークを備えた原器を測定したり、球面レンズにアライメントずれを与えた際の位相変化から求めたりするなどの既存技術により測定可能である。
従って(1)式においてはi−1ステップ目の波数整数部ni−1のみが未知数である。
次に、点Aと点Oを通る直線がiステップ目における被検非球面8aと交わる点をOBとすると、点Bと点Oとの距離OBは(2)式で表すことが出来る。
ここで、nはiステップ目の波数整数部、φ(θ,ψ)はθ、ψにおけるiステップ目の干渉縞の位相であり、λはiステップ目における波長測定器15によって計測された波長を表している。(2)式においても、同様にiステップ目の波数整数部nのみが未知数で、他は既知の値または計測可能な値である。
点Bはiステップ目における被検非球面8a上の点であるが、点Bが干渉計光軸14に沿って移動する前に(すなわちi−1ステップの時点で)位置した座標を点Cとする。点Cはi−1ステップ目の被検非球面8a上の点であるため、点Cと点Oとの距離は(1)式と同様に(3)式で表される。
ここでθは線分OCと干渉計光軸14のなす頂角である。また、干渉計光軸14周りの回転角は点A、点B、点C共通でありψである。(3)式ではi−1ステップ目の各種パラメータによって点Cと点Oとの距離が表現されている。
一方点Bと点Cは干渉計光軸14に沿って平行移動した位置関係にあることから、i−1ステップ目からiステップ目にかけて被検非球面8aが干渉計光軸14に沿って移動した移動量をvとすると、(4)式、(5)式が成り立つ。
(4)式に(2)式を代入すると、(6)式が得られる。
(6)式ではiステップ目の各種パラメータによって点Cと点Oとの距離が表現されており、(3)式とは異なる。(3)式と(6)式から(7)式が得られる。
(7)式においてはni−1、n、θが未知パラメータであるが、このうち、θについては(4)式、(5)式より求めた(8)式より求めることができる。
(8)式に(2)式を代入し、移動量vには各ステップにおける被検物8の位置測定結果を使用すると、θをnの関数で表すことができる。従って(7)式における未知パラメータは波数整数部ni−1、nである。ni−1、nは共に整数であるため、(7)式の両辺の差が最小となるようにni−1、nの組合せを決定することで未知数を全て定めることができる。
しかしながら、ni−1とnとの差が一定の場合(7)式の両辺の差は同程度となるため、ni−1、nの組合せを一意に決めることはできない。そこで、各ステップの波数整数部のうち、任意の1つのステップにおける値を基準波数とし、被検非球面8aの設計値と走査条件から基準波数を設定する。そして基準波数を用いて他ステップの波数整数部の値を定めるものとする。例えば、初期位置における波数整数部の値nを基準波数とし、目標アライメント姿勢と被検非球面8aの設計値からnの値を定める。2ステップ目は(7)式と、このように予め定められた基準波数の値から波数整数部nを定める。以降同様に計算することで、n ・・ni−1 ・・・n、というように全ステップの波数整数部の値を逐次決定することができる。
基準波数の値は後述するフロー108の基準波数修正工程において修正してもよい。
全ステップの波数整数部の値を定めたら、最後に移動量vを決定する。これは、(2)式、(7)式の波数整数部ni−1、nに対して決定した波数整数部の値を代入した上で、(7)式の両辺の差が最小となるように(8)式の移動量vを定めることによって行なう。
以上の計算を行なうことで、被検非球面8aの位相測定結果に基づく高精度な移動量vを求めることができる。移動量vを求める際に測長器13によって測定した被検物8の位置情報を使用するが、波数整数部を決定するために使用するのみであり、レーザー光源1の波長の1/10程度の精度があれば十分である。またフロー106の移動量計算は隣接ステップ間の位相測定領域16が重なっている領域全体に渡って実施可能であるため、各画素について移動量vを計算し、平均化することで高精度化することができる。
フロー106の工程により被検非球面8aの移動量を算出したら、次にフロー107の形状誤差計算工程を実施し、形状誤差、すなわち設計形状と被検非球面8aの形状との差を計算する。形状誤差の算出は図2における形状測定領域17、すなわち被検非球面8a上で垂直反射した被検光に対応する領域に対して実施する。
図5はiステップ目における被検非球面8aと参照球面7aとの位置関係を示した図である。図5において、点Mをiステップ目の形状測定領域17に対応した点とすると、点Mと参照球面7aの曲率中心Oとを通る直線は、点Mにおける被検非球面8aの接平面と垂直に交わる。線分OMの長さの測定値は(2)式と同様に(9)式で表すことができる。
ここで、θは線分OMと干渉計光軸14のなす頂角、ψは干渉計光軸14周りの回転角である。また線分OMの添え字mは測定値であることを示している。この線分OMの長さを被検非球面8aの設計値(設計形状)と比較することで面法線方向の形状誤差を計算する。線分OMの長さの設計値は、線分OMが被検非球面の接平面と垂直に交わることを考慮すると(10)式で表される。
ここで、hは点Mの横座標、すなわち点Mから干渉計光軸14に下ろした垂線の長さの測定値であり、Z’(h)は被検非球面8aの設計式を微分した結果にhを代入した値である。線分OMの添え字dは設計値であることを示している。
は移動量vの測定値と初期位置、および被検非球面8aの設計式より求める。参照球面7aの曲率中心Oから初期位置における被検非球面8aと干渉計光軸14との交点までの距離をLとすると、hは(11)式を満たす。
(11)式にiステップ目までの移動量を代入した上で(11)式を満たすようにhを決定する。初期位置より定まるLについては目標通りにアライメントされたと仮定して計算し、フロー107終了後の形状誤差計算結果に応じて修正する。なお、本実施例では被検非球面8aに穴があいているため被検非球面8aと干渉計光軸14との交点は物理的には存在しないが、設計式を用いた数式上では定義可能である。
(11)式を用いてhを求めると、(9)式におけるθも設計式より求めることができる。CCDカメラ11の各画素と頂角との関係は既知であるため、点Mに対応する位相測定結果φ(θ,ψ)を求めることができる。なお、φ(θ,ψ)に関してはθを用いずにiステップ目における干渉縞の位相の値のみから求めることも可能である。これは干渉縞位相が点Mにおいて極値を示すことを利用した方法であり、干渉縞位相測定結果から傾き成分を除去した上で干渉縞位相の半径方向断面の極値を求め、φ(θ,ψ)とすることができる。
以上の計算により横座標hにおける被検非球面8aの形状誤差Δnは(12)式により測定値と設計値の差分として求めることできる。
(12)式による形状誤差計算を形状測定領域17全体に渡ってそれぞれ実施し、さらに全ステップに渡って同様の計算を行なうことで、被検非球面8a全面の形状を求めることができる。
ただし、求めた形状誤差に被検物8を平行移動させたり傾斜させたりすることで変化する成分(アライメントエラー成分)が多く含まれる場合は(11)式におけるLが誤差を持つことになる。そのため求めた形状誤差のうち、アライメントエラーによって生じる形状誤差を求めてアライメントエラー量を定量化し、求めたアライメントエラー量に応じてLを修正して形状誤差を再計算することが望ましい。
以上の計算により被検非球面8aの形状を求めることができるが、フロー106において定めた基準波数については仮決定した状態である。そこで、被検非球面8a全面の形状誤差からアライメントエラー成分を除去した残差形状が最小となるように基準波数を修正し、最終的な形状測定結果とする工程を入れてもよい(フロー108)。
また、参照球面7aの曲率半径Rが未知である場合は、基準波数の修正と同時に参照球面曲率半径の修正も実施する。初期位置における波数整数部を基準波数とした場合、Rは波長測定結果を使用して(13)式のように表すことができる。
ここでnRFは整数であり、ΔRFの値は参照面7aの設計値より定める。また、iステップ目における波長測定結果とnRF、ΔRFを用いると、Rは(14)式のように表すことができる。
(14)式を(2)式に代入すると(15)式が得られる。
同様に(7)、(9)式についても(14)式を代入することでn+nRFをひとつの整数として取り扱うことが可能となる。そしてn+nRFを基準波数としフロー108における基準波数修正を実施することで、参照面7aの曲率半径も含めた修正が可能となる。
(13)式を用いた場合ΔRFが不確かな量として残ることになり、ΔRFの誤差は最大で2πである。そのため、最大でレーザー光源1の波長の半分に相当する形状測定誤差が面全体に渡って一様に重畳されることになる。しかしながら面全体に渡る一様な形状測定誤差は、鏡筒として複数の光学素子を組み合わせる際に光学素子間の間隔を調整することで吸収可能であることから、最大半波長分の測定誤差が発生しても実用上問題とはならない。
なお本発明は、穴のあいたレンズなど、被検面上に頂点部が無い被検査物に特に好適に利用できるが、もちろん頂点部を有するレンズであっても計測することができることはいうまでもない。
図6は本発明を適用可能な実施例2の構成を示した模式図である。実施例1との違いは、位置姿勢測定器18を備えている点であり、被検物8の傾きや干渉計光軸14に対し垂直な面内における被検物8の位置を測定することが可能である。
図7は実施例2のフローチャートを示している。実施例2では、フロー108の基準波数修正工程の代わりにフロー109の基準波数測定工程を備えている点が特徴である。以下図8、および図9を用いてフロー109の基準波数測定工程について説明する。
図8はiステップ目における被検非球面8aを干渉計光軸14に垂直な面内において平行移動した場合の位置関係を示した図である。図8では、干渉計光軸に対して、被検非球面8aが図中の左方に位置ズレしている様子を模式的に描いている。
点Mはiステップ目の形状測定領域17に対応する点、点Oは参照球面7aの曲率中心、θは線分OMと干渉計光軸14のなす頂角である。また、点Oと点Mを通る直線が平行移動後の被検非球面8aと交わる点をD’とし、点D’が平行移動する前に位置した座標を点Dとする。平行移動量をΔhとすると、点Dと点D’を結ぶ線分の長さはΔhとなる。
Δhが微小である場合、点Dと点Mは共に線分OMを半径とする球面上の点と見なすことができるため、(16)、(17)式が成り立つ。
ここでφ(θ,ψ)は頂角θ、干渉計光軸14回りの回転角ψにおける平行移動後の位相であり、λは波長測定器15で計測した平行移動後の波長の測定結果を表している。Δhが微小であることから平行移動後の干渉縞は疎に保たれるため、φ(θ,ψ)を取得した干渉縞から測定することができる。Δhは位置姿勢測定器18により測定することができるため、(16)、(17)式より線分OMの長さを求めることができる。(16)、(17)式より求めた線分OMの長さと(9)式より求めた線分OMの長さの差が最小となるようにnを決定すればiステップ目の波数整数部nを求めることができる。
(16)、(17)式は被検非球面8aを干渉計光軸14に垂直な面内において平行移動した場合の式であるが、被検非球面8aを干渉計光軸14に対して傾斜させても基準波数を測定することができる。
図9はiステップ目における被検非球面8aを干渉計光軸14に対してΔθ傾斜させた場合の位置関係を示した図である。図9では、被検非球面8aが時計回りにわずかに位置ズレしている様子を模式的に描いている。
点Mはiステップ目の形状測定領域17上の点、点Oは参照球面7aの曲率中心、θは線分OMと干渉計光軸14のなす頂角である。点M’は干渉計光軸14に関して点Mと点対称関係にある被検非球面8a上の点である。このため線分OM’と干渉計光軸14のなす頂角もθとなる。点Oと点Mを通る直線が傾斜後の被検非球面8aと交わる点をE、点Oと点M’を通る直線が傾斜後の被検非球面8aと交わる点をE’とする。Δθが微小である場合、(18)、(19)、(20)式が成り立つ。
ここでφ(θ,ψ)は頂角θ、干渉計光軸14回りの回転角ψにおける傾斜後の位相であり、λは平行移動後の波長を表している。Δθは位置姿勢測定器18により測定することができるため、(18)、(19)、(20)式より線分OMの長さを求めることができる。(18)、(19)、(20)式より求めた線分OMの長さと(9)式より求めた線分OMの長さの差が最小となるようにnを決定すればiステップ目の波数整数部nを求めることができる。
以上のようにして求めたiステップ目の波数整数部を基準波数としフロー106の移動量計算工程、フロー107の形状誤差計算工程を実行することで被検非球面8aの形状誤差を測定することができる。
実施例1と比較すると、実施例2は位置姿勢測定器18が必要である一方で基準波数の絶対値を測定可能である点が特徴である。このため、被検非球面8aと設計形状との乖離が大きい場合でも、被検非球面8aの形状誤差を高精度に測定することができる。
なお、図7に示したフローチャートでは、最終ステップまでの走査が完了してから基準波数測定工程を実施するように記載しているが、走査する前や任意ステップの測定後に基準波数測定工程を実施することも可能である。また、複数ステップに渡って波数測定を実施して平均をとることで、基準波数の測定精度を向上させることもできる。
本願は、高い形状精度が要求されるレンズの光学面の計測などに好適に利用できる。
1 レーザー光源
7 フィゾーレンズ
7a 参照球面
8 被検物
8a 被検非球面
11 CCDカメラ
12 リード
13 測長器
15 波長測定器
18 位置姿勢測定器

Claims (5)

  1. 光源より射出された光を被検面および参照球面に照射し、前記被検面において反射した被検光と前記参照球面において反射した参照光とが干渉して生じた干渉縞に基づき前記被検面の形状を測定する形状測定方法であって、
    前記参照球面の曲率中心を通る走査軸に沿って前記被検面を多段階にステップ走査する工程と、
    前記ステップ走査の各ステップについて、撮像手段にて取得された干渉縞の形状測定領域に対応する位相、及び波長測定器にて前記光の波長、をそれぞれ計測する工程と、
    被検面上の任意の点と前記参照球面の曲率中心との距離を、計測された前記位相と前記波長とをパラメータとして含む波数(整数)の関数として定義したうえで、隣接するステップ間の前記関数の関係から各ステップにおける波数を算出し、各ステップ間の移動量を算出する工程と、
    前記算出された波数と前記関数から前記被検面上の任意の点と前記参照球面の曲率中心との距離の測定値を算出すると共に、
    前記算出された移動量を用いて前記被検面上の任意の点と前記参照球面の曲率中心との距離の設計値を算出し、前記測定値と設計値の差分より前記被検面の形状誤差を算出工程と、を有することを特徴とする形状測定方法。
  2. 前記ステップ走査のi−1ステップ目における前記関数は、式(1)で表現されることを特徴とする請求項1記載の形状測定方法。

    (ただし、上記(1)中の、OAは参照球面の曲率中心Oと被検面上の点Aとの距離、Rは参照球面の曲率半径、ni−1は波数(整数)、φi−1(θ,ψ)は干渉縞の形状測定領域に対応する位相、θは線分OAと干渉計光軸のなす頂角、ψは干渉計光軸周りの回転角、λi−1は光源より射出された光の波長、を示す)
  3. 前記ステップ走査のi−1ステップ目からiステップ目との間の前記移動量νは、以下の式(2)で表現されることを特徴とする請求項1記載の形状測定方法。

    (ただし、OBはiステップ目の被検面上の点Bと参照球面の曲率中心Oとを結ぶ線分を示し、θは線分OAと干渉計光軸14のなす頂角、θはi−1ステップ目に定められた被検面上の点Cと参照球面の曲率中心Oとを結ぶ線分OCと干渉計光軸14のなす頂角、である。)
  4. さらに前記被検面の位置姿勢を計測する位置姿勢測定器にて測定する工程と、
    前記ステップ走査のうち少なくともひとつのステップにおいて前記位置姿勢から前記参照球面の曲率中心と前記被検面上の点との距離を求め、基準となる前記波数を設定する工程と、を備えることを特徴とする請求項1記載の形状測定方法。
  5. 光源より射出された光を被検面および参照球面に照射し、前記被検面において反射した被検光と前記参照球面において反射した参照光とが干渉して生じた干渉縞に基づき前記被検面の形状を測定する形状計測装置であって、
    レーザー光を照射する光源と、
    射出された前記レーザー光の波長を計測する波長測定器と、
    参照球面を有するレンズと、
    被検面を有する被検査物を載置する前記参照球面に対して移動可能なリードと、
    前記参照球面および前記被検面からの反射光を受光する撮像手段と、
    制御部と、
    を有し、
    前記リードを駆動させて前記参照球面の曲率中心を通る走査軸に沿って前記被検面を多段階にステップ走査し、
    前記ステップ走査の各ステップについて、撮像手段にて取得された干渉縞の形状測定領域に対応する位相、及び波長測定器にて前記光の波長、をそれぞれ計測し、
    被検面上の任意の点と前記参照球面の曲率中心との距離を、計測された前記位相と前記波長とをパラメータとして含む波数(整数)の関数として定義したうえで、隣接するステップ間の前記関数の関係から各ステップにおける波数を算出し、各ステップ間の移動量を算出し、
    前記算出された波数と前記関数から前記被検面上の任意の点と前記参照球面の曲率中心との距離の測定値を算出すると共に、
    前記算出された移動量を用いて前記被検面上の任意の点と前記参照球面の曲率中心との距離の設計値を算出し、前記測定値と設計値の差分より前記被検面の形状誤差を算出すること、を特徴とする形状計測装置。
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