JP5615013B2 - 成形用シート及びこれを用いたシート状成形体 - Google Patents
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Description
表層、中間層及び裏層を備え、繊維素材及び発泡剤を含有する成形用シートであって、
上記中間層が繊維素材として天然繊維、熱可塑性合成繊維及び非熱可塑性化学繊維を含有し、
上記表層及び裏層が繊維素材として天然繊維及び熱可塑性合成繊維を含有し、
上記表層及び裏層の各層における繊維素材に対する発泡剤の含有量が5質量%未満であることを特徴とする。
(A)中間層が天然繊維を含有することで、当該成形用シートを用いたシート状成形体の軽量性及びプレス加工による成形性を向上させつつ、サーマルリサイクル等の環境問題にも十分対応することができる。
(B)中間層が熱可塑性合成繊維を含有することで、当該成形用シートを用いたシート状成形体に対し、高い吸音性等を付与しつつも、良好なプレス加工による成形性を付与することができる。
(C)中間層が非熱可塑性化学繊維を含有することで、当該成形用シートを用いたシート状成形体に対し、高い断熱性等を付与しつつも軽量性をも付与でき、さらには当該成形用シートを用いたシート状成形体の破断や層間剥離を効果的に防止してプレス加工による成形性を向上することができる。
(D)中間層が発泡剤を含有することで、中間層を構成する繊維素材間の繊維間隔を拡張させ、当該成形用シートを用いたシート状成形体の断熱性等を向上させつつ、さらには十分な軽量化を図ることができる。
(E)表層及び裏層が天然繊維を含有することで、上述の中間層の場合と同様に、当該成形用シートを用いたシート状成形体の軽量性や環境問題への対応性を向上させることに加え、中間層からの発泡剤の脱落を防止又は低減させ、その結果、プレス加工による成形性を確実なものとすることができる。
(F)表層及び裏層が熱可塑性合成繊維を含有することで、上述の中間層の場合と同様に当該成形用シートを用いたシート状成形体に対し、高い吸音性等を付与することに加え、当該成形用シートの両面の外表面に対して良好な延伸性を付与し、その結果、プレス加工による成形性をより一層向上させることができる。
(G)表層及び裏層の各層における繊維素材に対する発泡剤の含有量が5質量%未満、好ましくは3質量%未満、最も好ましくは無配合であることにより、当該成形用シートは、成形体加工の加熱下においても、発泡剤が繊維素材の繊維間隔を実質的に拡張することなく高い延伸性を発揮でき、プレス加工による成形性に優れる。
図1の成形用シート1は、中間層2、表層3及び裏層4を備える。なお、かかる成形用シート1は、多層抄きにより形成されるものである。
中間層2は、繊維素材として天然繊維、熱可塑性合成繊維及び非熱可塑性化学繊維を含有し、さらに発泡剤を含有するものである。以下、かかる中間層2の構成要素を順に詳説する。
天然繊維は、中間層2を構成する素材である。かかる天然繊維を中間層2に含有させることで、成形用シート1を用いたシート状成形体の軽量性が向上すると共に、プレス加工による成形性を向上させることができる。また、かかる天然繊維は、製造過程での取り扱いが容易かつ安全であり、さらには焼却が容易であるため、サーマルリサイクルの効率を向上することができ、産業廃棄物の大幅な削減を実現できることから、環境問題にも十分対応することができる。
熱可塑性合成繊維は、上記天然繊維と共に中間層2に含有される熱可塑性の繊維体である。この熱可塑性合成繊維は、成形体加工前の成形用シート1の状態では融解することはないが、成形体加工の加熱下で融解して天然繊維の繊維間に浸透し、その後、冷却して再び凝固することから、成形用シート1を用いたシート状成形体に対して高い剛性、寸法安定性、吸音性を付与することができると共に、良好なプレス加工による成形性や成形保持性を実現することができる。
非熱可塑性化学繊維は、上記天然繊維及び熱可塑性合成繊維と共に中間層2に含有されるものであり、加熱により溶融することのない繊維体である。かかる非熱可塑性化学繊維は、成形体加工の加熱下で溶融することなく、天然繊維の繊維間の水素結合を部分的に阻害することで成形用シート1を用いたシート状成形体の天然繊維の繊維間に連続した気道を形成させ、このシート状成形体に対して剛性、断熱性、吸音性に加えて軽量性を付与すると共に、シート状成形体の破断や層間剥離を効果的に防止でき、その結果、プレス加工による成形性を向上することができる。
発泡剤は、上記天然繊維、熱可塑性合成繊維及び非熱可塑性化学繊維と共に中間層2に含有されるものであり、加熱により繊維素材の繊維間隔を拡張し、シート内に独立気泡を配置するものである。この発泡剤を中間層2に含有させることで、天然繊維等の繊維間隔を拡張させ、成形用シート1を用いたシート状成形体の断熱性、吸音性を向上させ、さらには十分な軽量化を図ることができる。
中間層2には、上記天然繊維、熱可塑性合成繊維及び非熱可塑性化学繊維や発泡剤の他に、本発明の目的効果を損なわない範囲で、任意成分を適宜使用することができる。かかる任意成分としては、例えば軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、クレー、焼成カオリン、デラミカオリン、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、尿素−ホリマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子などの填料;アルキルケテンダイマー系サイズ剤、中性ロジンサイズ剤、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤などのサイズ剤;ポリアクリルアミド系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、カチオン化澱粉、尿素/ホルマリン樹脂、メラミン/ホルマリン樹脂などの紙力増強剤;アクリルアミド/アミノメチルアクリルアミドの共重合物の塩、カチオン化澱粉、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキサイド(以下、「PEO」と称することがある)、アクリルアミド/アクリル酸ナトリウム共重合物、カチオン性の定着剤(ハクトロンKC−100等)などの歩留り向上剤;DS4356などの紙粉脱落防止剤;硫酸バンド;湿潤紙力材;紙厚向上剤;嵩高剤;カチオン化剤;着色剤;染料等を、その種類及び含有量を適宜調整して添加することができる。
表層3及び裏層4は、中間層2を両面から挟着するよう積層される構造体であり、繊維素材として天然繊維及び熱可塑性合成繊維を含有する。
天然繊維は、表層3及び裏層4を構成する素材である。このように表層3及び裏層4の各層に天然繊維を含有させることで、上述の中間層2の場合と同様に、成形用シート1を用いたシート状成形体の軽量性、プレス加工による成形性、環境問題への十分な対応性を向上させることができる。
熱可塑性合成繊維は、表層3及び裏層4に含有される熱可塑性の繊維体である。このように表層3及び裏層4の各層に熱可塑性合成繊維を含有させることで、上述の中間層2の場合と同様に、成形用シート1を用いたシート状成形体に対して高い剛性、寸法安定性、吸音性を付与することに加え、成形用シート1の両面の外表面に対して良好な延伸性を付与し、その結果、プレス加工による成形性をより一層向上させることができる
表層3及び裏層4の各層は、上述の天然繊維及び熱可塑性合成繊維に加え、さらに発泡剤を含有しても良い。この表層3及び裏層4の各層における繊維素材に対する発泡性マイクロカプセルの配合量は、5質量%未満であり、3質量%が好ましく、無配合が最も好ましい。このように、表層3及び裏層4の各層における繊維素材に対する発泡性マイクロカプセルの配合量が5質量%未満であると、後述の成形体加工の加熱下においても、発泡剤が繊維素材の繊維間隔を実質的に拡張することがない。その結果、成形用シート1は優れた延伸性を発揮でき、成形体プレス加工の容易性及び確実性を実現することができる。なお、表層3及び裏層4の各層における繊維素材に対する発泡性マイクロカプセルの配合量が5質量%以上であると、後述の成形体加工の加熱下で発泡剤が繊維素材の繊維間隔を拡張し、その結果、発泡剤の脱落や延伸性の低下が発生する可能性がある。
表層3及び裏層4の各層には、中間層2の場合と同様に、上記非熱可塑性化学繊維を含有させることができる。かかる非熱可塑性化学繊維の種類、配合量、平均繊維長については、中間層2の場合と同様である。また、表層3及び裏層4の各層には、上記発泡剤を除く任意成分を中間層2の場合と同様に含有させることができる。
このように、中間層2、表層3及び裏層4から形成される成形用シート1の坪量の上限としては、700g/m2が好ましく、600g/m2がより好ましい。また、成形用シート1の坪量の坪量の下限としては、100g/m2が好ましく、150g/m2がより好ましい。このように成形用シート1の坪量を上記範囲とすることで、成形用シート1を用いたシート状成形体に付与される軽量性と剛性とのバランスを向上できる。なお、この成形用シート1の坪量が上記上限を超えると、成形用シート1の延伸や曲げ等の加工適性が低下する可能性がある。また、かかる成形用シート1の坪量が上記下限未満であると、成形用シート1が破断しやすくなる傾向がある。
成形用シート1の製造方法としては、一般的な多層抄きの抄紙方法を使用することができる。具体的には、中間層、表層及び裏層の各層について、各層毎の繊維素材等を含む原料スラリーを用い、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート、カレンダーパート、リールパート等を経て抄紙し、これを巻き取ることで製造することができる。また、かかるドライヤーパートでは、成形用シート1に含まれる熱可塑性合成繊維が融解せず、かつ中間層2における発泡剤の発泡が開始しない温度に調整して乾燥を行う。例えば、中間層2における発泡剤が発泡性マイクロカプセルである場合、熱可塑性合成繊維の融点が135℃であり、発泡性マイクロカプセルの発泡開始温度が90℃であれば、ドライヤーパートにおける乾燥温度は90℃未満に設定する。
図2のシート状成形体11は、成形用シート1を加熱下において発泡及びプレス成形して形成されるものであり、中間層12、表層13及び裏層14を備える。この中間層12は、成形加工前の中間層2と比較して厚さが大きく、密度が小さくなっている。一方、表層13及び裏層14の各層において、成形加工前の表層3及び裏層4の各層と比較して、厚さ及び密度の変化幅は小さい。このように、成形加工前と比較して、特に中間層12の厚さや密度が大きく変化することで、シート状成形体11は、良好な軽量性、吸音性、断熱性を発揮しつつ、加えて剛性や寸法安定性も発揮することができる。
上述の通り、成形用シート1を加熱下で発泡させ、プレス成形することでシート状成形体11が得られる。かかるプレス成形に用いる成形装置としては、雄型及び雌型から構成されるプレス成形金型を使用することができる。
(成形用シートの製造)
成形用シートの中間層を構成する繊維素材として、天然繊維である針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、熱可塑性繊維として芯鞘構造を有さない単一のポリオレフィン繊維(三井化学社の「SWP−E400」、平均繊維長0.9mm、融点135℃)、非熱可塑性化学繊維であるビニロン(クラレ社の「VPB303」、平均繊維長3mm)を表1に示す配合量により調整した。また、表層及び裏層の各層を構成する繊維素材として、天然繊維である針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、熱可塑性繊維として芯鞘構造を有する熱可塑性合成繊維であるポリエチレンテレフタレート(PET)繊維(ユニチカ社の「4080」、平均繊維長3mm、鞘部の融点110℃、芯部の融点255℃)を、中間層の場合と同様に表1に示す質量比により調製した。
上述した製造工程により得られた成形用シートを、雄型及び雌型の金型を有する加熱プレス装置を用いて成形した。なお、かかるプレス時間は60秒、プレス温度は130℃とした。かかる成形用シートの密度を表1に示した。
中間層における発泡剤を、松本油脂製薬社の「松本マイクロスフェア−FN180」(発泡開始温度140℃、最大膨張温度は195℃)とした以外は、実施例1〜21と同様である。
中間層の天然素材を竹とした以外は、実施例1〜21と同様である。
中間層の天然素材をマニラ麻とした以外は、実施例1〜21と同様である。
中間層の熱可塑性合成繊維を、芯鞘構造を有する熱可塑性合成繊維であるポリエチレンテレフタレート(PET)繊維(ユニチカ社の「4080」)とした以外は、実施例1〜21と同様である。
中間層の非熱可塑性化学繊維を、アクリル繊維(東洋紡社の「ビィパル」、平均繊維長1〜2mm)とした以外は、実施例1〜21と同様である。
表層及び裏層の各層の天然素材を竹とした以外は、実施例1〜21と同様である。
表層及び裏層の各層の天然素材をマニラ麻とした以外は実施例1〜21と同様である。
表層及び裏層の各層の熱可塑性合成繊維を、芯鞘構造を有さない単一のポリオレフィン繊維(三井化学社の「SWP−E400」、平均繊維長0.9mm、融点135℃)とした以外は実施例1〜21と同様である。
表層及び裏層の各層に発泡剤であるマイクロカプセル(松本油脂製薬社の「松本マイクロスフェア−F78K」、発泡開始温度90℃、最大膨張温度170℃)を表1に示す割合で配合させた以外は、実施例1〜21と同様である。
中間層に天然素材を含有させない以外は、実施例1〜21と同様である。
中間層に熱可塑性合成繊維を含有させない以外は、実施例1〜21と同様である。
中間層に非熱可塑性化学繊維を含有させない以外は、実施例1〜21と同様である。
中間層に発泡剤を含有させない以外は、実施例1〜21と同様である。
表層及び裏層の各層に天然素材を含有させない以外は、実施例1〜21と同様である。
表層及び裏層の各層に熱可塑性合成繊維を含有させない以外は、実施例1〜21と同様である。
表層及び裏層の各層に発泡剤であるマイクロカプセル(松本油脂製薬社の「松本マイクロスフェア−F78K」、発泡開始温度90℃、最大膨張温度170℃)を表1に示す割合で配合させた以外は、実施例1〜21と同様である。
実施例及び比較例の伸び率X(%)は、JIS−P8113(紙及び板紙−引張特性の試験方法)に準拠し、150℃の条件下において成形用シート1の試験片を破断するまで引っ張り、この試験片が破断する直前における長さをX1とし、かかる引張試験を行う前の試験片の長さをX0の値とすると、下記数式(1)で算出される値である。
X=[(X1−X0)/X0]*100 ・・・(1)
上記数式(1)に基づいて横方向の値を測定した。その結果を、表1に示した。
実施例及び比較例の密度は、JIS−P8118(厚さ及び密度の試験方法)に準拠して測定した。その結果を、表1に示した。
実施例及び比較例の吸音率は、ランダム入射吸音率を評価指標として用いた。ランダム入射吸音率は、残響室吸音率と呼ばれるもので、JIS−A1409に準拠し、残響室内で音を出して急に止めた際の、残響室の減衰時間から算出したものである。具体的には、容積:70m3、表面積:95m2である残響室の床面中央に、実施例及び比較例のシート状成形体を設置し、天井の周囲には厚さ17mmのアクリル板からなる高さ700mmの拡散枠板を設置した。そして、音源を天井内装材から離れた位置に配置した。このように天井表面に対してランダムな方向から音による空気振動が入射するようにした。その結果を、表1に示した。
実施例及び比較例の断熱性(W/mk)とは熱伝導率であり、JIS−A1412の熱流計法に基づき、英弘精機株式会社製の熱伝導率測定器HC−110を用いて測定した値である。なお、測定は温度20℃の条件下で行った。その結果を表1に示した。なお、断熱性が0.052W/mk以下であれば特に断熱性に優れるため好ましい。
表1に示す通り、実施例1〜30は、比較例1〜7と比較して良好な伸び率、吸音性及び断熱性を示す傾向が認められた。
2 中間層
3 表層
4 裏層
11 シート状成形体
12 中間層
13 表層
14 裏層
Claims (6)
- それぞれ繊維素材と発泡剤とを含む表層、中間層及び裏層を備え、坪量150g/m 2 以上700g/m 2 以下であり、プレス加工によって成形される成形用シートであって、
上記中間層が繊維素材として天然繊維、熱可塑性合成繊維及び非熱可塑性化学繊維を含有し、
上記表層及び裏層の繊維素材として天然繊維及び熱可塑性合成繊維を含有し、
上記表層及び裏層の各層における繊維素材に対する発泡剤の含有量が5質量%未満であることを特徴とする成形用シート。 - 上記中間層において、繊維素材に対する天然繊維の配合量が10質量%以上80質量%以下、熱可塑性合成繊維の配合量が10質量%以上40質量%以下、非熱可塑性化学繊維の配合量が1質量%以上50質量%以下である請求項1に記載の成形用シート。
- 上記表層及び裏層の各層において、天然繊維と熱可塑性合成繊維との質量比が10/90以上80/20以下である請求項1又は請求項2に記載の成形用シート。
- 上記表層及び裏層の熱可塑性合成繊維が芯鞘構造を有し、
この芯鞘構造の鞘部分の融点が芯部分の融点より低い請求項1、請求項2又は請求項3に記載の成形用シート。 - 上記中間層において、上記発泡剤の発泡開始温度が熱可塑性合成繊維の融点以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の成形用シート。
- 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の成形用シートを発泡及びプレス加工して成形されるシート状成形体。
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