JP5613290B2 - 半導体装置 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体装置に関するものである。
半導体装置の微細化が進むことにより、銅配線の寄生容量がトランジスタ自体の入出力容量と同等の大きさになってしまい、素子動作の高速化の妨げとなっている。そこで、従来の酸化珪素(SiO2、比誘電率k≒4)よりも比誘電率が低い絶縁膜を導入することが盛んに検討されている。しかし、比誘電率kが小さくなると、絶縁膜の機械的強度が劣る。特に比誘電率kが3.5より小さくなると十分な機械的強度が確保できなくなるため問題となっていた。以下、本発明においては、比誘電率kが3.5より小さい膜を「低誘電率膜」と呼ぶものとする。
半導体装置をパッケージ化した後の熱サイクル試験においては、たとえば−65℃から150℃まで温度を変化させるため、低誘電体膜はレジン部分からストレスを受け、その結果、低誘電体膜が剥離してしまう場合があった。低誘電体膜の機械的強度が弱いほど剥離は顕著となる。また、場所に関していうと、特にストレスが集中するチップコーナー近傍で剥離が顕著である。
一般に、半導体装置のチップは、内部に水分が浸入するとデバイスの動作特性を劣化させてしまうので、チップ外周側面からの水分浸入を防止するためにシールリング(「ガードリング」ともいう。)と呼ばれるパタンが形成されている。シールリングとしては、チップ内に用いられているコンタクト、配線などの金属部分が上下方向に並び、これら各層の間をやはり金属の溝状構造でつないで金属の壁のように構成したものが平面的に見て閉ループ状となるように配置されている。シールリングは、平面的に見てチップの外周から一定間隔をあけて外周に沿った四角形となる。
上述のようにレジンから受けるストレスにより低誘電率膜が破壊されると、やがてクラックは進展し、シールリングに達する。クラックがシールリングに達すると、シールリングは容易に破壊されてしまう。シールリングが一旦破壊されると、チップ内部に水分が浸透し、デバイスの動作に支障をきたす。さらに極端な例ではクラックは500μmも進行し、チップ内部の配線を直接切断する場合もある。
クラックがシールリングを破壊することを防止するために、いくつかの技術が提案されている。たとえば、米国特許US6,365,958B1号(特許文献1)には、格子配線が上下方向に重なって複数層配置され、上下に隣接する格子配線同士は金属からなるビアで接続された構造の部材を、クラック進行を止める犠牲パタンとしてシールリングより外側に配置することが開示されている。米国特許US5,572,067号(特許文献2)には、チップのコーナーから中心に向かう向きに平行な下層配線とこれに垂直な向きの上層配線とが交差し、互いにビアによって接続された犠牲コーナー構造をチップコーナー部に配置することが開示されている。米国特許出願公開US2004/0002198A1号(特許文献3)には、非四角形のシールリングを用い、かつ、シールリングのチップコーナー部において、下層配線と上層配線とを格子状に接続したダミー金属パタンをシールリング両側に置くことが開示されている。
特開2004−172169号公報(特許文献4)には、下層配線と上層配線とをビアによって接続した補強パタンや、銅からなる壁状の補強パタンをチップコーナー近傍に配置することが開示されている。
米国特許US6,365,958B1号 米国特許US5,572,067号 米国特許出願公開US2004/0002198A1号 特開2004−172169号公報
上述のようにそれぞれ提案されている技術によってチップコーナー近傍に犠牲パタンとなる構造を配置したとしてもクラックによってシールリングが破壊されることを十分に防止できていなかった。また、犠牲パタンをあまり大きくすると回路などを配置する面積が狭くなるという問題もあった。
そこで、本発明は、クラックによるシールリング破壊をより効率良く強力に防止することができる半導体装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に基づく半導体装置は、比誘電率が3.5未満の低誘電率膜を含む半導体装置であって、平面的に見て閉ループ形となる水分遮蔽壁であるシールリングを1本以上備え、上記シールリングのうち少なくとも1本は、チップコーナー近傍においてシールリング凸形部を含み、上記シールリング凸形部は上記閉ループ形の内側に凸形状となっており、平面的に見て閉ループ形となる水分遮蔽壁でありかつ上記シールリングを取り囲む外部シールリングをさらに備え、上記シールリングと上記外部シールリングとは平面的に見て分離されている。
本発明によれば、チップコーナーを起点として広がるように進行してくるクラックに対して、実際のクラック先端が描く形状により近い形でシールリングがぶつかることとなるので、クラックの進行をより効率良く防ぐことができる。
発明者らが見出したクラックの進行状態を説明するために示した半導体装置の部分断面図である。 発明者らが見出したクラックの進行状態を説明するために示した半導体装置の部分平面図である。 発明者らが見出したクラックの性質の第1の説明図である。 発明者らが見出したクラックの性質の第2の説明図である。 本発明に基づく実施の形態1における半導体装置の部分平面図である。 本発明に基づく実施の形態1における半導体装置の部分断面図である。 本発明に基づく実施の形態1における半導体装置の他の例の部分断面図である。 本発明に基づく実施の形態1における半導体装置のさらに他の例の部分平面図である。 本発明に基づく実施の形態2における半導体装置の部分平面図である。 本発明に基づく実施の形態3における半導体装置の部分平面図である。 本発明に基づく実施の形態4における半導体装置の部分平面図である。 本発明に基づく実施の形態5における半導体装置の部分平面図である。 本発明に基づく実施の形態6における半導体装置の部分平面図である。
まず、本発明をなすに先立って、発明者らはクラックがどのように発生しているかを詳細に検証した。その結果わかった実際のクラックの発生状態を、図1、図2を参照して説明する。図1では、半導体装置のチップコーナー近傍の断面図を示す。半導体装置基板100の上側に、下から順に酸化珪素膜101、炭窒化珪素膜102、酸化珪素膜103、炭窒化珪素膜104a、低誘電率膜105a、炭窒化珪素膜104b、低誘電率膜105b、炭窒化珪素膜104c、低誘電率膜105c、炭窒化珪素膜104d、酸化珪素膜106、炭窒化珪素膜104e、酸化珪素膜107a、酸化珪素膜107b、窒化珪素膜108が積層されている。酸化珪素膜101を貫通するようにコンタクト110が配置されている。酸化珪素膜101の上側に銅配線111が配置されている。低誘電率膜105aを貫通して銅配線111に対して上から接続するように層間接続部112が設けられている。層間接続部112の上側で低誘電率膜105aの中に埋め込まれるように銅配線113が配置されている。さらに上に向かって同様に繰り返しながら、層間接続部114、銅配線115、層間接続部116、銅配線117が順に配置されている。酸化珪素膜106を貫通して銅配線117に対して上から接続するように層間接続部118が配置されている。層間接続部118の上側で酸化珪素膜の中に埋め込まれるように銅配線119が配置されている。酸化珪素膜107aを貫通して銅配線119に対して上から接続するように層間接続部120が配置されている。層間接続部120の上側にアルミニウム配線121が配置されている。アルミニウム配線121は酸化珪素膜107aの上側に載るように配置され、酸化珪素膜107bによって覆われている。チップの端に近いところには酸化珪素膜107bおよび窒化珪素膜108を掘り抜くように窒化珪素膜剥離防止溝122が設けられている。コンタクト110からアルミニウム配線121までが壁状となっており、水分浸入を防止するためのシールリング123を構成している。
熱サイクル試験では上側を覆うレジン(図示せず)の収縮に引っ張られて矢印2の向きに力が加わる。低誘電率膜は機械的強度が弱いので、チップコーナーを起点としてクラック1が発生する。発明者らは低誘電率膜のクラックを詳細に調べた結果、以下のことを見出した。
まず第一に、クラック1は特に低誘電率膜の下側の界面で発生しやすいことがわかった。さらに発明者らは、クラック1は複数ある低誘電率膜のうちの最も下にある低誘電率膜において発生する確率が最も高いことを突き止めた。
第二に、平面的に見たクラックの進行時の形状の実態を明らかにした。この半導体装置の平面図を図2に示す。従来の考え方では、チップコーナー4を起点とするクラックの先端はチップコーナー4を挟む2つの辺にそれぞれ45°の角度をなす直線22の状態で矢印20の向きに進行すると考えられていたが、発明者らは、実際にはクラックの先端は単なる直線ではなく、矢印21の向きに折れ線24aから折れ線24bへと広がるように進行することを見出した。
第三に、クラックは、図3に示すように低誘電率膜105aの下側の界面で発生してそのままこの界面に沿って進行していくだけでなく、図4に示すように進行した先で低誘電率膜105aを完全に遮るような銅配線111に出会った場合には、銅配線111の上側を乗り越えてさらに低誘電率膜105bに沿って進行することもわかった。
これらの知見に基づいて、本発明はなされた。
(実施の形態1)
(構成)
図5、図6を参照して、本発明に基づく実施の形態1における半導体装置について説明する。この半導体装置は、比誘電率が3.5未満の低誘電率膜105a,105b,105cを含む半導体装置であって、平面的に見て閉ループ形となる水分遮蔽壁であるシールリング123を1本以上備え、シールリング123のうち少なくとも1本は、チップコーナー4近傍において内向きに凸形状になるシールリング凸形部10を含む。シールリング凸形部10は、チップコーナー4近傍において内向きに凸形状となっているだけでも一応の効果は得られるが、ここではより好ましい構成として、チップコーナー4を挟む2つのチップ端面5,6に対してほぼ等しい角度をなしかつチップコーナー4に対向するシールリング斜辺9を有する。シールリング凸形部10は、シールリング斜辺9を有するだけでも一応の効果は得られるが、ここではより好ましい構成として、チップコーナー4を挟む2つのチップ端面5,6にそれぞれ平行な第1辺7および第2辺8を有する。
この半導体装置は、チップ中心から見てシールリング凸形部10よりも外側に、クラックの進展を防止するための壁状構造物である犠牲パタン124を備える。図5のVI−VI線に関する矢視断面図を図6に示す。犠牲パタン124は、シールリング123の上部をなくした構成、すなわち、低誘電率膜105a,105b,105cの層に対応する部分にのみシールリング123と同様の壁を築いた構成であってよい。クラックの進行を防ぐ壁となるべき犠牲パタン124は、複数の配線層を層間接続部で上下に接続した構造となっている。犠牲パタン124に含まれる各々の層間接続部は孔状の部材ではなく溝状の部材からなる。
なお、犠牲パタン124は、図7に示すように、シールリング123と同じ高さ、すなわちアルミニウム配線の層まで達する構造であってもよい。あるいは、たとえば、図6の構成において犠牲パタン124を上に延長して配線119の高さと同じところまで存在する構成、すなわち、図6と図7との中間の構成としてもよい。
犠牲パタン124は1つ以上あれば本発明の効果は一応得られるが、複数あることが好ましいので、図5の例では複数の犠牲パタン124が設けられることによって犠牲パタン群3を構成している。犠牲パタン群3には、複数の折れ線形状の犠牲パタン124のほかに直線状の犠牲パタン13も含まれている。折れ線形状の犠牲パタン124の各々は、チップコーナー4を挟む2つのチップ端面5,6にほぼ等しい角度をなしかつチップコーナー4に対向する犠牲パタン斜辺11を有する。犠牲パタン斜辺11は、チップ中心に近いものほど長くなっている。
(作用・効果)
本実施の形態では、シールリング123のうち少なくとも1本は、チップコーナー4近傍において内向きに凸形状になるシールリング凸形部10を含む形となっているので、チップコーナー4を起点として進行するクラックに対して実際のクラック先端が描く形状により近い形でシールリングがぶつかることとなり、その結果、より効率良くクラックの進行を妨げることが可能となる。さらに、本実施の形態では、シールリング凸形部10がシールリング斜辺9を有するので、進行するクラック先端の中央の斜辺部分に対して平行にシールリング123が立ちはだかることとなる。したがって、シールリング123がクラックによって破壊されにくくなる。さらに、本実施の形態では、シールリング凸形部10が第1辺7および第2辺8を有するので、シールリング123は図2に示した折れ線24a,24bのように進行するクラックに対して各所で平行に配置されていることとなり、クラックに対してより強固となる。
本実施の形態では、犠牲パタン124が配置されているので、チップコーナー4から広がるように進行してくるクラックはシールリング123に到達する前に犠牲パタン124に到達して進行を妨げられることとなる。犠牲パタン124は溝状の層間接続部を利用して全体として壁状に形成されている金属製の構造物であるので、ある一つの低誘電率膜の下側界面に沿って進行してきたクラックが犠牲パタン124のある高さの配線層にぶつかって一つ上側の低誘電率膜に乗り上げた場合であっても、それ以上の進行を妨げることができる。
本実施の形態では、図5に示すように犠牲パタン124が複数設けられているが、このように複数設けられていれば、たとえクラックが一部の犠牲パタン124を破壊してさらに内側に進行してきたとしても、クラックがシールリング123にまで達する前にクラックの進行をくい止められる確率が高くなる。さらに本実施の形態では好ましいことに、犠牲パタン124の各々が犠牲パタン斜辺11を有するので、犠牲パタン124はクラック先端の描く線に対して平行に立ちはだかることとなる。したがって、犠牲パタン124はクラックの進行をより有効に妨げることができる。さらに、クラックはチップ中心に向かって進展するにつれて図2に示すようにクラック先端のなす斜辺部分も長くなっていくが、本実施の形態における半導体装置のように、犠牲パタン斜辺11が、チップ中心に近いものほど長くなるように配置しておけば、クラックが進展するにつれてクラック先端の斜辺に対してより長くなった犠牲パタン斜辺11が次々とぶつかるようになるので、クラックの進行をより効果的に妨げることができるようになる。
特に図5に示したような好ましい構成においては、クラックがシールリング123に到達するのはすべての犠牲パタン124が破壊された後に限られるので、限られた面積に配置される犠牲パタン124の働きを最も有効に利用できるようになる。
なお、図5に示した例では、犠牲パタン群3が複数の直線状の犠牲パタン13と複数の折れ線状の犠牲パタン124とを含んでいたが、犠牲パタン群3に代えて、図8に示すように直線状の犠牲パタン13のみを平行に複数配置した犠牲パタン群14としてもよい。この場合、進展するクラックの先端が描く線と犠牲パタンの形状とは必ずしも完全には一致しないが、進行するクラックに対して複数の犠牲パタン13が次々とたちはだかることによって進行を妨げるという効果は得られる上、設計が容易になるというメリットがある。犠牲パタン13も犠牲パタン斜辺11を有している。
シールリング凸形部10に囲まれる領域内に、犠牲パタン群の代わりに、直線状の犠牲パタン13を1本のみ配置した構成や、折れ線状の犠牲パタン124を1本のみ配置した構成や、直線状の犠牲パタン13を1本と折れ線状の犠牲パタン124を1本との合計2本のみを配置した構成も、上述した例に比べればクラック進行抑止効果は小さくなるが、本発明の技術的思想の意図する範囲内である。
なお、犠牲パタン群3に含まれる複数の犠牲パタン124は、チップ中心に近い犠牲パタン124ほど犠牲パタン斜辺11が長くなるように配置されていることが好ましいが、犠牲パタン群3に含まれるすべての犠牲パタン124がこの順序に従って並んでいる場合に限られず、犠牲パタン群3に含まれる複数の犠牲パタン124のうちの一部のみがこの順序に従って並んでいる場合であってもある程度の効果は得ることができる。したがって、複数の犠牲パタンのうち少なくとも一部については、チップ中心に近い犠牲パタンほど犠牲パタン斜辺が長くなるように配置されていることが好ましいといえる。
(実施の形態2)
(構成)
図9を参照して、本発明に基づく実施の形態2における半導体装置について説明する。この半導体装置では、チップ中心から見てシールリング凸形部10より外側の領域内に複数の犠牲パタンからなる犠牲パタン群12が配置されている。犠牲パタン群12は、閉ループ状の犠牲パタン23を含む。図9に示した例では、特に好ましいことに、犠牲パタン群12は複数の閉ループ状の犠牲パタン23を含み、これら複数の閉ループ状の犠牲パタン23は同心状に配置されている。犠牲パタン群12に含まれる犠牲パタンは、シールリング123の近くではシールリング123と平行になっている。犠牲パタン群12に含まれる複数の犠牲パタンのうちチップコーナー4に近い部分のものは、直線状の犠牲パタン13となっている。他の部分の構成は、実施の形態1で説明したものと同様である。
(作用・効果)
本実施の形態では、閉ループ状の犠牲パタン23が含まれているので、犠牲パタン23に取り囲まれた領域への水分の浸入を防止することができる。低誘電率膜は酸化珪素膜などに比べれば水分を非常に浸透させやすい。低誘電率膜はもし水分が浸入すれば機械的強度がさらに劣化するが、閉ループ状の犠牲パタン23の内部では犠牲パタン23が破壊されない限り水分が浸入しないので、低誘電率膜の機械的強度の劣化を防ぐことができ、クラックの進行を抑えることができる。特に複数の閉ループ状の犠牲パタン23が同心状に配置されている場合、最も外側の犠牲パタン23によって一括して広い範囲を水分の浸入しない領域とすることができるので好ましい。仮に、外側の閉ループ状の犠牲パタンが破壊されたとしても内側に閉ループ状の犠牲パタンが1つ以上残っていれば一部の領域については水分浸入を防ぐことができる。
なお、本実施の形態では、半導体装置は犠牲パタン群12を備えることとしたが、犠牲パタン群12に代えて1つの閉ループ状の犠牲パタンを配置するのみであっても、上述の例に比べれば効果が劣るもののある程度の効果は得られる。
(実施の形態3)
(構成)
図10を参照して、本発明に基づく実施の形態3における半導体装置について説明する。この半導体装置は、実施の形態1で図8に示した例においてシールリングを2重にしたものに相当する。すなわち、この半導体装置は、シールリング123aとシールリング123bを備える。チップ中心から見てシールリング123aの外側には直線状の犠牲パタン13を平行に複数配置した犠牲パタン群14が配置されている。各犠牲パタン13は、チップコーナー4を挟む2つのチップ端面5,6にほぼ等しい角度をなしかつチップコーナー4に対向するように配置されている。
(作用・効果)
本実施の形態では、シールリングが多重になっているのでクラックが進行したときに最もチップ中心に近い側のシールリングが破壊されてデバイスの動作に支障をきたす確率を低く抑えることができる。
本実施の形態では、シールリングを2重にしたが、2重に限らず3重以上にしてもよい。ただし、シールリングの数を増すとシールリングの内部で利用できる面積が減ることも留意する必要がある。本実施の形態では、図8の例においてシールリングを多重にした構成を示したが、同様の考え方は他の構成にも適用できる。たとえば、図5、図9の例においてシールリングを多重にしてもよい。後述の図11〜図13の例においてシールリングを多重にしてもよい。
(実施の形態4)
(構成)
図11を参照して、本発明に基づく実施の形態4における半導体装置について説明する。この半導体装置は、複数の犠牲パタンからなる犠牲パタン群17を備える。犠牲パタン群17は、チップコーナー4を挟む2つのチップ端面5,6にほぼ等しい角度をなしかつチップコーナー4に対向する犠牲パタン斜辺11を含む複数の犠牲パタン13からなる内部犠牲パタン群16と、内部犠牲パタン群16を外側から取り囲むように配置され、チップコーナー4を挟む2つのチップ端面5,6にそれぞれ平行な2辺を含み略L字形のL字形犠牲パタン15とを含む。
(作用・効果)
本実施の形態では、L字形犠牲パタン15を備えているので、ウエハをダイシングする際にチップ端面5,6で初期クラックが発生したとしてもL字形犠牲パタン15によってある程度抑えることができる。もしその初期クラックが起点となって、熱サイクル試験中にチップ中心に向かってクラックが進行した場合、内部犠牲パタン群16に含まれる複数の犠牲パタン13がクラックの進行を抑制する。このようにL字形犠牲パタン15と内部犠牲パタン群16との組合せによってクラックの進行抑制に有効となる。なお、図11の例では、L字形犠牲パタン15を1本としたが、L字形犠牲パタン15は2重以上としてもよい。また、図11の例は、図8の例にL字形犠牲パタン15を組み合わせたような構成となっているが、他の実施の形態に対してL字形犠牲パタンを組み合わせてもよい。
(実施の形態5)
(構成)
図12を参照して、本発明に基づく実施の形態5における半導体装置について説明する。この半導体装置は、実施の形態1で図8に示した例において外部シールリング25を追加した構成に相当する。すなわち、この半導体装置は、複数の犠牲パタン13からなる犠牲パタン群14を備えるが、この犠牲パタン群14より外側から犠牲パタン群14およびシールリング123を取り囲むように、平面的に見て閉ループ形となる水分遮蔽壁である外部シールリング25を備える。図12では半導体装置の一部分しか表示していないが、外部シールリング25は図示しない部分においてもつながっており、半導体装置全体の外形線に沿って閉ループ形に配置されている。
(作用・効果)
本実施の形態では、外部シールリング25を備えるので、ウエハをダイシングする際にチップ端面5,6で初期クラックが発生したとしても外部シールリング25によってある程度抑えることができる。そのため、実施の形態4と同様な効果を得ることができる。さらに、外部シールリング25は、その内側の領域を水分浸入から守る役割も果たすので、外部シールリング25よりも内側の領域の機械的強度が水分浸入によって低下することを防止することもできる。
なお、図12の例では、外部シールリング25は犠牲パタン群14およびシールリング123を取り囲んでいるが、犠牲パタン群14の代わりに犠牲パタンが1つしかない場合であっても、同様に外部シールリングを設けてもよい。
なお、図12の例では、外部シールリング25を1本としたが、外部シールリング25は2重以上としてもよい。また、図12の例は、図8の例に外部シールリング25を組み合わせたような構成となっているが、他の実施の形態に対して外部シールリングを組み合わせてもよい。
(実施の形態6)
(構成)
図13を参照して、本発明に基づく実施の形態6における半導体装置について説明する。この半導体装置は、犠牲パタン群19を備える。この半導体装置は、図12の例において犠牲パタン群14を犠牲パタン群19に置き換えたものに相当する。犠牲パタン群19は、犠牲パタン群14と似ているが、互いに接続されている連結層18を含む。犠牲パタン群19も基本的には個々の犠牲パタンの集まりである。図13の例では犠牲パタン群19は直線状の犠牲パタン26が複数集まったものである。犠牲パタン26は厚み方向に見て複数の配線層を含んでいるが、図13の例ではそのように複数存在する配線層のうちの少なくとも1つの層において犠牲パタン26同士が連結されている。このように犠牲パタン同士が接続されている層を「連結層」18と呼ぶものとする。犠牲パタン群19は連結層18を介して相互に連結した状態の複数の犠牲パタン26の集合体であるといえる。
(作用・効果)
本実施の形態では、犠牲パタン26同士が連結層18によって互いに接続されているので、犠牲パタン群19全体としては強度を上げることができ、クラックの進行に対抗する能力がさらに向上する。
連結層18は、図13に示した例のように平面的に見て網目状となっていることが好ましい。このようになっていることによって効率良く全体の強度を上げることができるからである。なお、連結層は1つの層のみであっても複数の層であってもよい。
なお、これまでの実施の形態のすべてに渡って共通していえることとして、犠牲パタンは、低誘電率膜のうち最下層にあるものを遮るように配置されていることが好ましい。「低誘電率膜のうち最下層にあるもの」とは、低誘電率膜が1層しかない場合はその1層を指すものとする。クラックは、低誘電率膜のうち最下層において発生しやすいので、低誘電率膜のうち最下層にあるものを遮るように犠牲パタンが配置されていれば、図3においてクラックが低誘電率膜の下側の界面に沿って進展した末にシールリング123に到達する現象と同じことが、クラックと犠牲パタンとの間で起こるようになる。すなわち、クラックの進行を抑止する上で特に効果が顕著となる。犠牲パタンは、特に低誘電率膜のうち最下層にあるものの下側の界面を遮るように配置されていることが好ましい。
低誘電率膜が複数含まれている半導体装置においても本発明は顕著な効果を得ることができる。低誘電率膜が複数含まれている半導体装置において犠牲パタンは、複数の低誘電率膜をいずれも遮るように配置されていることが好ましい。図4を参照して説明したように、クラックは進行中に配線層のようなものに到達すると1つ上側の層に乗り上げて引き続き進行しようとする。しかし、犠牲パタンが、複数の低誘電率膜をいずれも遮るように配置されていれば、たとえクラックが1つ上側に乗り上げたとしても効果的に抑止することができるので好ましい。
さらに、これまでの実施の形態のすべてに渡って共通していえることとして、犠牲パタンは、平面的に見てシールリングとは分離して配置されていることが好ましい。これまで図示したものはいずれも犠牲パタンが平面的に見てシールリングから分離して配置されていたが、このようになっていることによって、犠牲パタンがもし破壊されて剥離したときにその剥離部分の変位に引っ張られてシールリングも剥離するような事態が起こる確率を低減することができる。
なお、上記各実施の形態において、シールリング斜辺9、犠牲パタン斜辺11などの姿勢に言及する際に「チップコーナー4を挟む2つのチップ端面5,6に対してほぼ等しい角度をなし…」といった表現を用いたが、これはたとえばチップコーナー4が直角な角である場合、2つのチップ端面5,6に対してそれぞれ45°の角度をなす姿勢である場合を意味するのみならず、40〜50°の角度をなす場合も含まれるものとする。すなわち、たとえば、チップ端面5に対して40°傾いていてチップ端面6に対して50°傾いているような状況も含まれる。ただし、チップ端面5,6の両方に対してほぼ45°の角度をなす場合が最も好ましい。なぜなら、そのようになっていれば、進行してくるクラックに対してより正確に真正面から対向することができるからである。
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
1 クラック、2 (収縮の向きを示す)矢印、3,12,14,17,19 犠牲パタン群、4 チップコーナー、5,6 チップ端面、7 第1辺、8 第2辺、9 シールリング斜辺、10 シールリング凸形部、11 犠牲パタン斜辺、13,26 (直線状の)犠牲パタン、15 L字形犠牲パタン、16 内部犠牲パタン群、25 外部シール、18 連結層、20,21 (クラックの進行を示す)矢印、22 (クラック先端を表す)直線、23 (閉ループ状の)犠牲パタン、24a,24b (クラック先端を表す)折れ線、25 外部シールリング、100 半導体基板、101,103,106,107a,107b 酸化珪素膜、102,104a,104b,104c,104d,104e 炭窒化珪素膜、105a,105b,105c 低誘電率膜、108 窒化珪素膜、110 コンタクト、111,113,115,117,119 銅配線、112,114,116,118,120 層間接続部、121 アルミニウム配線、122 窒化珪素膜剥離防止溝、123,123a,123b シールリング、124 (折れ線形の)犠牲パタン。

Claims (15)

  1. 比誘電率が3.5未満の低誘電率膜を含む半導体装置であって、平面的に見て閉ループ形となる水分遮蔽壁であるシールリングを1本以上備え、
    前記シールリングのうち少なくとも1本は、チップコーナーにおいて前記閉ループ形のシールリングの内向きに凸形状になるシールリング凸形部を含み、
    前記シールリング凸形部は、前記チップコーナーを挟む2つのチップ端面に対してそれぞれ40〜50°の角度をなしかつ前記チップコーナーに対向するシールリング斜辺を有し、
    チップ中心から見て前記シールリング凸形部よりも外側に配線パタンを備える、半導体装置。
  2. 前記シールリング凸形部は、前記チップコーナーを挟む2つのチップ端面にそれぞれ平行な第1辺および第2辺を有する、請求項に記載の半導体装置。
  3. 前記配線パタンは、前記チップコーナーを挟む2つのチップ端面にそれぞれ40〜50°の角度をなしかつ前記チップコーナーに対向する斜辺を有する、請求項に記載の半導体装置。
  4. 前記配線パタンを複数含む配線パタン群を備える、請求項に記載の半導体装置。
  5. 前記配線パタン群に含まれる複数の配線パタンが、前記チップコーナーを挟む2つのチップ端面にそれぞれ40〜50°の角度をなしかつ前記チップコーナーに対向する斜辺をそれぞれ有する、請求項に記載の半導体装置。
  6. 前記複数の配線パタンのうち少なくとも一部については、チップ中心に近い前記配線パタンほど前記斜辺が長くなるように配置されている、請求項に記載の半導体装置。
  7. 前記配線パタンは閉ループ状の配線パタンである、請求項1から5のいずれかに記載の半導体装置。
  8. 前記配線パタン群は複数の閉ループ状の配線パタンを含み、前記複数の閉ループ状の配線パタンは同心状に配置されている、請求項またはに記載の半導体装置。
  9. 前記配線パタン群は、前記チップコーナーを挟む2つのチップ端面にそれぞれ40〜50°の角度をなしかつ前記チップコーナーに対向する斜辺を含む内部配線パタン群と、前記内部配線パタン群を外側から取り囲むように配置され、前記チップコーナーを挟む2つのチップ端面にそれぞれ平行な2辺を含みL字形のL字形配線パタンとを含む、請求項に記載の半導体装置。
  10. 前記複数の配線パタンは、互いに接続されている連結層を含む、請求項に記載の半導体装置。
  11. 前記連結層は、平面的に見て網目状となっている、請求項10に記載の半導体装置。
  12. 前記配線パタンは、前記低誘電率膜のうち最下層にあるものを遮るように配置されている、請求項から11のいずれかに記載の半導体装置。
  13. 前記低誘電率膜は複数含まれており、前記配線パタンは、前記複数の低誘電率膜をいずれも遮るように配置されている、請求項から11のいずれかに記載の半導体装置。
  14. 前記配線パタンより外側から前記配線パタンおよび前記シールリングを取り囲むように、平面的に見て閉ループ形となる水分遮蔽壁である外部シールリングを備える、請求項から13のいずれかに記載の半導体装置。
  15. 前記配線パタンは、平面的に見て前記シールリングとは分離して配置されている、請求項から14のいずれかに記載の半導体装置。
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