JP5611105B2 - 糖ペプチド誘導体及びその製造方法 - Google Patents
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特許文献1及び2には「硫黄原子(S)−金(Au)結合」を活用することで、表面に金を有する支持体とオリゴ糖とを結合するための芳香族アミノ基を有するチオクト酸誘導体がリンカーとして開示されている。しかし、11糖シアリルオリゴ糖ペプチドのペプチド部分のアミノ基に対してジスルフィド基又はチオール基を含有したリンカーが導入された構造のものは開示されていない。
〔1〕
下記式(1)で表される糖ペプチドのLys(リジン)残基の遊離アミノ基のうち、少なくとも一つの遊離アミノ基にジスルフィド基含有リンカー又はチオール基含有リンカーが結合する糖ペプチド誘導体。
式(1):
前記ジスルフィド基含有リンカーが下記式(2)で表されるリンカーであり、前記チオール基含有リンカーが下記式(3)で表されるリンカーである、〔1〕に記載の糖ペプチド誘導体。
式(2):
式(3):
〔3〕
前記遊離アミノ基のすべてに前記ジスルフィド基含有リンカー又は前記チオール基含有リンカーが結合する、〔1〕又は〔2〕に記載の糖ペプチド誘導体。
〔4〕
前記糖ペプチドが、下記式(4)で表される構造である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の糖ペプチド誘導体。
式(4):
前記ジスルフィド基含有リンカー又は前記チオール基含有リンカーを前記遊離アミノ基に導入して糖ペプチド誘導体を得る導入工程を含む、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の糖ペプチド誘導体の製造方法。
〔6〕
鳥類卵脱脂卵黄を水又は塩溶液で抽出して糖ペプチドを含む抽出液を得る抽出工程、前記抽出液からアルコール沈殿させて、糖ペプチドを含む沈殿物を得る沈澱工程、前記沈殿物を脱塩して、糖ペプチドを得る脱塩工程、前記ジスルフィド基含有リンカー又は前記チオール基含有リンカーを前記遊離アミノ基に導入して糖ペプチド誘導体を得る導入工程を含む、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の糖ペプチド誘導体の製造方法。
〔7〕
前記ジスルフィド基含有リンカー又は前記チオール基含有リンカーの導入後、糖ペプチド誘導体を含む反応液を水溶性有機溶媒に添加して糖ペプチド誘導体を沈殿させる工程をさらに含む、〔5〕又は〔6〕に記載の製造方法。
〔8〕
前記水溶性有機溶媒が、炭素数1〜5のアルコール、エーテル、アセトニトリル及びアセトンからなる群から選択される少なくとも一種以上の溶媒である、〔7〕に記載の製造方法。
〔9〕
〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の糖ペプチド誘導体が、金表面に保持されている担体。
本実施の形態の糖ペプチド誘導体は、下記式(1)で表される糖ペプチド(配列番号1)のLys(リジン)残基の遊離アミノ基のうち、少なくとも一つの遊離アミノ基にジスルフィド基含有リンカー又はチオール基含有リンカーが結合する糖ペプチド誘導体である(以下、単に、「糖ペプチド誘導体」と記載する場合がある。)。
式(1):
アミノ酸は、L−アミノ酸であっても、D−アミノ酸であってもよく、ラセミ体などを含め、L−アミノ酸とD−アミノ酸の任意の比率の混合物であってもよいが、L−アミノ酸であることが好ましい。また、各アミノ酸は、各アミノ酸と等価な誘導体であってもよい。
すなわち、式(1)で表される糖ペプチドにおいて、Lys残基の遊離アミノ基は、下記構造における−NH2のいずれかとして存在している。
式(4):
式(5):
上記式で示されているように、糖ペプチド誘導体の糖鎖は、11個の糖残基からなる2分岐複合型糖鎖であり、2ヶ所の非還元末端にシアル酸を有する。
ジスフフィド基含有リンカー又はチオール基含有リンカーとしては、遊離アミノ基と結合し得る部分を有し、且つ、ジスルフィド基又はチオール基を有するリンカーであり得る。遊離アミノ基と結合し得る部分と、ジスルフィド基又はチオール基とが、リンカー内に存在していれば特に限定されるものでもないが、原子数として、1〜20個の原子分離れて存在していることが好適である。
ジスルフィド基含有リンカー又はチオール基含有リンカーは、リンカー全体として、炭素数2〜20、好ましくは、炭素数12以下のリンカーであることが好適である。
また、ジスルフィド基含有リンカーとチオール基含有リンカーは、遊離アミノ基と、特に限定されないが、アミド結合、C−N結合、カーバメート結合などのNの公知の共有結合により結合していることが好ましく、アミド結合であることが好ましい。アミド結合の場合、遊離アミノ基と結合し得る部分とは、C=O基が該当する。
式(2):
チオール基含有リンカーとしては、下記式(3)で表されるリンカーであることが好ましい。
式(3):
また、式(3)において、R1が炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、若しくは炭素数2〜5のアルカノイル基である場合には、保護チオール基含有リンカーを意味する。炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルキルチオ基、若しくは炭素数2〜5のアルカノイル基は、ハロゲンで置換されていてもよい。R1としては、チオールに対する保護基である公知の基であってよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、アセチル基、ピバロイル基、トリクロロアセチル基が挙げられる。
式(2):
各構造におけるRは、同一であっても、異なっていてもよい。
本実施の形態の糖ペプチド誘導体の製造方法は、ジスルフィド基含有リンカー又はチオール基含有リンカーを糖ペプチドのリジン残基の遊離アミノ基に導入する導入工程を含む。
導入工程により、ジスルフィド基含有リンカー又はチオール基含有リンカーが糖ペプチドに導入され、糖ペプチド誘導体を得ることができる。
ジスルフィド基含有リンカー又はチオール基含有リンカーを導入するとは、遊離アミノ基とジスルフィド基含有リンカー又はチオール基含有リンカーが結合することを意味する。
斯かる製造方法によれば、抽出工程、沈殿工程、及び脱塩工程により、鳥類卵脱脂卵黄より工業的規模で選択的に、安価且つ簡便に糖ペプチドを精製することができるので、これにジスルフィド基含有リンカー又はチオール基含有リンカーを導入して、安価且つ簡便に糖ペプチド誘導体を製造することができる。
抽出工程とは、鳥類卵脱脂卵黄を、水又は塩溶液に懸濁し、糖ペプチドの混合物などを抽出して、糖ペプチドの粗精製物である抽出液を得る工程である。なお、ここでいう糖ペプチドは、本実施の形態の11糖の2分岐複合型糖鎖以外を含む糖ペプチド以外の糖ペプチドも含む。
鳥類卵脱脂卵黄としては、市販の脱脂卵黄を用いてもよく、鳥類卵から調製した鳥類卵脱脂卵黄を用いてもよい。
鳥類卵としては、特に限定されるものではないが、例えば、ニワトリ、ウズラ、アヒル、カモ、ダチョウ、及びハトなどの卵が挙げられ、卵黄内に含まれる糖ペプチドの量が多いので、鶏卵などが好ましい。
鳥類卵としては、生の卵であってもよく、乾燥して得られる卵の乾燥粉末であってもよく、鶏卵卵黄又は鶏卵卵黄粉末などを用いることが好ましい。
脱脂処理する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、鳥類卵に有機溶媒を添加して、沈殿物と有機溶媒層を分離する方法などが挙げられる。
脱脂処理に用いられる有機溶媒としては、アセトン、メタノール、エタノール、及び2−プロパノールなどが挙げられ、これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶媒として用いてもよい。
脱脂処理において、鳥類卵に添加する有機溶媒の量としては、特に限定されるものではないが、鳥類卵に対して、質量で1〜5倍の有機溶媒を用いることにより脱脂処理を行うことができる。
また、脱脂処理を行う温度としては、特に限定されるものではないが、0〜25℃で行うことができる。
有機溶媒と沈殿物とを分離する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、2,000〜10,000rpmで5〜30分遠心分離してもよい。
有機溶媒を用いた脱脂処理は、2〜6回行うことが好ましい。
塩溶液の濃度は、0.0001〜2.0%(w/v)であってもよく、鳥類卵脱脂卵黄に添加する水又は塩溶液の量は、特に限定されるものではないが、鳥類卵脱脂卵黄に対して、質量で、0.1〜50倍の水又は塩溶液を用いることができる。
また、糖ペプチドの抽出を行う温度は、特に限定されるものではないが、4〜25℃で行うことができる。糖ペプチドの抽出を行うpHは、特に限定されるものではないが、pH5〜pH9で行うことができる。
水又は塩溶液で抽出した糖ペプチドを含有する抽出液と鳥類卵脱脂卵黄とを分離する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、2,000〜10,000rpmで5〜30分遠心分離してもよい。
水又は塩溶液を用いた抽出処理は、2〜6回行うことが好ましい。
抽出工程は、水を用いて行うことが好ましい。
沈殿工程とは、抽出工程で得られた、糖ペプチドを含む抽出液を水溶性有機溶媒に添加することにより、抽出液を濃縮するだけでなく精製度の向上した糖ペプチドを沈殿物として得る工程である。沈殿工程においては、抽出液に水溶性有機溶媒を添加して粗精製物として、沈殿物を沈殿させてもよい。
本実施の形態において、水溶性有機溶媒とは、水と相溶性を有する有機溶媒であれば特に限定されないが、例えば、水と相溶性を有する炭素数1〜5の有機溶媒などが挙げられる。炭素数1〜5の有機溶媒とは、溶媒分子中の炭素数が1〜5であることを意味する。
該溶媒として、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール系、又はジエチルエーテル、ジオキサン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル系、アセトニトリル等のニトリル系、アセトン等のケトン系、ジメチルホルムアミド等のアミド系、及びジメチルスルホキシド等のスルホキシド系からなる群から選択される溶媒が挙げられる。これら低分子量溶媒は、1種で用いてもよく、2種以上の混合溶媒として用いてもよい。
水溶性有機溶媒としては、炭素数1〜5のアルコールであることが好ましく、沈殿工程において、水溶性有機溶媒がアルコールである場合、該沈殿工程は、抽出液をアルコールに添加してアルコール沈殿する工程(以下、「アルコール沈殿工程」と記載する場合がある。)であり、抽出工程で得られた、糖ペプチドを含有する抽出液をアルコールに添加することにより、抽出液を濃縮するだけでなく精製度の向上した糖ペプチドを沈殿物として得るアルコール沈殿工程である。
本実施の形態において、アルコール沈殿工程において用いるアルコールは1種類であってもよいし、アルコールの混合物又は他の溶媒との混合物であってもよい。
アルコール溶媒が混合物である場合、例えば、メタノール又は2−プロパノールをエタノールに対し0.01〜50%添加した混合溶媒を用いてもよい。また、エタノールに対しアセトン、アセトニトリル又はジエチルエーテルを0.01〜50%添加した混合溶媒を用いてもよい。
得られた糖ペプチドを含む沈殿物を、水又は塩溶液に溶解し、再度アルコール沈殿工程を行うことにより、より精製された沈殿物を得ることができる。
脱塩工程とは、沈殿工程で得られた糖ペプチドを含有する沈殿物から塩を除去する工程である。
脱塩工程は、脱塩方法として知られた種々の公知の方法で行うことができるが、例えば、イオン交換樹脂、イオン交換膜、ゲルろ過、透析膜、限外ろ過膜又は逆浸透膜などを用いて脱塩することも可能である。脱塩工程としては、例えば、沈殿工程で得られた沈殿物を樹脂に保持させて水で洗浄することにより脱塩することもできる。
また、樹脂としては、逆相分配クロマトグラフィー充填用樹脂等が挙げられ、逆相分配クロマトグラフィー充填用樹脂とは、シリカゲル系、ポリマー系を代表的とする樹脂を意味しポリ(スチレン/ジビニルベンゼン)ポリマーゲル樹脂、ポリスチレン−ジビニルベンゼン樹脂、ポリヒドロキシメタクリレート樹脂、スチレンビニルベンゼン共重合体樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリレート樹脂、化学結合型シリカゲル樹脂などが挙げられる。
化学結合型シリカゲル樹脂とは、例えば、多孔性シリカゲルにジメチルオクタデシルクロロシランの様なシランカップリング剤を反応させて製造するODS樹脂などが挙げられ、シリカゲルに対し、同様の手法で異なるシリル化剤を用いることで、オクタデシル、ジメチルオクタデシル、メチルオクタデシル、ジメチルオクチル、オクチル、フェニル、シアノプロピル、アミノプロピル基からなる群から選択される基を化学結合させることで得られる樹脂等も挙げられる。又は炭素数22のドコシル基又は炭素数30のトリアコンチル基を結合して得られる樹脂であってもよい。
溶出工程では、例えば、糖ペプチドを保持させたODS樹脂などのシリカゲル樹脂に対し、質量で1〜50倍の有機溶媒水溶液を用いて樹脂から溶出させることができる。また水洗浄の工程では、糖ペプチドができるだけ、水と共に流出せず、有機溶媒水溶液による溶出工程によって溶出することが好ましい。
溶出工程に用いる有機溶媒は、例えば、アセトニトリル、メタノール、及びエタノールからなる群から選択される少なくとも1種を含有するものが挙げられる。有機溶媒水溶液の濃度は0.1〜20%(v/v)であり、好ましくは0.5〜20%(v/v)であり、より好ましくは10%(v/v)以下、さらに好ましくは5%(v/v)以下である。
有機溶媒水溶液により糖ペプチドを溶出する工程においては、水から徐々に濃度を上げていき、有機溶媒水溶液である溶出液にグラジエントをかけて溶出を行ってもよい。
斯かる脱塩工程としては、例えば、限外ろ過膜又は逆浸透膜を用いることで沈殿物の脱塩を行うことができる。
脱塩工程に用いる膜としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン、芳香族ポリアミド、酢酸セルロース、ポリビニルアルコールを構成基材とする平膜又は中空糸膜、スパイラル膜又はチューブラー膜であってもよい。さらにはイオン交換樹脂、イオン交換膜、ゲルろ過、透析膜、限外ろ過膜又は逆浸透膜で脱塩することも可能である。
糖ペプチドを添加して保持させたシリカゲル樹脂に対し、質量で、1〜50倍の水を用いて樹脂を洗浄することにより糖ペプチドの脱塩を行うことができる。
本実施の形態において、得られた糖ペプチドは、再度アルコール沈殿工程又は脱塩工程を行ってさらに精製してもよい。
導入工程とは、ジスルフィド基含有リンカー又はチオール基含有リンカーを糖ペプチドのペプチド部分に存在する3個の遊離アミノ基のうちのいずれか1個の遊離アミノ基に導入する工程をいう。用いるジスルフィド基含有リンカー又はチオール基含有リンカーの量、反応液のpH、反応時間、反応温度などの反応条件を選択することにより、3個の遊離アミノ基に対しジスルフィド基含有リンカー又はチオール基含有リンカーを遊離アミノ基の1〜3ヶ所に導入することができる。ジスルフィド基含有リンカー又はチオール基含有リンカーの増加による金表面との反応性向上のために、ジスルフィド基含有リンカー又はチオール基含有リンカーは好ましくは2ヶ所、より好ましくは3ヶ所全ての遊離アミノ基に導入することが好ましい。
ジスルフィド基含有リンカー又はチオール基含有リンカーは、上述した本実施の形態の糖ペプチド誘導体について挙げたものを使用することができる。
例えば、式(2)又は式(3)で表されるリンカーのカルボン酸の、N−ヒドロキシコハク酸イミド、ニトロフェノール、又はペンタフルオロフェノールなどの活性エステルを用いて、必要に応じて、当該活性エステルを溶解できるアセトン、アセトニトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒と水との混合溶媒中で、有機アミンなどの有機塩基、炭酸水素ナトリウム、リン酸緩衝液又は炭酸緩衝液などの無機塩基の存在下、氷冷下もしくは室温下で15分〜1日、糖ペプチドと反応させてもよい。
式(2)又は式(3)で表されるリンカーのN−ヒドロキシコハク酸イミドの活性エステルを例示すると、下記式(6)で表される活性エステルであることが挙げられる。
式(6):
糖ペプチド誘導体を製造する際に、添加するジスルフィド基又はチオール基含有リンカーを糖ペプチドの遊離アミノ基(糖ペプチド1モルあたり3モルの遊離アミノ基を有する)に対して過剰量、例えば総アミノ基のモル数に対して1.1倍から5倍のモル数のジスルフィド基又はチオール基含有リンカーを添加することで、糖ペプチドの全アミノ基にジスルフィド基又はチオール基含有リンカーを導入することができる。
必要に応じて炭素数1〜5のアルコール、アセトン、アセトニトリル又はジエチルエーテル(エーテル)等を添加したアルコール沈殿工程及び必要に応じて脱塩工程を組み合わせて、糖ペプチド誘導体を精製してもよい。
脱塩を行った後に、有機溶媒水溶液により溶出することにより精製された糖ペプチド誘導体を得ることができる。
該担体の一態様として、本実施の形態の糖ペプチド誘導体は、例えば、緩衝液中で表面に金を有する支持体と接触させることで固定化することが容易であり、シアル酸含有糖鎖を固定化した金粒子を容易に製造することができ、この粒子を用いてウイルス種の判別やウイルスの濃縮ができるので有用である。
1)糖ペプチドの分析例
カラム(Cadenza CD−C18 (Imtakt、150×2mm)を備えたGLサイエンス製HPLC GL−7400システムを用いて、以下の測定条件によりHPLC分析を行った。
測定条件(製造例1):
グラジエント;2%→17%(15min)、CH3CN in aqueous 0.1%TFA solution
流速;0.3mL/min
UV;214nm
測定条件(製造例2):
グラジエント;2%→17%(15min)→90%(20min)、CH3CN in aqueous 0.1%TFA solution
流速;0.3mL/min
UV;214nm
測定条件:
グラジエント;20%→100%(20min)、CH3CN in aqueous 0.1%TFA solution
流速;0.3mL/min
UV;214nm
糖ペプチドの分析例
D2O 0.4mLに試料 2mgを溶解して、JEOL製JNM−600(600MHz)で1H−NMRを測定した。
以下の測定条件でLC/MS測定を行った。用いたLC及びMSのシステムは以下のとおりである。
ジスルフィド基含有リンカー又はチオール基含有リンカーが導入された糖ペプチド誘導体の分析例
LC:アジレント製1100シリーズ
カラム:Cadenza CD−C18 (Imtakt、150×2mm)
カラム温度:40℃
流速;0.2mL/min
UV:214nm
グラジエント;2%→100%(30min)、CH3CN in aqueous 0.05%Formic acid solution
MS:サーモエレクトロン製LCQ
イオン化:ESI
モード:Positive、Negative
鶏卵卵黄10個にエタノール350mLを添加し、よく撹拌した。8,000rpmで20分遠心分離し、デカンテーションにより上清を除去することで沈殿物を得た。得られた沈殿物にエタノール300mLを添加し、よく撹拌後、遠心分離し、上清を除去する操作を3回繰り返して、沈殿物として脱脂卵黄150gを得た。
得られた脱脂卵黄150gに水200mLを添加し、よく撹拌した。8,000rpmで20分遠心分離し、デカンテーションにより上清を得た。デカンテーションにより得られた沈殿物に水100mLを添加し、よく撹拌後、遠心分離し、上清を回収する操作を3回繰り返した。回収した上清をグラスフィルターにて濾過後、100mLまで減圧濃縮した。その後、得られた濃縮溶液をエタノール700mLに注加し、生じた沈殿物を、8,000rpmで20分遠心分離し、デカンテーションにより上清を除去することで回収した。得られた沈殿物を水に溶解し、再度エタノールに注加した。この操作を3回繰り返した。ここで生じた沈殿物を回収することで粗精製糖ペプチド1.58gを得た。
ODS樹脂としてシリカゲル樹脂Wakogel(100C18)25gをガラスカラムに充填し、該樹脂をメタノールで洗浄後、水で置換した。粗精製糖ペプチド1.5gを水5mLに溶解し水で置換後の樹脂に添加した。粗精製糖ペプチドを添加した樹脂を水100mLで洗浄後、2%アセトニトリル水溶液で糖ペプチドを溶出した。溶出液を凍結乾燥することで117mgの糖ペプチドを得た。
得られた糖ペプチドのHPLC及び1H−NMRによる測定結果をそれぞれ図1及び2に示す。HPLCによる純度では95%であった。得られた糖ペプチドは標品(東京化成製)との比較により上記式(4)で表される構造であることが分かった。
ODS樹脂としてシリカゲル樹脂Wakogel(100C18)25gをガラスカラムに充填し、該樹脂をメタノールで洗浄後、水で置換した。得られた糖ペプチド50mgを水1mLに溶解し水で置換後の樹脂に再度添加した。糖ペプチドを添加した樹脂を水100mLで洗浄後、2%アセトニトリル水溶液で糖ペプチドを溶出した。溶出液を凍結乾燥することで30mgの糖ペプチドを得た。
得られた糖ペプチドのHPLCによる測定結果を図3に示す。HPLCによる純度では99%であった。
脱脂卵黄粉末(キューピー製)200gに蒸留水500mLを添加し、よく撹拌した。6,000rpmで20分遠心分離し、デカンテーションにより上清を得た。デカンテーションにより得られた沈殿物に水300mLを添加し、よく撹拌後、遠心分離し、上清を回収する操作を3回繰り返した。回収した上清を更に6,000rpmで20分遠心分離し、上清を回収しその後、200mLまで減圧濃縮した。その後、得られた濃縮溶液をエタノール1.3Lに注加し、生じた沈殿物を、6,000rpmで20分遠心分離し、デカンテーションにより上清を除去することで回収した。得られた沈殿物を水300mLに溶解し、再度エタノール1.5Lに注加した。この操作を3回繰り返した。ここで生じた沈殿物を回収することで粗精製糖ペプチド2.5gを得た。
ODS樹脂としてシリカゲル樹脂Wakogel(100C18)100gをガラスカラムに充填し、該樹脂をメタノールで洗浄後、水で置換した。粗精製糖ペプチド2.5gを水20mLに溶解し水で置換後の樹脂に添加した。粗精製糖ペプチドを添加した樹脂を水200mLで洗浄後、2%アセトニトリル水溶液で糖ペプチドを溶出した。溶出液を凍結乾燥することで200mgの糖ペプチドを得た。
得られた糖ペプチドのHPLCによる測定結果を図4に示す。HPLCによる純度では95%であった。得られた糖ペプチドは標品(東京化成製)との比較により上記式(4)で表される構造であることが分かった。
438mgの(R)−(+)−1,2−Dithilane−3−pentanoic acid(アルドリッチ製)をジメチルホルムアミド14mLに溶解し、20mgのN,N−ジメチルアミノピリジン、406mgの水溶性カルボジイミド、293mgのN−ヒドロキシコハク酸イミドを加え室温で6時間攪拌した。反応液を減圧下で濃縮後、20mLの酢酸エチルを添加し、有機溶媒層を10%(w/w)クエン酸水溶液、飽和食塩水、飽和重曹水、飽和食塩水の順で洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥し、その後減圧留去することで(R)−(+)−1,2−Dithilane−3−pentanoic acidの粗精製コハク酸イミドエステル323mgを得た。
続いて、製造例2で得られた糖ペプチド12mgを水−ジメチルホルムアミド(2/1:体積比)2mLに加え、さらに0.2mLの1M重曹水を加えた。その後26mgの(R)−(+)−1,2−Dithilane−3−pentanoic acidの粗精製コハク酸イミドエステルを加え12時間反応を行った。反応溶液にエタノール−アセトン(1/1:体積比)10mLを加えジスルフィド基含有リンカーとして、(R)−(+)−1,2−Dithilane−3−pentanoic acidが導入された粗精製糖ペプチド誘導体を沈殿させた。8,000rpmで5分遠心分離し、デカンテーションにより上清を除去することで沈殿を回収した。得られた沈殿物を水に溶解し、再度エタノール−アセトン(1/1:体積比)10mLに注加した。この操作を3回繰り返した。ここで生じた沈殿物を回収することで糖ペプチド誘導体10mgを得た。
得られた糖ペプチド誘導体のHPLCによる測定結果を図5に示す。反応生成物についてLC/MS測定を行った。その結果、11.4分に検出されるピークは検出イオンが1715.4([M+2H]2+)及び1713.5([M−2H]2−)であることから推定分子量3428.9であり、糖ペプチドの3個のアミノ基に3個のジスルフィド基含有リンカーが導入された化合物であることが推定された。
1031mgの(±)−α−Lipoic acid(シグマ製)をジメチルホルムアミド14mLに溶解し、20mgのN,N−ジメチルアミノピリジン、958mgの水溶性カルボジイミド、690mgのN−ヒドロキシコハク酸イミドを加え室温で6時間攪拌した。反応液を減圧下で濃縮後、20mLの酢酸エチルを添加し、有機溶媒層を10%(w/w)クエン酸水溶液、飽和食塩水、飽和重曹水、飽和食塩水の順で洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥し、その後減圧留去することで(±)−α−Lipoic acidの粗精製コハク酸イミドエステル200mgを得た。
続いて、製造例2で得られた糖ペプチド14mgを水−ジメチルホルムアミド(2/1:体積比)3mLに加え、さらに0.1mLの1M重曹水を加えた。その後23mgの(±)−α−Lipoic acidの粗精製コハク酸イミドエステルを加え18時間反応を行い、エタノール−アセトン(1/1:体積比)10mLを加えジスルフィド基含有リンカーとして、(±)−α−Lipoic acidが導入された粗精製糖ペプチド誘導体を沈殿させた。8,000rpmで5分遠心分離し、デカンテーションにより上清を除去することで沈殿を回収した。得られた沈殿物を水に溶解し、再度エタノール−アセトン(1/1:体積比)10mLに注加した。この操作を3回繰り返した。ここで生じた沈殿物を回収することで糖ペプチド誘導体12.7mgを得た。
得られた糖ペプチド誘導体のHPLCによる測定結果を図6に示す。反応生成物についてLC/MS測定を行った。その結果、12.8分に検出されるピークは検出イオンが1715.4([M+2H]2+)及び1713.5([M−2H]2−)であることから推定分子量3428.9であり、糖ペプチドの3個のアミノ基に3個のジスルフィド基含有リンカーが導入された化合物であることが推定された。
951mgの6−Acethylthiohexanoic acid(アルドリッチ製)をジメチルホルムアミド7mLに溶解し、20mgのN,N−ジメチルアミノピリジン、1150mgの水溶性カルボジイミド、575mgのN−ヒドロキシコハク酸イミドを加え室温で6時間攪拌した。反応液を減圧下で濃縮後、20mLの酢酸エチルを添加し、有機溶媒層を10%(w/w)クエン酸水溶液、飽和食塩水、飽和重曹水、飽和食塩水の順で洗浄し、硫酸マグネシウムにより乾燥し、その後減圧留去することで6−Acethylthiohexanoic acidの粗精製コハク酸イミドエステル1200mgを得た。
続いて、で得られた糖ペプチド16mgを水−ジメチルホルムアミド(2/1:体積比)3mLに加え、さらに0.1mLの1M重曹水を加えた。その後11mgの6−Acethylthiohexanoic acidの粗精製コハク酸イミドエステルを加え18時間反応を行い、エタノール−アセトン(1/1:体積比)10mLを加えアセチルチオ基含有リンカーとして、6−Acethylthiohexanoic acidが導入された粗精製糖ペプチド誘導体を沈殿させた。8,000rpmで5分遠心分離し、デカンテーションにより上清を除去することで沈殿を回収した。得られた沈殿物を水に溶解し、再度エタノール−アセトン(1/1:体積比)10mLに注加した。この操作を3回繰り返した。ここで生じた沈殿物を回収することで糖ペプチド誘導体16.4mgを得た。
得られた糖ペプチド誘導体のHPLCによる測定結果を図7に示す。反応生成物についてLC/MS測定を行った。その結果、11.3分に検出されるピークは検出イオンが1691.4([M+2H]2+)及び1689.6([M−2H]2−)であることから推定分子量3381.0であり、糖ペプチドの3個のアミノ基に3個のアセチルチオ基が導入された化合物であることが推定された。
金粒子としてブリティッシュ バイオセル インターナショナル(British Biocell International, Ltd.)製のGold Colloid,20nm(EMGC20)を用いた。実施例1で得られた糖ペプチド誘導体0.63mgを630μLの水に溶解しその後EMGC20溶液630μLに加え4℃で終夜静置した。その後各サンプルの入ったチューブを12,000rpmで10分間遠心することで金粒子を沈殿させ上清を除去した。その後沈殿に500μLの水を加え撹拌し、12,000rpmで10分間遠心し、さらに上清を除去することで金粒子を洗浄した。この操作を3回繰り返した。
沈殿した金粒子に対し、PBSで希釈した生化学バイオビジネス製Biotin−SSA(Sambucus sieboldiana)の10μg/mL溶液を500μL加え4℃で終夜静置した。比較対象として水500μLを同一金粒子に加え4℃で終夜静置したものを用意した。その後各サンプルの入ったチューブを12,000rpmで10分間遠心することで糖ペプチド−Biotin−SSAが結合した金粒子を沈殿させ上清を除去した。その後沈殿に500μLのPBSを加え撹拌し、12,000rpmで10分間遠心し、さらに上清を除去することで金粒子を洗浄した。この操作を3回繰り返した。
次に生化学バイオビジネス製HRP標識ストレプトアビジンを10%グリセリン−PBS溶液により溶解し1mg/mL溶液を調製した。この溶液をPBSにて15000倍に希釈したものを金粒子に対し500μL加え撹拌しその後4℃で終夜静置した。その後各サンプルの入ったチューブを12,000rpmで10分間遠心することで金−糖ペプチド−SSA−biotin−avidin−HRPの順で結合した金粒子を沈殿させ上清を除去した。その後沈殿に500μLのPBSを加え撹拌し、12,000rpmで10分間遠心し、さらに上清を除去することで金粒子を洗浄した。この操作を3回繰り返した。
この金粒子に対しクエン酸リン酸緩衝液、オルトフェニレンジアミン(OPD)及び過酸化水素水を加えて調製した発色基質溶液200μLを加え発色させ、その後1N HClを200μL添加することで反応を停止させ、12,000rpmで3分間遠心し、上清を96穴プレートに移し、プレートリーダーにて490nmにおける吸光度を測定した。その結果を図8に示す。
その結果、実施例1で得られた糖ペプチド誘導体を金粒子と反応させた群は、比較対照群に比べて有意にSSAとの結合能が高いことが確認された。このことから糖ペプチド誘導体と結合した金粒子はその特異性がNeu5Ac(α2−6)Gal/GalNAcであると報告されているレクチンSSA(Sambucus sieboldiana)と結合している可能性が示唆された。
実施例4と同様に、金粒子としてブリティッシュバイオセルインターナショナル(British Biocell International, Ltd.)製のGold Colloid,20nm(EMGC20)を用いて、実施例4と同様の手法により、実施例1の糖ペプチド誘導体が結合した金粒子を製造した。
沈殿した金粒子に対し、PBSで希釈したアブカム(abcam)製Recombinant Influenza A virus Hemagglutinin H1 protein(HAと表記する)の5μg/mL溶液を500μL加え4℃で終夜静置した。比較対象として水500μLを同一金粒子に加え4℃で終夜静置したものを用意した。その後各サンプルの入ったチューブを12,000rpmで5分間遠心することで糖ペプチド−HAが結合した金粒子を沈殿させ上清を除去した。その後沈殿に500μLのPBSを加え撹拌し、12,000rpmで5分間遠心し、さらに上清を除去することで金粒子を洗浄した。この操作を4回繰り返した。
沈殿した金粒子に対し、アブカム(abcam)製の抗HA−マウスIgGモノクローナル抗体50μg/mL溶液を250μL加え4℃で終夜静置した。その後各サンプルの入ったチューブを12,000rpmで5分間遠心することで糖ペプチド−HA−抗HAマウス抗体が結合した金粒子を沈殿させ上清を除去した。その後沈殿に500μLのPBSを加え撹拌し、12,000rpmで5分間遠心し、さらに上清を除去することで金粒子を洗浄した。この操作を4回繰り返した。
沈殿した金粒子に対し、HRP標識抗マウスIgG−ウサギポリクローナル抗体0.25μg/mL溶液を各チューブに450μL加え4℃で終夜静置した。その後各サンプルの入ったチューブを12,000rpmで5分間遠心することで糖ペプチド−HA−抗HAマウス抗体−抗マウス抗体ウサギ抗体−HRPが結合した金粒子を沈殿させ上清を除去した。その後沈殿に500μLのPBSを加え撹拌し、12,000rpmで5分間遠心し、さらに上清を除去することで金粒子を洗浄した。この操作を4回繰り返した。
この金粒子に対しクエン酸リン酸緩衝液、オルトフェニレンジアミン(OPD)及び過酸化水素水を加えて調製した発色基質溶液200μLを加え発色させ、その後1N HClを200μL添加することで反応を停止させ、12,000rpmで3分間遠心し、上清を96穴プレートに移し、プレートリーダーにて490nmにおける吸光度を測定した。その結果を図9に示す。
その結果、実施例1で得られたジスルフィド基含有リンカー導入糖ペプチド誘導体を金粒子と反応させた群は、HAとの結合に関して、比較対照群に比べて有意に結合能が高いことが確認された。このことからジスルフィド基含有リンカー導入糖ペプチド誘導体と結合した金粒子はヒト型インフルエンザAウイルスと結合している可能性が示唆された。
Claims (8)
- 下記式(1)で表される糖ペプチドのLys(リジン)残基の遊離アミノ基のうち、少なくとも一つの遊離アミノ基にジスルフィド基含有リンカー又はチオール基含有リンカーが結合する糖ペプチド誘導体であって、
式(1):
式(2):
式(3):
- 前記遊離アミノ基のすべてに前記ジスルフィド基含有リンカー又は前記チオール基含有リンカーが結合する、請求項1に記載の糖ペプチド誘導体。
- 前記糖ペプチドが、下記式(4)で表される構造である、請求項1又は請求項2に記載の糖ペプチド誘導体。
式(4):
- 前記ジスルフィド基含有リンカー又は前記チオール基含有リンカーを前記遊離アミノ基に導入して糖ペプチド誘導体を得る導入工程を含む、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の糖ペプチド誘導体の製造方法。
- 鳥類卵脱脂卵黄を水又は塩溶液で抽出して糖ペプチドを含む抽出液を得る抽出工程、前記抽出液からアルコール沈殿させて、糖ペプチドを含む沈殿物を得る沈澱工程、前記沈殿物を脱塩して、糖ペプチドを得る脱塩工程、前記ジスルフィド基含有リンカー又は前記チオール基含有リンカーを前記遊離アミノ基に導入して糖ペプチド誘導体を得る導入工程を含む、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の糖ペプチド誘導体の製造方法。
- 前記ジスルフィド基含有リンカー又は前記チオール基含有リンカーの導入後、糖ペプチド誘導体を含む反応液を水溶性有機溶媒に添加して糖ペプチド誘導体を沈殿させる工程をさらに含む、請求項4又は請求項5に記載の製造方法。
- 前記水溶性有機溶媒が、炭素数1〜5のアルコール、エーテル、アセトニトリル及びアセトンからなる群から選択される少なくとも一種以上の溶媒である、請求項6に記載の製造方法。
- 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の糖ペプチド誘導体が、金表面に保持されている担体。
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