JP5610359B2 - 銀鏡膜層形成組成液、銀鏡膜層形成組成液の製造方法及び銀鏡膜塗面の形成方法 - Google Patents

銀鏡膜層形成組成液、銀鏡膜層形成組成液の製造方法及び銀鏡膜塗面の形成方法 Download PDF

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本発明は、低い温度で、高品質の銀鏡膜層を形成することができる銀鏡膜層形成組成液、そのような銀鏡膜層形成組成液の製造方法、及び、そのような銀鏡膜層形成組成液を用いた銀鏡膜塗面の形成方法に関する。
銀(Ag)は、光の反射率が可視領域において高く、美しい金属光沢を有している。樹脂等の基材上に銀鏡膜層を形成すると、樹脂基材は銀鏡膜層が形成された部分が美しい金属光沢を呈するので、自動車の内装部品や外装部品、携帯電話、ノートパソコン、化粧品容器等に施すことが期待される。
従来、基材に銀鏡膜層を形成する際には、トレンス試薬を用いた銀鏡反応を利用した銀鏡メッキが行なわれている。このトレンス試薬を用いた銀鏡反応は、例えば以下の反応に基づくものである。
硝酸銀水溶液にアンモニア水を加えると、酸化銀の沈殿が生じる(反応式(1))。
2Ag+2OH → AgO+HO ・・・(1)
この水溶液にアンモニア水を過剰に添加すると、酸化銀が溶解して透明なアンモニア性硝酸銀水溶液(トレンス試薬)が得られる(反応式(2))。
AgO+4NH+HO → 2[Ag(NH+2OH ・・・(2)
このトレンス試薬中にアルデヒド基(−CHO)を持つ化合物を含有する水溶液(例えば糖(RCHO)のアルカリ性水溶液)を添加して穏やかに加熱すると、銀アンモニア錯イオンが還元されて、銀が析出する(反応式(3))。
RCHO+2[Ag(NH+2OH
→ RCOOH+2Ag+4NH+HO ・・・(3)
また、自動車は、自動車の主材料(ほとんどの場合は、鋼板)の保護と、自動車の美観の向上を目的として、塗装が施されている。同一形状、同一性能の自動車を比べると、美しく塗装された車の方が良く見え、商品としての価値が向上する。メタリック塗装は、金属的な質感に高級感があり、車の外観を見た際に、車を見る角度によって色相が異なって見え、車の形状にメリハリを与えることができるので、車の塗装として人気がある。車のメタリック塗装は、光輝材としてアルミフレークが多く使用されている。このようなメタリック塗装は他の製品おいても採用されており、高級品では光輝材ないし鏡膜として銀の使用が検討されている。
光輝材ないし鏡膜としての銀に関しては、例えば特許文献1(特開2006−332051号公報)には、AgNO等の銀金属前駆体をアミン系化合物と混合した混合物と、分散剤によってキャッピングされた銀金属ナノ粒子とを有機溶媒にて混合した導電性インクが開示されている。この導電性インクは、低い焼成温度、高い分散安定性および優れた導電性を有している。
同じく、特許文献2(特開2006−219693号公報)には、粉末状の酸化銀(I)に含まれる銀原子1モル量あたり、脂肪酸一種以上を、そのカルボキシ基の総和が0.05〜1.0モル量となる量と、液状のアミン系化合物を、アミノ窒素原子の総和が0.8〜3.0モル量となる量とを添加し、酸化銀分散混合物とした上で、撹拌、加熱することにより、脂肪酸とアミン系化合物を含む液相中において、還元により生成する銀原子からなる、平均粒子径3〜20nmの金属銀微粒子を形成させる方法が開示されている。この方法により製造される金属銀微粒子は、表面が前記アミン系化合物がそのアミノ窒素原子上に存在する孤立電子対を利用して配位的な結合を介して被覆されており、特に導電性金属ペースト、触媒など、種々の分野において利用可能となる。
また、特許文献3(特開2010−265543号公報)には、加熱により分解して金属銀を生成する銀化合物と、アルキルアミン、アルキルジアミンとを混合して錯化合物とし、これを加熱することにより前記銀化合物を熱分解することにより調製された被覆銀超微粒子が開示されている、この被覆銀超微粒子は、粒子径が30nm以下の、保護分子アミンにより覆われた被覆銀超微粒子であって、熱質量測定において160℃の温度における質量減少率が30%以上であり、100℃以下の温度において1時間以下で焼結して銀色の焼結膜となるものであり、耐熱性の低いフレキシブルプリント基材でも使用できる低温焼結可能な導電性形成材料として有用なものである。
また、特許文献4(特表2009−535661号公報)には、下記化学式1の1つ以上の銀化合物と、下記化学式2ないし化学式4から選択される1種又は2種以上のアンモニウムカルバメート系又はアンモニウムカーボネート系化合物とを反応して得られる銀錯体化合物を含有することを特徴とする反射膜コーティング液組成物が開示されている。
(式中、Xは、酸素、硫黄、ハロゲン、シアノ、シアネート、カーボネート、ニトレート、ニトライト、サルフェート、ホスフェート、チオシアネート、クロレート、パークロレート、テトラフルオロボレート、アセチルアセトネート、カルボキシレート、及びこれらの誘導体から選択される置換基であり、nは、1〜4の整数であって、R1乃至R6は、互いに独立して、水素、C1〜C30の脂肪族や脂環族アルキル基、アリール基又はアラルキル(aralkyl)基、官能基が置換されたアルキル及びアリール基、ヘテロ環化合物基と高分子化合物及びその誘導体から選択される置換基であって、但し、R1〜R6が全て水素である場合は除く。)
この反射膜コーティング液組成物の発明によれば、プラスチック、セラミック、金属などの反射基材の照度を高めて、反射面の付着力を増進させる下塗りコーティング面を形成した後、これに上記の銀コーティング液を塗布し、高反射反射面を形成して、銀鏡面の保護のために透明コーティングをすることにより、反射率の高い反射膜を製造することができるようになる。
また、特許文献5(特表2010−500475号公報)には、上記化学式1の1つ以上の銀化合物と、上記化学式2ないし化学式4から選択される1種又は2種以上のアンモニウムカルバメート系又はアンモニウムカーボネート系化合物とを反応して得られる、銀ナノ粒子の製造方法及びこれにより製造される銀ナノ粒子を含む銀インク組成物が開示されている。
この銀ナノ粒子の製造方法によれば、簡単な製造工程により多様な形態の銀ナノ粒子を製造することができるだけではなく、銀ナノ粒子大きさの選択性を向上させることができ、また150℃以下の低い温度で短い時間焼成しても焼成が可能であり、塗膜厚の調節が容易でありながらも高い伝導度を示す塗膜又は微細パターンが形成できるインク組成物を提供して、反射膜材料、電磁波遮蔽剤、抗菌剤などに適用可能な銀インク組成物を提供することができるようになる
特開2006−332051号公報 特開2006−219693号公報 特開2010−265543号公報 特表2009−535661号公報 特表2010−500475号公報
従来のトレンス試薬による銀鏡反応を利用した銀鏡メッキは、銀鏡膜にメッキ特有の白亜化(白化又はシケともいう。)を生じたり、銀鏡膜にクラックが生じたり、銀鏡膜層の膜厚が均一にならなかったり、銀微粒子の凝集にばらつきがある等の原因により、銀鏡面の発色(金属光沢)にムラを生じたり、本来銀鏡メッキを施す必要がない部分が銀鏡メッキされてしまったりすることがあり、不良率が高いという問題や、形成した銀鏡面が基材等の表面から剥がれやすいという問題もある。
また、従来のトレンス試薬を用いた銀鏡反応を利用した銀鏡メッキにより基材等の表面に銀鏡膜面を形成するには、図5に示すように、多数の工程が必要であり、殆ど各工程終了毎に水洗工程を必要としており、そのために、製造工程が複雑になっており、製造工程面でも改善の余地がある。更には、吹き付け手段として二頭式の塗装用ガンが必要であり、設備面の負担が大きい。このため、トレンス試薬を用いた銀鏡塗装(銀鏡メッキ)は、ニーズとは裏腹に普及しているとはいえない。
また、上記特許文献4には、反射率の高い反射膜(銀鏡膜)を製造することができることが示されている。しかしながら、ここで使用している反射膜コーティング液組成物は、銀鏡膜を形成する際に、通常80〜400℃、好ましくは90〜300℃、より好ましくは100〜250℃で熱処理をする必要があり、薄膜の均一性のためには、例えば80〜150℃で1〜30分間処理して、150〜300℃で1〜30分間処理するという2段階以上の加熱処理が必要となる。そのため、例えば汎用性の高い熱可塑性樹脂でできた基材等に銀鏡膜層を形成するのが困難であるという問題がある。
なお、上記特許文献1、2、3及び5に開示されている発明は、何れも銀超微粒子を有する導電性インクに関するものであって、いわゆる銀鏡膜を直接形成する用途には適していない。
本発明者等は、基材の表面に形成した下塗り塗面層(多くの場合は、ウレタン樹脂又はアクリル−シリコーン樹脂等)との濡れ性に優れ、例えばスプレー塗装をすることができ、例えば汎用性の高い、熱可塑性樹脂でできた基材に、熱による変形を起こさせることが無く、低い温度(77℃以上90℃以下の温度範囲)で、均一な、反射率の高い銀鏡膜層を形成することができる、一液型の銀鏡膜層形成組成液の研究・開発を長年に亘って行なってきた。
その結果、本発明者等は、今般、以下の(1)〜(3)に示す事項を知見するに至り、その後、鋭意努力した結果、本発明を完成するに至ったのである。
(1)アルコール系溶媒中では、銀化合物の銀原子にアミン系化合物が配位した錯体は溶解せずに沈降するが、銀化合物の銀原子にアンモニウムカルバメート系化合物が配位した錯体は溶解する。
(2)銀化合物の銀原子にアンモニウムカルバメート系化合物が配位した錯体が溶解しているアルコール系溶液中に、銀化合物の銀原子にアミン系化合物が配位した錯体を添加すると、銀化合物の銀原子にアミン系化合物が配位した錯体は溶解する。
(3)銀化合物の銀原子にアンモニウムカルバメート系化合物が配位した錯体及び銀化合物の銀原子にアミン系化合物が配位した錯体がともに溶解しているアルコール系溶液は、還元剤を含有させることにより、低い温度(77℃以上90℃以下の温度範囲)で銀鏡膜を形成することができる銀鏡膜層形成組成液として使用し得る。
すなわち、本発明は、低い温度で、均一な、反射率の高い銀鏡膜層を形成することができる、銀化合物の銀原子にアンモニウムカルバメート系化合物が配位した錯体と銀化合物の銀原子にアミン系化合物が配位した錯体とを含む銀鏡膜層形成組成液、銀鏡膜層形成組成液の製造方法及びこの銀鏡膜形成組成液を用いた銀鏡膜塗面の形成方法を提供することを目的とする。
本発明の銀鏡膜層形成組成液は、
アルコール系溶媒中に、
銀化合物の銀原子にアンモニウムカルバメート系化合物が配位した第1の錯体と、
銀化合物の銀原子にアミン系化合物が配位した第2の錯体と、
還元剤と、
を含んでいる。
銀化合物の銀原子に配位するアンモニウムカルバメート系化合物としては、例えば上記特許文献4に例示されているアンモニウムカルバメート系化合物が挙げられ、以下のものが例示される。
エチルアンモニウム エチルカルバメート、
イソプロピルアンモニウム イソプロピルカルバメート、
n−ブチルアンモニウム n−ブチルカルバメート、
イソブチルアンモニウム イソブチルカルバメート、
t−ブチルアンモニウム t−ブチルカルバメート、
2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート、
オクタデシルアンモニウム オクタデシルカルバメート、
2−メトキシエチルアンモニウム 2−メトキシエチルカルバメート、
2−シアノエチルアンモニウム 2−シアノエチルカルバメート、
ジブチルアンモニウム ジブチルカルバメート、
ジオクタデシルアンモニウム ジオクタデシルカルバメート、
メチルデシルアンモニウム メチルデシルカルバメート、
ヘキサメチレンイミンアンモニウム ヘキサメチレンイミンカルバメート、
モルホリニウム モルホリンカルバメート、
ピリジウム エチルヘキシリカルバメート、
ベンジルアンモニウム ベンジルカルバメート、
トリエトキシシリルプロピルアンモニウム トリエトキシシリルプロピルカルバメート、
及びその誘導体から選択される1種又は2種以上の混合物。
これらのアンモニウムカルバメート系化合物は、例えばアミン系化合物を二酸化炭素と反応させることにより調製することができる。本発明の銀鏡膜層形成組成液においては、カルバメート化するアミン系化合物としては、1級アミン、2級アミンのいずれでも良いが、銀化合物の銀原子に配位のし易さを考慮すると、銀化合物の銀原子に配位する際に立体障害の問題が生じ難い1級アミンが好ましい。カルバメート化するアミン系化合物のアルキル基は、飽和アルキル基であっても、不飽和アルキル基であってもよい。アミンカルバメートの安定性を考慮した場合、カルバメート化するアミン系化合物のアルキル基は、飽和アルキル基であることが好ましい。カルバメート化するアミン系化合物のアルキル基は、炭素数が3以上10以下が好ましい。
基材又は基材の表面に形成した下塗り塗面への濡れ性及び銀鏡膜層形成時に第1の錯体から遊離して蒸発するアンモニウムカルバメート系化合物の蒸発速度を考慮すると、アンモニウムカルバメート系化合物は蒸発速度が速いものが好ましく、カルバメート化するアミン系化合物のアルキル基は炭素数が6以上8以下であることが更に好ましい。また、入手の容易さを考慮した場合には、カルバメート化するアミン系化合物は2−エチルヘキシルアミンであり、カルバメート化により得られるアンモニウムカルバメート系化合物は2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメートであることが好ましい。
銀化合物の銀原子に配位するアミン系化合物としては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、イソアミルアミン、n−ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、イソオクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ドコデシルアミン、シクロプロピルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、アリールアミン、ヒドロキシアミン、アンモニウムヒドロキシド、メトキシアミン、2−エタノールアミン、メトキシエチルアミン、2−ヒドロキシプロピルアミン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルアミン、メトキシプロピルアミン、シアノエチルアミン、エトキシアミン、n−ブトキシアミン、2−ヘキシルオキシアミン、メトキシエトキシエチルアミン、メトキシエトキシエトキシエチルアミン、ジメチルアミン、ジプロピルアミン、ジエタノールアミン、ヘキサメチレンイミン、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンジアミン、2,2−(エチレンジオキシ)ビスエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ピロール、イミダゾール、ピリジン、アミノアセトアルデヒドジメチルアセタル、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、アニリン、アニシジン、アミノベンゾニトリル、ベンジルアミン及びその誘導体、そしてポリアリールアミンやポリエチレンイミンのような高分子化合物及びその誘導体などのようなアミン系化合物が挙げることができる。
銀化合物の銀原子に配位するアミン系化合物は、例えば1級アミンであっても、2級アミンであっても良いが、銀化合物の銀原子に配位のし易さを考慮すると、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン又はイソブチルアミンのように、銀化合物の銀原子に配位する際に立体障害の問題が生じ難い、小さい構造の1級アミンが好ましい。
本発明の銀鏡膜層形成組成液においては、銀化合物の銀原子にアンモニウムカルバメート系化合物が配位した第1の錯体と銀化合物の銀原子にアミン系化合物が配位した第2の錯体との混合割合は、銀原子のモル比で、6:4〜8:2であることが好ましく、より好ましくは7:3である。
第1の錯体と第2の錯体との混合割合が、銀原子のモル比で、第1の錯体の割合が6:4よりも少ない場合には、第2の錯体の溶解性が低下するので好ましくない。第1の錯体と第2の錯体との混合割合が、銀原子のモル比で、第1の錯体の割合が8:2を超える場合には、銀鏡膜層形成組成液から銀鏡膜層を形成する際の加熱温度が高くなり、130℃程度にしなければならなくなるので好ましくない。
アルコール系溶媒としては、基材、基材の表面に形成した下塗り塗面との濡れ性及び蒸発速度の速いものが好ましい。そのようなアルコール系溶媒として、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール及び2−メチル−1−プロパノール等を挙げることができる。
これらのアルコール系溶媒中では、第1の錯体は溶解し、第2の錯体は溶解せずに沈降する。しかし、第1の錯体が溶解しているこれらのアルコール系溶液中に第2の錯体を添加すると、第2の錯体も溶解する。
また、アルコール系溶媒は、樹脂、金属、ガラス、陶磁器、タイルなどのセラミック類に対する濡れ性が優れている。従って、これらのアルコール系溶媒を含む銀鏡膜層形成組成液によれば、樹脂、金属、ガラス、陶磁器、タイルなどのセラミック類の表面に塗布してもハジキ現象が生じないため、塗りムラを生じることなく、均一に、塗布でき、ムラのない、均一な、銀鏡面層を形成することができるようになる。また、アルコール系溶媒は、基材の表面に形成する下塗り塗面層(多くの場合は、ウレタン樹脂又はアクリル−シリコーン樹脂)との濡れ性にも優れている。
また、アルコール系溶媒のうち、メタノール(沸点:64.7℃)、エタノール(沸点:77.0℃)、2−プロパノール(沸点:82,4℃)、1−プロパノール(沸点:97.15℃)、1−ブタノール(沸点:117.7℃)及び2−メチル−1−プロパノール(沸点:108℃)は、蒸発速度が速く、低い温度(77℃以上90℃以下の温度範囲)でも容易に気化するので、本発明に係る銀鏡膜層形成組成液のアルコール系溶媒として適している。なお、塗装・印刷業者等の健康上の安全面からは、溶媒は、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール及び2−メチル−1−プロパノールが好ましい。
また、本発明の銀鏡膜層形成組成液中に含まれる第1の錯体は、銀化合物中の銀に配位しているアンモニウムカルバメート系化合物により直接銀に還元することが抑制される。同じく、第2の錯体は、銀化合物中の銀に配位しているアミン系化合物により直接銀に還元することが抑制される。これにより、本発明の銀鏡膜層形成組成液は、室温では安定しているので、保存性に優れている。
また、本発明の銀鏡膜層形成組成液においては、銀化合物は、酸化銀(AgO)、炭酸銀(AgCO)及びシュウ酸銀(Ag)の群から選択される少なくとも1種が好ましい。
これらの銀化合物の銀原子にアンモニウムカルバメート系化合物が配位した第1の錯体が溶解しているアルコール系溶液中に、これらの銀化合物の銀原子にアミン系化合物が配位した第2の錯体を添加すると、第1の錯体だけでなく、第2の錯体も溶解する。なお、この際にいかなる化合物が形成されているかは、現在のところまだ明確ではなく、今後の研究を待つ必要があるが、おそらく第1の錯体と第2の錯体との複合化合物が形成されているものと推定される。これらの第1の錯体及び第2の錯体を含むアルコール系溶液は、還元剤の存在下で、いずれも従来例のものよりも低い温度で、容易に銀に還元され、良好な銀鏡膜を形成する。
還元剤としては、ヒドラジン、アセトヒドラジド、水酸化ホウ素ナトリウム又は水酸化ホウ素カリウム、ジメチルアミンボラン、ブチルアミンボランから選択されるアミン系化合物、第1塩化鉄、乳酸鉄から選択される金属塩、水素、ヨウ化水素、一酸化炭素、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキサールから選択されるアルデヒド化合物、ギ酸メチル、ギ酸ブチル、トリエチル−o−ギ酸から選択されるギ酸化合物、グルコース、アスコルビン酸、ヒドロキノンから選択される還元性有機化合物などから選択される1種又は2種以上の混合物を挙げることができる。銀鏡膜層形成組成液の保存安定性の良さを考慮した場合には、室温では還元作用を示さず、室温を超えた温度で還元作用を示す還元剤が好ましい。
そのような室温では還元作用を示さず、室温を超えた温度で還元作用を示す還元剤としては、例えばN,N−ジメチルアミノエタノール及びN,N−ジエチルアミノエタノールの群から選択される少なくとも1種の3級アミノアルコール及び1,2−プロパンジオールからなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。これらの還元剤は、室温において殆ど還元作用を発揮しないので、銀鏡膜層形成組成液中に還元剤を含む1液型の銀鏡膜層形成組成液の還元剤として好ましい。なお、本明細書おける「室温」とは、約20℃から約30℃を意味する。
これらの還元剤の添加量は、第1の錯体及び第2の両者に含まれる銀原子の1モルに対し、0.3モル以上1.0モル以下の範囲になるように添加するのが好ましい。これらの還元剤の添加量が第1の錯体及び第2の両者に含まれる銀原子の1モルに対し、0.3モル未満の場合には、還元性が不足するため、好ましくない。一方、これらの還元剤の添加量が第1の錯体及び第2の両者に含まれる銀原子の1モルに対し、1.0モルを超える場合には、形成した銀鏡膜層に曇りを生じる場合があるので好ましくない。
本発明の銀鏡膜層形成組成液においては、ビス(2−メトキシエチル)エーテル及びジプロピレングリコールジメチルエーテルの群から選択される少なくとも1種のグリコールエーテルを更に含んでいてもよい。銀鏡膜層形成組成液中にこれらのグリコーエーテルを含んでいると、第1の錯体及び第2の錯体の形成時に銀化合物の過度の凝集を抑制することができ、また、銀鏡膜形成時に析出する銀が凝集するのを抑制することができるため、低い温度で、均一な、高品質の銀鏡膜層を形成することができるようになる。なお、本明細書おける「低い温度」とは、特に例示がなければ、77℃以上90℃以下の温度範囲を示すものとして用いられている。
これらのグリコールエーテルの添加量は、第1の錯体及び第2の両者に含まれる銀1モルに対し、0.7モル以上1.0モル以下とすることが好ましい。これらのグリコールエーテルの添加量が第1の錯体及び第2の両者に含まれる銀原子の1モルに対し、0.7モル未満の場合には、低温で析出した銀の金属光沢が暗いものとなり、好ましくない。一方、これらのグリコールエーテルの添加量が第1の錯体及び第2の両者に含まれる銀原子の1モルに対し、1.0モルを超える場合には、低温で析出した銀の金属光沢が得られるまでに時間がかかり、好ましくない。
また、本発明の銀鏡膜層形成組成液においては、ヒンダードアミン系化合物(HALS)を更にんでいてもよい。ヒンダードアミン系化合物は、銀鏡膜層形成組成液から形成される銀鏡膜層にクラックが生じるのを防ぐ働きがある。このヒンダードアミン系化合物としては、例えば分子量が350以上800以下のものを用いるのが好ましい。ヒンダードアミン系化合物として分子量が350未満のものを用いる場合には、銀鏡膜層形成組成液から形成される銀鏡膜層にクラックが生じるのを防ぐ効果が低下するので、好ましくない。一方、ヒンダードアミン系化合物として分子量が800を超えるものを用いる場合には、銀鏡膜層形成組成液から形成される銀鏡膜層にクラックが生じるのを防ぐことはできるものの、銀鏡膜層形成組成液から形成される銀鏡膜層の金属光沢が損なわれる場合があるので、好ましくない。
ヒンダードアミン系化合物としては、例えばTINUVIN(登録商標名、BASF社製)シリーズを使用することができる。TINUVINシリーズの中では、TINUVIN292が好適である。銀鏡膜層形成組成液中に添加するTINUVIN292の添加量は、銀鏡膜層形成組成液中の第1の錯体及び第2の両者に含まれる銀100質量部に対して3.00質量部以上10.00質量部以下となるように添加するのが好ましい。
銀鏡膜層形成組成液中のTINUVIN292の添加量が銀鏡膜層形成組成液中の第1の錯体及び第2の両者に含まれる銀100質量部に対して3.00質量部未満の場合には、この銀鏡膜層形成組成液から形成される銀鏡膜層の耐経年劣化性が劣るので、好ましくない。一方、TINUVIN292の添加量が銀鏡膜層形成組成液中の第1の錯体及び第2の両者に含まれる銀100質量部に対して10.0質量部を超える場合には、銀鏡膜層形成組成液から形成される銀鏡膜層の金属光沢が損なわれる場合があり、好ましくない。
また、本発明の銀鏡膜層形成組成液においては、アミノシラン処理ナノシリカを更に含んでいてもよい。アミノシラン処理ナノシリカとしては、粒径が10nm以上70nm以下の範囲のものを用いるのが好ましい。アミノシラン処理ナノシリカとして粒径が10nm未満のものを用いる場合には、銀鏡膜層形成組成液の安定性が低下するので、好ましくない。一方、アミノシラン処理ナノシリカとして粒径が70nmを超えるものを用いる場合には、銀鏡膜層形成組成液から形成される銀鏡膜層の金属光沢が損なわれる場合があり、好ましくない。
銀鏡膜層形成組成液中に添加するアミノシラン処理ナノシリカの添加量は、第1の錯体及び第2の両者に含まれる銀100質量部に対して3.00質量部以上10.00質量部以下とすることが好ましい。アミノシラン処理ナノシリカの添加量が銀鏡膜層形成組成液中の第1の錯体及び第2の両者に含まれる銀100質量部に対して3.00質量部未満の場合には、銀鏡膜層形成組成液から銀鏡膜層を形成する際に析出する銀ナノ粒子の凝集効果が抑制されるので好ましくない。一方、アミノシラン処理ナノシリカの添加量が銀鏡膜層形成組成液中の第1の錯体及び第2の両者に含まれる銀100質量部に対して10.00質量部を超える場合には、銀鏡膜層形成組成液から形成される銀鏡膜層の金属光沢が損なわれる場合があるので、好ましくない。なお、アミノシラン処理ナノシリカの好ましい例としては、例えばSIS6962.1N30(アヅマックス株式会社製)を挙げることができる。
また、本発明の銀鏡膜層形成組成液においては、物理蒸着(PVD)法によって製造されたアルミニウム顔料を前記第1の錯体及び前記第2の錯体の合計質量に対して0.005〜0.5質量%更に含んでいてもよい。
本発明の銀鏡膜層形成組成液は、そのままでは透明であるため、塗装時の塗着状況が把握し難く、塗装部位と未塗装部位の判別が困難で、塗装作業性の問題が生じることがある。一般のアルミニウム顔料を添加すると、粒子感が目立ち、高輝度の鏡面仕上げが得られず、外観不良となる。それに対し、物理蒸着法により作製されたアルミニウム顔料を併用すると、鏡面外観を損なうことなく塗装作業性を改良できるようになる。
また、本発明の上述した銀鏡膜層形成組成液の製造方法は、
アルコール系溶媒中に銀化合物とアンモニウムカルバメート系化合物を添加し、未反応の銀化合物を濾別することにより、前記銀化合物に前記アンモニウムカルバメート系化合物が配位した第1の錯体を含有するアルコール系溶液を調製する工程と、
アルコール系溶媒中に、銀化合物と、前記銀化合物中の銀原子に配位する量に等しいかそれ以上の量のアミン系化合物とを添加し、沈降した前記銀化合物の銀原子に前記アミン系化合物が配位した第2の錯体を前記アルコール系溶媒で洗浄した後、前記アルコール系溶媒中に分散させて前記第2の錯体が分散したアルコール系溶液を調製する工程と、
前記第1の錯体を含有するアルコール系溶液と、前記第2の錯体が分散したアルコール系溶液とを混合する工程と、
還元剤を添加する工程と、
とを含んでいる。
また、本発明の銀鏡膜塗面の形成方法は、
基材の表面に下塗り塗面層を形成する工程と、
前記下塗り塗面層上に、上述した銀鏡膜層形成組成液を塗布する工程と、
前記銀鏡膜層形成組成液が塗布された基材を加熱して、前記基材の表面に形成した下塗り塗面層上に銀鏡膜層を形成する工程と、
を備えている。
この銀鏡膜塗面の形成方法は、基材として、ポリスチレン(PS)樹脂(熱変形温度:80℃〜110℃)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)樹脂(熱変形温度:88℃〜104℃)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)樹脂(熱変形温度:88℃〜104℃)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂(熱変形温度:70℃〜104℃)、ポリアミド(ナイロン)(PA)樹脂(熱変形温度:66℃〜104℃)、ポリカーボネート(PC)樹脂(熱変形温度:130℃〜140℃)、ポリエチレン・テレフタレート(ポリエステル)(PET)樹脂(熱変形温度:240℃〜245℃)、ポリアセタール(POM)樹脂(熱変形温度:110℃、124℃)等の熱可塑性樹脂でできた基材、及び、不飽和ポリエステル(アルキド)(UP)樹脂(熱変形温度:60℃〜200℃)、シリコーン(Si)樹脂(熱変形温度:>482℃)、ジアリルフタレート(DAP)樹脂(ガラス繊維強化)(熱変形温度:165℃〜250℃)、エポキシ(EP)樹脂(熱変形温度:120℃〜260℃)、メラミン・ホルムアルデヒド(MF)樹脂(熱変形温度:130℃〜210℃)、尿素αセルロース充填(ユリア)(UF)樹脂(熱変形温度:125℃〜140℃)、フェノール・ホルムアルデヒド(PF)樹脂(熱変形温度:75℃〜315℃)等の熱硬化性樹脂でできた基材、ステンレス、錫、アルミニウム、アルミニウム合金、銅亜鉛合金及び鋼鉄等の金属類でできた基材、ガラス、陶磁器、タイルなどのセラミックス類等からなるものを用いることができる。
この銀鏡膜塗面の形成方法においては、加熱温度を77℃以上90℃以下とすることが好ましい。この温度範囲であれば、第1の錯体及び第2の錯体を含む上記銀鏡膜層形成組成液から基材の表面に形成した下塗り塗面層上に銀鏡膜層を形成することができる。したがって、この銀鏡膜塗面の形成方法を用いれば、基材が熱変形温度の低い樹脂でできている場合であっても、基材に熱変形を与えることなく基材の表面に形成した下塗り塗面層上に銀鏡膜層を形成できる。
従って、この銀鏡膜塗面の形成方法を用いれば、従来の銀鏡膜層形成組成液では基材に熱変形を起こすことなく銀鏡膜層を形成するのが困難であった、PS樹脂(熱変形温度:80℃〜110℃)、ABS樹脂(熱変形温度:70℃〜107℃)、PMMA樹脂(熱変形温度:70℃〜90℃)、PA樹脂(熱変形温度:46℃〜108℃)など熱変形温度の低い樹脂でできた基材の表面にも銀鏡膜層を形成できる。
なお、下塗り塗料としては固状や液状の塗料が使用できる。また、下塗り塗料には、必要に応じてレベリング剤、湿潤剤、付着増進剤、紫外線安定化剤及び着色剤等を含有させることができる。また、下塗り塗料の樹脂は、いかなるものを使用してもよく、基材によって選択的に使用が可能である。下塗り塗料は、スプレー法、ディップ法、ロールコーティング法等により基材に塗布することができる。
また、本発明の銀鏡膜塗面の形成方法においては、下塗り塗料は、ポリオールと、イソシアネート化合物と、アセチレンアルコール化合物と、コロイダルシリカとを含むものであってもよい。ポリオールとしては、例えばアクリルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオール等が好ましく、アクリルポリオールが更に好ましい。
ポリオールは、平均分子量が300以上10,000以下の範囲のものであって、分子末端に水酸基を有するものが好ましい。ポリオールの平均分子量が300未満のものである場合には、銀鏡膜層形成組成液の安定性が低下し、好ましくない。一方、ポリオールの平均分子量が10,000を超えるものである場合には、下塗り塗面と銀鏡膜層との密着性が低下する場合があり、好ましくない。
更に、下塗り塗料としてのウレタン塗料から形成されたウレタン塗膜の機械的強度を考慮した場合には、ポリオールとして、平均分子量が1000以上8,000以下の範囲のものであって、分子末端に水酸基を有するものが好ましい。ポリオールとしては、例えばA−801−P(大日本インキ化工株式会社製)や、COATAX(登録商標、東レ・ファインケミカル株式会社製)等を、その好ましい例として挙げることができる。
イソシアネートとしては、例えばコロネート(登録商標名)HL(日本ポリウレタン工業株式会社製)、タケネート(登録商標名)D−140N(三井化学株式会社製)、デュラネート(登録商標名)24A−100ないしTPA−100(旭化成ケミカルズ株式会社製)等をその好ましい例として挙げることができる。
アセチレンアルコール類は、アセチレン基を中央に持つノニオン性界面活性剤である。アセチレンアルコール類は、下塗り塗料としてのウレタン塗料中の樹脂固形成分100質量部に対して0.5質量部以上3.0質量部以下の範囲で配合することが好ましい。アセチレンアルコールの配合量がウレタン塗料中の樹脂固形成分100質量部に対して0.5質量部未満の場合には、得られた下塗り塗膜が親水性効果を有さないので、好ましくない。一方、アセチレンアルコールの配合量がウレタン塗料中の樹脂固形成分100質量部に対して3.0質量部を超える場合には、得られる下塗り塗膜の耐水性が低下するので、好ましくない。
アセチレンアルコール類は、第一級アルコールであっても、第二級アルコールであっても、第三級アルコールであってもよい。アセチレンアルコール類としては、例えばサーフィノール(登録商標名)104BCや、サーフィノールPAや、サーフィノール504T(日信化学工業株式会社製)等をその好ましい例として挙げることができる。
コロイダルシリカは、粒子径が10nm以上100nm以下の範囲にあるものが好ましい。コロイダルシリカの粒子径が10nm未満の場合には、銀鏡膜層形成組成液の安定性が低下するので、好ましくない。一方、コロイダルシリカの粒子径が100nmを越える場合には、銀鏡膜層形成組成液から形成される銀鏡膜層にムラが生じる場合があるので、好ましくない。
コロイダルシリカは、下塗り塗料としてのウレタン塗料の樹脂固形成分100質量部に対して3.0質量部以上20.0質量部以下の範囲で配合することが好ましい。コロイダルシリカの配合量がウレタン塗料の樹脂固形成分100質量部に対して3.0質量部未満の場合には、得られるウレタン塗膜の親水性が低下するので、好ましくない。一方、コロイダルシリカの配合量がウレタン塗料の樹脂固形成分100質量部に対して20.0質量部を超える場合には、ウレタン塗料の安定性が低下するので、好ましくない。
コロイダルシリカとしては、例えばMIBK−ST(日産化学工業株式会社製)や、IPA−ST(日産化学工業株式会社製)を、その好ましい例として挙げることができる。
また、本発明の銀鏡膜塗面の形成方法においては、下塗り塗料は、アクリル−シリコーン樹脂と、アセチレンアルコール類と、コロイダルシリカとを含むものであってもよい。アクリル−シリコーン樹脂としては、加水分解性のシリル基含有シリコーン化合物(硬化剤)でアクリル樹脂を架橋するタイプ(Aタイプ)のものと、アルコキシシリル基を有するアクリル樹脂を少量の触媒で加水分解するタイプ(Bタイプ)のものとがある。銀鏡膜との密着性や硬化速度を考慮した場合、アクリル−シリコーン樹脂としてはAタイプのものが好ましい。
Aタイプのアクリル−シリコーン樹脂の主剤であるアクリル樹脂としては、ガラス転移点(Tg)が30℃以上90℃以下の範囲のものが好ましい。このアクリル樹脂としては、例えばアクリディック(登録商標名)A−9510、アクリディックA−9540、アクリディックA−9540−BA、アクリディックBZ−1160(DIC株式会社製)等を、その好ましい例として挙げることができる。また、加水分解性のシリル基含有シリコーン化合物(硬化剤)としては、例えばアクリディックA−9585(DIC株式会社製)を挙げることができる。
アセチレンアルコールは、下塗り塗料としてのアクリル−シリコーン塗料中の樹脂固形成分100質量部に対して0.5質量部以上3.0質量部以下の範囲で配合することが好ましい。アセチレンアルコールの配合量がアクリル−シリコーン塗料中の樹脂固形成分100質量部に対して0.5質量部未満の場合には、得られるアクリル−シリコーン塗膜が親水性効果を有さないので、好ましくない。一方、アセチレンアルコールの配合量がアクリル−シリコーン塗料中の樹脂固形成分100質量部に対して3.0質量部を超える場合には、得られるアクリル−シリコーン塗膜の耐水性が低下するので、好ましくない。ここで配合するアセチレンアルコール類としては、上記と同様のものを使用し得る。
コロイダルシリカは、粒子径が10nm以上100nm以下の範囲にあるものが好ましい。コロイダルシリカの粒子径が10nm未満の場合には、銀鏡膜層形成組成液の安定性が低下するので、好ましくない。一方、コロイダルシリカの粒子径が100nmを越える場合には、銀鏡膜層形成組成液から形成される銀鏡膜層にムラが生じる場合があるので、好ましくない。
この場合も、コロイダルシリカは、下塗り塗料としてのアクリル−シリコーン塗料の樹脂固形成分100質量部に対して3.0質量部以上20.0質量部以下の範囲で配合することが好ましい。コロイダルシリカの配合量がアクリル−シリコーン塗料の樹脂固形成分100質量部に対して3.0質量部未満の場合には、得られるアクリル−シリコーン塗料の親水性効果が低下するので、好ましくない。一方、コロイダルシリカの配合量がアクリル−シリコーン塗料の樹脂固形成分100質量部に対して20.0質量部を超える場合には、アクリル−シリコーン塗料の安定性が低下するので、好ましくない。ここで配合するコロイダルシリカとしては、上記と同様のものを使用し得る。
Bタイプのアクリル−シリコーン樹脂の主剤としては、例えばアルコキシリル基を結合させたアクリル樹脂であるカネカゼムラック(登録商標名)AM1532、カネカゼムラックYC3623、カネカゼムラックYC4383、カネカゼムラックYC5920(株式会社カネカ製)等を、その好ましい例として挙げることができる。Bタイプのアクリル−シリコーン塗料の触媒としては、例えば有機スズ系触媒であるカネカゼムラックBT405Z(株式会社カネカ製)を挙げることができる。
なお、Bタイプのアクリル−シリコーン樹脂を用いたアクリル−シリコーン塗料に配合するアセチレンアルコール及びコロイダルシリカの配合量及び好ましい例は、Aタイプものと同様である。
また、本発明の銀鏡膜塗面の形成方法においては、下塗り塗料がヒンダードアミン系化合物を更に含んでいることが好ましい。このヒンダードアミン系化合物としては、例えば分子量が350以上800以下のものを用いるのが好ましい。ヒンダードアミン系化合物として分子量が350未満のものを用いる場合には、銀の金属光沢が暗いものとなり、好ましくない。同じく、ヒンダードアミン系化合物として分子量が800を超えるものを用いる場合も、銀の金属光沢が暗いものとなり、好ましくない。
ヒンダードアミン系化合物としては、例えばTINUVINシリーズを使用することができる。TINUVINシリーズの中では、TINUVIN123やTINUVIN292を用いること好ましい。下塗り塗料中に添加するTINUVIN123やTINUVIN292の配合量は、下塗り塗料の樹脂固形成分100質量部に対して0.5質量部以上2.0質量部の範囲となるように添加するのが好ましい。下塗り塗料中のTINUVIN123やTINUVIN292の配合量が下塗り塗料の樹脂固形成分100質量部に対して0.5質量部未満の場合には、下塗り塗層の耐経年劣化性が劣るので、好ましくない。一方、TINUVIN123や、TINUVIN292の配合量が下塗り塗料の樹脂固形成分100質量部に対して2.0質量部を超える場合には、下塗り塗層の耐経年劣化性の向上効果が飽和してしまうため、好ましくない。
また、本発明の銀鏡膜塗面の形成方法においては、下塗り塗面層上に形成した銀鏡膜層上に更に銀鏡膜層保護膜層(上塗り塗面層)を形成することが好ましい。上塗り塗料としては、下塗り塗面層上に形成した銀鏡膜層上に、透明度が高く、耐熱性、耐光性、耐食性及び耐塩水性などに優れた塗膜を形成できるものであれば、種々の塗料を用いることができる。この上塗り塗料としては、ウレタン樹脂やアクリル‐シリコーン塗料又はシリコーン塗料や紫外線硬化塗料などが使用できるが、塗膜の透明性が高く(全光線透過率90%以上)、耐食性や耐候性、耐薬品性などに優れたものが好ましい。
本発明によれば、低い温度で、均一な、反射率の高い銀鏡膜層を形成することができる、銀化合物の銀原子にアミン系化合物が配位した錯体と、銀化合物の銀原子にアンモニウムカルバメート系化合物が配位した錯体とを含む銀鏡膜層形成組成液、銀鏡膜層形成組成液の製造方法及びこの銀鏡膜形成組成液を用いた銀鏡膜塗面の形成方法を提供することができるようになる。
本発明に係る銀鏡膜層形成組成液から銀鏡膜を形成する際の温度と時間との相関関係を示す図である。 本発明に係る銀鏡膜塗面の形成方法により形成される銀鏡膜塗面を模式的に示す断面図である。 実験例21の銀鏡面を写した写真である。 図4(a)は実験例17の銀鏡膜を写した写真であり、図4(b)は実験例18の銀鏡膜を写した写真である。 従来のトレンス試薬を用いた銀鏡反応を利用した、銀鏡膜層形成工程を概略的に示す工程図である。
以下、本発明に係る銀鏡膜層形成組成液、銀鏡膜層形成組成液の製造方法及び銀鏡膜塗面の形成方法について、各種実験例を用いて詳細に説明する。ただし、以下に示す各種実験例は、本発明の技術思想を具体化するための一例を示すものであって、本発明をこれらの実験例に示したものに特定することを意図するものではない。本発明は特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適応し得るものである。
[2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメートの調製]
2リットルのステンレス容器の重さを測定した。この2リットルのステンレス容器に、2−エチルヘキシルアミン(和光純薬株式会社製)を1.0kg注入し、2−エチルヘキシルアミン中に炭酸ガス(CO)を吹き込みながら撹拌を行い、2−エチルヘキシルアミンのカルバメート化を行った。
なお、2−エチルヘキシルアミンのカルバメート化を行う際には、2リットルのステンレス容器を流水により冷却し、2−エチルヘキシルアミンのカルバメート化の反応温度が20℃以上40℃以下の範囲の温度になるようにした。2−エチルヘキシルアミンのカルバメート化の反応開始から2時間が経過した後から、2リットルのステンレス容器ごと、反応生成物の質量を定期的に測定し、2リットルのステンレス容器の質量変化のなくなった時点で反応を止めた。以上により、透明な2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメートを得た。
[n−ブチルアンモニウム n−ブチルカルバメートの調製]
2リットルのステンレス容器の重さを予め測定した。この2リットルのステンレス容器に、n−ブチルアミン(和光純薬株式会社製)を1.0kg入れ、n−ブチルアミンに炭酸ガス(CO)を吹き込みながら撹拌を行い、n−ブチルアミンのカルバメート化を行った。
なお、n−ブチルアミンのカルバメート化を行う際には、2リットルのステンレス容器を流水により冷却し、n−ブチルアミンのカルバメート化の反応温度が、10℃以上30℃以下の範囲の温度になるようにした。n−ブチルアミンのカルバメート化の反応開始から、1時間で、2リットルのステンレス容器内の内容物が固形化し、撹拌が困難となったため、反応を止めた。以上により、透明なn−ブチルアンモニウム n−ブチルカルバメートを得た。
[実験例1]
(2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体の調製)
2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート4.16gに、2−プロパノール(イソプロピルアルコール)(大伸化学株式会社製)10.0gを混合した溶液に、酸化銀(AgO)(石福金属工業株式会社製)2.1gを添加し、常温で2時間撹拌した。この溶液は、最初は黒色の懸濁液であったが、やがて灰白色に濁った2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体を含む2−プロパノール溶液になった。灰白色に濁った成分は未反応の酸化銀粒子であり、2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体は2−プロパノールに溶解した状態となる。この2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体は本発明の第1の錯体に対応する。
なお、2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体を含む2−プロパノール溶液中には、余剰の2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメートが含まれていないことが好ましい。2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体を含む2−プロパノール溶液中に2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメートが含まれないようにするためには、例えば2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体を調製する際に、2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート2モルに対し、酸化銀を1モル以上の割合となるように添加し、2−プロパノール溶液中の2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメートを、2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体の形成に全て消費し、その後、2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体を含む2−プロパノール溶液中に沈降している酸化銀を濾過して除去すればよい。
(n−ブチルアミン酸化銀錯体の調製)
n−ブチルアミン(和光純薬株式会社製)1.93gに2−プロパノール(大伸化学株式会社製)6.0gを混合した溶液に、酸化銀(石福金属工業株式会社製)0.9gを添加し、常温で30分間撹拌し、n−ブチルアミン酸化銀錯体を調製した。このn−ブチルアミン酸化銀錯体は本発明の第2の錯体に対応する。n−ブチルアミン酸化銀錯体は、2−プロパノール中で黒色の懸濁液となり、その後、2−プロパノールには溶解せずに沈降する。
なお、n−ブチルアミン酸化銀錯体を含む2−プロパノール溶液中には、n−ブチルアミンが含まれていないことが好ましい。n−ブチルアミン酸化銀錯体を含む2−プロパノール溶液中にn−ブチルアミンが含まれないようにするためには、例えば2−プロパノール溶液中に沈降しているn−ブチルアミン酸化銀錯体を2−プロパノールで洗浄し、洗浄後のn−ブチルアミン酸化銀錯体を2−プロパノールに懸濁させればよい。
(銀鏡膜層形成組成液の調製)
次に、上述のようにして調製した2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体が溶解した2−プロパノール溶液とn−ブチルアミン酸化銀錯体が懸濁した2−プロパノール溶液とを混合し、撹拌した。この混合液は、次第に灰色の懸濁液となり、その後、透明な溶液になった。
次に、この混合液に、N,N−ジメチルアミノエタノール(和光純薬株式会社製、本発明の室温では還元作用を示さず、室温を超えた温度で還元作用を示す還元剤に対応)2.33gを加え、2−プロパノールを加えて全量を30gになるように調整し、実験例1の銀鏡膜層形成組成液を調製した。
この実験例1の銀鏡膜層形成組成液をポリプロピレン(PP)容器に密閉し、室温(約20℃〜約30℃)で、暗所に、30日間、保管した。その結果、銀鏡膜層形成組成液に変化は見られず、銀ナノ粒子の析出や沈澱は観察されなかった。
[実験例2]
溶媒として、実験例1における2−プロパノールに代えてメタノール(甘糟化学株式会社製)を同量用いた以外は実験例1の場合と同様にして、実験例2の銀鏡膜層形成組成液の調製した。実験例2で得られた2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体のメタノール溶液は灰白色に濁った溶液であったので、未反応の酸化銀を濾別して、透明な2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体のメタノール溶液を調製した。また、得られたn−ブチルアミン酸化銀錯体のメタノール溶液は黒色の懸濁液であったので、n−ブチルアミン酸化銀錯体をメタノールで洗浄後にメタノールに分散させ、n−ブチルアミン酸化銀錯体が懸濁したメタノール溶液を調製した。
さらに、2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体が溶解したメタノール溶液とn−ブチルアミン酸化銀錯体が懸濁したメタノール溶液とを混合、撹拌すると、次第に灰色の懸濁液となり、その後、透明な溶液となった。
次に、この混合液に、実験例1の場合と同様に還元剤としてのN,N−ジメチルアミノエタノール2.33gを加え、メタノールを加えて全量を30gになるように調整し、実験例2の銀鏡膜層形成組成液を調製した。
この実験例2の銀鏡膜層形成組成液をPP容器に密閉し、室温で、暗所に、30日間、保管した。その結果、銀鏡膜層形成組成液に変化は見られず、銀ナノ粒子の析出や沈澱は観察されなかった。
[実験例3]
溶媒として、実験例1における2−プロパノールに代えてエタノール(脱水エタノール、和光純薬株式会社製)を同量用いた以外は実験例1の場合と同様にして、実験例3の銀鏡膜層形成組成液の調製した。実験例3で得られた2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体のエタノール溶液は灰白色に濁った溶液であったので、未反応の酸化銀を濾別して、透明な2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体のエタノール溶液を調製した。また、得られたn−ブチルアミン酸化銀錯体のエタノール溶液は黒色の懸濁液であったので、n−ブチルアミン酸化銀錯体をエタノールで洗浄後にエタノールに分散させ、n−ブチルアミン酸化銀錯体が懸濁したエタノール溶液を調製した。
さらに、2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体が溶解したエタノール溶液とn−ブチルアミン酸化銀錯体が懸濁したエタノール溶液とを混合、撹拌すると、次第に灰色の懸濁液となり、その後、透明な溶液となった。
次に、この混合液に、実験例1の場合と同様に還元剤としてのN,N−ジメチルアミノエタノール2.33gを加え、エタノールを加えて全量を30gになるように調整し、実験例3の銀鏡膜層形成組成液を調製した。
この実験例3の銀鏡膜層形成組成液をPP容器に密閉し、室温で、暗所に、30日間、保管した。その結果、銀鏡膜層形成組成液に変化は見られず、銀ナノ粒子の析出や沈澱は観察されなかった。
[実験例4]
溶媒として、実験例1における2−プロパノールに代えて1−プロパノール(脱水1−プロパノール、和光純薬株式会社製)を同量用いた以外は実験例1の場合と同様にして、実験例4の銀鏡膜層形成組成液の調製した。実験例4で得られた2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体の1−プロパノール溶液は灰白色に濁った溶液であったので、未反応の酸化銀を濾別して、透明な2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体の1−プロパノール溶液を調製した。また、得られたn−ブチルアミン酸化銀錯体の1−プロパノール溶液は黒色の懸濁液であったので、n−ブチルアミン酸化銀錯体を1−プロパノールで洗浄後に1−プロパノールに分散させ、n−ブチルアミン酸化銀錯体が懸濁した1−プロパノール溶液を調製した。
さらに、2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体が溶解した1−プロパノール溶液とn−ブチルアミン酸化銀錯体が懸濁した1−プロパノール溶液とを混合、撹拌すると、次第に灰色の懸濁液となり、その後、透明な溶液となった。
次に、この混合液に、実験例1の場合と同様に還元剤としてのN,N−ジメチルアミノエタノール2.33gを加え、1−プロパノールを加えて全量を30gになるように調整し、実験例4の銀鏡膜層形成組成液を調製した。
この実験例4の銀鏡膜層形成組成液をPP容器に密閉し、室温で、暗所に、30日間、保管した。その結果、銀鏡膜層形成組成液に変化は見られず、銀ナノ粒子の析出や沈澱は観察されなかった。
[実験例5]
溶媒として、実験例1における2−プロパノールに代えて1−ブタノール(和光純薬株式会社製)を同量用いた以外は実験例1の場合と同様にして、実験例5の銀鏡膜層形成組成液の調製した。実験例5で得られた2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体の1−ブタノール溶液は灰白色に濁った溶液であったので、未反応の酸化銀を濾別して、透明な2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体の1−ブタノール溶液を調製した。また、得られたn−ブチルアミン酸化銀錯体の1−ブタノール溶液は黒色の懸濁液であったので、n−ブチルアミン酸化銀錯体を1−ブタノールで洗浄後に1−ブタノールに分散させ、n−ブチルアミン酸化銀錯体が懸濁した1−ブタノール溶液を調製した。
さらに、2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体が溶解した1−ブタノール溶液とn−ブチルアミン酸化銀錯体が懸濁した1−ブタノール溶液とを混合、撹拌すると、次第に灰色の懸濁液となり、その後、透明な溶液となった。
次に、この混合液に、実験例1の場合と同様に還元剤としてのN,N−ジメチルアミノエタノール2.33gを加え、1−ブタノールを加えて全量を30gになるように調整し、実験例5の銀鏡膜層形成組成液を調製した。
この実験例5の銀鏡膜層形成組成液をPP容器に密閉し、室温で、暗所に、30日間、保管した。その結果、銀鏡膜層形成組成液に変化は見られず、銀ナノ粒子の析出や沈澱は観察されなかった。
[実験例6]
溶媒として、実験例1における2−プロパノールに代えて2−メチル−1−プロパノール(和光純薬株式会社製)を同量用いた以外は実験例1の場合と同様にして、実験例6の銀鏡膜層形成組成液の調製した。実験例6で得られた2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体の2−メチル−1−プロパノール溶液は灰白色に濁った溶液であったので、未反応の酸化銀を濾別して、透明な2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体の2−メチル−1−プロパノール溶液を調製した。また、得られたn−ブチルアミン酸化銀錯体の2−メチル−1−プロパノール溶液は黒色の懸濁液であったので、n−ブチルアミン酸化銀錯体を2−メチル−1−プロパノールで洗浄後に2−メチル−1−プロパノールに分散させ、n−ブチルアミン酸化銀錯体が懸濁した2−メチル−1−プロパノール溶液を調製した。
さらに、2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体が溶解した2−メチル−1−プロパノール溶液とn−ブチルアミン酸化銀錯体が懸濁した2−メチル−1−プロパノール溶液とを混合、撹拌すると、次第に灰色の懸濁液となり、その後、透明な溶液となった。
次に、この混合液に、実験例1の場合と同様に還元剤としてのN,N−ジメチルアミノエタノール2.33gを加え、2−メチル−1−プロパノールを加えて全量を30gになるように調整し、実験例6の銀鏡膜層形成組成液を調製した。
この実験例6の銀鏡膜層形成組成液をPP容器に密閉し、室温で、暗所に、30日間、保管した。その結果、銀鏡膜層形成組成液に変化は見られず、銀ナノ粒子の析出や沈澱は観察されなかった。
[実験例7]
アミン系化合物として実験例1におけるn−ブチルアミンに代えてイソプロピルアミン(和光純薬工業株式会社製)を用い、実験例1のn−ブチルアミン酸化銀錯体に代えてイソプロピルアミン酸化銀錯体を同量用いた以外は実験例1の場合と同様にして、実験例7の銀鏡膜層形成組成液の調製した。
(イソプロピルアミン酸化銀錯体の調製)
イソプロピルアミン(和光純薬株式会社製)1.93gに2−プロパノール(大伸化学株式会社製)6.0gを混合した溶液に、酸化銀(石福金属工業株式会社製)0.9gを添加し、常温で30分間、撹拌し、酸化銀のイソプロピルアミン酸化銀錯体を調製した。このイソプロピルアミン酸化銀錯体は本発明の第2の錯体に対応する。イソプロピルアミン酸化銀錯体は、2−プロパノール中で黒色の懸濁液となり、その後、2−プロパノールには溶解せずに沈降する。
なお、イソプロピルアミン酸化銀錯体を含む2−プロパノール溶液中には、イソプロピルアミンが含まれていないことが好ましい。イソプロピルアミン酸化銀錯体を含む2−プロパノール溶液中にイソプロピルアミンが含まれないようにするためには、例えば2−プロパノール溶液中に沈降しているイソプロピルアミン酸化銀錯体を2−プロパノールで洗浄し、洗浄後のイソプロピルアミン酸化銀錯体を2−プロパノールに懸濁させればよい。
上述のようにして調製された2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体が溶解した2−プロパノール溶液とイソプロピルアミン酸化銀錯体が懸濁した2−プロパノール溶液とを混合、撹拌すると、次第に灰色の懸濁液となり、その後、透明な溶液となった。
次に、この混合液に、実験例1の場合と同様に還元剤としてのN,N−ジメチルアミノエタノール2.33gを加え、2−プロパノールを加えて全量を30gになるように調整し、実験例7の銀鏡膜層形成組成液を調製した。
この実験例7の銀鏡膜層形成組成液をPP容器に密閉し、室温で、暗所に、30日間、保管した。その結果、銀鏡膜層形成組成液に変化は見られず、銀ナノ粒子の析出や沈澱は観察されなかった。
[実験例8]
アミン系化合物として実験例1におけるn−ブチルアミンに代えてイソブチルアミン(和光純薬工業株式会社製)を用い、実験例1のn−ブチルアミン酸化銀錯体に代えてイソブチルアミン酸化銀錯体を同量用いた以外は実験例1の場合と同様にして、実験例8の銀鏡膜層形成組成液の調製した。
(イソブチルアミン酸化銀錯体の調製)
イソブチルアミン(和光純薬株式会社製)1.93gに2−プロパノール(大伸化学株式会社製)6.0gを混合した溶液に、酸化銀(AgO)(石福金属工業株式会社製)0.9gを添加し、常温で30分間撹拌し、イソブチルアミン酸化銀錯体を調製した。このイソブチルアミン酸化銀錯体も本発明の第2の錯体に対応する。イソブチルアミン酸化銀錯体は、2−プロパノール中で黒色の懸濁液となり、その後、2−プロパノールには溶解せずに沈降した。
なお、イソブチルアミン酸化銀錯体を含む2−プロパノール溶液中には、イソブチルアミンが含まれていないことが好ましい。イソブチルアミン酸化銀錯体を含む2−プロパノール溶液中にイソブチルアミンが含まれないようにするためには、例えばイソブチルアミン溶液中に沈降しているイソブチルアミン酸化銀錯体を2−プロパノールで洗浄し、洗浄後のイソブチルアミン酸化銀錯体を2−プロパノールに懸濁させればよい。
上述のようにして調製された2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体が溶解した2−プロパノール溶液とイソブチルアミン酸化銀錯体が懸濁した2−プロパノール溶液とを混合、撹拌すると、次第に灰色の懸濁液となり、その後、透明な溶液となった。
次に、この混合液に、実験例1の場合と同様に還元剤としてのN,N−ジメチルアミノエタノール2.33gを加え、2−プロパノールを加えて全量を30gになるように調整し、実験例8の銀鏡膜層形成組成液を調製した。
この実験例8の銀鏡膜層形成組成液をPP容器に密閉し、室温で、暗所に、30日間、保管した。その結果、銀鏡膜層形成組成液に変化は見られず、銀ナノ粒子の析出や沈澱は観察されなかった。
[実験例9]
還元剤として、実験例1のN,N−ジメチルアミノエタノールに代えてN,N−ジエチルアミノエタノール(和光純薬工業株式会社製)を同量用いた以外は実験例1の場合と同様にして、実験例9の銀鏡膜層形成組成液を調製した。この実験例9の銀鏡膜層形成組成液をPP容器に密閉し、室温で、暗所に、30日間、保管した。その結果、銀鏡膜層形成組成液に変化は見られず、銀ナノ粒子の析出や沈澱は観察されなかった。
[実験例10]
還元剤として、実験例1のN,N−ジメチルアミノエタノールに代えて1,2プロパンジオール(プロピレングリコール、和光純薬工業株式会社製)を同量用いた以外は実験例1の場合と同様にして、実験例10の銀鏡膜層形成組成液の調製した。この実験例10の銀鏡膜層形成組成液をPP容器に密閉し、室温で、暗所に、30日間、保管した。その結果、銀鏡膜層形成組成液に変化は見られず、銀ナノ粒子の析出や沈澱は観察されなかった。
[実験例11]
実験例1の銀鏡膜層形成組成液の調製に際し、還元剤としてのN,N−ジメチルアミノエタノールを2.33g添加した後に、更にビス(2−メトキシエチル)エーテル(和光純薬株式会社製)を3.55g添加し、2−プロパノールを加えて全量を30gになるように調製した以外は,実験例1の場合と同様にして、実験例11の銀鏡膜層形成組成液を調製した。この実験例11の銀鏡膜層形成組成液をPP容器に密閉し、室温で、暗所に、30日間、保管した。その結果、銀鏡膜層形成組成液に変化は見られず、銀ナノ粒子の析出や沈澱は観察されなかった。
[実験例12]
実験例1の銀鏡膜層形成組成液の調製に際し、還元剤としてのN,N−ジメチルアミノエタノールを2.33g添加した後に、更にジプロピレングリコールジメチルエーテル(和光純薬株式会社製)を3.55g加え、2−プロパノールを加えて全量を30gになるように調製した以外は,実験例1の場合と同様にして、実験例12の銀鏡膜層形成組成液を調製した。この実験例12の銀鏡膜層形成組成液をPP容器に密閉し、室温で、暗所に、30日間、保管した。その結果、銀鏡膜層形成組成液に変化は見られず、銀ナノ粒子の析出や沈澱は観察されなかった。
[実験例13]
実験例11の銀鏡膜層形成組成液中に、更に2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体及びn−ブチルアミン酸化銀錯体の両者に含まれる銀100質量部に対してヒンダードアミン化合物としてTINUVIN292を0.10質量部となる割合いで添加し、実験例13の銀鏡膜層形成組成液を調製した。この実験例13の銀鏡膜層形成組成液をPP容器に密閉し、室温で、暗所に、30日間、保管した。その結果、銀鏡膜層形成組成液に変化は見られず、銀ナノ粒子の析出や沈澱は観察されなかった。
[実験例14]
実験例13の銀鏡膜層形成組成液中に、更に2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体及びn−ブチルアミン酸化銀錯体の両者に含まれる銀100質量部に対してアミノシラン処理ナノシリカ(SIS6962.1N30)を10.0質量部となる割合いで添加し、実験例14の銀鏡膜層形成組成液を調製した。この実験例14の銀鏡膜層形成組成液をPP容器に密閉し、室温で、暗所に、30日間、保管した。その結果、銀鏡膜層形成組成液に変化は見られず、銀ナノ粒子の析出や沈澱は観察されなかった。
[実験例15]
銀化合物として、実験例1で用いた酸化銀に代えて炭酸銀(AgCO、和光純薬株式会社製)を同量用いた以外は実験例1の場合と同様にして、実験例15の銀鏡膜層形成組成液を調製した。この実験例15の銀鏡膜層形成組成液をPP容器に密閉し、室温で、暗所に、30日間、保管した。その結果、銀鏡膜層形成組成液に変化は見られず、銀ナノ粒子の析出や沈澱は観察されなかった。
[実験例16]
銀化合物として、実験例1で用いた酸化銀に代えてシュウ酸銀(和光純薬株式会社製)を同量用いた以外は実験例1の場合と同様にして、実験例16の銀鏡膜層形成組成液を調製した。この実験例16の銀鏡膜層形成組成液をPP容器に密閉し、室温で、暗所に、30日間、保管した。その結果、銀鏡膜層形成組成液に変化は見られず、銀ナノ粒子の析出や沈澱は観察されなかった。
[実験例17]
上述のようにして調製した2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート5.83gと、n−ブチルアンモニウム n−ブチルカルバメート1.38gと、2−プロパノール(大伸化学株式会社製)6.0gとを混合した溶液に、酸化銀(石福金属工業株式会社製)3.0gを添加し、常温で、5時間、撹拌を行い、2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメートとn−ブチルアンモニウム n−ブチルカルバメートとの酸化銀錯体を調製した。溶液は、最初は黒色の懸濁液であったが、混合後に2時間を経過した頃から白濁し始め、混合後に3時間が経過した頃から灰白色の溶液になった。この溶液の色が灰白色の溶液になってから、更にこの溶液を常温で2時間撹拌したが、この溶液の色は、灰白色のままで、変化がなかった。
次に、この溶液に分散剤としての2−ブチルアミン(和光純薬株式会社製)を3.4g添加し、撹拌したが、この溶液は、白濁が残っていた。そこで、この溶液に、更に分散剤としてのイソプロピルアミン(和光純薬株式会社製)を1.55gを添加して撹拌した所、透明な溶液になった。
次に、還元剤としてのN,N−ジメチルアミノエタノール(和光純薬株式会社製)2.33gを加え、2−プロパノールを加え、全量を30gになるように調整し、実験例17の銀鏡膜層形成組成液を調製した。この実験例17の銀鏡膜層形成組成液をPP容器に密閉し、室温で、暗所に、30日間、保管した。その結果、銀鏡膜層形成組成液に変化は見られず、銀ナノ粒子の析出や沈澱は観察されなかった。
[実験例18]
上述のようにして調製した2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート5.83gと、n−ブチルアンモニウム n−ブチルカルバメート1.38gと、2−プロパノール(大伸化学株式会社製)6.0gとを混合した溶液に、酸化銀(石福金属工業株式会社製)3.0gを添加し、常温で、5時間、撹拌を行い、2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメートとn−ブチルアンモニウム n−ブチルカルバメートとの酸化銀錯体を調製した。溶液は、最初は黒色の懸濁液であったが、混合後に2時間を経過した頃から白濁し始め、混合後に3時間が経過した頃から灰白色の溶液になった。この溶液の色が灰白色の溶液になってから、更にこの溶液を常温で2時間撹拌したが、この溶液の色は、灰白色のままで、変化がなかった。
次に、この溶液に分散剤としての2−エチルヘキシルアミン(和光純薬株式会社製)を3.4g添加し、撹拌したが、この溶液は、白濁が残っていた。そこで、この溶液に、更に分散剤としてのイソプロピルアミン(和光純薬株式会社製)を1.55gを添加して撹拌した所、透明な溶液になった。
次に、還元剤としてのN,N−ジメチルアミノエタノール(和光純薬株式会社製)2.33gを加え、2−プロパノールを加え、全量を30gになるように調整し、実験例18の銀鏡膜層形成組成液を調製した。この実験例18の銀鏡膜層形成組成液をPP容器に密閉し、室温で、暗所に、30日間、保管した。その結果、銀鏡膜層形成組成液に変化は見られず、銀ナノ粒子の析出や沈澱は観察されなかった。
[下塗り塗料の調製]
(ウレタン樹脂下塗り塗料の調製)
アクリル系ポリオール樹脂:アロタン(登録商標名)2050−55(日本触媒株式会社製、不揮発分:55%、水酸基価:22KOHmg/g)に、アクリル系ポリオール樹脂の樹脂固形成分100質量部に対し、アセチレンアルコール類:サーフィノール504を1.0質量部、コロイダルシリカ:MIBK−ST(日産化学工業株式会社製、SiO:30%、粒子径:10nm〜20nm、分散溶剤:メチルイソブチルケトン)を5.0質量部、ヒンダードアミン:TINUVIN292を0.05質量部添加して、ウレタン樹脂下塗り塗料の主剤を調製した。
ウレタン樹脂下塗り塗料の硬化剤としては、イソシアネート化合物:タケネートD−160N(三井化学株式会社製,不揮発分:75%、NCO含有量:12.6%)を用いた。
(Aタイプのアクリル−シリコーン樹脂下塗り塗料の調製)
Aタイプのアクリル−シリコーン樹脂は、加水分解性のシリル基含有シリコーン化合物でアクリル樹脂を架橋するタイプのものである。アミノ基含有アクリル樹脂(主剤):アクリディックA−9510(DIC株式会社製、不揮発分:50%、アミン価(17))に、アクリル樹脂の樹脂固形成分100質量部に対し、アセチレンアルコール化合物:サーフィノール104BCを2.0質量部、コロイダルシリカ:IPA−ST(日産化学工業株式会社製、SiO:30%、粒子径:10nm〜20nm、分散溶剤:2−プロパノール)を8.0質量部、ヒンダードアミン系化合物:TINUVIN123を0.05質量部、添加して、Aタイプのアクリル−シリコーン樹脂下塗り塗料の主剤を調製した。
また、Aタイプのアクリル−シリコーン樹脂に対する加水分解性のシリル基含有シリコーン化合物(硬化剤)としては、アクリディックA−9585(DIC株式会社製、有効成分:80%、エポキシ当量:560)を用いた。
(Bタイプのアクリル−シリコーン樹脂下塗り塗料の調製)
Bタイプのアクリル−シリコーン樹脂は、アルコキシシリルを有するアクリル樹脂を少量の触媒で加水分解、縮合するタイプのものである。アルコキシリル基を結合させたアクリル樹脂:カネカゼムラックYC4383(株式会社カネカ製、不揮発成分:55%)に、アクリル樹脂固形成分100質量部に対し、アセチレンアルコール類:サーフィノール504Tを1.5質量部、コロイダルシリカ:IPA−STを10質量部、ヒンダードアミン系化合物:TINUVIN292を0.06質量部、添加して、Bタイプのアクリル−シリコーン樹脂下塗り塗料の主剤を調製した。
また、Bタイプのアクリル−シリコーン樹脂に対する触媒としては、有機スズ系触媒:カネカゼムラックBT405Z(株式会社カネカ製)を用いた。
[銀鏡膜層形成用の下塗り塗面の作製]
(ウレタン樹脂下塗り塗面の作製)
上記のようにして調製されたウレタン樹脂下塗り塗料の主剤:硬化剤:シンナーが、質量比で8:1:4となるように混合したものを、PC基材(150×50×1mm)及びABS基材(150×50×1mm)の各々にスプレーで塗布した。
次に、表面にウレタン樹脂下塗り塗料を塗布した両基材の各々を、80℃の温風乾燥炉で、30分間硬化させて、銀鏡膜形成用のウレタン樹脂下塗り塗面(膜厚:20μm〜23μm)を有するPC基材及びABS基材を作製した。
(Aタイプのアクリル−シリコーン樹脂下塗り塗面の作製)
上記のようにして調製されたAタイプのアクリル−シリコーン樹脂下塗り塗料の主剤:硬化剤:シンナーが、8:1:5となるように混合したものをPC基材(150×50×1mm)及びABS基材(150×50×1mm)の各々にスプレーで塗布した。
次に、表面に、上記Aタイプのアクリル−シリコーン樹脂下塗り塗料を塗布した両基材の各々を、80℃の温風乾燥炉で、30分間、強制乾燥後、20℃で1週間放置して硬化させ、銀鏡膜形成用のAタイプのアクリル−シリコーン樹脂下塗り塗面(膜厚:14μm〜16μm)を有するPC基材及びABS基材を作製した。
(Bタイプのアクリル−シリコーン樹脂下塗り塗面の作製)
上記のようにして調製されたBタイプのアクリル−シリコーン樹脂下塗り塗料の主剤:硬化剤:シンナーが、質量比で、10:1:6となるように混合したものをPC基材(150×50×1mm)及びABS基材(150×50×1mm)の各々にスプレーで塗布した。
次に、表面に、上記Bタイプのアクリル−シリコーン樹脂下塗り塗料を塗布した両基材の各々を、80℃の温風乾燥炉で、30分間、強制乾燥後、20℃で1週間放置して硬化させて、銀鏡膜形成用のBタイプのアクリル−シリコーン樹脂下塗り塗面(膜厚:18μm〜20μm)を有するPC基材及びABS基材を作製した。
[銀鏡膜層形成組成液の下塗り塗面に対する濡れ性試験]
上記のようにして作製したPC基材上に下塗り塗面を形成した3種類の基材について、それぞれ実験例1〜18の銀鏡膜層形成組成を塗布した際の濡れ性を測定した。なお、濡れ性は、目視によりハジキ現象が認められなかったものを「○」で表し、ハジキ現象が認められたものを「×」で表した。
[銀鏡膜形成温度−時間に関する試験]
実験例1で調製した銀鏡膜層形成組成液を、上記のPC基材上にウレタン樹脂下塗り塗面を作製した複数枚の基材の表面に塗布し、それぞれ、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、及び130℃の各々の温度に設定した温風乾燥炉内で加熱し、下塗り塗面層上に銀鏡膜層が形成されるまでの時間を測定した。結果を表2及び図1に示した。
表2及び図1に示した結果から、銀鏡塗装に割くことができる作業時間を、銀鏡膜層形成作業の開始時間から約1時間以内とした場合であっても、実験例1で調製した銀鏡膜層形成組成液は、本発明の好ましい温度範囲である77℃以上90℃以下であれば、下塗り塗面層上に銀鏡膜層が形成できることが明らかになった。なお、加熱時の温度が90℃を超えると、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂やポリメタクリレート樹脂などの基材変形の虞があるため、好ましくない。
また、濡れ性試験で良好な結果が得られた実験例2〜実験例16で調製した銀鏡膜層形成組成液を塗布したものについて、それぞれ50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、及び130℃の各々の温度に設定した温風乾燥炉で実験例1の場合と同様にして測定したが、結果は実験例1で調製した銀鏡膜層形成組成液の場合と同様であった。
[実験例19〜21]
実験例19〜21としては、実験例1、実験例11及び実験例13で調製した銀鏡膜層形成組成液を用い、銀鏡膜層の表面に上塗り塗面を形成し、得られた上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料の物性の測定を行った。
(上塗り塗料の調製)
銀膜の保護のための透明の上塗り塗装用の塗料として、アクリル系ポリオール樹脂(アロタン2050−55):イソシアネート硬化剤(タケネートD−160N):シンナー=70:10:50となるように混合し、上塗り塗料を調製した。
(銀鏡膜層上への上塗り塗面の形成)
上記のようにして作製したABS基材上にウレタン樹脂下塗り塗面を形成した基材を複数枚用意した。また、実験例1、実験例11及び実験例13で調製した銀鏡膜層形成組成液の各々を2−プロパノールを用いて50%に希釈した。次に、ABS基材上にウレタン樹脂下塗り塗面を形成した基材の各々に、実験例1、実験例11及び実験例13で調製した銀鏡膜層形成組成液の各々を2−プロパノールを用いて50%に希釈してスプレー塗装した。次いで、これらのスプレー塗装された3種類の基材の各々を、80℃の温度に設定した温風乾燥炉で30分間加熱し、ABS基材上に銀鏡膜層を形成した。なお、実験例11の銀鏡膜層形成組成液は、実験例1の銀鏡膜層形成組成液に更にビス(2−メトキシエチル)エーテルを添加したものであり、実験例13の銀鏡膜層形成組成液は、実験例11の銀鏡膜層形成組成液に更にヒンダードアミンとしてのTINUVIN292を添加したものである。
次に、実験例1、実験例11及び実験例13に対応する銀鏡膜層を形成した3種類の基材それぞれ表面上に、上塗り塗料を、乾燥後の膜厚が10μm以上15μm以下の範囲となるようにスプレー塗布し、さらに、80℃の温風乾燥炉で、30分間、強制乾燥させることで、実験例19〜21の上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料を得た。これらの上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料1の模式断面を図2に示す。なお、図2中、Bは基材を、2は下塗り塗面層を、3は銀鏡膜層を、また、4は上塗り塗面層を示している。
次に、実験例19〜21の上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料のそれぞれについて、以下の物性の測定を行った。
(1)外観評価、
(2)付着性評価試験、
(3)不粘着性評価試験、
(4)耐湿付着性試験、
(5)冷熱繰り返し付着性試験、
(6)耐水性試験、
(7)紫外線耐光試験、
(8)耐衝撃性試験、
(9)耐アルカリ性試験、
(10)耐酸性試験、及び、
(11)耐人工汗試験を行なった。
結果をまとめて表3に示した。なお、それぞれの試験の判断基準は以下に示したとおりである。
(1)外観評価
上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料の銀鏡膜層に、発色不良、クレータ、クラック、膨れ、白亜化のいずれか一つでも目視できた場合には、「×」とし、発色不良、クレータ、クラック、膨れ、白亜化のいずれも目視できない場合には、「○」として評価した。
(2)付着性評価試験
付着性評価試験は、JIS5600−5−6(2007)に準じて評価した。即ち、上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料の各々の表面に形成されている塗膜にカッターナイフを垂直に当てて、2mm×2mm角の碁盤目(100マス)に切込みを入れた後、各々の表面に接着強度0.44±0.05kgf/mmの接着テープを貼り付け、その後、これを45°の角度で急激に引き剥がす付着性試験を行い、それぞれの上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料の表面に形成されている塗膜の剥離の有無を調べた。その結果、碁盤目(100マス)中、塗膜の剥離が1箇所も認められなかったものを○、塗膜の剥離が1箇所でも認められたものを×として評価した。
(3)不粘着性評価試験
50℃±2℃に設定された恒温槽内に、500gの重り(直径(φ):40mm)、複数枚のガーゼ、実験例19〜21の上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料の各々を収容し、2時間放置した後、恒温槽内で各々の表面に形成されている塗膜の表面上にガーゼを5枚を重ね、更にその上に500gの重りを載置し、更に2時間放置した。その後、各々の上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料料を恒温槽内から取り出して、常温(25℃)となるまで放置した後、目視により、各々の表面に形成されている塗膜の表面に重りを載置した部分に、ガーゼの痕が視認できる場合は×、できない場合は○として評価した。
(4)耐湿付着性試験
耐湿付着性試験は、実験例19〜21の上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料の各々を、40℃±1℃、相対湿度(RH):95%以上の恒温槽内に収容して120時間放置し、その後、各々の上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料について、上記(1)に示す付着性評価試験を実施した。その結果、碁盤目(100マス)中、各々の上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料の表面に形成されている塗膜の剥離が1箇所もなかったものを○、塗膜の剥離が1箇所でも認められたものを×として評価した。
(5)冷熱繰り返し付着性試験
冷熱繰り返し付着性試験は、実験例19〜21の上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料の各々を、−30℃に1時間放置し、その後、60℃に2時間放置するというサイクルを3回行った後、各々の上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料について、上記(1)に示す付着性評価試験を実施した。その結果、碁盤目(100マス)中、各々の表面に形成されている塗膜の剥離が1箇所も認められなかったものを○、1箇所でも認められたものを×として評価した。
(6)耐水性試験
耐水性試験は、実験例19〜21の上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料の各々を、40℃の水に24時間浸漬した後、上記(1)に示す付着性評価試験を実施した。その結果、碁盤目(100マス)中、塗膜の剥離が1箇所もなかったものを○、塗膜の剥離が1箇所でも認められたものを×として評価した。
(7)紫外線耐光試験
紫外線オートフェーダドメーター(U48AU、スガ試験機株式会社製)を用い、実験例19〜21の上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料の各々に紫外線を200時間照射した後、上記(1)に示す付着性評価試験を実施した。その結果、碁盤目(100マス)中、塗膜の剥離が1箇所も認められなかったものを○、塗膜の剥離が1箇所でも認められたものを×として評価した。
(8)耐衝撃性試験
耐衝撃性試験は、JIS K5600−5−3に準拠して行なった。即ち、デュポン式衝撃試験機を用いて、上塗り塗面が形成された3種類の上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料の各の表面に500gの重りを300mmの高さから落下した。その結果、目視により、各々の表面に形成されている塗膜を観察し、各々の表面に形成されている塗膜に割れや剥離が認められなかったものを○、各々の表面に形成されている塗膜に割れや剥離が認められものを×として評価した。
(9)耐アルカリ性試験
耐アルカリ性試験は、JIS K5600−6−1に準拠して行なった。即ち、実験例19〜21の上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料の各々を、55℃の0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液に24時間浸漬した後、各々の表面に形成されている塗膜の外観を目視により観察し、塗膜の外観に異常や、その一部にふくれが認められなかったものを○、塗膜の外観に異常や、その一部にふくれが認められたものを×として評価した。
(10)耐酸性試験
耐酸性性試験は、JIS K5600−6−1に準拠して行なった。即ち、実験例19〜21の上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料の各々を、55℃の0.1Nの硫酸水溶液に24時間浸漬した後、各々の表面に形成されている塗膜の外観を目視により観察し、各々の表面に形成されている塗膜の外観に異常や、その一部にふくれが認められなかったものを○、各々の表面に形成されている塗膜の外観に異常や、その一部にふくれが認められたものを×として評価した。
(11)耐人工汗試験
人工汗は、JIS−L−1047に準じて調製した。即ち、L−ヒスチジン塩酸塩(1水塩)0.5g、塩化ナトリウム5g、燐酸水素二ナトリウム(12水塩)5g、(1/10)N水酸化ナトリウム溶液25mlと蒸留水を加え、pH8.0で全容が1リットルになるよう調整したものである。この人工汗を、実験例19〜21の上上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料の各々の表面に形成されている塗膜に滴下し、室温(25℃)にて8時間処理した。この処理の後、各々の表面に形成されている塗膜上の人工汗をふき取り、表面状態を目視観察し、各々の表面に形成されている塗膜の外観に異常や、人工汗の銀鏡膜層への浸透が認められなかったものを○、各々の表面に形成されている塗膜の外観に異常や、人工汗の銀鏡膜層への浸透が認められ、人工汗の銀鏡膜層への浸透が認められた場所と人工汗の銀鏡膜層への浸透が認められない場所との色相との違いが観察されたものを×として評価した。
また、実験例21に対応する上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料の銀鏡面を写した写真を図3に示した。
表3に示した結果から、実験例19の上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料は冷熱繰り返し付着性試験及び紫外線耐光試験を除いて良好な結果が得られており、実験例20の上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料は冷熱繰り返し付着性試験を除いて良好な結果が得られており、さらに、実験例20の上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料は全ての試験に良好な結果が得られていることが分かる。
実験例19と実験例20との間の構成の差異は、銀鏡膜層形成組成液中にビス(2−メトキシエチル)エーテルを含む(実験例20)か含まない(実験例19)かである。また、実験例20と実験例21との間の構成の差異は、銀鏡膜層形成組成液中にヒンダードアミンを含む(実験例21)か含まない(実験例20)かである。そのため、銀鏡膜層形成組成液中に少なくともビス(2−メトキシエチル)エーテルを添加すると、銀鏡膜層と基材及び上塗り塗面との間の付着強度が大きくなって、冷熱繰り返し付着性試験結果が良好になり、更に、ヒンダードアミンをも添加すると、紫外線耐光試験結果も良好となることが分かる。
ここで、実験例17の銀鏡膜層形成組成液をPC基材上に形成した上記のウレタン樹脂下塗り塗面層上に塗布し、その後、130℃の温度に設定した温風乾燥炉で2時間加熱し、下塗り塗面層上に形成した銀鏡膜を写した写真を図4(a)に示す。また、実験例18の銀鏡膜層形成組成液をPC基材上に形成した上記のウレタン樹脂下塗り塗面層上に塗布し、その後、130℃の温度に設定した温風乾燥炉で2時間加熱し、下塗り塗面層上に形成した銀鏡膜を写した写真を図4(b)に示す。
図3と図4(a)及び図4(b)との各々との対比から、本発明に係る銀鏡膜層形成組成液から形成した銀鏡膜には、クラックやムラが生じていないが、本発明に該当しない実験例17及び実験例18の各々から形成した銀鏡膜には、クラックやムラが生じていることが、判った。
[実験例22〜28]
(銀鏡膜層形成組成液中の第1の錯体と第2の錯体との配合割合について)
実験例22〜28では、実験例1で用いた銀鏡膜層形成組成液中の2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート酸化銀錯体(以下「第1の錯体」ということがある)とn−ブチルアミン酸化銀錯体(以下「第2の錯体」ということがある)との配合割合を種々変更して、銀鏡膜層形成組成液中の第1の錯体と第2の錯体との最適な配合割合について検討した。
まず、第1の錯体と第2の錯体の配合比を、モル比で、3:7(実験例22)、4:6(実験例23)、5:5(実験例24)、6:4(実験例25)、7:3(実験例26)、8:2(実験例27)及び9:1(実験例28)と変化させた以外は実験例1と同様の組成の銀鏡膜形成組成液を調製した。その際の第2の錯体の溶解性を目視により調査し、完全に溶解したものを○で表し、不溶解成分が存在していたものを×で表した。結果をまとめて表4に示した。
表4に示したように、銀鏡膜層形成組成液中の第2の錯体の配合割合は、モル比で、第1の錯体の配合割合と同じかそれよりも多くなると第2の錯体の溶解性が低下している。その結果、第2の錯体の溶解性の観点から見た銀鏡膜層形成組成液中の第1の錯体と第2の錯体の配合割合は、モル比で、6:4〜9:1が好ましいことが分かる。
また、上記の銀鏡膜層形成組成液中の第2の錯体の溶解性の測定結果を踏まえ、良好な溶解性が得られた実験例25〜28の銀鏡膜層形成組成液中を用い、これらの銀鏡膜形成組成液を2−プロパノールで50%に希釈し、実験例19〜21で用いたのと同様のABS基材上にウレタン樹脂下塗り塗面を形成した基材の表面にスプレー塗装した。その後、90℃の温度に設定した温風乾燥炉で1時間加熱し、銀鏡膜の形成性を調べた。結果は、銀鏡膜が正常に形成されたものを○で表し、第1の錯体の析出が認められたものを×で表した。結果をまとめて表4に示した。
表4に示した結果から以下のことが分かる。すなわち、モル比で、第1の錯体:第2の錯体=9:1の場合は、銀鏡膜が形成されたが、銀鏡膜上に第1の錯体の析出が認められた。この場合、第1の錯体を熱分解させて銀に変換させるには、更に130℃に加熱することが必要であった。その結果、第2の錯体の溶解性及び銀鏡膜の形成性の両観点から見た銀鏡膜層形成組成液中の第1の錯体と第2の錯体の配合割合は、モル比で、9:2〜6:4が好ましいことが分かる。
[実験例29〜34]
(銀鏡膜形成組成液中のヒンダードアミン系化合物の配合割合について)
実験例21では、ヒンダードアミン系化合物としてTINUVIN292が銀鏡膜層形成組成液中の銀100質量部に対して0.10質量部添加された実験例13で調製された銀鏡膜形成組成液を用いて銀鏡膜層を形成し、この銀鏡膜層上に上塗り塗面層を形成した例を示した。実験例29〜34では、実験例13で調製された銀鏡膜層形成組成液において、ヒンダードアミン系化合としてTINUVIN292を、表5に示すように、銀鏡膜層形成組成液中の銀100質量部に対して2質量部(実験例29)、3質量部(実験例30)、5質量部(実験例31)、9質量部(実験例32)、10質量部(実験例33)及び11質量%(実験例34)と変化させたものを用いた以外は、実験例21と同様の上塗り塗面層が形成された銀鏡膜層を作製し、それぞれの外観評価及び紫外線評価試験を行った。外観評価基準及び紫外線耐光試験の評価基準は、次のとおりである。
(外観評価)
実験例29〜34の各々の上塗り塗面層が形成された銀鏡膜層に、発色不良、クレータ、クラック、膨れ、白亜化のいずれか一つでも目視できた場合には×とし、発色不良、クレータ、クラック、膨れ、白亜化のいずれも目視できない場合には○として評価した。
(紫外線耐光試験)
紫外線オートフェーダドメーター(U48AU、スガ試験機株式会社製)を用い、実験例29〜34の各々の上塗り塗面層が形成された銀鏡膜層に紫外線を300時間照射した後、上述の「(2)付着性評価試験」を実施した。結果は、実験例29〜34の各々の表面に形成されている塗膜の剥離が碁盤目(100マス)中に1箇所も認められなかったものを○、塗膜の剥離が碁盤目(100マス)中に1箇所でも認められたものを×として評価した。なお、この時の紫外線照射時間は、実験例19〜21の上塗り塗面層が形成された銀鏡膜層に対する紫外線照射時間の1.5倍となっている。結果をまとめて表5に示した。
表5に示した結果から以下のことが分かる。すなわち、ヒンダードアミンとしてのTINUVIN292の添加量が銀鏡膜層形成組成液中の酸化銀中の銀100質量部に対して3.00質量部未満(実験例29)であると、得られた上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料の耐経年劣化性が劣るようになるので、好ましくない。一方、ヒンダードアミンとしてのTINUVIN292添加量が鏡膜層形成組成液中の銀化合物中の銀100質量部に対して10.0質量部を超える(実験例34)と、銀鏡膜層形成組成液から形成される銀鏡膜層の銀の金属光沢が損なわれ、銀鏡膜層が虹色に光る場合があり、好ましくない。
なお、表3に示した実験例21の結果をも考え合わせると、ヒンダードアミンとしてのNUVIN292の添加量は、銀鏡膜層形成組成液中の酸化銀中の銀100質量部に対し0.1質量部以上10質量部以下であれば一応良好な外観及び紫外線耐光性が得られることが分かり、より良好な外観及び紫外線耐光性が必要な場合には3質量部以上10質量部以下とすればよいことが分かる。
[実験例35〜40]
(銀鏡膜形成組成液中のアミノシラン処理ナノシリカの配合割合について)
実験例14では、銀鏡膜層形成組成液中の銀100質量部に対してアミノシラン処理ナノシリカ(SIS6962.1N30)を10.00質量部添加した銀鏡膜層形成組成液を示した。実験例35〜40では、実験例14で用いたのと同様のアミノシラン処理ナノシリカを、銀鏡膜層形成組成液中の銀100質量部に対して2質量部(実験例35)、3質量部(実験例36)、5質量部(実験例37)、9質量部(実験例38)、10質量部(実験例39)及び11質量部(実験例40)とした以外は実験例14と同様の銀鏡膜形成組成液を用い、2−プロパノールを用いて50%に希釈し、実験例19〜21で用いたのと同様のABS基材上にウレタン樹脂下塗り塗面を形成した基材の表面にスプレー塗装した。
その後、80℃の温度に設定した温風乾燥炉で1時間加熱して銀鏡膜層を形成し、更にこの銀鏡膜層の表面に実験例19〜21で用いたのと同様の上塗り塗料を乾燥後の膜厚が10μm以上15μm以下の範囲となるようにスプレー塗布し、さらに、80℃の温風乾燥炉で、30分間、強制乾燥させることで、実験例35〜40の上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料を得た。
このようにして作製された実験例35〜40の上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料に対して目視により2種類の外観評価を行った。外観評価(その1)は、実験例35〜40の上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料に、クラックが一つでも目視できた場合には×とし、クラックが目視できない場合には○として評価した。また、外観表価(その2)は、実験例35〜40の上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料の発色について、銀鏡膜層の銀の金属光沢が損なわれていない場合を○として評価し、銀鏡膜層の銀の金属光沢が損なわれている場合を×として評価した。結果をまとめて表6に示した。
表6に示した結果から以下のことが分かる。すなわち、銀鏡膜層形成組成液中のアミノシラン処理ナノシリカの添加量が、銀鏡膜層形成組成液中の銀100質量部に対して3.00質量部未満(実験例29)であると、銀鏡膜層形成組成液から銀鏡膜層を形成する際に銀ナノ粒子の凝集効果がなくなり、形成される銀鏡膜層にクラックが生じる場合があるので、好ましくない。一方、銀鏡膜層形成組成液中のアミノシラン処理ナノシリカの添加量が、銀鏡膜層形成組成液中の銀100質量部に対して10.00質量部を超える場合(実験例34)には、銀鏡膜層形成組成液から形成される銀鏡膜層の銀の金属光沢が損なわれる場合があり、好ましくない。
[実験例41〜45]
(下塗り塗料中のアセチレンアルコールの配合割合について)
アクリル系ポリオール樹脂の樹脂固形成分100質量部に対し、アセチレンアルコール類:サーフィノール504の配合割合を変える以外は、上記の[下塗り塗料の調製]において説明したウレタン樹脂下塗り塗料の主剤を調製した。すなわち、アクリル系ポリオール樹脂の樹脂固形成分100質量部に対し、アセチレンアルコール類を0.3質量部(実験例41)、0.5質量部(実験例42)、1.5質量部(実験例43)、3.0質量部(実験例44)及び4.0質量部(実験例45)とした5種類のウレタン樹脂下塗り塗料の主剤を調製した。
次いで、実験例41〜45の5種類のそれぞれのウレタン樹脂下塗り塗料の主剤について、上記の[下塗り塗料の調製]において説明したイソシアネート系化合物からなる硬化剤(タケネートD−160N)を用い、ウレタン樹脂下塗り塗料の主剤:硬化剤:シンナー=8:1:4(質量比)となるように混合したものを、それぞれPC基材(150×50×1mm)及びABS基材(150×50×1mm)にスプレーで塗布した。次に、表面にウレタン樹脂下塗り塗料を塗布した基材の各々を、80℃の温風乾燥炉で、30分間硬化させて、銀鏡膜形成用のウレタン樹脂下塗り塗面(膜厚:20μm〜23μm)を有するPC基材及びABS基材を作製した。
次に、5種類の銀鏡膜形成用のウレタン樹脂下塗り塗面を有するPC基材及びABS基材のそれぞれの表面に、実験例13で調製した銀鏡膜層形成組成液を2−プロパノールを用いて50%に稀釈した溶液を用い、スプレー塗装し、さらに80℃の温風乾燥炉で30分間加熱して銀鏡膜を形成した。更にこの銀鏡膜層の表面に実験例19〜21で用いたのと同様の上塗り塗料を乾燥後の膜厚が10μm以上15μm以下の範囲となるようにスプレー塗布し、さらに、80℃の温風乾燥炉で、30分間、強制乾燥させることで、実験例41〜45のPC基材及びABS基材に上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料を得た。
このようにして作製された実験例41〜45のPC基材及びABS基材に上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料のそれぞれについて、以下のとおり、銀鏡膜発色性評価試験及び耐水性試験を行った。銀鏡膜発色性評価試験は、実験例41〜45のPC基材及びABS基材に上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料について、銀鏡膜発色性の指標として、光沢度計(商品名:UNI−Gloss 60(コニカミノルタ株式会社製))を使用して60度−60度鏡面膜反射率(%)を測定した。測定値は、PC基材及びABS基材のそれぞれについて測定した平均値として求めた。また、耐水性試験は、実験例41〜45の上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料の各々を、40℃の水に5日間浸漬した後、表面に形成されている塗膜の外観を目視により観察し、表面に形成されている塗膜の外観に異常やその一部にふくれが認められなかったものを○、塗膜の外観に異常やその一部にふくれが認められたものを×、塗膜の外観に若干の白化が認められたものを△として評価した。結果をまとめて表7に示した。
なお、表7中、光沢度(%)は、JIS規格では、可視波長全域にわたって屈折率が1,567のガラス表面を光沢度100(%)と規定している。しかし、ガラス表面は湿気などによって侵されやすいため、ここでは屈折率1.500付近の光沢度90%を実際の基準面にして求めた。
表7の結果から、以下のことが分かる。すなわち、上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料の光沢度は、下塗り塗面中のアクリル系ポリオール樹脂の樹脂固形成分に対するアセチレンアルコール類の添加量が多いほど高くなることが分かる。しかしながら、下塗り塗面中のアクリル系ポリオール樹脂の樹脂固形成分に対するアセチレンアルコール類の添加量が多くなるほど、耐水性が低下する。そのため、好ましい下塗り塗面中のアクリル系ポリオール樹脂の樹脂固形成分に対するアセチレンアルコール類の添加量は、塗り塗面中のアクリル系ポリオール樹脂の樹脂固形成分100質量部に対して0.3〜3.0質量部であり、より好ましくは0.3〜1.5質量部である。
[実験例46〜50]
(コロイダルシリカを含むウレタン樹脂下塗り塗料の保存安定性について)
アクリル系ポリオール樹脂の樹脂固形成分100質量部に対し、コロイダルシリカ:MIBK−STの配合割合を変える以外は、上記の[下塗り塗料の調製]における(ウレタン樹脂下塗り塗料の調製)において説明したのと同様にしてウレタン樹脂下塗り塗料の主剤を調製した。すなわち、アクリル系ポリオール樹脂の樹脂固形成分100質量部に対し、コロイダルシリカを1質量部(実験例46)、3質量部(実験例47)、5質量部(実験例48)、10質量部(実験例49)及び20質量部(実験例50)とした5種類のウレタン樹脂下塗り塗料の主剤を調製した。
次いで、実験例46〜50の5種類のそれぞれのウレタン樹脂下塗り塗料の主剤について、保存安定性を調べた。保存安定性は、実験例46〜50の5種類のウレタン樹脂下塗り塗料の主剤の各々を、20℃で30日間放置した後、各々の粘度に変化がない場合を○、粘度が高くなった場合を×として、評価した。結果をまとめて表8に示した。
表8に示した結果から以下のことが分かる。すなわち、保存安定性の測定結果からすれば、アクリル系ポリオール樹脂の樹脂固形成分100質量部に対するコロイダルシリカの配合割合は10質量部以下が好ましい。なお、保存安定性の測定結果は、アクリル系ポリオール樹脂の樹脂固形成分100質量部に対するコロイダルシリカの配合割合の下限は1質量部(実験例46)までしか行っていないが、技術常識上、コロイダルシリカの配合割合いをより低減してより良好な保存安定性が維持されることは自明である。
[実験例51〜55]
(コロイダルシリカを含むアクリル−シリコーン樹脂下塗り塗膜の特性について)
Aタイプのアクリル−シリコーン樹脂の樹脂固形分100質量部に対し、コロイダルシリカ(IPA−ST)の配合割合を変える以外は、上記の[下塗り塗料の調製]における(Aタイプのアクリル−シリコーン樹脂下塗り塗料の調製)において説明したのと同様にして、Aタイプのアクリル−シリコーン樹脂下塗り塗料の主剤を調製した。すなわち、Aタイプのアクリル−シリコーン樹脂の樹脂固形分100質量部に対し、コロイダルシリカを1質量部(実験例51)、3質量部(実験例52)、5質量部(実験例53)、10質量部(実験例54)及び20質量部(実験例55)とした5種類のAタイプのアクリル−シリコーン樹脂下塗り塗料の主剤を調製した。
次いで、実験例51〜55の5種類のそれぞれのAタイプのアクリル−シリコーン樹脂下塗り塗料の主剤について、上記の[下塗り塗料の調製]において説明した加水分解性のシリル基含有シリコーン化合物からなる硬化剤(アクリディックA−9585)を用い、Aタイプのアクリル−シリコーン樹脂下塗り塗料の主剤:硬化剤:シンナー=8:1:5(質量比)となるように混合したものを、それぞれPC基材(150×50×1mm)及びABS基材(150×50×1mm)にスプレーで塗布した。次に、表面にウAタイプのアクリル−シリコーン樹脂下塗り塗料を塗布した基材の各々を、80℃の温風乾燥炉で、30分間硬化させて、銀鏡膜形成用のAタイプのアクリル−シリコーン樹脂下塗り塗面(膜厚:20μm〜23μm)を有するPC基材及びABS基材を作製した。
次に、5種類の銀鏡膜形成用のAタイプのアクリル−シリコーン樹脂下塗り塗面を有するPC基材及びABS基材のそれぞれの表面に、実験例13で調製した銀鏡膜層形成組成液を2−プロパノールを用いて50%に稀釈した溶液を用い、スプレー塗装し、さらに80℃の温風乾燥炉で30分間加熱して銀鏡膜を形成した。更にこの銀鏡膜層の表面に実験例19〜21で用いたのと同様の上塗り塗料を乾燥後の膜厚が10μm以上15μm以下の範囲となるようにスプレー塗布し、さらに、80℃の温風乾燥炉で、30分間、強制乾燥させることで、実験例51〜55のPC基材及びABS基材に上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料を得た。
このようにして作製された実験例51〜55のPC基材及びABS基材に上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料のそれぞれについて、実験例41〜45の場合と同様にして、銀鏡膜発色性の指標として、光沢度計(商品名:UNI−Gloss 60(コニカミノルタ株式会社製))を使用して60度−60度鏡面膜反射率(%)を測定した。測定値は、PC基材及びABS基材のそれぞれについて測定した平均値として求めた。結果をまとめて表9に示した。
表9に示した結果から以下のことが分かる。すなわち、銀鏡膜発色性評価試験結果からすれば、Aタイプのアクリル−シリコーン樹脂の樹脂固形成分100質量部に対するコロイダルシリカの配合割合は、多い方が好ましく、3〜20質量部が好ましい。しかし、保存安定性の結果を示している表8の結果をも考慮すると、より好ましい下塗り塗料中の樹脂固形分100質量部に対するコロイダルシリカの配合割合いは、3〜10質量部となる。
[実験例53]
実験例1で調製した銀膜形成組成液は透明であるため、装部位と未塗装部位の判別を行い難い。そのため、塗装時の塗着状況の把握が困難であり、塗装作業性の問題が生じることがある。そこで、実験例53では、実験例1で調製した銀膜形成組成液30.0gに対し、更にPVD法により作製されたアルミニウム顔料(ECKART社のMETALUREA−61010BG、アルミニウム顔料の含有率:10%)を0.0045g添加して充分撹拌して、混合することにより銀膜形成組成液を調製した。
このようにして調製された実験例53の銀膜形成組成液を2−プロパノールを用いて50%に希釈し、PC基板(150×50×1mm)にスプレー塗装した。そうすると、塗装部位は褐色〜シルバー色となり、未塗装部位と容易に区別、判別できた。次に、実験例53の銀膜形成組成液をスプレー塗装したPC基板を80℃の温風乾燥炉で30分間強制乾燥すると、鏡面外観を損なうことなく、実験例1の銀膜形成組成液と同等の外観を呈する銀鏡膜層が得られた。
なお、PVD法によって製造されたメタリック顔料は、極端に高い光沢、強い被覆力が特徴で、約60nm未満の平均厚みと狭い厚み分布を有しており、表面は極めて滑らかで均質である。PVD法によって製造されたメタリック顔料を形成する金属は、アルミニウム、チタン、クロム及びこれらの合金から選択される少なくとも1種が好ましい。これらの金属ないし合金は、銀灰色光沢を有するため、銀鏡膜形成組成物中に少量含有されていても、銀鏡膜層の発色に離京を及ぼさない。
PVD法によって製造されたメタリック顔料の平均粒径は20μm以下が好ましく、より好ましくは6〜10μmである。また、PVD法によって製造されたメタリック顔料の平均厚みは30nm以下が好ましく、より好ましくは10〜15nmである。PVD法によって製造されたメタリック顔料の銀鏡膜層形成組成物への添加量は、銀化合物錯体に対して固形分比で0.005〜0.5質量%であるが、0.01〜0.03質量%が好ましい。PVD法によって製造されたメタリック顔料の銀鏡膜層形成組成物への添加量が0.005質量%未満では塗着状態の判別が困難であり、0.5質量%を超えると銀鏡面外観を損なうおそれがある。
なお、上記発明の実施の形態では、銀化合物として、主として酸化銀を用いた例について説明したが、本発明に係る銀鏡膜層形成組成液で用いる銀化合物は、酸化銀に限定されることはなく、例えば炭酸銀や、シュウ酸銀を単独で用いることができ、さらに、酸化銀、炭酸銀及びシュウ酸銀から選択された少なくとも2種を組み合わせて用いることもできる。
また、上記の各種実験例では、アンモニウムカルバメート系銀化合物錯体を形成するアンモニウムカルバメート系化合物が2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメートである場合について説明したが、他に、
エチルアンモニウム エチルカルバメート、
イソプロピルアンモニウム イソプロピルカルバメート、
n−ブチルアンモニウム n−ブチルカルバメート、
イソブチルアンモニウム イソブチルカルバメート、
t−ブチルアンモニウム t−ブチルカルバメート、
2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメート、
オクタデシルアンモニウム オクタデシルカルバメート、
2−メトキシエチルアンモニウム 2−メトキシエチルカルバメート、
2−シアノエチルアンモニウム 2−シアノエチルカルバメート、
ジブチルアンモニウム ジブチルカルバメート、
ジオクタデシルアンモニウム ジオクタデシルカルバメート、
メチルデシルアンモニウム メチルデシルカルバメート、
ヘキサメチレンイミンアンモニウム ヘキサメチレンイミンカルバメート、
モルホリニウム モルホリンカルバメート、
ピリジウム エチルヘキシリカルバメート、
ベンジルアンモニウム ベンジルカルバメート、
トリエトキシシリルプロピルアンモニウム トリエトキシシリルプロピルカルバメート、
及びその誘導体から選択される1種又は2種以上の混合物を用いることもできる。
また、上記発明の実施の形態では、本発明に係る銀鏡膜層形成組成液を、基材の表面に形成した下塗り塗面層の表面に、スプレーコーティングした例を示したが、本発明に係る銀鏡膜層形成組成液は、刷毛塗り、ディップコーティング、ロールコーティング、スピンコーティング方法も利用することができ、さらに、インクジェットプリンティング、オフセットプリンティング、スクリーンプリンティング、パッドプリンティング、グラビアプリンティング、フレキソプリンティング、リソプリンティングなど、プリンティング方法など、周知の方法を採用することができる。
本発明に係る銀鏡膜層形成組成液は、従来例の物よりも低温で銀鏡膜を形成することができるので、例えば汎用性の高い、熱可塑性樹脂でできた基材等に銀鏡膜層を形成することができるので、産業上の利用可能性が高い。
また、本発明に係る銀鏡膜層形成組成液は、簡単に、製造することができるので、産業上の利用可能性が高い。
また、銀鏡膜塗面の形成方法によって形成される銀鏡膜塗面は、銀鏡膜を長期に亘って劣化するのを防止することができるので、産業上の利用可能性が高い。
1…上塗り塗面が形成された銀鏡膜層形成試料
2…下塗り塗面層
3…銀鏡膜層
4…上塗り塗面層
B…基材

Claims (18)

  1. アルコール系溶媒中に、
    銀化合物の銀原子にアンモニウムカルバメート系化合物が配位した第1の錯体と、
    銀化合物の銀原子にアミン系化合物が配位した第2の錯体と、
    還元剤と、
    を含み、
    前記第1の錯体と前記第2の錯体との混合割合は、銀原子のモル比で、6:4〜8:2である、
    銀鏡膜層形成組成液。
  2. 前記アルコール系溶媒は、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール及び2−メチル−1−プロパノールからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項に記載の銀鏡膜層形成組成液。
  3. 前記銀化合物は、酸化銀(AgO)、炭酸銀(AgCO)及びシュウ酸銀(Ag)からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の銀鏡膜層形成組成液。
  4. 前記アンモニウムカルバメート系化合物は、2−エチルヘキシルアンモニウム 2−エチルヘキシルカルバメートである、請求項1〜のいずれかに記載の銀鏡膜層形成組成液。
  5. 前記アミン系化合物は、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン及びイソブチルアミンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜のいずれかに記載の銀鏡膜層形成組成液。
  6. 前記還元剤は、室温では還元作用を示さず、室温を超えた温度で還元作用を示すものである、請求項1〜のいずれかに記載の銀鏡膜層形成組成液。
  7. 前記還元剤は、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N−ジエチルアミノエタノール及び1,2−プロパンジオールの群から選択される少なくとも1種である、請求項に記載の銀鏡膜層形成組成液。
  8. ビス(2−メトキシエチル)エーテル及びジプロピレングリコールジメチルエーテルの群から選択される少なくとも1種を更に含む、請求項に記載の銀鏡膜層形成組成液。
  9. ヒンダードアミン系化合物を更に含む、請求項1〜のいずれかに記載の銀鏡膜層形成組成液。
  10. アミノシラン処理ナノシリカを更に含む、請求項1〜のいずれかに記載の銀鏡膜層形成組成液。
  11. 物理蒸着法によって製造されたアルミニウム顔料を前記第1の錯体及び前記第2の錯体の合計質量に対して0.005〜0.5質量%更に含む、請求項1〜10のいずれかに記載の銀鏡膜層形成組成液。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載の銀鏡膜層形成組成液の製造方法であって、
    アルコール系溶媒中に銀化合物とアンモニウムカルバメート系化合物を添加し、未反応の銀化合物を濾別することにより、前記銀化合物に前記アンモニウムカルバメート系化合物が配位した第1の錯体を含有するアルコール系溶液を調製する工程と、
    アルコール系溶媒中に、銀化合物と、前記銀化合物中の銀原子に配位する量に等しいかそれ以上の量のアミン系化合物とを添加し、沈降した前記銀化合物の銀原子に前記アミン系化合物が配位した第2の錯体を前記アルコール系溶媒で洗浄した後、前記アルコール系溶媒中に分散させて前記第2の錯体が分散したアルコール系溶液を調製する工程と、
    前記第1の錯体を含有するアルコール系溶液と、前記第2の錯体が分散したアルコール系溶液とを混合する工程と、
    還元剤を添加する工程と、
    を含む、銀鏡膜層形成組成液の製造方法。
  13. 基材の表面に下塗り塗面層を形成する工程と、
    前記下塗り塗面層上に、請求項1〜11のいずれかに記載の銀鏡膜層形成組成液を塗布する工程と、
    前記銀鏡膜層形成組成液が塗布された基材を加熱して、前記基材の表面に形成した下塗り塗面層上に銀鏡膜層を形成する工程と、
    を備える、銀鏡膜塗面の形成方法。
  14. 前記加熱時の温度を77℃以上90℃以下とした、請求項13に記載の銀鏡膜塗面の形成方法。
  15. 前記下塗り塗料は、ポリオール樹脂と、イソシアネート化合物と、アセチレンアルコール化合物と、コロイダルシリカとを含む、請求項13又は14に記載の銀鏡膜塗面の形成方法。
  16. 前記下塗り塗料は、アクリル−シリコーン樹脂と、アセチレンアルコール化合物と、コロイダルシリカとを含む、請求項13又は14に記載の銀鏡膜塗面の形成方法。
  17. 前記下塗り塗料が、ヒンダードアミン系化合物を更に含む、請求項1316のいずれかに記載の銀鏡膜塗面の形成方法。
  18. 前記下塗り塗面層上に形成した銀鏡膜層上に更に銀鏡膜層保護膜層を形成した、請求項1317のいずれかに記載の銀鏡膜塗面の形成方法。
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