JP5609491B2 - 燃料電池用ガス拡散層およびその製造方法 - Google Patents
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Description
その適用例は携帯電気機器の長時間電力供給、コジェネレーション用定置型発電温水供給機、燃料電池自動車など、用途も規模も多様である。
これらのうち、陽イオン交換膜を電解質として用いる固体高分子型燃料電池は比較的低温での動作が可能であり、また、電解質膜の薄膜化により内部抵抗を低減できるため高出力化、コンパクト化が可能である。
高分子電解質膜の一方の面はアノード(燃料極)として機能し、他方の面はカソード(空気極)として機能する。
燃料極側:2H2 → 4H++4e−………………(1)
空気極側:O2+4H++4e− → 2H2O………(2)
燃料極側では水素分子(H2)の酸化反応が起こり、空気極側では酸素分子(O2)の還元反応が起こることで、燃料極側で生成されたH+イオンは高分子電解質膜中を空気極側に向かって移動し、e−(電子)は外部の負荷を通って空気極側に移動する。
ここで燃料極に対向するセパレータ表面には、燃料を流通させるための凹溝状の燃料流路が設けられている。また、空気極に対向するセパレータ表面には、酸化剤ガスを流通させるための凹溝状の酸化剤ガス流路が設けられている。燃料としては、水素を主体とした改質ガス(又は水素ガス)や、メタノール水溶液などが用いられている。
空気極側:O2+2H++2e− → H2O2
H2O2+Fe(II) → OH・+OH−+Fe(III)…(3)
生成したOH・(OHラジカル)は酸化力が大きく、高分子電解質膜を酸化し分解し劣化させる。
必要な電力により、スタック枚数は異なり、一般的に携帯電気機器のポータブル電源では数枚から10枚程度、コジェネレーション用定置型電気および温水供給機では60〜90枚程度、自動車用途では250〜400枚程度といわれている。高出力化のためにはスタック枚数の増大は必然的であり、単位電池セルの厚みやコストが燃料電池本体のサイズや価格に大きく影響することになる。
水排出能力が不足すると、反応による生成水の発生による電解質膜近傍での水分が過多となり反応ガスの拡散を阻害したり(フラッディング)、水滴がセパレータ流路を閉塞して反応ガスの流動を妨げたり(プラッキング)することで、電池性能の劣化が起こる。
そこで、このような水管理能力を向上させるために、多孔質体表面にMPL(Micro Porous Layer)と呼ばれる、より微細な構造の多孔質層を形成させる場合もある。
ガス拡散層に使用される材料としては、特許文献1、2等のカーボンペーパー等の炭素繊維による、孔径が1〜100μm程度の貫通孔が複数存在する多孔質体が主として報告されている。しかし、上記ガス拡散層は耐食性に優れるが、炭素繊維を炭化した樹脂バインダーの存在する箇所で結着して接合しているため、スタック圧により厚みが変化したり、炭素繊維が脱落したりする等の強度的な問題がある。また、製造方法が抄紙法によるため、孔形状の精密な制御が困難であり、均一なガス供給、水管理が不可能となる問題がある。
また、金属系のガス拡散層材料も報告されている。特許文献3ではエキスパンドメタルおよびラスカットメタルを使用したガス拡散層が報告されているが、貫通孔径が大きいため、反応ガスの拡散性には問題ないが、水保持能に問題がある。さらに、触媒層との接触面積が少なくなるため、接触抵抗の増加が懸念される。
また、特許文献5では、金属単板のウェットエッチング加工によるガス拡散層が報告されているが、高アスペクト比のウェットエッチングが困難であり、一般的に多く使用されている数100μm程度の厚みのガス拡散層では、は特殊なウェットエッチング方法を用いない限り、良好な電池特性を発現させるために必要とされるより微細な10μm以下の貫通孔径の作製は困難である。
上記課題を解決するために、上記の燃料電池用ガス拡散層は、特に、前記金属板は、貴金属めっき或いは導電性樹脂の被覆が施されていることを特徴とする。
上記課題を解決するために、上記の燃料電池用ガス拡散層は、特に、前記被覆は、導電性フィラーと樹脂との混合物である導電性樹脂より成ることを特徴とする。
上記課題を解決するために、上記の燃料電池用ガス拡散層は、特に、前記導電性フィラーが繊維状もしくは粒子状カーボン、導電性粉体、またはその混合物であることを特徴とする。
上記課題を解決するために、上記の燃料電池用ガス拡散層は、特に、そのセパレータ側から触媒層側に到る貫通抵抗値が、1〜5MPaで10mΩ・cm2以下であることを特徴とする。
金属板のガス拡散用貫通孔を設ける部分を除く部位に位置合わせ用貫通孔を形成する第1工程、
前記第1工程を経た前記金属板の表裏両面にフォトレジストを形成する第2工程、
位置決め用マーク、ガス拡散用貫通孔をパターニングしたフォトマスクの位置決め用マークに前記第2工程を経た金属板の前記第1工程で形成された位置合わせ用貫通孔を合わせ、前記フォトマスクを介して前記金属板を露光および現像し、フォトレジストをパターニングする第3工程、
前記第3工程を経た金属板を両面から前記金属板内部にガス拡散用貫通孔が形成されるまでウェットエッチングし、前記金属板内部から上記の金属板表裏面に向かってテーパー状となるガス拡散用貫通孔を複数形成する第4工程、
前記第4工程を経た金属板における前記第2工程で塗布されたフォトレジストを剥離する第5工程、および、
前記第2工程を経た金属板の前記第1工程で形成された位置合わせ用貫通孔を合わせ、少なくとも2つ以上の金属板を積層する第6工程、
を含むことを特徴とする。
図1は本発明の一つの実施の形態における第一の態様の燃料電池用ガス拡散層の説明断面図である。また、図2は図1の燃料電池用ガス拡散層の説明上面図である。更に、図3は本発明の一つの実施の形態における第二の態様の燃料電池用ガス拡散層の説明断面図である。また、図4は図3の燃料電池用ガス拡散層の説明上面図である。
尚、図1および図2の態様の燃料電池用ガス拡散層と、図3および図4の態様の燃料電池用ガス拡散層との差異については後述する。
この実施の形態での金属板3、4、5への加工方法としては、まず、金属板のガス拡散用貫通孔6とする部分外に位置合わせ用貫通孔7を形成する(第1工程)。
次に、金属板の表裏面にネガ型又はポジ型のフォトレジストを形成する(第2工程)。
更に、位置決め用マーク、および透光又は遮光部位からなる所望のパターンが形成されたフォトマスクの位置決め用マークに、金属板の位置合わせ用貫通孔7を合わせ、前記フォトマスクを介して前記金属板を露光および現像し、金属板表裏に同パターン形成したフォトレジストを設ける(第3工程)。
更に、第1工程で形成した金属板の位置合わせ用貫通孔7を合わせ、少なくとも2つ以上の金属板を積層する(第6工程)。即ち、この第6工程は、複数のガス拡散用貫通孔が形成された金属板を、セパレータ側から触媒層側までガス拡散用貫通孔6が連続するように、位置合わせ用貫通孔7を合わせて複数積層する態様を採りうる。
この方法では、金属板表裏両面からのウェットエッチングで貫通孔が形成された初期段階で加工終了とするため、加工時間が短縮されるだけでなく、より微細なガス拡散用貫通孔の形成が可能となり、均一な反応ガスの供給、水管理能力をさらに向上させることができる。
本実施の形態における金属板への位置合わせ用貫通孔7を形成する方法については、特に限定するところでなく、切削、パンチング等が挙げられる。特に、安価かつ簡便なパンチングが好ましい。
EF=2D/W2−W1………………(4)
図6に、本実施の形態における金属板単板のガス拡散用貫通孔の説明断面図を示す。本実施の形態において貫通孔径が小さいガス拡散用貫通孔を得るには、図5のように、金属板表面片面からフォトエッチングしてもう一方の面まで貫通させる方法の場合、貫通孔とするためのウェットエッチングに要する時間が長くなる。
ネガ型フォトレジストとしては、重クロム酸系やポリケイ皮酸ビニル系や環化ゴムアジド系などが挙げられる。
液状フォトレジストをエッチング層上に塗布する場合には、スピンコーター、ロールコーター、ディップコーターなど通常使用されるフォトレジストコート方法を用いる。ドライフィルムレジストを用いる場合にはラミネーターを用いる。また、印刷レジストをパターン印刷しても良い。
本実施の形態に用いるフォトレジストの厚みについては、使用するフォトレジスト材料、金属板材料および所望のパターン寸法によるが、微細なパターン形成が必要となるため、ウェットエッチング下におけるフォトレジストの密着性が確保できれば、極力薄いほうが好ましい。フォトレジストを薄くすることによって、露光の拡散による精度誤差を抑制するだけでなく、ウェットエッチング時のエッチング液の拡散性を向上させることが可能となり、より微細で高アスペクト比の加工が可能となる。
逆に、フォトレジストの開口幅を小さくすると、ウェットエッチング時のエッチング液の拡散性が悪くなるため、アスペクト比の小さい加工となり、この結果、ガス拡散用貫通孔が形成されるまでエッチングを進行させた際に孔径が大きくなってしまう問題がある。
(塩素を混合した場合)2FeCl2+Cl2→2FeCl3 ………(5)
(塩素酸ナトリウムを混合した場合)
6FeCl2+6HCl+NaClO3→6FeCl3+NaCl+3H2O…(6)
本実施の形態に用いるウェットエッチング液の供給方法については、スプレー法、パドル法、ディップ法や噴流法などが挙げられるが、特にスプレー法が好ましい。スプレー法により、金属板幅方向への液捌けを促進し、中央部のエッチング液滞流(液ダマリ)が抑制され、液を均一かつ連続的に供給することが可能となり、高精度かつ高アスペクト加工、加工速度を良好にするとこができる。
本実施の形態に用いる金属板を積層し燃料電池用ガス拡散層とする工程については、予めガス拡散用貫通孔と別部分に作製した位置合わせ用貫通孔7を用いる。画像認識により装置的に合わせても良いし、スタックの際には位置決めピンを用意し、ピンを上記位置合わせ用貫通孔7に差し込むことで積層しても良い。
図3および図4に表された態様の燃料電池用ガス拡散層では、金属板2、3、4の全てのガス拡散用貫通孔6のパターン位置(金属板の面内方向での位置)が一致するように位置合わせ用貫通孔7を利用して位置合わせしながら積層し、一直線に貫通した態様のガス拡散用貫通孔6としている。燃料電池用ガス拡散層としては、このような態様を採っても良い。しかしながら、図3および図4に表された態様ではガス拡散性、水排出性が問題なくとも、水保持性が問題となる場合がある。
更に、本実施の形態では、金属板を用いるため、高い機械的強度を有する。また、表面が平滑であるため、電解質膜を損傷することなく、発電性能の劣化を防止できる。さらに、積層構造とするため、金属薄板を使用することが可能となり、高アスペクトの特殊なウェットエッチング方法を用いなくとも、金属板単板では作製困難である10μm以下の微細な径のガス拡散用貫通孔を有した総厚数100μmの燃料電池用ガス拡散層の作製が可能となる。これにより、均一な反応ガスの供給、水管理能力を向上させることができる。
本実施の形態に用いる導電性樹脂は、導電性フィラーと樹脂の混合物である。導電性フィラーとしては、繊維状導電性フィラーあるいは粉体状導電性フィラーが望ましい。繊維状導電性フィラーとしては、具体的には、例えば、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブなどから選ばれる1種あるいは2種以上のカーボン繊維を挙げることができる。
以上のように、本発明の実施の形態では、金属板に貴金属めっき、導電性樹脂を被覆する態様を採ることも可能である。これにより、接触抵抗、耐久性等の物性をさらに改善することが可能である。
(実施例)
金属板として厚み80μmのSUS316Lを用いた。この金属板の燃料電池用ガス拡散層貫通孔を形成する箇所の外周部の4点に、孔径500μmの位置合わせ用貫通孔7を、パンチングにより形成した。
次いで、膜厚20μmのネガ型ドライフィルムレジスト(SUNFORT SPG−102、旭化成株式会社製)を上記金属板両面にロールラミネータを用い、ロール温度110℃、ロール圧力0.3MPa、ラミネート速度1m/分で貼り合わせた。
同様に、上記格子状パターン位置を上記位置決め用マークに対して、フォトマスク平面の縦横方向に60μmずつ変更したフォトマスクを用いて、露光および現像を行い、金属板を1枚作製し、計3枚の金属板を得た。
次に、65℃、3mol/L塩化第二鉄水溶液を用いて、スプレー圧0.5MPaで上記金属板の両面よりスプレーエッチングを行い、フォトレジストパターンを残した金属エッチング平板を作製した。
最後に、位置決め貫通孔4箇所を合わせて、上記金属板3枚を積層し、燃料電池用ガス拡散層を得た。得られた燃料電池用ガス拡散層は総厚240μmで、3次元的なガス拡散用貫通孔を有し、燃料電池用ガス拡散層表面から裏面へのガス流動が可能であった。
2 フォトレジスト
3 第1の金属板
4 第2の金属板
5 第3の金属板
6 ガス拡散用貫通孔
7 位置合わせ用貫通孔
61 小径部
62 大径部
Claims (8)
- フォトエッチングにより金属板に複数のガス拡散用貫通孔をその貫通部分が前記金属板内部に存在し該貫通部分から前記金属板表裏面に向かって徐々に大径となるテーパー状となるように形成し、且つ、前記ガス拡散用貫通孔とは異なる位置に位置合わせ用貫通孔を形成し、前記複数のガス拡散用貫通孔および位置合わせ用貫通孔を有する2以上の前記金属板を、セパレータ側から触媒層側まで前記ガス拡散用貫通孔が連続するように前記位置合わせ用貫通孔を合わせて積層させて構成されていることを特徴とする燃料電池用ガス拡散層。
- 前記金属板は、鉄、鉄合金、銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金のうちの1以上の金属より成ることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散層。
- 前記金属板は、貴金属めっき或いは導電性樹脂の被覆が施されていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池用ガス拡散層。
- 前記被覆は、金、白金、及びパラジウムのうちの1以上の貴金属より成ることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池用ガス拡散層。
- 前記被覆は、導電性フィラーと樹脂との混合物である導電性樹脂より成ることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池用ガス拡散層。
- 前記導電性フィラーが繊維状もしくは粒子状カーボン、導電性粉体、またはその混合物であることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池用ガス拡散層。
- 前記燃料電池用ガス拡散層のセパレータ側から触媒層側の貫通抵抗値が、1〜5MPaで10mΩ・cm2以下であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散層。
- 既定の金属板のガス拡散用貫通孔を設ける部分を除く部位に位置合わせ用貫通孔を形成する第1工程、
前記第1工程を経た前記金属板の表裏両面にフォトレジストを形成する第2工程、
位置決め用マーク、ガス拡散用貫通孔をパターニングしたフォトマスクの位置決め用マークに前記第2工程を経た金属板の前記第1工程で形成された位置合わせ用貫通孔を合わせ、前記フォトマスクを介して前記金属板を露光および現像し、フォトレジストをパターニングする第3工程、
前記第3工程を経た金属板を両面から前記金属板内部にガス拡散用貫通孔が形成されるまでウェットエッチングし、前記金属板内部から上記の金属板表裏面に向かって徐々に大径となるテーパー状となるガス拡散用貫通孔を複数形成する第4工程、
前記第4工程を経た金属板における前記第2工程で塗布されたフォトレジストを剥離する第5工程、および、
前記第2工程を経た金属板の前記第1工程で形成された位置合わせ用貫通孔を合わせ、少なくとも2つ以上の金属板を積層する第6工程、
を含むことを特徴とする燃料電池用ガス拡散層の製造方法。
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