JP5673282B2 - 燃料電池用ガス拡散層 - Google Patents
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Description
その適用例は携帯電気機器の長時間電力供給、コジェネレーション用定置型発電温水供給機、燃料電池自動車など、用途も規模も多様である。
これらのうち、陽イオン交換膜を電解質として用いる固体高分子型燃料電池は比較的低温での動作が可能であり、また、電解質膜の薄膜化により内部抵抗を低減できるため高出力化、コンパクト化が可能である。
高分子電解質膜の一方の面はアノード(燃料極)として機能し、他方の面はカソード(空気極)として機能する。
燃料極側:2H2 → 4H++4e−………………(1)
空気極側:O2+4H++4e− → 2H2O………(2)
燃料極側では水素分子(H2)の酸化反応が起こり、空気極側では酸素分子(O2)の還元反応が起こることで、燃料極側で生成されたH+イオンは高分子電解質膜中を空気極側に向かって移動し、e−(電子)は外部の負荷を通って空気極側に移動する。
ここで燃料極に対向するセパレータ表面には、燃料を流通させるための凹溝状の燃料流路が設けられている。また、空気極に対向するセパレータ表面には、酸化剤ガスを流通させるための凹溝状の酸化剤ガス流路が設けられている。燃料としては、水素を主体とした改質ガス(又は水素ガス)や、メタノール水溶液などが用いられている。
空気極側:O2+2H++2e− → H2O2
H2O2+Fe(II) → OH・+OH−+Fe(III)…(3)
生成したOH・(OHラジカル)は酸化力が大きく、高分子電解質膜を酸化し分解し劣化させる。
必要な電力により、スタック枚数は異なり、一般的に携帯電気機器のポータブル電源では数枚から10枚程度、コジェネレーション用定置型電気および温水供給機では60〜90枚程度、自動車用途では250〜400枚程度といわれている。高出力化のためにはスタック枚数の増大は必然的であり、単位電池セルの厚みやコストが燃料電池本体のサイズや価格に大きく影響することになる。
水排出能力が不足すると、反応による生成水の発生による電解質膜近傍での水分が過多となり反応ガスの拡散を阻害したり(フラッディング)、水滴がセパレータ流路を閉塞して反応ガスの流動を妨げたり(プラッキング)することで、電池性能の劣化が起こる。
そこで、このような水管理能力を向上させるために、多孔質体表面にMPL(Micro Porous Layer)と呼ばれる、より微細な構造の多孔質層を形成させる場合もある。
ガス拡散層に使用される材料としては、特許文献1、2等のカーボンペーパー等の炭素繊維による、孔径が1〜100μm程度の貫通孔が複数存在する多孔質体が主として報告されている。しかし、上記ガス拡散層は耐食性に優れるが、炭素繊維を炭化した樹脂バインダーの存在する箇所で結着して接合しているため、スタック圧により厚みが変化したり、炭素繊維が脱落したりする等の強度的な問題がある。また、製造方法が抄紙法によるため、孔形状の精密な制御が困難であり、均一なガス供給、水管理が不可能となる問題がある。
また、金属系のガス拡散層材料も報告されている。特許文献3ではエキスパンドメタルおよびラスカットメタルを使用したガス拡散層が報告されているが、貫通孔径が大きいため、反応ガスの拡散性には問題ないが、水保持能に問題がある。さらに、触媒層との接触面積が少なくなるため、接触抵抗の増加が懸念される。
上記課題を解決するために、上記の燃料電池用ガス拡散層は、前記金属板が、鉄、鉄合金、銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金のうちの1以上の金属より成ることを特徴とする。
上記課題を解決するために、上記の燃料電池用ガス拡散層は、特に、前記被覆が、金、白金、及びパラジウムのうちの1以上の貴金属より成ることを特徴とする。
上記課題を解決するために、上記の燃料電池用ガス拡散層は、特に、前記被覆が、導電性フィラーと樹脂との混合物である導電性樹脂より成ることを特徴とする。
上記課題を解決するために、上記の燃料電池用ガス拡散層は、特に、前記複数の金属板が積層された方向における前記ガス拡散層の貫通抵抗値、すなわち、前記ガス拡散層のセパレータ側から触媒層側に到る貫通抵抗値が10mΩ・cm2以下であることを特徴とする。
上記課題を解決するために、上記の燃料電池用ガス拡散層は、前記各金属板のガス拡散用貫通孔の形状または配置の少なくとも一方が異なっており、前記ガス拡散用貫通路は、前記各金属板のガス拡散用貫通孔の一部が重複された部分で構成されていることを特徴とする。
図1は本発明の一つの実施の形態における第一の態様の燃料電池用ガス拡散層の説明断面図である。また、図2は図1の燃料電池用ガス拡散層の説明上面図である。更に、図3は上記実施の形態における第二の態様の燃料電池用ガス拡散層の説明断面図である。また、図4は図3の燃料電池用ガス拡散層の説明上面図である。
上記実施の形態に用いる金属板の板厚については、金属板の貫通孔径を決定する因子となるため、最終的に金属板を積層した際の貫通孔形状を考慮して、適宜選択する必要がある。
EF=2D/W2−W1………………(4)
上記エッチングファクターより、フォトレジスト2の開口径分を考慮すると、板厚以下の貫通孔径を得ることは難しい。金属板1の板厚を薄くすることにより最小貫通孔径を小さくすることが可能であるが、金属板1の板厚を小さくしすぎると金属板1単体の堅牢性が低下する問題がある。
さらには、材質によっては、薄板化による加工費から材料単価が大きくなり、高コスト化を招く恐れもあるので、材質により適宜選択する必要がある。
上記実施の形態に用いるフォトレジスト2の材料としては、エッチング液に対しての耐薬品性を有していれば、特に限定されるものでない。フォトレジスト2としては、ネガ型、ポジ型のいずれのレジストも使用可能である。ネガ型フォトレジストとしては、重クロム酸系やポリケイ皮酸ビニル系や環化ゴムアジド系などが挙げられる。
(塩素を混合した場合)2FeCl2+Cl2→2FeCl3 ………(5)
(塩素酸ナトリウムを混合した場合)
6FeCl2+6HCl+NaClO3→6FeCl3+NaCl+3H2O…(6)
上記実施の形態に用いるウェットエッチング液の濃度については、所望の貫通孔形状により適宜選択する必要がある。塩化第二鉄および塩化第二銅は、濃度によって反応速度および加工面の表面粗さが変化する。特に、塩化第二鉄は、2.5mol/L付近に反応速度の極大を持ち、その前後で特に鉄系合金において表面粗さが小さくなるため、上記濃度付近で調整することがより好ましい。
上記実施の形態に用いるウェットエッチング液の供給方法については、スプレー法、パドル法、ディップ法や噴流法などが挙げられるが、特にスプレー法が好ましい。スプレー法により、金属板幅方向への液捌けを促進し、中央部のエッチング液滞流(液ダマリ)が抑制され、液を均一かつ連続的に供給することが可能となり、高精度かつ高アスペクト加工、加工速度を良好にするとこができる。
上記実施の形態に用いる金属板3、4、5を積層しガス拡散層とする工程については、ガス拡散用貫通孔6と別部分にウェットエッチングで同時作製した位置合わせ用貫通孔7を用いる。画像認識により装置的に合わせても良いし、スタックの際には位置決めピンを用意し、ピンを上記位置合わせ用貫通孔7に差し込むことで積層しても良い。
図4は、上記実施の形態における金属板3、4、5の単板を積層した燃料電池用ガス拡散層一部分の一例の説明上面図である。
上記実施の形態に用いる導電性樹脂は、導電性フィラーと樹脂の混合物である。導電性フィラーとしては、繊維状導電性フィラーあるいは粉体状導電性フィラーが望ましい。繊維状導電性フィラーとしては、具体的には、例えば、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブなどから選ばれる1種あるいは2種以上のカーボン繊維を挙げることができる。
以上説明した、上記実施の形態におけるガス拡散層では複数のガス拡散用貫通孔6が形成された金属板3、4、5を、セパレータ側から触媒層側まで連続するガス拡散用貫通路60が構成されるように、位置合わせ用貫通孔7の位置を合わせて複数積層してなることを特徴とする。
さらに、本実施の形態では金属板3、4、5を用いるため、高い機械的強度を有する。また、表面が平滑であるため、電解質膜を損傷することなく、発電性能の劣化を防止できる。さらに、積層構造とするため、3、4、5として金属薄板を使用することが可能となり、高アスペクトの特殊なウェットエッチング方法を用いなくとも、金属板単板では作製困難である10μm以下の微細な径のガス拡散用貫通路60を有した総厚数100μmのガス拡散層の作製が可能となる。これにより、均一な反応ガスの供給、水管理能力を向上させることができる。
そして、さらに、ガス拡散層のセパレータ側から触媒層側に到る貫通抵抗値が10mΩ・cm2以下であるような特徴的な仕様を実現できる。
(実施例)
金属板として厚み80μmのSUS316Lを用いた。この金属板のガス拡散層貫通孔を形成する箇所の外周部の4点に、孔径500μmの位置合わせ用貫通孔を、パンチングにより形成した。
次いで、膜厚20μmのネガ型ドライフィルムレジスト(SUNFORT SPG−102、旭化成株式会社製)を上記金属板両面にロールラミネータを用い、ロール温度110℃、ロール圧力0.3MPa、ラミネート速度1m/分で貼り合わせた。
次に、65℃、3mol/L塩化第二鉄水溶液を用いて、スプレー圧0.5MPaで上記金属板の両面よりスプレーエッチングを行い、フォトレジストパターンを残した金属板を作製した。
最後に、位置決め貫通孔4箇所を合わせて、上記金属板4枚を積層し、所定方向にガス拡散用貫通路の開孔面積(断面積)を大きくしたガス拡散層を得た。
2……………………フォトレジスト
3……………………第1の金属板
4……………………第2の金属板
5……………………第3の金属板
6……………………ガス拡散用貫通孔
7……………………位置合わせ用貫通孔
60…………………ガス拡散用貫通路
Claims (7)
- フォトエッチングにより複数のガス拡散用貫通孔および位置合わせ用貫通孔が形成された複数の金属板を、前記各金属板の前記位置合わせ用貫通孔を合わせて積層し、前記各金属板のガス拡散用貫通孔により前記金属板の積層方向に沿って連続的に延在するガス拡散用貫通路を形成するようにした、反応ガス入口部と反応ガス出口部を有する反応ガス流路を備えたセパレータと触媒層との間を連通する燃料電池用のガス拡散層において、
前記各金属板の前記ガス拡散用貫通孔の開口面積は前記反応ガス流路の反応ガス入口部から反応ガス出口部に行くに従い大きくなるように構成され、かつ前記ガス拡散用貫通孔の開口面積が大きくなるに従い互いに隣接するガス拡散用貫通孔間を区画する区画幅が前記反応ガス流路の反応ガス入口部から反応ガス出口部に行くに従い細くなるように構成され、
前記各金属板を互いに平面方向に位置をずらして積層することにより各金属板の前記ガス拡散用貫通孔の一部が重ね合わされた部分で、断面積が前記反応ガス流路の反応ガス入口部から反応ガス出口部に行くに従い大きくなる前記ガス拡散用貫通路が構成される、
ことを特徴とする燃料電池用ガス拡散層。 - 前記金属板は、鉄、鉄合金、銅、銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金のうちの1以上の金属より成ることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散層。
- 前記金属板は、貴金属めっき或いは導電性樹脂の被覆が施されていることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料電池用ガス拡散層。
- 前記被覆は、金、白金、及びパラジウムのうちの1以上の貴金属より成ることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池用ガス拡散層。
- 前記被覆は、導電性フィラーと樹脂との混合物である導電性樹脂より成ることを特徴とする請求項3に記載の燃料電池用ガス拡散層。
- 前記導電性フィラーが繊維状もしくは粒子状カーボン、導電性粉体、またはその混合物であることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池用ガス拡散層。
- 前記複数の金属板が積層された方向における前記ガス拡散層の貫通抵抗値が10mΩ・cm2以下であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散層。
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