JP2008176960A - 固体高分子形燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】適度な水分を保持し、且つガスを透過させることができる。
【解決手段】高分子電解質膜2と、高分子電解質膜2を挟んで設けられる一対の触媒層3,4と、触媒層3,4の外側に設けられる一対のガス拡散層5,6とを有し、少なくとも一方のガス拡散層5,6に角部13を有する細孔14を形成し、細孔14内に部分的に水膜15を形成する。
【選択図】図6

Description

本発明は、触媒層の外側に、水分を保持しながら、水素や酸素等のガスを触媒層に透過させることが可能なガス拡散層を備えた固体高分子形燃料電池に関する。
電源の一つとして注目されている燃料電池は、水素やメタノールなどの燃料を酸化し、酸素を還元することにより発電する電池であり、水素や酸素を用いているため、排出されるものは水であり、地球環境保護の観点から非常に有用な電源である。このような燃料電池としては、固体高分子形燃料電池、直接メタノール形燃料電池、アルカリ形燃料電池、固体酸化物形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池、リン酸形燃料電池等がある。この中でも、固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)は、そのエネルギ変換効率の高さから、自動車や電子機器等の動力源として用いることが検討されている。
この固体高分子形燃料電池は、水素イオンの伝導性を有する高分子電解質膜を挟んで、水素が供給されるアノード側に触媒層が配置され、酸素が供給されるカソード側にも触媒層が配置され、更に各触媒層の外側に、外部から供給された水素や酸素を触媒層に供給するガス拡散層が配置され、更に各ガス拡散層の外側にセパレータが配置され、これらが重ね合わされた構造のセルを有する。
固体高分子形燃料電池では、アノード側の触媒層にセパレータからガス拡散層を介して水素が供給されると、触媒層の触媒によって水素が酸化され、水素イオンと電子を生成する。生成された水素イオンは、アノード側の触媒層から高分子電解質膜内を移動してカソード側の触媒層に移動する。生成された電子は、ガス拡散層や触媒層を介して外部回路に到達し、外部回路を通ってカソード側の触媒層に移動する。カソード側に移動した水素イオン及び電子は、カソード側の触媒層にセパレータからガス拡散層を介して供給された酸素と反応して、水を生成し、発熱する。生成された水は、高分子電解質膜がイオン伝導性を維持できるように、高分子電解質膜を湿潤状態とするため、高分子電解質膜に供給されたり、カソード側のガス拡散層からセパレータの排出口を介して外部に排出される。固体高分子形燃料電池では、これらの一連の反応によって、外部に電気を供給し、動力源となる。
以上のように、アノード側のガス拡散層は、外部から供給された水素を触媒層に供給し、水素から発生した電子を外部回路に移動させる。一方、カソード側のガス拡散層は、外部回路から受け取った電子を触媒層まで移動させ、外部から供給された酸素を触媒層に供給し、反応によって生成された水を外部に排出する必要がある。そこで、このような役割をするガス拡散層は、電子が移動でき、更に水素や酸素等を通すことができるように、例えば多孔質で導電性を有するカーボンペーパで形成されている。
固体高分子形燃料電池では、主にカソード側で、ガス拡散層と高分子電解質膜と触媒層とが接する三相界面において生成する水がガス拡散層のカーボンペーパの細孔を塞ぎ、酸素が触媒層に供給されなくなるフラッディングが生じる場合がある。固体高分子形燃料電池では、フラディングが生じると、酸化還元反応が進まなくなり、電圧が低下し、電池性能が低下してしまう。
したがって、固体高分子形燃料電池のガス拡散層では、高分子電解質膜のイオン伝導性を維持及び向上させるため、高分子電解質膜を湿潤状態にできるように、適度な水分を保持しながら、水素や酸素等が透過できるようにする必要がある。
このようなガス拡散層の要求に対して、固体高分子形燃料電池では、一般に、供給ガスを加湿し、その加湿度を制御することで湿度や水分等の水管理を行う方法が採られている。しかしながら、固体高分子形燃料電池を携帯機器用の電源として用いる場合には、カソード側を大気に開放する必要があるため、湿度を制御することができず、水管理を適切に行うことができなくなってしまう。
また、他の方法としては、研究段階の手法として、電気浸透等を用いて水を強制的に排除する方法がある。この方法は、電気浸透を起こさせるために、余分なエネルギを必要とするため、電池性能が全体として低下してしまう。
更に、他の方法としては、下記の特許文献1のような方法がある。特許文献1に記載された固体高分子形燃料電池のガス拡散層は、十字型や多葉形状に形成した炭素繊維で形成されている。このガス拡散層では、炭素繊維を十字型等に形成することで、炭素繊維の外周面に形成された凹部で反応により生成した水を保持するようにしている。しかしながら、このようなガス拡散層では、凹部で水を保持できるようにするため、親水性の材料に限られたり、明確な水分保持量を推定することがないといった欠点を有する。
更にまた、他の方法としては、下記の特許文献2のような方法がある。特許文献2に記載されている固体高分子形燃料電池のガス拡散層は、Fe−Cr又はNi−Cr合金にNiやMo、Cu等を含有させた材料で形成され、3次元網目構造を有する金属多孔質体で形成されている。しかしながら、このようなガス拡散層では、3次元網目構造としていることによって、外部から供給される水素や酸素の圧力損失が大きくなり、触媒層において十分な反応が行われず、電池性能が低下してしまう。
したがって、以上のような方法では、ガス拡散層において、高分子電解質膜の水素イオンの導電性性能を低下させないように適度な水分を保持しながら、水素等の燃料ガスや酸素等を外部から触媒層に供給するための経路を確保することができるような十分な水管理を行うことはできず、固体高分子形燃料電池の性能を十分に向上させることが困難である。
特開2004−200153号公報 特開2004−273359号公報
そこで、本発明は、適度な水分を保持しながら、水素や酸素等のガスを触媒層に透過させ、アノード側の酸化反応及びカソード側の還元反応が適切に行われるようにし、電池性能を向上させることが可能なガス拡散層を有する固体高分子形燃料電池を提供することを目的とする。
上述した目的を達する本発明に係る固体高分子形燃料電池は、高分子電解質膜と、高分子電解質膜を挟んで設けられる一対の触媒層と、触媒層の外側に設けられる一対のガス拡散層とを有し、少なくとも一方のガス拡散層には、角部を有する細孔が形成され、細孔内に部分的に水膜が形成されるようにしたことを特徴する。
また、上述した目的を達する本発明に係る固体高分子形燃料電池は、高分子電解質膜と、高分子電解質膜を挟んで設けられる一対の触媒層と、触媒層の外側に設けられる一対の集電体とを有し、少なくとも一方の集電体には、角部を有する細孔が形成され、細孔内に部分的に水膜が形成されるようにしたことを特徴する。
本発明では、ガス拡散層又は集電体に角部を有する細孔を形成することで、この細孔内において部分的に水膜を形成し、ガス拡散層内又は集電体内で水を適度に保持しながら、細孔内の水膜が形成されていない他の部分でガスを透過させることができる。これにより、本発明では、ガス拡散層又は集電体の細孔内に保持した水を高分子電解質膜に供給することができ、高分子電解質膜の乾燥を防ぎ、高分子電解質膜のイオン伝導性性能が低下することを防止できる。また、本発明では、細孔内の水膜が形成されていない部分で、外部から供給された酸素や水素等のガスを触媒層に透過させることができるため、触媒層に酸素や水素等を供給することができ、触媒層での反応の低下を防止できる。
以上のように、本発明では、アノード側とカソード側との間でイオンが伝達され、且つ触媒層に酸素や水素等のガスが適切に供給されるため、電流密度を上げても電圧が低下することなく、電池性能を向上させることができる。
以下、本発明が適用された固体高分子形燃料電池について、図面を参照して説明する。図1及び図2に示す固体高分子形燃料電池1は、中央に設けられるイオン伝導性を有する高分子電解質膜2と、この高分子電解質膜2を挟んで設けられる一対の触媒層3,4と、この触媒層3,4の外側に設けられる一対のガス拡散層5,6と、更にこのガス拡散層5,6の外側に設けられる一対のセパレータ7,8とから構成されるセルを有する。
固体高分子形燃料電池1において、水素等の燃料ガスが供給されるアノード9側は、触媒層3、ガス拡散層5、セパレータ7によって構成され、酸素が供給されるカソード10側は、触媒層4、ガス拡散層6、セパレータ8によって構成されている。固体高分子形燃料電池1は、アノード9側の触媒層3等と、カソード10側の触媒層4等とを電気的に接続する外部回路11が設けられている。
この固体高分子形燃料電池1は、アノード9側の触媒層3にセパレータ7からガス拡散層5を介して水素が供給され、アノード9側では水素の酸化反応が生じ、水素イオンと電子とが生成される。アノード9側の水素の酸化反応は、H→2H+2eである。生成された水素イオンは、イオン伝導性を有する高分子電解質膜2を介して、カソード10側の触媒層4に移動する。また、生成された電子は、外部回路11を通りカソード10側の触媒層4に移動する。カソード10側に到達した水素イオン及び電子は、カソード10側において、外部からセパレータ8を介してガス拡散層6に供給され、ガス拡散層6を透過した酸素と反応して、水を生成する。
カソード10側では、酸素の還元反応が生じる。酸素の還元反応は、1/2O+2H+2e→HO+Heatである。生成された水は、カソード10側のガス拡散層6から外部に排出されたり、高分子電解質膜2に供給される。固体高分子形燃料電池1では、アノード9側及びカソード10側で起こるこれらの一連の反応によって、外部に電気を供給する。
固体高分子形燃料電池1の中央に設けられる高分子電解質膜2は、アノード9側の触媒層3とカソード10側の触媒層4との間で水素イオンを移動させるイオン交換膜である。また、高分子電解質膜2は、アノード9側の触媒層3とカソード10側の触媒層4とを絶縁している。この高分子電解質膜2は、例えばフッ素樹脂等の固体高分子材料で形成されている。この高分子電解質膜2は、水素イオンの導電性を良好にするため、湿潤状態とする必要がある。
この高分子電解質膜2を挟んで設けられるアノード9側及びカソード10側の触媒層3,4は、導電性を有し、且つ水素の酸化反応及び酸素の還元反応が起こりやすくなるように、カーボンブラック、活性炭、コークス、黒鉛等の炭素材料に、白金や白金と銅の合金等を触媒として担持させたもので形成されている。触媒層3,4は、水との表面エネルギが大きく、ぬれにくい疎水性の炭素材料で形成されているため、疎水性となっている。
ガス拡散層5,6は、図1に示すように、アノード9側及びカソード10側のそれぞれの触媒層3,4の外側に設けられる。
アノード9側のガス拡散層5は、外部からセパレータ7を介して供給された水素を透過、拡散させて、触媒層3に供給する。また、このガス拡散層5は、集電体としても機能する。
カソード10側のガス拡散層6は、外部からセパレータ8を介して供給された酸素を透過、拡散させて、触媒層4に供給する。また、このガス拡散層6は、高分子電解質膜2の水素イオンの伝導性性能を維持できるように、高分子電解質膜2を湿潤状態にするため、酸素の還元反応により生成した水を適度に保持しながら、セパレータ8から供給された酸素が透過できるように、余分な水を排出する。また、カソード10側のガス拡散層6も集電体として機能する。
適度な水分を保持しながら、酸素を透過させるカソード10側のガス拡散層6は、導電性及び耐強酸性を有する金属薄膜、例えばチタン薄膜25で形成されている。固体高分子形燃料電池1では、ガス拡散層6をチタン薄膜25で形成することによって、従来用いられていたカーボンペーパと比べて、低い電流密度において高い電圧を得ることができる。低い電流密度において、チタン薄膜25で形成したガス拡散層6を有する固体高分子形燃料電池の方が、カーボンペーパで形成したガス拡散層を有する固体高分子形燃料電池1よりも電圧が高くなることは、以下に示す実験からも確認することができる。
この実験では、チタン薄膜25で形成したガス拡散層5,6を用いた固体高分子形燃料電池1と、カーボンペーパで形成したガス拡散層を用いた固体高分子形燃料電池の電圧を比較した。
チタン薄膜25で形成したガス拡散層5,6には、図3に示すように、厚さ約5μm、直径が設計寸法50μmで、実寸法が約56μmの略円形状の水素や酸素を透過させるための細孔14が、中央の1cm×1cmの領域に17689個設けられている。細孔14を形成する際には、後述するセパレータ7,8のガス流路43,46と対向する部分だけではなく、水素や酸素が供給されないガス流路43,46間と対向する部分にも細孔14を形成した。ガス拡散層5,6では、ガス流路43,46と対向する部分だけではなく、ガス流路43,46間と対向する部分にも細孔14を設けることによって、水素や酸素を効率良く供給できるようになる。このガス拡散層5,6の空隙率は、設計ベースで34.7%であり、実寸ベースで約43.6%である。高分子電解質膜2及び触媒層3,4には、ジャパンゴアテックス株式会社の商品名PRIMEA5570を用いた。セパレータ7,8には、図2に示すような後述するガス不透過性の材料で、幅約1mm、深さ約1mm、長さ約10mmのガス流路43,46を5つ形成したものを用いた。これらの部材を用いて、中央に高分子電解質膜2を配置し、アノード9側に触媒層3、チタン薄膜25で形成したガス拡散層5、セパレータ7を配置し、カソード10側にも触媒層4、チタン薄膜25で形成したガス拡散層6、セパレータ8を配置し、これらを重ね合わせて固体高分子形燃料電池1を作製した。
一方、カーボンペーパで形成したガス拡散層を用いた固体高分子形燃料電池は、ガス拡散層に、カーボンペーパで作製されたジャパンゴアテックス株式会社の商品名CARBELを用いたこと以外は、チタン薄膜25で形成したガス拡散層を備えた固体高分子形燃料電池と同様にして作製した。なお、このカーボンペーパで形成したガス拡散層の厚みは、約300μmである。また、このカーボンペーパの空隙率は、約80%であるが、セパレータ等と組み合わせると圧縮されるため、空隙率が変化するが、セパレータ等と組み合わせた後の正確な空隙率を確認することができない。一般に市販されているカーボンペーパは、空隙率が80%程度であり、これよりも高いとカーボンペーパの強度が弱くなり、逆に下げるとガス透過性や水の排出能力が低下するため、市販されているものはどれもほぼ同じ空隙率となっている。この実験では、ジャパンゴアテックス株式会社の商品名CARBELのカーボンペーパを用いた。また、カーボンペーパのガス拡散層は、アノード側及びカソード側の両方に用いた。
作製した各固体高分子形燃料電池の電圧の変化を次のようにして評価した。各固体高分子形燃料電池に対して、無加湿の水素及び酸素の供給量を50ml/minとし、電流密度を500mA/cm以上まで上げ、電圧が0V近くになるまで測定した。測定結果を図4に示す。
図4に示す結果から、電流密度が約250mA/cm以下の低電流密度域では、チタン薄膜25で形成したガス拡散層5,6を用いた固体高分子形燃料電池1の方が、カーボンペーパのガス拡散層を用いた固体高分子形燃料電池よりも電圧が高いことが分かる。チタン薄膜25で形成したガス拡散層5,6では、カーボンペーパよりも薄く、細孔14が大きく浅く形成されているため、細孔14の形状がカーボンペーパよりも単純であり、水素及び酸素の圧力損失が小さく、電気抵抗も小さくなり、酸化還元反応が十分に行われ、電圧の低下が小さくなり、カーボンペーパよりも電圧が高くなった。固体高分子形燃料電池では、一般に、最高出力の電流密度よりも低い電流密度で使用するため、図4に示す結果から、低電流領域で電圧が高いチタン薄膜25で形成したガス拡散層5,6を用いた固体高分子形燃料電池1の方が発電効率が高く、従来のカーボンペーパを用いた固体高分子形燃料電池よりも電池性能が良くなることが分かる。
なお、高電流密度域では、有効反応サイト数の不足や生成される水の量が多くなるため、ガス拡散層5,6の細孔14が水で塞がれやすく、フラッディングにより水素や酸素が触媒層3,4に供給されなくなり、カーボンペーパのガス拡散層を用いた固体高分子形燃料電池よりも電圧が低下した。
固体高分子形燃料電池1では、このように低電流密度域で電圧を高くすることができるチタン薄膜25で、アノード9側のガス拡散層5又はカソード10側のガス拡散層6、又は両方のガス拡散層5,6を形成し、チタン薄膜25で形成したガス拡散層5,6に略円形状ではなく、図5及び図6に示すように、数十μmの角部13を有する細孔14を形成する。固体高分子形燃料電池1では、ガス拡散層5,6に角部13を有する細孔14を形成して、ガス拡散層5,6内の湿度や水分等の水管理を適切に行えるようにし、電池性能を向上させている。なお、以下では、水が生成されるカソード10側のガス拡散層6を例に挙げて説明する。
カソード10側のガス拡散層6では、角部13を有する細孔14を形成し、水粒子の挙動が数十μmの環境下において制御されることを利用して、細孔14内に水膜15が形成される部分と、水膜15が形成されない部分とを作るようにしている。
ガス拡散層6には、図5及び図6に示すように、チタン薄膜25に、数十μmで、鋭角の角部13を3つ有する略二等辺三角形状の細孔14を形成する。なお、この細孔14は、略二等辺三角形状に限らず、角部13を有する形状であればよく、例えば略正三角形等の他の三角形状、略五角形や略六角形等の多角形状に形成してもよい。ガス拡散層6では、図5に示すように、略中央に形成され、後述するカソード10側に設けられるセパレータ8のガス流路46が形成されている領域とほぼ同じ領域に細孔14を形成する。また、ガス拡散層6では、細孔14を形成する際に、図5に示すように、縦方向に、略二等辺三角形の向きを交互に逆向きにして形成することで、より多くの細孔14を形成するようにしている。
固体高分子形燃料電池1は、触媒層4とガス拡散層6とが重ね合わされているので、セパレータ8側から見ると、図6に示すように、細孔14から触媒層4が露出している。触媒層4が露出している細孔14内は、触媒層4が疎水性の炭素材料で形成されているので疎水性となり、細孔14以外の部分は親水性のチタン薄膜25で形成されているため、チタンの性質である水との表面エネルギが小さく、ぬれやすいといった親水性となる。これにより、固体高分子形燃料電池1では、疎水性の触媒層4から親水性のガス拡散層6側に水が移動しやすくなる。更に、細孔14内では、親水性のチタン薄膜25との接触面積が小さい辺部16よりも、親水性のチタン薄膜25との接触面積が大きい角部13に水が移動しやすくなり、角部13で水膜15を形成し、中央の部分には水膜15が形成されなくなる。
このように、ガス拡散層6では、水粒子が数十μmの環境下において、重力よりも界面エネルギによって支配されることを利用して、角部13を有する細孔14内で水を動かし、部分的に水膜15を形成して水を保持し、高分子電解質膜2が乾燥しないようにすることができ、残りの水膜15が形成されていない部分で水素や酸素を透過、拡散させるようにすることができる。
なお、細孔14を略円形状に形成した場合には、細孔14の形状が一様であり、細孔14内において、親水性のチタン薄膜25との接触面積は同じになり、細孔14を塞ぐように水膜が形成されてしまう。このため、細孔14を略円形状に形成した場合には、水膜によって、酸素が透過せず、触媒層4に酸素が供給されず、電池性能が低下してしまう。
微細な細孔14内に、水粒子によって形成された水膜15の挙動については、以下のようなことが言える。水膜15の動く力(F)は、水と酸素の界面エネルギEwo、水とチタンの界面エネルギEwt、チタンと酸素の界面エネルギEtoの変化の変位微分より求めることができる。細孔14の角部13の近傍にある水膜15が図7(A)に示す状態から図7(B)に示すように、Δxだけ細孔14の内側に移動した場合には、各界面エネルギの変化は次のように表される。なお、以下の式中、γwoは、水と酸素の単位面積当たりの界面エネルギであり、γwtは、水とチタンの単位面積当たりの界面エネルギであり、γtoは、水と酸素の単位面積当たりの界面エネルギであり、tは、水膜15の厚みである。水膜15の厚みt及び水膜15の面積S1,S2は、水膜15が移動しても一定とする。また、θは、角部13の中心線Lと、細孔14の一辺とのなす角である。
〈水と酸素の界面エネルギ(EWO)の変化〉
wo(x+Δx)−Ewo(x)=2γwo(2Δx+y−y)tanθt
〈水とチタンの界面エネルギの変化Ewt
wt(x+Δx)−Ewt(x)=2γwt(y−y)(1/cosθ)t
〈チタンと酸素の界面エネルギの変化Eto
to(x+Δx)−Eto(x)=−2γto(y−y)(1/cosθ)t
水膜15の動く力(F)は、各界面エネルギ(Ewo、Ewt、Eto)の変化の変位微分より求まるため、以下の式1のように表すことができる。式1では、エネルギの小さい方へと水膜15に動く力が働くので、Fをx軸基準で考えた場合、マイナスが必要となる。
Figure 2008176960
式1中、Etotal(x+Δx)−Etotal(x)は、式2のようになる。
Figure 2008176960
ここで、水膜15が細孔14内を移動しても面積S1,S2が一定であることから、図7(A)に示す水膜15の面積S1と、図7(B)に示す水膜15の面積S2とをそれぞれ求め、S1=S2より、yをΔx、x、yを用いて表すと、次の式3のようになる。
Figure 2008176960
そして、式2中のy−yをΔxで微分すると式4のようになる。
Figure 2008176960
式4より、式1の力(F)は、式5のようになる。
Figure 2008176960
ここで、界面エネルギのつりあいは、式6に示すヤングの式で表される。なお、式中、αは、チタンと水の接触角である。
Figure 2008176960
上記式5を、式6を用いて水と酸素の単位当たりの界面エネルギ(γwo)、cosθ、cosα、tanθで表すと、以下の式7のようになる。
Figure 2008176960
式7より、θを制御する、即ち細孔14の角部13の角度を制御することによって、水膜15の動く力(F)を制御することが可能となることが分かる。これにより、細孔14の角部13の角度を調整することで、細孔14内の角部13に水膜15を移動しやすくすることができる。例えば角部13の角度を小さくした場合には、水膜15が角部13により移動しやすくなり、水膜15が角部13で安定に保持されることが分かる。
以上のことから、ガス拡散層6では、角部13を有する細孔14をチタン薄膜25に形成し、更に隣接する疎水性の触媒層4よりも、水との界面エネルギが小さく、ぬれやすいチタン薄膜25で形成することによって、界面エネルギの差により、角部13に水を移動させることができ、角部13に水膜15を形成して水を保持し、水膜15が形成されていない部分で酸素を透過させることができる。また、細孔14の角部13は、親水性のチタン薄膜25との接触面積が大きいため、水膜15を安定に保持することができる。また、このガス拡散層6では、触媒層4が疎水性であるため、触媒層4とは反対側の面、即ちセパレータ8側の面に水が移動しやすく、余分な水を効率よく排出することができる。
このようなガス拡散層6では、触媒層4の表面から水を除去することができるため、触媒層4での反応性を向上させることができる。また、ガス拡散層6では、細孔14内で部分的に水膜15を形成して水を保持し、細孔14内の水膜15が形成されていない部分で酸素を透過させることができるため、高分子電解質膜2を乾燥させないように、適度な水分を保持しながら、反応に必要な酸素を触媒層4に供給できるように水管理を行うことができる。また、ガス拡散層6は、チタン薄膜25で形成されており、カーボンペーパよりも厚みが薄く、細孔14が広くて浅いため、酸素を触媒層4に供給する際の抵抗が小さくなり、圧力損失を低減することができる。また、ガス拡散層6では、金属薄膜で形成されているため、電気抵抗も低減することができる。
なお、ガス拡散層6には、親水性のチタン薄膜25の金属薄膜に限定されず、導電性を有し、強酸性下で使用することができる白金等の他の親水性の材料で形成したり、金めっきしたものを用いてもよい。
以上のような数十μmの細孔14を有するガス拡散層6は、次のようにして作製することができる。なお、以下では、ガス拡散層6をチタン薄膜25で形成した場合を例に挙げて説明する。
先ず、図8に示すようにして、クロムマスク21を作製する。具体的には、図8(A)に示すように、ガラス板22上にクロム箔を例えばスパッタにより付けて、クロム層23を形成する。
次に、図8(B)に示すように、クロム層23上に例えばポジ型の電子線レジスト24をスピンコータ等により成膜する。
次に、図8(C)に示すように、電子線レジスト24に対して、電子線描画を行った後、電子線レジスト24を現像し、細孔14と対向する部分に電子線レジスト24が形成されないようにパターニングする。
次に、図8(D)に示すように、電子線レジスト24が形成されていない、即ち細孔14と対向する部分のクロム層23をエッチング液でウェットエッチングして除去する。
次に、図8(E)に示すように、電子線レジスト24を溶解させることが可能な溶液で、クロム層23上の電子線レジスト24を溶解し、除去することで、ガラス板22上に細孔14と対向する部分にクロム層23が形成されないようにパターニングされたクロムマスク21を得ることができる。
そして、次に、得られたクロムマスク21を用いて、図9に示すように、チタン薄膜25で形成したガス拡散層6を作製する。
先ず、図9(A)に示すように、200μm程度のフィルム状のチタン薄膜25を用意する。
次に、図9(B)に示すように、チタン薄膜25上の全面に高周波マグネトロンスパッタリング装置(サンユー工業株式会社、商品名SVC−700RF II)を用いて、アルミニウムを塗布し、アルミニウム層26を形成する。このアルミニウム層26は、後に行うチタン薄膜25を反応イオンエッチングする工程で犠牲層となる。
次に、図9(C)に示すように、アルミニウム層26上にスピンコート法により、ポジ型のフォトレジスト27を塗布する。
次に、図9(D)に示すように、上述で作製したクロムマスク21を用いて、フォトレジスト27の細孔14と対向する部分を露光機で露光する。この露光工程では、ガラス板22が紫外線を通し、クロム層23が紫外線を通さないため、このクロムマスク21を用いることで、クロム層23が形成されていない部分、即ち細孔14と対向する部分のフォトレジスト27が露光される。露光後、フォトレジスト27を現像して、細孔14と対向する部分のレジストを除去する。
次に、図9(E)に示すように、エッチング液に浸して、フォトレジスト27が形成されていない細孔14と対向する部分のアルミニウム層26をウェットエッチングする。
次に、図9(F)に示すように、フォトレジスト27を溶解させることが可能な溶液で、アルミニウム層26上のフォトレジスト27を除去する。
次に、図9(G)に示すように、アルミニウム層26が形成されていない、細孔14と対向する部分のチタン薄膜25を例えばドライエッチングの反応イオンエッチングにより除去して、チタン薄膜25に細孔14を形成する。
そして、図9(H)に示すように、チタン薄膜25上から犠牲層のアルミニウム層26を除去して、数十μmの微細な細孔14が形成されたチタン薄膜25からなるガス拡散層6が得られる。
なお、ガス拡散層6として、上述したようにチタン薄膜25等の親水性の材料で形成するのではなく、疎水性の材料で形成した場合には、図10に示すように、疎水性の材料で形成したガス拡散層31の細孔32は、疎水性の触媒層4やガス拡散層31との接触面積が小さくなるように、細孔32の中央に水が移動し、水膜33を形成されるようになる。この様な場合であっても、水を中央部で保持し、角部34で酸素を通すことができる。
親水性のガス拡散層6及び疎水性のガス拡散層31は、共に水を保持でき、酸素を透過させることができるため、固体高分子形燃料電池1のガス拡散層として用いることができる。親水性のガス拡散層6では、上述したように、角部13の角度を調整することによって、角部13に水膜15を形成することが容易であり、また飽和蒸気圧を下げることもできるので、角部13に徐々に水膜15が形成される。一方、疎水性のガス拡散層31では、細孔32内に水膜33ができた後、層内の水が増えると急激に水膜33が成長しやすくなる。したがって、固体高分子形燃料電池1では、細孔14がすぐに水で塞がれず、電流密度が高くなってもフラッディングによる電圧の低下を抑制できる親水性のガス拡散層6を用いる方がより好ましい。
また、親水性のガス拡散層6は、触媒層4が疎水性であるため、角部13に形成された水膜15がセパレータ8側のガス拡散層6上に移動しやすくなり、余分な水を効果的に排出することができる。
アノード9側のガス拡散層5の外側に設けられるセパレータ7は、図2に示すように、上部に外部から水素をガス拡散層5側に供給するガス供給口41と、下部に酸化反応しなかった水素を排出するガス排出口42とが設けられ、このガス供給口41とガス排出口42との間に、ガス拡散層5の全体に水素が行き渡るように上下方向に略直線状のガス流路43が形成されている。ガス供給口41及びガス排出口42は、外部と接続できるようにセパレータ7を貫通した貫通孔で形成されている。ガス流路43は、溝状に形成されている。このようなセパレータ7は、例えばガス不透過性で、導電性の樹脂材料やカーボン、ステンレス等で形成されている。
カソード10側のセパレータ8は、アノード9側のセパレータ7と同じ材料で形成される。カソード10側のセパレータ8は、上部に外部から酸素ガスをカソード10側のガス拡散層6に供給するためのガス供給口44と、下部には還元反応しなかった酸素や生成された水を排出する排出口45とが設けられ、このガス供給口44と排出口45との間に、ガス拡散層6全体に酸素が行き渡るように上下方向に略直線状のガス流路46が形成されている。ガス供給口44及び排出口45は、外部と接続できるようにセパレータ8を貫通した貫通孔で形成されている。ガス流路46は、図2に示すように、溝状に形成されている。
以上のような構成からなる固体高分子形燃料電池1では、アノード9側において、セパレータ7のガス供給口41から内部に水素が供給され、水素がガス流路43内に供給され、水素がガス拡散層5を介して触媒層3に供給され、水素の酸化反応が起こり、この酸化反応により生成された水素イオンが高分子電解質膜2内を通りカソード10側に移動する。また、アノード9側の酸化反応により生成された電子は、外部回路11を通り、カソード10側に移動する。カソード10側では、セパレータ8のガス供給口44から内部に酸素が供給され、酸素がガス流路46内を流れ、酸素がガス拡散層6の細孔14を介して触媒層4に供給され、酸素の還元反応が起こり、水が生成される。生成した水の一部は、ガス拡散層6に形成された角部13を有する細孔14内の一部に保持され、高分子電解質膜2の乾燥を防ぎ、細孔14に保持されなかった水は、セパレータ8に設けられた排出口45から外部に排出される。また、細孔14内では、水膜15が形成されなかった部分で、酸素を触媒層4に透過させることができる。
固体高分子形燃料電池1では、ガス拡散層6の細孔14内で水を保持することができるため、高分子電解質膜2を湿潤状態にでき、水素イオンの伝導性が良好となる。また、固体高分子形燃料電池1では、ガス拡散層6の細孔14内の水膜15が形成されていない部分で酸素を透過させることができるため、カソード10側での酸素の還元反応の反応性が低下することを防止できる。このように、固体高分子形燃料電池1では、ガス拡散層5,6、特に水が生成されるカソード10側のガス拡散層6の水管理を適切に行うことができるため、フラッティングによる電池性能の低下を防止することができる。また、固体高分子形燃料電池1では、従来のように電気浸透を起こさせることなく、水を排出できるため、余分なエネルギによる電池性能の低下を防止することができる。
なお、上述では、カソード10側のガス拡散層6を親水性の材料や疎水性の材料で形成し、角部13を有する細孔14を形成して作製する例を挙げて説明したが、アノード9側のガス拡散層5もカソード10側のガス拡散層6と同様に作製してもよい。このようにした場合には、高分子電解質膜2から水が排出されたり、触媒層3に供給する水素を加湿した場合に、水を外部に排出することができる。また、カソード10側のガス拡散層6と同様に、電気抵抗や水素を触媒層3に供給する際の抵抗が小さくなり、圧力損失を低減することができる。
また、上述の固体高分子形燃料電池1では、アノード9側に水素を供給したが、このことに限らず、メタノール水溶液を供給するようにしてもよい。
本発明の効果確認のため、略二等辺三角形状の細孔を有するガス拡散層と、略円形状の細孔を有するガス拡散層とを用いた場合における電池性能の評価を行った。
〈略二等辺三角形状の細孔を有するガス拡散層を用いた固体高分子形燃料電池〉
上述した固体高分子形燃料電池1のように、高分子電解質膜2及び触媒層3,4に、電解質膜を挟んで一対の触媒層が設けられたジャパンゴアテックス株式会社製の商品名PRIMEA5570(10mm×10mm、厚さ300μm)を用いた。アノード9側及びカソード10側のガス拡散層5,6には、チタン薄膜25を用いて、図8及び図9に示したようにフォトリソグラフィ技術で略二等辺三角形状の細孔14を複数形成したチタンのガス拡散層5,6を用いた。略二等辺三角形状の細孔14は、底辺の設計寸法が100μmであり、実寸法が約110μmであり、高さの設計寸法が40μmであり、実寸法が約48μmであり、17489個設けた。空隙率は、設計ベースで35.0%であり、実寸ベースで約46.2%である。セパレータ7,8には、図2に示すように、幅1mm、深さ1mmのガス流路43,46が5つあり、5つのガス流路43,46が形成された領域は触媒層5,6とほぼ同じである。また、ガス拡散層5,6の細孔14が形成された領域もガス流路43,36が形成された領域とほぼ同じであり、ガス流路43,46と対向する部分だけではなく、ガス流路43,46間と対向する部分にも形成し、この領域全体に細孔14を形成した。
高分子電解質膜2を挟んで設けられた一対の触媒層3,4の外側に、チタンのガス拡散層5,6を配置し、このチタンのガス拡散層5,6の外側にセパレータ7,8を配置し、これらを重ね合わせて、アノード9側に水素、カソード10側に酸素が供給可能となるように、固体高分子形燃料電池1を作製した。
〈略円形状の細孔を有するガス拡散層を用いた固体高分子形燃料電池〉
この固体高分子形燃料電池では、図3に示すようなガス拡散層を用いた。このガス拡散層51は、チタン薄膜52で形成され、細孔53を略円形状に形成し、この細孔53の大きさは設計寸法が直径50μmであり、実寸法が約56μmであり、17689個設け、空隙が設計ベースで34.7%であり、実寸ベースで約43.6%であること以外は略二等辺三角形状の細孔14を有するガス拡散層5,6を用いた固体高分子形燃料電池1と同様にして作製した。
以上のようにして作製した各固体高分子形燃料電池に対して、水素及び酸素の供給量をマスフローコントローラで制御し、20ml/min、30ml/min、40ml/min、50ml/minの4つの供給量において、電圧の低下を評価した。
具体的な評価方法は、アノード側に無加湿の水素、カソード側に無加湿の酸素を所定量供給し、図11に示すように、最初に、電流密度を25mA/cmで30分間保ち続け、その後、25mA/cm上げて、50mA/cmで再び30分間電流密度を保ち続け、同様にして電流密度300mA/cmまで上げて行った。各電流密度における電圧を測定した。なお、各固体高分子形燃料電池の温度は、約25度とした。
図12には、略円形状の細孔53を有するガス拡散層51を用いた固体電解質形燃料電池において、水素及び酸素の供給量を30ml/minとした場合の電圧の変化を示した。図12中線Aは、電圧と経過時間との関係を示し、線Bは、電流密度と経過時間との関係を示したものである。
図12により、この固体高分子形燃料電池では、250mA/cm以下の電流密度域において、各電流密度で30分間電圧を維持することができたが、電流密度が275mA/cm以上となると、30分間電圧を維持することができなくなることが確認できた。この固体高分子形燃料電池では、ガス拡散層51の細孔53が略円形状に形成されているため、電流密度が高くなって水の生成量が増えるに従って、細孔53が水で塞がれやすくなり、フラッティングが生じ、酸素が供給されにくくなり、電圧が低下した。
このように、他のガス供給量においても同様に電圧を測定し、同じ電流密度を維持した30分間のうちの最初の1分の電圧と最後の1分の電圧との差(差電圧)を求めた。細孔14を略二等辺三角形状に形成した固体高分子形燃料電池1の差電圧を図13に示し、細孔53を略円形状に形成した固体高分子形燃料電池の差電圧を図14に示した。
図13に示す結果から、細孔14を略二等辺三角形状に形成した場合には、各流量において、低電流密度域では、差電圧がほぼ0であり、一定の電流密度で30分間電圧を維持できることが確認できた。電流密度が高くなり、高電流密度域では、差電圧が大きくなり、一定の電流密度で30分間電圧を維持できず、電圧が低下したが、略二等辺三角形状の場合よりも、電圧が極端に下がらないことが確認できた。
これは、ガス拡散層6の細孔14を角部13を有する略二等辺三角形状に形成することによって、電流密度が低い場合には、細孔14の角部13に水膜15を形成し、水を保持し、高分子電解質膜2の乾燥を防ぎ、角部13の水膜15が形成されていない部分で、酸素を透過させることができたためである。これにより、この固体高分子電解質電池1では、電流密度が低いと、アノード9側からカソード10側に高分子電解質膜2を介して水素イオンが移動し、カソード10側の触媒層4に酸素が供給されるため、酸素の還元反応が適切に行われ、電圧の低下を防止することができる。
高電流密度域では、生成される水の量が多くなっても、疎水性の触媒層4から親水性のガス拡散層6側に水が移動し、触媒層4の表面に付いた水を除去でき、また隣接する疎水性の触媒層4によって角部13に移動した水がセパレータ8側のチタン薄膜25上に移動しやすくなるため、角部13に適度な水を保持しつつ、余分な水を除去でき、細孔14が水で塞がれてしまうことを防止できる。これにより、固体高分子形燃料電池1では、高電流密度域において、水の生成量が多くなっても、酸素を触媒層4に供給でき、触媒層4で酸素の還元反応が適切に行われるため、電圧が極端に低下することを防止できる。
また、図14より、細孔53を略円形状に形成した場合には、水素及び酸素の各供給量において、略二等辺三角形状に形成した場合よりも低い電流密度域で、差電圧が大きくなり、30分間電圧を維持することができず、電圧が低下することが確認できた。特に、水素及び酸素の供給量が10ml/minや20ml/minでは、電流密度が200mA/cm近傍で極端に電圧が下がってしまうことが確認できた。この固体高分子形燃料電池では、ガス拡散層51の細孔53が略円形状となっているため、低い電流密度であっても生成された水で細孔53が塞がれてしまい、酸素が適切に触媒層に供給されず、反応が進まなくなり、電圧が低下したためである。
更に、図15〜図19には、略二等辺三角形状の細孔14を有する固体高分子形燃料電池1及び略円形状の細孔53を有する固体高分子形燃料電池において、同じ電流密度を維持した30分間の最後の1分間の電圧の平均値を求め、各電流密度における平均値を示したものである。図15〜図19より、水素及び酸素の各供給量において、略二等辺三角形状の細孔14を有する固体高分子形燃料電池1の方が略円形状の細孔53を有する固体高分子形燃料電池よりも電圧が高くなることが確認できた。
略二等辺三角形状に形成した固体高分子形燃料電池1では、ガス拡散層5,6が上述したように、電流密度が低いとき、水を保持して固体高分子電解質膜2の乾燥を防ぎながら、酸素を透過させることができ、電流密度が高くなっても、余分な水を除去して、酸素を透過させることができる。一方、略円形状に形成した固体高分子形燃料電池では、上述したように、電流密度が低くても、細孔53が水で塞がれ、酸素の透過性が低下してしまう。したがって、図15〜図19に示すように、電流密度が低くても、また高くなっても、水を適度に保持し、固体高分子電解質膜2の乾燥を防ぎ、余分な水を除去して酸素を触媒層4に供給することができる細孔14を略二等辺三角形状に形成した固体高分子形燃料電池1の方が電圧が高く、電池性能が向上することが分かる。
以上のことから、固体高分子形燃料電池1では、ガス拡散層5,6の細孔14を二等辺三角形状に形成することによって、電流密度が高くなっても、電圧が高く、更に電圧の低下が抑えられ、性能が良く、安定した運転を行うことができることが分かる。
本発明を適用した固体高分子形燃料電池の断面の概略図である。 同固体高分子形燃料電池の分解斜視図である。 細孔を略円形状に形成したガス拡散層の平面図である。 チタンで形成したガス拡散層と、カーボンペーパで形成したガス拡散層との電圧の低下を比較した特性図である。 細孔を円形状に形成したガス拡散層の平面図である。 ガス拡散層の一部拡大図である。 細孔の角部近傍に形成された水膜を挙動を示す平面図であり、(A)は、水膜が移動する前の状態を示し、(B)は、水膜が細孔に内側に移動した状態を示す平面図である。 クロムマスクの製造工程を示す断面図である。 ガス拡散層の製造工程を示す断面図である。 疎水性の材料で形成したガス拡散層の一部拡大図である。 電圧の評価を行う際の時間と電流密度との関係を示す特性図である。 細孔を略円形状に形成し、水素及び酸素の供給量を30ml/minにした場合の電圧評価であり、セル電圧と電流密度と時間との関係を示す特性図である。 細孔を略二等辺三角形状に形成した場合の各流量における差電圧と電流密度との関係を示す特性図である。 細孔を略円形状に形成した場合の各流量における差電圧と電流密度との関係を示す特性図である。 酸素及び水素の供給量を10ml/minとした場合において、同じ電流密度を30分間維持した最後の1分間の電圧の平均値と電流密度との関係を示す特性図である。 酸素及び水素の供給量を20ml/minとした場合において、同じ電流密度を30分間維持した最後の1分間の電圧の平均値と電流密度との関係を示す特性図である。 酸素及び水素の供給量を30ml/minとした場合において、同じ電流密度を30分間維持した最後の1分間の電圧の平均値と電流密度との関係を示す特性図である。 酸素及び水素の供給量を40ml/minとした場合において、同じ電流密度を30分間維持した最後の1分間の電圧の平均値と電流密度との関係を示す特性図である。 酸素及び水素の供給量を50ml/minとした場合において、同じ電流密度を30分間維持した最後の1分間の電圧の平均値と電流密度との関係を示す特性図である。
符号の説明
1 固体高分子形燃料電池、2 高分子電解質膜、3,4 触媒層、5,6 ガス拡散層、7,8 セパレータ、9 アノード側、10 カソード側、11 外部回路、12 細孔、13 角部、14 細孔、15 水膜、16 辺部

Claims (8)

  1. 高分子電解質膜と、
    上記高分子電解質膜を挟んで設けられる一対の触媒層と、
    上記触媒層の外側に設けられる一対のガス拡散層とを有し、
    上記少なくとも一方のガス拡散層には、角部を有する細孔が形成され、上記細孔内に部分的に水膜が形成されるようにしたことを特徴する固体高分子形燃料電池。
  2. 上記触媒層は、疎水性であり、上記細孔が形成された上記ガス拡散層は、親水性であることを特徴とする請求項1記載の固体高分子形燃料電池。
  3. 上記ガス拡散層は、チタンで形成されていることを特徴とする請求項2記載の固体高分子形燃料電池。
  4. 上記細孔は、略三角形であり、上記角部に上記水膜が形成されるようにしたことを特徴とする請求項3記載の固体高分子形燃料電池。
  5. 上記細孔は、略多角形であることを特徴とする請求項1記載の固体高分子形燃料電池。
  6. 上記略多角形は、略三角形であることを特徴とする請求項5記載の固体高分子形燃料電池。
  7. 上記細孔が形成されたガス拡散層は、カソード側であることを特徴とする請求項1記載の固体高分子形燃料電池。
  8. 高分子電解質膜と、
    上記高分子電解質膜を挟んで設けられる一対の触媒層と、
    上記触媒層の外側に設けられる一対の集電体とを有し、
    上記少なくとも一方の集電体には、角部を有する細孔が形成され、上記細孔内に部分的に水膜が形成されるようにしたことを特徴する固体高分子形燃料電池。
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