JP5092305B2 - 燃料電池用のセパレータおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
これらの燃料電池は、メタン等から生成された水素ガスを燃料とするものであるが、最近では、燃料としてメタノール水溶液をダイレクトに用いるダイレクトメタノール型燃料電池(以下、DMFCとも言う)も知られている。
このような燃料電池のなかで、固体高分子膜を2種類の触媒で挟み込み、更に、これらの部材をガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)とセパレータで挟んだ構成の固体高分子型燃料電池(以下、PEFCとも言う)が注目されている。
このようなセパレータとしては、コスト、強度の点から、金属製のセパレータが好ましいが、耐食性に問題があった。このため、導電性の電着塗膜を形成して耐食性を付与した金属セパレータが開発されている(特許文献1、2、3)。
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、強度、耐食性に優れ、接続抵抗が小さい燃料電池用のセパレータとその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の他の態様として、前記金属基体は、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金、鉄、鉄ニッケル合金のいずれかからなるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記導電材料は、カーボン粒子、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、耐食性金属の少なくとも1種であるような構成とした。
また、本発明の燃料電池用のセパレータの製造方法は、電着性を有する樹脂中に導電材料を分散させた電着液を用いて金属基体上に電着にて樹脂層を形成する工程、を複数回行って多層構造の樹脂層を形成し、その後、該樹脂層に炭化処理を施して炭素リッチの保護層を形成するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記炭化処理の温度は、前記樹脂層の材料の5%重量減少温度をT(℃)としたときに、(T+30)℃〜500℃の範囲内であるような構成とした。
また、本発明のセパレータの製造方法では、各樹脂層の形成段階でピンホールや厚みの薄い部位が生じても、このような部位は他の樹脂層により埋められ、樹脂層に炭化処理を施して炭素リッチな層とすることにより、高い強度と優れた耐食性を具備し、かつ、接続抵抗の低い保護層を備えたセパレータの製造が可能である。
[セパレータ]
図1は本発明の燃料電池用のセパレータの一実施形態を示す部分断面図である。図1において、本発明のセパレータ1は、金属基体2と、この金属基体2の両面に形成された溝部3と、金属基体2の両面を被覆するように配設された保護層5とを備えている。この保護層5は、樹脂層に炭化処理を施した炭素リッチの層であり、かつ、導電材料を含有するものである。
セパレータ1,11を構成する金属基体2,12の材質は、電気導電性が良く、所望の強度が得られ、加工性の良いものが好ましく、例えば、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金、鉄、鉄ニッケル合金等が挙げられる。
また、金属基体12が有する貫通孔13は、セパレータ11が燃料電池に組み込まれたときに、燃料ガス、あるいは、酸化剤ガスを単位セルに供給するための流路となるものである。このような貫通孔13の大きさ、個数、配設密度には特に制限はない。
また、上記の電着性を有する合成高分子樹脂に粘着性を付与するために、ロジン系、テルペン系、石油樹脂等の粘着性付与樹脂を必要に応じて添加してもよい。
尚、上記の材料の5%重量減少温度T(℃)とは、材料の熱重量分析において、室温(25℃)での重量に対する重量減少が5%に達した温度を意味する。ここで、熱重量分析は試料を窒素雰囲気中に置き、5℃/分の速度で昇温して測定する。以下においても同様である。
樹脂層の炭化処理により形成された保護層5,15の厚みは、0.1〜100μm、好ましくは3〜30μmの範囲とすることができる。保護層5,15の厚みが0.1μm未満であると、ピンホール等の発生により、良好な耐食性が確保できないことがあり、100μmを超えると、乾燥固化後のヒビ割れ等の発生や、生産性の低下、コスト高といった問題が発生し好ましくない。
尚、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン等の微細繊維状炭素材料は、ナノテクノロジーの素材として、複合材料、電子デバイス等の種々の分野に適用が期待されているものであり、これらをフィラーとして複合材料に用いた場合には、これらが有する物性を複合材料に付与することができる。例えば、カーボンナノチューブは、導電性、耐酸性、加工性、機械的強度等の面で優れており、フィラーとして複合材料に用いられた場合には、このようなカーボンナノチューブの優れた物性を複合材料に付与することができる。
上述の本発明のセパレータの実施形態は例示であり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
次に、本発明のセパレータの製造方法について説明する。
図3は、図1に示されるセパレータ1を例として本発明の製造方法を説明するための工程図である。本発明の製造方法では、まず、金属板材2′の両面にフォトリソグラフィーにより所望のパターンでレジスト7,7を形成し(図3(A))、このレジスト7,7をマスクとして両面から金属板材2′をエッチングして溝部3,3を形成する(図3(B))。その後、レジスト7,7を剥離して金属基体2を得る(図3(C))。
また、本発明では、多層構造の樹脂層を成膜し、その後、炭化処理を施して保護層を形成してもよい。
貫通孔13の形成は、上述のエッチングによる方法の他に、サンドブラスト法、レーザー加工法、ドリル加工法等により行うことも可能である。
次に、貫通孔13の内壁面を含む金属基体12に、保護層15を形成する(図4(D))。この保護層15の形成は、上述の保護層5の形成と同様に行うことができる。これにより、セパレータ11が得られる。
上述のセパレータの製造方法の実施形態は例示であり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
ここで、本発明のセパレータを用いた高分子電解質型燃料電池の一例を、図5〜図8を参照して説明する。図5は高分子電解質型燃料電池の構造を説明するための部分構成図であり、図6は高分子電解質型燃料電池を構成する膜電極複合体を説明するための図であり、図7および図8は、それぞれ高分子電解質型燃料電池のセパレータと膜電極複合体を離間させた状態を異なった方向から示す斜視図である。
図5〜図8において、高分子電解質型燃料電池21は、膜電極複合体(MEA:Membrane-Electrode Assembly)31とセパレータ41とからなる単位セルが複数個積層されたスタック構造を有している。
セパレータ41は、一方の面に燃料ガス供給用溝部43aを備え、他方の面に酸化剤ガス供給用溝部44aを備えたセパレータ41Aと、一方の面に燃料ガス供給用溝部43aを備え、他方の面に冷却水用溝部44bを備えたセパレータ41Bと、一方の面に冷却水用溝部43bを備え、他方の面に酸化剤ガス供給用溝部44aを備えたセパレータ41Cとからなっている。このようなセパレータ41A,41B,41Cは、本発明のセパレータであり、その両面に、図1に示されるような保護層5が形成されているが、図示例では、省略している。
図9および図10に示されるように、高分子電解質型燃料電池51は、膜電極複合体(MEA:Membrane-Electrode Assembly)61とセパレータ71A,71Bとからなる単位セル52を平面状に複数個配列し、これらを電気的に直列に接続し、単位セルの個数分(図9では4個分)の電圧を取り出す高分子電解質型燃料電池である。また、各単位セル52の周りには、これと略同じ厚さの絶縁部55を設け、全体を平面状にしている。すなわち、平板状の絶縁部55のくり抜き部に単位セル52を嵌め込んだ状態とすることにより、単位セル52と絶縁部55とを平面状に設けているものである。
尚、図示例では単位セルの個数を4個としているが、単位セルの個数には制限はない。
接続部57の表裏接続部57cとしては、スルホール接続部、あるいは、充填ビア接続部、バンプ接続部のいずれかを、隣接する単位セル間に位置する絶縁部55中に設けたものとすることができる。これらの表裏接続部57cは、従来の配線基板技術の応用として形成できる。
セパレータ71A,71Bは、図2に示されるような本発明のセパレータであり、複数の貫通孔を備えた金属基体に導電性の保護層を有するものである。
[実施例1]
金属板材として、厚み0.8mmのSUS304(80mm×80mm)を準備し、表面の脱脂処理を行った。
次に、このSUS304の両面に、感光材料(カゼインと重クロム酸アンモニウムとの混合物)をディップコート法により塗布して厚み7μmの塗膜を形成し、溝部形成用のフォトマスクを介して露光(5kW水銀灯により60秒間照射)、現像(40℃温水をスプレー)してレジストを形成した。
次に、金属基体に対して、40℃の塩酸水溶液(水9部に35%塩酸1部を添加)を用いて前処理を施し水洗した。
次いで、エポキシ電着液に、導電材料としてカーボンブラック(Cabot(株)製 Vulcan XC−72)を樹脂固形分に対して75重量%添加し分散させて、電着液とした。
ここで、上記の樹脂層の材料の5%重量減少温度Tを、熱重量分析により測定(試料を窒素雰囲気中に置き、5℃/分の速度で昇温して測定)した結果、308.4℃であった。また、炭化処理前の樹脂層の鉛筆硬度試験の結果は2Bであったが、炭化処理により形成された保護層の鉛筆硬度試験の結果は5Hまで向上しており、炭素リッチであることが確認された。
まず、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(エポキシ当量910)1000重量部を撹拌下に70℃に保ちながら、エチレングリコールモノエチルエーテル463重量部に溶解させ、さらに、ジエチルアミン80.3重量部を加えて100℃で2時間反応させてアミンエポキシ付加物(A)を調製した。
また、コロネートL(日本ポリウレタン(株)製 ジイソシアネート:NCO13%の不揮発分75重量%)875重量部にジブチル錫ラウレート0.05重量部を加え50℃に加熱し、これに2−エチルヘキサノール390重量部を添加し、その後、120℃で90分間反応させた。得られた反応生成物をエチレングリコールモノエチルエーテル130重量部で希釈した成分(B)を得た。
(電気抵抗の測定方法)
セパレータをガス拡散層(東レ(株)製 TGP−H−060 190μm厚)
で両側から挟み込み、さらに、これらを銅に金めっきを施した厚さ5mmの電極
で挟み込んで圧着(圧力:20kgf/cm2)し、電極間の抵抗を測定する。
(耐食性試験の条件)
5%の塩水に塩化第二銅(二水和物)0.027重量%を添加した噴霧試験液を
用い、噴霧槽内の温度を50℃としてキャス(CASS)試験を行い、1000
時間後に赤錆の発生が見られない場合を、耐食性が良好であるとする。
実施例1と同様にして、溝部を備えた金属基体を作製した。
また、実施例1と同様にして電着液を調製した。
この電着液を20℃に保って撹拌し、この中に上記の金属基体を浸漬し、極間40mm、電圧50Vで30秒間電着を行って樹脂層を形成し、引き上げた金属基体を純水洗浄した後、ドライヤーで熱風乾燥(150℃、3分間)し、さらに、酸素雰囲気中で350℃、2時間の炭化処理を施して炭素リッチな層を形成した。この操作を更に1回繰り返した。これにより、金属基体を被覆するように厚み15μmの2層構造の保護層が形成され、セパレータが得られた。
このように作製したセパレータについて、表裏導通の電気抵抗を実施例1と同様の方法で測定した結果、5.4mΩであり、電気抵抗が低いことが確認された。
また、上記のセパレータについて、実施例1と同様の条件で耐食性試験を行った結果、良好な耐食性を具備することが確認された。
金属板材として、80mm×80mm、厚み0.8mmのアルミニウム合金(A5052P)を準備し、表面の脱脂処理を行った。
次に、このアルミニウム合金の両面に、ドライフィルムレジスト(ニチゴー・モートン(株)製)をラミネートして35μm厚の感光性レジスト層を形成し、その後、溝部形成用のフォトマスクを介して露光(5kW水銀灯により15秒間照射)、現像(30℃の2%炭酸水素ナトリウム水溶液をスプレー)してレジストを形成した。
次いで、上記のレジストを介してアルミニウム合金の両面から45℃に加熱した塩化第二鉄水溶液をスプレーして、所定の深さまでハーフエッチングを行った。その後、50℃の5%炭酸水素ナトリウム水溶液でレジストを剥離し、洗浄処理を施した。これにより、幅が1mm、深さが0.3mmのほぼ半円形状の断面を有し、振れ幅50mm、ピッチ2mmで蛇行した長さ1300mmの溝部を備えた金属基体を得た。
次に、上記の金属基体に対して、実施例2と同様にして、厚み15μmの2層構造の保護層を形成してセパレータを得た。
上記のように作製したセパレータにおける表裏導通の電気抵抗を実施例1と同様の方法で測定した結果、4.9mΩであり、電気抵抗が低いことが確認された。
また、上記のセパレータについて、実施例1と同様の条件で耐食性試験を行った結果、良好な耐食性を具備することが確認された。
金属板材として、80mm×80mm、厚み0.8mmの銅合金(銅−クロム−錫合金)を準備し、表面の脱脂処理を行った。
次に、この銅合金の両面に、感光材料(カゼインと重クロム酸アンモニウムとの混合物)をディップコート法により塗布して厚み7μmの塗膜を形成し、溝部形成用のフォトマスクを介して露光(5kW水銀灯により60秒間照射)、現像(40℃温水をスプレー)してレジストを形成した。
次に、金属基体に対して、50℃の硫酸(硫酸1部に水5部を添加)を用いて前処理を施し水洗した。
次いで、金属基体上に、実施例2と同様にして、厚み15μmの2層構造の保護層を形成してセパレータを得た。
上記のように作製したセパレータにおける表裏導通の電気抵抗を実施例1と同様の方法で測定した結果、4.8mΩであり、電気抵抗が低いことが確認された。
また、上記のセパレータについて、実施例1と同様の条件で耐食性試験を行った結果、良好な耐食性を具備することが確認された。
実施例1と同様にして、溝部を備えた金属基体を作製した。
次に、上記の金属基体に対して、実施例2と同様にして、厚み15μmの2層構造の保護層を形成してセパレータを得た。但し、実施例2の炭化処理の代わりに、酸素雰囲気中で310℃(樹脂層の材料の5%重量減少温度T)、2時間の加熱処理を施した。この加熱処理前の樹脂層の鉛筆硬度試験の結果は2Bであり、加熱処理により形成された保護層の鉛筆硬度試験の結果は4Hまで向上したものの、炭素リッチでないことが確認された。
このように作製されたセパレータにおける表裏導通の電気抵抗を実施例1と同様の方法で測定した結果、7.2mΩであり、実施例1〜4のセパレータに比べて電気抵抗が大きいものであった。
実施例1と同様にして、溝部を備えた金属基体を作製した。
次に、上記の金属基体に対して、実施例2と同様にして、厚み15μmの2層構造の保護層を形成してセパレータを得た。但し、実施例2の炭化処理の代わりに、酸素雰囲気中で550℃、2時間の炭化処理を施した。この炭化処理前の樹脂層の鉛筆硬度試験の結果は2Bであったが、炭化処理により形成された保護層の鉛筆硬度試験の結果は6Hまで向上しており、炭素リッチであることが確認された。
このように作製されたセパレータにおける表裏導通の電気抵抗を実施例1と同様の方法で測定した結果、5.2mΩであり、電気抵抗が低いことが確認された。
しかし、上記のセパレータについて、実施例1と同様の条件で耐食性試験を行った結果、600時間経過で赤錆が発生しており、実施例1〜4のセパレータに比べて耐食性が劣るものであった。
実施例1と同様にして、溝部を備えた金属基体を作製した。
また、実施例1と同様にして電着液を調製した。
この電着液を20℃に保って撹拌し、この中に上記の金属基体を浸漬し、極間40mm、電圧50Vで1分間電着を行って樹脂層を形成し、引き上げた金属基体を純水洗浄した後、ドライヤーで熱風乾燥(150℃、3分間)し、さらに、窒素雰囲気中で180℃、1時間の熱処理を施した。これにより、金属基体を被覆するように厚み15μmの保護層が形成され、セパレータが得られた。
また、上記のセパレータについて、実施例1と同様の条件で耐食性試験を行った結果、600時間経過で赤錆が発生しており、実施例1〜4のセパレータに比べて耐食性が劣るものであった。
2…金属基体
3…溝部
5…保護層
11…セパレータ
12…金属基体
13…貫通孔
15…保護層
21,51…高分子電解質型燃料電池
31,61…膜電極複合体(MEA)
41A,41B,41C,71A,71B…セパレータ
Claims (6)
- 金属基体と、該金属基体を被覆するように電着により形成された保護層とを備え、前記金属基体は少なくとも一方の面に位置する溝部、あるいは、複数の貫通孔を有し、前記保護層は樹脂層に炭化処理を施した炭素リッチの層であるとともに導電材料を含有し、厚みが3〜30μmの範囲であることを特徴とする燃料電池用のセパレータ。
- 前記金属基体は、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金、鉄、鉄ニッケル合金のいずれかからなることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用のセパレータ。
- 前記導電材料は、カーボン粒子、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、耐食性金属の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料電池用のセパレータ。
- 電着性を有する樹脂中に導電材料を分散させた電着液を用いて金属基体上に電着にて樹脂層を形成し、該樹脂層に炭化処理を施して炭素リッチの保護層を形成する工程、を複数回行って多層構造の保護層を形成することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
- 電着性を有する樹脂中に導電材料を分散させた電着液を用いて金属基体上に電着にて樹脂層を形成する工程、を複数回行って多層構造の樹脂層を形成し、その後、該樹脂層に炭化処理を施して炭素リッチの保護層を形成することを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
- 前記炭化処理の温度は、前記樹脂層の材料の5%重量減少温度をT(℃)としたときに、(T+30)℃〜500℃の範囲内であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
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