JP5103862B2 - 高分子電解質型燃料電池用のセパレータおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
これらの燃料電池は、メタン等から生成された水素ガスを燃料とするものであるが、最近では、燃料としてメタノール水溶液をダイレクトに用いるダイレクトメタノール型燃料電池(以下、DMFCとも言う)も知られている。
なかでも、固体高分子膜を2種類の電極で挟み込み、更に、これらの部材をセパレータで挟んだ構成の固体高分子型燃料電池(以下、PEFCとも言う)が注目されている。
しかし、単位セルに酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給用溝部では、単位セルを透過した水素イオンと酸化剤ガスである酸素とが下記のように反応して生成された水が詰まって、いわゆるフラッディング(水詰まり)が生じる。
1/2O2 + 2e- + 2H+ → H2O
上記のフラッディング発生を防止するために、例えば、酸化剤ガス供給用溝部の内面に金メッキ層、金とフッ化カーボンとの複合メッキ層、あるいはフッ素樹脂膜等からなる撥水処理層を設けたセパレータ(特許文献1)、酸化剤ガス供給用溝部の底壁面に排水用溝部を設けたセパレータ(特許文献2)等が開発されている。
一方、酸化剤ガス供給用溝部の底壁面に排水用溝部を設けたセパレータでは、反応生成された水が多い場合には、排水が間に合わず、フラッディングが生じるという問題があった。
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、フラッディング(水詰まり)が生じ難く、強度、耐食性に優れ、製造コストの低減が可能な高分子電解質型燃料電池用のセパレータと、このようなセパレータを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明の他の態様として、前記導電材料は、カーボン粒子、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、耐食性金属の少なくとも1種であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記樹脂層は、撥水性を発現する元素や官能基の少なくとも1種を含有するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記元素はフッ素、ケイ素であり、前記官能基はアルキル基であるような構成とした。
図1は本発明の高分子電解質型燃料電池用のセパレータの一実施形態を示す部分断面図である。図1において、本発明のセパレータ1は、金属基体2と、この金属基体2の両面に形成された溝部3と、金属基体2の両面を被覆するように電着により形成された樹脂層5とを備えている。そして、この樹脂層5は、導電材料を含有し、かつ、撥水性を有している。
セパレータ1を構成する金属基体2の材質は、電気導電性が良く、所望の強度が得られ、加工性の良いものが好ましく、例えば、ステンレス、冷間圧延鋼板、アルミニウム、チタン、銅等が挙げられる。
このような溝部3の形状は、特に制限はなく、蛇行した連続形状、櫛形状等であってよく、また、深さ、幅、断面形状も特に制限はない。また、金属基体2の表裏で、溝部3の形状が異なるものであってもよい。
樹脂層5に含有される撥水性を発現するための元素としては、例えば、フッ素、ケイ素等を挙げることができる。また、撥水性を発現するための官能基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ラウリル等のアルキル基を挙げることができる。
一方、撥水性を発現するための元素や官能基を構造中に有するカチオン性合成高分子樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等を挙げることができ、これらを単独で、あるいは任意の組み合わせによる混合物として使用することができる。このようなカチオン性合成高分子樹脂とポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の架橋性樹脂とを併用してもよい。
また、上記の電着性を有する合成高分子樹脂に粘着性を付与するために、ロジン系、テルペン系、石油樹脂等の粘着性付与樹脂を必要に応じて添加してもよい。
さらに、本発明では、セパレータ1を構成する樹脂層5が、電解重合により形成された導電性高分子からなる樹脂に導電性を高めるドーパントを含有する第1の樹脂層と、この第1の樹脂層を被覆するように電着により形成され、導電材料を含有し、かつ、撥水性である第2の樹脂層からなる複合膜構造であってもよい。
図3〜図6において、高分子電解質型燃料電池11は、単位セルである膜電極複合体(MEA:Membrane-Electrode Assembly)21とセパレータ31とからなる。
セパレータ31は、一方の面に燃料ガス供給用溝部33aを備え、他方の面に酸化剤ガス供給用溝部34aを備えたセパレータ31Aと、一方の面に燃料ガス供給用溝部33aを備え、他方の面に冷却水用溝部34bを備えたセパレータ31Bと、一方の面に冷却水用溝部33bを備え、他方の面に酸化剤ガス供給用溝部34aを備えたセパレータ31Cとからなっている。このようなセパレータ31A,31B,31Cは、本発明のセパレータであり、その両面に、図1に示されるような樹脂層5が形成されているが、図示例では、省略している。尚、酸化剤ガス供給用溝部34aを備えていないセパレータ31Bについては、撥水性を具備していない樹脂層で被覆されて導電性と耐食性が付与されたセパレータ、すなわち、本発明のセパレータではないものであってもよい。
[実施例]
金属板材として、厚み4.5mmのステンレス板(SUS304)を準備し、表面の脱脂処理を行った。
次に、このステンレス板の両面に、感光材料(カゼインと重クロム酸アンモニウムとの混合物)をディップコート法により塗布して厚み20μmの塗膜を形成し、溝部形成用のフォトマスクを介して露光(5kW水銀灯により60秒間照射)、現像(40℃温水をスプレー)してレジストを形成した。
一方、以下のようにして、撥水性アクリルエポキシ電着液を調製した。
まず、ビフェニールAのジグリシジルエーテル(エポキシ当量=910)1000重量部を攪拌下で70℃に保ちながら、エチレングリコールモノエチルエーテル463重量部に溶解させ、さらに、ジエチルアミン80.3重量部を加えて100℃で2時間反応させてアミンエポキシ付加物(A)を調製した。
次に、上記のアミンエポキシ付加物(A)1000重量部と成分(B)400重量部からなる混合物を、氷酢酸30重量部で中和した後、脱イオン水570重量部を用いて希釈し、不揮発分50重量%の樹脂Aを調製した。この樹脂A200.2重量部と水酸基含有フッ化アクリル共重合体(三菱レーヨン(株)製 AS−1301)200重量部、コロネートL100重量部、脱イオン水1000重量部、およびジブチル錫ラウレート2.4重量部を配合して撥水性アクリルエポキシ電着液を調製した。
上記の電着液を20℃に保って撹拌し、この中に上記の金属基体を浸漬し、極間40mm、電圧50Vで1分間電着を行い、引き上げた金属基体を純水洗浄した。その後、ホットプレート上で150℃、3分間乾燥し、さらに、窒素雰囲気中で180℃、1時間の加熱硬化処理を施した。これにより、溝部を含めた金属基体上には、厚み15μmの均一な樹脂層が形成され、セパレータが得られた。
(水の接触角の測定条件)
常温常圧下で被測定物の表面に純水を滴下し、水滴の頂点の高さh、水滴の半径a
を直読する。固液界面・水平線と、液滴頂点を結ぶ線がなす角θBは、接触角θA
の半分の関係にあるため、θA=2θB=2arctan(h/a)より、水の接触角を
測定する。
撥水性アクリルエポキシ電着液を下記のように調製したエポキシ電着液に換えた他は、実施例と同様にして、セパレータを作製した。
このセパレータの樹脂層における水の接触角を、実施例と同様の条件で測定した結果、60°であり、撥水性が極めて低いことが確認された。
まず、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(エポキシ当量910)1000重量部を撹拌下に70℃に保ちながら、エチレングリコールモノエチルエーテル463重量部に溶解させ、さらに、ジエチルアミン80.3重量部を加えて100℃で2時間反応させてアミンエポキシ付加物(A)を調製した。
また、コロネートL(日本ポリウレタン(株)製 ジイソシアネート:NCO13%の不揮発分75重量%)875重量部にジブチル錫ラウレート0.05重量部を加え50℃に加熱し、これに2−エチルヘキサノール390重量部を添加し、その後、120℃で90分間反応させた。得られた反応生成物をエチレングリコールモノエチルエーテル130重量部で希釈した成分(B)を得た。
実施例と同様にして、溝部を備えた金属基体を作製した。
また、ポリテトラフルオロエチレンのコロイド溶液(ダイキン工業(株)製 ND−2)に、導電材料としてカーボンブラック(Cabot(株)製 Vulcan XC−72)を樹脂固形分に対して75重量%添加し分散させて、導電塗料とした。
次に、上記の導電塗料を金属基体上にスプレー塗布し、その後、赤外線乾燥炉中で80℃、1時間加熱し、さらに、380℃で1時間の加熱処理を施した。これにより、溝部を含めた金属基体上には、樹脂層が形成され、セパレータが得られた。
このセパレータの樹脂層における水の接触角を、実施例と同様の条件で測定した結果、120°であり、高い撥水性を備えていることが確認された。
しかし、このセパレータの樹脂層は、実施例の樹脂層に比べて厚くなっているが、厚みムラが大きく、特に側壁部では樹脂層の形成されていないピンホール形状の部位が存在し、セパレータとしての信頼性が低いものであった。
2…金属基体
3…溝部
5…樹脂層
11…高分子電解質型燃料電池
21…膜電極複合体(MEA)
31A,31B,31C…セパレータ
Claims (10)
- 金属基体と、該金属基体の少なくとも一方の面に形成された溝部と、前記金属基体を被覆するように電着により形成された樹脂層とを備え、該樹脂層は厚みが3〜30μmの範囲であり導電材料を含有するとともに、撥水性であることを特徴とする高分子電解質型燃料電池用のセパレータ。
- 前記導電材料は、カーボン粒子、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、耐食性金属の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の高分子電解質型燃料電池用のセパレータ。
- 金属基体と、該金属基体の少なくとも一方の面に形成された溝部と、前記金属基体を被覆するように電解重合により形成された樹脂層とを備え、該樹脂層は厚みが3〜30μmの範囲であり、導電性高分子からなる樹脂に導電性を高めるドーパントを含有するとともに、撥水性であることを特徴とする高分子電解質型燃料電池用のセパレータ。
- 金属基体と、該金属基体の少なくとも一方の面に形成された溝部と、前記金属基体を被覆するように形成された厚みが3〜30μmの範囲である樹脂層とを備え、該樹脂層は電解重合により形成された導電性高分子からなる樹脂に導電性を高めるドーパントを含有する第1の樹脂層と、この第1の樹脂層を被覆するように電着により形成され導電材料を含有し撥水性である第2の樹脂層からなることを特徴とする高分子電解質型燃料電池用のセパレータ。
- 前記導電材料は、カーボン粒子、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、耐食性金属の少なくとも1種であることを特徴とする請求項4に記載の高分子電解質型燃料電池用のセパレータ。
- 前記樹脂層は、撥水性を発現する元素や官能基の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の高分子電解質型燃料電池用のセパレータ。
- 前記元素はフッ素、ケイ素であり、前記官能基はアルキル基であることを特徴とする請求項6に記載の高分子電解質型燃料電池用のセパレータ。
- 金属基体の少なくとも一方の面に溝部を形成する工程と、撥水性を発現するための元素や官能基の少なくとも1種を構造中に有する樹脂に導電材料を分散させた電着液を用いて電着により前記金属基体を被覆するように厚みが3〜30μmの範囲である撥水性の樹脂層を形成する工程と、を有することを特徴とする高分子電解質型燃料電池用のセパレータの製造方法。
- 金属基体の少なくとも一方の面に溝部を形成する工程と、撥水性を発現するための元素や官能基の少なくとも1種を構造中に有する導電性高分子からなる樹脂に導電性を高めるドーパントを含有した厚みが3〜30μmの範囲である撥水性の樹脂層を、電解重合により前記金属基体を被覆するように形成する工程と、を有することを特徴とする高分子電解質型燃料電池用のセパレータの製造方法。
- 金属基体の少なくとも一方の面に溝部を形成する工程と、導電性高分子からなる樹脂に導電性を高めるドーパントを含有した第1の樹脂層を、電解重合により前記金属基体を被覆するように形成する工程と、撥水性を発現するための元素や官能基の少なくとも1種を構造中に有する樹脂に導電材料を分散させた電着液を用いて電着により前記第1の樹脂層を被覆するように撥水性の第2の樹脂層を形成する工程と、を有し、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層からなり厚みが3〜30μmの範囲である樹脂層を形成することを特徴とする高分子電解質型燃料電池用のセパレータの製造方法。
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