JP5545150B2 - 燃料電池用のセパレータおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
これらの燃料電池は、メタン等から生成された水素ガスを燃料とするものであるが、最近では、燃料としてメタノール水溶液をダイレクトに用いるダイレクトメタノール型燃料電池(以下、DMFCとも言う)も知られている。
このような燃料電池のなかで、固体高分子膜を2種類の触媒で挟み込み、更に、これらの部材をガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)とセパレータで挟んだ構成の固体高分子型燃料電池(以下、PEFCとも言う)が注目されている。
このPEFCにおいては、固体高分子電解質膜の両側に、空気極(酸素極)、燃料極(水素極)を配置した単位セルを、所望の起電力を得るために、複数個積層したスタック構造、あるいは、平面状に複数個を直列に接続した構造となっている。例えば、上記のスタック構造の場合、単位セル間に配設されるセパレータは、そのー方の面に、隣接するー方の単位セルに燃料ガスを供給するための燃料ガス供給用溝部が形成され、他方の面に、隣接する他方の単位セルに酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給用溝部が形成されている。
このようなセパレータとしては、コスト、強度の点から、金属製のセパレータが好ましいが、耐食性に問題があった。このため、導電性の電着被膜を形成して耐食性を付与した金属セパレータが開発されている(特許文献1、2、3)。
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、導電性と耐食性に優れた燃料電池用のセパレータと、製造工程中に金属基材に設けた電着被膜に欠陥が発生しても、その欠陥を修復して優れた導電性と耐食性を具備する燃料電池用セパレータの製造を可能とする製造方法を提供することを目的とする。
本発明の他の態様として、前記金属基材は、少なくとも一方の面に溝部を有するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記金属基材は、複数の貫通孔を有するような構成とした。
本発明の他の態様として、前記導電材料は、カーボン粒子、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、耐食性金属の少なくとも1種であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記金属基材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記処理液を用いて前記薄膜を形成する方法は、ディップ法、ディスペンス法およびスプレー法のいずれかであるような構成とした。
本発明のセパレータの製造方法では、金属基材に電着で形成された樹脂層にピンホール等の欠陥箇所が存在しても、粘度を0.8〜100cPの範囲に設定した処理液を用いて撥水性薄膜を樹脂層上に形成するので、樹脂層の欠陥箇所にも処理液は侵入して撥水性薄膜が形成され、これにより欠陥のない被膜が金属基材に形成され、優れた導電性と耐食性を具備するセパレータの製造が可能であるとともに、従来の金属基材を用いたセパレータの製造方法に比べて工程が簡略化され、製造コストの低減が可能である。
[セパレータ]
図1は、本発明の燃料電池用のセパレータの一実施形態を示す部分断面図である。図1において、本発明のセパレータ1は、金属基材2と、この金属基材2の両面に形成された溝部3と、金属基材2の両面を被覆するように電着により形成された導電性の樹脂層4と、この樹脂層4を被覆する撥水性薄膜5とを備えており、樹脂層4は導電材料を含有するものである。尚、本発明において導電性とは、四探針法により測定した比抵抗値が500mΩ・cm以下であることを意味する。また、撥水性とは、接触角計(協和界面科学(株)製 Drop Master)を用いて測定した水の接触角が100°以上である表面状態を意味する。
金属基材2が有する溝部3は、セパレータ1が燃料電池に組み込まれたときに、一方が、隣接する単位セルに燃料ガスを供給するための燃料ガス供給用溝部となり、他方が、隣接する別の単位セルに酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給用溝部となるものである。また、溝部3の一方が燃料ガス供給用溝部、酸化剤ガス供給用溝部のいずれかとなり、他方が冷却水用溝となるものであってもよい。さらに、金属基材2の一方の面のみに溝部3を備えるものであってもよい。このような溝部3の形状は、特に制限はなく、蛇行した連続形状、櫛形状等であってよく、また、深さ、幅、断面形状も特に制限はない。また、金属基材2の表裏で、溝部3の形状が異なるものであってもよい。
金属基材12が有する貫通孔13は、セパレータ11が燃料電池に組み込まれたときに、燃料ガス、あるいは、酸化剤ガスを単位セルに供給するための流路となるものである。このような貫通孔13の大きさ、個数、配設密度には特に制限はない。
セパレータ1,11を構成する樹脂層4,14は、導電性を有するとともに、金属基材2,12に耐食性を付与するためのものである。この樹脂層4,14は、電着性を有する各種アニオン性、またはカチオン性の合成高分子樹脂中に導電材料を分散させた電着液を用いて電着により成膜し、その後、硬化させて形成することができる。
また、上記の電着性を有する合成高分子樹脂に粘着性を付与するために、ロジン系、テルペン系、石油樹脂等の粘着性付与樹脂を必要に応じて添加してもよい。
このような電着性の合成高分子樹脂は、アルカリ性または酸性物質により中和して水に可溶化された状態、あるいは水分散状態で電着に供される。すなわち、アニオン性合成高分子樹脂は、トリメチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアミン類、アンモニア、苛性カリ等の無機アルカリで中和する。また、カチオン性合成高分子樹脂は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸等の酸で中和する。そして、中和された水可溶の高分子樹脂は、水分散型または溶解型として水に希釈された状態で使用される。
樹脂層4,14に含有される導電材料としては、例えば、カーボン粒子、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン等のカーボン素材、耐食性金属等が挙げられるが、要求される耐酸性、導電性の程度に応じて適宜選択することができ、これらの導電材料に限定されない。特に、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン等の微細繊維状炭素材料は、樹脂層4,14に導電性を付与するために好適である。樹脂層4,14における導電材料の含有量は、樹脂層4,14に要求される導電性に応じて適宜設定することができ、例えば、10〜90重量%の範囲で設定することができる。
このような撥水性薄膜5,15は、撥水性材料として、フッ素系ポリマー、シリコン系ポリマー、炭化水素系ポリマー等の中の1種を単独で、または、2種以上の組み合わせで含有する。特に、パーフルオロアルキル基を含有するポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系ポリマーは、撥水性材料として好適に使用できる。撥水性薄膜5,15における撥水性材料の含有量は、5〜100重量%、好ましくは、20〜100重量%の範囲である。撥水性材料の含有量が5重量%未満であると、撥水性薄膜5,15の耐食性作用が低下し、本発明の効果が奏されないことがあり好ましくない。
また、撥水性薄膜5,15は、上記の撥水性材料、導電材料の他に、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等を50重量%以下の範囲で含有してもよい。
このような撥水性薄膜5,15の樹脂層4,14上の厚みt(樹脂層に存在するピンホールやクラックの内部における厚みではない)は0.01〜5μm、好ましくは0.1〜2μmの範囲とすることができる。撥水性薄膜5,15の厚みが0.01μm未満であると、膜強度が不十分であるとともに、樹脂層4,14にピンホールやクラックが存在する場合、それらの内部を被覆し得ない場合が生じるので好ましくない。また、撥水性薄膜5,15の厚みが5μmを超えると、樹脂層4,14と撥水性薄膜5,15からなる耐食性被膜の総厚みが大きくなり、金属基材2,12との熱膨張係数の相違による応力でヒビ割れ等が発生することがあり好ましくない。尚、樹脂層4,14上の撥水性薄膜5,15の厚みの測定は、上記の樹脂層4,14の測定と同様にして行うことができる。
上述の本発明のセパレータの実施形態は例示であり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
次に、本発明の燃料電池用のセパレータの製造方法について説明する。
図4は、図1に示されるセパレータ1を例として本発明の製造方法を説明するための工程図である。本発明では、金属板材2′の両面にフォトリソグラフィーにより所望のパターンでレジスト6,6を形成し、このレジスト6,6をマスクとして両面から金属板材2′をエッチングして溝部3,3を形成する(図4(A))。その後、レジスト6,6を剥離して金属基材2を得る(図4(B))。
次に、この金属基材2の両面に、電着性を有する各種アニオン性、またはカチオン性の合成高分子樹脂中に導電材料を分散させた電着液を用いて電着により電着被膜を形成し、その後、熱硬化処理を施して樹脂層4を形成する(図4(C))。電着液を調製するための各種アニオン性、カチオン性の合成高分子樹脂、導電材料は、上述の各材料を使用することができる。また、熱硬化処理は、使用する合成高分子樹脂に応じて条件を適宜設定することができ、例えば、180〜240℃の範囲で加熱温度を設定することができる。
処理液を調製するための溶剤は、速乾性の溶剤を使用することができ、例えば、ハイドロフルオロエーテル、キシレンヘキサフルオライド、アセトン、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、n−ヘキサン、シクロヘキサン、テトラハイドロフラン、ジクロロメタン等を挙げることができ、これらの中の1種を単独で、または、2種以上の組み合わせで使用することができる。尚、本発明において、速乾性とは、常温での指触乾燥時間が10分以内であることを意味する。
また、処理液には、上記の撥水性材料、導電材料の他に、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等を全固形分の50重量%以下の範囲で含有してもよい。
処理液を用いて樹脂層4上に薄膜を形成する方法としては、ディップ法、ディスペンス法およびスプレー法等を挙げることができる。例えば、ディップ法により薄膜を形成する場合、超音波と撹拌により分散処理を施している処理液中に試料(金属基材2に樹脂層4が形成されたもの)を浸漬することにより、樹脂層4の欠陥箇所に処理液が侵入し易くなり、また、均一な厚みの薄膜を形成することができる。形成する薄膜の厚みは、乾燥後に得られる撥水性薄膜5の厚みt(図3参照)が上述のように、0.01〜5μm、好ましくは0.1〜2μmの範囲となるように設定することができる。また、形成した薄膜の乾燥処理は、自然乾燥、オーブンでの加熱乾燥、温風を用いたい加熱乾燥、遠赤外線ヒーターによる加熱乾燥等を挙げることができ、また、これらの組み合わせによる乾燥処理であってもよい。
図5は、図2に示されるセパレータ11を例として本発明のセパレータの製造方法を説明するための工程図である。本発明では、金属板材12′の両面に、フォトリソグラフィーにより複数の開口部を有するレジスト16,16を形成し、このレジスト16,16をマスクとして両面から金属板材12′をエッチングして複数の貫通孔13を穿設する(図5(A))。レジスト16,16の複数の開口部は、それぞれ金属板材12′を介して対向するように位置している。その後、レジスト16,16を剥離して金属基材12を得る(図5(B))。
貫通孔13の形成は、上述のエッチングによる方法の他に、サンドブラスト法、レーザー加工法、ドリル加工法等により行うことも可能である。
次いで、撥水性材料を溶剤に溶解して粘度を0.8〜100cP、好ましくは1〜10cPの範囲に設定した処理液を用いて、樹脂層14上に薄膜を形成し、その後、乾燥処理を施して撥水性薄膜15を形成する(図5(D))。この撥水性薄膜15の形成は、上述の撥水性薄膜5の形成と同様に行うことができ、処理液を調製するための撥水性材料および溶剤は、上述の撥水性材料、溶剤を使用することができる。また、処理液に導電材料を含有させる場合も、上述の含有量とし、上述の導電材料を使用することができる。
このように形成された撥水性薄膜15は、樹脂層14を被覆し、仮に樹脂層14にピンホール等の欠陥箇所が存在しても、この欠陥箇所内も被覆する。これにより、樹脂層14と撥水性薄膜15からなる耐食性被膜が、欠陥の無い状態で金属基材12を被覆した状態となり、良好な導電性と高い耐食性を具備した本発明のセパレータ11が得られる。
上述の本発明のセパレータの製造方法の実施形態は例示であり、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、金属基材2,12に樹脂層4,14を形成する前に、金属基材2,12に下地めっき層を形成してもよい。この場合、電気めっき、あるいは、無電解めっきにより、例えば、Ni、Cu、Sn、Zn、Ag、Cr、および、これらの合金等のめっき層を形成することができる。
ここで、本発明のセパレータを用いた高分子電解質型燃料電池の一例を、図6〜図9を参照して説明する。図6は高分子電解質型燃料電池の構造を説明するための部分構成図であり、図7は高分子電解質型燃料電池を構成する膜電極複合体を説明するための図である。また、図8および図9は、それぞれ高分子電解質型燃料電池のセパレータと膜電極複合体を離間させた状態を異なった方向から示す斜視図である。
MEA31は、図7に示されるように、高分子電解質膜32の一方の面に配設された触媒層33とガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)34とからなる燃料極(水素極)35と、高分子電解質膜32の他方の面に配設された触媒層36とガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)37とからなる空気極(酸素極)38を備えている。
セパレータ41は、一方の面に燃料ガス供給用溝部43aを備え、他方の面に酸化剤ガス供給用溝部44aを備えたセパレータ41Aと、一方の面に燃料ガス供給用溝部43aを備え、他方の面に冷却水用溝部44bを備えたセパレータ41Bと、一方の面に冷却水用溝部43bを備え、他方の面に酸化剤ガス供給用溝部44aを備えたセパレータ41Cとからなっている。このようなセパレータ41A,41B,41Cは、本発明のセパレータであり、その両面に、図1に示されるように樹脂層および撥水性薄膜が形成されているが、図示例では、省略している。
図10および図11に示されるように、高分子電解質型燃料電池51は、膜電極複合体(MEA:Membrane-Electrode Assembly)61とセパレータ71A,71Bとからなる単位セル52を平面状に複数個配列し、これらを電気的に直列に接続し、単位セルの個数分(図10では4個分)の電圧を取り出す高分子電解質型燃料電池である。また、各単位セル52の周りには、これと略同じ厚さの絶縁部55を設け、全体を平面状にしている。すなわち、平板状の絶縁部55のくり抜き部に単位セル52を嵌め込んだ状態とすることにより、単位セル52と絶縁部55とを平面状に設けているものである。
この高分子電解質型燃料電池51は、絶縁部55のうち、隣接する単位セル間に位置する絶縁部55に、貫通してその表裏の接続を行うための表裏接続部57cを設けている。そして、この表裏接続部57cを、接続配線57aを介して、隣接する一方の単位セルのセパレータ71A(例えば、燃料極側セパレータ)に接続し、また、接続配線57bを介して、隣接する他方の単位セルのセパレータ71B(例えば、空気極側セパレータ)に接続している。これにより、隣接する単位セル間が電気的に直列に接続されている。そして、直列に接続された一方の端部に位置する単位セル52のセパレータ71Aと、他方の端部に位置する単位セル52のセパレータ71Bには、配線75,76が接続されている。
尚、図示例では単位セルの個数を4個としているが、単位セルの個数には制限はない。
接続部57の表裏接続部57cとしては、スルホール接続部、あるいは、充填ビア接続部、バンプ接続部のいずれかを、隣接する単位セル間に位置する絶縁部55中に設けたものとすることができる。これらの表裏接続部57cは、従来の配線基板技術の応用として形成できる。
また、MEA61は、図12に示されるように、高分子電解質膜62の一方の面に配設された触媒層63とガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)64とからなる燃料極(水素極)65と、高分子電解質膜62の他方の面に配設された触媒層66とガス拡散層(GDL:Gas Diffusion Layer)67とからなる空気極(酸素極)68を備えている。
セパレータ71A,71Bは、図2に示されるような本発明のセパレータであり、複数の貫通孔を備えた金属基材に樹脂層および撥水性薄膜を有するものである。
[実施例1]
<金属基材への樹脂層の形成>
金属板材として、80mm×80mm、厚み0.8mmのアルミニウム合金(A5052P)を準備し、表面の脱脂処理を行った。
次に、このアルミニウム合金の両面に、ドライフィルムレジスト(ニチゴー・モートン(株)製)をラミネートして35μm厚の感光性レジスト層を形成し、その後、溝部形成用のフォトマスクを介して露光(5kW水銀灯により15秒間照射)、現像(30℃の2%炭酸水素ナトリウム水溶液をスプレー)してレジストを形成した。
次いで、上記のレジストを介してアルミニウム合金の両面から45℃に加熱した塩化第二鉄水溶液をスプレーして、所定の深さまでハーフエッチングを行った。その後、50℃の5%炭酸水素ナトリウム水溶液でレジストを剥離し、洗浄処理を施した。これにより、幅が1mm、深さが0.3mmのほぼ半円形状の断面を有し、振れ幅50mm、ピッチ2mmで蛇行した長さ1300mmの溝部を備えた金属基材を得た。
次に、上記の金属基材に対して、硝酸水溶液を用いて前処理(不動態膜除去)を施し、水洗した。
この電着液を25℃に保って撹拌し、この中に上記の金属基材を浸漬し、極間40mm、電圧50Vで1分間電着を行い、引き上げた金属基材を純水洗浄した。その後、ドライヤーで熱風乾燥(100℃、3分間)し、さらに、窒素雰囲気中で180℃、1時間の熱硬化処理を施して樹脂層を形成した。この樹脂層の厚みを電磁誘導式/渦電流式デュアル膜厚計(サンコウ電子研究所(株)製 SME−110)を用いて測定した結果、20μmであった。
(走査型電気化学顕微鏡の測定条件)
・プローブ電極の直径 : 5μm
・プローブ電極と電着被膜との距離: 1μm
・印加電圧 : 0.6V
・走査速度 : 10μm/秒
・測定溶液 : KCl+K4Fe(CN)6
その結果、樹脂層に直径が10μm以上のピンホール状の欠陥が2mm平方の領域中に30個検出された。
まず、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(エポキシ当量910)1000重量部を撹拌下に70℃に保ちながら、エチレングリコールモノエチルエーテル463重量部に溶解させ、さらに、ジエチルアミン80.3重量部を加えて100℃で2時間反応させてアミンエポキシ付加物(A)を調製した。
また、コロネートL(日本ポリウレタン(株)製 ジイソシアネート:NCO13%の不揮発分75重量%)875重量部にジブチル錫ラウレート0.05重量部を加え50℃に加熱し、これに2−エチルヘキサノール390重量部を添加し、その後、120℃で90分間反応させた。得られた反応生成物をエチレングリコールモノエチルエーテル130重量部で希釈した成分(B)を得た。
次に、上記のアミンエポキシ付加物(A)1000重量部と成分(B)400重量部からなる混合物を、氷酢酸30重量部で中和した後、脱イオン水570重量部を用いて希釈し、不揮発分50重量%の樹脂Aを調製した。この樹脂A200.2重量部(樹脂成分86.3容量)、脱イオン水583.3重量部、およびジブチル錫ラウレート2.4重量部を配合してエポキシ電着液を調製した。
下記組成の処理液を調製した。この処理液の粘度は20cPであった。尚、粘度の測定はセコニック(株)製 ビスコメイト粘度計VM−10Aを用いて行った。
(処理液の組成)
・フッ素系ポリマー … 2重量部
(セイミケミカル(株)製 SFE−700H)
・導電材料(カーボン粉) … 2重量部
(ライオン(株)製 ケッチェンブラックEC600JD)
・溶剤(ハイドロフルオロエーテル) … 98重量部
次に、撹拌槽中で上記の処理液に超音波と撹拌による分散を行い、この状態の処理液中に、上述のように樹脂層を形成した金属基材を1分間浸漬した。その後、処理液から引き上げ、自然乾燥し、次いで、オーブン中で80℃、10分間の乾燥を行って撥水性薄膜(厚み1μm)を形成した。これにより、燃料電池用のセパレータを得た。
樹脂層上への撥水性薄膜の形成において使用する処理液を下記組成の処理液とした他は、実施例1と同様にして、燃料電池用のセパレータを得た。使用した処理液の粘度は0.8cPであった。また、撥水性薄膜の厚みは0.15μmであった。
(処理液の組成)
・フッ素系ポリマー … 0.5重量部
(セイミケミカル(株)製 SFE−700H)
・導電材料(カーボン粉) … 1重量部
(ライオン(株)製 ケッチェンブラックEC600JD)
・溶剤(ハイドロフルオロエーテル) …99.5重量部
樹脂層上への撥水性薄膜の形成において使用する処理液を下記組成の処理液とした他は、実施例1と同様にして、燃料電池用のセパレータを得た。使用した処理液の粘度は100cPであった。また、撥水性薄膜の厚みは10μmであった。
(処理液の組成)
・フッ素系ポリマー … 17重量部
(セイミケミカル(株)製 SFE−700H)
・導電材料(カーボン粉) … 4重量部
(ライオン(株)製 ケッチェンブラックEC600JD)
・溶剤(ハイドロフルオロエーテル) … 83重量部
樹脂層上への撥水性薄膜の形成を行わない他は、実施例1と同様にして、燃料電池用のセパレータを得た。
樹脂層上への撥水性薄膜の形成において使用する処理液を下記組成の処理液とした他は、実施例1と同様にして、燃料電池用のセパレータを得た。使用した処理液の粘度は0.6cPであった。また、撥水性薄膜の厚みは0.01μmであった。
(処理液の組成)
・フッ素系ポリマー … 0.1重量部
(セイミケミカル(株)製 SFE−700H)
・導電材料(カーボン粉) … 0.1重量部
(ライオン(株)製 ケッチェンブラックEC600JD)
・溶剤(ハイドロフルオロエーテル) …99.9重量部
樹脂層上への撥水性薄膜の形成において使用する処理液を下記組成の処理液とした他は、実施例1と同様にして、燃料電池用のセパレータを得た。使用した処理液の粘度は200cPであった。また、撥水性薄膜の厚みは16μmであった。
(処理液の組成)
・フッ素系ポリマー … 30重量部
(セイミケミカル(株)製 SFE−700H)
・導電材料(カーボン粉) … 5重量部
(ライオン(株)製 ケッチェンブラックEC600JD)
・溶剤(ハイドロフルオロエーテル) … 70重量部
実施例1と同様に金属基材に樹脂層を形成した後、再度同じ条件で電着を行って樹脂層を積層して燃料電池用のセパレータを得た。2回の電着で形成された樹脂層の総厚みは40μmであった。
実施例1〜3、比較例1〜4の各セパレータについて、pH2の硫酸水溶液(80℃)中にて下記の条件で定電位試験を行い、金属基材の腐食挙動発生による電流密度の増大を生じるまでの時間を測定(最長測定時間は100時間)して、結果を下記の表1に示した。
(定電位試験)
北斗電工(株)製 HSV−110を用い、参照電極として飽和カラメル電極
(SCE)を使用し、印加電位(対SCE)を0.6Vとして測定する。
また、上記の各セパレータを、pH2の硫酸水溶液(80℃)に24時間浸漬して腐食処理を施した後、水洗、乾燥して、接触抵抗を下記の方法で測定し、結果を下記の表1に示した。また、上記の腐食処理を施す前の接触抵抗も同様に測定し、結果を下記の表1に示した。
(接触抵抗の測定方法)
セパレータをガス拡散層(東レ(株)製 TGP−H−060 197μm厚)
で両側から挟み込み、さらに、これらを銅に金めっきを施した厚さ5mmの電極
で挟み込んで圧着(圧力:10kgf/cm2)し、電極間の抵抗を測定する。
これに対して、比較例1、2のセパレータは、実施例1〜3のセパレータに比べて耐食性が悪く、また、腐食処理による接触抵抗の顕著な増大がみられた。
また、比較例3、4のセパレータは、実施例1〜3のセパレータに比べて接触抵抗が高いものであった。
2…金属基材
3…溝部
4…樹脂層
5…撥水性薄膜
11…セパレータ
12…金属基材
13…貫通孔
14…樹脂層
15…撥水性薄膜
21,51…高分子電解質型燃料電池
31,61…膜電極複合体(MEA)
41A,41B,41C,71A,71B…セパレータ
Claims (7)
- 金属基材と、該金属基材を被覆するように電着により形成された導電性の樹脂層と、該樹脂層を被覆する撥水性薄膜とを備え、前記樹脂層は導電材料を含有し、前記撥水性薄膜は、フッ素系ポリマーおよび導電材料を含有することを特徴とする燃料電池用のセパレータ。
- 前記金属基材は、少なくとも一方の面に溝部を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用のセパレータ。
- 前記金属基材は、複数の貫通孔を有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用のセパレータ。
- 前記導電材料は、カーボン粒子、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、耐食性金属の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の燃料電池用のセパレータ。
- 前記金属基材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の燃料電池用のセパレータ。
- 電着性を有する樹脂中に導電材料を分散させた電着液を用いて電着にて金属基材に電着被膜を形成し、その後、熱硬化処理を施して樹脂層を形成する工程と、撥水性材料を溶剤に溶解して粘度を0.8〜100cPの範囲に設定した処理液を用いて前記樹脂層上に薄膜を形成し、その後、乾燥処理を施して撥水性薄膜を形成する工程と、を有し、前記撥水性材料はフッ素系ポリマーであり、前記処理液は導電材料を全固形分の20〜80重量%の範囲で含有し、前記溶剤は指触乾燥時間が10分以内である速乾性の溶剤であることを特徴とする燃料電池用セパレータの製造方法。
- 前記処理液を用いて前記薄膜を形成する方法は、ディップ法、ディスペンス法およびスプレー法のいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池用セパレータの製造方法。
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