ところで、沸騰検知が遅れると無駄な加熱、蒸気の発生となって省資源、省エネに反し、沸騰検知が早すぎると殺菌や消臭に問題があるので、近時の省エネや健康がより強く求められる中、沸騰検知精度は益々重要になっている。
このような視点から本発明者は、特許文献1、2が開示している温度センサが検知する検知温度に基づく沸騰検知での、検知温度と実沸騰との関係について検証し直した。特許文献1記載の技術を実用するのに、例えば次のような沸騰判定手法を採っている。図3(a)に示すように、サンプリング間隔10秒でサンプリングした温度データをRAMに格納する。格納した温度データの40秒間のサンプリング分をそれぞれA、B、C、Dとし、その初期値Aと最終値Dとの差分D−Aを、限られた時間毎の単位時間温度差αとして演算し、これを10秒間単位で温度データ列をシフトしながら繰り返す。具体的には、特定時点の温度データ列をA1、B1、C1、D1とすると、次の温度データ列はA1、B1、C1、D1に対し、10秒の区間を1区間後にずらした温度データ列A2、B2、C2、D2と更新して行き、これら温度データ列からD1−A1=α1、D2−A2=α2・・・Dn−An=αnを演算し続ける。これは10秒間隔毎の温度データのサンプリングでありながら、前回の30秒間でのサンプリング回数分の温度データを重畳利用しながら新たな10秒経過後のサンプリング温度データを含む40秒間でのサンプリング回数分ずつの温度データ列により単位時間温度差αを演算したことになる。このように演算した単位時間温度差は内容液が昇温していき沸騰に至るその時々の温度変化を反映している筈である。
このように演算する単位時間温度差αは湯沸し中、加算し続けながら加算した回数nもカウントする。沸騰前の所定温度、例えば93℃を検知した時点で加算し続けた単位時間温度差αをカウント数nで除算し、累積単位時間温度差αの平均値を求める。ここで、単位時間温度差αの平均値αは、図3(a)に水量(多)、水量(少)のグラフで比較して示すように、湯沸しをしている水量に比例して、多い場合より少ない場合の方が単位時間当たりの昇温率が高く(立ち上がり角度が大きい)、単位時間温度差αは大きくなることから、求めた単位時間温度差αから水量Qを経験的に判定しておく。
温度センサによる検知温度は、図3(a)に示すように、直線的に100℃まで昇温した後、100℃以上への一時的なオーバーシュートを示してから降温しながら実沸騰に至る。これを実沸騰に至る理想的な温度変化を単位時間温度差αの変化に変換すると、図3(b)に示すように、単位時間温度差αは変化0でほぼ水平に推移して後、降温によるマイナスに転じて沸騰に至る。そこで、このような沸騰に向けた降温過程での水量に依存する単位時間温度差αの小さな立ち下がり変化から沸騰を判定するために、前記予め判定した水量Qの大小に見合った降温特性との関係から、図3(c)に示すように単位時間温度差αの沸騰に対応する閾値βを経験的に設定する。ここに、単位時間温度差αは絶対値で評価できる。
しかし、上記のような従来の演算方式による単位時間温度差αは、図4のグラフIに示すように立ち上がり変化と立ち下がり変化とを繰り返して上下に大きく振れながら推移する。このため、立ち上がり変化が途中生じずに立ち下がり変化が持続するようになるのを待って沸騰を判定することになる。具体的には、経験的に最後の立ち上がり域が生じて後、2つの区間で立ち下がり変化が続いた時点を沸騰と判定することになる。この結果、グラフIでは、最後の大きな立ち上がり区間aから後に立ち下がり区間b、cが2つ続いた140秒時点を沸騰と判定する。このような判定が可能な単位時間温度差αの閾値β1は、区間aが開始する110秒時点eの値を避けた6となる。
ところが、湯沸しの実状態では85秒時点fで蒸気が活発に出始め、110秒時点e付近で沸騰に至っているのに対し、沸騰の判定時期が135秒時点と大きく遅れている。そこで、110秒時点付近で沸騰を検知できる15程度の閾値β2まで上げると、40秒時点gなどでの早期沸騰判定となり、早期沸騰判定に基づく加熱早切れの原因になってしまう。これは、グラフIでの単位時間温度差αの変化、特に、沸騰に向かう降温に対応する立ち下がり傾向が安定せず、内容液の実温度変化に対応していないことを意味する。
また、特許文献2に開示の技術は、加熱時間の経過と設定温度との2つによって沸騰を判定しているので、設定温度だけの場合よりは沸騰の判定精度は上がるが、沸騰までに必要な加熱時間は、水温、環境温度によって変動するので、現湯沸し時の昇温傾向から沸騰するであろう加熱時間をその都度設定することになるが、結局のところ検出温度以上に間接的な条件でしかなく、結果的に設定温度への到達判定が優先することになるので、加熱時間の設定は設定温度への到達が加熱時間よりも早すぎる場合に、加熱時間一杯まで加熱を継続して沸騰保証を図る程度になる。
本発明は、このような点に鑑み、内容液の沸騰に向かう降温変化に、時間的、特性的により対応した立ち下がり傾向を示す単位時間温度差を得て、確実な沸騰をより早期に検知できる電気貯湯容器を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の電気貯湯容器は、内容器の温度を検出する温度センサからの温度情報の基に、内容液を制御手段により加熱制御して湯沸しを行う湯沸しモードを備え、この湯沸しモードにおいて、制御手段にて、検出される温度データが沸騰前の所定温度に達した時点から、一定の間隔t1でサンプリングし記憶している温度データを、所定サンプリング回数分ずつの複数の温度データ列に設定しながら、設定した各温度データ列ごとに、初期温度データと終期温度データとの差分、および初期側複数温度データ加算分と終期側複数温度データ加算分との差分、を演算してそれぞれを単位時間温度差α1、α2とし、この演算した各単位時間温度差α1およびα2が時間経過に伴い、対応する所定の閾値β3およびβ4にまで低下した時点を沸騰と判定し、サンプリング間隔t1が温度データの列設定時間幅t2の1/4未満としたことを特徴としている。
このような構成では、各温度データ列ごとの、初期温度データと終期温度データとの差分による単位時間温度差α1は、サンプリング間隔t1が温度データの列設定時間幅t2の1/4未満とすることにより、これが1/4以上である場合に比して、同じ温度データの列設定時間幅t2内に、より短いサンプリング間隔でのより多くの温度データを含むことになり、温度のイレギュラーな検知が緩和されて、各温度データ列から演算する単位時間温度差αの時間経過に伴う変化の立ち上がり変化、立ち下り変化を繰り返す際の振れ幅を抑え、かつ、検出される温度データが100℃からオーバーシュートした後沸騰に向かっての降温に符合した立ち下がり変化を得て、対応する閾値β3によって沸騰を判定することができるが、特に、前記のように高い判定精度を持った単位時間温度差α1と、初期側および終期側でより多くのサンプリング温度データを含んでの差分を演算して得た、単一温度データどうし間の差分よりも、時間経過に伴う実温度変化の立ち上がり変化、および立下り変化の特徴を反映しやすい異なった判定精度を持った単位時間温度差α2と、を併用して、これら双方が時間経過に伴いそれらに対応する閾値β3、β4に達して初めて沸騰と判定し、判定条件を高められる。
上記において、さらに、温度データの列設定時間幅は30秒〜50秒であり、サンプリング間隔は7.5秒〜12.5秒未満とすることができる。
このような構成では、上記に加え、さらに、サンプリング間隔が温度データの列設定時間幅の1/4未満を満足して、検出温度の反映限界以上で徒に多くならない温度データ数を、徒に長くならない列設定時間幅内で得て、沸騰の判定精度、演算効率上過不足のない単位時間温度差α1、α2をその時々で得られる。
本発明の、1つの特徴の電気貯湯容器によれば、サンプリング間隔t1が温度データの列設定時間幅t2の1/4未満として、これが1/4以上である場合に比し、同じ温度データの列設定時間幅t2内に、より短いサンプリング間隔でのより多くの温度データを含んだ各温度データ列の初期温度データと終期温度データとの差分から、温度のイレギュラーな検知が緩和された単位時間温度差α1により、時間経過に伴う変化の立ち上がり変化、立ち下り変化を繰り返す際の振れ幅を抑え、かつ、検出される温度データが100℃からオーバーシュートした後沸騰に向かっての降温に、時間的、低下特性的に符合した立ち下がり変化を得て、対応する閾値β3によって確実な沸騰を早期に判定することができるが、特に、前記のように高い判定精度を持った単位時間温度差α1と、初期側および終期側でより多くのサンプリング温度データを含んでの差分を演算して得た、単一温度データどうし間の差分よりも、時間経過に伴う実温度変化の立ち上がり変化、および立下り変化の特徴を反映しやすい異なった判定精度を持った単位時間温度差α2と、を併用し、これら双方が時間経過に伴いそれらに対応する閾値β3、β4に達して初めて沸騰と判定するより高い判定条件の基に、沸騰に向けた低下特性に小さな振れ幅の立ち上がり変化が生じても、影響されずにより確実な沸騰をより早期に判定することができる。
上記に加え、さらに、サンプリング間隔が温度データの列設定時間幅t2の1/4未満を満足して、7.5秒程度の検出温度の反映限界以上で徒に多くならない温度データ数を、50秒未満程度の徒に長くならない列設定時間幅内で得て、沸騰の判定精度、演算効率上過不足のない単位時間温度差α1、α2をその時々で得て、沸騰の判定精度を一層高められる。
以下、本発明に係る実施の形態の電気貯湯容器について図1〜図7を参照しながら詳細に説明し、本発明の理解に供する。以下の説明は本発明の具体例であって、特許請求の範囲の記載を限定するものではない。
図1に示す本実施の形態の電気貯湯容器100は、家庭用の電気ポットに本発明を適用した場合の一例である。図1に示すように、器体1および蓋4からなり、器体1に収容したステンレス鋼製の真空二重容器などよりなる内容器3と、内容器3内の内容液2を加熱するヒータ、誘導加熱コイルなどの加熱手段11と、内容液2を器体1の外部に案内する吐出路25と、この吐出路25を通じて内容液2を吐出させるように蓋4に内蔵した手動のベローズポンプ10および吐出路25途中で内容器3の下に位置する電動ポンプ26とを備えている。吐出路25の内容器3の外側を立ち上がる立上がり部は透明管で形成して、器体1の前部の透明な液量表示窓を通じ外部から視認でき、内容器3内と同じレベルとなる立ち上がり部液位によってその時々の液量を外部に表示する。吐出路25の器体1の前部外に臨む吐出口25bの手前に、器体1が前傾や転倒したときに吐出路25を通じて内容液2が流出するのを阻止する前傾、転倒時止水弁27が設けられている。
蓋4は器体1を開閉するために、器体1の後部にヒンジピン16によって枢支されている。この枢支は必要に応じ蓋4を着脱できるように行われる。蓋4の前部には閉じ位置で器体1側の係止部19に係合して蓋4を閉じ位置にロックするロック部材21が設けられ、蓋4が閉じられたときにばね22の付勢によって係止部19に自動的に係合するようにしている。これに対応して蓋4にはロック部材21をばね22に抗して前記ロックを解除するロック解除部材23が設けられている。蓋4は、また、内容器3からの蒸気を外部に逃がす蒸気通路17が形成され、途中には、器体1が横転して内容液が進入してきた場合にそれを一時溜め込み、あるいは迂回させて外部に至るのを遅らせる安全経路17aや、転倒時止水弁17bが設けられている。
器体1の前部への張り出し端に前記吐出口25bを下向きに外部に突出させている張り出し部1aの上面には、電気貯湯容器100の各種湯沸かしモードの設定や湯沸し予約時刻の設定、保温温度の選択などを行い、動作モードや時間表示、動作状態を示す表示などを行う操作パネル31が設けられ、操作パネル31の内側に制御装置32としてのマイクロコンピュータを搭載した操作基板33が設けられている。制御装置32は前記制御のため、図2に示すように、操作パネル31と信号を授受するよう入出力部に接続されると共に、加熱手段11、電動ポンプ26を制御する信号出力部、内容液温度を内容器3の底部にて間接的に検知する温度センサ26が入力部に接続されている。
操作パネル31は、例えば、電動ポンプ26を働かせて内容液2を吐出させる給湯操作部、98℃保温や80℃保温をロータリ式に選択する保温選択操作部、現在時刻や湯沸かしモードの残時間、設定事項や動作状態を表示する液晶表示部、液晶表示部に時刻表示しながら湯沸かしの予約時刻を設定する予約設定操作部などが設けられ、制御装置32は初期設定、操作パネル31での各種設定と、温度センサ34からの情報と、によって、格納し、または外部供与されるプログラムに従い、加熱手段11、電動ポンプ26を動作制御し、各種湯沸かしモードでの湯沸かし、保温、給湯を行うようにしている。
しかし、本発明は、これら具体例に限られることはなく、器体1や蓋4の構造、吐出機能の有無、加熱方式、各種設定方式は自由に選択採用することができる。要は、内容液2を湯沸かしモードで加熱し湯沸かしができる電気貯湯容器全般に適用して有効である。
本実施の形態の電気貯湯容器100は、湯沸しモードにおいて、1つの例として、制御手段32にて、温度センサ12により検出される温度データが沸騰前の所定温度例えば93℃に達した時点から、一定の時間間隔t1でサンプリングし記憶している温度データを、図3を参照して既述したところに準じて、所定サンプリング回数分ずつの複数の温度データ列、例えばA〜Hに設定しながら、設定した各温度データ列A〜Hごとに、初期温度データAと終期温度データHとの差分H−Aを演算して単位時間温度差α1とし、この演算した各単位時間温度差α1が時間経過に伴い、対応する所定の閾値β3にまで低下した時点を沸騰と判定するのに、サンプリング間隔t1が温度データの列設定時間幅t2の1/4未満としている。
これにより、各温度データ列A〜Hごとの、初期温度データAと終期温度データHとの差分H−Aによる単位時間温度差α1は、サンプリング間隔t1が温度データの列設定時間幅t2の1/4未満とすることにより、この比率が1:4以上である場合に比して、同じ温度データの列設定時間幅t2内に、より短いサンプリング間隔t1でのより多くの温度データを含むことになり、温度のイレギュラーな検知が緩和されて、各温度データ列から演算する単位時間温度差α1の時間経過に伴う変化の立ち上がり変化、立ち下り変化を繰り返す際の振れ幅を抑え、かつ、検出される温度データが100℃からオーバーシュートした後沸騰に向かっての降温に符合した立ち下がり変化を得て、対応する閾値β3によって沸騰を判定することができる。
このように、サンプリング間隔t1が温度データの列設定時間幅t2の1/4未満とすることにより、この比率が1:4以上である場合に比し、同じ温度データの列設定時間幅t2内に、より短いサンプリング間隔t1でのより多くの温度データ例えばA〜Hを含んだ各温度データ列の初期温度データAと終期温度データHとの差分H−Aから、温度のイレギュラーな検知が緩和された単位時間温度差α1により、時間経過に伴う変化の立ち上がり変化、立ち下り変化を繰り返す際の振れ幅を抑え、かつ、検出される温度データが100℃からオーバーシュートした後沸騰に向かっての降温に、時間的、低下特性的に符合した立ち下がり変化を得て、対応する閾値β3によって確実な沸騰を早期に判定することができる。
具体的には、サンプリング間隔t1は7.5秒〜12.5秒未満、列設定時間幅は30秒〜50秒として、サンプリング間隔t1が温度データの列設定時間幅t2の1/4未満を満足することができ、検出温度の反映限界以上で徒に多くならない温度データ数を、徒に長くならない列設定時間幅t2内で得て、沸騰の判定精度、演算効率上過不足のない単位時間温度差α1をその時々で得られる。
1つの実施例として、サンプリング間隔t1は5秒、列設定時間幅t2は40秒としてあり、各列設定時間幅t2の間にサンプリング間隔t1毎の8つの温度データA〜Hが得られる。これらがなす温度データ列の初期温度データAと終期温度データHとの差分A−Hである単位時間温度差α1の沸騰に向かう変化は、図4に示すグラフIIの通りである。従来のグラフIと比較すると、単位時間温度差α1の立ち上がり、立ち下がり変化の繰り返しリズムはほぼ対応しているが、振れ幅がほぼ半減している。特に、95秒時点hからの立ち下り傾向がi、j、kと3つの区間が続く安定傾向を示す上、その後に立ち上がり区間lが続くが、グラフIの場合の立ち上がり区間aよりも立ち上がり度が軽減していることから、立下り区間kの終点を沸騰点と判定して実沸騰が確保できた。この沸騰を判定する閾値β3は、35秒時点mの立ち下がり、立ち上がりの折り返し点を外した12として、2つの立ち下がり区域j、kの検出により、実沸騰時点ないしはそれに直近の110秒時点eを沸騰と早期判定することができる。
このような沸騰判定手法を採用した制御手段32による図5(a)に示す湯沸し処理制御例について説明すると、ステップS1で沸騰モードであることにより、ステップS2以下の制御が行われる。ステップS2ではヒータを湯沸しモードでオンし、例えばフルパワー加熱する。それ以降ステップS3で温度センサが検知する温度データの読み込みを行い、ステップS4でサンプリング間隔t1が経過する都度、ステップS5に移行してそのとき検出される温度データをサンプリングして記憶することを繰り返す。次いで、ステップS6でα1フラグが1でなければステップS7へ移行しt2が経過していなければリターンし、経過しているとステップS8にて温度データ列A〜Hを設定する。続いてステップS9で温度データ列A〜Hのうちの初期温度データAと終期温度データHとの差H−Aを演算して単位時間温度差α1とし、かつα1フラグを1とする。次いで、S10でカウンタを+1する。
ステップS10でカウンタインクリメントした後、またはステップS6でα1フラグが1であるとき、ステップS11に移行し、サンプリング間隔t1経過する都度、ステップS12で温度データ列をt1分シフトして設定し、初期温度データAと終期温度データHとの差分を演算して単位時間温度差α1とし、これを過去分と累計し、記憶するのに併せ、β3フラグを1にする。ステップS13でカウンタを+1する。さらに、次のステップS14で検出される温度データが93℃に達していなければ、ステップS11からステップS16のルーチンを繰り返す。ステップ14で温度データが93℃に到達し、ステップ15でβ3フラグが1でなければ、ステップS16に進み、加算した累計α1をカウンタによるカウント値で除して単位時間温度差α1の平均値を求め、この平均α1とt1を基にした単位時間当たりの昇温率から水量Qを判定し、判定した水量Qから単位時間温度差α1が沸騰に向かって立ち下がっていくときの沸騰に対応する閾値β3を、図5(b)に水量Qの違いに対応して数例示すように設定し、記憶する。この後、またはステップS15でβ3フラグが1であればそのまま、ステップS17に進む。ステップS17では、単位時間温度差α1がβ3に到達していなければ、ステップS11に戻ってステップ17までを繰り返し、ステップS17で単位時間温度差α1がβ3に到達していると、ステップS18で沸騰と判定し、ステップS19でヒータをパワーダウンしたオン状態に切換え、蒸気の発生を抑えた加熱をステップS20で所定時間t3が経過するまで継続してカルキ除去などを行い、所定時間t3が経過すると、沸騰処理を終了する。沸騰処理終了後、制御手段32は通常、保温処理に移行する。
本実施の形態の電気貯湯容器100は、湯沸しモードにおいて、別の例として、制御手段32にて、検出される温度データが沸騰前の所定温度、例えば93℃に達した時点から、一定の時間間隔t1でサンプリングし記憶している温度データを、所定サンプリング回数分ずつの複数の温度データ列A〜Hに設定しながら、設定した各温度データ列A〜Hごとに、初期側複数温度データ、例えばA、B2つの加算分と終期側複数温度データ、例えばG、H2つの加算分との差分を演算して単位時間温度差α2とし、この演算した各単位時間温度差α2が時間経過に伴い対応する所定の閾値β4にまで低下した時点を沸騰と判定し、サンプリング間隔t1が温度データの列設定時間幅t2の1/4未満としている。
これにより、1つの例の場合に加え、さらに、初期側複数温度データA、B加算分と終期側複数温度データG、H加算分との差分による単位時間温度差α2は、特に、初期温度データAと終期温度データHとの差分に対し、初期側および終期側でより多くのサンプリング温度データを含んでの差分であることにより、単一温度データどうし間の差分よりも、時間経過に伴う実温度変化の立ち上がり変化、および立ち下がり変化の特徴を反映しやすく、イレギュラーな立ち上がり変化の緩和と、沸騰に向かう降温に、時間的、特性的に、より符合した立ち下がり変化を得て、対応する閾値β4による沸騰判定に供することができる。
したがって、1つの例の場合と同様の同じ温度データの列設定時間幅t2内に、より短いサンプリング間隔t1でのより多くの温度データを含んだ各温度データ列A〜Hから、初期側複数温度データA、B加算分と終期側複数温度データG、H加算分との差分による単位時間温度差α2により、特に、初期温度データと終期温度データの単一データどうしに対し、初期側および終期側でより多くのサンプリング温度データを含んでの差分であることから、時間経過に伴う実温度変化の立ち上がり変化、および立ち下がり変化の特徴をより反映して、イレギュラーな立ち上がり変化の緩和と、沸騰に向かう降温に、時間的、下降特性的に、より符合した立ち下がり変化を得て、対応する閾値β4によって、確実な沸騰を早期に判定しやすくなる。
具体的には、サンプリング間隔t1は7.5秒〜12.5秒未満、列設定時間幅は30秒〜50秒として、サンプリング間隔t1が温度データの列設定時間幅t2の1/4未満を満足することができ、検出温度の反映限界以上で徒に多くならない温度データ数を、徒に長くならない列設定時間幅t2内で得て、しかも、単位時間温度差α2が初期側および終期側でより多くのサンプリング温度データを含んでの差分であることから、1つの例の場合よりも、沸騰の判定精度、演算効率上より過不足のない単位時間温度差α2をその時々で得られる。
1つの実施例として、サンプリング間隔t1は5秒、列設定時間幅t2は40秒としてあり、各列設定時間幅t2の間にサンプリング間隔t1毎の8つの温度データA〜Hが得られる。これらがなす温度データ列の初期側温度データA、B加算分と終期側温度データG、H加算分との差分(G+H)−(A+B)である単位時間温度差α2の沸騰に向かう変化は、図4に示すグラフIIIの通りである。従来のグラフIと比較すると、単位時間温度差α1の立ち上がり、立ち下がり変化の繰り返しリズムは少なく、かつ、振れ幅が1/3ぐらいに大きく低減している。特に、70秒時点nから100秒時点o付近までほぼ水平に推移し、そこからの立ち下がり区間pを始めにほぼ安定した立下り傾向を示していることから、立下り区間pを経た立下り区間qの終点を沸騰点と判定して実沸騰が確保できた。この沸騰を判定する閾値β4は、40秒時点gの立ち下がり、立ち上がりの折り返し点を外した32程度として、立ち下がり区域qの終点検出により、実沸騰時点ないしはそれに直近の110秒時点eで沸騰を早期判定することができる。
このような沸騰判定手法を採用した制御手段32による図6(a)に示す湯沸し処理制御例について説明すると、ステップS1で沸騰モードであることにより、ステップS2以下の制御が行われる。ステップS2ではヒータを湯沸しモードでオンし、例えばフルパワー加熱する。それ以降ステップS3で温度センサが検知する温度データの読み込みを行い、ステップS4でサンプリング間隔t1が経過する都度、ステップS5に移行してそのとき検出される温度データをサンプリングして記憶することを繰り返す。次いで、ステップS6でα2フラグが1でなければステップS7へ移行しt2が経過していなければリターンし、経過しているとステップS8にて温度データ列A〜Hを設定する。続いてステップS9で温度データ列A〜Hのうちの初期側温度データA、Bの加算分と終期側温度データG、Hの加算分との差(G+H)−(A+B)を演算して単位時間温度差α2とし、かつα2フラグを1とする。次いで、S10でカウンタを+1する。
ステップS10でカウンタインクリメントした後、またはステップS6でα2フラグが1であるとき、ステップS11に移行し、サンプリング間隔t1経過する都度、ステップS12で温度データ列をt1分シフトして設定し、初期側温度データA、Bと終期温度データG、Hとの差分(G+H)−(A+B)を演算して単位時間温度差α2とし、これを過去分と累計し、記憶するのに併せ、β4フラグを1にする。ステップS13でカウンタを+1する。さらに、次のステップS14で検出される温度データが93℃に達していなければ、ステップS11からステップS16のルーチンを繰り返す。ステップ14で温度データが93℃に到達し、ステップ15でβ4フラグが1でなければ、ステップS16に進み、加算した累計α2をカウンタによるカウント値で除して単位時間温度差α2の平均値を求め、この平均α2とt1を基にした単位時間当たりの昇温率から水量Qを判定し、判定した水量Qから単位時間温度差α2が沸騰に向かって立ち下がっていくときの沸騰に対応する閾値β4を、図6(b)に水量Qの違いに対応して数例示すように設定し、記憶する。この後、またはステップS15でβ4フラグが1であればそのまま、ステップS17に進む。ステップS17では、単位時間温度差α2がβ4に到達していなければ、ステップS11に戻ってステップ17までを繰り返し、ステップS17で単位時間温度差α2がβ4に到達していると、ステップS18で沸騰と判定し、ステップS19でヒータをパワーダウンしたオン状態に切換え、蒸気の発生を抑えた加熱をステップS20で所定時間t3が経過するまで継続してカルキ除去などを行い、所定時間t3が経過すると、沸騰処理を終了する。沸騰処理終了後、制御手段32は通常、保温処理に移行する。
本実施の形態の電気貯湯容器100は、湯沸しモードにおいて、他の例として、上記の単位時間温度差α1、α2を併用して、これら単位時間温度差α1およびα2が時間経過に伴い、対応する所定の閾値β3およびβ4にまで低下した時点を沸騰と判定するようにしている。このように1つの例による高い判定精度を持った単位時間温度差α1と、別の例による高い判定精度を持った単位時間温度差α2と、を併用して、これら双方が時間経過に伴いそれらに対応する閾値β3、β4に達して初めて沸騰と判定することになるので、α1、α2のいずれか一方による場合よりもより高い判定条件の基に、沸騰に向けた低下特性に小さな振れ幅の立ち上がり変化が生じても、影響されずにより確実な沸騰をより早期に判定することができる。
このような沸騰判定手法を採用した制御手段32による図7(a)に示す湯沸し処理制御例について説明すると、ステップS1で沸騰モードであることにより、ステップS2以下の制御が行われる。ステップS2ではヒータを湯沸しモードでオンし、例えばフルパワー加熱する。それ以降ステップS3で温度センサが検知する温度データの読み込みを行い、ステップS4でサンプリング間隔t1が経過する都度、ステップS5に移行してそのとき検出される温度データをサンプリングして記憶することを繰り返す。次いで、ステップS6でα2フラグが1でなければステップS7へ移行しt2が経過していなければリターンし、経過しているとステップS8にて温度データ列A〜Hを設定する。続いてステップS9で温度データ列A〜Hのうちの、初期温度データAと終期温度データHとの差分と、初期側温度データA、Bの加算分と終期側温度データG、Hの加算分との差(G+H)−(A+B)とを演算して、それぞれ単位時間温度差α1、α2とし、かつα1、α2フラグを1とする。次いで、S10でカウンタを+1する。
ステップS10でカウンタインクリメントした後、またはステップS6でα1、α2フラグが1であるとき、ステップS11移行し、サンプリング間隔t1経過する都度、ステップS12で温度データ列をt1分シフトして設定し、初期温度データAと終期温度データHとの差分と、初期側温度データA、Bの加算分と終期側温度データG、Hの加算分との差(G+H)−(A+B)とを演算して、それぞれ単位時間温度差α1、α2とし、それぞれの過去分と累計し、記憶するのに併せ、β3、β4フラグを1にする。ステップS13でカウンタを+1する。さらに、次のステップS14で検出される温度データが93℃に達していなければ、ステップS11からステップS16のルーチンを繰り返す。ステップ14で温度データが93℃に到達し、ステップ15でβ3、β4フラグが1でなければ、ステップS16に進み、加算した累計α1、α2のそれぞれをカウンタによるカウント値で除して単位時間温度差α1、α2の平均値を求め、この平均α1、α2の少なくとも一方とt1とを基にした単位時間当たりの昇温率から水量Qを判定し、判定した水量Qから単位時間温度差α1、α2が沸騰に向かって立ち下がっていくときの沸騰に対応する閾値β3、β4を、図7(b)に水量Qの違いに対応して数例示すように設定し、記憶する。この後、またはステップS15でβ3、β4フラグが1であればそのまま、ステップS17に進む。ステップS17では、単位時間温度差α1、α2がそれぞれに対応するβ3、β4に共に到達していなければ、ステップS11に戻ってステップ17までを繰り返し、ステップS17で単位時間温度差α1、α2がβ3、β4に共に到達していると、ステップS18で沸騰と判定し、ステップS19でヒータをパワーダウンしたオン状態に切換え、蒸気の発生を抑えた加熱をステップS20で所定時間t3が経過するまで継続してカルキ除去などを行い、所定時間t3が経過すると、沸騰処理を終了する。沸騰処理終了後、制御手段32は通常、保温処理に移行する。