JP5609199B2 - 連続鋳造における二次冷却方法 - Google Patents

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本発明は、高速鋳造時であっても鋳片を均一に冷却することのできる、連続鋳造設備の二次冷却帯における鋳片の冷却方法に関する。
鋼の連続鋳造では、取鍋内の溶鋼を一旦タンディッシュに注入し、タンディッシュ内に所定量の溶鋼が滞在した状態で、タンディッシュ内の溶鋼を、タンディッシュ底部に設置した浸漬ノズルを介して鋳型に注入している。鋳型内に注入された溶鋼は冷却されて鋳型との接触面に凝固シェルを形成し、この凝固シェルを外殻とし、内部に未凝固溶鋼を有する鋳片は、鋳型下方に設けられた二次冷却帯において、鋳片表面に噴射される冷却水(「二次冷却水」ともいう)によって冷却されながら鋳型下方に連続的に引抜かれ、やがて中心部までの凝固が完了する。中心部までの凝固の完了した鋳片を所定の長さに切断して、圧延用素材である鋳片が製造されている。
二次冷却帯において、不均一な冷却が発生すると、鋳片の表面や内部に割れが生じたり、鋳片中心部の中心偏析が悪化したりするので、鋳片の鋳造方向及び幅方向で均一な冷却を行うことが提案され、実施されてきた。この場合、スラブ鋳片は幅が広く、複数個のスプレーノズルを幅方向に配置する必要があることから、幅方向で不均一冷却になりやすく、特に、鋳片幅方向で均一な冷却を行うことが重要となる。
例えば、特許文献1には、スプレーノズルの先端に複数の噴射孔を設け、隣り合うロール間において、前記噴射孔から噴射される互いに平行な、複数条のフラットスプレー水で鋳片表面を冷却することが開示されている。特許文献1によれば、複数条のスプレー水で冷却するので、冷却−復熱の温度差が小さくなり、それに応じて繰り返しの熱応力が軽減され、鋳片の表面割れが軽減されるとしている。
特許文献2には、スプレーノズルから噴射される冷却水の、鋳片引き抜き方向の水量分布で、水量分布における最大部の20%となる点をA及びBとしたとき、AとBとの間では最大部の20%以上の水量分布が連続し、且つ、スプレーノズルの噴射孔中心をCとしたとき、角ACBが30度以上であるスプレーノズルを用いて鋳片を冷却することが開示されている。特許文献2によれば、鋳片に対する冷却能を効率良く高めることができるとしている。
特許文献3には、加圧系にブースターポンプを備えた送水機構を介して、鋳片に25〜100kgf/cm2(2.5〜9.8MPa)の給水圧の冷却水を吹き付けて冷却しながら連続鋳造することが開示されている。特許文献3によれば、鋳片に衝突した冷却水の跳ね返りが霧状化され、鋳片表面の部分的な溜り水の発生が防止され、部分的な過冷却が防止されて、均一な冷却が実現されるとしている。
また、特許文献4には、二次冷却帯が垂直部に設置された垂直曲げ型連続鋳造機において、二次冷却帯下方の湾曲部での鋳片表面に沿って流れる二次冷却水による鋳片の不均一冷却を防止するために、二次冷却帯出口で鋳片に圧縮空気を吹き付けて鋳片表面に滞留する二次冷却水を吹き飛ばしながら鋳造する方法が開示されている。
特開昭50−103426号公報 特開2003−136205号公報 特開昭57−91857号公報 特開2004−223526号公報
鋼の連続鋳造において、一般に、二次冷却帯の鋳片の表面温度は700〜1000℃に制御されているが、近年の鋳造速度の高速化に伴い、二次冷却の能力が強化され、鋳造中の鋳片表面温度は全般的に低下する傾向にある。また、鋳造速度の高速化に伴って、鋳片に、700℃を下回る表面温度の部位が局部的に生じる現象(「過冷却現象」と呼ぶ)が発生するようになった。過冷却現象の発生した鋳片の表面温度は、鋳片幅方向に温度ムラが生じる。
この過冷却現象は、鋳造中の鋳片の表面温度が二次冷却帯における過冷却によって低下する現象であり、図1に、過冷却のスラブ鋳片における温度ムラの発生状況(図1(A))と、冷却後のスラブ鋳片の表面割れの発生状況(図1(B))との関係を示す。図1に示すように、鋳造後の鋳片を観察すると、温度ムラの発生部位に表面割れが集中することが分かる。尚、本発明者らは、この過冷却現象の発生原因を追求し、鋳片の温度ムラ発生と、鋳片表面に滞留する二次冷却水(滞留する二次冷却水を「残留水」と呼ぶ)の水温とのあいだに相関があることを知見している。
この過冷却現象つまり温度ムラを防止する観点から上記従来技術を検証すれば、上記従来技術は、何れも過冷却現象の防止には効果がないか、効果があっても効率的ではない。
即ち、特許文献1は、スプレー水の噴射される面積、つまり冷却面積を広げて過冷却を防止しているが、フラットスプレーノズルを使用しており、フラットスプレーノズルのみで冷却する限り、冷却時の衝突圧力が強く、二次冷却水量も多いので、残留水の発生を防ぐことはできず、高速鋳造下での過冷却現象の発生を防ぐことはできない。
特許文献2は、鋳造方向の噴射角度を広げたスプレーノズルであり、特許文献1のフラットスプレーノズルに比較すれば、冷却時の衝突圧力を弱くすることができるので、過冷却現象は発生しにくくなる。しかしながら、スプレーノズルを用いて従前の冷却方法で冷却する限り、残留水の発生を防ぐことはできず、鋳造速度を高速化すると、過冷却現象が発生する。
特許文献3は、鋳片に25〜100kgf/cm2の高圧の二次冷却水を噴射することにより、残留水の発生を防ぎ、均一冷却を行うものであり、高圧水によって残留水の発生は抑制され、過冷却現象防止の効果が発現される。しかしながら、鋼の連続鋳造機においては、二次冷却帯の長さは20mから長いものでは50mにも達し、全ての二次冷却ゾーンで高圧水による冷却を実施することは設備費のみならず運転費が嵩み、たとえ上流部の二次冷却ゾーンだけに絞ったとしても運転費が高く、実用的ではない。
特許文献4は、二次冷却帯の出口で鋳片表面の残留水を除去しており、過冷却現象は二次冷却帯で発生することから、二次冷却帯の出口で鋳片表面の残留水を除去しても過冷却現象の防止には効果がない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、連続鋳造設備の二次冷却帯にて鋳造中の鋳片を冷却するにあたり、鋳片表面に過冷却現象を発生させることなく、鋳片を均一に冷却することのできる二次冷却方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明に係る連続鋳造における二次冷却方法は、連続鋳造機で鋳造されている鋳片を、鋳片幅方向で2以上に分割された分割型鋳片支持ロールで支持しながら鋳型の下方に設けた二次冷却帯にて冷却水または冷却水と空気との混合体を用いて二次冷却するに際し、連続鋳造機の垂直部の少なくとも一部または湾曲部の少なくとも一部の二次冷却帯では、前記分割型鋳片支持ロールのロールチョックの下流側直下に気体吹き込み用ノズルを配置し、該ノズルから0.1MPa以上の噴射圧力またはノズル1本あたり400NL/min以上の噴射流量で気体を噴射し、噴射した気体の少なくとも一部を、ロールチョックと鋳片との隙間を鋳造方向下流側から鋳造方向上流側に向かう気体流となし、該気体流によって、連続鋳造中の鋳片表面に溜まる、前記冷却水の残留水が、ロールチョックと鋳片との隙間を流下することを抑制しながら鋳片を二次冷却することを特徴とする。
本発明によれば、連続鋳造機の垂直部の少なくとも一部または湾曲部の少なくとも一部の二次冷却帯では、分割型鋳片支持ロールのロールチョックの下流側直下に気体吹き込み用ノズルを配置し、該ノズルから0.1MPa以上の噴射圧力またはノズル1本あたり400NL/min以上の噴射流量で気体を噴射し、噴射した気体の少なくとも一部を、ロールチョックと鋳片との隙間を鋳造方向下流側から鋳造方向上流側に向かう気体流となし、この空気流によって、鋳片表面に溜まる、冷却水の残留水がロールチョックと鋳片との隙間を流下することを抑制しながら鋳片を二次冷却するので、過冷却現象の原因である残留水は鋳片表面を流下せず、鋳片支持ロールの両サイドから落下して鋳片表面から除去され、これにより、残留水が多くなる鋳造速度を高めた条件下であっても鋳片表面は過冷却とならず、鋳片表面に温度ムラを発生させることなく、鋳片を均一に冷却することが実現される。その結果、表面割れのない表面品質に優れた鋳片を高い生産性で鋳造することが可能となり、工業上有益な効果がもたらされる。
過冷却のスラブ鋳片における温度ムラの発生状況と、冷却後のスラブ鋳片の表面割れの発生状況との関係を示す図である。 垂直曲げ型スラブ連続鋳造機の鋳型直下の垂直部での鋳片支持ロールの配置例を示す概略図である。 鋳造速度を変化させて連続鋳造したときの鋳片表面温度の幅方向分布を示す図である。 実物大モデル実験装置において、鋳片支持ロールのロールチョック部を流下する水量を計測した結果を示す図である。 気体吹き込み用ノズルからの噴射圧力を変化させたときの落下水量を測定した結果を示す図である。 気体吹き込み用ノズルからの噴射流量を変化させたときの落下水量を測定した結果を示す図である。 本発明を適用したスラブ連続鋳造機の概略図である。 本発明例1における鋳片幅方向の表面温度分布を示す図である。 比較例1における鋳片幅方向の表面温度分布を示す図である。 比較例2における鋳片幅方向の表面温度分布を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。先ず、本発明に至った経緯を説明する。
本発明者らは、実機連続鋳造機の操業結果から、鋳造速度が速くなると、前述した図1に示すように、温度ムラの原因である鋳片の過冷却現象が多発し、それに応じて鋳片の表面割れが多発することを確認した。そこで、鋳造速度が速くなると過冷却現象が起こりやすくなる原因を追求した。
連続鋳造機の設備長は限られており、従って、鋳造速度が速くなると、限られた設備長の範囲内で鋳片の凝固を完了させなければならず、そのために、二次冷却帯における冷却能力を強くする。通常、二次冷却帯の水スプレーノズルやエアーミストスプレーノズル(以下、まとめて「スプレーノズル」とも記す)から噴射される冷却水量或いはエアーミスト量(冷却水と空気との混合体)を増加させて、二次冷却帯における冷却能力を強くしている。一般的に、連続鋳造機の二次冷却は、鋳造される溶鋼1kgあたりの冷却水量が一定となるように制御されており、この場合には、鋳造速度が2倍になると、単位時間あたりの二次冷却水量は2倍になる。
スプレーノズルから噴射された冷却水は、鋳片表面に衝突した後の水温が初期状態の常温から沸騰温度まで上昇することによる顕熱、及び、蒸発による蒸発潜熱によって鋳片から熱を奪い、且つ、冷却水の衝突力による冷却促進作用が働いて、鋳片表面の冷却が行われる。この場合、噴射された二次冷却水は蒸発しきれず、鋳片表面上や、鋳片支持ロールと鋳片とに挟まれて残留水となって滞留する。また、一部の残留水は鋳片幅方向に流れて鋳片表面から落下し、また、一部の残留水は、鋳片幅方向で2以上に分割された分割型鋳片支持ロールのロールチョックの鋳片との隙間を通って鋳片表面上を沿うようにして鋳造方向下流側へ流下する。尚、分割型鋳片支持ロールは、鋳片の支持面積を増加させるべくロールピッチ(鋳造方向のロール間距離)を小さくすると、自ずと鋳片支持ロールのロール径が小さくなり、ロール径が小さくなるとロールの剛性が低下してロール自体のたわみが大きくなるので、このたわみを少なくするための鋳片支持ロールである。当然ながら、分割型鋳片支持ロールが配置されないスラブ連続鋳造機も存在する。
鋳造速度が低速の範囲は二次冷却水量が少ないので、鋳片上に滞留している残留水の水温は80℃以上の高温であることが確認されている。また、この場合には、過冷却現象は発生しないことが確認されている。しかしながら、鋳造速度が上がって冷却水量が増加すると、冷却に寄与できない冷却水が増え、滞留している残留水の水温は急激に低下し、80℃〜30℃へと低下していく。
鋳片の幅方向に流れて鋳片表面から落下する残留水は問題とならないが、分割型鋳片支持ロールのロールチョックと鋳片との隙間を通って鋳片表面上を沿うようにして下流側へ流下する残留水は、残留水の水温が低下することに伴ってサブクール度が高くなり、この残留水に鋳片を冷却する作用が発現する。尚、サブクールとは、冷却水の飽和温度と冷却水温度との温度差によって冷却される効果のことで、サブクール度は、冷却水の飽和温度と冷却水との温度差を示す。
一旦、残留水による冷却の作用が鋳片に働くと、その部位の鋳片の表面温度が低下し、鋳片表面の濡れ性が良くなって更に冷却作用が強くなり、局部的に表面温度の低い部位が形成される。これが過冷却現象の発生原因であることを見出した。
図2は、或る垂直曲げ型スラブ連続鋳造機の鋳型直下の垂直部での鋳片支持ロールの配置例を示す概略図であり、図2(A)は鋳片の短辺側から見た図、図2(B)は鋳片の長辺側から見た図である。図2に示すように、この鋳片支持ロール6は、ロールチョック6aで鋳片10の幅方向に3つに分割された分割型鋳片支持ロールであり、ロールチョック6aの部位が鋳造方向に‘互い違い’に、つまり、千鳥配置されている。隣り合う鋳片支持ロール6の間には、それぞれ2つのエアーミストスプレーノズル13が配置されており、鋳片10は、分割型の鋳片支持ロール6で支持されながら、エアーミストスプレーノズル13から噴射されるエアーミストで冷却される。尚、図2(A)では鋳片10の片側の長辺面のみにエアーミストスプレーノズル13及が配置されているが、これは、図が煩雑になることを避けるためであり、実際には、鋳片10の両側の長辺面に、エアーミストスプレーノズル13が配置されている。ここで、図2(B)の最も上段に位置する鋳片支持ロールの2つのロールチョックのうちで、鋳片支持ロールの中央部に対して鋳片幅方向外側に位置するロールチョックをA、内側に位置するロールチョックをBと称し、また、この鋳片支持ロールの一つ下流側の鋳片支持ロールでは、外側に位置するロールチョックをA’、内側に位置するロールチョックをB’と称する。
この配置の連続鋳造機を用い、鋳造速度を水準1〜3(鋳造速度:水準1<水準2<水準3)に変化させて鋼のスラブ鋳片を連続鋳造したときの鋳片表面温度の幅方向分布を図3に示す。鋳造速度が遅い場合(水準1)には、図3の実線で示すように、鋳片のコーナー部を除いて、鋳片幅方向の表面温度の差は小さく、過冷却現象は発生しないが、鋳造速度を上げると(水準2)、図3の破線で示すように、鋳片の幅中央部(B及びB’に相当する位置)に過冷却現象が発生し、更に鋳造速度を上げると(水準3)、図3の一点鎖線で示すように、鋳片の幅中央部だけでなく、外側両側(A及びA’に相当する位置)にも過冷却現象が発生する。
そこで、本発明者らは、この過冷却現象の原因を定量化するために、この実機と同じ装置の5ロール分の実物大モデル実験装置を作製し、実機での二次冷却条件に沿ってエアーミストスプレーノズルからエアーミストを擬似鋳片に噴射し、そのときに、最下段の鋳片支持ロールのロールチョックAと擬似鋳片との隙間並びにロールチョックBと擬似鋳片との隙間を流下する水量を計測した。その結果を図4に示す。図4に示すように、ロールチョックAに比べてロールチョックBの方が、落下水量が多いことが分かった。また、ロールチョックAの部位及びロールチョックBの部位ともに、エアーミスト量の上昇、換言すれば鋳造速度の上昇に伴って落下水量が多くなることが分かった。尚、図4に示す流量はエアーミストスプレーノズルからの冷却水の水量である。
即ち、図4に示すように、水準1に対して鋳造速度を上昇させた水準2では、ロールチョックB及びB’による影響で鋳片の中央部が冷却されて過冷却現象が発生し、鋳造速度を水準2よりも更に上昇させた水準3では、ロールチョックA及びA’での落下水量が多くなり、ロールチョックA及びA’による影響でこれらの部位でも過冷却現象が発生することが分かった。
ここで、水準1及び水準2の実績に基づき、図3と図4とを照らし合わせることで、モデル実験装置での落下水量が80L/min以下であれば、過冷却現象は発生しないことが分かった。そこで、上記の実物大モデル実験装置を用い、水準3のロールチョックBの条件下において、落下水量を80L/min以下とするべく検討した。
試験は、最下段の鋳片支持ロールのロールチョックA及びロールチョックBの下流側直下に、擬似鋳片に対して垂直な方向に気体吹き込み用ノズルを配置し、該ノズルから噴射圧力及び噴射流量を変化させて空気を噴射し、そのときのロールチョックBでの落下水量を測定した。
図5は、噴射圧力を変化させたときの落下水量を測定した結果を示す図、図6は、噴射流量を変化させたときの落下水量を測定した結果を示す図であり、噴射圧力を0.1MPa以上とする、或いは、噴射流量をノズル1本あたり400NL/min以上とすることで、落下水量は80L/min以下になることが確認できた。噴射圧力を0.1MPa以上とし且つ噴射流量をノズル1本あたり400NL/min以上とすることが、過冷却防止のためにはより効果的である。噴射圧力の上限は特定する必要はないが、高くすると設備コストが嵩むので、上限値は1.0MPa程度で十分である。
本発明は、これらの検討結果に基づきなされたものであり、連続鋳造機で鋳造されている鋳片を、鋳片幅方向で2以上に分割された分割型鋳片支持ロールで支持しながら鋳型の下方に設けた二次冷却帯にて冷却水または冷却水と空気との混合体を用いて二次冷却するに際し、連続鋳造機の垂直部の少なくとも一部または湾曲部の少なくとも一部の二次冷却帯では、前記分割型鋳片支持ロールのロールチョックの下流側直下に気体吹き込み用ノズルを配置し、該ノズルから0.1MPa以上の噴射圧力またはノズル1本あたり400NL/min以上の噴射流量で気体を噴射し、噴射した気体の少なくとも一部を、ロールチョックと鋳片との隙間を鋳造方向下流側から鋳造方向上流側に向かう気体流となし、該気体流によって、連続鋳造中の鋳片表面に溜まる、前記冷却水の残留水が、ロールチョックと鋳片との隙間を流下することを抑制しながら鋳片を二次冷却することを特徴とする。
使用する気体吹き込み用ノズルは、特に規定する必要はなく、該ノズルから噴射された噴射流の少なくとも一部がロールチョックと鋳片との隙間を通過する気体流となり、該気体流によってロールチョックと鋳片との隙間を流れる残留水が強制的に上流側に押し戻される限り、どのような型式のノズルであっても構わない。具体的には、連続鋳造機の二次冷却で使用する水スプレーノズル或いはエアーミストスプレーノズルのような噴射角度の調整されたノズルであっても、また、単管のノズルであっても、更にはラバールノズル形状のノズルであっても構わない。また、実験では、鋳片表面に対して垂直な方向から気体を噴射したが、鋳片方面に対して傾斜した方向から噴射する、或いは鋳片表面に平行に噴射するなどしても構わない。
気体吹き込み用ノズルからの気体の噴射は、二次冷却帯の全ての二次冷却ゾーンで実施する必要はなく、二次冷却水量の多い上流部または中流部の二次冷却ゾーンのみで実施してもよく、また、その場合でも、鋳造方向に隣り合う鋳片支持ロールの全ての位置で実施する必要はなく、数本の鋳片支持ロール毎に気体を噴射させてもよい。つまり、完全に残留水を鋳片上から除去する必要はなく、鋳造速度が低速の場合に滞留する残留水と同程度の残留水が滞留してロールチョックと鋳片との隙間を流下しても問題ない。尚、連続鋳造機の垂直部や湾曲部以外の水平部では、ロールチョックでの残留水の流下は発生しないので、水平部では気体の噴射は不要である。
使用する気体としては、安価であることから空気が好適であるが、空気に限らず、窒素ガス、炭酸ガスなども使用することができる。また、水スプレーノズルが配置された二次冷却ゾーンであっても、エアーミストスプレーノズルが配置された二次冷却ゾーンであっても、冷却水を使用する限り、本発明を適用することができる。
このように、本発明によれば、連続鋳造中の鋳片表面に溜まる残留水のロールチョックでの流下を抑制しながら鋳片を二次冷却するので、過冷却現象の原因である残留水が鋳片表面から除去され、鋳造速度を高めた鋳造下であっても、鋳片表面は過冷却とならず、鋳片表面に温度ムラを発生させることなく、鋳片を均一に冷却することが実現される。
[本発明例1]
図7に示すスラブ連続鋳造機における本発明の実施例を説明する。図7において、符号1は、垂直曲げ型のスラブ連続鋳造機、2は、取鍋から供給される溶鋼を鋳型に中継供給するためのタンディッシュ、3は、鋳型への溶鋼流量調整用のスライディングノズル、4は、溶鋼を鋳型内に注入するための浸漬ノズル、5は、溶鋼を冷却して鋳片の外殻形状を形成するための鋳型、6は、鋳片を支持・案内するための鋳片支持ロール、7は、鋳造された鋳片を搬送するための搬送ロール、8は、鋳造された鋳片を所定長さに切断するためのガス切断機、9は溶鋼、10は鋳造されつつある鋳片、10aは切断された鋳片、11は凝固シェル、12は未凝固相である。
使用したスラブ連続鋳造機1の設備長は45mであり、幅2000mmのスラブ鋳片の鋳造が可能な設備である。鋳型5の上端から鋳型5の下端までが1mであり、鋳型直下から機端までの44mの範囲が二次冷却帯であり、この二次冷却帯を、およそ11m毎に、鋳型直下側から機端側に向いて、第1冷却ゾーン、第2冷却ゾーン、第3冷却ゾーン、第4冷却ゾーンの4つの二次冷却ゾーンに分け、それぞれの二次冷却ゾーン毎に冷却条件を設定した。図7において、A−A’位置からB−B’位置直上の鋳片支持ロール6までの範囲が第1冷却ゾーン、B−B’位置からC−C’位置直上の鋳片支持ロール6までの範囲が第2冷却ゾーン、C−C’位置からD−D’位置直上の鋳片支持ロール6までの範囲が第3冷却ゾーン、D−D’位置から機端の鋳片支持ロール6までの範囲が第4冷却ゾーンである。このスラブ連続鋳造機1では、第4冷却ゾーンが水平部となっている。二次冷却帯の各二次冷却ゾーンにはエアーミストスプレーノズルが配置されており、このエアーミストスプレーノズルから噴射されるエアーミストにより、鋳片10は冷却される。
これらの二次冷却ゾーンのうち、鋳片支持ロールとして図2に示す3分割型鋳片支持ロールが配置された第1冷却ゾーン(垂直部及び湾曲部)、第2冷却ゾーン(湾曲部)及び第3冷却ゾーン(湾曲部)で本発明を適用した。即ち、第1冷却ゾーンから第3冷却ゾーンまでの全ての鋳片支持ロール6のロールチョック6aの下流側直下に、鋳造方向の噴射角度が約13°、鋳片幅方向の噴射角度が約30°である気体吹き込み用ノズル(図示せず)を鋳片表面に対して垂直に設置した。気体吹き込み用ノズルの先端と鋳片表面との距離は約30mmとした。これらの気体吹き込み用ノズルは、その先端部から0.1MPaの噴射圧力で空気が鋳片表面に対して垂直な方向で噴射されるように構成されている。この気体吹き込み用ノズルにおいて、0.1MPaの噴射圧力でのノズル1本あたりの噴射流量は約400NL/minであった。
この構成のスラブ連続鋳造機1を用い、気体吹き込み用ノズルから空気を噴射せずに、二次冷却帯の第4冷却ゾーンの中間部の鋳片上面側に設置した、赤外線カメラからなる表面温度プロフィール計(図示せず)で鋳片表面温度を測定しながら、厚み250mm、幅2000mmのスラブ鋳片を1.5m/minの鋳造速度(Vc)で鋳造開始した。鋳片表面温度プロフィール計で測定された鋳片幅方向の表面温度分布を図8に示す。鋳造速度が1.5m/minの場合には、鋳片表面温度プロフィール計で測定された鋳片幅方向の表面温度分布は、温度偏差が約40℃以下であり、ほぼ均一に冷却されていた。
その後、鋳造速度を2.0m/minに増速し、二次冷却水量を鋳造速度に比例して増加したところ、ロールチョック6aの部位に相当する鋳片表面部位で過冷却が発生し、図8に示すように、鋳片表面温度の偏差は350℃以上に拡大した。そこで、第1冷却ゾーン、第2冷却ゾーン及び第3冷却ゾーンにおいて、気体吹き込み用ノズルから0.1MPaの噴射圧力で空気を噴射した。気体吹き込み用ノズルから空気を噴射してから約5分後に鋳片表面温度の偏差が小さくなり始め、約10分後には、図8に示すように、鋳片表面温度の偏差は50℃以内となった。
[比較例1]
本発明例1に示すスラブ連続鋳造機1において、比較のために、気体吹き込み用ノズルからの噴射圧力を0.05MPaに低下させて空気を噴射した。この場合のノズル1本あたりの噴射流量は、約250NL/minであった。
この構成のスラブ連続鋳造機1を用い、気体吹き込み用ノズルから空気を噴射せずに、二次冷却帯の第4冷却ゾーンの中間部の鋳片上面側に設置した、赤外線カメラからなる表面温度プロフィール計で鋳片表面温度を測定しながら、厚み250mm、幅2000mmのスラブ鋳片を1.5m/minの鋳造速度で鋳造開始した。鋳片表面温度プロフィール計で測定された鋳片幅方向の表面温度分布を図9に示す。鋳造速度が1.5m/minの場合には、鋳片表面温度プロフィール計で測定された鋳片幅方向の表面温度分布は、温度偏差が約45℃以下であり、ほぼ均一に冷却されていた。
その後、鋳造速度を2.0m/minに増速し、二次冷却水量を鋳造速度に比例して増加したところ、ロールチョック6aの部位に相当する鋳片表面部位で過冷却が発生し、図9に示すように、鋳片表面温度の偏差は350℃以上に拡大した。そこで、第1冷却ゾーン、第2冷却ゾーン及び第3冷却ゾーンにおいて、気体吹き込み用ノズルから0.05MPaの噴射圧力で空気を噴射した。気体吹き込み用ノズルから空気を噴射してから約5分後には鋳片表面温度の偏差はやや減少したが、約10分後には、図9に示すように、鋳片表面温度の偏差は200℃以上であり、鋳造後のスラブ検査で過冷却部に表面割れが見つかった。
[比較例2]
本発明例1に示すスラブ連続鋳造機1において、気体吹き込み用ノズルの設置位置を、第1〜第3冷却ゾーンに替えて水平部の第4冷却ゾーンに変更し、気体吹き込み用ノズルの設置位置の影響を調査した。この気体吹き込み用ノズルからの噴射圧力は0.1MPaであり、この場合のノズル1本あたりの噴射流量は、約400NL/minであった。
この構成のスラブ連続鋳造機1を用い、気体吹き込み用ノズルから空気を噴射せずに、二次冷却帯の第4冷却ゾーンの中間部の鋳片上面側に設置した、赤外線カメラからなる表面温度プロフィール計で鋳片表面温度を測定しながら、厚み250mm、幅2000mmのスラブ鋳片を1.5m/minの鋳造速度で鋳造開始した。鋳片表面温度プロフィール計で測定された鋳片幅方向の表面温度分布を図10に示す。鋳造速度が1.5m/minの場合には、鋳片表面温度プロフィール計で測定された鋳片幅方向の表面温度分布は、温度偏差が約45℃以下であり、ほぼ均一に冷却されていた。
その後、鋳造速度を2.0m/minに増速し、二次冷却水量を鋳造速度に比例して増加したところ、ロールチョック6aの部位に相当する鋳片表面部位で過冷却が発生し、図10に示すように、鋳片表面温度の偏差は350℃以上に拡大した。そこで、第4冷却ゾーンにおいて、気体吹き込み用ノズルから0.1MPaの噴射圧力で空気を噴射した。気体吹き込み用ノズルから空気を噴射してから約5分後でも鋳片表面温度の偏差は減少せず、約10分後には、図10に示すように、鋳片表面温度の偏差は300℃以上であり、鋳造後のスラブ検査で過冷却部に表面割れが見つかった。
1 スラブ連続鋳造機
2 タンディッシュ
3 スライディングノズル
4 浸漬ノズル
5 鋳型
6 鋳片支持ロール
6a ロールチョック
7 搬送ロール
8 ガス切断機
9 溶鋼
10 鋳片
11 凝固シェル
12 未凝固相
13 エアーミストスプレーノズル

Claims (1)

  1. 連続鋳造機で鋳造されている鋳片を、鋳片幅方向で2以上に分割された分割型鋳片支持ロールで支持しながら鋳型の下方に設けた二次冷却帯にて冷却水または冷却水と空気との混合体を用いて二次冷却するに際し、連続鋳造機の垂直部の少なくとも一部または湾曲部の少なくとも一部の二次冷却帯では、前記分割型鋳片支持ロールのロールチョックの下流側直下に気体吹き込み用ノズルを配置し、該ノズルから0.1MPa以上の噴射圧力またはノズル1本あたり400NL/min以上の噴射流量で気体を噴射し、噴射した気体の少なくとも一部を、ロールチョックと鋳片との隙間を鋳造方向下流側から鋳造方向上流側に向かう気体流となし、該気体流によって、連続鋳造中の鋳片表面に溜まる、前記冷却水の残留水が、ロールチョックと鋳片との隙間を流下することを抑制しながら鋳片を二次冷却することを特徴とする、連続鋳造における二次冷却方法。
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