JP5608999B2 - キシロースを利用して有用物質を生産する方法 - Google Patents

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Description

本発明は、キシロースを炭素源として用いて有用物質を生産する技術に関する。
近年、石油資源に替わり再生可能なバイオマスを有用物質に変換してエネルギー源や工業原料として用いる技術が検討されるようになってきている。バイオマスを原料として微生物の発酵により生産されるエタノールなどの有用物質は、石油資源の消費を抑え、大気中の二酸化炭素の増加を抑制するという観点から代替原料として期待されている。バイオマスには、各種存在するが、なかでも、食糧とは競合しない原料として、リグノセルロースを主体とする草本類や木本類などの利用が考えられている。
リグノセルロースに含まれる主要な糖は、セルロースを構成するグルコースと、ヘミセルロースを構成するキシロースである。リグノセルロースを化学的あるいは酵素的に分解するとこうした単糖を主として含む糖化組成物が得られる。リグノセルロースから有用物質を工業的に製造するためには、こうした糖化組成物中に含まれる糖を効率的に利用し、高収量、高生産性で発酵できる微生物が求められる。
サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)等のエタノール発酵能力の高い酵母は、一般に、グルコース、マンノース、ガラクトースを利用することができるが、キシロースを利用できない。したがって、リグノセルロースを原料として高効率に発酵するためには、こうした酵母がキシロースを利用可能となるように改変することが求められている。
例えば、図13に示すように、サッカロマイセス属酵母に、キシロースを利用可能な酵母を作製する試みが行われている(特許文献1、2、非特許文献1)。特許文献1及び非特許文献1では、いずれも異種微生物由来のキシロースレダクターゼ(XR)及びキシリトールデヒドロゲナーゼ(XDH)をコードする遺伝子を導入してキシロース資化性を付与した酵母におけるエタノール収量やキシロースの利用能力を上げるための改良が報告されている。これらの文献では、XR−XDHによるキシロース資化経路の導入によって余剰に発生するNADHを後段の反応で消費させるために、ホスホケトラーゼ(PK)経路を増強して利用することが報告されている。図13に示すように、これらの文献におけるキシロースを利用する発酵は、図1に示すペントースリン酸経路(PPP)経由でのキシロース代謝物に加えて図13に示す代謝物によって構成されている。そして、このうち、アセチルCoAからアセトアルデヒドを生成するNADH依存性のアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ACDH)によって余剰のNADHを消費しようとすることが報告されている。
また、特許文献2では、キシロースからキシルロースへの異性化酵素であるキシロースイソメラーゼ(XI)を用いることが報告されている。XIを用いる場合、余剰のNADHは発生しない。したがって、解糖系のペントースリン酸経路(PPP)をそのまま用い、ホスホケトラーゼ経路を増強することは記載されていない。
WO03/078643パンフレット 特表2005−514951号公報
Sonderegger M, Schumperli M, Sauer U. 2004. Metabolic engineering of a phosphoketolase pathway for pentose catabolism in Saccharomyces cerevisiae. Appl Environ Microbiol 70(5):2892-7.
特許文献1及び非特許文献1を総合的にみれば、ホスホケトラーゼ経路におけるACDH単独での増強効果はほとんど認められない(特許文献1の図6及び非特許文献1の図2、図4参照)。他のホスホケトラーゼ経路酵素であるホスホケトラーゼ(PK)とホスホトランスアセチラーゼ(PTA)の追加的な増強とアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALD)の追加的な不活性化によって初めてエタノール収量とキシロース利用性にある程度の効果があると考えられる。これらの文献によれば、キシロース利用性(消費速度)とエタノール収量に加えて、副生物である酢酸、グリセロール、キシリトールの産生抑制も同時に実現することは困難であると考えられる。
一方、特許文献2では、余剰のNADHの解消の必要性はないため、ホスホケトラーゼ経路の増強を特に要するものではない。しかしながら、本発明者らによれば、外因性のXIの導入によっては、いまだエタノール収量もキシロースの利用性も不十分であった。また、XIを利用する場合、XRとXDRを利用する場合とは異なり、どの代謝経路のどの酵素を増強等することが効果的であるかの指標は全くない。また、XIを導入したときにおける、各種の酵素発現量等についての報告もされていない。
そこで、本発明では、キシロースイソメラーゼ(XI)によるキシロース資化能力が付与された形質転換酵母において、より実用的な発酵特性を付与し、これを利用する技術を提供することを一つの目的とする。
本発明者らは、外因性のXIの導入によりキシロース資化性が付与された形質転換酵母につき、そのキシロース発酵特性について種々の改良を試みていたところ、アセチルCoAをアセトアルデヒドに変換するアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ACDH)の増強がエタノール収量の向上及びキシロース利用能力の向上と同時に、副生物であるグリセロールを抑制できるという知見を得た。本発明者らは、こうした知見に基づき本発明を完成した。すなわち、本発明によれば以下の手段が提供される。
本発明によれば、キシロースイソメラーゼをコードする遺伝子を保持してキシロース資化能力を有し、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の発現が増強されている、形質転換酵母が提供される。
本発明の酵母においては、キシルロースをペントースリン酸経路で代謝する経路を構成する酵素群から選択される1種又は2種以上の酵素をコードする1種又は2種以上の遺伝子の発現が増強されていることが好ましく、また、これらの酵素は、キシルロキナーゼ、トランスアルドラーゼ、トランスケトラーゼ、リブロース−5−リン酸エピメラーゼ及びリボース−5−リン酸イソメラーゼからなる群から選択されることが好ましい。さらに、本発明の酵母においては、キシロースからキシリトールに変換するアルドースリダクターゼをコードする遺伝子の発現が抑制されていることが好ましい。さらにまた、本発明の酵母においては、前記アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、Bifidobacterium adolescentis由来であることが好ましい。また、本発明の酵母は、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)、キャンディダ属(Candida)、ピキア属(Pichia)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)、ハンセヌラ属(Hancenula)からなる群から選択される属に属する酵母であることが好ましい。
本発明によれば、本発明の酵母を、キシロースを含有する培地を用いて発酵することにより、有用物質を生産する方法が提供される。
本発明の生産方法においては、前記有用物質は、エタノール、乳酸、酢酸、1,3−プロパン−ジオール、プロパノール、ブタノール、コハク酸、エチレン及びグリセロールからなる群から選択されることが好ましい。
本発明の形質転換酵母によるキシロース資化経路の一例の概略を示す図である。 S.cerevisiae由来のキシルロキナーゼ(XK)遺伝子の酵母導入用ベクター、pXhisHph-HOR7p-ScXKを示す図である。 Piromyces sp. E2由来のキシロースイソメラーゼ(XI)遺伝子の酵母導入用ベクター、pXLG-HOR7p-PsE2XIを示す図である。 S. cerevisiae由来のトランスアルドラーゼ1(TAL1)遺伝子およびトランスケトラーゼ1(TKL1)遺伝子の酵母導入用ベクター、pXAd3H-HOR7p-ScTAL1-ScTKL1を示す図である。 S. cerevisiae由来のリブロースリン酸エピメラーゼ1(RPE1)遺伝子およびリボースリン酸ケトイソメラーゼ(RKI1)遺伝子の酵母導入用ベクター、pXGr3L-HOR7p-ScRPE1-ScRKI1を示す図である。 Piromyces sp. E2由来のXI遺伝子を染色体上に多コピー導入することが可能なベクター、pRS524-HOR7p-PiXI を示す図である。 Bifidobacterium adolescentis由来のアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化)遺伝子BaADH2の酵母導入用ベクター、pXXU-HOR7p-BaADH2を示す図である。 Real-time 定量PCRの解析結果から、各株における各遺伝子の発現量の相対比較を行った図A〜Gを示す図である。 好気条件下での増殖試験(IX700株とMT8-1株)の結果を示す図である。 好気条件下での増殖試験(IX700M株とIX700株)の結果を示す図である。 IX700株のキシロースを炭素源として用いた発酵試験結果を示す図である。 BaADH2/IX700M株のキシロースを炭素源として用いた発酵試験結果を示す図である。 従来技術におけるキシロース資化性の付与形態の一例を示す図である。
本発明は、キシロース発酵特性が改善された形質転換酵母及びその利用に関する。本発明の形質転換酵母は、キシロースイソメラーゼ(XI)をコードする遺伝子を保持してキシロース資化能力を有し、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ACDH)をコードする遺伝子の発現が増強されている。本発明の酵母によれば、エタノール収率、キシロース消費速度及びグリセロール収率などのキシロースを含有する培地で酵母を発酵した場合の各種不具合のうち少なくとも一つを効果的に改善することができる。本発明の形質転換酵母がかかる発酵特性を有する理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らによれば、解糖系やペントースリン酸経路等を経て副生する酢酸から生じたアセチルCoAをアセトアルデヒドに変換することにより、エタノール収率が向上すると推定される。
また、本発明を拘束するものではないが、キシルロースをペントースリン酸経路で代謝する経路を構成する酵素群を増強することにより、アセトアルデヒドが余剰的になって酢酸が副生されたとしても、副生された酢酸を再びアセチルCoAに変換できるため、エタノール収率を確保することができると考えられる。
以下、本発明の各種実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明の形質転換酵母によるキシロース資化経路の一例の概略を示す図である。
(形質転換酵母)
(キシロース資化能力)
本発明の形質転換酵母は、キシロース資化能力を有している。キシロース資化能力は、特殊な酵母(例えば、耐熱性酵母であるハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula poymorpha))が有することが知られているが、一般的な酵母は有していないことが多い。キシロース資化能力を有していない酵母にキシロース資化能力を付与するには、図1に示すように、以下の(1)及び(2)の態様が可能である。
(1)キシロースをキシルロースに異性化するキシロースイソメラーゼ(XI)をコードする遺伝子を導入する
(2)キシロースをキシリトールに変換するキシロースレダクターゼ(XR)とキシリトールをキシルロースに変換するキシリトールデヒドロゲナーゼ(XDH)をそれぞれコードする遺伝子を導入する。
キシロース資化能力の付与は、(1)及び(2)のいずれかの方法を用いることもできるし、双方を導入してもよい。余剰のNADHの生成を考慮すると、(1)の態様が好ましい。
XIをコードする遺伝子は特に限定しないで、公知の各種XIをコードする遺伝子(以下、XI遺伝子という。)を適宜利用できる。なお、遺伝子としては、ゲノムDNAのほか、cDNA等であってもよい。XI遺伝子は、動物、植物、真菌(酵母、カビ等)、細菌などいずれの生物に由来するものであってもよい。こうした遺伝子に関する情報は、当業者であれば、NCBI(National Center for Biotechnology Information;http://www.ncbi.nlm.nih.gov)等のHPにアクセスすることにより適宜入手できる。また、酵母由来のXI遺伝子としては、例えば、Pyromyces E2種が保持するXI遺伝子(GenBank アクセッション番号:AJ249909)(配列番号1、2)が挙げられる。
本発明で用いるXI遺伝子は、XI活性を有する限りにおいて、上記配列番号1、2等公知の配列情報と一定の関係を有してXI活性を有するタンパク質をコードするものであってもよい。こうした一態様としては、配列番号2で表されるアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。「XI活性」とは、キシロースをキシルロースに異性化する活性である。XI活性は、この異性化反応の基質であるキシロースの減少量又は生成物であるキシルロースの生成量等として公知の方法で測定することができる。
「XI活性を有する」とは、XI活性を有してれば足りるが、好ましくは、配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質と同等程度あるいはそれ以上である。XI活性が同等あるいはそれ以上であるかどうかは、例えば、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質を酵母で発現したときの当該酵母又は当該タンパク質の有するXI活性の70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、もっとも好ましくは100%以上である。
配列番号2で表されるアミノ酸配列に対するアミノ酸の変異は、すなわち、欠失、置換若しくは付加は、いずれか1種類であってもよいし、2種類以上が組み合わされていてもよい。また、これらの変異の総数は、特に限定されないが、好ましくは、1個以上10個以下程度である。より好ましくは、1個以上5個以下である。
アミノ酸置換の例としては、保存的置換が好ましく、具体的には以下のグループ内での置換が挙げられる。(グリシン、アラニン)(バリン、イソロイシン、ロイシン)(アスパラギン酸、グルタミン酸)(アスパラギン、グルタミン)(セリン、トレオニン)(リジン、アルギニン)(フェニルアラニン、チロシン)。
他の一態様としては、本発明で用いるXI遺伝子は、配列番号2で表されるアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつセルラーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。同一性は好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは、90%以上であり、もっとも好ましくは95%以上である。
本明細書において同一性又は類似性とは、当該技術分野で知られているとおり、配列を比較することにより決定される、2以上のタンパク質あるいは2以上のポリヌクレオチドの間の関係である。当該技術で“同一性 ”とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間のアラインメントによって、あるいは場合によっては、一続きのそのような配列間のアラインメントによって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の配列不変性の程度を意味する。また、類似性とは、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間のアラインメントによって、あるいは場合によっては、一続きの部分的な配列間のアラインメントによって決定されるような、タンパク質またはポリヌクレオチド配列の間の相関性の程度を意味する。より具体的には、配列の同一性と保存性(配列中の特定アミノ酸又は配列における物理化学特性を維持する置換)によって決定される。なお、類似性は、後述するBLASTの配列相同性検索結果においてSimilarity と称される。同一性及び類似性を決定する方法は、対比する配列間で最も長くアラインメントするように設計される方法であることが好ましい。同一性及び類似性を決定するための方法は、公衆に利用可能なプログラムとして提供されている。例えば、AltschulらによるBLAST (Basic Local Alignment Search Tool) プログラム(たとえば、Altschul SF, Gish W, Miller W, Myers EW, Lipman DJ., J. Mol. Biol., 215: p403-410 (1990), Altschyl SF, Madden TL, Schaffer AA, Zhang J, Miller W, Lipman DJ., Nucleic Acids Res. 25: p3389-3402 (1997))を利用し決定することができる。BLASTのようなソフトウェアを用いる場合の条件は、特に限定するものではないが、デフォルト値を用いるのが好ましい。
なお、配列番号2で表されるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と上記のように一定の関連性のあるアミノ酸配列をコードする塩基配列は、遺伝暗号の縮重に従い、タンパク質のアミノ酸配列を変えることなく所定のアミノ酸配列をコードする塩基配列の少なくとも1つの塩基を他の種類の塩基に置換することができる。従って、本発明のXI遺伝子は、遺伝暗号の縮重に基づく置換によって変換された塩基配列をコードするXI遺伝子も包含する。
さらに他の一態様として、配列番号1で表される塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、XI活性を有するタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。
ストリンジェントな条件とは、たとえば、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。例えば、塩基配列の同一性が高い核酸、すなわち配列番号1で表わされる塩基配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましく95%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAの相補鎖がハイブリダイズし、それより相同性が低い核酸の相補鎖がハイブリダイズしない条件が挙げられる。より具体的には、ナトリウム塩濃度が15〜750mM、好ましくは50〜750mM、より好ましくは300〜750mM、温度が25〜70℃、好ましくは50〜70℃、より好ましくは55〜65℃、ホルムアミド濃度が0〜50%、好ましくは20〜50%、より好ましくは35〜45%での条件をいう。さらに、ストリンジェントな条件では、ハイブリダイゼーション後のフィルターの洗浄条件が、通常はナトリウム塩濃度が15〜600mM、好ましくは50〜600mM、より好ましくは300〜600mM、温度が50〜70℃、好ましくは55〜70℃、より好ましくは60〜65℃である。なお、以上のことから、さらなる他の一態様として、配列番号1で表される塩基配列と80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましく95%以上の同一性を有する塩基配列を有し、XI活性を有するタンパク質をコードするDNAを含む遺伝子が挙げられる。
上記各種態様のXI遺伝子は、例えば、配列番号1等の配列に基づいて設計したプライマーを用いて、所定の酵母から抽出したDNA、各種cDNAライブラリー又はゲノムDNAライブラリー等由来の核酸を鋳型としたPCR増幅を行うことにより、核酸断片として得ることができる。また、上記ライブラリー等由来の核酸を鋳型とし、XI遺伝子の一部であるDNA断片をプローブとしてハイブリダイゼーションを行うことにより、核酸断片として得ることができる。あるいはXI遺伝子は、化学合成法等の当技術分野で公知の各種の核酸配列合成法によって、核酸断片として合成してもよい。
また、上記各種態様のXI遺伝子は、例えば、配列番号2で表されるアミノ酸の配列をコードするDNA(たとえば、配列番号1で表される塩基配列からなる)を、慣用の突然変異誘発法、部位特異的変異法、エラープローンPCRを用いた分子進化的手法等によって改変することによって取得することができる。このような手法としては、Kunkel法又は Gapped duplex法等の公知手法又はこれに準ずる方法が挙げられ、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant-K(TAKARA社製)やMutant-G(TAKARA社製))などを用いて、あるいは、TAKARA社のLA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキットを用いて変異が導入される。
そのほか、当業者であれば、Molecular Cloning(Sambrook, J. et al., Molecular Cloning :a Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 10 Skyline Drive Plainview, NY (1989))等を参照することにより、例えば、配列番号1又は2等の公知配列に基づいて、各種態様のXI遺伝子を取得することができる。
また、XRをコードする遺伝子(XR遺伝子)及びXDHをコードする遺伝子(XDH遺伝子)によってキシロース資化能力を付与する場合も、同様に、これらの遺伝子はそれぞれ、動物、植物、真菌(酵母、カビ等)、細菌などいずれの生物に由来するものであってもよいが、酵母での発現を考慮すると真核生物由来であることが好ましく、より好ましくは真菌由来であり、さらに好ましくは酵母由来である。こうした遺伝子に関する情報は、当業者であれば、NCBI等のHPにアクセスすることにより適宜入手できる。これらXR遺伝子及びXDH遺伝子についても、XI遺伝子と同様、公知のアミノ酸配列や塩基配列と一定の関係を有し、XR活性又はXDH活性を有するタンパク質をコードする種々の態様の遺伝子を利用できる。
XI遺伝子、XR遺伝子及びXDH遺伝子は、宿主酵母の染色体外において保持されていてもよいが、好ましくは染色体上に保持されている。また、高いキシロース資化能力を発揮するために、例えば、上記(1)及び(2)の各態様においてそれぞれ必要な遺伝子が複数コピー保持されていることが好ましい。コピー数は特に限定しないが、2以上であることが好ましい。
導入される遺伝子は、誘導的プロモーターの制御下に連結されていてもよいが、構成的プロモーターの制御下に連結されていることが好ましい。酵母における構成的プロモーターとしては、3−ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)プロモーター、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)プロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼ1(ADH1)プロモーター、ヒスチジン栄養性機能遺伝子(HIS3)プロモーター、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ3(TDH3)プロモーターチトクロームbc1コンプレックス(CYC1)プロモーター及び高浸透圧応答7遺伝子(HOR7)プロモーター及びこれらの改変体が挙げられる。
なお、宿主酵母が本来的にキシロース資化能力を有する酵母であっても、当該能力を改善等するために、上記(1)及び/又は(2)の態様で遺伝的改変を施してもよい。
(アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子)
本発明で用いるアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ
(EC1.2.1.10、以下、単にACDHという。)は、アセトアルデヒドから水素原子を脱離してアセチルCoAを生成する反応及びその逆反応を触媒する酵素である。ACDHは、ホスホケトラーゼ経路(ヘテロ乳酸発酵経路)を備える生物が備えることができる。ACDHをコードする遺伝子(ACDH遺伝子)の発現を増強するには、形質転換の宿主が本来的にACDH遺伝子を有する場合には、当該ACDH遺伝子や、当該ACDH遺伝子以外のACDH遺伝子を対象として増強してもよいし、ACDH遺伝子を有しない宿主酵母においては、他家又は異種生物由来のACDH遺伝子を対象とする。増強対象とするACDH遺伝子は、ホスホケトラーゼ経路(ヘテロ乳酸発酵経路)を有している生物由来のACDH遺伝子であればよく、こうした遺伝子に関する情報は、当業者であれば、NCBI等のHPにアクセスすることにより適宜入手できる。好ましくは、ホスホケトラーゼ経路が強力な生物に由来するACDH遺伝子を用いる。典型的には、各種公知の乳酸菌などの乳酸生産微生物に由来するACDH遺伝子が挙げられる。乳酸生産微生物としては、Bifidobacterium adolescentis、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium longum等のBifidobacterium属のほか、Lactococcus属、Streptococcus属、Lactobasillus属、Leuconostoc属、Pedicoccus属等が挙げられる。ACDH遺伝子としては、例えば、Bifidobacterium adolescentisが保持するACDH遺伝子(GenBank アクセッション番号:AP009256,REAGION419606..422338)(配列番号3,4)が挙げられる。ACDH遺伝子についても、XI遺伝子と同様、公知のアミノ酸配列や塩基配列と一定の関係を有し、ACDH活性を有するタンパク質をコードする種々の態様の遺伝子を利用できる。
ACDH遺伝子の発現が増強されている態様としては、内因性のACDH遺伝子を有する宿主酵母にあっては、当該内因性のACDH遺伝子がより強力なプロモーター(例えば、構成的プロモーター)の制御下に連結された態様が挙げられる。また、追加的に内因性及び/又は外因性のACDH遺伝子が導入されている態様が挙げられる。追加的に導入されたACDH遺伝子は好ましくは構成的プロモーターなど強力なプロモーターで作動可能に保持されている。また、内因性のACDH遺伝子を有しない宿主酵母にあっては、追加的に外因性のACDH遺伝子が導入されている態様が挙げられる。追加的に導入されたACDH遺伝子は好ましくは構成的プロモーターなど強力なプロモーターで作動可能に保持されている。構成的プロモーターは、既に説明したXI遺伝子等に利用可能なものを同様に利用できる。
ACDH遺伝子の発現が増強されている態様としては、ACDH遺伝子が複数コピー発現可能に保持されている態様が挙げられる。コピー数は特に限定しないが、2以上であることが好ましい。
(キシルロースをペントースリン酸経路で代謝する経路を構成する酵素群から選択される酵素をコードする遺伝子)
本発明の形質転換酵母は、キシルロースをペントースリン酸経路(PPP)の非酸化過程で代謝する経路を構成する酵素群(Xylu−PPP資化酵素群)から選択される酵素をコードする遺伝子(Xylu−PPP遺伝子)の発現が増強されていることが好ましい。Xylu−PPP資化酵素群は、キシルロースからペントースリン酸経路の最終化合物であるグリセルアルデヒド−3−リン酸とフルクトース−6−リン酸に至る経路に関与する一連の酵素を含んでいる。かかる酵素群に含まれるのは、キシルロキナーゼ、リブロース5−リン酸エピメラーゼ、リボース5−リン酸イソメラーゼ、トランスアルドラーゼ及びトランスケトラーゼが挙げられる。Xylu−PPP遺伝子としては、これらをコードする遺伝子であればよく、こうした遺伝子を1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
キシルロキナーゼ、リブロース5−リン酸エピメラーゼ(PRE)、リボース5−リン酸イソメラーゼ(RKI)、トランスアルドラーゼ(TAL)及びトランスケトラーゼ(TKL)は、図1に示すような反応を触媒する酵素である。なお、図1では、これらの酵素としてそれぞれ典型的な酵素名を酵素の略号と番号を付して記載している。
Xylu−PPP遺伝子としては、キシルロキナーゼ、トランスアルドラーゼ、トランスケトラーゼ、リブロース5−リン酸エピメラーゼ及びリボース5−リン酸イソメラーゼから選択される1種又は2種以上であることが好ましい。より好ましくは、3種以上であり、さらに好ましくは全種(4種類)である。
Xylu−PPP遺伝子のうち、キシルロキナーゼ(XK)遺伝子は、キシルロースを資化する細菌や酵母など多くの微生物が保持している。XK遺伝子は、特に由来生物を限定せずに用いることができる。また、XK遺伝子に関する情報は、NCBIのHP等の検索により適宜入手できる。好ましくは、酵母、乳酸菌、大腸菌、植などに由来するXK遺伝子が挙げられる。XK遺伝子としては、例えば、S. cerevisiae S288C 株由来のXK遺伝子であるXKS1(GeneBank:X61377)(CDSのコード領域の塩基配列及びアミノ酸配列:配列番号5,6)が挙げられる。
トランスアルドラーゼ(TAL)遺伝子、トランスケトラーゼ(TAK)遺伝子、リブロース5リン酸エピメラーゼ(RPE)遺伝子、リボース5リン酸ケトイソメラーゼ(RKI)遺伝子は、ペントースリン酸経路を備える多くの生物であれば保持している。例えば、S.cerevisiaeなど汎用酵母もこれらの遺伝子を保持している。これらの遺伝子は、特に由来生物を限定せずに用いることができ、これらの遺伝子に関する情報は、NCBI等のHPにアクセスすることにより適宜入手できる。好ましくは、酵母由来、より好ましくは宿主酵母と同一の属、さらに好ましくは宿主酵母と同一種に由来の各遺伝子が挙げられる。TAL遺伝子としては、TAL1遺伝子、TKL遺伝子としては、TKL1遺伝子、TKL2遺伝子、RPE遺伝子としては、RPE1遺伝子、RKI遺伝子としてはRKI1遺伝子を好ましく用いることができる。例えば、これら遺伝子としては、S. cerevisiae S288 株由来のTAL1遺伝子であるTAL1遺伝子(GeneBank:U19102)、(CDSのコード領域の塩基配列(相補鎖)及びアミノ酸配列:配列番号7、8)、S. cerevisiae S288 株由来のTKL1遺伝子(GeneBank:X73224)(CDSのコード領域の塩基配列及びアミノ酸配列:配列番号9,10)、S. cerevisiae S288 株由来のRPE1遺伝子(Genebank:X83571)(CDSのコード領域の塩基配列及びアミノ酸配列:配列番号11、12)、S. cerevisiae S288 株由来のRKI1遺伝子(GeneBank:Z75003)(CDSのコード領域の塩基配列(相補鎖)及びアミノ酸配列:配列番号13、14)が挙げられる。なお、
Xylu−PPP遺伝子の各遺伝子についても、XI遺伝子と同様、公知のアミノ酸配列や塩基配列と一定の関係を有し、各酵素活性を有するタンパク質をコードする種々の態様の遺伝子を利用できる。
Xylu−PPP遺伝子の発現が増強されている態様としては、内因性のXylu−PPP遺伝子有する宿主酵母にあっては、当該内因性のXylu−PPP遺伝子がより強力なプロモーター(例えば、構成的プロモーター)の制御下に連結された態様が挙げられる。また、追加的に内因性及び/又は外因性のXylu−PPP遺伝子導入されている態様が挙げられる。追加的に導入されたXylu−PPP遺伝子は好ましくは構成的プロモーターなど強力なプロモーターで作動可能に保持されている。また、内因性のXylu−PPP遺伝子を有しない宿主酵母にあっては、外因性のXylu−PPP遺伝子が導入されている態様が挙げられる。導入されたXylu−PPP遺伝子は好ましくは構成的プロモーターなど強力なプロモーターで作動可能に保持されている。構成的プロモーターは、既に説明したXI遺伝子等に利用可能なものを同様に利用できる。
Xylu−PPP遺伝子の発現が増強されている態様としては、Xylu−PPP遺伝子が複数コピー発現可能に保持されている態様が挙げられる。コピー数は特に限定しないが、2以上であることが好ましい。
Xylu−PPP遺伝子の発現が増強されている態様は、形質転換酵母が上記各種態様を保持しているかどうかで検出できるほか、形質転換酵母におけるXylu−PPP遺伝子によってコードされるタンパク質の発現量、当該タンパク質のmRNA発現量、形質転換酵母が産生したタンパク質の活性等のいずれかが、Xylu−PPP遺伝子の増強前よりも増加しているかどうかで評価することもできる。増加の程度は、好ましくは、こうした発現量等が発現増強前の10%以上であり、より好ましくは30%以上であり、さらに好ましくは50%以下であり、一層好ましくは70%以上である。
(アルドースリダクターゼをコードする遺伝子)
本発明の形質転換酵母においては、アルドースリダクターゼ(AR)をコードする遺伝子(AR遺伝子)の発現が抑制されていることが好ましい。ARは、アルドースを還元する酵素である。本発明で抑制対象とするARは、非特異的にキシロースをキシリトールに変換するARである。AR遺伝子としては、例えば、宿主酵母が本来的に保持する(内因性の)ARをコードする遺伝子が挙げられる。かかる遺伝子に関する情報は、NCBI等のHPにアクセスすることにより取得することができる。例えば、S. cerevisiaeにおいては、GRE3遺伝子(GenBank アクセッション番号:DQ331819)(CDSのコード領域の塩基配列及びアミノ酸配列:配列番号15、16)が挙げられる。また、AR遺伝子についても、XI遺伝子と同様、公知のアミノ酸配列や塩基配列と一定の関係を有し、質的に同一の酵素活性を有するタンパク質をコードする種々の態様の遺伝子を抑制対象とすることができる。
AR遺伝子の発現が抑制されている態様としては、mRNAへの転写抑制、タンパク質への翻訳抑制及びキシロースをキシリトールに変換に障害が生じるという点において不完全なタンパク質の発現などの態様が挙げられる。これらのいずれの態様も、内因性のAR遺伝子のプロモーター領域やコード領域等に対して変異(1個又は複数個のヌクレオチドの欠失、挿入、置換、付加)を導入したり他の遺伝子を導入したりするなどすることによって具現化が可能である。
AR遺伝子の発現が抑制されているかどうかは、形質転換酵母が上記各種態様を保持しているかどうかで検出できるほか、形質転換酵母における活性のあるARタンパク質の発現量、活性のあるARをコードするmRNA量、及び形質転換酵母が産生したARタンパク質を用いた酵素活性(キシロースからキシリトールへの変換量等)のいずれかが、AR遺伝子の発現抑制前よりも低下しているかどうかで評価することができる。抑制の程度は、好ましくは、こうした発現量等が発現抑制前の70%以下であり、より好ましくは50%以下であり、さらに好ましくは30%以下であり、一層好ましくは10%以下である。
(宿主)
本発明の形質転換酵母の宿主は、特に限定されないで公知の各種酵母を利用できる。後述するエタノール発酵等を考慮すると、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)等のサッカロマイセス属の酵母、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等のシゾサッカロマイセス属の酵母、キャンディダ・シェハーテ(Candida shehatae)等のキャンディダ属の酵母、ピヒア・スティピティス(Pichia stipitis)等のピヒア属の酵母、ハンセヌラ(Hansenula)属の酵母、クロッケラ属(Klocckera)の酵母、スワニオマイセス属(Schwanniomyces)の酵母及びヤロイア属(Yarrowia)の酵母、トリコスポロン(Trichosporon)属の酵母、ブレタノマイセス(Brettanomyces)属の酵母、パチソレン(Pachysolen)属の酵母、ヤマダジマ(Yamadazyma)属の酵母、クルイベロマイセス・マーキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)、クルイベロマイセス・ラクティス(Kluveromyces lactis)等のクルイベロマイセス属の酵母が挙げられる。なかでも、工業的利用性等の観点からサッカロマイセス属酵母が好ましい。なかでも、サッカロマイセス・セレビジエが好ましい。
なお、本発明の形質転換酵母は、上記各種態様で遺伝子を保持又は破壊等されているほか、セルラーゼやヘミセルラーゼを細胞表層あるいは細胞外に分泌発現するものであってもよい。例えば、エンドグルカナーゼ、セロビオヒドロラーゼ、β−グルコシダーゼなどの各種セルラーゼのほか、キシラナーゼやヘミセルラーゼ等のその他のバイオマス分解酵素も挙げられる。こうしたタンパク質を発現させることで、リグノセルロースに由来するリグニン以外の糖類を効果的に利用できるようになる。
さらに、本発明の形質転換酵母は、後段で説明するように発酵により所望の有用物質を生産可能に改変が施されていてもよい。酵母は通常嫌気性発酵によりエタノールを生産するが、適宜遺伝子工学的な改変等により他の有用物質を生産可能な形質転換酵母であってもよい。本発明の形質転換酵母は、例えば、乳酸などの有機酸を生産する酵母(特開2003−259878号公報、特開2006−006271号公報、特開2006−20602号公報、特開2006−75133号公報、特開2006−2966377号公報、特開2007−89466号公報に記載)等における遺伝的改変等を備えることができる。
(形質転換酵母の作製)
本発明の形質転換酵母を得るには、これらの各遺伝子(XI遺伝子、XR遺伝子、XDH遺伝子、Xylu-PPP遺伝子)を発現可能に保持する組換えベクターを用いて宿主酵母を形質転換する。発現ベクターは、典型的には、上記各遺伝子の発現を目的とした組換えベクターとして各種形態を採ることができる。
また、AR遺伝子の発現を抑制するためには、宿主酵染色体上のAR遺伝子又はその近傍との相同領域を保持する遺伝子破壊あるいは遺伝子置換用の組換えベクターを用いて宿主酵母を形質転換する。AR遺伝子の発現の抑制と同時に増強等するべき上記各遺伝子を染色体に導入して遺伝子置換ベクターとしてもよい。
組換えベクターは、例えば、これら遺伝子など所望の遺伝子組み換えのためのDNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。プロモーターとしては、既に説明したほか、GALプロモーター等の誘導的プロモーターが挙げられる。このほか、組換えベクターは、ターミネーター、エンハンサー、複製開始点(ori)、マーカー等を備えることができ、これらの要素が必要に応じ適宜選択される。また、組換えベクターが、遺伝子置換、遺伝子破壊等、染色体への所望のDNA断片の組み込みを意図する場合は、染色体上の所定の領域との相同領域を有している。相同領域は、所望のDNA断片を組み込む領域に応じて適宜選択される。本発明で用いる組換えベクター材料としては、商業的に入手可能な酵母発現ベクターから適宜選択して用いることができる。
なお、こうした組換えベクターの作製、組換え体宿主としての酵母等の取り扱いに必要な一般的な操作は、当業者間で通常行われているものであり、たとえば、T.Maniatis,J. Sambrookらの実験書(Molecular Cloning, A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、1982,1989、2001)等を適宜参照することにより当業者であれば実施することができる。
本発明の形質転換酵母は、上記のような組換えベクターを酵母に導入して作製することができる。ベクターの導入方法としては、従来公知の各種方法、例えば、リン酸カルシウム法、トランスフォーメーション法や、トランスフェクション法、接合法、プロトプラスト法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、酢酸リチウム法または他の方法が挙げられる。このような手法は、上記した実験書等に記載される。ベクターを導入した酵母につき、マーカー遺伝子を用いた選抜及び活性発現による選抜により本発明の形質転換酵母を得ることができる。
(有用物質を製造する方法)
本発明の有用物質の製造方法は、本発明の形質転換酵母を、キシロースを含有する培地で発酵することにより有用物質を生産する発酵工程を備えることができる。本発明の製造方法によると、本発明の形質転換酵母は良好なキシロース資化能力と発酵能力を有しているため、炭素源としてキシロースを含有していても、それを有効利用して、有用物質に変換することができる。したがって、グルコース及びキシロースを含有するリグノセルロースの糖化物を培地に含む場合であっても、こうしたバイオマス炭素源を有効利用して、有用物質に変換できる。
有用物質としては特に限定しないが、酵母が通常グルコースを利用して生産可能なものであればよい。有用物質は、酵母におけるグルコースからの代謝系の1種又は2種以上の酵素を遺伝子組換えにより置換、追加等して本来の代謝物でない化合物であってもよい。具体的には、エタノールなどの低級アルコール、乳酸などの有機酸の他、イソプレノド合成経路の追加によるファインケミカル(コエンザイムQ10、ビタミン及びその原料等)、解糖系の改変によるグリセリン、プラスチック・化成品原料など、バイオリファイナリー技術が対象とする材料が挙げられる。酵母は、アルコール発酵能が高いため、本形質転換酵母は、キシロース含有炭素源を培地に用いてエタノールを効率的に生産することができる。また、アルコール発酵能力が高い酵母は、その解糖系を改変して他の有機酸等の有用物質を生産する場合にも、当該有用物質の生産能力も高いと考えられる。
発酵工程では、上記のとおりキシロースを含有する培地を用いる。培地は、グルコースを含むことができ、好ましくは、リグノセルロースに由来するグルコースとキシロースとを含有している。
発酵工程では、酵母に一般的に適用される培養条件を適宜選択して用いることができる。典型的には、発酵のための培養は、静置培養、振とう培養または通気攪拌培養等を用いることができる。通気条件は、嫌気条件下、微好気条件下及び好気条件等、適宜選択することができる。培養温度も、特に限定しないが、25℃〜55℃等の範囲とすることができる。また、培養時間も必要に応じて設定されるが、数時間〜150時間程度とすることができる。また、pHの調整は、無機あるいは有機酸、アルカリ溶液等を用いて行うことができる。培養中は、必要に応じてアンピシリン、テトラサイクリンなどの抗生物質を培地に添加することができる。
発酵工程の実施により、用いた本発明の形質転換酵母が有している有用物質生産能力に応じて有用物質が生産される。例えば、本発明の形質転換酵母がエタノール生産能力を有している場合には、エタノールであり、乳酸を生産可能に改変されている場合には、乳酸等となる。発酵終了後、培養液から有用物質含有画分を回収する工程、さらにこれを精製又は濃縮する工程を実施することもできる。回収工程や精製等の工程は有用物質の種類等に応じて適宜選択される。
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下に述べる遺伝子組換え操作はMolecular Cloning: A Laboratory Manual (T. Maniatis, et al., Cold Spring Harbor Laboratory) に従い行った。なお、以下の実施例で用いる培地を表1にまとめて示す。
(キシロース代謝酵素遺伝子を有する酵母Saccharomyces cerevisiaeの作製)
(1)XK遺伝子導入用ベクター
酵母S. cerevisiae由来のキシルロキナーゼ(XK)遺伝子の酵母導入用ベクター、pXhisHph-HOR7p-ScXKを作製した(図2)。このベクターには、5’側にHOR7プロモーター、3’側にTDH3ターミネーターが付加された、S. cerevisiae NBRC304 株由来のXK遺伝子であるXKS1(genebank:X61377)をふくむ遺伝子配列、酵母ゲノム上への相同組換え領域として、ヒスチジン合成酵素(HIS3)遺伝子の上流約500bpの領域の遺伝子配列(HIS3U)、及びその下流の約500bpの領域の遺伝子配列(HIS3D)、並びにマーカーとして、5’側にTDH2プロモーター、3’側にCYC1tターミネーターが付加された、ハイグロマイシンフォスフォトランスフェラーゼ(hph)遺伝子を含む遺伝子配列が含まれるように構築した。
(2)XI遺伝子導入用ベクター
Piromyces sp. E2由来のキシロースイソメラーゼ(XI)遺伝子の酵母導入用ベクター、pXLG-HOR7p-PsE2XIを作製した(図3)。このベクターには、5’側にHOR7プロモーター、3’側にTDH3ターミネーターが付加された、Piromyces sp. E2由来のXI遺伝子であるPiXI(genebank:AJ249909)を含む遺伝子配列、酵母ゲノム上への相同組換え領域として、ロイシン合成酵素(LEU2)遺伝子の5’領域約500bpの遺伝子配列(LEU2U)、及びその下流の約500bpの領域の遺伝子配列(LEU2D)、並びにマーカーとして、5’側にTDH2プロモーター、3’側にCYC1ターミネーターが付加された、アミノグリコシドフォスフォトランスフェラーゼ(G418)遺伝子を含む遺伝子配列が含まれるように構築した。
(3)TAL1、TKL1遺伝子導入用ベクター
S. cerevisiae由来のトランスアルドラーゼ1(TAL1)遺伝子およびトランスケトラーゼ1(TKL1)遺伝子の酵母導入用ベクター、pXAd3H-HOR7p-ScTAL1-ScTKL1を作製した(図4)。このベクターに、5’側にHOR7プロモーター、3’側にTDH3ターミネーターが付加された、S. cerevisiae S288 株由来のTAL1遺伝子であるTAL1(genebank:U19102)をふくむ遺伝子配列、および5’側にHOR7プロモーター、3’側にTDH3ターミネーターが付加された、S. cerevisiae S288 株由来のTKL1遺伝子であるTKL1(genebank:X73224)をふくむ遺伝子配列、酵母ゲノム上への相同組換え領域として、アルコールデヒドロゲナーゼ3(ADH3)遺伝子の上流約500bpの領域の遺伝子配列(ADH3U)、及びその下流約500bpの領域の遺伝子配列(ADH3D)、並びにマーカーとして、ヒスチジン合成酵素(HIS3)遺伝子を含む遺伝子配列(HIS3 marker)が含まれるように構築した。
(4)RPE1、RKI1遺伝子導入用ベクター
S. cerevisiae由来のリブロースリン酸エピメラーゼ1(RPE1)遺伝子およびリボースリン酸ケトイソメラーゼ(RKI1)遺伝子の酵母導入用ベクター、pXGr3L-HOR7p-ScRPE1-ScRKI1を作製した(図5)。このベクターに、5’側にHOR7プロモーター、3’側にTDH3ターミネーターが付加された、S. cerevisiae S288 株由来のRPE1遺伝子であるRPE1(genebank:X83571)をふくむ遺伝子配列、および5’側にHOR7プロモーター、3’側にTDH3ターミネーターが付加された、S. cerevisiae S288 株由来のRKI1遺伝子(genebank:Z75003)をふくむ遺伝子配列、酵母ゲノム上への相同組換えおよびアルドースレダクターゼ3(GRE3)遺伝子を破壊するための領域として、GRE3遺伝子の上流約1000bpの遺伝子配列(GRE3U)、GRE3遺伝子の3’領域約500bpを含む約800bpの領域の遺伝子配列(GRE3D)、並びにマーカーとして、ロイシン合成酵素(LEU2)遺伝子を含む遺伝子配列(LEU2 marker)が含まれるように構築した。
(5)XI遺伝子導入用ベクター(マルチコピーインテグレーション)
Piromyces sp. E2由来のXI遺伝子を染色体上に多コピー導入することが可能なベクター、pRS524-HOR7p-PiXIを作製した(図6)。このベクターには、5’側にHOR7プロモーター、3’側にTDH3ターミネーターが付加された、Piromyces sp. E2由来のXI遺伝子であるPiXIを含む遺伝子配列、酵母ゲノム上への相同組換え領域として、rRNA遺伝子(rDNA)との相同配列であるR45およびR67の遺伝子配列、並びにマーカーとして、プロモーター部分を欠失して発現量を低下させたTRP1d markerの遺伝子配列が含まれるように構築した。R45およびR67の遺伝子配列により、PiXIを含む遺伝子配列が第12番染色体上に多コピー導入される。さらにTRP1d markerは多コピーで染色体上に導入された場合にはじめてマーカーとして機能する。
(6)アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化)遺伝子導入用ベクター
Bifidobacterium adolescentis由来のアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化)遺伝子BaADH2の酵母導入用ベクター、pXXU-HOR7p-BaADH2を作製した(図7)。このベクターは5’側にHOR7プロモーター、3’側にTDH3ターミネーターが付加されたB. adolescentis由来のBaADH2(genebank:NZ_BAAD01000012)を含む遺伝子配列、酵母ゲノム上への相同組換え領域として、ヘキソーストランスポーター3(HXT3)遺伝子の上流約500bpの領域の遺伝子配列(HXT3U)、及びその下流約500bpの領域の遺伝子配列(HXT3D)、マーカーとして、ウラシル合成酵素(URA3)遺伝子を含む遺伝子配列が含まれるよう構築した。
(7)キシロースを資化することができる酵母株の作製
図2〜図5に示すベクターを用いてキシロースを資化することができる酵母株を作製した。酵母の形質転換はFrozen-EZ Yeast Transformation II(ZYMO RESEARCH)を用い、添付のプロトコルに従って行った。まず、図2に示すpXhisHph-HOR7p-ScXKベクターを制限酵素Sse8387Iで消化した断片を用いて、宿主である酵母S. cerevisiae MT8-1株の形質転換を行い、YPD+HYG寒天培地に塗布し、生育したコロニーを新たなYPD+HYG寒天培地に画線培養してコロニーを純化した。純化された選択株をIX100株と命名した。つぎに、図3に示すpXLG-HOR7p-PsE2XIベクターを制限酵素Sse8387Iで消化した断片を用いて、IX100株の形質転換を行い、YPD+G418寒天培地に塗布し、生育したコロニーを新たなYPD+G418寒天培地に画線培養してコロニーを純化した。純化された選択株をIX200と命名した。
つぎに、図4に示すpXAd3H-HOR7p-ScTAL1-ScTKL1ベクターを制限酵素Sse8387Iで消化した断片を用いて、IX200株の形質転換を行い、SD-H寒天培地に塗布し、生育したコロニーを新たなSD-H寒天培地に画線培養してコロニーを純化した。純化された選択株をIX400株と命名した。つぎに、図5に示すpXGr3L-HOR7p-ScRPE1-ScRKI1ベクターを制限酵素Sse8387Iで消化した断片を用いて、IX400株の形質転換を行い、SD-L寒天培地に塗布し、生育したコロニーを新たなSD-L寒天培地に画線培養してコロニーを純化した。純化された選択株をIX700株と命名した。
(8)XI遺伝子マルチコピーインテグレーション株の作製
図6に示すpRS524-HOR7p-PiXIを制限酵素FseIで消化した断片を用いて、IX700株の形質転換を行い、SD-W寒天培地に塗布し、生育したコロニーを新たなSD-W寒天培地に画線培養してコロニーを純化した。純化された選択株をIX700M株と命名した。さらに、IX700M株を、キシロースを炭素源としたSX-HLW寒天培地に塗布し、30℃で48時間培養したところ、菌体の増殖が確認できた。
(9)アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化)遺伝子過剰発現株の作製
IX700M株にpXXU-HOR7p-BaADH2ベクターを導入した株をBaADH2/IX700M株とした。またコントロールとするためにIX700M株にURA3遺伝子をインテグレーションしてウラシル要求性を相補した株をIX700MUとした。
(10)導入遺伝子の発現量の確認
作製した酵母株における、導入した遺伝子の発現量を以下の方法で定量し、比較した。宿主株であるMT8-1株、IX200株、IX400株およびIX700株を、それぞれSD+all培地、SD-H培地およびSD-HL培地5 mlで30℃、24時間培養した。菌体を回収し、滅菌水で洗浄後、OD600で10の濃度となるように滅菌水で懸濁した懸濁液をそれぞれ600μlずつエッペンチューブに分注し、500×gで2分間遠心して上清を除去した。回収した菌体から、YeaSter RNA Kit(ZYMO RESEARCH)を用いてtotal RNAを抽出した。さらに、抽出液中から残存DNAを除去するために、DNA-Free RNA Kit(ZYMO RESEARCH)を用いてDNAの分解、total RNAの精製を行った。精製したtotal RNA溶液は逆転写反応を行うまで−80℃のディープフリーザで保存した。
各サンプルのtotal RNA濃度を測定し、High-Capacity cDNA Reverse Transcription Kits(Applied Biosystems)を用いてtotal RNAからの逆転写反応を行った。使用したTotal RNAは0.2μgで、その他の反応液組成は添付のプロトコルに従った。逆転写反応はGeneAmp PCR system 9700(Applied Biosystems)を用い、反応時間及び温度は添付のプロトコルに従って設定し、反応を行った。反応後のサンプルは使用するまで−20℃で保存した。定量する遺伝子は、PiXI、XKS1、TAL1、TKL1、RPE1、RKI1、GRE3とし、またハウスキーピング遺伝子としてTUB1とUBC6を選択した。Real-time 定量PCR用の反応試薬は、Power SYBR Green PCR Msater Mix(Applied Biosystems)を用い、反応液組成は添付のプロトコルに従った。用いたプライマーの配列(配列番号17〜34)は表2にまとめて示す。
Real-time 定量PCRの解析結果から、各株における各遺伝子の発現量の相対比較を行った(図8)。この際、TUB1遺伝子とUBC6遺伝子を内部コントロールとして用い、サンプル間の発現量比の修正を行った。図8Aおよび図8Bから、XKS1遺伝子およびPiXI遺伝子は、遺伝子を導入した全ての株で発現を確認した。TAL1遺伝子およびTKL1遺伝子はIX400株とIX700株において、MT8-1株やIX200株よりも発現量が向上していることを確認した(図8C、図8D)。さらに、図8E、図8Fから、IX700株ではRPE1遺伝子およびRKI1遺伝子が他の株と比べて高発現していることを確認した。さらに、IX700株ではGRE3遺伝子が発現していないことを確認した(図8G)。
(1)キシロースを炭素源とした増殖試験
IX700株のキシロース資化能力を評価するため、キシロースを炭素源とした培地での増殖試験を行った。MT8-1株とIX700株をそれぞれSD+all培地およびSD-HL培地5 mlで30℃、24時間培養し、L字型試験管に調製したSX+all培地およびSX-HL培地5 mlに、酵母培養液を終濃度がOD600で0.1となるようにそれぞれ加え、増殖試験を開始した。増殖試験はバイオフォトレコーダーTVS062CA(ADVANTEC)を用いて30℃、70 rpm、好気条件で行った。増殖試験の結果、IX700株はキシロースでの増殖が可能であることを確認した(図9)。しかしその増殖速度は非常に遅く、十分に生育できなかった。
(2)IX700M株のキシロースを炭素源とした増殖試験
IX700M株のキシロース資化能力を評価するため、キシロースを炭素源とした培地での増殖試験を行った。IX700株とIX700M株をそれぞれSD-HL培地、S X-HLW培地5mlで30℃、24時間培養し、L字型試験管に調製したSX-HL培地、SX-HLW培地5mlに、酵母培養液を終濃度がOD600で0.1となるようにそれぞれ加え、増殖試験を開始した。増殖試験はバイオフォトレコーダーTVS062CA(ADVANTEC)を用いて30℃、70 rpm、好気条件で行った。増殖試験の結果、IX700M株はIX700株と比べてキシロースでの増殖速度が大幅に向上していることを確認した。(図10)。
(3)IX700M株のキシロースを炭素源とした発酵試験
IX700M株はキシロースを炭素源とした好気での増殖能力が優れていたため、IX700M株を用いてキシロースを炭素源としたエタノール発酵を行った。まず、IX700M株をSX-HLW培地5 mlで30℃、24時間培養した。次に、培養液をバッフル付き三角フラスコに調製した新しいSX-HLW培地250 mlに全量添加し、30℃、80 rpmで48時間、好気的に培養を行った。培養後、培養液を1000×gで5分遠心して菌体を回収した。培養液中の基質の持ち込みを抑えるため、回収した菌体を滅菌水で再懸濁し、1000×g、5分遠心を行い菌体を回収した。この洗浄操作は2回行い、洗浄後の菌体を滅菌水に懸濁した。
つぎに、通気口と逆止弁付き排気口を供えた100mlの密封ボトルに、キシロースを5%含む発酵用の培地であるSX5-HLW培地を調製し、発酵培地の最終OD600が10となるように酵母懸濁液を加えて、全量を40 mlに調製した。ボトルの気相を窒素ガスで1分間置換した後、30℃、400 rpmで撹拌しながら発酵を行った。任意の時間でサンプリングを行って発酵培地上清を回収し、またサンプリング毎に気相の窒素ガス置換を行った。回収した発酵培地上清を用いて、液体クロマトグラフィーProminence(島津製作所)により基質および生産物の分析を行った。カラムはShim-pack SPR-Pbカラム(島津製作所)を80度で使用し、検出器は示差屈折率検出器RID-10A(島津製作所)を用いた。移動相は水を用い、流速0.8ml/minで送液した。図11に発酵培地中のキシロースおよび生産物の経時変化を示す。
図11に示すように、時間の経過と共にキシロースが消費され、エタノールが生成したことから、IX700M株はキシロースをエタノールに変換することができることを確認した。
(4)BaADH2/IX700M株のキシロースを炭素源とした発酵試験
BaADH2/IX700M株およびIX700MU株をもちいて、上記(3)と同様の方法で100mlの密封ボトル中でのキシロース発酵試験を行った結果を図12および表3に示す。BaADH2遺伝子を導入することにより、コントロールのIX700MU株に比べてエタノール収率は10%向上し、キシロース消費速度は25%向上した。また副産物のグリセロール収率はIX700MU株に比べて38%減少した。
配列番号17〜34:プライマー

Claims (7)

  1. キシロースイソメラーゼをコードする遺伝子を保持してキシロース資化能力を有し、
    キシルロース5リン酸をペントースリン酸経路で代謝する経路を構成する酵素群から選択される1種又は2種以上の酵素をコードする1種又は2種以上の遺伝子の発現が増強され前記経路が増強されるとともに、
    アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子の発現が増強されている、
    形質転換酵母。
  2. キシルロキナーゼ、トランスアルドラーゼ、トランスケトラーゼ、リブロース−5−リン酸エピメラーゼ及びリボース−5−リン酸イソメラーゼをコードする遺伝子の発現がそれぞれ増強されている、請求項に記載の形質転換酵母。
  3. アルドースリダクターゼをコードする遺伝子の発現が抑制されている、請求項1又は2に記載の酵母。
  4. 前記アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、Bifidobacterium adolescentis由来である請求項1〜のいずれかに記載の酵母。
  5. 前記酵母は、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)、キャンディダ属(Candida)、ピキア属(Pichia)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)、ハンセヌラ属(Hancenula)からなる群から選択される属に属する酵母である、請求項1〜のいずれかに記載の形質転換酵母。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の形質転換酵母の酵母を、キシロースを含有する培地を用いて発酵することにより、有用物質を生産する方法。
  7. 前記有用物質は、エタノール、乳酸、酢酸、1,3−プロパン−ジオール、プロパノール、ブタノール、コハク酸、エチレン及びグリセロールからなる群から選択される、請求項に記載の生産方法。
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