JP5850418B2 - キシロース代謝改変による効果的なエタノール生産法 - Google Patents

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Description

本発明は、キシロース発酵能が付与され、さらに糖代謝能が改変されている、キシロース発酵速度が速く、かつキシロースからエタノールを高収率生産できる遺伝子組換え酵母、およびそれを用いたキシロースやキシロースを含む糖化液からエタノールを高効率生産する方法に関するものである。
近年、バイオエタノールは地球温暖化対策や化石資源代替のために諸外国で需要が急増している。そのために、食料と競合せず、原料が安価なセルロース系バイオマスからの効果的なエタノール生産技術の確立が望まれている。バイオエタノールの生産は、古くから高い発酵効率をもつ酵母(Saccharomyces cerevisiae)を用いて行われてきたが、1970年代にエタノール生産菌であるザイモモナス(Zymomonas mobilis)に関する研究が盛んに行われた。しかしながら、もともとエタノール生産性の高いS. cerevisiaeやZ. mobilisは、五炭糖であるキシロースやアラビノースを利用することができない。また、ザイモモナスは糖の利用がさらに限定的であり、野性型ではグルコース、フルクトース、スクロースしか利用することができない。酵母へのキシロース発酵性の付与に関しては、Purdue大学のHo博士らのグループ(非特許文献1)やLund大学のHahn-Haegerdal博士らのグループ(非特許文献2)が報告している。ザイモモナスへのキシロース発酵性の付与に関しては、米国国立再生可能エネルギー研究所(NREL)のZhang博士らのグループ(非特許文献3)が、大腸菌由来の4種のキシロース代謝系酵素遺伝子を導入することにより成功している。一方、フロリダ大学のIngram博士らは、1980年代後半からアルコール発酵能のない大腸菌(Escherichia coli)にエタノール代謝酵素をコードする遺伝子を導入して、遺伝子組換え大腸菌よるエタノール生産を報告した(非特許文献4)。しかしながら、五炭糖も発酵できる大腸菌は、エタノール以外に有機酸等も生産するため、菌体当たりの生産性はS. cerevisiaeやZ. mobilisよりも低く、エタノール耐性も劣っている。このように、いずれのエタノール発酵用微生物も、バイオエタノールを生産する上で多くのメリットを持ち合わせている反面、キシロース発酵能(エタノール収率や発酵速度)の改善など依然として多くの課題が残されており、バイオエタノールプロセスの実用化を妨げる要因となっている。
酵母(S. cerevisiae)は六炭糖(グルコース、マンノース、フルクトース等)の発酵速度が速く、エタノール耐性も優れた優秀な発酵菌であり、酸性pHでの操作も可能で雑菌汚染を防いでの大規模発酵培養に適しているため、この酵母にキシロース発酵性を付与することがバイオエタノール発酵技術を実用化する上で最適な方向と考えられる。一方、キシロース発酵性を持つ野性型酵母の探索が行われ、Pichia stipitisなど多くの酵母が見い出されている。これらのキシロース発酵性酵母は、S. cerevisiaeが保持していないキシロースレダクターゼ(以下「XR」と記載)及びキシリトールデヒドロゲナーゼ(以下「XDH」と記載)を有するために、キシロースから直接エタノールに変換することが可能である。しかしながら、これらのキシロース発酵性酵母は、エタノール耐性が低く、またキシロース代謝系はグルコースなどの糖類の存在下で抑制されるなど、実用上の欠点を多く有している。そこでキシロースからエタノールを生産するために、S. cerevisiaeにP. stipitis由来のXR及びXDHをコードするXYL1及びXYL2遺伝子に加え、S. cerevisiaeがもともと保持しているが活性の弱いキシルロキナーゼ(以下「XK」と記載)をコードするXKS1遺伝子を導入することでキシロース代謝能を獲得させる育種が進められている(特許文献1、非特許文献5を参照)。しかし、このような遺伝子組換え酵母においては、グルコースからのエタノール発酵効率と比べるとキシロースからのエタノール発酵効率は低く、特に発酵速度に関しては少なくとも3、4倍は遅くなるなど、実用化するには依然として課題が残されている。そのために、今後さらなる代謝改変や発酵能向上に関する研究を進める必要がある。キシロース発酵速度が遅い原因の1つとして、S. cerevisiaeにおけるペントースリン酸経路(PPP)における酵素活性が弱いことや、キシロース専用輸送タンパク質(トランスポーター)が存在しないことが指摘されている(非特許文献6、非特許文献7)。PPPにおいて機能している酵素はいくつか存在し、キシロースが利用できる酵母株での導入が試みられている(非特許文献6、非特許文献7)。その中でトランスアルドラーゼ(以下TAL)、トランスケトラーゼ(以下TKL)が特に重要であると考えられているが、それぞれアイソザイム(酵素としての活性はほぼ同じでありながら、アミノ酸配列がことなりタンパク質分子としては別種)が存在することはほとんど知られておらず、キシロース発酵に対する効果も検討されていない。また、キシローストランスポーターについては、他生物種由来のものも含めて探索・検討され、中にはある程度キシロース発酵の向上が見られた例もある(非特許文献6、非特許文献7)。しかしながら、実用化に結びつくような強力なキシロース輸送に関わるトランスポーターは未だ単離されておらず、特にS. cerevisiae自身が有する糖輸送体の中でキシロースに特化したものは得られていないのが現状である。
近年、バイオマス資源を発酵して得られるエタノールなどを液体燃料もしくは化学原料として利用することが、注目、検討されており、その実用化技術開発が促進されている。そのため、バイオマス資源の実用化経済性のために、上記酵母よりもエタノール生産能の高い酵母株が求められている。
特表2000-509988号公報
Ho NWら、Applied and Environmental Microbiology, Vol.64, pp.1852-1859 (1998) Eliasson Aら、Applied and Environmental Microbiology, Vol.66, pp.3381-3386 (2000) Zhang Mら、Science, Vol.267, pp.240-243 (1995) Alterthum Fら、Applied and Environmental Microbiology, Vol.55, pp.1943-1948 (1989) Matsushika Aら、Bioresource Technology, Vol.100, pp.2392-2398 (2009) Matsushika Aら、Applied Microbiology and Biotechnology, Vol.84, pp.37-53 (2009) Van Vleet JHら、Current Opinion in Biotechnology, Vol.20, pp.300-306 (2009)
従来法では、セルロース系バイオマス資源から効率的にエタノールを製造することはできなかったので、セルロース系バイオマス資源からエタノールを安価に効率的に製造することができる有効な方法が望まれていた。これは、セルロース系バイオマス、特に広葉樹や草本の糖化液に多量に含まれるキシロースを利用できる微生物が限られていること、またキシロースを高効率にエタノールへ変換する微生物が開発されていないこと、さらに従来のキシロース発酵性を付与した遺伝子組換え微生物でもキシロース発酵速度が遅いことが主な原因であった。
そこで、本発明では、遺伝子操作によってキシロース発酵性の付与および糖代謝改変を行い、キシロースからエタノールを高収率生産でき、かつキシロース発酵速度が改善された遺伝子組換え酵母の作製およびそれを用いたエタノールの効果的な生産方法を提供する。
本発明者らは、酵母染色体に効率よく組込めるキシロース代謝系酵素(XR、XDHおよびXK)発現カセットを作製し、この発現カセットを宿主酵母細胞に導入して、キシロース発酵性を付与した遺伝子組換え酵母を作製し、当該遺伝子組換え酵母がキシロースをエタノールへ高効率に生産できることを報告した(特開2009-195220号公報を参照)。この遺伝子組換え酵母において、上記課題を解決すべく鋭意検討し、キシロース代謝系酵素発現カセットの導入に加えて、代謝経路の上流側に位置するキシロースの取り込みと代謝経路の下流側に位置するペントースリン酸経路(以下、「PPP」と記載)について改良した。
本発明では、優れたキシロース発酵能を保持する酵母株を作製するために、PPPにおいて、最も重要な酵素であるトランスアルドラーゼ(以下、「TAL」と記載)およびトランスケトラーゼ(以下、「TKL」と記載)に注目すると共に、これまでキシロースの取り込みに関係すると考えられていなかったα-グルコシドトランスポーターをコードする遺伝子の1つであるAGT1遺伝子に着目し、これらの遺伝子を単独あるいはまとめてキシロース発酵性を付与した遺伝子組換え酵母株に導入し、この中から、キシロースをエタノールへ高効率に生産できる遺伝子組換え酵母を選抜した。さらに、TAL、TKLおよびAGT1遺伝子を少なくとも一以上破壊した株にキシロース代謝系酵素(XR、XDHおよびXK)発現カセットを導入し、この中から、キシロースをエタノールへ高効率に生産できる遺伝子組換え酵母を選抜した。これらの遺伝子組換え酵母が、従来公知のキシロース発酵性酵母株よりも、キシロースからエタノールを高効率に生産できることを見出し、本発明を完成させるに至った(図1を参照)。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] キシロースレダクターゼ遺伝子、キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子およびキシルロキナーゼ遺伝子が染色体組込みにより導入されており、かつ少なくともトランスアルドラーゼ遺伝子およびα-グルコシドトランスポーター遺伝子からなる群から選択される一以上の遺伝子を発現するプラスミドを含む、キシロースからエタノールを高効率に生産できる遺伝子組換え酵母。
[2] キシロースレダクターゼ遺伝子、キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子およびキシルロキナーゼ遺伝子が染色体組込みにより導入されており、かつ、さらに少なくともトランスアルドラーゼ遺伝子およびα-グルコシドトランスポーター遺伝子からなる群から選択される一以上の遺伝子が染色体組込みにより導入されている、キシロースからエタノールを高効率に生産できる遺伝子組換え酵母。
[3] さらに、トランスケトラーゼ遺伝子を過剰発現している、[1]または[2]の遺伝子組換え酵母。
[4] トランスケトラーゼ遺伝子が酵母または細菌由来である、[3]の遺伝子組換え酵母。
[5] トランスケトラーゼ遺伝子が、Saccharomyces cerevisiaeに由来する、[4]の遺伝子組換え酵母。
[6] キシロースレダクターゼ遺伝子およびキシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子がPichia stipitisに由来し、かつキシルロキナーゼ遺伝子がSaccharomyces cerevisiaeに由来する、[1]〜[5]のいずれかの遺伝子組換え酵母。
[7] トランスアルドラーゼ遺伝子およびα-グルコシドトランスポーター遺伝子が酵母または細菌由来である、[1]〜[6]のいずれかの遺伝子組換え酵母。
[8] トランスアルドラーゼ遺伝子およびα-グルコシドトランスポーター遺伝子が、Saccharomyces cerevisiaeに由来する、[7]の遺伝子組換え酵母。
[9] キシロースレダクターゼ遺伝子、キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子およびキシルロキナーゼ遺伝子が染色体組込みにより導入されており、かつ、少なくともNQM1遺伝子、TKL2遺伝子またはAGT1遺伝子を欠失または不活性化している、グルコース非存在下においてキシロースからエタノールを高効率に生産できる遺伝子組換え酵母。
[10] NQM1遺伝子、TKL2遺伝子およびAGT1遺伝子がSaccharomyces cerevisiaeに由来する、[9]の遺伝子組換え酵母。
[11] 遺伝子組換え酵母がSaccharomyces cerevisiaeを宿主として作製される、[1]〜[10]のいずれかの遺伝子組換え酵母。
[12] [1]〜[11]のいずれかの遺伝子組換え酵母を用いた、キシロースからエタノールを生産する方法。
[13] [1]〜[11]のいずれかの遺伝子組換え酵母を用いた、セルロース系バイオマスから調製した糖化液からエタノールを生産する方法。
本発明により、キシロース発酵可能な従来公知の遺伝子組換え酵母よりも、キシロース発酵速度が速く、かつ高効率でキシロースをエタノールへ変換できる遺伝子組換え酵母を提供する。
図1は、本発明における遺伝子組換え酵母内のキシロース代謝経路を示す説明図である。図中、XRはキシロースレダクターゼ、XDHはキシリトールデヒドロゲナーゼ、XKはキシルロキナーゼ、TALはトランスアルドラーゼ、TKLはトランスケトラーゼをそれぞれ意味する。Pichia stipitis由来のXRおよびXDHならびにSaccharomyces cerevisiae由来のXKのそれぞれをコードする遺伝子を酵母に導入することによりキシロース発酵性を付与した遺伝子組換え酵母を作製することができる(特開2009−195220号公報)。さらに、XR、XDHおよびXKのそれぞれをコードする遺伝子を導入した遺伝子組換え酵母に、TAL、TKLおよびα-グルコシドトランスポーターからなる群から選択される一以上の遺伝子を発現させることにより、キシロース発酵速度の優れた五炭糖発酵性を有する遺伝子組換え酵母を作製することができる。それによって、本発明における遺伝子組換え酵母は高いキシロース発酵能を有し、エタノールを高効率的に生産することが可能である。 図2は、6種類の遺伝子組換え酵母(Con-Xyl株、ΔTAL1-Xyl株、ΔNQM1-Xyl株、ΔTKL1-Xyl株、ΔTKL2-Xyl株、およびΔAGT1-Xyl株)の、YPX培地における嫌気的エタノール発酵能(キシロース消費量(A)およびエタノール生産量(B))を示す特性図である。 図3は、6種類の遺伝子組換え酵母(Con-Xyl株、ΔTAL1-Xyl株、ΔNQM1-Xyl株、ΔTKL1-Xyl株、ΔTKL2-Xyl株、およびΔAGT1-Xyl株)の、YPDX培地における嫌気的エタノール発酵能(キシロース消費量(A)およびエタノール生産量(B))を示す特性図である。 図4は、作製した遺伝子組換え酵母における、TALおよびTKLの比活性を示す特性図である。 図5は、9種類の遺伝子組換え酵母(N4-Con1株、N4-TAL1株、N4-NQM1株、N4-TKL1株、N4-TKL2株、N4-TAL1TKL1株、N4-TAL1TKL2株、N4-NQM1TKL1株、およびN4-NQM1TKL2株)の、SCDX培地における嫌気的エタノール発酵能(キシロース消費量(A)、エタノール生産量(B)およびキシリトール生産量(C))を示す特性図である。 図6は、2種類の遺伝子組換え酵母(N4-Con2株とN4-AGT1株)の、SCDX培地における嫌気的エタノール発酵能(キシロース消費量(A)およびエタノール生産量(B))を示す特性図である。
XRは、キシロースをキシリトールに変換する反応を触媒する酵素である。XR遺伝子は、かかる酵素をコードする遺伝子であれば特に限定されないが、Candida Shehatae、Pichia stipitis、およびPachysolen tannophilusなどの酵母に由来する。好ましくは、XR遺伝子は、Pichia stipitisに由来するものである。Pichia stipitisのXR遺伝子は、GeneBankに登録番号XM_001385144(配列番号16)として登録されており、これらの遺伝子情報を利用することができる。
XDHは、キシリトールをキシルロースに変換する反応を触媒する酵素である。XDH遺伝子は、かかる酵素をコードする遺伝子であれば、特に限定されないが、Candida Shehatae、Pichia stipitis、およびPachysolen tannophilusなどの酵母に由来する。好ましくは、XDH遺伝子は、Pichia stipitisに由来するものである。Pichia stipitisのXDH遺伝子は、GeneBankに登録番号AF127801またはX55392(配列番号17)として登録されており、これらの遺伝子情報を利用することができる。
XKは、キシロースとATPを、キシルロース5リン酸とADPに変換する反応を触媒する酵素である。XK遺伝子は、かかる酵素をコードする遺伝子であれば、特に限定されないが、Candida Shehatae、Pichia stipitis、Pachysolen tannophilus、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccaromyces pombeおよびEscherichia coliなどの酵母または細菌に由来する。好ましくは、XK遺伝子は、Saccharomyces cerevisiaeに由来するものである。Saccharomyces cerevisiaeのXK遺伝子は、GeneBankにNC_001139.7(配列番号18)として登録されており、これらの遺伝子情報を利用することができる。
TALはセドヘプツロース7-リン酸(S7P)およびグリセルアルデヒド3-リン酸(以下、「G3P」と記載)をエリトロース4-リン酸(以下、「E4P」と記載)およびフルクトース6-リン酸(以下、「F6P」と記載)に変換する反応を触媒する酵素である。
TALは2種類のアイソザイムが存在し(Tatusov RLら、Nucleic Acids Research, Vol.28, pp.33-36 (2000))、TAL1遺伝子(Schaaff Iら、European Journal of Biochemistry, Vol.188, pp.597-603 (1990))及びNQM1遺伝子(Huang Hら、Proteins, Vol.73, pp.1076-1081 (2008))にそれぞれコードされている。TAL1遺伝子は上記の反応を触媒する酵素をコードしており、生化学的な機能も詳細に解析されている。NQM1遺伝子はそのシークエンスアライメントから、酵母におけるもう一つのトランスアルドラーゼであることは推定されているものの、トランスアルドラーゼ活性を保持することを証明するような実験的証拠は得られていない。
本発明において「TAL遺伝子」とは、特に記載の無い限り、TAL1遺伝子もしくはNQM1遺伝子またはそれらの組み合わせを意味する。好ましくは、TAL遺伝子はNQM1遺伝子である。TAL1及びNQM1遺伝子は、かかる酵素をコードする遺伝子であれば特に限定されないが、好ましくは、Candida Shehatae、Pichia stipitis、Pachysolen tannophilus、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccaromyces pombeおよびEscherichia coliなどの酵母または細菌に由来する。さらに好ましくは、TAL1及びNQM1遺伝子は、Saccharomyces cerevisiaeに由来するものである。Saccharomyces cerevisiaeのTAL1遺伝子およびNQM1遺伝子は、GeneBankにそれぞれNC_001144(配列番号1)およびNC_001139(配列番号4)として登録されており、これらの遺伝子情報を利用することができる。
TKLは、キシルロース5-リン酸(以下、「X5P」と記載)およびリボース5-リン酸(以下、「R5P」と記載)をE4PおよびF6Pに変換する反応を触媒する酵素である。TKLは2種類のアイソザイムが存在し(Schaaff Iら、European Journal of Biochemistry, Vol.217, pp.487-492 (1993))、TKL1遺伝子(Fletcher TSら、Biochemistry, Vol.31, pp.1892-1896 (1992); Sundstrom Mら、Journal of Biological Chemistry, Vol.268, pp.24346-24352 (1993))及びTKL2遺伝子(Schaaff Iら、European Journal of Biochemistry, Vol.217, pp.487-492 (1993))にそれぞれコードされている。いずれの遺伝子も上記の反応を触媒する酵素をコードしている。本発明において「TKL遺伝子」とは、特に記載の無い限り、TKL1遺伝子もしくはTKL2遺伝子またはそれらの組み合わせを意味する。TKL1及びTKL2遺伝子は、かかる酵素をコードする遺伝子であれば、特に限定されないが、好ましくは、Candida Shehatae、Pichia stipitis、Pachysolen tannophilus、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccaromyces pombeおよびEscherichia coliなどの酵母または細菌に由来する。好ましくは、TKL1及びTKL2遺伝子は、Saccharomyces cerevisiaeに由来するものである。Saccharomyces cerevisiaeのTKL1遺伝子およびTKL2遺伝子は、GeneBankにそれぞれNC_001148(配列番号7)およびNC_001134(配列番号10)として登録されており、これらの遺伝子情報を利用することができる。
α-グルコシドトランスポーターは、マルトースおよびマルトトリオースの糖輸送体(トランスポーター)である。α-グルコシドトランスポーターをコードする遺伝子としては、MPH2遺伝子、MPH3遺伝子、AGT1遺伝子などが公知であるが(Teste MAら、Journal of Biological Chemistry, Vol.285, pp.26815-26824 (2010))、好ましくはAGT1遺伝子である。AGT1遺伝子は、α-グルコシドトランスポーターをコードする遺伝子であれば、特に限定されないが、好ましくは、Candida Shehatae、Pichia stipitis、Pachysolen tannophilus、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccaromyces pombeおよびEscherichia coliなどの酵母または細菌に由来する。好ましくは、AGT1遺伝子は、Saccharomyces cerevisiaeに由来するものである。Saccharomyces cerevisiaeのAGT1遺伝子は、GeneBankにNC_001139(配列番号13)として登録されており、これらの遺伝子情報を利用することができる。
上記の遺伝子は、それぞれの遺伝子配列に基づいて、当業者に周知である一般的な方法、例えば、ハイブリダイゼーション法、PCR法等によって得ることができる。
また、必要に応じてXDHは、補酵素要求性が変化した改変型を用いても良い。XDHのアミノ酸配列の207番目から211番目に対応するアミノ酸の少なくとも1つを他のアミノ酸、例えば、アラニン、アルギニン、セリンまたはスレオニンに置換させたものが好ましい。XDHのアミノ酸配列で207番目のアスパラギン酸をアラニンに置換させたもの、208番目のイソロイシンをアルギニンに置換させたもの、アミノ酸配列の209番目のフェニルアラニンをセリンもしくはスレオニンに置換させたもの、およびアミノ酸配列の211番目のアスパラギンをアルギニンに置換させたものが特に好ましい。さらに好ましくは、XDHのアミノ酸配列の207番目のアスパラギン酸をアラニン、208番目のイソロイシンをアルギニン、209番目のフェニルアラニンをセリン、および211番目のアスパラギンをアルギニンに置換したものである(特開2009-195220号公報;Watanabe S.ら、The Journal of Biological Chemistry Vol.280, No.11, pp.10340-10349 (2005)を参照)。改変型XDHは、補酵素としてNADP+を利用してNADPHに変換することができる。
本発明の一実施形態において、これら目的の酵素遺伝子および/またはトランスポーター遺伝子を宿主細胞内にて発現させる。その方法は、当業者に公知である一般的な分子生物学的手法を用いて行うことができる(Sambrook J.ら、“Molecular Cloning A LBORATORY MANUAL /second edition”, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)参照)。すなわち、当該酵素をコードする遺伝子を適当なベクターに組み込み、そのベクターを用いて適当な宿主生物を形質転換することにより行うことができる。
ベクターとしては、遺伝子の導入および発現のために当業者に公知である一般的な酵母発現ベクターを用いることができる。酵母に導入する際に用いるベクターとしては、多コピー型(YEp型)、単コピー型(YCp型)、染色体組み込み型(YIp型)のいずれも用いることが可能である。
ベクターには、上記酵素遺伝子および/またはトランスポーター遺伝子を一または複数を含めることができる。また、ベクターには、目的の酵素遺伝子および/またはトランスポーター遺伝子の他に、宿主細胞における複製を可能とする複製起点、および形質転換体を同定する選択マーカー、さらに、好ましくは、酵母由来の適切な転写または翻訳制御配列が、所望により酵素の遺伝子配列に連結されて含まれ得る。制御配列の例には、転写プロモーター、オペレーター、またはエンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、ならびに転写および翻訳開始および終結を調節する適切な配列が含まれる。用いることができる転写プロモーターは、宿主細胞内にて遺伝子発現を駆動できる限り、特に限定されず、例えばGAL1プロモーター、GAL10プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MFα1プロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADH1プロモーター、AOX1プロモーター等を用いることができるが、遺伝子を構成的に発現可能であるPGKプロモーターを用いるのが好ましい。選択マーカーとしては、通常使用されるものを常法により用いることができる。例えばテトラサイクリン、アンピシリン、またはカナマイシンもしくはネオマイシン、ハイグロマイシンまたはスペクチノマイシン等の抗生物質耐性遺伝子やHIS3、TRP1などの栄養要求性遺伝子などが例示される。
宿主細胞として用いることができるものとしては、特に限定するものではないがCandida Shehatae、Pichia stipitis、Pachysolen tannophilus、Saccharomyces cerevisiae、およびSchizosaccaromyces pombeなどの酵母が挙げられ、特にSaccharomyces cerevisiaeが好ましい。
ベクターを宿主細胞に導入する方法としては、リン酸カルシウム法または塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、エレクトロポレーション法、エレクトロインジェクション法、PEGなどの化学的な処理による方法、遺伝子銃などを用いる方法などが挙げられる。
好ましくは、XR、XDH、およびXKは、宿主細胞において構成的に発現させる。例えば、XR、XDH、およびXK遺伝子を染色体組込み型ベクター等に導入した後、酵母染色体上に組込み、シングルまたは数コピーで発現させるのが好ましい。これらの遺伝子は、まとめて一つの対立遺伝子上に相同組換えによって染色体DNAに組込まれても良く、また、各遺伝子がそれぞれ別々の対立遺伝子上に相同組換えによって染色体DNAに組込まれても良い。好ましくは、XR、XDH、およびXK遺伝子は、まとめて宿主のDNA上の一つの対立遺伝子上に組込まれている。本発明においては、XR、XDH、およびXK遺伝子の染色体組込み型ベクターについては、特開2009-195220号公報に記載のものを利用することができる。また、本発明においては、特開2009-195220号公報に記載のXR、XDH、およびXK遺伝子が染色体DNAに組込まれた遺伝子組換え酵母を利用することができる。
上記XR、XDH、およびXK遺伝子が導入された遺伝子組換え酵母を宿主株にして、TAL、TKLおよびα-グルコシドトランスポーターからなる群から選択される一以上のタンパク質を過剰発現させることによって、目的の遺伝子組換え酵母を得ることができる。
好ましくは、TAL、TKL、およびAGT1遺伝子からなる群から選択される一以上の遺伝子をマルチコピープラスミド上で発現させる。本発明において、TAL、TKL、およびAGT1遺伝子からなる群から選択される一以上の遺伝子は、ベクターから発現されても良いし、宿主の染色体DNAに組み込まれた後そこから発現されても良い。また、TAL、TKL、およびAGT1遺伝子からなる群から選択される一以上の遺伝子が同一のベクターから発現されても良いし、別々のベクターから発現されても良く、また、TAL、TKL、およびAGT1遺伝子からなる群から選択される一以上の遺伝子が、宿主のDNAに組み込まれても良い。
本発明の別の実施形態において、少なくともTAL遺伝子、TKL遺伝子、またはAGT1遺伝子が欠失または不活性化した遺伝子組換え宿主細胞内にて、XR、XDH、およびXKを構成的に発現させる。
欠失または不活性化させる遺伝子は、TAL遺伝子、TKL遺伝子、およびAGT1遺伝子からなる群から一または複数の遺伝子を選択することができる。好ましくは、少なくともNQM1遺伝子、TKL2遺伝子またはAGT1遺伝子を欠失または不活性化させる。
当該遺伝子を欠失または不活性化させる方法は、当業者に公知である一般的な分子生物学的手法を用いて行うことができ、特に限定されないが例えば、SOE-PCR法(Gene,77,61 (1989))によって調製される欠失用DNA断片を挿入した欠失用プラスミドを用いた相同組換えにより、宿主細胞より当該遺伝子を欠失または不活性化させることができる。
XR、XDH、およびXKを構成的に発現させる方法は、上記の方法によって行うことができる。
宿主細胞および当該宿主細胞を欠失または不活性化させた遺伝子を用いて形質転換する方法は、上に定義するとおりである。
本発明に係る遺伝子組換え酵母は、固相に固定化されていても良い。固相としては例えば、ポリアクリルアミドゲル、ポリスチレン樹脂、多孔性ガラス、金属酸化物などが挙げられる(特にこれらに限定されない)。本発明に係る遺伝子組換え酵母を固相に固定することによって、連続反復使用が可能となる点において有利である。
本発明に係る遺伝子組換え酵母は、キシロース発酵可能な従来公知の遺伝子組換え酵母(例えば、特開2009-195220号公報に記載の遺伝子組換え酵母)よりも、キシロース発酵速度が速く、かつ高効率でキシロースをエタノールへ変換することができる。
本発明に係る遺伝子組換え酵母は、発酵反応によりキシロースからエタノールを生産することが可能である。その際、培地に含まれるキシロースの濃度は、0.1〜20%、好ましくは0.5%〜10%、さらに好ましくは、1.6%〜4.5%であり、また培地に含まれるグルコースの濃度は、0.1〜20%、好ましくは0.2〜10%、さらに好ましくは、0.5%である。
ただし、少なくともTAL遺伝子、TKL遺伝子、またはAGT1遺伝子が欠失または不活性化した遺伝子組換え酵母は、グルコースの非存在下において発酵反応を行う。グルコースを含まない培地を用いることによって、キシロース発酵可能な従来公知の遺伝子組換え酵母(例えば、特開2009-195220号公報に記載の遺伝子組換え酵母)よりも、キシロース発酵速度が速く、かつ高効率でキシロースをエタノールへ変換することができる。
また、本発明に係る遺伝子組換え酵母は、発酵反応によりセルロース系バイオマスから調整した糖化液からエタノールを生産することが可能である。糖化液は、特に限定するものではないが、木質(特にキシランを多く含む広葉樹)や農産廃棄物等の草本などのセルロース系バイオマスを由来するものから調製することが可能である。糖化液を調製するための糖化技術は、当該分野において一般的な手法を用いることができ、酸分解法でも良いし酵素糖化法でも良いが、好ましくは、高効率と低環境負荷が期待できる非硫酸前処理・酵素糖化法である。実際、酵母を用いて発酵させる際には、解毒処理していない糖化液を直接用いても良いし、解毒処理した糖化液を用いても良い。糖化液のpHは未処理の酸性糖化液を用いても良いし、中性付近に調整してから用いても良いが、好ましくは中性付近に調整してから用いる。糖化液にyeast extractやpeptoneなどの栄養源を加えても良いし、加えなくても良いが、好ましくは1%のyeast extractを加える。
上記発酵反応は、当業者に公知である一般的な方法によって行うことが可能である。培養温度は25 ℃〜38 ℃、好ましくは27 ℃〜33 ℃、さらに好ましくは30 ℃に制御する。培地のpHは、3.0〜7.6、好ましくは、5.0〜6.0、さらに好ましくは5.5に制御する。発酵は嫌気条件で進行するので、酸素が存在しない状態が必要であり、そのため、発酵させる前に系内の酸素および培地中の溶存酸素を除去する操作、すなわち、窒素ガスを培地中に吹き込む操作を行うことが好ましい。反応は、連続式で行っても、バッチ式で行っても良い。
培養開始から0〜192時間、好ましくは0〜96時間、さらに好ましくは、72時間後の培地を回収してエタノールを分離する。培地よりエタノールを分離する方法は、蒸留、浸透気化膜等の公知の方法が用いられるが、蒸留による方法が好ましい。次いで、分離したエタノールをさらに精製(エタノール精製法としては、公知の方法、例えば蒸留等を用いることができる)することによって、エタノールを得ることができる。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1:遺伝子組換え酵母株の作製(1)
TAL、TKLおよびα-グルコシドトランスポーターのキシロース発酵における重要性を検討するために、TAL1、NQM1、TKL1、TKL2、AGT1の各遺伝子を欠損したノックアウト酵母にキシロース代謝系遺伝子発現カセットを導入して形質転換酵母を作製し、これら遺伝子組換え酵母株のキシロース発酵能を比較した。
そのために、ノックアウト酵母のコレクションの中からTAL1、NQM1、TKL1、TKL2、AGT1の各遺伝子を欠損した酵母をオープンバイオシステムズ社から取得し(親株はBY4743株)、キシロース代謝系酵素(XR、XDHおよびXK)遺伝子を酵母染色体に組み込める発現カセットpAURXKXDH(WT)XR(特願2008-211274を参照)をYEASTMAKER yeast transformation system 2(クロンテック社)を用いてリチウム酢酸法により形質転換して、合計6種類の遺伝子組換え酵母株を作製した。すなわちpAURXKXDH(WT)XRを、遺伝子を欠損していないBY4743株Con-Xyl株(コントロール株)、TAL1遺伝子を欠損したΔTAL1-Xyl株、NQM1遺伝子を欠損したΔNQM1-Xyl株、TKL1遺伝子を欠損したΔTKL1-Xyl株、TKL2遺伝子を欠損したΔTKL2-Xyl株、AGT1遺伝子を欠損したΔAGT1-Xyl株に導入して遺伝子組換え酵母株を作製した。これら組換え酵母株におけるXR、XDH、XK活性を測定したところ(特願2008-211274を参照)、いずれも高い酵素活性を保持していることが分かった。
実施例2:遺伝子組換え酵母の培養(1)
エタノール発酵実験のために、PPP関連酵素遺伝子およびAGT1遺伝子を欠損したノックアウト酵母(ΔTAL1-Xyl株、ΔNQM1-Xyl株、ΔTKL1-Xyl株、ΔTKL2-Xyl株、およびΔAGT1-Xyl株)とそのコントロール酵母(Con-Xyl株)を、20g/lグルコースを含む合成培地(20g/l ポリペプトン、 10g/l yeast extract : YPD培地)において30℃で48時間、好気的に培養した。遠心分離により集菌後、滅菌水で洗浄し、20mlの発酵培地(45g/lキシロースを含む合成培地: YPX培地(45g/l キシロース、20g/l ポリペプトン、10g/l yeast extract)またはYPDX培地(45g/l グルコース、45g/l キシロース、20g/l ポリペプトン、10g/l yeast extract))に適量を接種した(菌体量を統一)。発酵液は攪拌棒を入れた50mlの密封型のバイアルにおいて、緩やかに攪拌しながら30℃で嫌気的に培養した。
実施例3:エタノール濃度の測定(1)
エタノール、グルコース、キシロース、キシリトール、他の副産物の濃度は高速液体クロマトグラフィー(HPLC; 日本分光株式会社)を用いて測定した。分離カラムはHPX-87Hカラム(Bio-Rad社)を用い、HPLC装置は5mM H2SO4で0.6ml/minの流速で流し、65℃で運転した。酵母の増殖は分光光度計Biowave II(WPA社)を用いて600nmでの波長を測定した。解析の結果、これら遺伝子組換え酵母間で増殖速度に顕著な違いがみられた。すなわち、ΔTKL2-Xyl株およびΔAGT1-Xyl株が最も細胞収量が高く、続いてΔNQM1-Xyl株およびCon-Xyl株が続き、ΔTAL1-Xyl株は少し増殖が見られたが、ΔTKL1-Xyl株は細胞収量が発酵中全く変化しなかった。
図2は、6種類の遺伝子組換え酵母(Con-Xyl株、ΔTAL1-Xyl株、ΔNQM1-Xyl株、ΔTKL1-Xyl株、ΔTKL2-Xyl株、およびΔAGT1-Xyl株)を用いて、45g/Lのキシロースを含む発酵培地(YPX培地)を用いた嫌気培養における、これら遺伝子組換え酵母株のキシロース消費量(図2のAを参照)およびエタノール生産量(図2のBを参照)を経時的に示した図である。
まずキシロース消費量であるが、コントロール株のCon-Xyl株、ノックアウト酵母の3株(ΔNQM1-Xyl株、ΔTKL2-Xyl株、およびΔAGT1-Xyl株)は72時間後に80%以上のキシロースを消費したのに対し、その他のノックアウト酵母の2株(ΔTAL1-Xyl株およびΔTKL1-Xyl株)はコントロール株よりキシロース消費量が大幅に減少し、特にΔTKL1-Xyl株はほとんどキシロースを消費できなかった。興味深いことに、ΔNQM1-Xyl株、ΔTKL2-Xyl株、およびΔAGT1-Xyl株はコントロール株よりもややキシロース発酵速度が速かった。すなわち、ノックアウト酵母にキシロース代謝能を付与した5株のうち、ΔTAL1-Xyl株およびΔTKL1-Xyl株はコントロール株よりも顕著にキシロース消費速度が遅れ、ΔNQM1-Xyl株、ΔTKL2-Xyl株、およびΔAGT1-Xyl株はコントロール株よりもややキシロース消費速度が速まることが分かった。キシロース消費量に伴い、エタノール生産量についても酵母株間で差が生じた。コントロール株のCon-Xyl株は、72時間後に12.3g/Lのエタノールを生産したのに対し、ノックアウト酵母の3株(ΔNQM1-Xyl株、ΔTKL2-Xyl株、およびΔAGT1-Xyl株)はコントロール株よりもエタノール生産量がやや増加し、その他の2株(ΔTAL1-Xyl株およびΔTKL1-Xyl株)はコントロール株よりエタノール生産量が大幅に減少した。特にΔTKL1-Xyl株はほとんどエタノールを生産できなかった。すなわち、ノックアウト酵母にキシロース代謝能を付与した5株のうち、ΔTAL1-Xyl株およびΔTKL1-Xyl株はコントロール株よりも顕著にエタノール生産速度が遅れ、ΔNQM1-Xyl株、ΔTKL2-Xyl株、およびΔAGT1-Xyl株はコントロール株よりもややエタノール生産速度が速まることが分かり、基本的にエタノール生産速度はキシロース消費速度と比例していた。これらの結果から、TAL、TKL、およびα-グルコシドトランスポーターそれぞれのキシロース発酵における重要性が明らかになり、特にTAL1およびTKL1はキシロース発酵においてエッセンシャルな働きをしていることが示唆された。
一方、図3は、6種類の遺伝子組換え酵母(Con-Xyl株、ΔTAL1-Xyl株、ΔNQM1-Xyl株、ΔTKL1-Xyl株、ΔTKL2-Xyl株、およびΔAGT1-Xyl株)を用いて、45g/Lのグルコースおよび45g/Lのキシロースを含む発酵培地(YPDX培地)を用いた嫌気培養における、これら遺伝子組換え酵母株のキシロース消費量(図3のAを参照)およびエタノール生産量(図3のBを参照)を経時的に示した図である。
ΔTAL1-Xyl株、ΔNQM1-Xyl株、ΔTKL1-Xyl株、ΔTKL2-Xyl株、およびΔAGT1-Xyl株のキシロース消費量は、上記YPX培地を用いた結果(図2のA)と比べて低下した(図3のAを参照)。また、エタノール生産量は、Con-Xyl株の生産量を大きく上回るような株は存在しなかった(図3のBを参照)。すなわち、YPX培地においてエタノール生産量が増大したΔNQM1-Xyl株、ΔTKL2-Xyl株、およびΔAGT1-Xyl株は、YPDX培地においてはエタノールを効率的に生産できないことが明らかとなった。
実施例4:YEpM4-TAL1の作製
野生型TAL1遺伝子を作製するため、GeneBankに登録されているSaccharomyces cerevisiae TAL1遺伝子(NC_001144)(配列番号1)を参考にして、下記の二つのプライマーを設計した。尚、TAL1遺伝子の5’末端にHind III切断部位、3’末端にBamH I切断部位を認識する配列をプライマーに付加した。
5’-CATaagcttATGTCTGAACCAGCTCAAAAGAAAC-3’(配列番号2)
5’-TAAggatccTTAAGCGGTAACTTTCTTTTCAATCAAG-3’ (配列番号3)
PCRは、PrimeSTAR Max DNAポリメラーゼ(タカラバイオ株式会社)を用いて行った。20 pmolの各プライマーと100ngのS. cerevisiae ゲノムDNAを用い、変性反応を98℃で10秒間、アニーリング反応を55℃で5秒間、伸長反応を72℃で10秒間の条件でTAL1遺伝子を増幅した。得られたDNA断片を、プラスミドpPGKのHind IIIおよびBamH I制限酵素切断部位に導入し、これをpPGK-TAL1と名付けた。続いてpPGK-TAL1をXho IおよびSal Iで切断してPGKプロモーター及びPGKターミネーター付きのTAL1断片を切り出し、プラスミドYEpM4のSal I制限酵素切断部位に導入し、これをYEpM4-TAL1と名付けた。そのためにSal Iで切断したYEpM4はアルカリホスファターゼ処理して切断面のリン酸基を取り除いた。
実施例5:YEpM4-NQM1の作製
野生型NQM1遺伝子を作製するため、GeneBankに登録されているSaccharomyces cerevisiae NQM1遺伝子(NC_001139)(配列番号4)を参考にして、下記の二つのプライマーを設計した。尚、NQM1遺伝子の5’末端にHind III切断部位、3’末端にBamH I切断部位を認識する配列をプライマーに付加した。
5’-CATaagcttATGTCAGAACCTTCAGAGAAAAAACAAAAAG-3’(配列番号5)
5’-GAggatccTCACATTTTTTCTTCAACCAGTTTGTAC-3’ (配列番号6)
PCRは、PrimeSTAR Max DNAポリメラーゼ(タカラバイオ株式会社)を用いて行った。20 pmolの各プライマーと100ngのS. cerevisiae ゲノムDNAを用い、変性反応を98℃で10秒間、アニーリング反応を55℃で5秒間、伸長反応を72℃で10秒間の条件でNQM1遺伝子を増幅した。得られたDNA断片を、プラスミドpPGKのHind IIIおよびBamH I制限酵素切断部位に導入し、これをpPGK-NQM1と名付けた。続いてpPGK-NQM1をXho IおよびSal Iで切断してPGKプロモーター及びPGKターミネーター付きのNQM1断片を切り出し、プラスミドYEpM4のSal I制限酵素切断部位に導入し、これをYEpM4-NQM1と名付けた。そのためにSal Iで切断したYEpM4はアルカリホスファターゼ処理して切断面のリン酸基を取り除いた。
実施例6:pPGK-TKL1の作製
野生型TKL1遺伝子を作製するため、GeneBankに登録されているSaccharomyces cerevisiae TKL1遺伝子(NC_001148)(配列番号7)を参考にして、下記の二つのプライマーを設計した。尚、TKL1遺伝子の5’末端にEco RI切断部位、3’末端にBamH I切断部位を認識する配列をプライマーに付加した。
5’-CATgaattcATGACTCAATTCACTGACATTGATAAGC-3’(配列番号8)
5’-TAAggatccTTAGAAAGCTTTTTTCAAAGGAGAAATTAGC-3’ (配列番号9)
PCRは、PrimeSTAR Max DNAポリメラーゼ(タカラバイオ株式会社)を用いて行った。20 pmolの各プライマーと100ngのS. cerevisiae ゲノムDNAを用い、変性反応を98℃で10秒間、アニーリング反応を55℃で5秒間、伸長反応を72℃で10秒間の条件でTAL1遺伝子を増幅した。得られたDNA断片を、プラスミドpPGKのEco RIおよびBamH I制限酵素切断部位に導入し、これをpPGK-TKL1と名付けた。
実施例7:pPGK-TKL2の作製
野生型TKL2遺伝子を作製するため、GeneBankに登録されているSaccharomyces cerevisiae TKL2遺伝子(NC_001134)(配列番号10)を参考にして、下記の二つのプライマーを設計した。尚、TKL2遺伝子の5’末端にHind III切断部位、3’末端にBamH I切断部位を認識する配列をプライマーに付加した。
5’-CATaagcttATGGCACAGTTCTCCGACATTGATAAAC-3’(配列番号11)
5’-AAggatccTTAGAAAGCTCTTCCCATAGGAGAAAGC-3’ (配列番号12)
PCRは、PrimeSTAR Max DNAポリメラーゼ(タカラバイオ株式会社)を用いて行った。20 pmolの各プライマーと100ngのS. cerevisiae ゲノムDNAを用い、変性反応を98℃で10秒間、アニーリング反応を55℃で5秒間、伸長反応を72℃で10秒間の条件でTKL2遺伝子を増幅した。得られたDNA断片を、プラスミドpPGKのHind IIIおよびBamH I制限酵素切断部位に導入し、これをpPGK-TKL2と名付けた。
実施例8:pPGK-AGT1の作製
野生型AGT1遺伝子を作製するため、GeneBankに登録されているSaccharomyces cerevisiae AGT1遺伝子(NC_001139)(配列番号13)を参考にして、下記の二つのプライマーを設計した。尚、AGT1遺伝子の5’末端にEco RI切断部位、3’末端にBamH I切断部位を認識する配列をプライマーに付加した。
5’-CATgaattcATGAAAAATATCATTTCATTGGTAAGCAAG-3’(配列番号14)
5’-TAAggatccTTAACATTTATCAGCTGCATTTAATTCTC-3’ (配列番号15)
PCRは、PrimeSTAR Max DNAポリメラーゼ(タカラバイオ株式会社)を用いて行った。20 pmolの各プライマーと100ngのS. cerevisiae ゲノムDNAを用い、変性反応を98℃で10秒間、アニーリング反応を55℃で5秒間、伸長反応を72℃で10秒間の条件でAGT1遺伝子を増幅した。得られたDNA断片を、プラスミドpPGKのEco RIおよびBamH I制限酵素切断部位に導入し、これをpPGK-AGT1と名付けた。
実施例9:遺伝子組換え酵母株の作製(2)
上記プラスミドYEpM4-TAL1、YEpM4-NQM1、pPGK-TKL1、pPGK-TKL2およびpPGK-AGT1をYEASTMAKER yeast transformation system 2(クロンテック社)を用いてリチウム酢酸法によりキシロース発酵性酵母MA-N4株に形質転換した。MA-N4株は、Invitrogenから購入した酵母INVSc1株に3種類のキシロース代謝系酵素(XR、XDHおよびXK)の遺伝子を構成的に発現できるカセットpAURXKXDH(WT)XRを形質転換した遺伝子組換え酵母である(特願2008-211274を参照)。まずTALおよびTKL遺伝子を様々に組み合わせた一連の遺伝子組換え酵母株を作製するために、pPGK、pPGK-TKL1およびpPGK-TKL2のいずれかをMA-N4株に形質転換し、さらにYEpM4、YEpM4-TAL1およびYEpM4-NQM1のいずれかを形質転換して、合計9種類の遺伝子組換え酵母株を作製した。すなわちMA-N4株に、酵素遺伝子を含まないYEpM4およびpPGKを導入したN4-Con1(コントロール株)、YEpM4およびpPGK-TAL1を導入したN4-TAL1、YEpM4およびpPGK-NQM1を導入したN4-NQM1、YEpM4-TKL1およびpPGKを導入したN4-TKL1、YEpM4-TKL2およびpPGKを導入したN4-TKL2、YEpM4-TKL1およびpPGK-TAL1を導入したN4-TAL1TKL1、YEpM4-TKL2およびpPGK-TAL1を導入したN4-TAL1TKL2、YEpM4-TKL1およびpPGK-NQM1を導入したN4-NQM1TKL1、YEpM4-TKL2およびpPGK-NQM1を導入したN4-NQM1TKL2である。また、MA-N4株をpPGK-AGT1を用いて形質転換して、遺伝子組換え酵母N4-AGT1株を作製した。一方、トランスポーター遺伝子を含まないpPGKを用いてMA-N4株に形質転換してN4-Con2株を作製し、コントロール株として用いた。
実施例10:酵素比活性の測定
TALの活性測定は、反応によって生成されるNADHの特異的な340nmの吸収度の減少を30℃でモニターすることによって行った。54mMのF6P、0.7mMのE4P、0.2mMのNADH、0.34Uのグリセロール脱水素酵素(以下、「GDH」と記載)、および1Uのトリオースリン酸イソメラーゼ(以下、「TIM」と記載)を含む84mMトリエタノールアミン緩衝液(pH 7.6)990μl中において、1μmolのNADを1分間に生成するために必要な量を、TALの1ユニットと定義した。
TKLの活性測定は、反応によって生成されるNADHの特異的な340nmの吸収度の減少を30℃でモニターすることによって行った。1.2mMのR5P、0.9mMのX5P、0.3mMのチアミン二リン酸、0.3mMのNADH、0.34UのGDH、および1UのTIMを含む84mMトリエタノールアミン緩衝液(pH 7.6)990μl中において、1μmolのNADを1分間に生成するために必要な量を、TKLの1ユニットと定義した。
酵素活性測定のために、キシロース発酵酵母(N4-Con1、N4-TAL1株、N4-NQM1株、N4-TKL1株、N4-TKL2株、N4-TAL1TKL1株、N4-TAL1TKL2株、N4-NQM1TKL1株、およびN4-NQM1TKL2株)を、2%グルコースを含む栄養要求性培地(6.7g/l yeast nitrogen base w/o amino acids、20g/l グルコース、2g/l 検定したいアミノ酸を除いたdrop out mix : SCD培地)において30℃で48時間、好気的に培養した。遠心分離により集菌後、滅菌水で洗浄し、適量の酵母タンパク質抽出試薬Y-PER(Pierce社)に懸濁した。細胞懸濁液を20分間voltex mixerで撹拌した後、遠心分離し、その上清を酵母無細胞(タンパク質)抽出液として酵素活性測定に用いた。
タンパク濃度はMicro-BCA kit(Pierce社)を用いて決定した。図4に酵素比活性の結果を示した。TAL遺伝子発現酵母(N4-TAL1株、N4-NQM1株、N4-TAL1TKL1株、N4-TAL1TKL2株、N4-NQM1TKL1株、およびN4-NQM1TKL2株)におけるTALの比活性は、TAL遺伝子を発現しない酵母(N4-Con1、N4-TKL1株、およびN4-TKL2株)におけるよりも、いずれも高かった。また、TKL1遺伝子を発現する酵母(N4-TKL1株、N4-TAL1TKL1株、およびN4-NQM1TKL1株)におけるTKLの比活性は、TKL遺伝子を発現しない酵母(N4-Con1、N4-TAL1株、およびN4-NQM1株)におけるよりも、いずれも高かった。一方、N4-NQM1TKL2株を除くTKL2遺伝子を発現する酵母(N4-TKL2株およびN4-TAL1TKL2株)におけるTKLの比活性は、TKL遺伝子を発現しない酵母(N4-Con1、N4-TAL1株、およびN4-NQM1株)と比べて、それ程高くならなかった。
TALを単独で発現するN4-TAL1株およびN4-NQM1株におけるTALの比活性は、TALを発現しない酵母株におけるよりも1.6倍以上高く、またTALとTKLを発現するN4-TAL1TKL1株、N4-TAL1TKL2株、N4-NQM1TKL1株、およびN4-NQM1TKL2株におけるTALの比活性は、TALを発現しない酵母株におけるよりも2.5倍以上高かった。また、TKL1を発現するN4-TKL1株、N4-TAL1TKL1株、およびN4-NQM1TKL1株におけるTKLの比活性は、TKLを発現しない酵母株におけるよりも3.5倍以上高かった。一方、TKL2を発現するN4-TKL2株およびN4-TAL1TKL2株におけるTKLの比活性は、TKLを発現しない酵母株と比較してほとんど同じであったが、N4-NQM1TKL2株は2倍程度TKL活性が増加した。
これら9種類の遺伝子組換え酵母におけるXR、XDH、XK活性については、ほとんど同じ位高かった。
以上の酵素活性測定の結果から、XR、XDH、XKを発現する本酵母株において、TKL2を除くPPP酵素遺伝子群が適切に酵母内で高発現していることが示唆された。TKL2についてはTKL活性をほとんど保持していないか、もともとTKL活性が弱いことが示唆された。
実施例11:遺伝子組換え酵母の培養(2)
エタノール発酵実験のために、PPP関連酵素発現酵母(N4-TAL1株、N4-NQM1株、N4-TKL1株、N4-TKL2株、N4-TAL1TKL1株、N4-TAL1TKL2株、N4-NQM1TKL1株、およびN4-NQM1TKL2株)とそれらのコントロール酵母(N4-Con1)、またAGT1発現酵母(N4-AGT1株)とそのコントロール酵母(N4-Con2)を、20g/lグルコースを含む栄養要求性培地(6.7g/l yeast nitrogen base w/o amino acids、20g/l グルコース、2g/l 検定したいアミノ酸を除いたdrop out mix : SCD培地)において30℃で48時間、好気的に培養した。遠心分離により集菌後、滅菌水で洗浄し、20 mlの発酵培地(5g/lグルコースと16g/lキシロースを含む栄養要求性培地: SCDX培地)に適量を接種した(菌体量を統一)。発酵液は攪拌棒を入れた50 mlの密封型のバイアルにおいて、緩やかに攪拌しながら30℃で嫌気的に培養した。
実施例12:エタノール濃度の測定(2)
エタノール、グルコース、キシロース、キシリトール、他の副産物の濃度は高速液体クロマトグラフィー(HPLC; 日本分光株式会社)を用い、実施例3と同様の方法で運転した。酵母の増殖は分光光度計Biowave II(WPA社)を用いて600 nmでの波長を測定した。解析の結果、これら全ての遺伝子組換え酵母間でそれほど増殖速度の違いはみられなかったが、細胞収量についてはN4-TAL2株が最も高く、逆にN4-TKL1株が最も低かった。またこれら全ての遺伝子組換え酵母間において、グルコースは最初の9時間の間に全て消費した。
図5は、9種類の遺伝子組換え酵母(N4-Con1株、N4-TAL1株、N4-NQM1株、N4-TKL1株、N4-TKL2株、N4-TAL1TKL1株、N4-TAL1TKL2株、N4-NQM1TKL1株、およびN4-NQM1TKL2株)を用いて、5g/Lのグルコースと16g/Lのキシロースを含むSCDX培地において嫌気培養した結果、これら遺伝子組換え酵母株のキシロース消費量(図5のAを参照)、エタノール生産量(図5のBを参照)とキシリトール生産量(図5のCを参照)を経時的に示した図である。まずキシロース消費量であるが、コントロール株のN4-Con1株は、72時間後に79%のキシロースを消費したのに対し、TAL1およびNQM1を発現する4株(N4-TAL1株、N4-NQM1株、N4-TAL1TKL1株、およびN4NQM1TKL1株)はコントロール株よりキシロースを多く消費し、逆にTKL2を発現する3株(N4-TKL2株、N4-TAL1TKL2株、およびN4-NQM1TKL2株)はコントロール株よりキシロース消費量が少なかった。その中で、最もキシロースを消費したのがN4-NQM1株で、72時間後に87%のキシロースを消費したのに対し、最もキシロース消費量が少なかったN4-TKL2株は67%であった。すなわち、PPPの酵素遺伝子の組み合わせによって、様々なキシロース発酵速度が得られることが分かった。キシロース消費量に伴い、エタノール生産量についても酵母株間で差が生じた。すなわち、コントロール株のN4-Con1株は、72時間後に5.3g/Lのエタノールを生産したのに対し、TAL1およびNQM1を発現する4株(N4-TAL1株、N4-NQM1株、N4-TAL1TKL1株、およびN4NQM1TKL1株)はコントロール株よりエタノールを多く生産し、逆にTKL2を発現する3株(N4-TKL2株、N4-TAL1TKL2株、およびN4-NQM1TKL2株)はコントロール株よりエタノール生産量が少なかった。その中で、最もエタノールを生産したのがN4-NQM1TKL1株で、72時間後に5.5g/Lのエタノールを生産したのに対し、最もエタノール生産量が少なかったN4-NQM1TKL2株は4.7g/Lであった。すなわち、PPPの酵素遺伝子の組み合わせによって、様々なエタノール生産速度が得られることが分かり、基本的にエタノール生産速度はキシロース消費速度と比例していた。さらに、キシロース消費量に伴い、副産物であるキシリトール生産量についても酵母株間で差が生じた。すなわち、コントロール株のN4-Con1株は、72時間後に3.1g/Lのキシリトールを生産したのに対し、TAL1およびNQM1を発現する4株(N4-TAL1株、N4-NQM1株、N4-TAL1TKL1株、およびN4NQM1TKL1株)はコントロール株よりキシリトールを多く生産し、逆にTKL2を発現する3株(N4-TKL2株、N4-TAL1TKL2株、およびN4-NQM1TKL2株)はコントロール株よりキシリトール生産量が少なかった。その中で、最もキシリトールを生産したのがN4-NQM1株で、72時間後に3.5g/Lのキシリトールを生産したのに対し、最もキシリトール生産量が少なかったN4-NQM1TKL2株は2.3g/Lであった。すなわち、PPPの酵素遺伝子の組み合わせによって、様々な量のキシリトールが蓄積してくることが分かり、基本的にキシロース発酵速度の速い株は、エタノールを多く生産できるが、キシリトールも多く蓄積されることが分かった。その結果、これら9種類の酵母株間で顕著なエタノール収率の差は見られなかった。
図6は、N4-Con2株とN4-AGT1株を用いて、5g/Lのグルコースと16g/Lのキシロースを含むSCDX培地において嫌気培養した結果、これら遺伝子組換え酵母株のキシロース消費量(図6のAを参照)とエタノール生産量(図6のBを参照)を経時的に示した図である。キシロース消費量については、コントロール株のN4-Con2株は、72時間後に63%のキシロースを消費したのに対し、AGT1を発現するN4-AGT1株は、72時間後に74%のキシロースを消費し、コントロール株よりキシロースを多く消費した。すなわち、AGT1のトランスポーター遺伝子を発現させることによって、キシロース消費速度が向上することが示唆された。また、エタノール生産量についても、コントロール株のN4-Con2株は、72時間後に4.9g/Lのエタノールを生産したのに対し、AGT1を発現するN4-AGT1株は、72時間後に5.4g/Lのエタノールを生産し、コントロール株よりエタノールを多く生産した。すなわち、AGT1のトランスポーター遺伝子を発現させることによって、エタノール生産速度が向上することが分かった。図5の結果と同様に、エタノール生産速度はキシロース消費速度と比例していた。さらに、エタノール生産だけでなく、副産物のキシリトール等の生産も、コントロール株よりもN4-AGT1株の方が多くなった。これらの結果から、キシロース発酵速度の速い株は、エタノールを多く生産できるが、キシリトールも多く蓄積されることが分かり、このことから、これら2種類の酵母株間で顕著なエタノール収率の差は見られなかった。
本発明の遺伝子組換え酵母を用いた嫌気的な培養によって、従来公知であるXR、XDH、およびXKだけを発現させた遺伝子組換え酵母を用いた場合よりも、キシロース発酵速度が速くなり、高効率でキシロースをエタノールへ変換できる。これにより、木質系バイオマスに含まれるキシロースを次世代の液体エネルギーとして期待されているエタノールへの高効率での変換を実現できる。
配列番号2、3、5、6、8,9、11、12、14,15は、合成オリゴヌクレオチド配列を示す。

Claims (11)

  1. キシロースレダクターゼ遺伝子、キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子およびキシルロキナーゼ遺伝子が染色体組込みにより導入されており、かつα-グルコシドトランスポーター遺伝子を発現するプラスミドを含む、キシロースからエタノールを高効率に生産できる遺伝子組換え酵母。
  2. キシロースレダクターゼ遺伝子、キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子およびキシルロキナーゼ遺伝子が染色体組込みにより導入されており、かつ、さらにα-グルコシドトランスポーター遺伝子が染色体組込みにより導入されている、キシロースからエタノールを高効率に生産できる遺伝子組換え酵母。
  3. さらに、トランスケトラーゼ遺伝子及び/又はトランスアルドラーゼ遺伝子を過剰発現している、請求項1または2に記載の遺伝子組換え酵母。
  4. トランスケトラーゼ遺伝子及び/又はトランスアルドラーゼ遺伝子が酵母または細菌由来である、請求項3に記載の遺伝子組換え酵母。
  5. トランスケトラーゼ遺伝子及び/又はトランスアルドラーゼ遺伝子が、Saccharomyces cerevisiaeに由来する、請求項4に記載の遺伝子組換え酵母。
  6. キシロースレダクターゼ遺伝子およびキシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子がPichia stipitisに由来し、かつキシルロキナーゼ遺伝子がSaccharomyces cerevisiaeに由来する、請求項1〜5のいずれか1項記載の遺伝子組換え酵母。
  7. α-グルコシドトランスポーター遺伝子が酵母または細菌由来である、請求項1〜6のいずれか1項記載の遺伝子組換え酵母。
  8. α-グルコシドトランスポーター遺伝子が、Saccharomyces cerevisiaeに由来する、請求項7に記載の遺伝子組換え酵母。
  9. 遺伝子組換え酵母がSaccharomyces cerevisiaeを宿主として作製される、請求項1〜のいずれか1項に記載の遺伝子組換え酵母。
  10. 請求項1〜のいずれか1項に記載の遺伝子組換え酵母を用いた、キシロースからエタノールを生産する方法。
  11. 請求項1〜のいずれか1項に記載の遺伝子組換え酵母を用いた、セルロース系バイオマスから調製した糖化液からエタノールを生産する方法。
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