以下、本発明の実施の形態例について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施の形態例に関わるドラム式洗濯乾燥機の外観図である。図2は内部の構造を示すために筐体の一部を切断して示した斜視図である。
外郭を構成する筐体1は、ベース1hの上に取り付けられており、左右の側板1a,1b,前面カバー1c,背面カバー1d,上面カバー1e,下部前面カバー1fで構成されている。左右の側板1a,1bは、コの字型の上補強材(図示せず),前補強材(図示せず),後補強材(図示せず)で結合されており、ベース1hを含めて箱状の筐体1を形成し、筐体として十分な強度を有している。
ドア2は前面カバー1cの略中央に設けた衣類を出し入れするための投入口を塞ぐためのもので、前補強材に設けたヒンジで開閉可能に支持されている。ドア開放ボタン2aを押すことでロック機構(図示せず)が外れてドアが開き、ドアを前面カバー1cに押し付けることでロックされて閉じる。前補強材は、後述する外槽の開口部と同心に、衣類を出し入れするための円形の開口部を有している。
筐体1の上部中央に設けた操作・表示パネル3は、電源スイッチ4,操作ボタン5,表示器6を備える。操作・表示パネル3は筐体1下部に設けた制御装置7に電気的に接続している。
図2に示すドラム8は回転可能に支持されており、その外周壁および底壁に通水および通風のための多数の貫通孔を有し、前側端面に衣類を出し入れするための開口部8aを設けてある。開口部8aの外側にはドラム8と一体の流体バランサ8cを備えている。外周壁の内側には軸方向に延びるリフタ8bが複数個設けてあり、洗濯,乾燥時にドラム8を回転すると、衣類はリフタ8bと遠心力で外周壁に沿って持ち上がり、重力で落下するように動きを繰り返す。ドラム8の回転中心軸は、水平または開口部8a側が高くなるように傾斜している。
円筒状の外槽10は、ドラム8を同軸上に内包し、前面は開口し、後側端面の外側中央にモータ9を取り付ける。モータ9の回転軸は、外槽10を貫通し、ドラム8と結合している。前面の開口部には外槽カバー10aを設け、外槽内への貯水を可能としている。外槽カバー10aの前側中央には、衣類を出し入れするための開口部10bを有している。
開口部10bと前補強材(図示せず)に設けた開口部は、ゴム製のベローズ11で接続しており、ドア2を閉じることで外槽10を水封する。外槽10の底面最下部には、排水口10dが設けてあり、排水ホース12が接続している。排水ホース12の途中には排水弁(図示せず)が設けてあり、排水弁を閉じて給水することで外槽10に水を溜め、排水弁を開いて外槽10内の水を機外へ排出する。
外槽10は、下側をベース1hに固定されたサスペンション13(コイルばねとダンパで構成)で防振支持されている。また、外槽10の上側は上部補強部材に取り付けた補助ばね(図示せず)で支持されており、外槽10の前後方向へ倒れを防ぐ。外槽10の下部には振動センサー14が設置してあり、振動センサー14の出力からドラムの回転速度の制御を行う。この振動センサー14は上下,前後,左右の三方向の加速度を検知できる3軸加速度センサーである。
洗剤容器は筐体1内の上部左側に設けており、前部開口から引き出し式の洗剤トレイ15を装着する。洗剤類を入れる場合は、洗剤トレイ15を図1の二点鎖線で示すように引き出す。洗剤容器は、筐体1の上補強材に固定されている。
洗剤容器の後ろ側には、給水弁(図示せず)や風呂水給水ポンプ,水位センサーなど給水に関連する部品を設けてある。洗剤容器は、外槽10に接続されている。給水弁は多連弁で、洗剤容器,水冷除湿機構を備えた乾燥ダクト18へ給水する。カバー1eには、水道栓からの給水ホース接続口16,風呂の残り湯の吸水ホース接続口17が設けてある。
乾燥ダクト18は筐体1の背面内側に縦方向に設置され、ダクト下部は外槽10の背面下方に設けた吸気口10cにゴム製の蛇腹管A18aで接続される。乾燥ダクト18内には、水冷除湿機構を内蔵しており、給水弁から水冷除湿機構へ冷却水を供給する。冷却水は乾燥ダクト18の壁面を伝わって流下し吸気口10cから外槽10に入り排水口10dから排出される。
乾燥ダクト18の上部は、筐体1内の上部右側に前後方向に設置したフィルタダクト19に接続している。フィルタダクト19の前面には開口部を有しており、この開口部に引き出し式の乾燥フィルタ20を挿入してある。乾燥ダクト18からフィルタダクト19へ入った空気は、乾燥フィルタ20のメッシュフィルタ(図示せず)に流入し糸くずが除去される。乾燥フィルタ20の掃除は、乾燥フィルタ20を引き出してメッシュ式のフィルタを取り出して行う。また、フィルタダクト19の乾燥フィルタ20挿入部の下面には開口部が設けてあり、この開口部は吸気ダクトが接続しており、吸気ダクトの他端は送風ユニット22の吸気口と接続している。
送風ユニット22は、駆動用のモータ22a,ファン羽根車(図示せず)、ファンケース22bで構成されている。ファンケース22bにはヒータ23が内蔵されており、ファン羽根車から送られる空気を加熱する。送風ユニット22の吐出口は温風ダクト24に接続する。温風ダクト24は、ゴム製の蛇腹管B24aを介して外槽カバー10aに設けた温風吹き出し口25に接続している。本実施例では、送風ユニット22が筐体1内の上部右側に設けてあるので、温風吹き出し口25は外槽カバー10aの右斜め上の位置に設け、温風吹き出し口25までの距離を極力短くするようにしてある。
脱水運転時および乾燥運転時の風の流れは次のようになる。送風ユニット22を運転し、ヒータ23に通電すると、温風吹き出し口25からドラム8内に高速の温風が吹き込み(矢印31)、湿った衣類に当たり、衣類を温め衣類から水分が蒸発する。高温高湿となった空気は、ドラム8に設けた貫通孔から外槽10に流れ、吸気口10cから乾燥ダクト18に吸い込まれ、乾燥ダクト18を下から上へ流れる(矢印32)。乾燥ダクト18の壁面には、水冷除湿機構からの冷却水が流れ落ちており、高温高湿の空気は冷却水と接触することで冷却除湿され、乾いた低温空気となりフィルタダクト19へ入る(矢印33)。フィルタダクト19に設けたフィルタ20を通り糸屑が取り除かれ、送風ユニット22に吸い込まれる。そして、ヒータ23で再度加熱され、ドラム8内に吹き込むように循環する。
図3にこの洗濯乾燥機の各工程を制御する制御部を示す。図に示すように制御部はマイクロコンピュータ(以下、マイコンと記す)41を中心に構成される。これに予め記録されたプログラムにより、操作・表示パネル3,振動センサー14,回転速度検出装置42からの入力に基づき、給水弁16a,排水弁12a,モータ9などを制御し、洗い,すすぎ,乾燥工程の動作を行う。モータ9はモータ駆動回路43を介して駆動される。
また、マイコン41は運転パターンデータベース45を保存しており、回転速度算出部46,布量演算部47,振動量演算部48,回転速度探索部49,運転時間記録部50,ヒータ制御部51,メモリ52を持つ。
回転速度算出部46は回転速度検出装置42からの信号を基に回転速度を算出する。ヒータ制御部51は回転速度算出部46からの回転速度情報や、運転時間記録部50からの情報などを基にヒータの制御を行う。
また、上記構成において洗濯・乾燥を行ったときのドラムの動作を説明する。以下、図4のフローを用いて説明する。
洗濯乾燥を開始し(S1)、布量を測定する(S2)。その方法は、ドラムを200rpm程度まで一気に加速し、通電をやめてフリーラン状態にし、ドラムの回転速度の減速率を計測する。その減速率に応じて、布量演算部47で布量を求める。
次に給水弁を開け、給水する(S3)。水位センサーで水量を確認しながら給水するが、時間としては1〜2分程度となる。このとき、洗剤容器に投入された洗剤も一緒に流される。洗剤を溶かしながら、衣類に洗剤液を浸透させる浸透運転を行う(S4)。ここでは、回転速度を40rpm程度で一方向に15秒間回し、その時間よりも短い5秒間停止し、逆方向に15秒間回転させる。その運転中にも水量を確認し、衣類に多く洗剤液がしみ込んで、水位が低下したら、水を補給する。この運転を2分程度行い衣類に満遍なく洗剤液を浸透させる。その後、本発明の機械力測定運転を行う(S5)。機械力測定運転については後述するが、投入した衣類に対して、ドラムの回転速度と機械力の関係を求めるために、回転速度を変化させて運転する。時間は2分程度であり、その後の洗い工程の時間よりも短く設定する。あまり長くすると洗濯時間が長くなりすぎてしまう。機械力測定工程の結果、機械力が最も高くなる回転速度が算出され、その回転速度で洗い運転を行う(S6)。洗い運転では一方向に回転させる時間を機械力測定運転より長い15秒にし、洗浄力を高める運転を行う。この洗い運転も浸透運転と同様に正転、停止、反転、停止を繰り返す。この時間は浸透工程や機械力測定工程よりも長い10分間とし、この時間で衣類から汚れを落とす。ただし、この時間はドラム式洗濯乾燥機の標準設定の時間であり、ユーザーが個々に設定可能である。標準であらかじめ決められた時間、もしくはユーザーが設定した時間が経過したら(S7)、排水し(S8)、洗い工程を終了させる。ステップS7でユーザーが設定した時間が10分以上の場合は、ステップS5に戻り機械力測定運転を行う。洗い運転により洗剤があわ立ったり、衣類の絡み状態が洗濯開始時と異なったりして、衣類の動きが洗濯開始時と異なることもあり、再度回転速度の調整を行うほうが望ましい。この機械力測定運転により機械力が大きくなる回転速度を求め、その回転速度で残りの洗い運転を行う(S6)。本実施例では10分ごとに機械力測定運転をしているが、もっと頻度よく行っても構わない。逆に始めの1回だけでもかまわない。また、本実施例では機械力測定運転の時間は2分であるが、機械力のばらつきを低減させるために洗い工程とほぼ同じくらい長い時間行ってもよい。
続いてすすぎ工程に移る。すすぎ脱水を行い(S9)、洗剤液を衣類から取り除く。その後、すすぎ水を給水し(S10)、機械力測定運転を行う(S11)。すすぎに関しても、機械力が高ければ、その分衣類に残った洗剤が押し出されやすく、すすぎ運転の時間短縮に有効である。この機械力測定運転で求めた回転速度で8秒間ドラムを交互に回転させ、すすぎ運転を行い(S12)、排水し(S13)、一回目のすすぎ工程を終了する。続いて2回目のすすぎ工程を行う。一回目と同様に、すすぎ脱水(S14),給水(S15),機械力測定運転(S16),すすぎ運転(S17),排水(S18)を行う。この2回のすすぎで機械力測定運転を行っているが、洗い工程で行った結果の回転速度をそのまますすぎ工程に適用し、すすぎ工程の機械力測定運転を省略してもかまわない。
続いて、最終脱水を行い(S19)、高速脱水を行う(S20)。これは、乾燥前に衣類からできるだけ水分を取り除き、省電力化を目的とし、最終脱水より高速となる1200rpmで、より長時間となる15分間行う。長時間脱水を行うことで、衣類がドラム内壁に張り付いているので、それをはがすために衣類ほぐし運転を3分行う(S21)。この運転もドラムを交互に回転させるが、回転時間を5秒として、反転周期を短くし、衣類を左右に強く揺さぶり、はがれやすくする。衣類がはがれ、タンブリング動作になった段階で、機械力測定運転を行う(S22)。乾燥時においても、機械力が大きくなるように、つまりは落下距離,落下時間を長くすることで衣類を広げることができ、乾燥後のしわつきを低減することができる。この機械力測定運転により求めた回転速度でその後の乾燥運転を行う(S23)。乾燥運転もドラムを交互に回転させるが、回転時間を洗い運転より長い25秒とする。反転させるときに大きな電力が必要であり、頻繁に運転方向を変えると余分な電力がかかってしまう。乾燥運転をしながら、衣類の乾き具合を計測しているが、その乾き具合をもとに乾燥工程の終了の判定を行い(S24)、十分乾いたと判断したら乾燥工程を終了し、洗濯・乾燥を終了する(S25)。ステップS23で乾燥運転を30分行ってもステップS24の乾き判定で乾いていないと判断したら、ステップS22の機械力測定運転を再度行う。これは、乾燥が進み、水分が蒸発し、衣類の重量が軽くなり、その重さに合わせた回転速度で回転させるほうが衣類の動きが良くなるため、望ましい。ステップS24の乾き判定で乾いたと判断されるまでこのループを繰り返し行う。
このように、機械力測定運転により衣類に合った回転速度を見つけ、その回転速度により洗い・すすぎ・乾燥運転を行うことで、洗浄力を高め、すすぎ時間を短縮し、乾燥後のしわつきを低減させることができる。
以下、本実施例の機械力測定運転について図5〜図8を用いて説明する。
まず、機械力について説明する。洗浄力は洗剤による化学的な作用と機械的な力の2つの要素が関係している。洗剤量が同じなら、衣類に作用する機械的な力(機械力)が大きいほうが洗浄効果が高い。ドラム式洗濯乾燥機の場合、機械力はドラムの回転とともに衣類自体が落下したときに受ける衝撃力である。この衝撃はドラムも受け、ドラムを支えている外槽にも伝わる。外槽はサスペンションで支持されており、この衝撃を受けて振動する。図5に外槽の振動の様子を示す。衣類の落下により外槽は下向きに動くので、そのときの振動(加速度)を積算することで、衣類に作用した力を計測できる。加速度センサーの向きを上向きに設置したら、加速度センサーの出力がプラス側の値を積算した値を機械力とする。
また、図5に示すように外槽の加速度は大きな振動や小さな振動が入り混じった波形となる。大きな振動が発生しているときは複数の衣類が固まって落下したときであり、小さな振動が発生しているときは個々の衣類がばらばらに落下しているときである。両方とも衣類に機械力を与えており、積算することで総合して機械力を評価することができる。もし、最大値を評価したら、固まった衣類の重量を評価していることになってしまい、望ましくない。
機械力となる積算区間は、一定速になった状態が望ましい。加速中の振動には衣類の落下による振動ではなく、加速したときの反作用による振動も含まれるため、加速中の振動は機械力として評価しないほうが望ましい。
また、本実施例では積算値を機械力としたが、積算した個数で割った平均値としてもかまわない。また、下方向へ動くときの加速度を積算したが、外槽はサスペンションで支持されており、下に動いたら必ず上に戻ってくるので、上方向の動きの加速度を積算してもかまわない。もしくは両方を加算してもかまわない。また、波形をそのまま積算せずに、波形を周波数分析して、全周波数もしくは特定の周波数区間の振幅値を積算してもかまわない。
また、本実施例の振動センサーは3方向を検知できるものであり、上下方向でなく、前後方向もしくは左右方向でもかまわない。また、1方向だけでなく、各方向について積算した値を加算平均もしくは2乗平均してもかまわない。平均する計測軸方向は3方向でなく、2方向でもかまわない。また、計測軸方向で揺れやすい方向と揺れににくい方向があるため、軸方向で重み付けをしたほうが望ましい。
また、本実施例ではサンプリング周波数を500Hzとして機械力を求めたが、100Hz以上のサンプリング周波数が望ましい。
このように機械力を測定した結果とドラムの回転速度の関係を図6に示す。この図には洗浄度も併せて示す。洗浄度とは、汚染布という人工的に汚れをつけた布を衣類に張り付けて洗浄し、この汚染布の反射率が洗浄前と後でどの程度変化したかを示す値である。洗浄度が高ければ、それだけ汚れが落ちたことを示す。この図に示すように、機械力と洗浄度は回転速度に対して同じようなカーブを描く。よって、本発明の機械力を高くする運転を行うことで洗浄力を高めることができる。
また、図7に布量を変えた場合の機械力を示す。□で示した点が布量3kgの場合であり、×で示した点が布量9kgの場合である。また実線は3kgの場合に対して2次曲線で近似した線であり、破線は9kgの場合に対して2次曲線で近似した線である。この図のように機械力は回転速度によって変化し、ピークを示す回転速度が存在する。このピークを示す回転速度は布量によって異なることがわかる。布量が少ない場合、回転速度を高くすると、急激に機械力が低下している。布量が多い場合は、少ない場合に比べて高い回転速度まで機械力は上昇し、さらに回転速度を高くすると緩やかに機械力が低下する。衣類が少ない場合には衣類はドラム内壁面近傍にしかなく、高い回転速度になると遠心力の影響を強く受け、落下しにくくなる。そのため、回転速度が高くなると機械力が急激に低下する。衣類が多い場合には、ドラム内壁面近傍だけでなく、回転中心近くにも衣類が存在するため、回転中心付近の衣類は遠心力の影響が弱いため落下し、それに引きづられて内壁近傍の衣類も落下する。よって衣類が多い場合には比較的高い回転速度でも落下でき、機械力が最高となる回転速度が高くなる。
また図8に、同じ重量で衣類の組み合わせが異なる場合を示す。◇で示した点がバスタオルのみの場合であり、□で示した点がワイシャツのみの場合である。実線はバスタオルに対して2次曲線で近似した線であり、破線はワイシャツに対して2次曲線で近似した線である。この図より衣類の組み合わせによってもピークを示す回転速度が異なることがわかる。バスタオルはワイシャツに比べて水を多く含むことができ、湿布状態での重量が重くなる。同じ回転速度で動かしても、ワイシャツは低い回転速度でもドラム上方まで持ち上がるが、バスタオルの場合、回転速度を高くしないと、ドラム上方まで持ち上げることができない。そのため、バスタオルのような水を多く含む衣類の場合は、機械力が最大になる回転速度が高くなる。
このように衣類の量および組み合わせによって機械力のピークとなる回転速度は異なる。また図8に示すように、同じ布量でも機械力のレベルが全く異なるため、予め設定した閾値で機械力を評価することは難しい。そのため、回転速度を変化させ、各回転速度の機械力を求め、それら結果同士を比較することで、機械力がピークとなる回転速度を見つける。
本発明により、衣類に合わせて機械力がピークなる回転速度を見つけ、その回転速度で運転することにより洗浄力を向上させることができる。
以下、本発明の機械力測定運転について図9,図10を用いて説明する。図9は機械力測定運転のフローを示し、図10はドラムの回転速度を示す。機械力測定運転を開始すると(S101)、図4のステップS2で行った布量の検出結果に基づき動作パターンを変更する(S102)。これは先に説明したように、布量によって、機械力がピークとなる回転速度の傾向が異なるためであり、あらかじめ布量に合わせて探索する回転速度範囲を制限することで、効率よく機械力がピークとなる回転速度を見つけることができる。
布量が少ない場合には、探索回転速度範囲を35〜39rpmとし、布量が多い場合には37〜41rpmとする。布量が少ない場合の探索運転は、まず右周りに35rpmで10秒間運転する(S103)その間の振動センサーの振動積算値から機械力V11を求める。この機械力V11をメモリに記憶させる。次に、左回りに39rpmで10秒間回転させる(S104)。ここでも同様に機械力V12を求め、メモリに記憶させる。これらの運転の間にドラムを停止させる時間を設ける。本実施例では3秒としており、洗浄力を向上させるために回転している時間より短い時間が望ましい。以下同様に、右周りに37rpmで10秒間回転させ(S105)、その間の機械力をV13として記憶する。左回りに37rpmで10秒間回転させ(S106)、その間の機械力をV23として記憶する。右回りに39rpmで10秒間回転させ(S107)、その間の機械力をV22として記憶する。左回りに35rpmで10秒間回転させ(S108)、その間の機械力をV21として記憶する。このように回転速度と回転方向を変化させて、その間の機械力を求める。これらの機械力を比較して、機械力が高くなる回転速度を求める。まず、機械力V11と機械力V21は回転方向が異なるが同じ回転速度であるため、これらの値を加算して35rpmでの機械力とする。同様に、機械力V12と機械力V22も回転方向が異なるが、これらの値を加算して37rpmでの機械力とする。機械力V13と機械力V23も回転方向が異なるが、これらの値を加算して39rpmでの機械力とする。本実施例のように、同じ回転速度で複数回回転させ、加算もしくは平均することで、機械力のばらつきを低減させるほうが望ましい。また、回転速度も上昇させる、降下させる等の規則正しく回転速度を変化させるよりも、ランダムに変化させるほうが望ましい。
機械力V11と機械力V21の和と機械力V12と機械力V22の和を比較し(S109)、機械力V11と機械力V12の和が大きければ、機械力V13と機械力V23の和と比較し(S110)、機械力V11と機械力V12の和が大きければ、35rpmの機械力が大きいと判断し、洗い運転時の回転速度Wを35rpmにする(S111)。また、ステップS110において機械力V13と機械力V23の和が大きければ、37rpmの機械力が大きいと判断し、洗い運転時の回転速度Wを37rpmにする(S112)。
ステップS109において機械力V11と機械力V21の和と機械力V12と機械力V22の和を比較し、機械力V21と機械力V22の和が大きければ、機械力V13と機械力V23の和と比較し(S113)、V21とV22の和が大きければ、39rpmの機械力が大きいと判断し、洗い運転時の回転速度Wを39rpmにする(S114)。また、ステップS113において機械力V13と機械力V23の和が大きければ、37rpmの機械力が大きいと判断し、洗い運転時の回転速度Wを37rpmにする(S112)。このような工程を経て、機械力測定工程を終了する(S115)。
布量が多い場合には、探索回転速度を37rpm(S115),41rpm(116),39rpm(S117),39rpm(S118),41rpm(S119),37rpm(S120)と変化させて、同様に機械力を求め、これらの機械力を比較して、機械力が高くなる回転速度を求める(S121〜S126)。
以上のように回転速度を変化させ、機械力を求め、その結果を比較して、機械力が最大となる回転速度を求め、その回転速度を洗い運転時の回転速度に設定して運転する(図4のステップS6)。これにより、衣類の重さ,種類に応じて、回転速度を変化させて、機械力が最大となる回転速度で運転することができる。
次に第2の実施例を図11,図12を用いて説明する。本実施例の洗濯乾燥機の構造は第1の実施例と同じであり、説明を省略する。また、洗濯,乾燥および洗濯乾燥時の運転のフローも第1の実施例と同じであり、説明を省略する。第1の実施例と異なるところは、機械力が最大となる回転速度を探索する工程であり、図11,図12を用いて説明する。本実施例では、回転速度と機械力(振動積算値)との関係を推定し、それを基に探索する。図11はその機械力測定工程のフローを示し、図12はそのときのドラムの回転速度を示す。
まず右周りに35rpmで10秒間運転する(S202)その間の振動センサーの振動積算値から機械力V1を求める。この機械力V1をメモリに記憶させる。次に、左回りに39rpmで10秒間回転させる(S104)。ここでも同様に機械力V2を求め、メモリに記憶させる。これらの回転の間にドラムを停止させる時間を設ける。本実施例では3秒としており、洗浄性能を向上させるためにも停止時間は短いほうが望ましく、停止時間は回転している時間より短い時間が望ましい。以下同様に、右周りに37rpmで10秒間回転させ(S204)、その間の機械力をV3として記憶する。左回りに38rpmで10秒間回転させ(S205)、その間の機械力をV4として記憶する。右回りに40rpmで10秒間回転させ(S206)、その間の機械力をV5として記憶する。左回りに36rpmで10秒間回転させ(S207)、その間の機械力をV6として記憶する。このように回転速度と回転方向を変化させて、その間の機械力を求める。これらの機械力と回転速度の関係を表す近似式を作成する(S208)。図7,図8のように回転速度と機械力の関係は山なりのカーブを描くため、2次式で近似する。機械力をVとし、回転速度をwとしたとき、近似式はV=a×w2+b×w+cと書ける。a,b,cは定数である。この近似式のピークとなる回転速度は−b/(2×a)であり、この速度を洗い工程での回転速度に設定し(S209)、機械力測定工程を終了する(S210)。本実施例では2次式で近似したが別の式で近似してもかまわない。
次に、第3の実施例を示す。本実施例も洗濯乾燥機の構造は第1の実施例と同じであり、説明を省略する。また、洗濯,乾燥および洗濯乾燥時の運転のフローも第1の実施例と同じであり、説明を省略する。第1の実施例と異なるところは、機械力が最大となる回転速度を探索する工程であり、図13,図14を用いて説明する。本実施例での探索アルゴリズムとして、遺伝的アルゴリズムを使う。図13はその機械力測定工程のフローを示し、図14はそのときのドラムの回転速度を示す。
まず右周りに35rpmで10秒間運転する(S302)その間の振動センサーの振動積算値から機械力V1を求める。この機械力V1をメモリに記憶させる。次に、左回りに39rpmで10秒間回転させる(S303)。ここでも同様に機械力V2を求め、メモリに記憶させる。これらの回転の間にドラムを停止させる時間を設ける。本実施例では3秒としており、洗浄性能を向上させるためにも停止時間は短いほうが望ましく、停止時間は回転している時間より短い時間が望ましい。つづいて、右周りに37rpmで10秒間回転させ(S304)、その間の機械力をV3として記憶する。
これらの機械力は第1世代の集合として扱い、この中で最適と思われる回転速度を中心に第2世代の集合を作成する。そのために、まず、これらの機械力から最大値を求める。機械力V1が機械力V2より大きければ(S305)、機械力V3と比較し(S306)、機械力V1が大きければ、35rpmを中心に第2世代を作成する。35rpmをW6、34rpmをW4、36rpmをW5とする第2世代の回転速度を設定する(S307)。ステップS306で機械力V3が大きければ37rpmを中心に第2世代を作成する。37rpmをW6、36rpmをW4、38rpmをW5とする第2世代の回転速度を設定する(S308)。ステップS305で機械力V2が大きければ、機械力V3と比較し(S309)、機械力V2が大きければ、39rpmを中心に第2世代を作成する。39rpmをW6、38rpmをW4、40rpmをW5とする第2世代の回転速度を設定する(S310)。ステップS309で機械力V3が大きければ37rpmを中心に第2世代を作成する。37rpmをW6、36rpmをW4、38rpmをW5とする第2世代の回転速度を設定する(S308)。
このように、第2世代の回転速度が決められ、これらの回転速度でさらに回転させて、各回転速度での機械力を求める。左周りにW4で10秒間回転させ(S311)、その間の機械力をV4として記憶する。右周りにW5で10秒間回転させ(S312)、その間の機械力をV5として記憶する。左周りにW6で10秒間回転させ(S313)、その間の機械力をV6として記憶する。これらの機械力から最大値を求める。機械力V4と機械力V5を比較し(V314)、機械力V4が大きければ、機械力V4と機械力V6を比較し(V315)、機械力V4が大きければ、機械力V4が最大値であり、W4を洗い工程での回転速度に設定する(S316)。ステップS316で機械力V6が大きければ、機械力V6が最大値であり、W6を洗い工程での回転速度に設定する(S317)。ステップS314で機械力V5が大きければ、機械力V5と機械力V6を比較し(S318)、機械力V5が大きければ機械力V5が最大値であり、W5を洗い工程での回転速度に設定する(S319)。S319で機械力V6が大きければ、機械力V6が最大値であり、W6を洗い工程での回転速度に設定する(S317)。このようにして、衣類の量,布質に応じて、機械力が大きくなる回転速度を求め、その回転速度を洗い工程に適用する。本実施例では第2世代で収束させたが、さらに増やしてもかまわない。
第4の実施例について説明する。本実施例では洗濯,洗濯・乾燥を行う場合、ユーザーがその性能度合いを図15に示す操作パネルで調整できるようになっている。操作パネル上には、コースを選択する洗濯ボタン61,乾燥ボタン62,洗濯・乾燥ボタン63と、運転時間を調整する洗い時間ボタン64,すすぎ回数ボタン65,脱水時間ボタン66,乾燥時間ボタン67と、運転開始,一時停止を行うスタートボタン68を設ける。また、表示パネル上には洗い時間表示69,すすぎ回数表示70,脱水時間表示71,乾燥時間表示72,残時間表示73,コース表示部74を設ける。コース表示部74には、標準75,念入り76,ソフト77,ナイト78が点灯できるようになっている。念入りは標準に比べて、洗浄力が高くなるようにドラムの回転時間,運転時間を長くしたコースであり、ソフトは逆に衣類の傷みを抑えた運転を行うコースであり、ナイトは夜間に運転できるように騒音を抑えたコースである。これらのコースは、コースを選択するボタン61〜63を押すごとに点灯するコースが変わり、ユーザーが選択できる。ソフトコースを選択した場合、衣類の傷みを抑えるために、機械力が大きくならないように運転する必要がある。そこで、機械力が小さくなる回転速度で洗濯する。
本実施例も洗濯乾燥機の構造は第1の実施例と同じであり、説明を省略する。また、洗濯,乾燥および洗濯乾燥時の運転のフローも第1の実施例と同じであり、説明を省略する。第1の実施例と異なるところは、機械力測定工程であり、図16を用いて説明する。本実施例では第一の実施例と目的が逆であり、機械力が最小となる回転速度を求める。
まず右周りに35rpmで10秒間運転する(S402)その間の振動センサーの振動積算値から機械力V11を求める。この機械力V11をメモリに記憶させる。以下同様に、左周りに39rpmで10秒間回転させ(S403)、その間の機械力をV12として記憶する。右周りに37rpmで10秒間回転させ(S404)、その間の機械力をV13として記憶する。左回りに37rpmで10秒間回転させ(S405)、その間の機械力をV23として記憶する。右回りに39rpmで10秒間回転させ(S406)、その間の機械力をV22として記憶する。左回りに35rpmで10秒間回転させ(S407)、その間の機械力をV21として記憶する。このように回転速度と回転方向を変化させて、その間の機械力を求める。これらの機械力を比較して、機械力が高くなる回転速度を求める。まず、機械力V11と機械力V21は回転方向が異なるが同じ回転速度であるため、これらの値を加算して35rpmでの機械力とする。同様に、機械力V12と機械力V22も回転方向が異なるが、これらの値を加算して37rpmでの機械力とする。機械力V13と機械力V23も回転方向が異なるが、これらの値を加算して39rpmでの機械力とする。
機械力V11と機械力V21の和と機械力V12と機械力V22の和を比較し(S408)、機械力V11と機械力V12の和が小さければ、機械力V13と機械力V23の和と比較し(S409)、機械力V11と機械力V12の和が小さければ、35rpmの機械力が小さいと判断し、洗い運転時の回転速度Wを35rpmにする(S410)。また、ステップS409において機械力V13と機械力V23の和が小さければ、37rpmの機械力が小さいと判断し、洗い運転時の回転速度Wを37rpmにする(S411)。
ステップS408において機械力V11と機械力V21の和と機械力V12と機械力V22の和を比較し、機械力V21と機械力V22の和が小さければ、機械力V13と機械力V23の和と比較し(S412)、機械力V21と機械力V22の和が小さければ、39rpmの機械力が小さいと判断し、洗い運転時の回転速度Wを39rpmにする(S413)。また、ステップS412において機械力V13と機械力V23の和が小さければ、37rpmの機械力が小さいと判断し、洗い運転時の回転速度Wを37rpmにする(S411)。このような工程を経て、機械力測定工程を終了する(S414)。
以上のように回転速度を変化させ、機械力を求め、その結果を比較して、機械力が最小となる回転速度を求め、その回転速度を洗い運転時の回転速度に設定して運転する(図4のステップS6)。これにより、衣類の重さ,種類に応じて、回転速度を変化させて、機械力が小さい回転速度で運転し、衣類の痛みを抑えながら運転することができる。
最後に第5の実施例を説明する。本実施例は図4の洗い運転(ステップS6)における衣類の絡みを防止する運転に関するものである。衣類が絡みだすと、衣類は個別に落下しなくなり、固まって落下する。固まった衣類は重く、落下時の衝撃は大きくなる。その様子を図17に示す。この図に示すように、絡んだ状態になると、加速度に大きな出力が表れる。この大きな衝撃を検知することで衣類の絡み具合を検知する。衣類の絡みはドラムを一方向に回転させる時間が長ければ、どんどん絡んでしまう。そこで、衣類が絡み始めた段階でドラムの回転を停止させ、反転させることで絡みを解く。このフローを図18に示し、説明する。
洗い運転を開始したら(S501)、洗い時間T1を計測し始める(S502)。次にモータに電流を流し、ドラムを右周りに回転させる(S503)。ドラムの回転時間T2を計測し始める(S504)。ドラムが回転している間、振動センサーで振動値Xを測定する(S505)。振動値Xが所定の値Xaより小さければ(S506)、絡んでいないと判断し、回転を続ける。ドラム回転時間が15秒に満たない場合(S507)は、ステップS505から繰り返し、15秒に達したら、モータをオフしてドラムの回転を停止する(S508)。停止時間T3を計測し始め(S509)、5秒経過したら(S510)、モータに電流を流してドラムを逆方向となる左回りに回転させる(S511)。ステップS506で振動値が所定の値Xaより大きければ、衣類が絡み始めたと判断する。ただし、所定の洗浄性能を得るためには最低限必要な時間回転させた方が望ましく、ドラムは8秒以上回転させる。そのため、ドラム回転時間T2が8秒以上の場合には(S512)、モータをオフし、回転を停止させる(S508)。このとき、所定の回転時間15秒に達しなかった時間を回転不足時間Tcに追加する(S513)。これは、所定の回転時間をスキップしたことにより、ドラムが回転している時間が短くなるので、その分洗浄時間を延長させるためである。
このように右回転、停止を終えた後、左回転に移るが、左回転も同様に運転する。ドラムの回転時間T2を計測し始める(S514)。ドラムが回転している間、振動センサーで振動値Xを測定する(S515)。振動値Xが所定の値Xaより小さければ(S516)、絡んでいないと判断し、回転を続ける。ドラム回転時間が15秒に満たない場合(S517)は、ステップS515から繰り返し、15秒に達したら、モータをオフしてドラムの回転を停止する(S518)。停止時間T3を計測し始め(S519)、5秒経過したら(S520)、モータに電流を流してドラムを逆方向となる右回り、ステップS503に戻る。ステップS516で振動値が所定の値Xaより大きければ、衣類が絡み始めたと判断する。ただし、洗浄に最低限必要な時間回転させた方が望ましく、ドラム回転時間T2が8秒以上の場合に(S511)、モータをオフし、回転を停止させる(S522)。このとき、所定の回転時間15秒に達しなかった時間を回転不足時間Tcに追加する(S513)。
このような運転の中で、洗い時間T1が所定の時間に達したら(S523)、洗い運転を終了させる(S524)。ここでの所定時間は、初期設定では10分であるが、先にも述べたように、絡みを防ぐために回転時間をスキップしたことによる回転不足時間Tcを追加した10分+Tcとなる。回転不足時間を追加した方が洗浄力が高くなるため望ましいが、時間の延長につながるため、追加しなくてもよい。本実施例は、洗い工程だけ述べたが、すすぎ工程,乾燥工程でも同様に適用できる。
以上のように、本発明は洗い時,すすぎ時,乾燥時において、ドラムの回転方向と回転速度を変えて、外槽の振動を外槽に取り付けた加速度センサーで計測し、そのセンサー出力の積算値が大きくなる回転速度を求め、その後その回転速度で運転することで、衣類の重さ,種類によらず高い機械力を与えることができ、洗浄力を高めることができる。
また、逆に振動センサー出力の積算値が小さくなる回転速度で運転することで、衣類を傷めない運転を行うことができる。
また、ドラム回転時のセンサー出力を計測して、過大なセンサー出力を計測したら、回転を停止し、反転動作に移ることで、絡みを防止することができる。