JP5604307B2 - 銅または銅合金用のエッチング液、エッチング方法及びエッチング液の再生管理方法 - Google Patents

銅または銅合金用のエッチング液、エッチング方法及びエッチング液の再生管理方法 Download PDF

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Description

本発明は、銅または銅合金用のエッチング液、エッチング方法及びエッチング液の再生管理方法に関する。
近年、電子機器の小型化高機能化が急速に進展し、これら機器に内蔵されるプリント配線板に関しても、高い回路密度を有するものが強く求められている。
プリント配線板の製造方法としては、あらかじめ銅箔を接着した基板上にレジストパターンを形成し、塩化鉄(III)水溶液等のエッチング液を用いて不要部分の銅箔を除去するサブトラクティブ法が広く用いられている。しかし、この方法によりプリント配線板を製造する場合、レジストパターンの裏面にエッチング液が回りこみ、ライン幅がレジストパターンのそれよりも細くなり、またライン断面の形状が矩形にならない、いわゆるアンダーカットが生じることが知られている。アンダーカットが生じると、形成された回路の電気的特性が悪化し、また部品の実装に必要な面積が確保できなくなるという問題があることから、回路密度の高いプリント配線板をサブトラクティブ法で製造することは困難であった。
また、塩化鉄(III)水溶液を主体とした銅箔の連続エッチングにおいては、エッチングが進行するに従って、塩化鉄(III)が塩化鉄(II)に変化して、副生成物として塩化銅(II)が生成し、最終的にはエッチング液が使用できない状態まで劣化するため、連続運転が困難であった。
連続運転を可能とすることを目的として、エッチング液の化学的な数値を経時的に読み取り、その数値の変化に応じて、様々な再生助剤を添加しながら、連続した再生運転を行う手法が試みられている。しかし、再生してエッチングが可能な状態に戻すことはできるものの、新液の状態に戻すことはできない。そして、再生を何度も繰り返した場合、最終的に再生前後のエッチング液の組成濃度は大きく変化し、その結果、エッチング速度も大きく変わってしまい、新液から安定したエッチング速度を確保しながらの連続再生運転を行うことは困難であった。さらに、温度やエッチング液に存在する泡の影響によって、エッチング液の化学的な数値を正確に読み取ることができず、安定した再生管理を行うことも困難であった。
例えば、アンダーカットを抑制するための技術として、塩化鉄(III)を主成分としチオ尿素を添加したエッチング液を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、塩化鉄(III)等の酸化性金属塩と無機酸あるいは有機酸を成分とするエッチング液にベンゾトリアゾール等のアゾール化合物を添加することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献1及び2の技術では、アンダーカットの抑制はある程度可能である。しかしながら、塩化鉄(III)水溶液を主体としたエッチング液による銅箔の連続エッチングにおいては、エッチングが進行するに従って、塩化鉄(III)が塩化鉄(II)に変化して、副生成物として塩化銅(II)が生成し、最終的にはエッチング液が使用できない状態まで劣化する。そのため、特許文献1及び2の技術では、安定した連続再生運転が困難であった。
エッチング液の主成分が塩化鉄(III)ではなく、二価のハロゲン化銅を主成分とし、ハロゲン化鉄を更に添加したエッチング液において、ハロゲン化鉄とハロゲン化銅との濃度を測定し、その結果に基づき、酸化剤を添加する方法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、特許文献3の技術では、アンダーカットの抑制ができないばかりか、再生過程において、エッチング速度が大きく変化してしまい、安定した連続再生運転もできなかった。
安定した連続再生運転を行うことを目的として、エッチング液の酸化還元電位と塩素濃度等を検知し、塩素酸塩1当量に対し、塩化水素、塩化第二鉄をある特定の割合で添加する方法が提案されている(例えば、特許文献4及び5参照)。しかし、特許文献4及び5の技術では、再生を行うと、エッチング液中の組成濃度が変化してしまい、連続して安定したエッチング速度を確保することができなかった。また、アンダーカット抑制能力については、全く不十分であった。
エッチング液の再生装置として、酸性エッチング液を対象に、再生ガスであるオゾンを吹き込んで再生させ、その劣化程度を測定する手段として、フローセルタイプの光度計を用い、エッチング液の色、吸光度を測定するエッチング液再生装置が提案されている(例えば、特許文献6参照)。しかし、特許文献6の技術では、再生を繰り返すに従って、塩化銅濃度が高くなり、光度計での適切な管理ができなくなると共に、エッチング速度が変化してしまい、安定した連続再生運転ができなかった。また、アンダーカット抑制能力については、全く不十分であった。さらに、温度の変化により吸光度の値が変化してしまったり、エッチング液中に存在する泡の影響でエッチング液の色、吸光度に大きな振れを生じ、安定した再生管理を行うことはできなかった。
無電解複合めっき液の自動管理装置として、少なくとも2つ以上の異なる波長で透過率または吸光度を測定し、その測定値から目的とする組成濃度を演算処理により算出する自動分析・管理装置が提案されている(例えば、特許文献7参照)。しかし、特許文献7の技術では、予め配合するめっき液の組成濃度を変化させた基礎データから検量線を作成し、これを用いて未知の無電解複合めっき液の濃度を算出するものであり、温度の影響や泡の影響を除外することはできなかった。
酸溶液の金属含有量の測定方法として、波長が異なる複数種の透過度または反射度から金属含有量を算出する方法が提案されている(例えば、特許文献8参照)。この方法では、確かに、発光強度の変動、受光素子の感度変動、光学系のひずみのような小さな変動は修正可能であるが、温度の影響や泡の影響を除外することはできなかった。
分光測定方法として、各種出力変動原因のそれぞれについて、単位当たりの出力変動原因に対する出力変動を各波長毎に測光し、部分空間に射影したデータに変換した後、検量線式を求めて、各種誤差変動を除去する分光測定法が提案されている(例えば、特許文献9参照)。しかし、特許文献9の技術では、各種変動原因全ての変動データが必要であり、しかも、銅箔を処理することによって、エッチング液の組成が時間と共に変化していく場合に、その全てのデータを予め準備することは困難であり、実用的ではなかった。
米国特許第3144368号明細書 米国特許出願公開第2005/0016961号明細書(特開2005−330572号公報) 特開2006−124740号公報 特許第3193152号公報 特許第3320111号公報 特開平8−302487号公報 米国特許出願公開第2003/049169号明細書(特開2002−47575号公報) 特開2004−294205号公報(外国ファミリーなし) 米国特許第5227986号明細書(特開平3−209149号公報)
本発明の課題は、アンダーカットが非常に少ないエッチングが可能であり、かつ再生を行っても建浴時から安定したエッチング速度を保つことができる銅または銅合金用のエッチング液及びエッチング方法を提供することである。また、再生前後でエッチング速度の変化が小さく、エッチング液の温度やエッチング液中に存在する泡の影響が抑制可能であり、メンテナンス性に優れたエッチング液の再生管理方法を提供することである。
本発明者らは、かかる問題点について鋭意研究した結果、以下の発明を完成した。すなわち、本発明は、プリント配線板をサブトラクティブ法で製造する際に用いられる銅または銅合金用エッチング液であって、水を主成分とし、(1)5〜20質量%の塩化鉄(III)、(2)0.5〜3質量%の塩化銅(II)、(3)塩化鉄(III)に対して5〜20質量%の銅と不溶性の塩を形成する化合物を含有してなり、銅と不溶性の塩を形成する化合物が、シュウ酸、チオ尿素、アゾールから選ばれることを特徴とする銅または銅合金用のエッチング液、該エッチング液を新液として使用することを特徴とするエッチング方法及び異なる2つ以上の波長における透過度の比を用いて再生管理を行うことを特徴とするエッチング液の再生管理方法である。
エッチング方法において、銅と不溶性の塩を形成する化合物がシュウ酸であることが好ましい。
エッチング液の再生管理方法において、異なる2つ以上の波長における透過度の比を、同一光路内で同時計測して求め、エッチング液の再生管理をすることが好ましい。
本発明の第一の特徴は、エッチング液である。本発明のエッチング液は、塩化鉄(III)及び塩化銅(II)濃度が規定の範囲にあり、銅と不溶性の塩を形成する化合物を含有しているため、従来困難であったアンダーカットが非常に少ないエッチングが可能となり、高い回路密度を有するプリント配線板のサブトラクティブ法による製造が可能になった。また、銅と不溶性の塩を形成する化合物として、特にシュウ酸を用いることで、よりアンダーカットが抑制されるとともに、エッチング液の使用中に有毒ガスを発生せず、また処理方法が確立された成分のみからなることから使用後の処理も容易かつ完全に行うことができ、労働衛生上、公害防止上、また環境保全上の問題を回避することも容易である。
本発明の第二の特徴は、エッチング液によってもたらされる安定した連続再生運転である。本発明のエッチング液は、銅箔のエッチング量及びこれに相当する再生とオーバーフローに伴う塩化銅、その他の添加物の濃度変化をあらかじめ考慮したエッチング液配合であるため、そのまま建浴し、再生を開始しても、エッチング液中の各種組成濃度の変化はほとんど見られず、常に新液の組成濃度を保つことが可能となり、建浴時から安定したエッチング速度を保つことができる。
本発明の第三の特徴は、再生管理によってもたらされる安定した連続再生操業である。本発明の再生管理はエッチング液の透過度を測定するものであるが、一般的に用いられている酸化還元電位(以下、「ORP」と略す)に比べると、銅の溶解量の変化に対して非常に敏感に反応するため、細かなサイクルでの再生管理が可能となる。このため、エッチング液中の再生前後における各種組成濃度の変化も非常に少なく、再生前後で安定したエッチング速度を保つことが可能となる。
本発明の第四の特徴は、透過度比を管理することにより、エッチング液の温度の変化の影響とエッチング液中に存在する泡の影響を抑制することができることである。塩化鉄(III)と塩化銅(II)を成分とするエッチング液の透過度を測定する場合、エッチング液の温度の上昇と共に透過度は低下する。予め、エッチング液の温度と透過度の関係を計測し、補正する方法もあるが、エッチング液の組成は、銅の溶解により、随時変化するので、正確な補正を行うことは困難であった。また、エッチング液中に細かな気泡が存在する場合も同様に透過度は低下する。一般的に、エッチングにはシャワーノズルからエッチング液を噴射する方式が用いられるが、その戻り液は多くの細かな気泡を含んでおり、この気泡を含んだエッチング液を用いた場合、透過度が大きく振れ、管理指標とすることは困難になる。エッチング液を別槽に循環させ、気泡の影響を軽減させる方法もあるが、循環を長くするとオンタイムでの計測ができなくなり、再生のための薬液の添加が遅れてしまう恐れがある。更に、特に過酸化水素による再生を行う場合など、再生反応に伴う泡の発生でどうしても気泡を取り除くことができなかった。エッチング液の再生管理を光学的な方法で行う場合、これらの現象は致命的となるが、銅の溶解によって特徴的に変化する波長、温度の変化や気泡の混入によって特徴的に変化する波長の少なくとも2つ以上の波長で測定された透過度の比を計測し、再生管理するための指標として用いることで、温度変化の影響、気泡混入の影響を顕著に抑制することが可能となる。
本発明の第五の特徴は、異なる2つ以上の波長における透過度の比を、同一光路内で同時計測して求めることで、エッチング液中に存在する泡の影響を更に抑制することができることである。エッチング液中の組成濃度や特に泡の含有量とその形状は測定場所、時間と共に随時変化するため、ある瞬間のエッチング液の状態を正確に把握するためには、異なる波長の透過度を、同一光路内で同時に測定することが有効であり、この操作を行うことで、エッチング液中の泡の影響をより抑制することが可能となる。
本発明の第六の特徴は、メンテナンス性に優れている点である。従来のORPやイオン濃度、pHなどによってエッチング液を管理する場合、各種センサーをエッチング液中に浸漬させて計測を行うが、酸性の強いエッチング液中に長時間浸漬しておくと、酸化物の付着やセンサー自体の劣化により、正確な値が測定できなくなり、定期的にメンテナンスを行う作業が必要となってくる。これに対し、透過度を測定する場合、例えば、フローセル等にエッチング液を循環させ、フローセルを通過するエッチング液を外部から直接エッチング液に接触させることなく測定が可能であるため、定期的なメンテナンスは全く不要であり、長期間メンテナンスフリーのまま連続測定が可能となる。
以上のことから、本発明のエッチング液を使用することで初めて、アンダーカットが極めて抑制され、かつエッチング速度の変化が極めて少ないサブトラクティブ法による安定した連続製造が可能になる。また、本発明の再生管理方法を用いることで、再生前後でエッチング速度の変化が小さく、エッチング液の温度やエッチング液中に存在する泡の影響が抑制可能であり、メンテナンスが不要なエッチング液の再生管理が可能となる。
エッチング法により得られるパターンの断面略図である。 透過度を同一光路内で同時計測する略図である。 透過度を異なる光路で計測する略図である。
本発明のエッチング液は、第一の必須成分として塩化鉄(III)を含む。本発明のエッチング液における塩化鉄(III)の濃度はエッチング液の総量に対して5〜20質量%とすることが必要であり、5〜10質量%とすることが好ましい。塩化鉄(III)の濃度が5質量%より低い場合にはエッチングの速度が著しく遅くなって実用的でなく、また塩化鉄(III)の濃度が20質量%より高い場合にはアンダーカットの抑制が不十分になるからである。
本発明のエッチング液を調製するにあたり用いる塩化鉄(III)の形態は特に限定されず、無水物または六水和物の固体を溶解して用いても、水溶液として市販されている塩化鉄(III)を適宜希釈して用いても差し支えない。なお、固形の塩化鉄(III)は通常六水和物(式量270.3)として供給されるが、本発明における塩化鉄(III)濃度の計算は無水物(式量162.21)を基準として行う。例えば、塩化鉄(III)10質量%を含む本発明のエッチング液1.0kgを調製する場合には、塩化鉄(III)六水和物はその1kg×10質量%×(270.3/162.21)=167gを用いることになる。
本発明のエッチング液は、第二の必須成分として塩化銅(II)を含む。本発明のエッチング液における塩化銅(II)の濃度はエッチング液の総量に対して0.5〜3質量%とすることが必要であり、0.5〜2質量%とすることが好ましい。塩化銅の濃度が0.5質量%より低い場合、再生を行う過程で、塩化銅濃度変化によるエッチング速度の変化が大きくなり、安定したエッチング時間を確保することが困難となり、塩化銅(II)の濃度が3質量%より高い場合には、アンダーカットの抑制が不十分になるからである。
本発明のエッチング液を調製するにあたり用いる塩化銅(II)の形態は特に限定されず、無水物または二水和物の固体を溶解して用いても、水溶液として市販されている塩化銅(II)を適宜希釈して用いても差し支えない。なお、固形の塩化銅(II)は通常二水和物(式量170.48)として供給されるが、本発明における塩化銅(II)濃度の計算は無水物(式量134.45)を基準として行う。例えば、塩化銅(II)2質量%を含む本発明のエッチング液1kgを調製する場合には、塩化銅(II)二水和物はその1kg×2質量%×(170.48/134.45)=25.36gを用いることになる。
本発明のエッチング液は、第三の必須成分として銅と不溶性の塩を形成する化合物を含む。銅と不溶性の塩を形成する化合物としては特に制限はないが、具体的には、シュウ酸や窒素を1つ以上含む複素5員環化合物であるアゾールなどを用いることができる。アゾールとしては、イミダゾール系化合物、トリアゾール化合物、テトラゾール化合物などを用いることができる。この中では、シュウ酸を用いることがより好ましい。シュウ酸を用いた本発明のエッチング液は、よりアンダーカットを抑制することができ、硫化水素のような有毒ガスを発生せず、また処理方法が確立された成分のみからなることから使用後の処理も容易かつ完全に行うことができ、労働衛生上、公害防止上、また環境保全上の問題を回避することも容易である。添加量は塩化鉄(III)に対して5〜20質量%であり、5〜15質量%とすることが好ましい。添加量が5質量%より少ない場合にはアンダーカットの抑制が不十分になり、また添加量が20質量%より多い場合にはエッチングに非常な長時間を必要としたり、微細スペースが十分にエッチングされなかったりという問題が生じるからである。
本発明のエッチング液を調製するにあたり、用いるシュウ酸の形態は特に限定されず、無水物または二水和物の固体を溶解して用いても、水溶液として市販されているシュウ酸を適宜希釈して用いてもよい。なお、固形のシュウ酸は通常二水和物(式量126.07)として供給されるが、本発明におけるシュウ酸濃度の計算は無水物(式量90.04)を基準として行う。例えば、シュウ酸1質量%を含む本発明のエッチング液1kgを調製する場合には、シュウ酸二水和物はその1kg×1質量%×(126.07/90.04)=14gを用いることになる。
本発明のエッチング液を用いてエッチングを行う場合、エッチング液の温度は15〜45℃とすることが好ましく、25〜35℃とすることがより好ましい。該温度がこれよりも低い場合、エッチング速度が著しく低下することがあり、また該温度がこれよりも高い場合、アンダーカットの抑制が不十分になることがあるからである。
本発明のエッチング液には、界面活性剤、消泡剤、アルコール、グリコール等の濡れ促進剤等を含有せしめることもできるが必須ではない。
本発明のエッチング液は、新液として使用することが可能なエッチング液である。本発明のエッチング液を新液として使用すれば、再生した場合に、本発明のエッチング液の組成濃度になるように再生することができる。
本発明において、エッチング液の再生に用いられる酸化剤は、特に限定されず、一般に用いられる酸化剤を使用することができる。例えば、塩素ガス、オゾン、過酸化水素、塩素酸塩類などを使用することができるが、環境及び安全性の観点から、塩素酸塩類を用いることが好ましく、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウムがより好ましい。
本発明において、エッチング液の再生管理手法は、一般に用いられる管理方法を使用することができる。例えば、各種イオン濃度、ORP、pH、比重、透過度などを測定して管理することができる。再生前後でのエッチング速度の変化を少なくする観点から、細かなサイクルで再生反応を繰り返すことが望ましく、検出感度が高い透過度を主に用いることが好ましい。
エッチング液の透過度を測定する再生管理方法において、透過度を測定する機器としては特に制限はないが、光電光度計、分光光度計、カラーセンサー、ファイバセンサーなど一般的に用いられるものを使用することができる。測定する方法としては、例えば、フローセルなどにエッチング液を常時循環させ、直接エッチング液に接触させることなく、外部から測定する方法が望ましい。このように、オンラインで測定した数値を、予め定めておいた劣化程度を管理する設定値と対比することで、再生するための酸化剤等を必要量添加することができる。
測定する波長は、塩化鉄(III)と塩化銅(II)を含むエッチング液の透過度ピークが存在する400〜750nmの範囲で行う。本発明の方法に従って、異なる2つ以上の波長における透過度の比を用いる場合は、400〜750nmの波長範囲内に存在する透過度ピークの極大点の前後の波長を用いる。極大点よりも大きな波長を測定することで銅の溶解によるエッチング液の劣化程度を測定し、極大点よりも小さな波長を測定し、その比を計測することで温度や泡の影響を抑制することが可能となる。例えば、極大点が550nmに存在する場合、500nmと600nmなどを使用することができる。透過度を測定する波長の選択は、エッチング液の配合により随時設定することができる。最も適した波長を必要なだけ複数選択して使用することが好ましい。
透過度を測定する場合、同一光路内で同時計測することが好ましい。本発明において同時計測とは、二つ以上の波長における透過度を0〜100msec以内に測定することをいう。同時計測する方法としては、例えば、白色光を発光させ、受光部で必要な波長領域の透過度だけを選択して計測する方法、上記測定範囲内で必要な波長を順次切り替えて発光させ、計測する方法などを用いることができる。
本発明の再生管理方法において、添加する再生液は、新液と酸化剤である。新液は、エッチングが進行した劣化液と劣化程度に応じて一定の割合で置換することで、エッチング処理過程または再生反応で生じる各種酸化物や副生成物を除去することができる。新液は、塩化鉄(III)と再生反応に必要な塩酸を含んだエッチング液であり、必要に応じて、その他の成分として銅と不溶性の塩を形成する化合物や界面活性剤、消泡剤、アルコール、グリコール等の濡れ促進剤等を添加することができる。
本発明において、エッチング液の再生に用いられる酸化剤は、特に限定されず、一般に用いられる酸化剤を使用することができる。例えば、塩素ガス、オゾン、過酸化水素、塩素酸塩類などを使用することができるが、環境及び安全性の観点から、塩素酸塩類を用いることが好ましく、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウムがより好ましい。
本発明において、プリント配線板の製造に使用する銅箔貼基材の種類は特に限定されない。基材としては紙フェノール、紙エポキシ、ガラスエポキシ等の繊維基材に熱硬化樹脂を含浸させたものや、ポリエステル、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ化樹脂等の各種熱可塑性樹脂の板材を用いたものやその他の各種絶縁性の板状あるいはフィルム状の材料を使用することができ、また銅箔としては圧延銅、電解銅などからなる銅箔や、各種の銅合金からなる箔を用いることができる。基材と銅箔との貼り合わせ方法も特に制限されず、基材と銅箔をエポキシ系等の接着剤を用いて接着することもできるし、基材に用いる樹脂を硬化させる前に銅箔を貼り合せ、その後樹脂を硬化させて接着することもでき、また銅箔上に基材に用いる樹脂の溶液や熱溶融物を展開した後に、溶媒を除去あるいは冷却固化する等の方法を用いてもよい。
本発明において、プリント配線板の製造に使用するレジストは特に制限されず、光照射により可溶化した部分をアルカリで現像除去してパターンを形成する、いわゆるポジ型フォトレジストや、光照射によって硬化しなかった部分を現像除去してパターンを形成する、いわゆるネガ型フォトレジスト、その他スクリーン印刷法やその他の印刷法によりパターンを形成する各種のレジストを用いることができる。
本発明のエッチング液は、銅または銅合金のエッチングに好適に使用されるものである。本発明において銅合金とは、銅を50質量%以上含む合金を指し、その例としては、銅とスズの合金(青銅)、銅とスズとリンの合金(リン青銅)、銅とニッケルと亜鉛の合金(洋白)、銅と亜鉛の合金(真ちゅう)、銅とニッケルの合金(白銅)が代表的であるがこれらに限定されるものではない。
なお、本発明のエッチング液を使用後、もしくはオーバーフロー液を廃棄する場合、最も基本的な重金属の処理工程の1種、すなわち水酸化カルシウムを添加してpHを弱アルカリに調整する工程により、含有有害化学種である鉄(II)イオン、鉄(III)イオン、銅(I)イオン、銅(II)イオン及びシュウ酸イオンの全てが完全に沈降除去されるため、使用後の処理も容易かつ完全に行うことができ、労働衛生上、公害防止上、また環境保全上の問題を回避することも容易である。
(実施例
[エッチング液の調製]
市販の40°ボーメの塩化鉄(III)水溶液(濃度37質量%)270g(無水物として100g)、塩化銅(II)二水和物25g(無水物として20g)、シュウ酸二水和物14g(無水物として10g)に水を加え1kgとし、塩化鉄(III)10質量%、塩化銅2質量%、シュウ酸1質量%を含むエッチング液を調製した。
[エッチングと再生]
表面に厚み9μmの圧延銅箔を有するガラスエポキシ基材に、ポジ型フォトレジストを用いライン(w)/スペースの幅がそれぞれ25μm/25μmのレジストパターンを形成させた。ここに、20℃に調整した上記エッチング液を、噴射面の直径が14cmの充円錐型スプレーノズルを用いてノズルへの液供給圧150kPa、噴射量1320mL/minで上記基材に向け噴射しエッチングを行った。
エッチング液の再生は、建浴した塩化鉄(III)の約10%が消費された時点で、比重が一定となるように調整しながら、10質量%の塩素酸ナトリウム水溶液、10質量%の塩酸水溶液、10質量%の塩化鉄水溶液を必要量添加して行い、この再生処理を30回及び60回繰り返した。
図1は、エッチング法により得られるパターンの断面略図であり、wは銅箔ラインのトップ幅、wは銅箔ラインのボトム幅、wはレジストパターンのライン幅である。評価項目として、w=w(25μm)となった時のエッチング時間とエッチングファクター(E.Fと略すことがある)を計測した。なお、E.Fとは、E.F=2×銅箔の厚み/(w−w)で表される数値であり、エッチングの深さ方向の進行量に対する横方向への進行量の比率を表し、数値が大きいほどアンダーカットが抑制されていることを示し、良好なエッチングであることを表す指標である。
(実施例1、2、4〜9、比較例1〜13)
実施例と同様にして、表1〜3に示す各組成濃度を含むエッチング液を調製し、実施例と同一のレジストパターン形成済み基板に、同様の再生とエッチング処理を行い、同様の評価を行った。
Figure 0005604307
Figure 0005604307
Figure 0005604307
表1から明らかなように、本発明のエッチング液は、アンダーカットが少なく、かつ再生を行ってもエッチング速度の変化が少ないエッチング液であることが判る。とりわけ、銅と不溶性の塩を形成する化合物としてシュウ酸を用いたものは、アンダーカットが極めて少ないエッチング液であることが判る。
これに対し、比較例1、2、7の如く、銅と不溶性の塩を形成する化合物が添加されていないエッチング液は、アンダーカットの抑制がほとんど見られなかった。また、塩化銅(II)が添加されてない比較例3、4、5では、アンダーカットは抑制されるものの、再生を繰り返した場合のエッチング速度の変化が大きく、安定操業が困難であった。比較例6では、白い沈殿物が発生し、建浴することができなかった。
さらに、シュウ酸の濃度が範囲外の比較例8はエッチングが進行せず、比較例9はアンダーカットの抑制が不十分であった。塩化鉄(III)濃度が範囲外の比較例10はエッチング時間が長く実用的でなく、比較例11はアンダーカットの抑制が不十分であった。塩化銅(II)濃度が範囲外の比較例12と13は、アンダーカットは抑制されるものの、再生を繰り返した場合のエッチング速度の変化が大きく、安定操業が困難であった。以上から、本発明のエッチング液を用いることで初めて、アンダーカットが抑制され、かつ再生を行ってもエッチング速度の変化が少ないエッチング液及びエッチング方法を提供することができる。
(実施例10)
[エッチング液の調製]
市販の40°ボーメの塩化鉄(III)水溶液(濃度37質量%)216g(無水物として100g)、塩化銅(II)二水和物25g(無水物として20g)、シュウ酸二水和物7g(無水物として5g)に水を加え1kgとし、塩化鉄(III)8質量%、塩化銅2質量%、シュウ酸0.5質量%を含むエッチング液を調製した。
[エッチング]
表面に厚み9μmの圧延銅箔を有するガラスエポキシ基材に、30℃に調整した上記エッチング液を、噴射面の直径が20cmの充円錐型スプレーノズルを用いてノズルへの液供給圧150kPa、噴射量1000mL/minで上記基材に向け噴射しエッチングを行った。
[再生管理用の数値測定]
透過度はオムロン社製のデジタルファイバセンサーE3X−DAG−S(商品名、波長525nm)及びE3X−NA11(商品名、波長680nm)を用いて計測した。測定条件は、エッチングシャワーを停止し、フローセルにエッチング液を循環させた状態で、異なる光路にて同時計測した。ORPとpHは、堀場製作所社製のpHメーターD−52Sを用いて、センサーをエッチング液中に浸漬させたまま計測した。
[エッチング液の再生]
エッチング液の再生は、建浴した塩化鉄(III)の約5%が消費された時点で、比重が一定となるように調整しながら、10質量%の塩素酸ナトリウム水溶液、塩酸を含んだ8質量%の塩化鉄水溶液を必要量添加して行い、この再生処理のサイクルを100回繰り返した。
表4に再生処理を行った結果を示す。
Figure 0005604307
表4から明らかなように、ORPやpHでは再生前後において数値の変化がなく、劣化程度の判定が不可能であった細かなサイクルでの再生が、透過度を測定することで、可能となった。このため、再生前後におけるエッチング速度の差もほとんどなく、再生前後において安定したエッチングが可能となった。100回の再生処理を終了した後、ORP及びpHセンサーは、酸化物の付着による洗浄作業が必要となったが、フローセルを用いた透過度センサーは、このようなメンテナンスは全く不必要であった。
(実施例11)
実施例10で調製したエッチング液の温度を変化させた時の透過度の変化及びエッチング液中の泡の影響をみるために、エッチングシャワー用ポンプ運転前後における透過度の変化を、実施例10と同様に、異なる光路にて同時計測を行い、結果を表5に示した。
Figure 0005604307
表5から明らかなように、単波長での透過度の数値は、温度の上昇と共に低下するが、透過度比を計測することで、温度変化の影響を抑制することが可能となった。また、シャワーポンプを稼動し、エッチング液中に気泡が混在した場合、単波長における透過度の数値は低下するが、透過度比を計測することで気泡の影響を抑制することが可能となった。
(実施例12)
図2および図3に示す計測方法を用いて、同一光路内で同時計測する場合の効果を検証した。図2は同一光路内で計測する場合の略図であり、図3は透過度を異なる光路で計測する場合の略図である。ファイバセンサー5、7及び9で発光させ、エッチング液が常時下方から上方へ循環するフローセル4内を透過させた後、ファイバセンサー6、8及び10で受光するものである。これらの2つの計測方法を用いて、実施例10で調製したエッチング液に市販の界面活性剤(商品名:エマルゲン103、花王社製)を0.05質量%加えたものを用い、エッチング液中の気泡の量を増加させた状態で透過度の測定を行い、その結果を表6に示した。なお、図3で示されるような測定光路が異なる測定方式で用いたファイバセンサーは、実施例10で用いたものと同じファイバセンサーを用いて測定し、図2で示されるような測定光路が同一である測定方式で用いたファイバセンサーは、オムロン社製のデジタルファイバセンサーE3MC−Y81(商品名、波長525nmおよび680nm)を用いて計測した。また、図3で示される測定光路が異なる場合のファイバセンサー7と9間の距離及びファイバセンサー8と10間の距離は10mmとした。透過度の測定は1秒間隔で20回行い、計測時間が異なる場合は、低波長側の透過度を1秒間遅らせて測定した場合の透過度比を用いた。
Figure 0005604307
表6から明らかなように、透過度を測定する場合に、同一光路内で同時計測する本発明の測定方法は、泡の影響がより抑制された測定方法であることがわかる。計測時間が異なる場合に、透過度比はより上下に大きく振れるようになり、異なる光路、異なる計測時間で求めた透過度比の振れの範囲が最も大きくなった。
本発明のエッチング液、エッチング方法及び再生管理方法は、プリント配線板の製造のみならず、ガラス基板上の配線、プラスチック基板表面の配線、半導体表面の配線などの各種配線の形成にも適用でき、その他各種の産業用途においても、高度に制御された銅または銅合金のエッチングが必要な場合に好適に用いることができる。
銅箔ラインのトップ幅
銅箔ラインのボトム幅
レジストのライン幅
1 レジスト
2 銅箔
3 基材
4 フローセル
5、7、9 ファイバセンサー(発光部)
6、8,10 ファイバセンサー(受光部)

Claims (4)

  1. プリント配線板をサブトラクティブ法で製造する際に用いられる銅または銅合金用エッチング液であって、水を主成分とし、(1)5〜20質量%の塩化鉄(III)、(2)0.5〜3質量%の塩化銅(II)、(3)塩化鉄(III)に対して5〜20質量%の銅と不溶性の塩を形成する化合物を含有してなり、銅と不溶性の塩を形成する化合物が、シュウ酸、チオ尿素、アゾールから選ばれることを特徴とする銅または銅合金用のエッチング液。
  2. 請求項1記載の銅または銅合金用のエッチング液を新液として使用することを特徴とするエッチング方法。
  3. 請求項1記載の銅または銅合金用のエッチング液を再生管理する方法において、異なる2つ以上の波長における透過度の比を用いて再生管理を行うことを特徴とするエッチング液の再生管理方法。
  4. 該2つ以上の波長を、同一光路内で同時計測することを特徴とする請求項記載のエッチング液の再生管理方法。
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