以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態》
本実施形態に係るカメラ100は、図1に示すように、交換レンズ式の一眼デジタルカメラであり、主に、カメラシステムの主要な機能を有するカメラ本体4と、カメラ本体4に取り外し可能に装着された交換レンズ7とから構成されている。交換レンズ7は、カメラ本体4の前面に設けられたボディマウント41に装着されている。ボディマウント41には電気切片41aが設けられている。このカメラ100が撮像装置を構成する。
−カメラ本体の構成−
カメラ本体4は、被写体像を撮影画像として取得する撮像ユニット1と、撮像ユニット1の露光状態を調節するシャッタユニット42と、撮像ユニット1に入射する被写体像の赤外光除去とモアレ現象を軽減するためのIRカット兼OLPF(Optical Low Pass Filter)43と、液晶モニタで構成され、撮影画像やライブビュー画像や各種情報を表示する画像表示部44と、ボディ制御部5とを有している。このカメラ本体4が撮像装置本体を構成する。
また、カメラ本体4には、カメラシステムの電源のON/OFF時に操作される電源スイッチ40aと、フォーカシング時およびレリーズ時に操作されるレリーズボタン40bと、後述するピントシフトモードへ移行する時に操作されるピントシフトスイッチ40cと、動画撮影モードにおいて動画像の記録開始及び停止時に操作されるRECボタン40dとが設けられている。
電源スイッチ40aにより電源がON状態になると、カメラ本体4および交換レンズ7の各部に電源が供給される。
レリーズボタン40bは、2段式であって、半押しすることで後述するオートフォーカスやAE等を行う一方、全押しすることでレリーズが行われる。
ピントシフトスイッチ40cは、後述する動画撮影時のピントシフトモードへのダイレクトコールスイッチ(複数の選択操作を必要とせず、一度の操作で所望のモードに直接設定できるスイッチ)である。
RECボタン40dは、後述する動画撮影モードにおける動画像の記録開始操作および記録終了操作を受け付けるための操作部材である。RECボタン40dが押されることにより、カメラ100は動画像の記録を開始する。動画像の記録中にRECボタン40dが再び押されることにより、カメラ100は動画像の記録を終了する。
また、これらのスイッチ及びボタン40c〜40dは、カメラ撮影機能を種々選択するメニュー内の選択項目であってもよいことは言うまでもない。
撮像ユニット1は、詳しくは後述するが、光電変換により被写体像を電気信号に変換するものである。この撮像ユニット1は、ブレ補正ユニット45によって光軸Xに直交する平面内で移動可能に構成されている。
画像表示部44には、タッチパネルが設けられている。タッチパネルは、ユーザからの操作によりそれに応じた出力信号を出力する。ユーザは、タッチパネルを操作することによって、画像表示部44に表示された情報の選択等の操作を行うことができる。このタッチパネルを備えた画像表示部44が選択手段及び表示手段を構成する。
ボディ制御部5は、ボディマイコン50と、不揮発性メモリ50aと、シャッタユニット42の駆動を制御するシャッタ制御部51と、撮像ユニット1の動作を制御すると共に撮像ユニット1からの電気信号をA/D変換してボディマイコン50へ出力する撮像ユニット制御部52と、例えばカード型記録媒体や内部メモリである画像格納部58からの画像データの読み出し及び該画像格納部58への画像データの記録を行う画像読み出し/記録部53と、画像読み出し/記録部53を制御する画像記録制御部54と、画像表示部44の表示を制御する画像表示制御部55と、カメラ本体4のブレにより生じる像ブレ量を検出するブレ検出部56と、ブレ補正ユニット45を制御する補正ユニット制御部57とを含む。このボディ制御部5が制御部を構成する。
ボディマイコン50は、カメラ本体4の中枢を司る制御装置であり、各種シーケンスの制御を行う。ボディマイコン50には、例えば、CPU,ROM,RAMが搭載されている。そして、ROMに格納されたプログラムがCPUに読み込まれることで、ボディマイコン50は様々な機能を実現することができる。
このボディマイコン50は、電源スイッチ40a、レリーズボタン40b、ピントシフトスイッチ40c及びRECボタン40dからの入力信号が入力されると共に、シャッタ制御部51、撮像ユニット制御部52、画像読み出し/記録部53、画像記録制御部54及び補正ユニット制御部57等に対し制御信号を出力するように構成されており、シャッタ制御部51、撮像ユニット制御部52、画像読み出し/記録部53、画像記録制御部54及び補正ユニット制御部57等にそれぞれの制御を実行させる。また、ボディマイコン50は、後述するレンズマイコン80とマイコン間通信を行う。
例えば、ボディマイコン50の指示により、撮像ユニット制御部52が撮像ユニットからの電気信号をA/D変換してボディマイコン50へ出力する。ボディマイコン50は、取り込んだ電気信号に所定の画像処理を施して画像信号を作成する。そして、ボディマイコン50は、画像読み出し/記録部53に画像信号を送信すると共に、画像記録制御部54に画像の記録及び表示の指示を行って、画像格納部58への画像信号の保存と画像表示制御部55への画像信号の送信を行わせる。画像表示制御部55は、送信されてきた画像信号に基づいて画像表示部44を制御して、該画像表示部44に画像を表示させる。
また、ボディマイコン50は、詳しくは後述するが、レンズマイコン80を介して被写体までの物点距離を検出するように構成されている。
不揮発性メモリ50aには、カメラ本体4に関する各種情報(本体情報)が格納されている。この本体情報には、例えば、カメラ本体4のメーカー名、製造年月日、型番、ボディマイコン50にインストールされているソフトのバージョン、およびファームアップに関する情報などのカメラ本体4を特定するための型式に関する情報(本体特定情報)、カメラ本体4がブレ補正ユニット45及びブレ検出部56等の像ブレを補正するための手段を搭載しているか否かに関する情報、ブレ検出部56の型番および感度などの検出性能に関する情報、エラー履歴なども含まれている。尚、これらの情報は、不揮発性メモリ5aの代わりにボディマイコン50内のメモリ部に格納されていてもよい。
ブレ検出部56は、手ブレなどに起因するカメラ本体4の動きを検出する角速度センサを備える。角速度センサは、カメラ本体4が静止している状態での出力を基準としてカメラ本体4が動く方向に応じて正負の角速度信号を出力する。尚、本実施の形態では、ヨーイング方向及びピッチング方向の2方向を検出するために角速度センサを2個設けている。
出力された角速度信号は、フィルタ処理、アンプ処理等を経て、A/D変換部によりデジタル信号に変換されてボディマイコン50に与えられる。
−交換レンズの構成−
交換レンズ7は、カメラ本体4内の撮像ユニット1に被写体像を結ぶための撮像光学系を構成しており、主に、フォーカシングを行うフォーカス調節部7Aと、絞りを調節する絞り調節部7Bと、光路を調節することで像ブレを補正するレンズ用像ブレ補正部7Cと、ズーミングを行うズーム調整部7Dと、交換レンズ7の動作を制御するレンズ制御部8とを有している。
交換レンズ7は、レンズマウント71を介して、カメラ本体4のボディマウント41に取り付けられている。また、レンズマウント71には、交換レンズ7がカメラ本体4に取り付けられてときにボディマウント41の電気切片41aと電気的に接続される電気切片71aが設けられている。
フォーカス調節部7Aは、フォーカスを調節するフォーカスレンズ群72で構成されている。フォーカスレンズ群72は、交換レンズ7の規格として定められた最至近合焦位置から無限合焦位置までの区間で光軸X方向に移動可能である。また、フォーカスレンズ群72は、後述するコントラスト検出方式による合焦位置検出の場合、合焦位置を挟んで光軸X方向前後に移動可能である必要があるため、前述の最至近合焦位置から無限合焦位置までの区間よりもさらに光軸X方向前後に移動可能なレンズシフト余裕区間を有している。
尚、フォーカスレンズ群72は、必ずしも複数のレンズで構成される必要はなく、1枚のレンズで構成されていてもよい。
絞り調節部7Bは、絞りまたは開放を調節する絞り部73で構成されている。この絞り部73が光量調節部を構成する。
レンズ用像ブレ補正部7Cは、ブレ補正レンズ74と、ブレ補正レンズ74を光軸Xに直行する平面内で移動させるブレ補正レンズ駆動部74aとを有している。
ズーム調整部7Dは、ズームを調節するズームレンズ群75で構成されている。ズームレンズ群75は、交換レンズ7の規格として定められた広角位置から望遠位置までの区間で光軸X方向に移動可能である。尚、ズームレンズ群75は、必ずしも複数のレンズで構成される必要はなく、1枚のレンズで構成されていてもよい。
レンズ制御部8は、レンズマイコン80と、不揮発性メモリ80aと、フォーカスレンズ群72の動作を制御するフォーカスレンズ群制御部81と、フォーカスレンズ群制御部81の制御信号を受けてフォーカスレンズ群72を駆動するフォーカス駆動部82と、絞り部73の動作を制御する絞り制御部83と、交換レンズ7のブレを検出するブレ検出部84と、ブレ補正レンズ駆動部74aを制御するブレ補正レンズユニット制御部85と、ズームレンズ群75の動作を制御するズームレンズ群制御部86と、ズームレンズ群制御部86の制御信号を受けてズームレンズ群75を駆動するズーム駆動部87とを有する。
レンズマイコン80は、交換レンズ7の中枢を司る制御装置であり、交換レンズ7に搭載された各部に接続されている。具体的には、レンズマイコン80には、CPU、ROM、RAMが搭載されており、ROMに格納されたプログラムがCPUに読み込まれることで、様々な機能を実現することができる。例えば、レンズマイコン80は、ボディマイコン50からの信号に基づいてレンズ用像ブレ補正装置(ブレ補正レンズ駆動部74a等)を補正可能状態または補正不能状態に設定する機能を有している。また、レンズマウント71に設けられた電気切片71aとボディマウント41に設けられた電気切片41aとの接触により,ボディマイコン50およびレンズマイコン80は電気的に接続されており、互いに情報の送受信が可能となっている。
また、不揮発性メモリ80aには、交換レンズ7に関する各種情報(レンズ情報)が格納されている。このレンズ情報には、例えば、交換レンズ7のメーカー名、製造年月日、型番、レンズマイコン80にインストールされているソフトのバージョンおよびファームアップに関する情報などの交換レンズ7を特定するための型式に関する情報(レンズ特定情報)、交換レンズ7がブレ補正レンズ駆動部74a及びブレ検出部84等の像ブレを補正するための手段を搭載しているか否かに関する情報、像ブレを補正するための手段を搭載している場合は、ブレ検出部84の型番および感度などの検出性能に関する情報、ブレ補正レンズ駆動部74aの型番および最大補正可能角度などの補正性能に関する情報(レンズ側補正性能情報)、像ブレ補正を行うためのソフトのバージョンなどが含まれている。
さらに、レンズ情報には、ブレ補正レンズ駆動部74aの駆動に必要な消費電力に関する情報(レンズ側消費電力情報)およびブレ補正レンズ駆動部74aの駆動方式に関する情報(レンズ側駆動方式情報)も含まれている。尚、不揮発性メモリ80aは、ボディマイコン50から送信された情報を格納可能である。尚、これらの情報は、不揮発性メモリ80aの代わりに、レンズマイコン80内のメモリ部に格納されていてもよい。
フォーカスレンズ群制御部81は、フォーカスレンズ群72の光軸方向の絶対位置を検出する絶対位置検出部81aと、フォーカスレンズ群72の光軸方向の相対位置を検出する相対位置検出部81bとを有している。絶対位置検出部81aは、交換レンズ7の筐体におけるフォーカスレンズ群72の絶対位置を検出するものである。絶対位置検出部81aは、例えば、数bitの接触型エンコーダ基板とブラシとによって構成され、絶対位置を検出可能に構成されている。相対位置検出部81bは、それのみではフォーカスレンズ群72の絶対位置を検出することができないが、フォーカスレンズ群72の移動方向は検出可能であり、例えば二相エンコーダを用いている。二相エンコーダは回転パルスエンコーダや、MR素子、ホール素子など、フォーカスレンズ群72の光軸方向の位置に応じて等しいピッチで2値の信号を交互に出力するものが2つ設けられており、これらのピッチの位相をずらすように設置されている。レンズマイコン80は、相対位置検出部81bの出力からフォーカスレンズ群72の光軸方向の相対位置を算出する。絶対位置検出部81aおよび相対位置検出部81bは、フォーカスレンズ位置検出部の一例である。
ズームレンズ群制御部86は、ズームレンズ群75の光軸方向の絶対位置を検出する絶対位置検出部86aと、ズームレンズ群75の光軸方向の相対位置を検出する相対位置検出部86bとを有している。絶対位置検出部86aは、交換レンズ7の筐体におけるズームレンズ群75の絶対位置を検出するものである。絶対位置検出部86aは、例えば、数bitの接触型エンコーダ基板とブラシとによって構成され、絶対位置を検出可能に構成されている。相対位置検出部86bは、それのみではズームレンズ群75の絶対位置を検出することができないが、ズームレンズ群75の移動方向は検出可能であり、例えば二相エンコーダを用いている。二相エンコーダは回転パルスエンコーダや、MR素子、ホール素子など、ズームレンズ群75の光軸方向の位置に応じて等しいピッチで2値の信号を交互に出力するものが2つ設けられており、これらのピッチの位相をずらすように設置されている。レンズマイコン80は、相対位置検出部86bの出力からズームレンズ群75の光軸方向の相対位置を算出する。絶対位置検出部86aおよび相対位置検出部86bは、ズームレンズ位置検出部の一例である。
ブレ検出部84は、手ブレなどに起因する交換レンズ7の動きを検出する角速度センサを備える。角速度センサは、交換レンズ7が静止している状態での出力を基準として交換レンズ7が動く方向に応じて正負の角速度信号を出力する。尚、本実施の形態では、ヨーイング方向及びピッチング方向の2方向を検出するために角速度センサを2個設けている。
出力された角速度信号は、フィルタ処理、アンプ処理等を経て、A/D変換部によりデジタル信号に変換されてレンズマイコン80に与えられる。
ブレ補正レンズユニット制御部85は、移動量検出部(図示せず)を備える。移動量検出部は、ブレ補正レンズ74の実際の移動量を検出する検出部である。ブレ補正レンズユニット制御部85は、移動量検出部からの出力に基づいて、ブレ補正レンズ74を帰還制御している。
尚、カメラ本体4及び交換レンズ7の両方にブレ検出部56,84とブレ補正装置45、74aを搭載した例を示したが、カメラ本体4及び交換レンズ7の何れかにブレ検出部及びブレ補正装置が搭載されていてもよく、何れにもブレ検出部及びブレ補正装置が搭載されていない場合であってもよい(その場合は、前述のブレ補正に関するシーケンスを排除すればよい)。
−撮像ユニットの構成−
撮像ユニット1は、図2に示すように、被写体像を電気信号に変換するための撮像素子10と、撮像素子10を保持するためのパッケージ31と、位相差検出方式の焦点検出を行うための位相差検出ユニット20とを有している。
撮像素子10は、インターライン型CCDイメージセンサであって、図3に示すように、半導体材料で構成された光電変換部11と、垂直レジスタ12と、転送路13と、マスク14と、カラーフィルタ15と、マイクロレンズ16とを有している。
光電変換部11は、基板11aと、基板11a上に配列された複数の受光部(画素ともいう)11b,11b,…とを有している。
基板11aは、Si(シリコン)ベースで構成されている。詳しくは、基板11aは、Si単結晶基板又はSOI(Silicon On Insulator wafer)で構成されている。特に、SOI基板は、Si薄膜とSiO2薄膜のサンドイッチ構造をなし、エッチングの処理などにおいてSiO2層で反応をとめることが可能であり、安定した基板加工を行う上で有利である。
また、受光部11bは、フォトダイオードで構成されていて、光を吸収して電荷を発生する。受光部11b,11b,…は、基板11a上において行列状に配列された微小な方形の画素領域内にそれぞれ設けられている(図4参照)。
垂直レジスタ12は、受光部11bごとに設けられており、受光部11bに蓄積された電荷を一時蓄積する役割を有する。つまり、受光部11bに蓄積された電荷は、垂直レジスタ12に転送される。垂直レジスタ12に転送された電荷は、転送路13を介して水平レジスタ(図示省略)に転送され、増幅器(図示省略)に送られる。増幅器に送られた電荷は、増幅され電気信号として取り出される。
マスク14は、受光部11bを被写体側に露出させる一方、垂直レジスタ12及び転送路13を覆うように設けられていて、垂直レジスタ12及び転送路13に光が入射することを防止している。
カラーフィルタ15及びマイクロレンズ16は、各受光部11bに対応して前記微小な方形の画素領域ごとに設けられている。カラーフィルタ15は、特定の色だけを透過させるためのものであり、原色フィルタ又は補色フィルタが用いられる。本実施形態では、図4に示すように、いわゆるベイヤー型の原色フィルタが用いられている。すなわち、撮像素子10全体としては、2行2列に隣接する4つのカラーフィルタ15,15,…(又は4つの画素領域)を1つの繰り返し単位としたときに、該繰り返し単位中において、一方の対角方向に2つの緑のカラーフィルタ(即ち、緑色の可視光波長域に対して緑色以外の他の色の可視光波長域よりも高い透過率を持つカラーフィルタ)15gが配列され、他方の対角方向に赤のカラーフィルタ(即ち、赤色の可視光波長域に対して赤色以外の他の色の可視光波長域よりも高い透過率を持つカラーフィルタ)15rと青のカラーフィルタ(即ち、青色の可視光波長域に対して青色以外の他の色の可視光波長域よりも高い透過率を持つカラーフィルタ)15bとが配列されている。全体として緑のカラーフィルタ15g,15g,…が縦横に1つおきに配置されている。
マイクロレンズ16は、光を集光して受光部11bに入射させるものである。このマイクロレンズ16によって受光部11bを効率良く照射できる。
このように構成された撮像素子10においては、マイクロレンズ16,16,…によって集光された光は、カラーフィルタ15r,15g,15bに入射し、各カラーフィルタに応じた色の光だけが該カラーフィルタを透過して、受光部11b,11b,…に照射する。各受光部11bは、光を吸収して電荷を発生する。この各受光部11bで発生した電荷は、垂直レジスタ12及び転送路13を介して増幅器に送られ、電気信号として出力される。つまり、受光部11b,11b,…からは、各カラーフィルタに対応した色の受光光量が出力として得られる。
こうして、撮像素子10は、その撮像面全体における受光部11b,11b,…で光電変換を行うことによって、撮像面に形成された被写体像を電気信号に変換する。
ここで、基板11aには、照射された光を透過させる透過部17,17,…が複数形成されている。本実施形態では、3つの透過部17,17,17が、基板11aの短手方向中央位置において長手方向に並んで形成されている。透過部17は、基板11aにおける受光部11bが設けられている面とは反対側の面(以下、単に裏面ともいう)11cを切削、研磨又はエッチングにより凹状に陥没させることによって形成されており、周辺部よりも薄く形成されている。さらに詳しくは、透過部17は、最も薄肉になっている陥没面17aと、該陥没面17aと裏面11cとを繋ぐ傾斜面17b,17bとを有している。尚、透過部17は、3つに限られるものではない。例えば、9個の透過部17,17,…を3×3のマトリックス状に配列してもよいし、16個の透過部17,17,…を4×4のマトリックス状に配列してもよい。
この基板11aにおける透過部17を光が透過する程度の厚みに形成することによって、光電変換部11に照射された光のうち該透過部17に照射された光の一部は電荷に変換されずに該光電変換部11を透過する。例えば、透過部17における基板11aの厚みを2〜3μmに設定することによって、近赤外光より長波長側を約50%透過させることができる。
また、傾斜面17b,17bは、透過部17を透過する際に該傾斜面17bで反射する光が後述する位相差検出ユニット20のコンデンサレンズ21a,21a,…へ向かわない角度に設定されている。こうすることで、後述するラインセンサ24aに実像でない像が形成されることを防止している。
この透過部17が、撮像素子10に入射する光を透過、即ち、通過させる薄肉部を構成する。ここで、少なくとも本明細書においては、「通過」は「透過」を含む概念である。
このように構成された撮像素子10は、パッケージ31に保持されている(図2参照)。このパッケージ31が保持部を構成する。
詳しくは、パッケージ31は、平板状の底板31aにフレーム32が設けられていると共に、四方には立壁31b,31b,…が設けられている。撮像素子10は、立壁31b,31b,…により四方を覆われるようにして、フレーム32にマウントされると共に、フレーム32に対してボンディングワイヤを介して電気的に接続されている。
また、パッケージ31の立壁31b,31b,…の先端には、撮像素子10の撮像面(受光部11b,11b,…が設けられている面)を覆うようにカバーガラス33が取り付けられている。このカバーガラス33によって、撮像素子10の撮像面はゴミの付着などから保護されている。
ここで、パッケージ31の底板31aには、撮像素子10の透過部17,17,…に対応する位置に該透過部17,17,…と同じ個数だけ開口31c,31c,…が貫通形成されている。この開口31c,31c,…により、撮像素子10を透過した光が、後述する位相差検出ユニット20まで到達する。この開口31cが通過部を構成する。
尚、パッケージ31の底板31aには、必ずしも開口31cが貫通形成される必要はない。すなわち、撮像素子10を透過した光が位相差検出ユニット20まで到達する構成であれば、底板31aに透明部若しくは半透明部を形成する等の構成であってもよい。
位相差検出ユニット20は、撮像素子10の背面側(被写体と反対側)に設けられて、撮像素子10からの通過光を受光して位相差検出を行う。詳しくは、位相差検出ユニット20は、位相差検出を行うことによって被写体のデフォーカス量を検出する。この位相差検出ユニット20が焦点検出部を構成する。
この位相差検出ユニット20は、図2,図5に示すように、コンデンサレンズユニット21と、マスク部材22と、セパレータレンズユニット23と、ラインセンサユニット24 と、これらコンデンサレンズユニット21、マスク部材22、セパレータレンズユニット23及びラインセンサユニット24を取り付けるためのモジュール枠25とを有している。コンデンサレンズユニット21、マスク部材22、セパレータレンズユニット23及びラインセンサユニット24は、撮像素子10の厚さ方向に沿って該撮像素子10側からこの順で並んでいる。
コンデンサレンズユニット21は、複数のコンデンサレンズ21a,21a,…を一体的にユニット化したものである。コンデンサレンズ21a,21a,…は、透過部17,17,…と同じ数だけ設けられている。各コンデンサレンズ21aは、入射する光を集光するためのものであり、撮像素子10を透過して拡がりつつある光を集光して、セパレータレンズユニット23の後述するセパレータレンズ23aへと導く。各コンデンサレンズ21aは、入射面21bが凸状に形成されていると共に、入射面21b近傍が円柱状に形成されている。
このコンデンサレンズ21aを設けることによって、セパレータレンズ23aへの入射角度が立つ(入射角が小さくなる)ため、セパレータレンズ23aの収差を抑えることができると共に、後述するラインセンサ24a上の被写体像間隔を小さくすることができる。その結果、セパレータレンズ23a及びラインセンサ24aを小型化することができる。また、撮像光学系からの被写体像の焦点位置が撮像ユニット1から大きく外れたとき(詳しくは、撮像ユニット1の撮像素子10から大きく外れたとき)、その像のコントラストが著しく下がるが、本実施形態によれば、コンデンサレンズ21aとセパレータレンズ23aによる縮小効果によりコントラストの低下を抑え、焦点検出範囲を広くすることもできる。尚、焦点位置近傍における高精度な位相差検出等の場合、セパレータレンズ23aやラインセンサ24a等の寸法に余裕がある場合等においては、コンデンサレンズユニット21を設けなくてもよい。
マスク部材22は、コンデンサレンズユニット21とセパレータレンズユニット23との間に配設される。マスク部材22は、各セパレータレンズ23aに対応する位置ごとに2つのマスク開口22a,22aが形成されている。つまり、マスク部材22は、セパレータレンズ23aのレンズ面を2つの領域に分割して、該2つの領域だけをコンデンサレンズ21a側に露出させている。すなわち、マスク部材22は、コンデンサレンズ21aにより集光された光を2つの光束に瞳分割して、セパレータレンズ23aへ入射させる。このマスク部材22により隣り合う一方のセパレータレンズ23aからの有害光などが他方のセパレータレンズ23aに入らないようにすることができる。尚、このマスク部材22は、設けなくともよい。
セパレータレンズユニット23は、複数のセパレータレンズ23a,23a,…を有し、これら複数のセパレータレンズ23a,23a,…を一体的にユニット化したものである。セパレータレンズ23a,23a,…は、コンデンサレンズ21a,21a,…と同様に、透過部17,17,…と同じ数だけ設けられている。各セパレータレンズ23aは、マスク部材22を通過して入射してきた2つの光束を、同一の2つの被写体像としてラインセンサ24a上に結像させる。
ラインセンサユニット24は、複数のラインセンサ24a,24a,…と該ラインセンサ24a,24a,…を設置する設置部24bとを有する。ラインセンサ24a,24a、…は、コンデンサレンズ21a,21a,…と同様に、透過部17,17,…と同じ数だけ設けられている。各ラインセンサ24aは、撮像面上に結像する像を受光して電気信号に変換する。つまり、ラインセンサ24aの出力から、2つの被写体像の間隔を検出することができ、その間隔によって撮像素子10に結像する被写体像の焦点のずれ量(即ち、デフォーカス量(Df量))及び焦点がどちらの方向にずれているか(即ち、デフォーカス方向)を求めることができる(以下、これらDf量及びデフォーカス方向等をデフォーカス情報ともいう)。
このように構成されたコンデンサレンズユニット21、マスク部材22、セパレータレンズユニット23及びラインセンサユニット24は、モジュール枠25に配設されている。
モジュール枠25は、枠状に形成された部材であって、その内周には、内側に向かって突出する取付部25aが設けられている。取付部25aの撮像素子10側には、階段状に第1取付部25b及び第2取付部25cが形成されている。また、取付部25aの撮像素子10と反対側には、第3取付部25dが形成されている。
そして、撮像素子10側から、モジュール枠25の第2取付部25cにマスク部材22が取り付けられ、第1取付部25bにコンデンサレンズユニット21が取り付けられている。これらコンデンサレンズユニット21及びマスク部材22は、それぞれ第1取付部25b及び第2取付部25cに取り付けられる際に、図2,5に示すように、周縁部がモジュール枠25に嵌り込むように形成されており、それによりモジュール枠25に対して位置決めされる。
一方、撮像素子10の反対側から、モジュール枠25の第3取付部25dにセパレータレンズユニット23が取り付けられている。第3取付部25dには、コンデンサレンズユニット21と反対側に突出する位置決めピン25eと方向基準ピン25fとが設けられている。一方、セパレータレンズユニット23には、これら位置決めピン25e及び方向基準ピン25fにそれぞれ対応する位置決め孔23b及び方向基準孔23cが形成されている。位置決めピン25eと位置決め孔23bとは嵌合するようにそれぞれの径が設定されている。一方、方向基準ピン25fと方向基準孔23cとは緩やかに嵌るようにそれぞれの径が設定されている。すなわち、セパレータレンズユニット23は、位置決め孔23b及び方向基準孔23cをそれぞれ第3取付部25dの位置決めピン25e及び方向基準ピン25fに挿通させることによって、第3取付部25dに取り付ける際の方向等の姿勢が規定されると共に、位置決め孔23bと位置決めピン25eとの嵌合によって第3取付部25dに対して位置決めされる。こうして、セパレータレンズユニット23が姿勢及び位置を決めて取り付けられたとき、セパレータレンズ23a,23a,…の各レンズ面は、コンデンサレンズユニット21の側を向くと共に、マスク開口22a,22aと対向した状態になる。
こうして、コンデンサレンズユニット21、マスク部材22及びセパレータレンズユニット23は、モジュール枠25に対して位置決めされた状態で取り付けられる。すなわち、これらコンデンサレンズユニット21、マスク部材22及びセパレータレンズユニット23は、モジュール枠25を介して、互いの位置関係が位置決めされる。
そして、ラインセンサユニット24が、セパレータレンズユニット23の背面側(コンデンサレンズユニット21と反対側)からモジュール枠25に対して取り付けられる。このとき、ラインセンサユニット24は、各セパレータレンズ23aを透過した光がラインセンサ24aに入射するように位置決めされた状態でモジュール枠25に取り付けられる。
したがって、コンデンサレンズユニット21、マスク部材22、セパレータレンズユニット23及びラインセンサユニット24をモジュール枠25に取り付けることによって、コンデンサレンズ21a,21a,…に入射した光が、該コンデンサレンズ21a,21a,…を透過して、マスク部材22を介してセパレータレンズ23a,23a,…に入射し、セパレータレンズ23a,23a,…を透過した光がラインセンサ24a,24a,…上に結像するように、コンデンサレンズ21a,21a,…、マスク部材22、セパレータレンズ23a,23a,…及びラインセンサ24a,24a,…がそれぞれ位置決めされた状態で配列される。
このように構成された撮像素子10と位相差検出ユニット20とは、互いに接合される。詳しくは、撮像素子10におけるパッケージ31の開口31cと位相差検出ユニット20におけるコンデンサレンズ21aとが、互いに嵌合するように構成されている。つまり、位相差検出ユニット20におけるコンデンサレンズ21a,21a,…を、撮像素子10におけるパッケージ31の開口31c,31c,…に嵌め込んだ状態で、モジュール枠25をパッケージ31に接着する。こうすることで撮像素子10と位相差検出ユニット20とを互いに位置決めした状態で接合することができる。このように、コンデンサレンズ21a,21a,…、セパレータレンズ23a,23a,…及びラインセンサ24a,24a,…は、一体的にユニット化されると共に、ユニット化された状態でパッケージ31に取り付けられる。
このとき、全ての開口31c,31c,…と全てのコンデンサレンズ21a,21a,…とを互いに嵌合するように構成してもよい。あるいは、そのうちのいくつかの開口31c,31c,…とコンデンサレンズ21a,21a,…だけを嵌合状態とし、残りの開口31c,31c,…とコンデンサレンズ21a,21a,…とは緩やかに嵌るように構成してもよい。後者の場合には、最も撮像面中央に近いコンデンサレンズ21aと開口31cとが嵌合するように構成して撮像面内における位置決めを行い、さらに、撮像面中央から最も離れたコンデンサレンズ21aと開口31cとが嵌合するように構成して撮像面中央のコンデンサレンズ21a及び開口31c回り(即ち、回転角度)の位置決めを行うことが好ましい。
こうして、撮像素子10と位相差検出ユニット20とを接合した結果、基板11aの背面側には、各透過部17ごとに、コンデンサレンズ21a、マスク部材22の一対のマスク開口22a,22a、セパレータレンズ23a及びラインセンサ24aが配置される。すなわち、撮像素子10には、3つの透過部17,17,l7が形成されているため、図2,5に示すように、コンデンサレンズ21a、マスク開口22a,22a、セパレータレンズ23a及びラインセンサ24aのセットが3セット設けられている。つまり、カメラ100は、位相差検出を行うことができる焦点検出エリアを3つ有している。
尚、コンデンサレンズ21a等のセット数は、透過部17の個数に合わせて変更してもよい。また、後述するように基板11aの全面を薄く形成する場合には、基板11aの全面が透過部となるため、透過部とは関係なく、任意のセット数のコンデンサレンズ21a等を設けてもよい。
このように、光を透過させるように構成した撮像素子10に対して、撮像素子10を収容するパッケージ31の底板31aに開口31c,31c,…を形成することによって、撮像素子10を透過した光をパッケージ31の背面側まで容易に到達させることができると共に、パッケージ31の背面側に位相差検出ユニット20を配設することによって、撮像素子10を透過した光を位相差検出ユニット20で受光する構成を容易に実現することができる。
また、パッケージ31の底板31aに形成される開口31c,31c,…は撮像素子10を透過した光をパッケージ31の背面側に通過させる構成であれば任意の構成を採用することができるが、貫通孔である開口31c,31c,…を形成することによって、撮像素子10を透過した光を減衰させることなくパッケージ31の背面側まで到達させることができる。
また、コンデンサレンズ21a,21a,…を開口31c,31c,…に嵌合させることによって、開口31c,31c,…を利用して、撮像素子10に対する位相差検出ユニット20の位置決めを行うことができる。尚、コンデンサレンズ21a,21a,…を設けない場合は、セパレータレンズ23a,23a,…を開口31c,31c,…に嵌合させるように構成すれば、同様に、撮像素子10に対する位相差検出ユニット20の位置決めを行うことができる。
それと共に、コンデンサレンズ21a,21a,…にパッケージ31の底板31aを貫かせて、基板11aに接近させて配設することができるため、撮像ユニット1をコンパクトに構成することができる。
尚、撮像素子10においては、基板11aに透過部17を形成する代わりに、基板11a全体を光が透過する程度に薄く形成してもよい。このように構成された基板11aを用いる場合、撮像素子10を裏面照射型撮像素子として利用することも考えられる。この場合、撮像素子10は、表裏反転させて使用され、基板11aの裏面から光が入射し、表面から光が出射していく。そして、基板11aの表面に位置する受光部11bで光電変換される。この裏面照射型においても、入射光が基板11aを透過するため、基板11aに対して光の出射側に位相差検出ユニット20を配置することによって、基板11aを透過した光を用いて位相差検出を行うことができる。
さらに、撮像素子10は、CCDイメージセンサに限られるものではなく、図6に示すように、CMOSイメージセンサであってもよい。
撮像素子210は、CMOSイメージセンサであって、半導体材料で構成された光電変換部211と、トランジスタ212と、信号線213と、マスク214と、カラーフィルタ215と、マイクロレンズ216とを有している。
光電変換部211は、基板211aと、フォトダイオードで構成された受光部211b,211b,…とを有している。各受光部211bごとに、トランジスタ212が設けられている。受光部211bで蓄積された電荷は、トランジスタ212で増幅され、信号線213を介して外部へ出力される。マスク214、カラーフィルタ215及びマイクロレンズ216は、前記マスク14、カラーフィルタ15及びマイクロレンズ16と同様の構成である。
そして、基板211aには、CCDイメージセンサと同様に、照射された光を透過させる透過部17,17,…が形成されている。透過部17は、基板211aにおける受光部211bが設けられている面とは反対側の面(以下、単に裏面ともいう)211cを切削、研磨又はエッチングにより凹状に陥没させることによって形成されており、周辺部よりも薄肉に形成されている。
また、CMOSイメージセンサにおいては、トランジスタ212の増幅率を受光部211bごとに設定することができるため、各トランジスタ212の増幅率を各受光部11bが透過部17に対応する位置に位置するか否か、および、各受光部11bに対応するカラーフィルタ15の色の種類に基づいて設定することによって、透過部17,17,…に対応する部分の画像が、適切に撮影されないことを防止することができる。
−撮影基本シーケンス−
図7は、カメラ100の電源が投入された後の、撮影準備段階におけるオートフォーカスシーケンスを示す。
まず、カメラ本体4の電源が投入されると(ステップSa1)、ボディ制御部5は、フォーカスレンズ群72及びズームレンズ群75を所定の初期位置へ移動させ、撮像素子10の出力信号に基づいて測光を行うと共にホワイトバランスを取得し、ライブビュー画像の画像表示部44への表示を開始する。その後(あるいは、それと並行して)、ボディ制御部5は、ステップSa2において、位相差検出が可能か否かの判定を行う。具体的には、ボディ制御部5は、ラインセンサ24aの出力信号に基づいて位相差の検出が可能か否かを判定する。このとき、ボディ制御部5は、できるだけ早く位相差検出を行えるようにするために、測光情報に基づいて、ラインセンサ24aのS/N比を十分に確保できる範囲で、ラインセンサ24aの感度と電荷蓄積時間を最適な状態に調整している。
ボディ制御部5は、位相差検出が可能と判定すると、検出された位相差に基づいてフォーカスレンズ群72を駆動して合焦位置へ移動させ(ステップSa3)、その後、フォーカスレンズ群72の駆動を停止する(ステップSa4)。そして、ボディ制御部5は、ステップSa5において、再び位相差検出を実施して合焦しているか否かを判定する。具体的には、ボディ制御部5は、位相差が所定の範囲内であれば、合焦していると判定する。合焦していなければ、ステップSa2へ戻り、再び位相差検出を行う。一方、合焦していればステップSa4へ戻る。このように、合焦していなければ、再度、ステップSa2へ戻ることによって、合焦状態の検出精度を向上させることができる。
一方、被写体像がローコントラストであったり、低輝度であったり、繰り返しパターンであったりする場合には、ボディ制御部5は、ステップSa2において位相差検出が不可能と判定する。この場合、ボディ制御部5は、ステップSa6へ進んで、いわゆるコントラスト検出方式の合焦動作を行う。詳しくは、ボディ制御部5は、ステップSa6においてフォーカスレンズ群72のスキャン駆動を行う。スキャン駆動とは、撮像素子10に投影された被写体像の特定部分のコントラストを検出し、そのコントラストに基づいて所定の焦点評価値を算出しながら、フォーカスレンズ群72を一定方向へ駆動することをいう。ステップSa7では、ボディ制御部5は、焦点評価値のピーク値を検出したか否かを判定する。焦点評価値がピークとなるフォーカスレンズ群72の位置が合焦位置である。ピーク値が検出された場合には、ボディ制御部5は、ステップSa3において、フォーカスレンズ群72をピーク値を検出した位置まで移動させる。
その後、前述のステップSa4へ進む。つまり、位相差検出が不可能と判定されて、いわゆるコントラスト検出方式で合焦動作を行った場合であっても、次に合焦動作を行う必要がある場合には、再び、位相差検出が可能か否かを判定し、可能であれば、位相差検出方式で合焦動作を行う。位相差検出によれば、焦点位置の検出速度が速く且つ、デフォーカス方向がデフォーカス量と同時に判定できるため、可能な限り、位相差検出方式を優先する。
ステップSa7において、ピーク値が検出されないときは、ピーク位置がフォーカスレンズ群72のスキャン駆動開始位置よりもステップSa6のスキャン駆動方向とは反対側に存在する可能性があるため、ステップSa8へ進み、フォーカスレンズ群72の駆動方向を反転させてスキャン駆動を継続する。その後、ステップSa7へ戻る。そして、ピーク値が検出された場合には、前述の如く、ステップSa3へ進む。
このような撮影基本シーケンスを繰り返すことで、撮影トリガである、静止画撮影におけるレリーズボタン40bの半押し操作、又は動画撮影におけるRECボタン40dの操作があるまで、被写体に対し合焦を続ける。このオートフォーカス制御をコンティニュアスAFと呼ぶ。一方、静止画撮影においては、一度合焦した状態でフォーカスレンズ群72の駆動を停止する。このオートフォーカス制御をワンショットAFと呼ぶ。これら静止画撮影におけるコンティニュアスAFとワンショットAFとは撮影者が適宜選択することができる。ここで、コンティニュアスAFの場合は、ステップSa4,sa5が繰り返される。この繰り返し中に合焦状態から外れると、ステップSa2へ進み、前述のフローを繰り返す。一方、ワンショットAFの場合は、ステップSa5の後、ステップSa4でフォーカスレンズ群72の駆動を停止して終了する。つまり、ワンショットAFの場合には、被写体に合焦した状態でフォーカスレンズ群72の位置が保持(いわゆる、AFロック)される。
続いて、レリーズボタン40bの全押し、又はRECボタン40dの操作があると、ボディ制御部5は、所定の撮影制御を行う。レリーズボタン40b又はRECボタン40dの操作は、撮影基本シーケンスの途中のどの位置にでも割り込むことが可能である。
−動画撮影中のピントシフト制御−
次に、動画撮影中において、合焦させる被写体を変更する場合の合焦制御について図8,9を参照しながら説明する。ここで、現在合焦している被写体とは別の被写体に合焦させる(即ち、ピントを合わせる)ことをピントシフトと称し、そのように制御することをピントシフト制御と称する。図8は、図9の画像を動画撮影中に被写体Aから被写体Bにピントを合わせる場合のフローチャートである。図9は、ピントが被写体Aから被写体Bへシフトされるときに画像表示部44に表示される画像を示す。
本実施形態では、前述の如く、撮像素子10の撮像面内(即ち、画像表示部44に表示される画面内)に3個の位相差検出による焦点検出エリアA1〜A3を有している。画像表示部44には、3つの焦点検出エリアA1〜A3が破線で描かれた円で表示されている。ここで、被写体Aが焦点検出エリアA1と重複し、被写体Bが焦点検出エリアA3と重複しており、被写体Aに合焦している場合を考える。このとき、焦点検出エリアA1に対応するラインセンサ24aで検出された位相差に基づいて、被写体Aに合焦している。
この被写体変更時のピントシフト制御は、ピントシフトスイッチ40cの操作により開始される(ステップSb1)。まず、ピントシフトスイッチ40cがON操作されると、ボディ制御部5は、撮影者に合焦時間Tの確認を行う(ステップSb2)。この合焦時間Tは、ピントシフトを開始させるための条件成立後、シフト先の被写体に合焦させるまでに要する時間である。操作者によりOKが入力されれば(即ち、合焦時間が現在の設定でよければ)、ステップSb3へ進む一方、操作者によりNGが入力されれば(即ち、合焦時間を変更したければ)、ステップSb10へ進む。
ステップSb10において、ボディ制御部5は、画像表示部44に、合焦時間変更画面を表示させ、撮影者に合焦時間Tを入力させる。ボディ制御部5は、撮影者に入力された時間を合焦時間Tに設定して、ステップSb3へ進む。撮影者は、合焦時間Tを任意の時間に設定することが可能である。
ステップSb3では、ボディ制御部5は、焦点検出エリアA1〜A3のそれぞれにおいて、その中に存在する被写体に関するデフォーカス情報(デフォーカス量とデフォーカス方向)を取得する。具体的には、ボディ制御部5は、焦点検出エリアA1〜A3のそれぞれに対応するラインセンサ24a,24a,…の出力に基づいてデフォーカス情報を取得する。尚、後述するように、現在設定されている焦点検出エリアのデフォーカス情報と、次に合焦させる被写体が存在する焦点検出エリアのデフォーカス情報だけがピントシフト制御に用いられるため、それらの焦点検出エリアのデフォーカス情報だけを取得するようにしてもよい。
続いて、ステップSb4において、ボディ制御部5は、現在設定されている被写体に合焦させる。本実施形態では、合焦させる被写体として被写体Aが設定されているため、被写体Aに合焦させる。尚、被写体を設定するのではなく、焦点検出エリアが設定され、そのエリアに重複する被写体に合焦させるように構成されていてもよい。こうして、ピントシフトに向けた準備が完了する。
ステップSb5において、ボディ制御部5は、ピントシフトを実行するトリガがあったか否かを判定する。詳しくは、焦点変更条件が成立することがトリガとなっている。本実施形態における焦点変更条件は、現在合焦している被写体とは別の被写体が選択されることである。被写体の選択は、画像表示部44のタッチパネルの操作で行うことができる。すなわち、画像表示部44のタッチパネル上で、別の被写体を単に押圧することで、その被写体を選択することができる。別の操作としては、現在合焦している被写体から別の被写体まで、画像表示部44のタッチパネル上を指でなぞって該別の被写体で指を止めることによって、その被写体を選択することができる。ボディ制御部5は、ピントシフト制御時にタッチパネルからの出力信号に基づいて、いずれかの選択操作が検知されたときには、トリガがあった(すなわち、焦点変更条件が成立した)と判定して、ステップSb6へ進む。一方、該トリガがないときには、ボディ制御部5は、ステップSb3へ戻り、ステップSb3〜Sb5を繰り返す。ここでは、被写体Bが選択された場合について説明する。
ステップSb6においては、ボディ制御部5は、フォーカスレンズ群72の移動量及び移動速度を算出する。詳しくは、ボディ制御部5は、ステップSb3で求めた焦点検出エリアA1〜A3のデフォーカス情報に基づいて、以下の式により、フォーカスレンズ群72の移動速度Vを算出する。
V=(次の被写体Bと重複する焦点検出エリア(A3)のデフォーカス量)÷K値÷T
ここで、K値は、フォーカスレンズ群72の移動量に対するピント位置の移動量の比を表す値であって、フォーカスレンズ群72の光軸方向位置(以下、レンズ群の光軸方向位置を、単に「位置」ともいう)とズームレンズ群75の位置とから光学的に決定される値である。具体的には、フォーカスレンズ群72の位置は、フォーカスレンズ群制御部81の絶対位置検出部81a及び相対位置検出部81bによって検出することができ、ズームレンズ群75の位置は、ズームレンズ群制御部86の絶対位置検出部86a及び相対位置検出部86bによって検出することができる。また、不揮発性メモリ50aには、フォーカスレンズ群72の位置及びズームレンズ群75の位置に対するK値の関係を規定したマップが格納されている。ボディ制御部5は、絶対位置検出部81a及び相対位置検出部81bからの検出信号、絶対位置検出部86a及び相対位置検出部86bからの検出信号、並びに不揮発性メモリ50a内のマップとに基づいて、現在のフォーカスレンズ群72及びズームレンズ群75に対するK値を求める。このK値でシフト先の焦点検出エリア(A3)のデフォーカス量を除することによって、そのデフォーカス量に応じたフォーカスレンズ群72の移動量(詳しくは、デフォーカス量を零にするフォーカスレンズ群72の移動量)を求めることができる。
そして、フォーカスレンズ群72の移動量をさらに合焦時間Tで除することによって、フォーカスレンズ群72の移動速度Vを求めることができる。この合焦時間Tは、ステップSb5においてトリガとなった被写体の選択方法によって異なる。タッチパネルの単純な押圧操作によって別の被写体を選択した場合には、ステップSb2で確認した合焦時間T又はステップSb10で設定した合焦時間Tを用いる。一方、タッチパネルをなぞることによって別の被写体を選択した場合には、現在合焦している被写体から別の被写体までの間を指でなぞるのに要した時間を合焦時間Tとして用いる。
こうして、シフト先の焦点検出エリア(A3)のデフォーカス量と、前述のように求めたK値と、設定された合焦時間Tとによって、フォーカスレンズ群72の移動速度Vを演算することができる。尚、不揮発性メモリ50aには、フォーカスレンズ群72の位置、ズームレンズ群75の位置、デフォーカス量及び合焦時間Tに対する、フォーカスレンズ群72の移動速度Vの関係を記録したマップを格納していてもよい。かかる場合、フォーカスレンズ群72の位置、ズームレンズ群75の位置、デフォーカス量及び合焦時間Tがわかると、フォーカスレンズ群72の移動速度が決定される。あるいは、不揮発性メモリ50aには、フォーカスレンズ群72の位置、ズームレンズ群75の位置及びデフォーカス量に対する、フォーカスレンズ群72の移動量の関係を記録したマップを格納していてもよい。該テーブルに基づいて、フォーカスレンズ群72の移動量を取得した上で、該移動量を合焦時間Tで除することによって、フォーカスレンズ群72の移動速度Vを求めることができる。さらには、不揮発性メモリ50aには、フォーカスレンズ群72の位置、ズームレンズ群75の位置、デフォーカス量及び合焦時間Tを変数とするフォーカスレンズ群72の移動速度Vの計算式を格納していてもよい。この場合であっても、フォーカスレンズ群72の位置、ズームレンズ群75の位置、デフォーカス量及び合焦時間Tがわかれば、フォーカスレンズ群72の移動速度Vを算出することができる。すなわち、シフト先の焦点検出エリア(A3)のデフォーカス量と合焦時間Tとを用いてフォーカスレンズ群72の移動速度Vを求めることができる限りにおいては、任意の構成を採用することができる。
そして、ボディ制御部5は、ステップSb7において、ステップSb6で求めた移動速度Vでフォーカスレンズ群72を、合焦時間Tだけ移動させる。ステップSb6の説明からわかるように、フォーカスレンズ群72が移動速度Vで合焦時間Tだけ移動すると、ピントシフト開始前に被写体Bに合焦すると予測された位置までフォーカスレンズ群72が移動されることになる。被写体Bがカメラ100に対して近づいたり、遠ざかったりしない限り、被写体距離はピントシフト制御の間にほとんど変化しない。そのため、ピントシフト前のデフォーカス量を用いたとしても、ピントシフト後の被写体Bにピントを合わせることができる。
その後、ボディ制御部5は、ステップSb3と同様に、焦点検出エリアA1〜A3のそれぞれにおいて、その中に存在する被写体に関するデフォーカス情報(デフォーカス量とデフォーカス方向)を取得する(ステップSb8)。そして、ボディ制御部5は、焦点検出エリアA3における被写体Bのデフォーカス量が所定の閾値未満であるか否かを判定する(ステップSb9)。この閾値は、略零に近い値であって、合焦していると判断できる値である。デフォーカス量が所定の閾値未満であるときには、ピントシフト処理を終了する一方、デフォーカス量が所定の閾値以上であるときには、ステップSb7へ戻る。
つまり、ステップSb8,Sb9は、ピントシフト後に被写体Bに合焦しているか確認するステップである。そのため、ステップSb8では、被写体Bが重複する焦点検出エリアA3のデフォーカス情報だけを取得してもよい。
尚、再度のステップSb7では、ボディ制御部5は、現在のフォーカスレンズ群72の位置及びズームレンズ群75の位置に対応するK値を求め、そのK値とステップSb8で求めたデフォーカス量とに基づいてフォーカスレンズ群72の移動量を算出する。そして、ボディ制御部5は、算出した移動量だけフォーカスレンズ群72を移動させる。このときのフォーカスレンズ群72の移動速度は、ステップSb6で求めた移動速度Vではなく、通常の合焦動作に用いられる移動速度(例えば、デフォーカス量が小さい領域では遅く、デフォーカス量が大きい領域では速くなるような、デフォーカス量に応じた移動速度)に設定されている。その後、ステップSb8,Sb9を繰り返し、被写体Bに合焦したか否かを判定する。こうして、被写体Bに合焦するまで、ステップSb7〜Sb9を繰り返す。
このピントシフト制御によれば、撮影者が設定した合焦時間Tで合焦するように、フォーカスレンズ群72の移動速度Vが調整される。すなわち、フォーカスレンズ群72の移動速度Vを調整することによって、合焦時間Tを調整している。その結果、撮影者は作画意図に応じて、フォーカスレンズ群72の移動速度V、即ち、合焦時間Tを調整することができる。例えば、高速性を要求するようなスポーツを撮影する場合には、合焦時間Tを短く設定することによって、フォーカス速度を速くすることができる。また、ドラマや映画のように雰囲気のある動画像を撮影したい場合には、合焦時間Tを長く設定することによって、フォーカス速度を遅くすることができる。
つまり、従来の動画撮影では、コントラスト検出方式のAFによる合焦動作であるため、合焦中の被写体Aから別の被写体Bへピントを変更する場合、サーチ動作(即ち、焦点評価値のピークを検出するためのスキャン駆動)が必要な上、合焦付近でピントの飛び越し(即ち、フォーカスレンズ群72が合焦位置を行きすぎること)が発生する。そこで、サーチ動作やピントの飛び越しを回避すべく、位相差検出方式のAFによる合焦動作を採用することが考えられる。しかし、位相差検出方式のAFは焦点位置を瞬時に検出することができるものの、逆に合焦動作が速すぎて、撮影者の作画意図どおりの動画を撮影できない場合も起こり得る。
それに対して、本実施形態によれば、合焦させる被写体を変更する前に、次に合焦させる被写体に合焦させるためのフォーカスレンズ群72の移動量(あるいは、それに関連する値)を検出しておき、変更先の被写体に合焦させるときには、合焦時間(合焦動作を開始してから完了するまでの時間)が予め設定した合焦時間Tとなるような移動速度でフォーカスレンズ群72を移動させる。すなわち、現在合焦している被写体と次に合焦させる被写体との距離が離れている場合には、相対的に速いフォーカスレンズ群72の移動速度で合焦動作を行うことができ、現在合焦している被写体と次に合焦させる被写体との距離が近い場合には、相対的に遅いフォーカスレンズ群72の移動速度で合焦動作を行うことができる。このように次に合焦させる被写体のデフォーカス量に関わらず、例えば合焦時間を一定にすることによって、動画撮影時の撮影手法の選択肢を増やすことができる。その結果、撮影者の作画意図どおりの動画を撮影することができる。
尚、前記の説明では、次に合焦させる被写体を選択する際に、撮影者は被写体Bを直接選択しているが、これに限られるものではない。例えば、次に合焦させる被写体を選択するために、操作者が該被写体が重複する焦点検出エリアを選択するようにしてもよい。その場合、画像表示部44には、被写体と共に焦点検出エリアを表す枠も表示すればよい。この場合、焦点検出エリアの選択は、焦点検出エリアに重複している被写体を選択することに等しく、撮影者は、間接的に、被写体を選択していると言うことができる。特に、焦点検出エリアが少ない場合には、位相差検出を行うことができる被写体を選択させることになるため、有効である。ただし、被写体が撮像面中のどこに位置しても、ほとんどの場合、何れかの焦点検出エリアと重複する程度に、焦点検出エリアが多い場合には、撮影者に焦点検出エリアを直接選択させることなく、前述の説明のように、次に合焦させる被写体を直接選択させるようにすればよい。そして、ボディ制御部5が、選択された被写体に最適な焦点検出エリアを選択し、その焦点検出エリアからのデフォーカス情報に基づいてピントシフト制御を行うようにすればよい。
−動画撮影中の第1のパンニング制御−
次に、動画撮影中において、パンニングに伴ってピントシフトを行う合焦制御について図10,11を参照しながら説明する。ここで、パンニング前に合焦している被写体とは別の被写体にピントを合わせる制御をパンニング制御と称する。
図10は、図11の画像の動画撮影中に、パンニング時に被写体Aから被写体Bにピントを合わせる場合のフローチャートである。図11は、パンニング時にピントが被写体Aから被写体Bへシフトされるときに画像表示部44に表示される画像を示す。
本実施形態では、前述の如く、撮像面内に3点の焦点検出エリアを有している。ピントシフト前では、被写体Aは位相差焦点検出エリア1と重複し、被写体Bが焦点検出エリア3と合致重複いる。そして、被写体Aに合焦している。この状態から、被写体Bが撮像面の中央に移動するようにカメラ100をパンニングさせた後に、ピントシフト制御により被写体Bにピントを合わせていく。
第1のパンニング制御のシーケンスを、図10を参照しながら具体的に説明する。
パンニング制御は、ピントシフトスイッチ40cの操作により開始される(ステップSc1)。ピントシフトスイッチ40cが操作されると、ボディ制御部5は、撮影者に合焦時間Tの確認を行う(ステップSc2)。この合焦時間Tの確認から、各焦点検出エリアA1〜A3におけるデフォーカス情報の取得(ステップSc3)、現在設定されている焦点検出エリアでの合焦動作(ステップSc4)及び合焦時間Tの設定(ステップSc11)の処理は、前述の被写体変更時のステップSb2〜Sb4,Sb10と同様である。尚、この第1のパンニング制御と、前記ピントシフト制御と、後述の第2のパンニング制御と、後述の第3のパンニング制御とは、ピントシフトスイッチ40cの操作内容によって選択可能に構成されている。ただし、ピントシフト制御及び第1〜第3のパンニング制御の選択は、ピントシフトスイッチ40cの操作以外の方法で選択可能であってもよい。また、カメラ100は、ピントシフト制御及び第1〜第3のパンニング制御の何れかの制御のみを実施可能に構成されていてもよい。
すなわち、ステップSc4まで進むと、合焦時間Tの確認が完了し、焦点検出エリアA1に重複している被写体Aに合焦した状態となる。その後、ステップSc5において、ボディ制御部5は、撮影者による、次に合焦させる被写体の選択と該被写体の移動先と予測される焦点検出エリアの選択とがあったか否かを判定する。つまり、パンニング時のピントシフト制御においては、撮影者が、現在合焦している被写体とは別の、撮像面内の被写体を次の被写体として選択すると共に、その選択した被写体がパンニングにより撮像面内を相対移動して到達すると予測される、移動先の焦点検出エリアを選択する。これらの選択は、例えば、撮影者がタッチパネルを操作することによって行う。これら次の被写体の選択と移動先の焦点検出エリアの選択とがあったときは、ステップSc6へ進む。一方、これらの選択が無い場合には、ステップSc3へ戻り、ステップSc3〜Sc5を繰り返す。尚、移動先の焦点検出エリアとして、現在合焦している被写体が重複している焦点検出エリア(図11であれば、A1)を選択してもよい。
ステップSc6においては、前述のピントシフト制御のステップSb6と同様の処理により、フォーカスレンズ群72の移動速度Vを算出する。
続いて、ステップSc7において、ボディ制御部5は、カメラ100のパンニングにより被写体Bが相対移動して、移動先として選択された焦点検出エリアに入るか否かを判定する。本実施形態では、選択された焦点検出エリアは、A2である。ボディ制御部5は、撮像素子10により取得された画像情報に基づいて被写体Bの相対変位を認識し、被写体Bが選択された焦点検出エリアに入ったか否かを判定する。被写体Bが選択された焦点検出エリアA2に入ったときには、ステップSc8へ進む一方、被写体Bが選択された焦点検出エリアA2に入っていないときには、ステップSc7を繰り返す。つまり、第1のパンニング制御では、次の被写体が移動先として選択された焦点検出エリアに入ることが、ピントシフトを実行するトリガ、即ち、焦点変更条件の成立となる。尚、被写体が選択された焦点検出エリアに入ったか否かの判定は、撮影者が操作スイッチなどを操作することによる入力信号に基づいて判定してもよい。
被写体Bが選択された焦点検出エリアA2に入ったときには、ステップSc8において、ボディ制御部5は、フォーカスレンズ群72をステップSc6で算出した移動速度Vで、ステップSc3で求めたデフォーカス方向へ、設定した合焦時間Tだけ移動させる。その結果、ステップSc3で求めた、ピントシフト前の被写体Bのデフォーカス量に基づいて、デフォーカス量が零となると予測される移動量だけフォーカスレンズ群72が移動されることになる。被写体Bがカメラ100に対して近づいたり、遠ざかったりしない限り、パンニングするだけでは被写体距離はほとんど変化しない。そのため、ピントシフト前のデフォーカス量を用いたとしても、パンニング後の被写体Bにピントを合わせることができる。
続いて、ステップSc9において、ボディ制御部5は、焦点検出エリアA1〜A3のそれぞれにおいて、その中に存在する被写体に関するデフォーカス情報(デフォーカス量とデフォーカス方向)を取得し、ステップSc10において、ステップSc9で取得された被写体Bに対するデフォーカス量が所定の閾値未満か否かを判定する。これらは、ピントシフト制御のステップSb8,Sb9と同様の内容である。すなわち、ピントシフト後に被写体Bに合焦しているか確認している。
この閾値は、デフォーカス量が略零、即ち、被写体Bに略合焦していると判定できる値に設定されている。そして、デフォーカス量が所定の閾値以上であれば、ステップSc8に戻る。再度のステップSc8では、ボディ制御部5は、現在のフォーカスレンズ群72の位置及びズームレンズ群75の位置に対応するK値を求め、そのK値とステップSc9で求めたデフォーカス量とに基づいてフォーカスレンズ群72の移動量を算出する。そして、ボディ制御部5は、算出した移動量だけフォーカスレンズ群72を移動させる。このときのフォーカスレンズ群72の移動速度は、ステップSc6で求めた移動速度Vではなく、通常の合焦動作に用いられる移動速度(例えば、フォーカスレンズ群7の最高速度)に設定されている。その後、ステップSc9,Sc10を繰り返し、被写体Bに合焦したか否かを判定する。
そして、ステップSc10において、被写体Bに対するデフォーカス量が所定の閾値未満であると判定されると、被写体Bに合焦したと判断して、第1のパンニング制御を終了する。
このように、第1のパンニング制御によれば、パンニングする前に、次に合焦させる被写体に対するデフォーカス量(あるいは、それに関連する値)を検出しておき、パンニングが実行され、次に合焦させる被写体が撮像面内の所定の位置に到達したときに変更先の被写体に合焦させるときには、合焦時間が予め設定した合焦時間Tとなるような移動速度でフォーカスレンズ群72を移動させる。すなわち、ピントシフト前の時点におけるデフォーカス量が大きい、即ち、ピントシフト前に合焦している被写体と次に合焦させる被写体との距離が離れている場合には、相対的に速いフォーカスレンズ群72の移動速度で合焦動作を行うことができる。一方、ピントシフト前の時点におけるデフォーカス量が小さい、即ち、ピントシフト前に合焦している被写体と次に合焦させる被写体との距離が近い場合には、相対的に遅いフォーカスレンズ群72の移動速度で合焦動作を行うことができる。このように、パンニング時であっても、次に合焦させる被写体に対するデフォーカス量に関わらず、例えば合焦時間を一定にすることによって、動画撮影時の撮影手法の選択肢を増やすことができる。その結果、動画像を観る者に合焦動作の慌ただしさ等を感じさせてしまうのを防止することができると共に、撮影者の作画意図どおりの動画を撮影することができる。
−第2のパンニング制御−
続いて、第2のパンニング制御について説明する。第2のパンニング制御は、第1のパンニング制御とは、ピントシフトの開始タイミングが異なる。図12は、図11の画像の動画撮影中に、パンニングしながら被写体Aから被写体Bにピントを合わせる場合のフローチャートである。
ピントシフト前では、被写体Aは位相差焦点検出エリア1と重複し、被写体Bが焦点検出エリア3と重複している。そして、被写体Aに合焦している。この状態から、被写体Bが撮像面の中央に移動するようにカメラ100をパンニングしながら、ピントシフト制御により被写体Bにピントを合わせていく。
詳しくは、ピントシフトスイッチ40cが操作されてから(ステップSd1)、現在設定されている焦点検出エリアでの合焦動作(ステップSd4)までの処理、及び合焦時間の設定(ステップSc11)までの処理は、第1のパンニング制御のステップSc2〜Sc4,Sc11と同様である。
すなわち、ステップSd4まで進むと、焦点検出エリアA1に重複している被写体Aに合焦した状態となる。その後、ステップSd5において、ボディ制御部5は、撮影者による、次に合焦させる被写体の選択があったか否かを判定する。つまり、パンニング時の第2のパンニング制御においては、撮影者は、次の被写体だけを選択し、移動先の焦点検出エリアは選択しない。この選択は、例えば、撮影者がタッチパネルを操作することによって行う。この新規被写体の選択が有ったときは、ステップSd6へ進む。一方、この選択が無い場合には、ステップSd3へ戻り、ステップSd3〜Sd5を繰り返す。
ステップSd6においては、第1のパンニング制御のステップSc6と同様の処理により、フォーカスレンズ群72の移動速度Vを算出する。
続いて、ステップSd7において、ボディ制御部5は、カメラ100のパンニングが開始されたかを判定する。ボディ制御部5は、撮像素子10により取得された画像情報に基づいて被写体Bの相対変位を認識し、被写体Bの移動状態に基づいてパンニングの開始を判定する。例えば、ボディ制御部5は、被写体Bが所定の速度以上で所定の時間以上、移動した場合にパンニングが開始されたと判定する。つまり、第2のパンニング制御では、パンニングの開始が、ピントシフトを実行するトリガ、即ち、焦点変更条件の成立となる。尚、パンニングの開始は、画像情報に基づいて判定される場合に限られない。例えば、撮影者にパンニングを開始する時にスイッチ操作を要求し、撮影者により操作された操作スイッチからの入力信号に基づいてパンニングの開始を判定してもよい。
パンニングが開始されたときには、ステップSd8へ進む一方、パンニングが開始されていないときには、ステップSd6へ戻り、ステップSd6,Sd7を繰り返す。ステップSd7から戻ったステップSd6においては、焦点検出エリアA3に重複している次の被写体Bのデフォーカス量を再度検出することが好ましい。その結果、パンニングが開始する直前の最新のデフォーカス量に基づいて、フォーカスレンズ群72の移動速度Vを算出することができる。
パンニングが開始されたときには、ステップSd8において、ボディ制御部5は、フォーカスレンズ群72をステップSd6で算出した移動速度Vで、ステップSd3で求めたデフォーカス方向へ、設定した合焦時間Tだけ移動させる。その結果、ステップSd3で求めた、ピントシフト前の被写体Bのデフォーカス量に基づいて、被写体Bのデフォーカス量が零となると予測される移動量だけフォーカスレンズ群72が移動されることになる。被写体Bがカメラ100に対して近づいたり、遠ざかったりしない限り、パンニングするだけでは被写体距離はほとんど変化しない。そのため、ピントシフト前のデフォーカス量を用いたとしても、パンニング後の被写体Bにピントを合わせることができる。
その後、ステップSd9,Sd10へ進む。これら、ステップSd9,Sd10の処理は、第1のパンニング制御のステップSc9,Sc10と同様である。
このように、パンニング時の第2のパンニング制御においては、パンニングが開始されるとピントシフトも開始される。つまり、パンニングに合わせて徐々に次の被写体へピントが合っていき、パンニングの開始から所定の合焦時間T経過後には次の被写体へピントが合うようになる。
−第3のパンニング制御−
続いて、第3のパンニング制御について図13,14を参照しながら説明する。第3のパンニング制御は、パンニング時にズーミングを行う点で、第1のパンニング制御と異なる。図13は、図14の画像の動画撮影中に、パンニング時に被写体Aから被写体Bにピントを合わせ、且つ被写体Bが被写体Aと同じ像倍率になるようにズーミング行う場合のフローチャートである。
ピントシフト前では、被写体Aは位相差焦点検出エリア1と重複し、被写体Bが焦点検出エリア3と重複している。そして、被写体Aに合焦している。この状態から、被写体Bが撮像面の中央に移動するようにカメラ100をパンニングしながら被写体Bが被写体Aと同じ像倍率になるようにズーミングを行い、その後、ピントシフト制御により被写体Bにピントを合わせていく。
詳しくは、ピントシフトスイッチ40cが操作されてから(ステップSe1)、各焦点検出エリアA1〜A3におけるデフォーカス情報の取得(ステップSe3)までの処理、及び合焦時間の設定(ステップSc11)までの処理は、第1のパンニング制御のステップSc2,Sc3,Sc11と同様である。
そして、ステップSe4において、ボディ制御部5は、フォーカスレンズ群72を移動させることによって、現在合焦に用いる焦点検出エリアとして設定されている焦点検出エリアA1に重複している被写体Aに合焦させる。それに加えて、ボディ制御部5は、フォーカスレンズ群72の位置及びズームレンズ群75の位置に基づいて被写体Aの像倍率を演算する。その後、ステップSe5へ進む。
ステップSe5の処理は、第1のパンニング制御のステップSc5と同様である。すなわち、ボディ制御部5は、撮影者による、次に合焦させる被写体の選択と該被写体の移動先と予測される焦点検出エリアの選択とがあったか否かを判定する。そして、これら次の被写体の選択と移動先の焦点検出エリアの選択とがあったときは、ステップSe6へ進む。一方、これらの選択が無い場合には、ステップSe3へ戻り、ステップSe3〜Se5を繰り返す。
ステップSe6では、ボディ制御部5は、第1のパンニング制御のステップSc6と同様の処理により、フォーカスレンズ群72の移動速度Vを算出する。ただし、このときに用いるK値は、被写体Bが、現在の被写体Aと同じ像倍率となるようにズームレンズ群75を移動させた場合のK値である。すなわち、被写体Bを現在の被写体Aの像倍率と同じようにズーミングした場合における、被写体Bに合焦させるためのフォーカスレンズ群72の移動量を求め、その移動量からフォーカスレンズ群72の移動速度を算出している。
その後、ステップSe7において、ボディ制御部5は、カメラ100のパンニングにより被写体Bが相対移動して、移動先として選択された焦点検出エリアに入るか否かを判定する。この処理は、第1のパンニング制御のSc7と同様である。つまり、第3のパンニング制御では、次の被写体が移動先として選択された焦点検出エリアに入ることが、ピントシフトを実行するトリガ、即ち、焦点変更条件の成立となる。
続いて、ステップSe8において、ボディ制御部5は、ボディ制御部5は、フォーカスレンズ群72をステップSe6で算出した移動速度Vで、ステップSe3で求めたデフォーカス方向へ、設定した合焦時間Tだけ移動させる。それに加えて、ボディ制御部5は、ズームレンズ群75を、被写体Bが、パンニング前の被写体Aの像倍率と同じになるように移動させる。ズーミングの開始タイミング及び完了タイミングがそれぞれ、合焦動作の開始タイミング及び完了タイミングと一致するように、ズームレンズ群75の移動速度が設定されている。尚、このズーミングと合焦動作のタイミングは必ずしも一致しなくてもよい。すなわち、ズーミングは、開始及び完了のタイミングが合焦動作と前後にずれていてもよいし、合焦動作が完了した後又は合焦動作が開始する前にズーミングが行われてもよい。
その後、ステップSe9,Se10へ進む。これら、ステップSe9,Se10の処理は、第1のパンニング制御のステップSc9,Sc10と同様である。
このように、パンニング時の第3のパンニング制御においては、パンニングが行われた後、ズーミングとピントシフトとが並行して行われる。つまり、パンニングに合わせてズーミングが行われる構成において、ズーミング後のフォーカスレンズ群72の移動量を考慮して、フォーカスレンズ群72の移動速度が設定される。その結果、パンニングが完了してから所定の合焦時間T経過後には、次の被写体がパンニング前の被写体Aと同じ像倍率までズーミングされると共に、次の被写体への合焦動作が完了する。
尚、ズーミングとピントシフトとは、必ずしも並行して行われなくてもよい。例えば、ズーミングの後にピントシフトが行われてもよい。また、第2のパンニング制御にズーミングを組み込んでもよい。すなわち、パンニングの開始と共に、ズーミング及び合焦動作が開始される構成であってもよい。
《その他の実施形態》
前記実施形態は、以下のような構成としてもよい。
前記実施形態では、レンズ交換式カメラに係る構成であるが、レンズ一体型カメラ、いわゆるコンパクトデジタルカメラやビデオカメラでも、本実施形態と同様の構成を採用することができる。
また、前記実施形態は、撮像素子10の透過光を用いて位相差検出を行うように構成されているが、これに限られるものではない。例えば、いわゆる外光式パッシブ位相差検出装置を用いて、パララックス誤差に基づいて位相差を検出する構成であってもよい。
さらに、前記実施形態では、ピントシフト前の合焦動作や、ピントシフト後の合焦確認においては、位相差検出による焦点検出を行っているが、これに限られるものではない。つまり、フォーカスレンズ群72の移動速度Vを算出すべく、次の被写体のデフォーカス量を求めるとき以外は、位相差検出に限らず、コントラスト検出による焦点検出を行ってもよい。
さらにまた、前記実施形態では、合焦時間は、一定に設定されているが、これに限られるものではない。例えば、合焦時間を、デフォーカス量の関数で設定するようにして、合焦時間がデフォーカス量に応じて変化するように構成してもよい。また、デフォーカス量が小さいとき、大きいとき、及びそれらの中間のとき等、デフォーカス量を複数の領域に分けて、その領域ごとに異なる合焦時間を設定するように構成してもよい。つまり、フォーカスレンズ群72が一定の速度(例えば、最高速度)で移動する場合と比較して、デフォーカス量が小さいときに合焦動作をゆっくり行うようにすれば、観る者に与える慌ただしさ等を軽減することができる。ただし、デフォーカス量が小さいときに合焦動作を速くすることを排除するものではない。フォーカスレンズ群72の移動速度を調整して、合焦動作を調整できればよく、合焦動作をどのように設定するかは、撮影者が任意に設定できるように構成すればよい。そうすることで、撮影者の意図をより柔軟に反映した動画像を撮影することができる。
また、前記実施形態では、焦点検出エリアが3つ設けられているが、これに限られるものではない。例えば、撮像素子10に、16個の透過部17,17,l7を形成すると共に、コンデンサレンズ21a、マスク開口22a,22a、セパレータレンズ23a及びラインセンサ24aのセットを16セット設けるように構成してもよい。尚、透過部17や、コンデンサレンズ21a等のセットの個数は16に限らず、任意の個数に設定することができる。焦点検出エリアの個数が少ない場合は、次に合焦させる被写体を選択したとしても、該被写体が焦点検出エリアに重複していない場合もある。この場合には、該被写体のデフォーカス量を検出することができず、フォーカスレンズ群72の移動速度Vを算出することができない。このような場合には、焦点検出エリアを画像表示部44に表示させる等して、撮影者に、焦点検出エリアと重複する被写体を選択させるようにする。一方、焦点検出エリアの個数が多い場合は、撮像面内の被写体は、ほとんどの場合が、何れかの焦点検出エリアと重複するため、ボディ制御部5は、選択された被写体と重複する焦点検出エリアを選択し、該焦点検出エリアのラインセンサ24aの出力から被写体のデフォーカス量を検出するようにすればよい。
また、前記実施形態では、被写体及び焦点検出エリアの選択を、画像表示部44のタッチパネルを押圧操作することによって行っているが、これに限られるものではない。例えば、画像表示部44に選択枠を表示させると共に、カメラ本体4に十字キー等の操作スイッチを設け、撮影が操作スイッチを操作することによって画像表示部44の画面中の選択枠を移動させ、対象となる被写体又は焦点検出エリアを選択するようにしてもよい。かかる場合、画像表示部44が表示手段を構成し、操作スイッチが操作手段を構成する。
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。