JP5601771B2 - 複層めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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本発明はこのような現状に鑑み、めっき表面の耐食性と、切断端面や曲げ加工部などの鋼素地露出部の耐赤錆発生性が同時に安定して改善され、かつ特殊な中間処理を施すことなく大量生産ラインで製造できる複層めっき鋼板を提供しようというものである。
めっき原板となる基材鋼板としては、従来一般的にZn系めっき鋼板やAl系めっき鋼板の基材として使用されている各種鋼板が適用可能である。
本明細書において「下層」とは、第1の溶融めっきと第2の溶融めっきを施した後のめっき層中に存在する、第1の溶融めっきにより形成されたAl系めっき層に由来する層(後述の中間層を除く部分)をいう。この下層はAl系めっきに特有の優れた耐食性を発揮して鋼板表面の長期耐食性を担う。第1の溶融めっきの組成(めっき浴組成)は、質量%でSi:0〜12%、Zn:0〜1%、残部Alおよび不可避的不純物からなるものとする。
本明細書において「上層」とは、第1の溶融めっきと第2の溶融めっきを施した後のめっき層中に存在する、第2の溶融めっきにより形成されたZn系めっき層に由来する層(後述の中間層を除く部分)をいう。この上層はAlとMgを含有するZn系めっき層であり、主として鋼素地に対する犠牲防食作用、並びにAl、Mgを含有したZn系腐食生成物の形成によるめっき面の保護作用およびMgを含有したZn系腐食生成物による鋼素地露出部の保護作用を担う。上層を形成するために施す第2のZn系溶融めっきの組成は、質量%でAl:3〜22%、Mg:0.5〜8%であり、必要に応じてさらに、Ti:0.1%以下、B:0.05%以下、Si:2%以下の1種以上を含有し、残部Znおよび不可避的不純物からなるものとする。
図2〜図4に、下層と上層の間の良好な密着性が得られた本発明の複層めっき鋼板について、めっき層の断面SEM写真を例示する。
本発明の複層めっき鋼板は、基材鋼板の表面に、第1の溶融めっき(Al系)を施し、その上に第2の溶融めっき(Zn系)を施すことによって製造することができる。具体的には、連続溶融めっきラインで第1の溶融めっきを施すことによって中間製品とし、その中間製品に対して連続溶融めっきラインで第2の溶融めっきを施せばよい。あるいは、1つの連続ラインの中に、第1の溶融めっき浴と第2の溶融めっき浴を直列に設置し、1パスで複層めっき鋼板に仕上げることもできる。
(1)めっき層の断面構造
めっき層の断面をSEMにより観察し、図5に模式的に示すいずれの断面構造に分類されるかを判定した。図5において、(a)は下層と上層が連続的に直接接しており、間に隙間がないもの、(b)は下層と上層が部分的に中間層を介して接しており、間に隙間がないもの、(c)は下層と上層が連続的に中間層を介して接しており、間に隙間がないもの、(d)は部分的に単層のめっき層が形成されているもの、(e)はめっき層全体が単層であるもの、(f)は下層と上層の間に隙間が観測されるもの(図示していないが中間層を有する場合も含む)、(g)は上層が覆っていない部分があるものである。
なお、本発明例のものはいずれも、基材のめっき付着面全体が下層のZn濃度が0〜1%である領域に接していることを確認している。
めっき鋼板の表面外観を目視観察し、めっき欠陥の発生有無を以下の基準で評価し、○評価を合格と判定した。
○:めっき欠陥なし(良好)
×:点状のめっき欠陥が発生(不良)
めっき鋼板に2t曲げ加工(試験片と同じ厚さの板を2枚挟んだ180°曲げ加工)を施し、曲げ部外側のめっき層の断面組織を観察して以下の基準で評価した。○評価を合格と判定した。なお、単層構造(図5の(e))となっている場合は評価対象から除外した。
○:下層と上層の間に剥離なし(良好)
×:下層と上層の間に剥離が発生(不良)
めっき鋼板から短冊状の試験片を切り出し、これに上記2t曲げ加工を施したのち、切断端面が露出した状態で大阪府堺市の臨海工業地帯の屋外に暴露した。暴露9ヶ月後の試験片について、2t曲げ加工部と切断端面の赤錆発生状況を目視観察し、以下の基準で評価し、○評価を合格と判定した。
○:赤錆の発生がほとんど認められない(良好)
△:赤錆による薄い変色が見られ、用途によっては問題となりうる(やや不良)
×:赤錆が多量に発生し、よく目立つ(不良)
めっき鋼板から短冊状の試験片を切り出し、これに上記2t曲げ加工を施したのち、切断端面を露出した状態でサイクル腐食試験(CCT)に供した。CCT条件はJIS H8502の中性塩水噴霧サイクル試験に準拠したもので、「塩水噴霧(5%塩水、35℃)2h→乾燥(60℃、25%RH)4h→湿潤(50℃、98%RH)2h」を1サイクルとするものである。2t曲げ加工部に赤錆の発生が認められるようになった時点のサイクル数により加工部耐食性を評価した。Zn系の第2の溶融めっき層を持ちながらAl系単層のめっき鋼板(No.22)と同等(評点3)以上の耐食性となるものを合格と判定した。
評点0 :50サイクルまでに赤錆発生
評点0.5 :51〜100サイクルで赤錆発生
評点1 :101〜150サイクルで赤錆発生
評点1.5 :151〜200サイクルで赤錆発生
評点2 :201〜250サイクルで赤錆発生
評点2.5 :251〜300サイクルで赤錆発生
評点3 :301〜350サイクルで赤錆発生
評点3.5 :351〜400サイクルで赤錆発生
評点4 :401〜450サイクルで赤錆発生
評点4.5 :451〜500サイクルで赤錆発生
これに対し、比較例No.51は第2の溶融めっきを施す際の予熱温度が低いため、下層と上層の界面に隙間(この場合は空孔)が存在し、これがZn拡散の障害となったものと考えられ、下層と上層が直接的に接している界面付近の下層内部に傾斜組成領域(前述)が十分形成されていない。その結果、下層/上層の密着性が悪い。また、上層に点状のめっき欠陥が発生した。No.55は予熱温度が高すぎるために第2の溶融めっき時に下地のAl系めっき層が一部溶融しており、Zn含有量が34%程度の単層のめっき層が形成されている。このため加工部の耐赤錆性が不良であり、また加工部耐食性が低下している。
Claims (8)
- 鋼板を基材として、その表面に質量%でSi:0〜12%、Zn:0〜1%、残部Alおよび不可避的不純物からなる第1の溶融めっきを施し、その上に質量%でAl:3〜22%、Mg:0.5〜8%、残部Znおよび不可避的不純物からなる第2の溶融めっきを施しためっき鋼板であって、めっき層は第1の溶融めっきに由来する下層と第2の溶融めっきに由来する上層を有し、下層と上層は直接的に、または第2の溶融めっき処理により形成された中間層を介して隙間なく接しており、基材のめっき付着面全体が下層に接している複層めっき鋼板。
- 鋼板を基材として、その表面に質量%でSi:0〜12%、Zn:0〜1%、残部Alおよび不可避的不純物からなる第1の溶融めっきを施し、その上に質量%でAl:3〜22%、Mg:0.5〜8%、残部Znおよび不可避的不純物からなる第2の溶融めっきをめっき浴浸漬時間1〜3秒にて施しためっき鋼板であって、めっき層は第1の溶融めっきに由来する下層と第2の溶融めっきに由来する上層を有し、下層と上層は直接的に、または第2の溶融めっき処理により形成された中間層を介して隙間なく接しており、基材のめっき付着面全体が下層に接している複層めっき鋼板。
- 第2の溶融めっきが、質量%でAl:3〜22%、Mg:0.5〜8%であり、さらにTi:0.1%以下、B:0.05%以下、Si:2%以下の1種以上を含有し、残部Znおよび不可避的不純物からなるものである請求項1または2に記載の複層めっき鋼板。
- 基材のめっき付着面全体が下層のZn濃度が0〜1%である領域に接している請求項1〜3のいずれか1項に記載の複層めっき鋼板。
- 下層と上層が直接的に接している部分が存在する場合において、下層は、上層との界面から基材方向に、第2のめっきに由来するZn成分が拡散することにより生じた傾斜組成領域を有するものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の複層めっき鋼板。
- 第2の溶融めっきにおいてめっき付着量を10g/m2以上とする請求項1〜4のいずれかに記載の複層めっき鋼板の製造方法。
- 第1の溶融めっきにおいてめっき付着量を20g/m2以上とし、第2の溶融めっきにおいてめっき付着量を10g/m2以上とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の複層めっき鋼板の製造方法。
- 第1の溶融めっきを終えた中間製品のめっき鋼板を、鋼板温度が280〜570℃に調整された状態で第2の溶融めっきのめっき浴に浸漬する請求項6または7に記載の複層めっき鋼板の製造方法。
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