JP5601290B2 - ライニングの補修方法 - Google Patents
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Description
このように、損傷部位の補修を行った場合、溶湯容器の使用前(溶湯注入前)に、この補修した耐火物を予め乾燥する必要があるが、この乾燥時に耐火物が爆裂する問題があった。
このため、従来より、耐火物の爆裂を防止するための乾燥方法の模索が行われていた。
一方、例えば、特許文献1、2には、ライニングされた耐火物と鉄皮との間に断熱材を配置し、鉄皮からの放散熱を低減させる取り組み例が記載されている。
また、特許文献3には、ライニングされた耐火物を構成するウェア耐火物とパーマネント耐火物との間に断熱材を配置し、ウェア耐火物の乾燥時間を短縮する方法が記載されている。
なお、特許文献1では、ウェア耐火物として不定形耐火物も適用可能に記載されているが、実施例の熱伝導率(15W/(m・K)以上)から推定すると、不定形耐火物を使用しているとは考えにくい。また、特許文献1には、C含有系のウェア耐火物が記載されているが、Cは疎水性であることから、一般的に混練水を多く必要とするため、結果的に気孔率が高くなって、不定形耐火物では熱伝導率15W/(m・K)を得ることが困難であり、定形耐火物を用いた例であることが判る。
以上から、特許文献1、2では、C含有系の不焼成の定形耐火物を使用していると考えられるが、不焼成の定形耐火物の乾燥は、保形性を担う樹脂に起因する揮発分の除去が目的であり、水を含んだ不定形耐火物の使用前(溶湯注入前)の乾燥と比べ、爆裂に対する危険は小さい。
この特許文献3の実施例には、厚みが異なるウェア耐火物の発明例と従来例が記載されているが(発明例:200mm、従来例:230mm)、水蒸気が発生する背面温度100℃近傍までは、発明例の方がウェア耐火物の温度勾配が大きくなっているため、温度勾配を小さくすることによる爆裂防止効果が得られない。具体的には、図3において、脱水完了温度(水蒸気圧がたたない)110℃付近でのウェア耐火物の稼動面と背面の温度差は、120℃程度と考えられ、発明例は厚みが200mmであるから温度勾配が0.60℃/mmとなり、従来例は厚みが230mmであるから温度勾配が0.52℃/mmとなる。
これでは、乾燥時間の短縮や実使用時の亀裂や剥離を防止できても、乾燥途中で水の蒸発による爆裂が発生する場合がある。
このため、場合によっては、生産機会の損失を招き影響は大きい。
また、補修に用いる不定形耐火物は、ウェア耐火物を施工する際の流し込み不定形耐火物に比べると水分量が多いため、乾燥時の蒸発水蒸気量が多くなり、爆裂抑制に配慮が必要と考えられる。
前記第1のパーマネント耐火物が、厚み30mm以上65mm以下の定形耐火物で構成され、かつ前記第1のパーマネント耐火物と前記第2のパーマネント耐火物の間に、熱伝導率を厚みで除した熱通過率が30W/(m2・K)以下である断熱材が配置されており、
前記ウェア耐火物は、熱履歴を受けた不定形耐火物で構成される厚み70mm以下の残存耐火物であり、該ウェア耐火物及び前記第1のパーマネント耐火物のいずれか一方又は双方の表面に、水分と耐火材を混練あるいは混合した未乾燥の補修用不定形耐火物を最大厚み100mm以下で配置して、該補修用不定形耐火物を、その乾燥面を100℃から200℃へ加熱する際に、表面温度が1時間あたり40℃以下となる昇温速度で、加熱し乾燥させる。
これにより、乾燥時における水蒸気圧の急上昇を回避でき、補修用不定形耐火物の爆裂を抑制、更には防止できる。
まず、本発明の一実施の形態に係るライニングの補修方法を適用した溶湯容器について説明した後、ライニングの補修方法について説明する。
図1に示すように、溶湯容器10は、鉄皮11の炉内側(内面側)に配置され、溶湯と接触する側(炉内側)から鉄皮11側(炉外側)へ向けて、ウェア耐火物(熱履歴を受けた残存耐火物)12、第1のパーマネント耐火物(表面側耐火物)13、第2のパーマネント耐火物(背面側耐火物)14の順に形成されたライニング15を有するものであり、この第1のパーマネント耐火物13と第2のパーマネント耐火物14の間に断熱材16が配置され、ウェア耐火物12の表面に未乾燥の補修用不定形耐火物(以下、補修用耐火物又は補修材ともいう)17を配置し、これを加熱し乾燥させて、ウェア耐火物12を補修したものである。なお、溶湯容器には、例えば、転炉、溶銑鍋、溶鋼鍋、電気炉等がある。
なお、定形耐火物の材質は、特に限定されるものではないが、パーマネント耐火物は、ウェア耐火物が溶損し剥離した際に、高温の溶融物と接する可能性があることから、耐火度の高いろう石やアルミナ質などが一般的である。
また、ウェア耐火物12は、常温で水と共に混練して得られる不定形耐火物である。
この不定形耐火物の成分系には、例えば、マグネシア−ライム質、アルミナ−マグネシア質、アルミナ−スピネル質、アルミナ−シリカ質、シリカ質、アルミナ−炭化ケイ素質、粘土質等があるが、特に限定されるものではない。また、不定形耐火物の硬化法も、アルミナセメントのように水和反応を用いる水硬性に限らず、例えば、化学硬化性、熱硬化性、気硬性のいずれでもよく、特に限定されるものではない。
この補修用不定形耐火物17の成分系も、上記したウェア耐火物12と同様の不定形耐火物の成分系を使用でき、補修を行うに際しては、混練や混合した不定形耐火物を使用できる。ここで、混練した不定形耐火物とは、水分と耐火材を予め(事前に)混練した不定形耐火物であり、また、混合した不定形耐火物とは、水分と耐火材を補修部分までホース等で別々に搬送し、このホース等の噴出口近傍で混合した不定形耐火物である。
乾燥時における不定形耐火物の剥離や爆裂(以下、剥離爆裂ともいう)は、不定形耐火物の施工厚み内を水蒸気が通過する際の蒸気圧の変化によって発生する。特に、水蒸気が不定形耐火物の低温(背面)側から高温(稼動面又は表面)側に通過する際に、その温度勾配に沿って、温度上昇と共に蒸気圧が上昇していき、その蒸気圧が不定形耐火物の強度を上回ることにより、爆裂が発生する。
従って、乾燥時の不定形耐火物の爆裂を防止するためには、不定形耐火物の温度勾配を小さくすることが望ましい。
補修材は、ライニング全体を一体的に施工する際に用いられる流し込み材と比較して、流動性を必要とする等、補修工法に由来して多くの水分が要求される。具体的には、流し込み材中の水分量は、流し込み材を構成する耐火材に対し、外掛けで4質量%以上9質量%以下程度、また、補修材中の水分量は、補修材を構成する耐火材に対し、外掛けで10質量%以上25質量%以下程度、である(以下、同様)。
従って、乾燥時に除去すべき水分量が多くて剥離爆裂の危険性が増し、また断熱性も高いため温度勾配が大きくなり、この点でも剥離爆裂発生の危険性が増す。
ここで、温度勾配を小さくして剥離爆裂を抑制しても、施工面(残存したウェア耐火物の表面)の凹凸に起因して、発生した水蒸気の集中し易い場所が発生し、また水分量が多く補修材の強度が比較的低いなどの特徴もあるため、剥離爆裂に直結しないまでも、補修材表面にヘアクラック(微細な亀裂)が発生する原因になりえる。このヘアクラックは、剥離爆裂の直接原因にならないと考えられるため、実使用時には許容できるが、耐用性向上の観点では発生の抑制が望まれる。
まず、補修用不定形耐火物17を配置する熱履歴を受けた不定形耐火物、即ちウェア耐火物12の厚みを70mm以下(0mmでもよい)とする。
温度勾配の増加を抑制するには、後述する断熱材による断熱効果を用いることが好ましく、このため、断熱材に比べて断熱効果が低い上記したウェア耐火物の厚さは、薄いことが好ましい。そこで、本発明では、ウェア耐火物12の厚みを70mm以下(好ましくは、65mm以下、更には60mm以下)とした。なお、厚みの下限値は0mmでもよい。これは、残存厚さが薄くなったウェア耐火物12が、実機での使用時に剥落し、第1のパーマネント耐火物13が露出する場合がありえるためである。
前記したように、溶湯容器の使用にあっては、ウェア耐火物の損傷深さが均一になるものではなく、損傷部位に損傷深さ(未使用のウェア耐火物の表面位置を基準とした深さ)の深い部分や浅い部分が発生する。具体的には、損傷部位の全面積の20〜30%程度が損傷深さの最も深い部分となり、他の部分が損傷深さ10mm程度の浅い部分となる場合等がある。このため、補修用不定形耐火物17の補修厚みもばらつくので、乾燥時の爆裂に最も寄与する補修用不定形耐火物17の補修厚みの最大値を規定した。
一方、ウェア耐火物の厚みが70mmの場合、上記した厚み0mmの場合に比べて、断熱材の断熱効果が減じ、温度勾配値の増加に繋がる。また、前記したように、補修用耐火物は、流し込み材に比べて水分量が多く、断熱性が高いため、補修用耐火物の温度勾配値が大きくなり易い。
そこで、補修用耐火物の厚みを100mm以下に制限することで、温度勾配値が、剥離爆裂が発生する程度へ増加することを抑制することとした。
一方、補修用耐火物の厚みが薄いほど、補修用耐火物の温度勾配が小さくなり、爆裂防止の効果が増大するため、下限値を設けていないが、現実的には10mm程度である。最大厚みが10mm未満では、損傷したウェア耐火物を補修することなく、そのまま使用する方が、溶湯容器の稼働率や補修作業の作業性等の観点から好ましいことによる。また、最大厚みが10mm未満では、補修用耐火物の乾燥時に爆裂(剥離)等が発生しづらいということもある。
従って、補修用不定形耐火物17の最大厚みを100mm以下としたが、80mm以下とすることが好ましい。
具体的には、損傷部位のうち、損傷深さが最も浅い部分にあわせて、損傷深さが深い部分に補修用不定形耐火物を配置し、他の部位との損傷バランスをとるように行う。
また、未使用(溶湯注入前)の溶湯容器のウェア耐火物の厚みまで回復するように、損傷部位(補修部位)全体にわたって補修用不定形耐火物を配置し、耐火物の延命を図れるように行う。なお、未使用のウェア耐火物の厚み(初期厚み)は、特に限定されるものではないが、例えば、190mm以下程度である。
従って、補修用不定形耐火物17とウェア耐火物12の合計厚み(又は補修用不定形耐火物17のみの厚み)は、補修の目的に応じて、前記した補修用不定形耐火物17の最大厚み範囲内で、未使用のウェア耐火物の厚みと同一にしてもよく、また厚くしても、あるいは薄くしてもよい。
更に、補修用不定形耐火物の爆裂を防止する効果は、熱伝導率が10W/(m・K)以下の不定形耐火物を使用する際に顕著に得られる。なお、不定形耐火物の熱伝導率の下限値は、世の中に存在する不定形耐火物の熱伝導率を考慮すれば、例えば、0.1W/(m・K)程度である。
ここで、有機繊維の溶融/分解温度が200℃超の場合、温度が高くなり過ぎるため、補修用耐火物の爆裂が発生し易くなる温度領域において、有機繊維の溶融/分解で生成する通気孔が形成されない。このため、補修用耐火物内の水蒸気が十分に抜けきれず、ヘアクラックの発生抑制効果が発揮されない。
このヘアクラックとは、耐火物表面で目視の詳細観察により確認できる微細な亀裂であり、耐火物の剥離脱落の直接原因とは考えにくいものの、小さいとはいえ開孔部であるため、耐火物の耐用への悪影響が予想されることから、ヘアクラックの発生を抑制することが好ましい。
従って、有機繊維が溶融又は分解する温度を200℃以下としたが、180℃以下とすることが好ましい。
なお、有機繊維は、上記した溶融/分解温度を備えるものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレート等の脂肪族ポリエステル繊維などを使用できる。
この有機繊維の繊維径は、例えば1〜100μm程度であり、繊維長は、例えば、1〜15mm程度である。
ここで、有機繊維量が0.01質量%未満の場合、補修用耐火物中の有機繊維量が少な過ぎて、形成される通気孔の数が少なくなるため、水蒸気抜きとしての機能を発揮できず、ヘアクラックの発生抑制効果を十分に発揮できない。一方、0.5質量%を超える場合、補修用耐火物中の有機繊維量が多過ぎて、形成される通気孔の数が多くなるため、得られる施工体の緻密性が確保できず、耐用面で劣る。
以上のことから、補修用不定形耐火物に含まれる有機繊維量を、補修用不定形耐火物に対して0.01質量%以上0.5質量%以下としたが、下限を0.05質量%、上限を0.2質量%とすることが好ましい。
ここで、パーマネント耐火物の厚みが30mm未満の場合、厚みが薄くなり過ぎて、耐火物としての機能を損なう恐れや、また耐火物の製造が困難となる問題がある。一方、パーマネント耐火物の厚みが65mmを超える場合、厚みが厚くなり過ぎて、断熱材16の機能を阻害し、補修用耐火物の温度勾配が爆裂防止を可能とする温度勾配を超過する場合がある。
なお、本発明においては、前記したように、第1のパーマネント耐火物の表面のウェア耐火物の残存厚さを0mm又は0mmを超え70mm以下の範囲で想定し、また後述する断熱材の効果を享受するには、第1のパーマネント耐火物の厚さが薄いことが求められる。
従って、機能維持が可能な耐火物を製造可能な範囲内で、ウェア耐火物12背面から断熱材16表面までの距離を短く、即ち第1のパーマネント耐火物13の厚みを薄くし、爆裂防止を可能とする温度勾配を担保するため、第1のパーマネント耐火物13の厚みを30mm以上65mm以下にした。しかし、パーマネント耐火物の厚みを、爆裂が発生し易い厚み、例えば、40mm以上、更には45mm以上とすることで、耐火物の爆裂防止の効果が、より顕著に得られる。
本発明は、稼動後の溶湯容器の補修を前提としている。このため、断熱材を、ウェア耐火物と第1のパーマネント耐火物の間に配置しても、補修する範囲のウェア耐火物の残存厚み(残存耐火物の厚み)によっては、断熱材が露出して溶融し、あるいは使用上限温度を超えて断熱機能が低下している場合も想定されるため、所望する効果が得られない。
また、断熱材を、鉄皮と第2のパーマネント耐火物との間に配置しても、補修用不定形耐火物の爆裂防止効果が得られない。
以上のことから、断熱材16を上記した位置に配置した。
このような断熱材には、例えば、Porextherm Dammstoffe Gmbh社製の「Porextherm WDS(登録商標)」がある。その材質は、ヒュームドシリカを主材とした微孔性成形体であり、熱伝導率は0.021W/(m・K)である。
ここで、断熱材の熱通過率が30W/(m2・K)を超える場合、熱通過率が大きくなり過ぎて、補修用耐火物の温度勾配が、爆裂防止を可能とする温度勾配を超過する。
一方、断熱材の熱通過率が小さいほど、補修用耐火物の温度勾配が小さくなり、爆裂防止の効果が増大するため、下限値を設けていないが、一般的には、2W/(m2・K)程度が実現可能な限界と考える。熱伝導率が小さい断熱材を厚く施工していけば、熱通過率は限りなくゼロに近づくが、例えば、溶湯容器の内容積や構造の安定性の観点から、{熱伝導率0.02W/(m・K)}/{厚み0.01m(10mm)}=2W/(m2・K)程度を下限と想定している。
従って、断熱材16の熱通過率を30W/(m2・K)以下としたが、25W/(m2・K)以下、更には20W/(m2・K)以下とすることが好ましい。
以上に示した補修構造は、溶湯容器の炉壁全体にわたって適用することが好ましいが、特に爆裂防止の効果が得られる部分のみに、部分的に設置してもよい。
溶湯を受ける溶湯容器10は、以下の手順でライニングが形成されている。
まず、鉄皮11の炉内側表面に、例えば、直方体の第2のパーマネント耐火物14を、目地を介して隙間なく多数内張りする。
次に、この内張りした第2のパーマネント耐火物14の炉内側表面に、シート状の断熱材16を、隣り合う断熱材16の間に隙間が生じないように貼り合わせる。この断熱材16は、熱通過率が30W/(m2・K)以下となるように、熱伝導率及び厚みのいずれか一方又は双方が調整されたものである。
更に、この内張りした第1のパーマネント耐火物13の炉内側表面に、ウェア耐火物を配置して、このウェア耐火物を炉内側から加熱し乾燥させる。
このように、鉄皮11の炉内側には、炉内側から炉外側へ向けて、ウェア耐火物、第1のパーマネント耐火物13、断熱材16、第2のパーマネント耐火物14の順に形成されたライニングが配置されている。
そこで、減肉した損傷部位、即ち熱履歴を受けた残存耐火物であるウェア耐火物12の表面に、未乾燥の補修用不定形耐火物17を配置する。なお、この補修時期は、前記したように、ウェア耐火物12の最大厚みが70mm以下となった時点であれば、特に限定されるものではないが、例えば、ウェア耐火物12の最大残存厚みが、30〜70mm程度となった時点で行うのがよい。このとき、ウェア耐火物12が存在せず、第1のパーマネント耐火物13の表面が部分的に露出する場合もあり、この場合は、その表面に直接、未乾燥の補修用不定形耐火物17が配置される。
なお、混練や混合した不定形耐火物を使用するに際しては、以下のような施工方法がある。
1)水分と耐火材を予め(事前に)混練した後、この混練物を、損傷部位(補修部分)までホース等で搬送して、損傷部位(ウェア耐火物12の表面)に吹付ける(ショット補修)。
2)水分と耐火材を補修部分までホース等で別々に搬送した後、このホース等の噴出口近傍で混合した不定形耐火物を、損傷部位(ウェア耐火物12の表面)に吹付ける(吹付け補修)。
3)水分と耐火材を予め(事前に)混練した後、この混練物を、損傷部位(ウェア耐火物12の表面)に、こてで塗る(こて塗り補修)。
上記したように、補修の方法には種々あるが、所望される補修方法に応じて選択できる。
ここで、乾燥を行うに際し、使用可能な加熱方法としては、例えば、バーナー加熱、温風加熱、熱風加熱、放射加熱(ラジアントチューブ)など、一方向あるいは同心円状に熱源を投入する方法があるが、その方法を特に規定するものではない。なお、加熱を行うに際しては、所定の昇温パターンに対して精度よく追従でき、しかも溶湯容器の上面開放部分を覆うことができる蓋を用いる方法が一般的である。
これらの加熱方法により達成できる昇温速度、具体的には、補修用不定形耐火物の乾燥面を100℃から200℃へ加熱する際に、この乾燥面を均一に加熱できる昇温速度は、例えば、補修用不定形耐火物の表面温度が1時間あたり40℃以下、即ち40(℃/時間)以下(更には35(℃/時間)以下)となる速度である。一方、昇温速度の下限値は、特に限定されるものではないが、より短時間で乾燥を行うことを考慮すれば、5(℃/時間)、更には10(℃/時間)である。
以上のように、未乾燥の補修用不定形耐火物17を加熱し乾燥することで、補修用不定形耐火物17の乾燥時における爆裂を抑制、更には防止できる。
補修を行う溶湯容器は、鉄皮の炉内側表面に、第2のパーマネント耐火物を設け、この表面にシート状の断熱材を配置し、更に、この表面に、第1のパーマネント耐火物とウェア耐火物を、順次配置したものである。ここで、ウェア耐火物にはアルミナ−マグネシア質の不定形耐火物を、第1のパーマネント耐火物には高アルミナ質の定形耐火物を、第2のパーマネント耐火物にはろう石質の定形耐火物を、それぞれ使用した。
この溶湯容器を、一定期間稼動した後、残存するウェア耐火物の最大厚みが70mmとなった時点で、この残存耐火物の表面に、未乾燥の補修用不定形耐火物を湿式吹付け法にて吹付けて配置した。なお、補修用不定形耐火物には、アルミナ−マグネシア質の不定形耐火物(水分量:20質量%以上25質量%以下)を使用した。
そして、補修用不定形耐火物の稼動面温度が40(℃/時間)で等速昇温するように、未乾燥の補修用不定形耐火物を、バーナーを用いて常温から乾燥し、水を含む補修用不定形耐火物の背面温度が110℃に達して脱水が完了(水蒸気が発生しない)したタイミングにおいて、補修用不定形耐火物(補修用耐火物)の厚み方向の温度勾配(℃/mm)と、剥離や爆裂トラブルの発生の有無と、ヘアクラック発生の有無の調査を行った。なお、上記した補修用不定形耐火物の稼動面温度を40(℃/時間)とする昇温は、前記したバーナー等の加熱において、乾燥面を100℃から200℃へ加熱する際に均一に加熱することができる最速クラスの昇温速度である。
表1に、試験条件と、得られた補修用不定形耐火物の温度勾配と、評価の結果を、それぞれ示す。
また、補修用不定形耐火物の温度勾配は、補修用耐火物の背面温度が110℃に達して脱水が完了(水蒸気が発生しない)したタイミングにおいて、補修用耐火物の最大厚み部における補修用耐火物の稼動面温度から背面温度を引いた値を、補修用耐火物の最大厚みで割った値、即ち以下の式で求めた値である。
{(補修用不定形耐火物の最大厚み部の稼動面温度)−(補修用不定形耐火物の最大厚み部の背面温度)}/(補修用不定形耐火物の最大厚み)
なお、補修用不定形耐火物の稼動面温度と背面温度は、ライニングの補修時に、補修用不定形耐火物の稼動面とウェア耐火物の炉内側表面にそれぞれ熱電対を設置して得た。この熱電対は、ほぼ同じ高さ位置に設置している。
更に、評価の欄の総合評価は、剥離爆裂トラブルの発生の有無と、補修用不定形耐火物の耐用性(寿命)の双方を考慮して行った。なお、総合評価の「◎」印は、剥離及び爆裂のトラブルの発生がなく、しかも耐用性も十分にあり、使用に非常に適していることを、「○」印は、剥離及び爆裂のトラブルの発生がないが、「◎」印と比較して耐用性が若干劣るものの使用可能であることを、「×」印は、剥離又は爆裂のトラブルが発生して使用に適さないことを、それぞれ意味する。
一方、比較例1〜5は、上記した条件の一部が欠落した結果である。即ち、比較例1は、断熱材を使用しなかった結果、比較例2は、断熱材を鉄皮と第2のパーマネント耐火物の間に配置した結果、比較例3は、断熱材の熱通過率を適正範囲外に設定した結果、比較例4は、補修用耐火物の最大厚みを適正範囲外に設定した結果、比較例5は、第1のパーマネント耐火物の厚みを適正範囲外に設定した結果、である。
なお、残存耐火物の最大厚みは、上記したように70mmに固定しているが、これは、厚みが70mmを超えると、補修用耐火物と断熱材の距離が広がって補修用耐火物の温度勾配が上昇し、一方、厚みが70mm未満であると、補修用耐火物と断熱材の距離が近づいて補修用耐火物の温度勾配が水平に近づくことが、容易に想像できることによる。
実施例1と比較例1、2の結果から、熱源に近い、即ち補修用耐火物に近い位置に断熱材を施工することで、補修用耐火物内の温度勾配を小さくすることができ、補修用耐火物の爆裂トラブルを防止できることを確認できた。
なお、断熱材を、ウェア耐火物(残存耐火物)と第1のパーマネント耐火物の間に配置する場合については、溶湯容器の稼動中の受熱により、断熱材の断熱性能の低下が容易に想定されるため、実施していない。
実施例1、2と比較例3の結果から、断熱材の熱通過率が小さい(熱伝導率が低い、あるいは断熱材の施工厚さが厚い)ほど、補修用耐火物内の温度勾配を小さくすることができ、補修用耐火物の爆裂トラブルを防止できることを確認できた。
なお、断熱材の熱通過率が大きいほど、補修用耐火物内の温度勾配は大きくなり、爆裂トラブルが発生するリスクが増加することは、容易に想像できる。
実施例1、3と比較例4の結果から、補修用耐火物の厚みは、補修用耐火物内の温度勾配を律速する大きな要因と考えられる。特に、実施例1と比較例4から、補修用耐火物の厚みが100mmと110mmの10mmの差でも、不定形耐火物で構成される補修用耐火物の爆裂防止に有効な温度勾配の差が得られることが分かった。
また、実施例1、3と比較例4の結果から、補修用耐火物の厚みが増加するほど、補修用耐火物内の温度勾配が大きくなり、補修用耐火物に爆裂トラブルが発生するリスクが増加することが容易に想像できる。
実施例1、4と比較例5の結果から、第1のパーマネント耐火物の厚みが薄いほど、補修用耐火物内の温度勾配を小さくすることができ、補修用耐火物の爆裂トラブルを防止できることを確認できた。
なお、第1のパーマネント耐火物の厚みを薄くし過ぎると、パーマネント耐火物としての機能(漏鋼防止)を著しく損なう恐れがあるため、好ましくない。
このことから、実施例1〜4については、補修方法として十分に採用可能であるが、補修用不定形耐火物にはヘアクラックが発生した。このように、ヘアクラックが発生すると、使用はできるものの、補修用不定形耐火物の耐用性が若干劣るため、実施例1〜4については、総合評価を「○」とした。
まず、有機繊維の使用有無の影響を調査した結果について、実施例1、5、7、8を用いて説明する。なお、実施例5、7、8で使用した有機繊維は、分解/溶融温度が200℃のポリ乳酸繊維である。
実施例1、5、7、8の結果から、補修用耐火物に有機繊維を含ませることで、ヘアクラックの発生が抑制されることを確認できた。これは、乾燥時の熱によって、有機繊維が溶融/分解し、補修用耐火物に通気孔が形成されて、この通気孔が補修用耐火物の水蒸気抜きとして機能したことに起因する。
実施例5、6の結果から、有機繊維の分解/溶融温度が、最適範囲の上限値である200℃を超えるとヘアクラックが発生した。これは、有機繊維が融解/分解することにより発生する通気孔の生成タイミングが遅くなり、水蒸気圧の低下作用が低くなったことに起因する。
なお、有機繊維の溶融/分解温度が低いほど、ヘアクラックの発生抑制作用が早期に発現することは、容易に想像できる。
実施例5、7、8の結果から、補修用耐火物への有機繊維の添加量を多くするほど、有機繊維が融解/分解することにより発生する通気孔が多く形成され、ヘアクラックの発生抑制作用が大きくなることが確認された。
なお、実施例7については、爆裂及び剥離トラブルの発生がなく、しかもヘアクラックの発生もなかったが、補修用耐火物への有機繊維の添加量が多過ぎた。このため、補修用耐火物の施工体の見掛け気孔率が増大し、施工体の耐用性が低下したため、総合評価を「○」とした。
以上のことから、本発明のライニングの補修方法を用いることで、補修用不定形耐火物の乾燥時における爆裂を防止できること、更には耐用性を向上できることを確認できた。
また、前記実施の形態においては、本発明のライニングの補修方法を溶湯容器に適用した場合について説明したが、ライニングの補修を実施する対象であれば、これに限定されるものではなく、例えば、樋でもよい。
Claims (2)
- 鉄皮の表面に配置され、溶湯と接触する側から該鉄皮側へ向けて、ウェア耐火物、第1のパーマネント耐火物、第2のパーマネント耐火物の順に形成されたライニングの補修方法において、
前記第1のパーマネント耐火物が、厚み30mm以上65mm以下の定形耐火物で構成され、かつ前記第1のパーマネント耐火物と前記第2のパーマネント耐火物の間に、熱伝導率を厚みで除した熱通過率が30W/(m2・K)以下である断熱材が配置されており、
前記ウェア耐火物は、熱履歴を受けた不定形耐火物で構成される厚み70mm以下の残存耐火物であり、該ウェア耐火物及び前記第1のパーマネント耐火物のいずれか一方又は双方の表面に、水分と耐火材を混練あるいは混合した未乾燥の補修用不定形耐火物を最大厚み100mm以下で配置して、該補修用不定形耐火物を、その乾燥面を100℃から200℃へ加熱する際に、表面温度が1時間あたり40℃以下となる昇温速度で、加熱し乾燥させることを特徴とするライニングの補修方法。 - 請求項1記載のライニングの補修方法において、前記補修用不定形耐火物には、200℃以下で溶融又は分解する有機繊維が、該補修用不定形耐火物に対して0.01質量%以上0.5質量%以下含まれていることを特徴とするライニングの補修方法。
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