JP5601033B2 - 窒化物単結晶の製造方法及び窒化物単結晶 - Google Patents
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III族窒化物半導体などの窒化物結晶は、高融点であり、しかも融点付近の窒素の解離圧が高いことから、融液からのバルク成長が困難である。一方、ハイドライド気相成長法(HVPE)や有機金属化学気相成長法(MOCVD)等の気相成長法を用いることによって、III族窒化物半導体基板を製造できることが知られている。例えば、窒化ガリウム半導体基板を製造する場合、サファイア等の下地基板を気相成長装置の成長室(リアクター)内にセットし、リアクター内に、ガリウム化合物を含有するガスと窒素化合物を含有するガスなどからなるIII族窒化物半導体形成用ガスを供給することにより、下地基板上に窒化ガリウム半導体を数μm〜数cmの厚さにまで成長させる。そして、その後、下地基板などの部分を研磨やレーザーを照射する方法を用いて除去することにより、所望のIII族窒化物半導体基板を得ることができる。前記の気相成長法のうち、特にHVPE法は他の成長方法に比べて高い成長速度が実現できる特徴をもつことから、III族窒化物半導体の厚膜成長が必要な場合や、十分な厚みを有するIII族窒化物半導体基板を得るための方法として有効である。
特開2009−1436号公報(特許文献3)では、種基板の側面を成長させる半導体結晶と同じ組成の結晶からなる枠状部で囲むように配置することで、種基板への多結晶の付着を抑制しながら窒化物単結晶を成長させている。
また、上記特許文献2および特許文献3の半導体結晶の成長方法では、得ようとする半導体単結晶の周囲に半導体単結晶と同程度の高さを有する同組成の結晶を生成してしまう。これによって、得ようとする半導体単結晶の周囲に出来る同組成の結晶が半導体単結晶成長の原料を吸収してしまうため、目的の半導体単結晶の成長が抑制されてしまうのでより厚い半導体単結晶を得るという点で不利である。
つまり、本発明の要旨は、下地基板の周囲に下地基板と異なる種基板を配置する工程と、該下地基板上に窒化物単結晶を成長させる工程とを含む窒化物単結晶の製造方法であって、該種基板上の窒化物結晶の成長速度が下地基板上の窒化物単結晶の成長速度よりも遅い窒化物単結晶の製造方法に関する。
また本発明は、下地基板の主面が極性面である、前記窒化物単結晶の製造方法に関する。
また本発明は、種基板が六方晶の結晶であり、種基板の主面が非極性面及び/又は半極性面である、前記窒化物単結晶の製造方法に関する。
また本発明は、窒化物単結晶を成長させる工程において、ハイドライド気相堆積(HVPE)法で窒化物単結晶を成長させる、前記窒化物単結晶の製造方法に関する。
また本発明は、厚さが8.5mm以上である、前記窒化物単結晶に関する。
し、高品質の窒化物単結晶を簡便な方法で効率よく製造することができる。また、厚さ8.0mm以上の窒化物単結晶を容易に製造することができる。
また、以下の説明では、窒化物単結晶として窒化ガリウム(GaN)単結晶を例として説明することがあるが、本発明で採用することができる窒化物単結晶はこれに限定されるものではない。
本発明の窒化物単結晶の製造方法は、下地基板の周囲に下地基板と異なる種基板を配置する工程と、該下地基板上に窒化物単結晶を成長させる工程を含む。さらに、窒化物単結晶を成長させる工程においては、下地基板上の窒化物単結晶の成長速度よりも種基板上の窒化物単結晶の成長速度の方が遅いことを特徴とする。
それぞれの基板上の結晶成長速度を比較する際の成長条件は、後述する本発明の製造方法における窒化物結晶の成長条件と同じ範囲でよい。中でも、たとえばハイドライド気相堆積(HVPE)法において、成長温度を1010℃、成長圧力を1.01×105Pa、GaClガスの分圧を6.55×102Pa、NH3ガスの分圧を7.58×103Paとした場合などが挙げられる。このような条件で成長させた場合に下地基板よりも窒化物単結晶の成長速度が遅いものを種基板として用いることができる。
(下地基板)
下地基板としては、特に限定されないが、例えばサファイア単結晶基板;Si基板;GaN単結晶基板、SiC単結晶基板、AlN単結晶基板、InN単結晶基板、AlGaN単結晶基板、InGaN単結晶基板、GaAs単結晶基板、ZnO単結晶基板などの化合物半導体の結晶を挙げることができる。好ましいのはサファイア、化合物半導体、シリコンから選ばれる1以上の結晶である下地基板であり、より好ましくは化合物半導体からなる単結晶基板であり、さらに好ましくはGaN単結晶基板またはSiC単結晶基板である。
下地基板の主面の面方位は、窒化物単結晶を成長することが出来る成長面であれば特に方位は限定されず、例えば{0001}面、{10−10}面、{11−20}面、{11−22}面、{20−21}面などを好ましく用いることができ、中でも(0001)面を用いることがより好ましい。
ある。また、この明細書において「M面」は、±0.01°以内の精度で計測されるM軸からA軸方向へ15°傾斜した方向の範囲内に成長面がある下地基板又は種基板の成長面のこと指し、より好ましくは10°傾斜した方向の範囲内の成長面であり、さらに好ましくは5°傾斜した方向の範囲内の成長面である。さらに、「M面」は±0.01°以内の精度で計測されるM軸からC軸方向へ25°傾斜した方向の範囲内に成長面がある下地基板又は種基板の成長面のこと指し、より好ましくは10°傾斜した方向の範囲内の成長面であり、さらに好ましくは5°傾斜した方向の範囲内の成長面である。
種基板としては、下地基板よりも窒化物単結晶の成長速度が遅い基板であれば特に限定されず、例えばGaN単結晶基板、サファイア単結晶基板、SiC単結晶基板、Si基板、AlN単結晶基板、InN単結晶基板、AlGaN単結晶基板、InGaN単結晶基板などを挙げることができる。好ましいのは六方晶構造を有する単結晶基板であり、より好ましくはGaN単結晶基板である。
種基板の主面の面方位は、窒化物単結晶を成長することが出来る成長面であって、下地基板よりも成長速度が遅いものであれば特に方位は限定されず、例えば{0001}面、{10−10}面、{11−20}面、{11−22}面、{20−21}面などを用いることができ、中でも{10−10}面、{11−20}面といった非極性面、及び/又は{11−22}面、{20−21}面などの半極性面用いることが好ましく、より好ましくは{10−10}面である。
(下地基板及び種基板の配置方法)
下地基板の配置方法は特に限定されないが、下地基板の主面が原料ガス流れの上流側を向くように配置することが好ましい。すなわち、原料ガスが主面に向かって流れるように配置することが好ましく、原料ガスが主面に垂直な方向から流れるようにすることがより好ましい。このように下地基板を載置することによって、より均一で結晶性に優れた窒化物単結晶を得ることができる。
種基板の配置は、下地基板の周囲に配置すれば特に限定されず、具体的には下地基板の側面を囲むように周囲に配置するのが好ましい。種基板は、下地基板の周囲を均等に囲むように配置されることが好ましく、複数枚の種基板を配置する場合には、下地基板の周囲を円状に等間隔で囲むように配することが好ましい。
本発明の製造方法で成長させる窒化物単結晶としては、特に限定されないが、III族窒化物単結晶であることが好ましく、例えばAlxInyGa(1−x−y)N(0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)が好ましく、GaN、InN、AlN、InGaN、AlGaN、AlInGaNなどを挙げることができる。より好ましいのはGaN、AlN、AlGaNであり、さらに好ましいのはGaNである。
窒化物単結晶の成長方法は特に限定されないが、本発明では、通常、下地基板に対して原料ガスを供給することによって、下地基板の結晶成長面に対して垂直な方向へ板状結晶を成長させる。成長方法としては、有機金属化学堆積法(MOCVD法)、ハイドライド気相堆積法(HVPE法)、分子線エピタキシー法(MBE法)、昇華法、パルスレーザー堆積法(PLD法)等が挙げられるが、なかでも成長速度の速いHVPE法が好ましい。
リアクター100の材質としては、石英、焼結体窒化ホウ素、ステンレス等が用いられる。好ましい材質は石英である。リアクターの耐久性が優れることから、リアクターの少なくとも一部が合成石英からなることが特に好ましい。
リアクター100内には、反応開始前にあらかじめ雰囲気ガスを充填しておく。雰囲気ガス(キャリアガス)としては、例えば、水素、窒素、He、Ne、Arのような不活性ガス等を挙げることができる。これらのガスは混合して用いてもよい。
サセプター107の材質としてはカーボンが好ましく、SiCで表面をコーティングしているものがより好ましい。
サセプター107の形状は、本発明で用いる下地基板及び種基板を設置することができる形状であれば特に制限されないが、結晶成長する際に結晶成長面付近に構造物が存在しないものであることが好ましい。結晶成長面付近に成長する可能性のある構造物が存在すると、そこに多結晶体が付着し、その生成物としてHClガスが発生して、得られる窒化物単結晶に悪影響が及んでしまう。
リザーバー105には、成長させる窒化物単結晶の原料を入れる。例えば、III族窒化物単結晶を成長させる場合は、III族源となる原料を入れる。そのようなIII族源となる原料として、Ga、Al、Inなどを挙げることができる。
リザーバー105にガスを導入するための導入管103からは、リザーバー105に入れた原料と反応するガスを供給する。例えば、リザーバー105にIII族源となる原料を入れた場合は、導入管103からHClガスを供給することができる。このとき、HClガスとともに、導入管103からキャリアガスを供給してもよい。キャリアガスとしては、例えば水素、窒素、He、Ne、Arのような不活性ガス等を挙げることができる。これらのガスは混合して用いてもよい。
導入管104からは、窒素源となる原料ガスを供給する。通常はNH3を供給することが好ましい。
また、導入管101からは、キャリアガスを供給する。キャリアガスとしては、導入管103から供給するキャリアガスと同じものを例示することができる。このキャリアガスは原料ガスノズルを分離し、ノズル先端にポリ結晶が付着することを防ぐ効果もある。
また、導入管102からは、ドーパントガスを供給することもできる。例えば、SiH4やSiH2Cl2、H2S等のn型のドーパントガスを供給することができる。
導入管101〜104から供給する上記ガスは、それぞれ互いに入れ替えて別の導入管から供給しても構わない。また、窒素源となる原料ガスとキャリアガスは、同じ導入管か
ら混合して供給してもよい。さらに他の導入管からキャリアガスを混合してもよい。これらの供給態様は、リアクター100の大きさや形状、原料の反応性、目的とする結晶成長速度などに応じて、適宜決定することができる。
ガス排気管108は、リアクター内壁の上面、底面、側面に設置することができる。ゴミが落ちることによる影響の観点から結晶成長端よりも下部にあることが好ましく、図1のようにリアクター底面にガス排気管108が設置されていることがより好ましい。
(結晶成長条件)
本発明における窒化物単結晶の成長は、通常は950℃〜1120℃で行い、970℃〜1100℃で行うことが好ましく、980℃〜1090℃で行うことがより好ましく、990℃〜1080℃で行うことがさらに好ましい。リアクター内の圧力は10kPa〜200kPaであるのが好ましく、30kPa〜150kPaであるのがより好ましく、50kPa〜120kPaであるのがさらに好ましい。
本発明における下地基板上の結晶成長の成長速度は、成長方法、成長温度、原料ガス供給量、下地基板の主面の面方位等により異なるが、一般的には5μm/h〜500μm/hの範囲であり、10μm/h以上が好ましく、50μm/h以上がより好ましく、70μm/h以上であることがさらに好ましい。成長速度は、上記の他、キャリアガスの種類、流量、供給口−結晶成長端距離等を適宜設定することによって制御することができる。
なお、以下の実施例および比較例では、図1に示すHVPE装置を用いて結晶成長を行った。
サファイア基板上に有機金属化学堆積(MOCVD)法により窒化ガリウム(GaN)を成長した、ノンドープで主面をC面とするGaNテンプレートを準備し、テンプレート上にSi3N4のマスクを形成し、マスクの開口部を通じるエピタキシャル横方向過度成長でC面−GaN層を成長させて、下地基板を準備した。また、[−12−10]方向に25mm、[0001]方向に10mmの長さを有し、厚さ330μmの直方体で主面が(101−0)面であるGaN自立基板を種基板として8枚用意した。
基板を配置した。このときのガス導入管104の先端と下地基板の距離は、9cmとした。さらに下地基板から5mm程度離した位置のサセプター107上に、下地基板側に種基板のC面が向くように約45度の間隔で種基板を8枚配置した。このとき下地基板に向けたC面は、+C面又は−C面のどちらであっても同様の結果が得られた。
成長時間を86時間としたこと以外は、実施例1と同様にしてGaN単結晶を得た。下地基板上に厚さが11.4mmのC面−GaN単結晶が得られた。C面−GaN単結晶の厚みと成長時間から成長速度を算出したところ、133μm/hであった。また、種基板上には、厚さ3.0〜5.0mmの主面をM面−GaN単結晶が成長していた。
<実施例3>
ガス導入管104の先端と下地基板の距離を2cm短縮させて7cmとしたことと成長時間を79時間としたこと以外は、実施例1と同様にしてGaN単結晶を得た。下地基板上に厚さが8.0mmのC面−GaN単結晶が得られた。C面−GaN単結晶の厚みと成長時間から成長速度を算出したところ、102μm/hであった。また、種基板上には、厚さ3.0〜5.0mmの主面をM面−GaN単結晶が成長していた。
ガス導入管104の先端と下地基板の距離を2cm短縮させて7cmとしたこと、GaClガスG3の分圧を6.46×102Paとしたこと、及び成長時間を96時間としたこと以外は、実施例1と同様にしてGaN単結晶を得た。下地基板上に厚さが10.7mmのC面−GaN単結晶が得られた。C面−GaN単結晶の厚みと成長時間から成長速度を算出したところ、111μm/hであった。また、種基板上には、厚さ3.0〜5.0mmの主面をM面−GaN単結晶が成長していた。
<比較例1>
反応室の温度を1000℃とし、成長時間を64時間、種基板は配置しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてGaN単結晶を得た。下地基板上に中心部の厚さが7.9mmのC面−GaN単結晶が得られた。C面−GaN単結晶の厚みと成長時間から成長速度を算出したところ、123μm/hであった。一方、高さが10mm以上の多結晶がC面
−GaN単結晶を覆うように成長していた。
反応室の温度を1020℃とし、成長時間を75時間、種基板は配置しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてGaN単結晶を得た。下地基板上に中心部の厚さが8.2mmのC面−GaN単結晶が得られた。C面−GaN単結晶の厚みと成長時間から成長速度を算出したところ、110μm/hであった。
101 キャリアガス用配管
102 ドーパントガス用配管
103 HClガス用配管
104 窒素原料用配管
105 III族原料用リザーバー
106 ヒーター
107 サセプター
108 排気管
G1 キャリアガス
G2 ドーパントガス
G3 III族原料ガス
G4 窒素原料ガス
200 窒化物単結晶
201 窒化物多結晶
300 C面−窒化物単結晶
301 M面−窒化物単結晶
Claims (5)
- 下地基板の周囲に下地基板と異なる種基板を配置する配置工程と、該下地基板上にハイドライド気相堆積(HVPE)法でGaN単結晶を成長させる成長工程とを含み、該成長工程において、該下地基板上のGaN単結晶の成長速度よりも遅い速度で該種基板上にGaN結晶がエピタキシャル成長することを特徴とする、GaN単結晶の製造方法。
- 前記成長工程において、前記下地基板上に7.9mm以上の厚さにGaN単結晶を成長させる、請求項1に記載の製造方法。
- 前記下地基板として、サファイア基板、化合物半導体基板、シリコン基板またはGaNテンプレートを用いる、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記下地基板の主面がGaNのC面である、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記種基板の主面がGaNの非極性面及び/又は半極性面である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
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